(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006006
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】内袋付容器詰め飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20250109BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20250109BHJP
B65D 25/48 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 T
B65D77/04 B
B65D25/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106512
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 知久
(72)【発明者】
【氏名】志村 美樹
【テーマコード(参考)】
3E062
3E067
4B117
【Fターム(参考)】
3E062AA06
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC01
3E062AC02
3E062AC03
3E062AC06
3E062BB06
3E062BB09
3E062KA04
3E062KB02
3E062KB15
3E062KC01
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA03C
3E067BA12B
3E067BB08C
3E067BB11C
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067EA17
3E067EB32
3E067FA04
3E067GA16
3E067GD10
4B117LC03
4B117LC14
4B117LC15
4B117LE10
4B117LK04
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】内袋内の酸素濃度を十分に低下させ且つ短時間で充填可能な、内袋付容器詰め飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】この内袋付容器詰め飲料の製造方法は、内袋30と外装容器20とを含む内袋付容器10の内袋30に飲料Dが充填された内袋付容器詰め飲料を製造する方法であって、内袋30内から酸素Xgを吸引する酸素吸引工程Axと、酸素吸引工程Axの後に、内袋30内に飲料Dを充填する飲料充填工程Fdと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内袋と外装容器とを含む内袋付容器の内袋に飲料が充填された内袋付容器詰め飲料を製造する方法であって、
前記内袋内から酸素を吸引する酸素吸引工程と、
前記酸素吸引工程の後に、前記内袋内に飲料を充填する飲料充填工程と、を含む、
ことを特徴とする内袋付容器詰め飲料の製造方法。
【請求項2】
前記酸素吸引工程の後に、前記内袋内に不活性ガスを流入させてカウンタープレッシャを内袋内にかける内袋内圧力印可工程を含み、
前記飲料充填工程において、前記内袋内の不活性ガスを排出しながら前記内袋内に飲料を充填する、請求項1に記載の内袋付容器詰め飲料の製造方法。
【請求項3】
前記飲料は、二酸化炭素を含有する飲料であり、
前記不活性ガスは、二酸化炭素である、請求項2に記載の内袋付容器詰め飲料の製造方法。
【請求項4】
前記酸素吸引工程の後に、前記内袋と前記外装容器との間にガスを流入させてカウンタープレッシャを前記外装容器内にかける外装容器内圧力印可工程を含み、
前記飲料充填工程において、前記内袋と前記外装容器との間のガスを排出しながら前記内袋内に飲料を充填する、請求項1に記載の内袋付容器詰め飲料の製造方法。
【請求項5】
前記ガスは、空気である、請求項4に記載の内袋付容器詰め飲料の製造方法。
【請求項6】
