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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006000
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】浚渫装置及び海底鉱床掘削機
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20250109BHJP
   E02F 5/00 20060101ALI20250109BHJP
   E21C 50/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02F3/88 C
E02F3/88 G
E02F3/88 E
E02F5/00 A
E21C50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106499
(22)【出願日】2023-06-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)経済産業省資源エネルギー庁、令和4年度海洋鉱物資源調査に係るコバルトリッチクラスト用採鉱試験機の設計に向けた技術開発等調査に関する業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504117958
【氏名又は名称】独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 修平
(72)【発明者】
【氏名】益田 将寛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 惇史
(72)【発明者】
【氏名】下川 眞男
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065FA12
2D065FA13
2D065FA15
2D065FA21
(57)【要約】
【課題】掘削された海底資源の取り残しを抑えて効率良く回収する。
【解決手段】浚渫装置は、海底を向く底部開口及び鉛直方向と交差する第一方向の一方を向く前部開口が形成されたチャンバと、前記チャンバ内に配置された吸込口を有し、前記チャンバ内の砂礫土水を前記吸込口から吸引する吸引装置と、前記チャンバ内で前記海底に向かって液体を噴射する噴射装置と、を備え、前記チャンバは、前記海底に鉛直方向に離れた位置で対向するように配置される天板と、前記天板から前記海底に向かって前記鉛直方向の下方に延びて、前記前部開口から離れるにしたがって間隔が小さくなるように配置された一対の側板とを有し、前記噴射装置は、一対の前記側板のそれぞれに沿うように前記第一方向に互いに離れて配置された複数の噴射ノズルを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向と交差する第一方向の一方へ移動可能とされ、海底を向く底部開口及び前記第一方向の一方を向く前部開口が形成されたチャンバと、
前記チャンバ内に配置された吸込口を有し、前記チャンバ内の砂礫土水を前記吸込口から吸引する吸引装置と、
前記チャンバ内で前記海底に向かって液体を噴射する噴射装置と、を備え、
前記チャンバは、前記海底に鉛直方向に離れた位置で対向するように配置される天板と、前記天板から前記海底に向かって前記鉛直方向の下方に延びて、前記前部開口から離れるにしたがって間隔が小さくなるように配置された一対の側板とを有し、
前記噴射装置は、一対の前記側板のそれぞれに沿うように前記第一方向に互いに離れて配置された複数の噴射ノズルを有している浚渫装置。
【請求項2】
前記チャンバは、前記鉛直方向から見た際に、前記第一方向において前記前部開口の位置が前記鉛直方向及び前記第一方向と交差する第二方向で最も広く形成されている請求項1に記載の浚渫装置。
【請求項3】
複数の前記噴射ノズルは、前記鉛直方向から見た際に、前記鉛直方向及び前記第一方向と交差する第二方向において、前記吸込口と前記側板との間に配置されている請求項1又は請求項2に記載の浚渫装置。
【請求項4】
一対の前記側板は、前記天板と接続されている板本体と、
前記板本体に対して前記鉛直方向の下方に接続され、前記板本体よりも軟質な材料又は構造で形成されたカバー部と、を有する請求項1又は請求項2の浚渫装置。
【請求項5】
前記噴射装置は、前記チャンバの外部の海水を前記液体として噴射する請求項1又は請求項2に記載の浚渫装置。
【請求項6】
前記チャンバ内で前記吸込口から吸引される前記砂礫土水に旋回成分を付与する旋回流促進部を備える請求項1又は請求項2に記載の浚渫装置。
【請求項7】
前記チャンバに固定され、前記海底に接触可能な状態で、前記鉛直方向と直交する仮想平面に対して傾斜するように、移動可能とされている傾斜走行部と、
前記鉛直方向の下方に前記傾斜走行部を付勢する付勢機構とを備える請求項1又は請求項2に記載の浚渫装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の浚渫装置と、
前記チャンバに対して前記鉛直方向の上方に配置され、前記第一方向に走行可能な掘削機本体と、
前記掘削機本体に対して前記鉛直方向の下方かつ前記チャンバに対して走行方向の前方に配置された掘削装置と備える海底鉱床掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浚渫装置及び海底鉱床掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
海底には、例えば熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガンクラスト、メタンハイドレート等の種々の海底資源が存在している。例えば、コバルトリッチクラストは、海底の表層部に薄く広く賦存する。このような海底資源を採掘する際には、サーフェイスマイナーに似た掘削機が使用される。
【0003】
