(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006007
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20250109BHJP
H05K 3/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H05K1/02 C
H05K3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106516
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】畑中 隼也
【テーマコード(参考)】
5E338
5E343
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB14
5E338CD05
5E338EE27
5E343AA02
5E343AA15
5E343AA16
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB35
5E343BB38
5E343BB39
5E343BB44
5E343DD25
5E343DD43
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】プリント配線板の品質向上。
【解決手段】実施形態のプリント配線板2は、第一導体層10と、第一面22及び第一面と反対側の第二面24とを有し、第二面24が第一導体層10と対向して第一導体層上に形成されていて、第一導体層10を露出するビア孔26を有する樹脂絶縁層20と、樹脂絶縁層20の第一面22に形成されている第二導体層30と、ビア孔26内に形成されていて、第一導体層10と第二導体層30とを接続するビア導体40と、第一導体層上で樹脂絶縁層20との間に形成されていて第一導体層10に対し樹脂絶縁層20を接着し、ビア孔26と連なり第一導体層10を露出する開口100Hを有する接着層100と、ビア導体40の一部を成し、ビア孔26の内壁面27に接触していて、開口100Hの内壁面100Tから離隔しているシード層30aと、を有し、開口100Hの内壁面100Tがビア孔26の内壁面27よりもよりもビア孔26の中心から見て外側にある。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導体層と、
第一面及び前記第一面と反対側の第二面とを有し、前記第二面が前記第一導体層と対向して前記第一導体層上に形成されていて、前記第一導体層を露出するビア孔を有する樹脂絶縁層と、
前記樹脂絶縁層の前記第一面に形成されている第二導体層と、
前記ビア孔に形成されていて、前記第一導体層と前記第二導体層と、を接続するビア導体と、
前記第一導体層上で前記樹脂絶縁層との間に形成されていて前記第一導体層に対し前記樹脂絶縁層を接着し、前記ビア孔と連なり前記第一導体層を露出する開口を有する接着層と、
前記ビア導体の一部を成し、前記ビア孔の内壁面に接触していて、前記開口の内壁面から離隔しているシード層と、
を有するプリント配線板であって、
前記開口の内壁面が前記ビア孔の内壁面よりも前記ビア孔の中心から見て外側にある、
プリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記シード層の外縁と前記開口の内壁面との間に空隙がある。
【請求項3】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記シード層の外縁から前記開口の内壁面までの距離が2μm以下である。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記シード層はスパッタ膜である。
【請求項5】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記第一導体層の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.02μm以上0.5μm以下である。