製造後の前記飲料中の溶存酸素量が、150μg/l以下である、請求項1に記載の内袋付容器詰め飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内袋と外装容器とを含む内袋付容器の内袋に飲料が充填された内袋付容器詰め飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビール等の飲料を輸送、保管するための容器として、金属製の樽が多く用いられている。従来の樽を用いた飲料注出方式は、樽内に二酸化炭素を流入させて飲料に圧力をかけることで飲料を樽から注出する。
これに対し、近年では、KeyKeg(Lightweight Containers社製)に代表されるような内袋付容器も利用されており、内袋付容器の開発も進められている(例えば特許文献1参照)。
この種の内袋付容器では、外装容器と飲料が充填された内袋との間に空気を流入させて、内袋に周囲から圧力をかけることで飲料を注出する。そのため、内袋付容器を用いた飲料注出方式によれば、注出用の二酸化炭素が不要であること、外装容器の洗浄が不要であること、などの利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、この種の内袋付容器の内袋に飲料を充填する場合、例えば、事前に内袋と外装容器との間に空気を入れて外装容器内の圧力を高めた後に、内袋を開放することで内袋内の空気(酸素)を排気できる。その後、一定の圧力となるように、内袋と外装容器との間の空気を排出しながら内袋内に飲料を充填する。
しかしながら、上記の飲料充填方法では、一度の排気工程のみによっては、内袋内の空気(酸素)を十分に排出できず、内袋内に充填した飲料の品質が劣化する懸念がある。また、上記の飲料充填方法において、内袋内の空気(酸素)を、飲料の品質保持に十分な酸素濃度まで低下させようとすれば、2~3回程度、同様の排気工程を行う必要があり、内袋内への飲料の充填に時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、内袋内の酸素濃度を十分に低下させ且つ短時間で内袋内に飲料を充填可能な、内袋付容器詰め飲料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、内袋内に飲料を充填する前に、内袋内から空気を吸引することで、短時間で内袋内の酸素濃度を低下可能なことを見出した。
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法は、内袋と外装容器とを含む内袋付容器の内袋に飲料が充填された内袋付容器詰め飲料を製造する方法であって、前記内袋内から酸素を吸引する酸素吸引工程と、前記酸素吸引工程の後に、前記内袋内に飲料を充填する飲料充填工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、短時間で溶存酸素量の少ない内袋付容器詰め飲料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一態様に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法に用いる、内袋付容器の一実施形態を説明する模式的断面図であり、同図(a)は内袋付容器全体を示し、(b)は外装容器、(c)は内袋、(d)は充填用蓋をそれぞれ軸線に沿った断面にて示している。
【
図2】本発明の一態様に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法の第一実施形態を説明する図(a)~(e)である。
【
図3】本発明の一態様に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法の第二実施形態を説明する図(a)~(e)である。
【
図4】比較例1に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法を説明する図(a)~(e)である。
【
図5】比較例2に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法を説明する図(a)~(d)である。
【
図6】比較例3に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法を説明する図(a)~(e)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0010】