このような掘削機には、ドラムカッタで掘り起こした鉱石を含む砂礫土水を取り除く浚渫装置が取り付けられている。このような浚渫装置として、例えば、特許文献1に記載のように、地面に開口するよう形成されたチャンバと、チャンバ内で吸込口から砂礫土水を吸引する吸引装置と、チャンバ内に液体を噴射するノズルとを備えた構造が知られている。この浚渫装置のチャンバ内には、チャンバ内で回転駆動される回転ドラムと、回転ドラムの周囲に装着されるビットとを備えた掘削装置が配置されている。そして、掘削装置によって背面に巻き上げられた砂礫土水がチャンバ内で吸込口から吸引装置で吸引されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7084763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、周囲にビットが固定された回転ドラムを備えたドラムカッタのような掘削装置では、掘り起こされた海底資源を含む砂礫土は、背面だけでなく、ドラムカッタの左右にも巻き上げられる。さらに、不陸がある海底面では、谷部に砂礫土が溜まってしまうこともあり、十分に回収できない場合もある。そのため、掘り起こされた海底資源を、浚渫装置で取り残しを抑えて効率良く回収することが求められている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、掘削された海底資源の取り残しを抑えて効率良く回収することができる浚渫装置及び海底鉱床掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る浚渫装置は、鉛直方向と交差する第一方向の一方へ移動可能とされ、海底を向く底部開口及び前記第一方向の一方を向く前部開口が形成されたチャンバと、前記チャンバ内に配置された吸込口を有し、前記チャンバ内の砂礫土水を前記吸込口から吸引する吸引装置と、前記チャンバ内で前記海底に向かって液体を噴射する噴射装置と、を備え、前記チャンバは、前記海底に鉛直方向に離れた位置で対向するように配置される天板と、前記天板から前記海底に向かって前記鉛直方向の下方に延びて、前記前部開口から離れるにしたがって間隔が小さくなるように配置された一対の側板とを有し、前記噴射装置は、一対の前記側板のそれぞれに沿うように前記第一方向に互いに離れて配置された複数の噴射ノズルを有している。
【0008】
また、本開示に係る海底鉱床掘削機は、前記浚渫装置と、前記チャンバに対して鉛直方向の上方に配置され、前記第一方向に走行可能な掘削機本体と、前記掘削機本体に対して前記鉛直方向の下方かつ前記チャンバに対して走行方向の前方に配置された掘削装置と備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の浚渫装置及び海底鉱床掘削機によれば、掘削された海底資源の取り残しを抑えて効率良く回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る海底鉱床掘削機を側方から示す断面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る浚渫装置を示す斜視図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る浚渫装置を背面から示す断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る浚渫装置を示す斜視図であって、チャンバを省略した斜視図である。
図5】本開示の第二実施形態の変形例に係る浚渫装置を示す斜視図である。
図6】本開示の第三実施形態に係る浚渫装置を示す側面図である。
図7】本開示の第三実施形態の変形例に係る浚渫装置を示す側面図である。
図8】本開示の第三実施形態の変形例に係る浚渫装置を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示による浚渫装置4及び海底鉱床掘削機1を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
<第一実施形態>
(海底鉱床掘削機)
海底鉱床掘削機1は、熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガンクラスト、メタンハイドレート等の海底資源を掘削する機械である。本実施形態の海底鉱床掘削機1は、海底F表層(1cm~25cm程度)を覆うコバルトリッチクラストを掘削する。したがって、海底鉱床掘削機1は、海中(特に深海)で運転される。図1に示すように、海底鉱床掘削機1は、掘削機本体2と、掘削装置3と、浚渫装置4とを備えている。
【0013】
(掘削機本体2)
掘削機本体2は、クローラ(不図示)を有し、海底Fを走行可能とされている。掘削機本体2は、第一方向D1に走行可能とされている。掘削機本体2は、掘削装置3及び浚渫装置4に対して鉛直方向Dvの上方に配置されている。
【0014】
なお、本実施形態では、掘削機本体2の走行方向であって、鉛直方向Dvと交差する(本実施形態では直交する)方向を第一方向D1と称する。さらに、第一方向D1の一方であって、掘削機本体2の前進する側を前方D1fと称する。また、第一方向D1の他方であって、前方D1fと反対側の掘削機本体2の後退する側を後方D1rと称する。また、第一方向D1及び鉛直方向Dvと交差する(本実施形態では直交する)浚渫装置4の幅方向を第二方向D2(図2参照)と称する。第一方向D1及び第二方向D2は、掘削機本体2が走行している海底Fの傾きによって、鉛直方向Dvと直交せずに交差した方向となる場合も含まれる。
【0015】
(掘削装置3)
掘削装置3は、海底Fの表層を掘削する。掘削装置3は、掘削した後に生じる砂礫土を掘削装置3に対して第一方向D1の後方D1r及び第二方向D2の両側に巻き上げる。掘削装置3は、浚渫装置4に対して第一方向D1の前方D1fに配置されている。つまり、掘削装置3は、浚渫装置4の外部に、浚渫装置4とは独立して配置されている。掘削装置3は、掘削機本体2に対して、鉛直方向Dvに下方に固定されている。本実施形態の掘削装置3は、回転ドラム31と、ビット32とを備えている。
【0016】
回転ドラム31は、軸線Oを中心に回転駆動される。回転ドラム31は、軸線Oを中心とした円柱状に形成されている。回転ドラム31は、モータによって、軸線Oを中心として時計回り及び反時計回りのいずれの方向にも回転可能とされている。つまり、回転ドラム31は、いずれの回転方向に回転しても海底Fの表層を掘削可能とされている。
【0017】
ビット32は、回転ドラム31の周囲に複数装着されている。ビット32は、回転ドラム31の外周面から外側に向かって突出するように配置されている。
【0018】
(浚渫装置)
浚渫装置4は、掘削機本体2によって海底F上を移動しながら海底Fの表層を掘削しつつ、掘削後にできた砂礫土を海水と共に回収する。浚渫装置4は、回収された砂礫土を洋上の作業船(不図示)やプラットフォーム(不図示)に搬送する。本実施形態の浚渫装置4は、掘削機本体2の鉛直方向Dvに下方に固定されている。浚渫装置4は、掘削機本体2に対して鉛直方向Dvに下方に固定されている。浚渫装置4は、掘削装置3に対して、第一方向D1の後方D1rに固定されている。本実施形態の掘削装置3は、チャンバ5と、吸引装置6と、噴射装置7と、を備えている。
【0019】
チャンバ5は、掘削機本体2とともに移動することで、第一方向D1の前方D1fへ移動可能とされている。チャンバ5は、内部に空間Sが形成された中空構造とされている。チャンバ5には、海底Fを向く底部開口50及び第一方向D1の前方D1fを向く前部開口51が形成されている。したがって、チャンバ5は、内部が海底Fに面するとともに、第一方向D1の前方D1fで海中と繋がっている。図1及び図2に示すように、本実施形態のチャンバ5は、天板55と、一対の側板56と、後板57と、幕部59とを有している。