【請求項6】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記ビア孔は前記第一導体層側の部分において前記第一導体層に向けて広がっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示する技術は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1のテトラゾール化合物とアンモニアおよびpH緩衝剤を適正な濃度で含有する表面処理剤を用いることにより、プリント配線板の銅の表面に、耐酸化性および耐腐食性に優れた化成被膜を形成することが記載されている。また、特許文献1には、第1のテトラゾール化合物とアンモニアおよび第2のテトラゾール化合物を適正な濃度で含有する表面処理剤を用いることにより、プリント配線板の銅の表面に、耐酸化性と耐腐食性および撥水性に優れた化成被膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導体層上に樹脂絶縁層が形成されている構造において、導体層からの樹脂絶縁層の剥離を抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のプリント配線板は、第一導体層と、第一面及び第一面と反対側の第二面とを有し、第二面が第一導体層と対向して第一導体層上に形成されていて、第一導体層を露出するビア孔を有する樹脂絶縁層と、樹脂絶縁層の第一面に形成されている第二導体層と、ビア孔に形成されていて、第一導体層と第二導体層と、を接続するビア導体と、第一導体層上で樹脂絶縁層との間に形成されていて第一導体層に対し樹脂絶縁層を接着し、ビア孔と連なり第一導体層を露出する開口を有する接着層と、ビア導体の一部を成し、ビア孔の内壁面に接触していて、開口の内壁面から離隔しているシード層と,を有するプリント配線板であって、開口の内壁面がビア孔の内壁面よりもビア孔の中心から見て外側にある。
【0006】
本開示の実施形態によれば、導体層上に樹脂絶縁層が形成されている構造において、導体層からの樹脂絶縁層の剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第一実施形態のプリント配線板を示す断面図である。
【
図2A】本開示の第一実施形態のプリント配線板を部分的に拡大して示す断面図である。
【
図2B】本開示の第一実施形態のプリント配線板を部分的に拡大して示す断面図である。
【
図3A】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3B】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3C】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3D】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3E】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3F】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3G】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3H】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3I】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3J】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0009】
各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものである。図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
図1は実施形態のプリント配線板2を示す断面図である。
図2A及び
図2Bは実施形態のプリント配線板2の一部を示す拡大断面図である。
図1に示されるように、プリント配線板2は、絶縁層4と第一導体層10と樹脂絶縁層20と第二導体層30とビア導体40とを有する。
【0011】
絶縁層4は樹脂を用いて形成される。絶縁層4はシリカ等の無機粒子を含んでもよい。絶縁層4は、ガラスクロス等の補強材を含んでもよい。絶縁層4は、第三面6(図中の上面)と第三面6と反対側の第四面8(図中の下面)を有する。
【0012】
第一導体層10は絶縁層4の第三面6上に形成されている。第一導体層10は信号配線12とパッド14とを含む。第一導体層10は、信号配線12とパッド14とは別の導体回路も含んでいてもよい。第一導体層10は主に銅によって形成される。第一導体層10は、絶縁層4上のシード層10aとシード層10a上の電解めっき層10bで形成されている。シード層10aは第三面6上の第一層11aと第一層11a上の第二層11bで形成されている。第一層11aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金(銅合金)で形成されている。第二層11bは銅で形成されている。電解めっき層10bは銅で形成されている。第一層11aは絶縁層4に接している。