[内袋付容器]
まず、各実施形態の内袋付容器詰め飲料の製造に用いる内袋付容器の一実施形態について
図1を参照しつつ説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態の内袋付容器10は、外装容器20と、外装容器20の内部に収容される内袋30と、充填に用いられ、外装容器20および内袋30の上部開口を覆うように装着される充填用蓋40と、を含んで構成される。内袋付容器10の容量としては、例えば、3L、5Lの他、8L、10L等の容量を設定できる。
【0011】
本実施形態の外装容器20は、金属(例えばアルミニウム)やガラス乃至は硬質プラスチック等からなる比較的堅牢な剛性容器である。
外装容器20は、同図(b)に示すように、円盤状(平面視)をなす底面21と、底面21の周囲から上方に向けて中空円筒状に伸びる側壁部22と、側壁部22の環状上縁部から上方に縮径する円錐台部23と、円錐台部23の環状上縁部から上方に張り出す小径円筒部24と、小径円筒部24の上縁部から側方に環状に張り出すフランジ部25と、を有する。
【0012】
本実施形態の内袋30は、同図(c)に示すように、袋体31と、袋体31の上部開口部に一体に固着された円筒状の口金部32と、を有する。本実施形態の袋体31は、可撓性並びにガスバリア性(及び遮光性)を有する透明ないし半透明の樹脂フィルム等から袋状に構成されており、外装容器20内での展伸時には、外装容器20の内面に倣った密着形状まで展伸可能に形成されている。
内袋30の口金部32は、硬質プラスチック及びエラストマー(シール部)等からなる比較的堅牢な部品であって、円筒状の下端フランジ部が、袋体31の上部開口部に隙間なく固着されるとともに、必要なシール機能がフランジ部外面に設けられている。内袋30は、外装容器20内に装着時には、外装容器20の小径円筒部24の内周面に、これに対応する外周部分が所期の位置に保持される。
【0013】
充填用蓋40は、内袋付容器詰め飲料の製造時にのみ用いられるものであり、飲料を充填後は、定量充填装置から内袋付容器10がはずされてキャッパに転送され、流通用蓋(不図示)に置換される。
本実施形態の充填用蓋40は、同図(d)に示すように、円盤状の蓋本体41を有し、蓋本体41の下面には、外装容器20のフランジ部25にねじによって着脱可能な凹円環状部44が形成されている。
また、蓋本体41の中央上部には、上方に張り出す充填用プラグ42が設けられるとともに、蓋本体41の中央下部には、内袋30の口金部32に着脱可能且つ連通可能な連結プラグ43が下方に向けて張り出している。
【0014】
充填用プラグ42は二重管構造を有し、充填用プラグ42の装着時に、二重管の内管部が内袋30の内部に連通するように構成される。また、充填用プラグ42は、二重管の外管部が内袋30の外側と外装容器20の内部との間に連通するように構成される。充填用プラグ42の上部は、周知のフィラーボウルを含む定量充填装置(不図示)に配管を介して接続され、定量充填装置に内袋付容器10がセットされる。
さらに、蓋本体41の上部には、充填用プラグ42の側部に、補助プラグ45が付設されている。補助プラグ45は、自身内部の流路を開閉可能な開閉弁を有する。補助プラグ45の下部開口が、内袋30の外側と外装容器20の内部との間に連通するように設けられる。これにより、補助プラグ45の下部開口から、内袋30の外側と外装容器20の内部との間に対して、必要な吸気および脱気が所期のタイミングにて可能になっている。
【0015】
[第一実施形態(方法A)]
次に、第一実施形態の内袋付容器詰め飲料の製造方法について
図2を参照しつつ説明する。本実施形態の内袋付容器詰め飲料の製造方法は、上述した、内袋30と外装容器20とを含む内袋付容器10に対し、内袋30の内部に飲料Dを充填して内袋付容器詰め飲料を製造するものである。
【0016】
まず、
図2(a)に示すように、充填用蓋40の連結プラグ43に、内袋30の口金部32を装着し、その内袋30の袋体31を垂下した状態で外装容器20の上部開口から外装容器20の内部に挿入する。その後、外装容器20上端のフランジ部25に蓋本体41の凹円環状部44を嵌め合わせ、充填用蓋40を外装容器20上部に装着して上記内袋付容器10を組み立て、組み立てられた内袋付容器10が定量充填装置にセットされる。