【0020】
天板55は、海底Fに対して鉛直方向Dvに離れた位置に配置されている。天板55は、海底Fに対して対向するように配置されている。天板55は、海底Fに対して水平に広がるような板状の部材である。したがって、天板55において最も広い面は、鉛直方向Dvを向いている。天板55は、金属材料によって構成されている。
【0021】
一対の側板56は、天板55から海底Fに向かって鉛直方向Dvの下方に延びている。一対の側板56は、第一方向D1において前部開口51から離れるにしたがって間隔が小さくなるように配置されている。本実施形態の一対の側板56は、第二方向D2に互いに離れて配置されている。したがって、一対の側板56は、第一方向D1において、前部開口51の位置で最も互いに離れている。
【0022】
後板57は、天板55から海底Fに向かって鉛直方向Dvの下方に延びている。後板57は、一対の側板56同士を接続している。つまり、一対の側板56は、第一方向D1において後板57と接続されている位置で最も互いに近づいている。
【0023】
また、本実施形態において、各側板56及び後板57は、板本体581と、カバー部582と、を有している。
【0024】
板本体581は、天板55と接続されている。板本体581は、天板55の縁から鉛直方向Dvの下方に延びている。板本体581は、天板55と同じ金属材料によって構成されている。板本体581は、海底Fに対して鉛直方向Dvに離れた位置に配置されている。
【0025】
カバー部582は、板本体581に対して鉛直方向Dvの下方に接続されている。カバー部582は、板本体581の鉛直方向Dvの下端から、海底Fに向かって延びている。カバー部582は、板本体581よりも軟質な材料又は構造で形成されている。カバー部582は、例えば、軟質な材料として、金属材料ではなく、ゴムのような弾性材料で構成されている。また、カバー部582は、例えば、軟質な構造として、板状ではなく、ブラシ状に形成されている。カバー部582は、海底Fに接触可能とされている。
【0026】
幕部59は、前部開口51の一部を塞ぐように配置されている。幕部59は、天板55と接続されている。幕部59は、第一方向D1における天板55の縁から鉛直方向Dvの下方に延びている。幕部59は、第二方向D2において天板55と同程度の長さで形成されている。幕部59は、鉛直方向Dvにおいて板部と同程度の長さで形成されている。幕部59は、海底Fに対して鉛直方向Dvに離れた位置に配置されている。つまり、幕部59は、第一方向D1から見た際に、前部開口51の鉛直方向Dvの上方と重なっており、前部開口51の鉛直方向Dvの下方とは重なっていない。幕部59は、カバー部582よりも軟質な材料又は構造で形成されている。
【0027】
上述したような天板55、一対の側板56、後板57、及び幕部59によって、チャンバ5の内部には空間Sが形成される。また、天板55及び一対の側板56によって、チャンバ5において第一方向D1の前方D1fを向く位置に前部開口51が形成されている。また、一対の側板56及び後板57によって、チャンバ5において鉛直方向Dvの下方を向く位置に底部開口50が形成されている。
【0028】
吸引装置6は、チャンバ5内の砂礫土水を吸引する。砂礫土水では、掘削装置3によって海底Fの表層が掘削されて巻き上げられた砂礫土と、掘削装置3の周囲の海水とが混在した状態となっている。吸引装置6は、チャンバ5内から吸い上げる砂礫土水の流量を調整可能とされている。本実施形態の吸引装置6は、吸込口61と、移送管62とを有している。
【0029】
吸込口61は、チャンバ5内に配置されている。本実施形態の吸込口61は、移送管62の端部の開口部である。吸込口61は、チャンバ5内において、天板55に対して鉛直方向Dvの下方に突出した位置に配置されている。
【0030】
移送管62は、チャンバ5から延びて作業船等(不図示)まで延びている。本実施形態の移送管62は、内部が中空の輸送管である。移送管62は、ポンプ(不図示)を介して砂礫土水を吸引している。
【0031】
噴射装置7は、チャンバ5内で海底Fに向かって高圧の海水(液体)を噴射する。噴射装置7は、チャンバ5の外部の海水を取り込んで、高圧の海水として噴射する。噴射装置7は、チャンバ5内の砂礫土水よりも圧力の高い高圧水を海底Fに向かって噴射する。噴射装置7は、海底Fに堆積した砂礫土を海底Fからチャンバ5内で浮上させつつ、吸込口61へ導くように高圧水を噴射する。本実施形態の噴射装置7は、複数の噴射ノズル71と、噴射ライン72と、噴射ポンプ73とを有している。
【0032】
複数の噴射ノズル71は、一対の側板56のそれぞれに沿うように第一方向D1に互いに離れて配置されている。複数の噴射ノズル71は、鉛直方向Dvから見た際に、第二方向D2において、吸込口61と側板56との間に配置されている。複数の噴射ノズル71は、鉛直方向Dvの上方から見た際に、吸込口61を挟んで第二方向D2の両側に同数ずつ配置されている。また、噴射ノズル71は、鉛直方向Dvから見た際に、吸込口61に対して、第一方向D1の後方D1rに、少なくとも一つが配置されている。つまり、噴射ノズル71は、鉛直方向Dvから見た際に、第一方向D1において、吸込口61と後板57との間にも配置されている。したがって、複数の噴射ノズル71は、鉛直方向Dvから見た際に、第一方向D1の前方D1f以外から吸込口61を囲むように配置されている。隣り合う噴射ノズル71は、均等に間隔を開けて配置されている。複数の噴射ノズル71は、海底Fに向かって鉛直方向Dvに真っすぐ海水を噴射する。複数の噴射ノズル71は、天板55を鉛直方向Dvに貫通するように配置されている。複数の噴射ノズル71は、天板55に固定されている。
【0033】
噴射ライン72は、複数の噴射ノズル71に海水を供給可能とされている。噴射ライン72は、複数の噴射ノズル71と連通している。噴射ライン72は、鉛直方向Dvに延びた後に曲がって、天板55上を這うように延びている。噴射ライン72は、移送管62よりも径の小さい輸送管である。本実施形態では、図2に示すように、噴射ライン72は、第一噴射ライン721と、第二噴射ライン722とを有している。
【0034】
第一噴射ライン721は、鉛直方向Dvの上方から見た際に、吸込口61を挟んで第二方向D2の一方側の複数の噴射ノズル71と繋がっている。
【0035】
第二噴射ライン722は、鉛直方向Dvの上方から見た際に、吸込口61を挟んで第二方向D2の他方側の複数の噴射ノズル71と繋がっている。つまり、第二噴射ライン722は、第一噴射ライン721と繋がっていない複数の噴射ノズル71と繋がっている。第二噴射ライン722は、第一噴射ライン721と同径の輸送管である。
【0036】
図1に示すように、噴射ポンプ73は、液体としてチャンバ5の外部の海水を取り込み、圧力を上げて噴射ライン72に供給している。噴射ポンプ73は、チャンバ5の外部で噴射ライン72に取り付けられている。噴射ポンプ73は、図示しないフィルタを介して浚渫装置4の周囲の海水を吸込んでいる。噴射ポンプ73から吐出された高圧の海水は、流量が均等に配分されて第一噴射ライン721及び第二噴射ライン722に供給される。