【0013】
第一導体層10において、絶縁層4の第三面6に接触している部分以外は、第一導体層10の表面である。第一導体層10の表面は、第一表面と第二表面と、を含んでいる。第一表面は、樹脂絶縁層20のビア孔26から露出している表面である。第二表面は、第一導体層10の表面のうち、第一表面以外の部分である。第一表面は、接着層100で覆われていない。第二表面は、接着層100で覆われている部分と、空隙GPに位置する部分と、を含む。空隙GPは、接着層100の内壁面100Tとシード層30aの間に構成されている。接着層100は窒素系有機化合物によって形成されている。接着層100を形成する窒素系有機化合物は例えばテトラゾール化合物である。窒素系有機化合物は特開2015-54987号公報に開示されているテトラゾール化合物であってもよい。接着層100は第一導体層10の第二表面を覆っている。さらに、接着層100は、第一導体層10から露出する第三面6を覆っている。
【0014】
樹脂絶縁層20は、絶縁層4の第三面6と第一導体層10上とに形成されている。樹脂絶縁層20は、第一導体層10との間に接着層100を介して形成されている。樹脂絶縁層20は第一面22(図中の上面)と第一面22と反対側の第二面24(図中の下面)を有する。第一導体層10は樹脂絶縁層20の第二面24の内側に入り込んでいる。樹脂絶縁層20の第二面24は、図中で第一導体層10の上面及び側面に接触する部分により、第一導体層10と対向している。樹脂絶縁層20は樹脂80と多数の無機粒子90を含む。樹脂80は、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いてもよい。樹脂80は、一例としてエポキシ系樹脂を用いてもよい。多数の無機粒子90は樹脂80内に分散されている。無機粒子90は、例えば、シリカ、アルミナを用いてもよい。無機粒子90の粒子径は、例えば、平均粒子径0.5μm、粒子径範囲は、0.1μm以上5.0μm以下である。樹脂絶縁層20は厚み方向に貫通する貫通孔としてのビア孔26を有している。ビア孔26の内壁面27は樹脂80と無機粒子90とで形成されている。
【0015】
図2Aに示されるように、樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80のみで形成されている。第一面22から無機粒子90は露出しない。具体的には、第一面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されていない。第一面22は荒らされていない。第一面22は平滑に形成されている。第一面22の算術平均粗さ(Ra)は、例えば0.02μm以上0.06μm以下である。
【0016】
一方、
図2Bに示されるように、ビア孔26の内壁面27には一部の無機粒子90が露出する。ビア孔26の内壁面27は無機粒子90の表面を含む。ビア孔26の内壁面27は凹凸を有する。ビア孔26の内壁面27は樹脂80の露出面と無機粒子90の露出面とで形成される。ビア孔26の内壁面27は無粗化面であり、粗化されていない。ビア孔26の内壁面27の算術平均粗さ(Ra)は、例えば0.03μm以上0.10μm以下の範囲である。ビア孔26の内壁面27には無機粒子90が露出しているのに対し、樹脂絶縁層20の第一面22からは無機粒子90は露出していない。このため、ビア孔26の内壁面27の算術平均粗さ(Ra)は、上記の範囲を満たした上で、第一面22の算術平均粗さ(Ra)よりも大きい。
【0017】
樹脂絶縁層20の厚さは、第二導体層30の厚さの2倍以上である。樹脂絶縁層20の厚さTは第一面22と第一導体層10の上面の間の距離である。
【0018】
図2Bに示されるように、ビア孔26の内壁面27は傾斜している。パッド14の上面と内壁面27との間の角度(傾斜角度)θ1は例えば70°以上85°以下である。パッド14の上面は第一導体層10の上面に含まれる。樹脂絶縁層20の第一面(上面)22と内壁面27との間の角度(傾斜角度)θ2は例えば95°以上110°以下である。
【0019】
図2Bに示されるように、第一導体層10の一部は、接着層100で覆われている。パッド14では、接着層100は、ビア導体40の周囲を囲むように形成されている。接着層100は開口100Hを有している。開口100Hはビア孔26と連なっている。第一導体層10の第一表面は、開口100Hから露出している。接着層100において、ビア孔26の中心(中心線CL参照)側の内壁面100Tは、開口100Hの内壁面である。ビア孔26の内壁面27の端部27Tよりもビア孔26の中心から見て外側にある。ビア孔26の内壁面27の端部27Tは、ビア孔26の内壁面27において、第一導体層10側にあり、且つビア孔26の中心側の端部である。第一導体層10側とは、第一導体層10の上面から、樹脂絶縁層20の厚さTの20%以下の位置である。以下において、「内側」、及び「外側」とは、中心線CLから見た内側(中心線CLに相対的に近い側)、及び外側(中心線CLから遠い側)をいう。なお、これらの「内側」、及び「外側」は、中心線CLではなく、ビア孔26内において、第三面6の法線から第三面6の面に沿った方向の距離としての遠近で定義してもよい。