このとき、同図に示すように、垂下状態の袋体31内には、空気(酸素)Xgが入った状態にある。これに対し、第一実施形態では、同図(b)に示すように、二重管構造の充填用プラグ42の内管部42uに減圧ポンプ(不図示)を接続して、内袋30内から減圧ポンプによって空気(酸素)Xgを吸引する(酸素吸引工程Ax)。内袋30の外側には大気圧が掛かっている。
【0017】
次いで、同図(c)に示すように、上記酸素吸引工程Axの後に、定量充填装置の充填バルブが開いて、内袋付容器10の内袋30内に、定量充填装置のフィラーボウル(製品液タンク)内の二酸化炭素(若しくはその他の不活性ガス(窒素、アルゴンなど、以下同じ))Ngが流入され、内袋30内を二酸化炭素(不活性ガス)Ngで満たして膨らませる(内袋内圧力印可工程Pan)。次いで、同図(d)に示すように、上記定量充填装置のフィラーボウル(製品液タンク)内の圧力又は送液圧と同等の圧力をカウンタープレッシャとして内袋30内の二酸化炭素(不活性ガス)Ngによって印加しつつ(内袋内圧力印可工程Pan)、定量充填装置側の飲料Dの供給バルブが開いて飲料Dが内袋30内に入り、内袋30内の二酸化炭素(不活性ガス)Ngは充填バルブを通してフィラーボウルに移動する。
【0018】
これにより、同図(d)~(e)に示すように、内袋30内の二酸化炭素(不活性ガス)Ngを排出しながら内袋30内に飲料Dが充填される(飲料充填工程Fd)。なお、飲料Dは炭酸ガス(二酸化炭素)を含有する清涼飲料水又はアルコール飲料(発泡飲料)であって、本実施形態ではビール飲料である。
第一実施形態に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法であれば、酸素吸引工程Axにおいて内袋30内から減圧ポンプによって空気(酸素)Xgを吸引するので、短時間で溶存酸素Xg量の少ない内袋付容器詰め飲料を製造できる。
【0019】
[第二実施形態(方法B)]
次に、第二実施形態の内袋付容器詰め飲料の製造方法について
図3を参照しつつ説明する。
まず、上記第一実施形態同様にして、
図3(a)に示すように、上記内袋付容器10を組み立てる。このとき、内袋30内には、空気(酸素)Xgが入った状態にある。そのため、第二実施形態においても、上記第一実施形態同様に、
図3(b)に示すように、内袋30内から減圧ポンプによって空気(酸素)Xgを吸引する(酸素吸引工程Ax)。
ここで、上記第一実施形態では、内袋30内に二酸化炭素(不活性ガス)Ngを流入させて内袋30を膨らませた後に(内袋内圧力印可工程Pan)、内袋30内の二酸化炭素(不活性ガス)Ngを排出しつつ内袋30内に飲料Dを充填する(内袋内圧力印可工程Pan~飲料充填工程Fd)例を示した。
【0020】
これに対し、第二実施形態では、外装容器20と内袋30との間に、空気または二酸化炭素などのガスNgを充填し、カウンタープレッシャとして、外装容器20内にて空気または二酸化炭素などのガスNgで背圧を掛けつつ排出して内袋30内に飲料Dを充填する点が相違する(外装容器内圧力印可工程Pas)。
つまり、第二実施形態では、上記酸素吸引工程Axの後に、同図(c)に示すように、内袋30の外側と外装容器20の内部との間に、ガス(空気若しくは二酸化炭素などのガス)を流入する(外装容器内圧力印可工程Pas)。第二実施形態の例では、飲料に直接接触しないため基本的には空気を用い、補助プラグ45から空気を導入する。
【0021】
次いで、充填用プラグ42の内管部42uに対し、配管を介してフィラーボウル(不図示)に接続し、同図(d)に示すように、フィラーボウル内の圧力又は送液圧と同等の圧力をカウンタープレッシャとして印加しつつ、内袋30内に飲料Dを充填する(飲料充填工程Fd)。
このように、第二実施形態では、飲料充填工程Fdにおいて、補助プラグ45で導入した外装容器20内の二酸化炭素(不活性ガス)Ngによって背圧を掛けつつ内袋30内に飲料Dを充填する(外装容器内圧力印可工程Pas~飲料充填工程Fd)。これにより、同図(e)に示すように、内袋30内に飲料Dが充填される。
第二実施形態に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法であれば、上記第一実施形態同様、酸素吸引工程Axにおいて内袋30内から減圧ポンプによって空気(酸素)Xgを吸引するので、短時間で溶存酸素Xg量の少ない内袋付容器詰め飲料を製造できる。