【0037】
(作用効果)
上記構成の浚渫装置4及び海底鉱床掘削機1では、海底Fを向く底部開口50及び第一方向D1の前方D1fを向く前部開口51が形成されたチャンバ5を有している。そのため、掘削装置3で掘削された砂礫土を、掘削機本体2の第一方向D1の前方D1fへの移動とともに、前部開口51及び底部開口50からチャンバ5の内部に回収する。さらに、チャンバ5内に回収した砂礫土は、複数の噴射ノズル71から海底Fに向かって噴射された海水によって巻き上げられる。特に、くぼ地のような不陸形状を有する海底Fにたまった砂礫土も巻き上げられ、海底Fに砂礫土が溜まったまま回収できないことを抑制できる。その際、複数の噴射ノズル71は一対の側板56に沿うように配置されている。そのため、複数の噴射ノズル71によって巻き上げられた砂礫土は、側板56に接触して、チャンバ5の中央付近に集まりやすくなる。このような状態で、吸込口61からチャンバ5内の砂礫土水を吸引することで、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しを低減して吸引できる。したがって、掘削された海底資源の取り残しを低減して効率良く回収することができる。
【0038】
また、チャンバ5は、鉛直方向Dvから見た際に、第一方向D1において前部開口51の位置が第二方向D2で最も広く形成されている。つまり、チャンバ5は、第二方向D2において前部開口51で最も広くなっている。そのため、前部開口51から砂礫土を効率良くチャンバ5内に回収できる。
【0039】
また、複数の噴射ノズル71は、鉛直方向Dvから見た際に、第二方向D2において、吸込口61と側板56との間に配置されている。そのため、複数の噴射ノズル71によって巻き上げられた砂礫土は、噴射ノズル71に対して外側では側板56に接触しやすくなり、内側では吸込口61に近づくこととなる。さらに、側板56に接触した砂礫土は、跳ね返ることで内側では吸込口61に近づくこととなる。つまり、複数の噴射ノズル71によって巻き上げられた砂礫土は、チャンバ5内で拡散することなく、チャンバ5の吸込口61付近により集まりやすくなる。したがって、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しをより低減して吸引できる。
【0040】
また、側板56及び後板57が、天板55と接続された板本体581と、板本体581に対して鉛直方向Dvの下方に接続されたカバー部582とを有している。さらに、カバー部582は、ゴムのような弾性材料やブラシ状に形成されることで、板本体581よりも軟質な材料又は構造で形成されている。そのため、板本体581によって、側板56及び後板57としての強度を確保できる。加えて、海底Fに接触しやすいカバー部582が軟質な材料又は構造であることで、側板56及び後板57が海底Fに接触しても、海底Fの形状に追従するように、変形しながら覆うことができる。つまり、大きなこぶのような不陸形状のある海底Fや、砂礫土中に大きな鉱石を、チャンバ5の密閉性を確保しつつ、カバー部582を変形させてやり過ごすことができる。したがって、チャンバ5内への砂礫土の回収効率を維持しつつ、側板56及び後板57の損傷を抑えることができる。
【0041】
また、噴射装置7では、噴射ポンプ73によってチャンバ5の外部から取り込んだ海水が、複数の噴射ノズル71から噴射される。したがって、チャンバ5内で噴射するための液体を別途用意する必要がない。
【0042】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る第二実施形の浚渫装置4Aについて説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第二実施形態では、浚渫装置4Aは、吸込口61Aから吸引される砂礫土水に旋回成分を与える点で第一実施形態と異なっている。
【0043】
図3及び図4に示すように、第二実施形態の浚渫装置4Aは、旋回流促進部8をさらに備える。旋回流促進部8は、チャンバ5内で吸込口61Aに吸引される砂礫土水に旋回成分を付与する。旋回流促進部8は、移送管62に流入する砂礫土水に、移送管62の内周面に沿った旋回成分を付与する。本実施形態の旋回流促進部8は、拡径部81と、旋回翼部82とを有している。
【0044】
拡径部81は、チャンバ5内で吸込口61Aを拡径するように形成されている。拡径部81は、鉛直方向Dvの下方から上方に向かって次第に狭まるよう形成されている。拡径部81は、漏斗を逆向きにしたように、鉛直方向Dvの下端が最も広く円錐形で、鉛直方向Dvの上端が最も狭い円管状に形成されている。拡径部81の鉛直方向Dvの下端は、チャンバ5内で開口している。したがって、第二実施形態では、拡径部81の鉛直方向Dvの下端の開口が吸込口61Aを構成している。拡径部81の鉛直方向Dvの上端は、移送管62に接続されている。拡径部81は、移送管62の中心軸と、拡径部81の中心軸O8の位置が重なるように配置されている。
【0045】
旋回翼部82は、拡径部81内に配置されている。旋回翼部82は、チャンバ5内から移送管62に向かって、拡径部81の中心軸O8を中心とする渦流を生じさせている。本実施形態の旋回翼部82は、翼基部821と、複数の翼本体822とを有している。翼基部821は、拡径部81の中心軸O8を中心とする円錐状に形成されている。
【0046】
複数の翼本体822は、翼基部821から延びている。複数の翼本体822は、拡径部81の中心軸O8の延びる鉛直方向Dvの上方を向く翼基部821の面から延びている。複数の翼本体822は、拡径部81の中心軸O8周りの周方向に間隔をあけて配置されている。翼本体822は、翼基部821と、拡径部81とを接続している。翼本体822は、移動不能な状態で翼基部821及び拡径部81に固定されている。翼本体822は、鉛直方向Dvの下方から上方に向かうにしたがって捻じれるように湾曲した翼面を有している。
【0047】
また、第二実施形態の浚渫装置4Aでは、噴射装置7Aが、複数の拡径部噴射ノズル76Aと、拡径部噴射ライン77Aと、をさらに有している。
【0048】
複数の拡径部噴射ノズル76Aは、複数の噴射ノズル71とは独立して配置されている。複数の拡径部噴射ノズル76Aは、拡径部81の鉛直方向Dvの下端の縁に沿うように環状に離れて配置されている。したがって、複数の拡径部噴射ノズル76Aは、鉛直方向Dvから見た際に、拡径部81を囲むように配置されている。隣り合う拡径部噴射ノズル76Aは、均等に間隔を開けて配置されている。複数の拡径部噴射ノズル76Aは、海底Fに向かって鉛直方向Dvに真っすぐ海水を噴射する。複数の拡径部噴射ノズル76Aは、拡径部噴射ライン77Aに固定されている。
【0049】