【0020】
樹脂絶縁層20は、傾斜面29を有している。傾斜面29は、接着層100の内壁面100Tよりも内側にあり、内側に向かうに従ってパッド14から離れる方向に傾斜している面である。傾斜面29は、ビア孔26において、第一導体層10側の部分である。傾斜面29は、第一導体層10に向けて広がっている。傾斜面29の内径は、第一導体層10に向けて漸増している。
図2Bに示される例では、傾斜面29の内側の端部は、ビア孔26の内壁面27の端部27Tと一致している。
【0021】
図2Bに示される断面において、ビア孔26の内壁面27の端部27Tから接着層100の内壁面100Tまでの距離を距離L1とする。
図2Bに示される例では、たとえば、距離L1は、0.1μm以上1μm以下である。
【0022】
シード層30aの一部は、パッド14の上面と樹脂絶縁層20の傾斜面29との間に、内側から入り込んでいる。シード層30aにおいて、パッド14の上面と樹脂絶縁層20の傾斜面29の間に入り込んでいる部分の先端は、シード層30aの外縁31である。シード層30aの外縁31は、接着層100の内壁面100Tから離隔している。シード層30aの外縁31と接着層100の内壁面100Tとの間には、空隙GPが構成されている。
【0023】
図2Bに示される断面において、シード層30aの外縁31から接着層100の内壁面100Tまでの距離を距離L2とする。シード層30aの外縁31は、シード層30aにおいて、パッド14と接している部分での端部である。
図2Bに示される例では、たとえば、距離L2は、上記の距離L1以下であり、且つ2μm以下である。
【0024】
図1に示されるように、第二導体層30は樹脂絶縁層20の第一面22上に形成されている。第二導体層30は第一信号配線32と第二信号配線34とランド36とを含む。第二導体層30は第一信号配線32と第二信号配線34とランド36とは別の導体回路も含んでいてもよい。第一信号配線32と第二信号配線34はペア配線を形成している。第二導体層30は主に銅によって形成される。第二導体層30は、第一面22上のシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。シード層30aは第一面22上の第一シード層31aと第一シード層31a上の第二シード層31bで形成されている。第一シード層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金(銅合金)で形成されている。第二シード層31bは銅で形成されている。電解めっき層30bは銅で形成されている。第一シード層31aは第一面22に接している。第二シード層31bは電解めっき層30bと接着している。第二導体層30のうち樹脂絶縁層20の第一面22と対向する面は第一面22の表面形状に沿って形成されている。第二導体層30は樹脂絶縁層20の第一面22の内側に入り込まない。
【0025】
ビア導体40はビア孔26内に形成されている。ビア導体40は、積層方向に隣り合う第一導体層10と第二導体層30とを接続する。なお、積層方向とは各層を積層した方向であり、各層の厚み方向と同じ方向である。本実施形態では積層方向は上下方向と同じである。
図1ではビア導体40はパッド14とランド36を接続する。ビア導体40はシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。ビア導体40を形成するシード層30aと第二導体層30を形成するシード層30aは共通である。第一シード層31aは内壁面27に接している。
【0026】
樹脂絶縁層20及び第二導体層30の表面には、被膜層35が形成されている。被膜層35により、樹脂絶縁層20及び第二導体層30と、樹脂絶縁層20及び第二導体層30に積層される他の層との密着性が高められる。被膜層35は無くてもよい。
【0027】
[実施形態のプリント配線板2の製造方法]
【0028】
図3A~
図3Jは実施形態のプリント配線板2の製造方法を示す。
図3A~
図3Jは断面図である。
図3Aは、絶縁層4と第一導体層10とを示す。第一導体層10は、絶縁層4の第三面6上に形成されている。第一導体層10はセミアディティブ法によって形成される。
【0029】