【0022】
次に、実施形態の内袋付容器詰め飲料の製造方法の作用効果について説明する。
図2および
図3に示したように、第一および第二実施形態は、内袋30内から酸素Xgを吸引する酸素吸引工程Axと、酸素吸引工程Axの後に、内袋30内に飲料Dを充填する飲料充填工程Fdと、を含む内袋付容器詰め飲料の製造方法である。
これにより、第一および第二実施形態に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法によれば、酸素吸引工程Axにおいて内袋30内から減圧ポンプによって空気(酸素)Xgを吸引するので、短時間で溶存酸素Xg量の少ない内袋付容器詰め飲料を製造できる[発明1(方法A、B)]。
【0023】
特に、第一実施形態では、内袋30内からの酸素吸引工程Axの後に、内袋30内に不活性ガスNgを流入させて、フィラーボウル内の圧力又は送液圧と同等の圧力を内袋30内にかける内袋内圧力印可工程Panを含み、続く飲料充填工程Fdにおいて、内袋30内の不活性ガスNgを排出しつつ内袋30内に飲料Dを充填する[発明2(方法A)]。
そのため、第一実施形態に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法であれば、飲料Dとして、ビール等の炭酸飲料を泡立てることを防止または抑制しつつ内袋30内に充填する上で好適である。さらに、第一実施形態においては、飲料Dは二酸化炭素を含有する飲料であり、不活性ガスは二酸化炭素なので、ビール飲料に適用する上で好適である[発明3(方法A)]。
【0024】
また、第二実施形態では、
図3に示したように、酸素吸引工程Axの後に、内袋30と外装容器20との間にガス(空気Xg若しくは二酸化炭素Ng)を流入させて、フィラーボウル内の圧力又は送液圧と同等の圧力をかける外装容器内圧力印可工程Pasを含み、飲料充填工程Fdにおいて、内袋30と外装容器20との間のガスを排出しつつ内袋30内に飲料Dを充填する。
【0025】
つまり、第二実施形態では、飲料充填工程Fdにおいて、外装容器20内のガス(空気Xg若しくは二酸化炭素Ng)によって背圧を掛けつつ内袋30内に飲料Dを充填する(外装容器内圧力印可工程Pas)ので、上記第一実施形態同様、ビール等の炭酸飲料を泡立てることを防止または抑制しつつ、短時間で溶存酸素Xg量の少ない内袋付容器詰め飲料を製造できる[発明4(方法B)]。
特に、第二実施形態において、背圧を掛けるための外装容器20内のガスとして、空気Xgを用いることにより、二酸化炭素Ngを用いた場合と比較して、一層の低コストで内袋付容器詰め飲料を製造できる[発明5(方法B)]。
【0026】
次に、上記実施形態で説明した内袋付容器詰め飲料の製造方法について、実施例及び比較例に基づき説明する。ここでは、内袋30と外装容器20とを含んで構成される内袋付容器10として、容量が3リットルのものを用意した。
以下の実施例及び比較例に記載の方法で、飲料Dとしてビールを内袋30内に充填し、充填に要した時間、および、製造した内袋付容器詰め飲料における飲料中の溶存酸素量を測定した。溶存酸素量は、内袋付容器10から飲料Dを採取し、ガスアナライザ(Hach社製Orbisphere 510及びOrbisphere 31120A)を用いて測定した。
【0027】
〈実施例1(方法A)〉
実施例1は、
図2に示した、上記第一実施形態に対応する実施例である。
実施例1では、上記第一実施形態における酸素吸引工程Axにおいて、内袋付容器10の内袋30内の空気Xgを減圧ポンプ(-0.06MPa、1s)で吸引した(
図2(b))。その後に、内袋30内に炭酸ガスNgを噴射して、フィラーボウル内の圧力と同等の圧力をカウンタープレッシャとして内袋30内に印加した(
図2(c))。その後、内袋30内の炭酸ガスNgを排出しつつ内袋30内に飲料Dとしてビール飲料を充填した(
図2(d)-(e))。
【0028】
〈実施例2(方法B)〉
実施例2は、
図3に示した、上記第二実施形態に対応する実施例である。
実施例2では、上記第二実施形態における酸素吸引工程Axにおいて、内袋付容器10の内袋30内の空気Xgを減圧ポンプ(-0.06MPa、15s)で吸引した(