拡径部噴射ライン77Aは、複数の拡径部噴射ノズル76Aに海水を供給可能とされている。拡径部噴射ライン77Aは、噴射ライン72から分岐している。拡径部噴射ライン77Aは、鉛直方向Dvから見た際に、拡径部81の鉛直方向Dvの下端の縁に沿うように環状に延びている。拡径部噴射ライン77Aは、噴射ライン72と同程度の径の輸送管である。
【0050】
第二実施形態の浚渫装置4Aでは、チャンバ5内で吸込口61Aから吸引される砂礫土水に旋回成分を付与される。具体的には、拡径部81内で複数の翼本体822の間を砂礫土水が通過することで、翼本体822によって渦のように砂礫土水は旋回することとなる。そのため、吸込口61Aから砂礫土水を吸い込んでいる間には、拡径部81の周辺では、旋回流が生じた状態となる。その結果、拡径部81の下方を含む周辺の領域では、砂礫土がより巻き上げられやすくなる。したがって、海底Fに砂礫土が溜まったままとなってしまうことを抑制し、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しを低減して吸引できる。したがって、掘削された海底資源の取り残しを低減して一層効率良く回収することができる。
【0051】
また、拡径部81の周囲には、複数の拡径部噴射ノズル76Aが配置されている。複数の拡径部噴射ノズル76Aによって海底Fに向かって噴射された海水によって巻き上げられる。したがって、拡径部81の周辺で、砂礫土がより一層巻き上げられやすくなる。したがって、海底Fに砂礫土が溜まったままとなってしまうことを抑制し、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しをより低減して吸引できる。
【0052】
<第二実施形態の変形例>
なお、旋回促進部は、吸込口61Bから吸引される砂礫土水に旋回成分を付与することができれば、どのような構成であってもよい。例えば、第二実施形態の変形例として、旋回流促進部8Bは、第二実施形態とは異なる形状であってもよい。
【0053】
図5に示すように、第二実施形態の変形例の拡径部81Bは、断面が台形状となるような円錐台状に形成されている。拡径部81Bの鉛直方向Dvの下端は、チャンバ5内で開口している。したがって、拡径部81Bの鉛直方向Dvの下端の開口が吸込口61Bを構成している。拡径部81Bの鉛直方向Dvの上端は、閉塞されている。拡径部81Bは、側面における延長方向の上方の領域で移送管62と接続されている。
【0054】
また、第二実施形態の変形例の旋回翼部82Bは、一つの翼本体822Bのみによって、チャンバ5内から移送管62に向かって、拡径部81Bの中心軸O8を中心とする渦流を生じさせている。旋回翼部82Bは、翼基部821Bと、一つのみの翼本体822Bとを有している。
【0055】
翼基部821Bは、拡径部81Bの中心軸O8を中心とする円錐台状に形成されている。翼基部821Bは、鉛直方向Dvの上面が拡径部81Bと接続されている。
【0056】
翼本体822Bは、翼基部821Bの側面から平板状に突出するように形成されている。翼本体822Bは、翼基部821Bの側面に沿うように、鉛直方向Dvにらせん状に延びている。つまり、一つの翼本体822Bは、鉛直方向Dvの下方から上方に向かって捻じれるように形成されている。翼本体822Bは、移動不能な状態で翼基部821B及び拡径部81Bに固定されている。
【0057】
また、旋回流促進部8Bは、旋回ノズル84及び旋回ノズルライン85をさらに有している。旋回ノズル84は、チャンバ5内で吸込口61Bから吸引される砂礫土水に、海水によって旋回成分を付与する。旋回ノズル84は、高圧の海水を噴射する。複数の旋回ノズル84は、複数の噴射ノズル71及び拡径部噴射ノズル76Aとは独立して配置されている。複数の旋回ノズル84は、拡径部81Bの鉛直方向Dvの下端の縁に沿うように環状に離れて配置されている。したがって、複数の旋回ノズル84は、鉛直方向Dvから見た際に、拡径部81Bを囲むように配置されている。つまり、複数の旋回ノズル84は、鉛直方向Dvの上方から見た際に、複数の拡径部噴射ノズル76Aと平行に並んでいる。隣り合う複数の旋回ノズル84は、均等に間隔を開けて配置されている。複数の旋回ノズル84は、鉛直方向Dvの下方から上方に向かって翼本体822Bによって拡径部81B内に形成されたらせん状の流路に沿うように、斜め上方に向かって海水を噴射する。複数の旋回ノズル84は、旋回ノズルライン85に固定されている。
【0058】
旋回ノズルライン85は、複数の旋回ノズル84に海水を供給可能とされている。旋回ノズルライン85は、噴射ライン72から分岐している。旋回ノズルライン85は、鉛直方向Dvから見た際に、拡径部81Bの鉛直方向Dvの下端の縁に沿うように環状に延びている。つまり、旋回ノズルライン85は、鉛直方向Dvの上方から見た際に、複数の拡径部噴射ライン77Aと平行になるように環状に形成されている。旋回ノズルライン85は、噴射ライン72と同程度の径の輸送管である。
【0059】
このような構成によっても、上述した第二実施形態と同様の作用効果を得られる。加えて、変形例では、旋回ノズル84及び旋回ノズルライン85を有している。具体的には、拡径部81Bの周囲では、旋回ノズル84によって、高圧の海水が斜め上方に向かって噴射されている。そのため、拡径部81Bの周辺で生じる旋回流がより強くなる。その結果、強い旋回流によって、砂礫土が一層巻き上げられやすくなる。したがって、海底Fに砂礫土が溜まったままとなってしまうことをより一層抑制し、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しを低減して吸引できる。
【0060】
<第三実施形態>
次に、本開示に係る第三実施形の浚渫装置4Cについて説明する。なお、以下に説明する第三実施形態においては、上記第一実施形態及び第二実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第三実施形態では、浚渫装置4Cは、海底Fの水平でなく凹凸のある不陸形状に追従可能とされている点が異なっている。
【0061】
図6に示すように、第三実施形態の浚渫装置4Cは、チャンバ5を海底Fの不陸に追従可能とされている。具体的には、浚渫装置4Cは、傾斜走行部91と、付勢機構92と、牽引部93と、をさらに備える。
【0062】
傾斜走行部91は、移動不能な状態でチャンバ5に固定されている。傾斜走行部91は、海底Fに接触可能な状態で、鉛直方向Dvと直交する仮想平面に対して傾斜するように、移動可能とされている。したがって、傾斜走行部91は、海底Fに接触した状態で、チャンバ5を支持しながら任意の角度で傾斜するように移動可能とされている。本実施形態の傾斜走行部91は、フレーム部911と、接触部912とを有している。
【0063】
フレーム部911は、チャンバ5の側板56に移動不能な状態で固定されている。フレーム部911は、チャンバ5を第二方向D2で挟み込むよう一対配置されている。フレーム部911は、付勢機構92の付勢力によって変形しない材料によって形成されている。フレーム部911は、海底Fに対して鉛直方向Dvに離れた位置に配置されている。なお、フレーム部911の構造は、チャンバ5を囲む複数の鋼材で形成された枠体であってもよい。