図3Bに示されるように、第一導体層10の表面上に、接着層100が形成される。第一導体層10の表面は、シード層30aがエッチング液により除去されると同時に算術平均粗さ(Ra)が0.02μm以上0.5μm以下の範囲に調整される。前記粗面を有する第一導体層10は伝送損失を小さくできる。接着層100は、第一導体層10の表面を覆っている。さらに接着層100は、第一導体層10から露出する第三面6を覆っている。第一導体層10はセミアディティブ法によって形成される。接着層100は、絶縁層4と第一導体層10を、窒素系有機化合物を含む薬液に浸漬させることによって形成される。あるいは、接着層100は、絶縁層4上及び第一導体層10上に上記薬液を塗布することによって形成される。
【0030】
図3Cに示されるように、接着層100の上に樹脂絶縁層20と保護膜50が形成される。樹脂絶縁層20の第二面24が絶縁層4の第三面6と対向している。樹脂絶縁層20の第一面22上に保護膜50が形成される。樹脂絶縁層20は樹脂80と無機粒子90とを有する。無機粒子90は樹脂80内に埋まっている。樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80のみで形成される。第一面22から無機粒子90は露出しない。第一面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されていない。
【0031】
保護膜50は樹脂絶縁層20の第一面22を完全に覆っている。保護膜50は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。保護膜50と樹脂絶縁層20との間に離型剤による層が形成されている。
【0032】
図3Dに示されるように、保護膜50の上からレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは保護膜50と樹脂絶縁層20を同時に貫通する。パッド14を覆う接着層100に至るビア導体用のビア孔26が形成される。レーザ光Lは例えばUVレーザ光、CO
2レーザ光である。ビア孔26は内壁面27を有する。
【0033】
レーザ光Lによっては接着層100が完全に除去されない。接着層100には開口100Hが形成される。開口100Hは、ビア孔26と連なっている。パッド14を覆う接着層100がビア孔26、及び開口100Hにより露出される。ビア孔26が形成される時、樹脂絶縁層20の第一面22は保護膜50で覆われている。そのため、ビア孔26が形成される時、樹脂が飛散しても、第一面22に樹脂が付着することが抑制される。レーザ光照射後のビア孔26の内壁面27は樹脂80と樹脂80から突出している無機粒子90で形成されている。樹脂絶縁層20には傾斜面29が形成される。傾斜面29は、第一導体層10に向けて広がる形状に形成される。傾斜面29では、樹脂絶縁層20はパッド14から離隔している。
【0034】
図3Eに示されるように、ビア孔26内が洗浄される。ビア孔26内を洗浄することによりビア孔26から露出する接着層100が除去される。ビア孔26からパッド14が露出する。ビア孔26形成時に発生する樹脂残渣が除去される。ビア孔26内の洗浄はプラズマによって行われる。即ち洗浄はドライプロセスで行われる。ドライプロセスのガス種は、ハロゲン系ガス(フッ素系ガス、塩素系ガス等)とO
2ガスの混合ガス、あるいはハロゲン系ガス(フッ素系ガス、塩素系ガス等)、O
2ガスの単独のガスである。洗浄はデスミア処理を含む。樹脂絶縁層20の第二面24とパッド14との間に形成されている接着層100は完全には除去されない。そのため、樹脂絶縁層20の第二面24とパッド14との間に接着層100が残る。接着層100の内壁面100Tは、ビア孔26の内壁面27の端部27Tから距離L1(
図2B参照)の位置にある。
【0035】
プラズマにより、樹脂80が選択的に除去される。プラズマは無機粒子90より樹脂80を早く除去する。ビア孔26内を洗浄することにより、ビア孔26の内壁面27には無機粒子90が露出する(
図3E)。ビア孔26の内壁面27は無機粒子90の表面を含む。ビア孔26の内壁面27には凹凸が形成される。一方、樹脂絶縁層20の第一面22は保護膜50で覆われている。第一面22はプラズマの影響を受けない。第一面22は樹脂80のみで形成されている。第一面22から無機粒子90は露出しない。第一面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されない。第一面22は平滑に形成されている。
【0036】