図3(b))。その後に、内袋30と外装容器20との間に空気Xgを入れて、不図示のフィラーボウル内の圧力と同等の圧力をカウンタープレッシャとして印加した(
図3(c))。その後、内袋30と外装容器20との間の空気Xgを排出しながら内袋30内に飲料Dとしてビール飲料を充填した(
図3(d)-(e))。
【0029】
〈比較例1(従来技術)〉
図4(a)~(e)に比較例1による内袋付容器詰め飲料の製造方法を示す。
比較例1では、まず、同図(a)に示すように、内袋付容器10の内袋30と外装容器20との間に空気Xgを入れて外装容器20内の圧力を高めた。次いで、同図(b)に示すように、内袋30の開口部を開放することで内袋30内の空気Xgを排出した。
その後、同図(c)に示すように、内袋30と外装容器20との間にさらに空気Xgを入れて、フィラーボウル内の圧力と同等の圧力をカウンタープレッシャとして内袋30と外装容器20との間にかけた。その後、同図(d)~(e)に示すように、内袋30と外装容器20との間の空気Xgを排出しつつ内袋30内に飲料Dとしてビール飲料を充填した。
【0030】
〈比較例2(吸引加圧同時)〉
図5(a)~(d)に比較例2による内袋付容器詰め飲料の製造方法を示す。
比較例2では、上記第一ないし第二実施形態での初期設置状態(同図(a))からはじめて、同図(b)に示すように、内袋付容器10の内袋30内の空気Xgを減圧ポンプ(-0.06MPa、15s)で吸引すると同時に、内袋30と外装容器20との間に空気Xgを入れて、フィラーボウル内の圧力と同等の圧力をかけた。その後、同図(c)~(d)に示すように、内袋30と外装容器20との間の空気Xgを排出しつつ内袋30内に飲料Dとしてビール飲料を充填した。
【0031】
〈比較例3(加圧→吸引)〉
図6(a)~(e)に比較例3による内袋付容器詰め飲料の製造方法を示す。
比較例3では、同図(a)に示すように、まず、内袋付容器10の内袋30と外装容器20との間に空気Xgを入れて外装容器20内の圧力を高めた。次いで、同図(b)に示すように、内袋30内の空気Xgを減圧ポンプ(-0.06MPa、15s)で吸引した。
その後、同図(c)に示すように、内袋30と外装容器20との間にさらに空気Xgを入れて、フィラーボウル内の圧力と同等の圧力をカウンタープレッシャとして印加した。その後、同図(d)~(e)に示すように、内袋30と外装容器20との間の空気Xgを排出しつつ内袋30内にビールを充填した。
【0032】
上述した実施例1,2及び比較例1-3について、充填に要した時間と、製造した内袋付容器10詰め飲料Dの溶存酸素量を表1に示す。
【0033】
【0034】
表1に示す結果から、実施例1では、炭酸ガスNgを使用するものの、最も短時間で内袋30内にビール飲料を充填できることがわかる。また、実施例1では、溶存酸素量も、128.9μg/lと、最も低い水準となっている。また、実施例2では、充填時間は、比較例2と同水準ではあるものの、溶存酸素量を最も少なくできることがわかる。このように、上述した第一および第二実施形態により製造された飲料の溶存酸素量は、150μg/l以下とすることができる[発明6(方法A、B)]。
【0035】
これに対し、比較例1-3に示す製造方法では、いずれの方法においても、溶存酸素量が高いことがわかる。換言すれば、比較例1-3に示す製造方法によって、実施例1,2と同等の溶存酸素量を達成しようとすれば、内袋30内から空気を排出する操作を複数回繰り返す必要があり、実施例1,2に比べて充填時間は長くなってしまうことになる。
【0036】
以上、実施形態および実施例並びに比較例に基づき説明したように、本発明に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法によれば、短時間で溶存酸素量の少ない内袋付容器詰め飲料を製造できる。
なお、本発明に係る内袋付容器詰め飲料の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10 内袋付容器
20 外装容器
30 内袋
40 充填用蓋
D 飲料
Xg 空気(酸素)
Ng 二酸化炭素(不活性ガス)
Ax 酸素吸引工程
Fd 飲料充填工程
Pan 内袋内圧力印可工程
Pas 外装容器内圧力印可工程