【0064】
接触部912は、海底Fに対して接触した状態で移動可能とされている。本実施形態の接触部912は、フレーム部911に対して回転する複数のタイヤである。したがって、接触部912は、海底Fに対して接触した状態で回転することで、フレーム部911を介してチャンバ5を海底Fに沿って移動させる。なお、接触部912は、海底Fに対して接触した状態で移動可能であれば、他の構成であってもよい。例えば、接触部912は、海底Fに対して接触可能なそり状の部材であってもよい。
【0065】
付勢機構92は、鉛直方向Dvの下方に傾斜走行部91を付勢する。付勢機構92は、掘削機本体2に対して、傾斜走行部91を海底Fに押し付けるように、付勢している。付勢機構92は、傾斜走行部91に対して海底Fから生じる鉛直方向Dvの衝撃を緩和するように減衰する。本実施形態の付勢機構92は、複数のサスペンション921を有している。各サスペンション921は、例えば、コイルスプリングとショックアブソーバとを有している。各サスペンション921は、フレーム部911と掘削機本体2とに接続されている。複数のサスペンション921は、第一方向D1及び第二方向D2に離れて配置されている。したがって、複数のサスペンション921は、異なる四か所で傾斜走行部91を付勢している。
【0066】
牽引部93は、掘削機本体2の移動に伴って、傾斜走行部91を第一方向D1に移動させる。牽引部93は、掘削機本体2及びフレーム部911に対して回転可能に接続されている。
【0067】
また、本実施形態では、移送管62の一部は、可撓性の高く、任意の方向に屈曲可能なフレキシブルチューブ65を有している。フレキシブルチューブ65は、掘削機本体2に対して鉛直方向Dvの下方に配置されている。フレキシブルチューブ65は、例えば、ベローズ(蛇腹)構造を有している。
【0068】
このような浚渫装置4Cによれば、掘削機本体2から複数のサスペンション921を介して傾斜走行部91が掘削機本体2に対して支持されている。つまり、傾斜走行部91は、複数のサスペンション921によって、掘削機本体2に対して鉛直方向Dvに揺動自在な状態で接続されている。そのため、不陸形状を有することで、海底Fが水平ではなく傾斜した状態であっても、海底Fに接触している接触部912を介してフレーム部911は、複数のサスペンション921によって、揺動しつつ海底Fに向かって付勢された状態を維持される。そのため、傾斜走行部91のフレーム部911に固定されているチャンバ5を、海底Fと平行な姿勢で維持させることができる。これにより、どのような不陸形状の海底Fに対しても、海底Fに対して安定した姿勢でチャンバ5を配置させ続けることができる。
【0069】
<第三実施形態の変形例>
なお、傾斜走行部及び付勢機構は、チャンバ5を海底Fの不陸形状に追従させることが可能であれば、どのような構成であってもよい。例えば、第三実施形態の変形例として、傾斜走行部91D及び付勢機構92Dは、第三実施形態とは異なる形状であってもよい。
【0070】
図7及び図8に示すように、第三実施形態の変形例の浚渫装置4Dは、傾斜走行部91Dと、付勢機構92Dと、をさらに備える。本変形例の傾斜走行部91D及び付勢機構92Dは、チャンバ5に対して独立して一対配置されている。傾斜走行部91D及び付勢機構92Dは、チャンバ5を第二方向D2で挟み込むよう一対配置されている。傾斜走行部91D及び付勢機構92Dは、第二方向D2の片側で、チャンバ5を海底Fの不陸形状に追従させるように、独立して可動する。
【0071】
一対の傾斜走行部91Dは、掘削機本体2に対してチャンバ5を独立して支持している。本変形例の傾斜走行部91Dは、支持部915と、アーム部916と、支持固定部917と、接触部912Dとを有している。
【0072】
支持部915は、接触部912Dを第二方向D2に延びる仮想軸周りに回転可能に支持している。
【0073】
アーム部916は、掘削機本体2から第一方向D1に延びている。アーム部916は、掘削機本体2の移動に伴って、支持部915を第一方向D1に移動させる。アーム部916の基端は、第二方向D2に延びる仮想軸周りに回転可能に掘削機本体2に接続されている。アーム部916の基端は、第一方向D1において、チャンバ5に対して前方D1fに位置している。アーム部916の先端は、第二方向D2に延びる仮想軸周りに回転可能に支持部915を支持している。アーム部916の先端は、第一方向D1において、チャンバ5に対して後方D1rに位置している。
【0074】
支持固定部917は、支持部915とチャンバ5とを接続している。支持固定部917は、支持部915に対してチャンバ5が、第一方向D1から見た際に、第二方向D2に傾くように移動可能な状態で支持している。具体的には、本実施形態では、支持固定部917は、支持部915に移動不能な状態で固定されている。支持固定部917は、側板56に第一方向D1に延びる仮想軸周りに回転可能な状態で接続されている。支持固定部917は、第二方向D2に延びている。
【0075】
接触部912Dは、海底Fに対して接触した状態で移動可能とされている。本実施形態の接触部912Dは、支持部915に対して回転する複数のタイヤである。接触部912Dは、支持部915に対して、第一方向D1に離れて二つ配置されている。したがって、接触部912Dは、海底Fに対して接触した状態で回転することで、支持部915を介してチャンバ5を海底Fに沿って移動させる。
【0076】
付勢機構92Dは、掘削機本体2に対して、傾斜走行部91Dを海底Fに押し付けるように、付勢している。付勢機構92Dは、傾斜走行部91Dのそれぞれを独立して付勢している。付勢機構92Dは、傾斜走行部91Dに対して海底Fから生じる鉛直方向Dvの衝撃を緩和するように減衰する。本実施形態の付勢機構92Dは、油圧シリンダ922及びスプリングダンパ923を有している。
【0077】
油圧シリンダ922は、内部にオイルが封入されている。油圧シリンダ922は、アーム部916から鉛直方向Dvの上方に延びている。油圧シリンダ922は、アーム部916とスプリングダンパ923とを接続している。
【0078】
スプリングダンパ923は、油圧シリンダ922に対して鉛直方向Dvの上方に配置されている。スプリングダンパ923は、油圧シリンダ922と掘削機本体2とを接続している。つまり、スプリングダンパ923は、掘削機本体2とアーム部916との間で、油圧シリンダ922に対して、直列に接続されている。
【0079】
また、本変形例では、チャンバ5は、チャンバ支持部521と、チャンバ接触部522とをさらに有している。チャンバ支持部521は、後板57から第一方向D1の後方D1rへ延びている。チャンバ支持部521は、後板57に対して移動不能な状態で固定されている。チャンバ接触部522は、海底Fに対して接触した状態で移動可能とされている。チャンバ接触部522は、チャンバ支持部521に対して回転するタイヤである。したがって、チャンバ接触部522は、接触部912Dと同じ部材であってもよい。チャンバ接触部522は、海底Fに対して接触した状態で回転することで、チャンバ支持部521を介してチャンバ5を海底Fに沿って移動可能な状態で支持している。
【0080】
このような変形例の浚渫装置4Dによれば、第一方向D1の前方D1fのみが鉛直方向Dvの上方に位置するように傾斜した海底Fを移動する場合、浚渫装置4Dは、その重心を通って第二方向D2に延びる仮想軸周りに回転するようなピッチ動作を行いながら移動する。具体的には、支持部915が掘削機本体2から離れるように、鉛直方向Dvの下方に向かって、アーム部916が回転する。その際、アーム部916に接続されている油圧シリンダ922及びスプリングダンパ923が伸長される。その結果、油圧シリンダ922及びスプリングダンパ923によって、アーム部916には、掘削機本体2から海底Fに向かって押し付けるように力が働く。そのため、支持部915を介してアーム部916と接続されている接触部912Dも海底Fに向かって押し付けられる。また、支持固定部917を介して支持部915と接続されているチャンバ5も海底Fに向かって押し付けられる。これにより、浚渫装置4Dは、ピッチ動作を行ってチャンバ5を海底Fに向かって押し付けている。
【0081】
なお、上述した場合と逆に、海底Fが第一方向D1の後方D1rが鉛直方向Dvの上方に位置するように傾斜している場合についての説明は省略する。ただし、その際、浚渫装置4Dの各構成は、上記説明とは逆方向に移動する。
【0082】
また、第二方向D2の一方のみが鉛直方向Dvの上方に位置するように傾斜した海底Fを移動する場合、浚渫装置4Dは、その重心を通って第一方向D1に延びる仮想軸周りに回転するようなロール動作を行いながら移動する。具体的には、チャンバ5に対して第二方向D2の一方に位置する支持部915が掘削機本体2に近づくように、鉛直方向Dvの上方に向かって、アーム部916が回転する。その際、アーム部916に接続されている油圧シリンダ922及びスプリングダンパ923は、圧縮される。つまり、第二方向D2に離れて配置された別のアーム部916は、逆向きに回転する。これにより、第二方向D2に離れて配置された別のアーム部916の先端の位置は、鉛直方向Dvでずれた状態となる。その結果、第二方向D2に離れた配置された一対の支持部915は、鉛直方向Dvでずれた状態で、海底Fに向かって押し付けられる。また、支持固定部917を介して支持部915と接続されているチャンバ5も海底Fと平行に傾いた状態で、海底Fに向かって押し付けられる。これにより、浚渫装置4Dは、ロール動作を行ってチャンバ5を海底Fに向かって押し付けている。
【0083】
なお、上述した場合と逆に、海底Fが第二方向D2の他方が鉛直方向Dvの上方に位置するように傾斜している場合についての説明は省略する。ただし、その際、浚渫装置4Dの各構成は、上記説明とは逆方向に移動する。
【0084】
このように、不陸形状の海底Fに対しても、ピッチ動作やロール動作を行いながら、海底Fに対して安定した姿勢でチャンバ5を配置させ続けることができる。
【0085】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0086】
例えば、チャンバ5は、底部開口50及び前部開口51を有していれば、上述した構造に限定されるものではない。チャンバ5は、一対の側板56同士が第一方向D1の後方D1rで繋がっていてもよい。つまり、チャンバ5は、後板57を有していなくてもよい。さらに、チャンバ5は、幕部59を有していなくてもよい。
【0087】
また、側板56及び後板57は、板本体581及びカバー部582を有する構造に限定されるものではない。例えば、側板56及び後板57は、一つの材料のみで形成されていてもよい。また、側板56及び後板57は、それぞれ違う構成で形成されていてもよい。
【0088】
また、吸引装置6、6Cの構成については、一例であって、チャンバ5内から砂礫土水を吸い上げ可能であれば、実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、吸引装置6、6Cのポンプは、浚渫装置4、4A、4B、4Cに設置されてもよいし、移送管62の途中であって浚渫装置4、4A、4B、4Cと作業船等との間に設置されてもよい。
【0089】
また、噴射装置7、7Aの構成については、一例であって、チャンバ5内で海底Fに向かって鉛直方向Dvの下方に高圧の液体を噴射することが可能であれば、実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、噴射装置7、7Aは、一つの噴射ライン72のみを有する構造であってもよい。また、噴射ノズル71は、鉛直方向Dvに真っすぐ海水を噴射する構造に限定されるものではない。例えば、噴射ノズル71は、第二方向D2において、吸込口61を向くように内側に角度をつけて配置されてもよい。このように噴射ノズル71が、側板56から離れて吸込口61に近づくように海水を噴射することで、吸込口61の近傍であるチャンバ5の中央付近に砂礫土を集めやすくなる。逆に、噴射ノズル71は、第二方向D2において、側板56を向くように外側に角度をつけて配置されてもよい。このように噴射ノズル71が、側板56に近づくように海水を噴射することで、側板56の近傍の砂礫土を側板56にぶつけてチャンバ5の中央付近に砂礫土を集めやすくなる。そのため、側板56の近傍での砂礫土の取り残しを抑えることができる。
【0090】
また、掘削装置3は、一つの掘削機本体2に対して一つのみが配置されていてもよく、複数配置されていてもよい。その際、浚渫装置4、4A、4B、4Cは、掘削装置3と同数配置されることが好ましい。
【0091】
<付記>
各実施形態に記載の浚渫装置4、4A、4B、4C及び海底鉱床掘削機1は、例えば以下のように把握される。
【0092】
(1)第1の態様に係る浚渫装置4、4A、4B、4Cは、鉛直方向Dvと交差する第一方向D1の一方へ移動可能とされ、海底を向く底部開口50及び前記第一方向D1の一方を向く前部開口51が形成されたチャンバ5と、前記チャンバ5内に配置された吸込口61、61A、61Bを有し、前記チャンバ5内の砂礫土水を前記吸込口61、61A、61Bから吸引する吸引装置6、6Cと、前記チャンバ5内で前記海底に向かって液体を噴射する噴射装置7、7Aと、を備え、前記チャンバ5は、前記海底に鉛直方向Dvに離れた位置で対向するように配置される天板55と、前記天板55から前記海底に向かって前記鉛直方向Dvの下方に延びて、前記前部開口51から離れるにしたがって間隔が小さくなるように配置された一対の側板56とを有し、前記噴射装置7、7Aは、一対の前記側板56のそれぞれに沿うように前記第一方向D1に互いに離れて配置された複数の噴射ノズル71を有している。
【0093】
この浚渫装置4、4A、4B、4Cでは、掘削された砂礫土を、前部開口51及び底部開口50からチャンバ5の内部に回収する。さらに、チャンバ5内に回収した砂礫土は、複数の噴射ノズル71から海底Fに向かって噴射された海水によって巻き上げられる。その際、複数の噴射ノズル71は一対の側板56に沿うように配置されている。そのため、複数の噴射ノズル71によって巻き上げられた砂礫土は、側板56に接触して、チャンバ5の中央付近に集まりやすくなる。このような状態で、吸込口61、61A、61Bからチャンバ5内の砂礫土水を吸引することで、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しを低減して吸引できる。したがって、掘削された海底資源の取り残しを低減して効率良く回収することができる。
【0094】
(2)第2の態様に係る浚渫装置4、4A、4B、4Cは、(1)の浚渫装置4、4A、4B、4Cであって、前記チャンバ5は、前記鉛直方向Dvから見た際に、前記第一方向D1において前記前部開口51の位置が前記鉛直方向Dv及び前記第一方向D1と交差する第二方向D2で最も広く形成されている。
【0095】
このような構成によれば、チャンバ5は、第二方向D2において前部開口51で最も広くなっている。そのため、前部開口51から砂礫土を効率良くチャンバ5内に回収できる。
【0096】
(3)第3の態様に係る浚渫装置4、4A、4B、4Cは、(1)又は(2)の浚渫装置4、4A、4B、4Cであって、複数の前記噴射ノズル71は、前記鉛直方向Dvから見た際に、前記鉛直方向Dv及び前記第一方向D1と交差する第二方向D2において、前記吸込口61、61A、61Bと前記側板56との間に配置されている。
【0097】
このような構成によれば、複数の噴射ノズル71によって巻き上げられた砂礫土は、噴射ノズル71に対して第二方向D2の一方では側板56に接触しやすくなり、第二方向D2の他方では吸込口61、61A、61Bに近づくこととなる。さらに、側板56に接触した砂礫土は、跳ね返ることで第二方向D2の他方では吸込口61、61A、61Bに近づくこととなる。つまり、複数の噴射ノズル71によって巻き上げられた砂礫土は、チャンバ5内で拡散することなく、チャンバ5の吸込口61、61A、61B付近により集まりやすくなる。したがって、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しをより低減して吸引できる。
【0098】
(4)第4の態様に係る浚渫装置4、4A、4B、4Cは、(1)から(3)のいずれか一つの浚渫装置4、4A、4B、4Cであって、一対の前記側板56は、前記天板55と接続されている板本体581と、前記板本体581に対して前記鉛直方向Dvの下方に接続され、前記板本体581よりも軟質な材料又は構造で形成されたカバー部582と、を有する。
【0099】
このような構成によれば、板本体581によって、側板56としての強度を確保できる。加えて、海底に接触しやすいカバー部582が軟質な材料又は構造であることで、側板56が海底に接触しても、海底の形状に追従するように、変形しながら覆うことができる。つまり、大きなこぶのような不陸形状のある海底や、砂礫土中に大きな鉱石を、チャンバ5の密閉性を確保しつつ、カバー部582を変形させてやり過ごすことができる。したがって、チャンバ5内への砂礫土の回収効率を維持しつつ、側板56の損傷を抑えることができる。
【0100】
(5)第5の態様に係る浚渫装置4、4A、4B、4Cは、(1)から(4)のいずれか一つの浚渫装置4、4A、4B、4Cであって、前記噴射装置7、7Aは、前記チャンバ5の外部の海水を前記液体として噴射する。
【0101】
このような構成によれば、チャンバ5内で噴射するための液体を別途用意する必要がない。
【0102】
(6)第6の態様に係る浚渫装置4A、4Bは、(1)から(5)のいずれか一つの浚渫装置4A、4Bであって、前記チャンバ5内で前記吸込口61A、61Bから吸引される前記砂礫土水に旋回成分を付与する旋回流促進部8、8Bを備える。
【0103】
このような構成によれば、吸込口61A、61Bから砂礫土水を吸い込んでいる間には、旋回流が生じた状態となる。その結果、砂礫土がより巻き上げられやすくなる。したがって、海底に砂礫土が溜まったままとなってしまうことを抑制し、チャンバ5内に回収した砂礫土の取り残しを低減して吸引できる。したがって、掘削された海底資源の取り残しを低減して一層効率良く回収することができる。
【0104】
(7)第7の態様に係る浚渫装置4Cは、(1)から(6)のいずれか一つの浚渫装置4Cであって、前記チャンバ5に固定され、前記海底に接触可能な状態で、前記鉛直方向Dvと直交する仮想平面に対して傾斜するように、移動可能とされている傾斜走行部91と、前記鉛直方向Dvの下方に前記傾斜走行部91を付勢する付勢機構92とを備える。
【0105】
このような構成によれば、不陸を有することで、海底が水平ではなく傾斜した状態であっても、海底に接触している傾斜走行部91は、付勢機によって、揺動しつつ海底に向かって付勢された状態を維持される。そのため、傾斜走行部91に固定されているチャンバ5を、海底と平行な姿勢で維持させることができる。これにより、どのような不陸形状の海底Fに対しても、海底に対して安定した姿勢でチャンバ5を配置させ続けることができる。
【0106】
(8)第8の態様に係る海底鉱床掘削機1は、(1)から(7)のいずれか一つの浚渫装置4、4A、4B、4Cであって、浚渫装置4、4A、4B、4Cと、前記チャンバ5に対して前記鉛直方向Dvの上方に配置され、前記第一方向D1に走行可能な掘削機本体2と、前記掘削機本体2に対して前記鉛直方向Dvの下方かつ前記チャンバ5に対して走行方向の前方D1fに配置された掘削装置3と備える。
【符号の説明】
【0107】
1…海底鉱床掘削機
2…掘削機本体
3…掘削装置
31…回転ドラム
32…ビット
O…軸線
4、4A、4B、4C、4D…浚渫装置
5…チャンバ
50…底部開口
51…前部開口
55…天板
56…側板
57…後板
581…板本体
582…カバー部
59…幕部
S…空間
6、6C…吸引装置
61、61A、61B…吸込口
62…移送管
7、7A…噴射装置
71…噴射ノズル
72…噴射ライン
721…第一噴射ライン
722…第二噴射ライン
73…噴射ポンプ
8、8B…旋回流促進部
81、81B…拡径部
O8…中心軸
82、82B…旋回翼部
821、821B…翼基部
822、822B…翼本体
76A…拡径部噴射ノズル
77A…拡径部噴射ライン
84…旋回ノズル
85…旋回ノズルライン
91、91D…傾斜走行部
911…フレーム部
912、912D…接触部
915…支持部
916…アーム部
917…支持固定部
92、92D…付勢機構
921…サスペンション
922…油圧シリンダ
923…スプリングダンパ
93…牽引部
65…フレキシブルチューブ
D1…第一方向
D1f…前方
D1r…後方
D2…第二方向
Dv…鉛直方向
F…海底
図1
図2
図3
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図8