図3Fに示されるように、ビア孔26内を洗浄後に、樹脂絶縁層20から保護膜50が除去される。保護膜50除去後、樹脂絶縁層20の第一面22を荒らすことは行われない。第一面22は平滑に形成される。第一面22の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、0.02μm以上0.06μm以下である。
【0037】
図3Gに示されるように、樹脂絶縁層20の第一面22及び内壁面27上にシード層30aが形成される。シード層30aはスパッタによって形成される。シード層30aはスパッタ膜である。シード層30aの形成はドライプロセスで行われる。第一シード層31aが第一面22上にスパッタで形成される。同時に、ビア孔26から露出する内壁面27とパッド14上に第一シード層31aがスパッタで形成される。その後、第一シード層31a上に第二シード層31bがスパッタで形成される。第一シード層31aと第二シード層31bは異なる材料の銅合金の組み合わせ、あるいは銅合金と銅の組み合わせからなる。第一シード層31aは銅合金で形成されている。銅合金と樹脂絶縁層20との組合せは銅と樹脂絶縁層20との組合せより密着性が高い。第二シード層31bは銅合金あるいは銅で形成される。第一シード層31aと第二シード層31bの銅合金は、銅の含有量が全重量の90%以上で形成される。銅の含有量が高いほど電気抵抗を低くできるため接続信頼性が向上する。シード層30aはビア孔26から露出するパッド14の上面とビア孔26の内壁面27にも形成される。シード層30aの材料の一部は、樹脂絶縁層20の傾斜面29とパッド14の上面との間に入り込む。第一シード層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金で形成される。第二シード層31bは銅で形成される。
【0038】
図3Hに示されるように、シード層30a上にめっきレジスト60が形成される。樹脂絶縁層20の第一面22を荒らすことは行われないため、シード層30aは低粗面に均一厚みに形成できる。めっきレジスト60は、シード層30aと隙間なく密着できるので、めっきレジスト60の剥離を防止し、電解めっき形成で配線間の短絡を抑制できる。めっきレジスト60は、第一信号配線32と第二信号配線34とランド36(
図1参照)を形成するための開口を有する。
【0039】
図3Iに示されるように、めっきレジスト60から露出するシード層30a上に電解めっき層30bが形成される。電解めっき層30bは銅で形成される。電解めっき層30bはビア孔26を充填する。第一面22上のシード層30aと電解めっき層30bによって、第一信号配線32と第二信号配線34とランド36が形成される。第二導体層30が形成される。ビア孔26内のシード層30aと電解めっき層30bによって、ビア導体40が形成される。第二導体層30とビア導体40は同時に形成される。ビア導体40は、パッド14とランド36を接続する。第一信号配線32と第二信号配線34はペア配線を形成する。
【0040】
図3Jで示されるように、めっきレジスト60が除去される。電解めっき層30bから露出するシード層30aが除去される。第二導体層30の表面は、シード層30aがエッチング液により除去され、算術平均粗さ(Ra)が0.02μm以上0.5μm以下の範囲に調整される。粗面を有する第一導体層10は伝送損失を小さくできる。第二導体層30とビア導体40は同時に形成される。
【0041】
その後、樹脂絶縁層20の第一面22に対し、必要に応じてO2アッシング処理が行われる。O2アッシング処理では、樹脂絶縁層20の第一面22にO2プラズマが照射される。
【0042】
その後、第二導体層30に対しさらに化成処理が施される。たとえば、樹脂絶縁層20及び第二導体層30の表面に、被膜層35が形成される。実施形態のプリント配線板2(
図1参照)が得られる。
【0043】
実施形態のプリント配線板2(
図1~
図2B参照)では、ビア孔26内のデスミア処理を含む洗浄後であっても、樹脂絶縁層20の第二面24とパッド14との間に接着層100が残っている。樹脂絶縁層20の第二面24とパッド14との接着性を確保できる。第一導体層10上に樹脂絶縁層20が形成されている構造において、第一導体層10からの樹脂絶縁層20の剥離を抑制できる。
【0044】
接着層100の内壁面100Tが、ビア孔26の内壁面27の端部27Tよりも、ビア孔26の中心(中心線CL参照)から見て外側にある。シード層30aの外縁31と接着層100の内壁面100Tとの間には、空隙GPが構成されている。ビア導体40に、たとえば横方向の力が作用した場合に、パッド14に対するビア導体40の横方向への移動を空隙GPが許容する。ビア導体40の底部40Bの応力が緩和される。
【0045】
ビア導体40はシード層30aを含む。シード層30aはビア孔26の内壁面27に接触している。ビア孔26の内壁面27に対するビア導体40の密着性が向上する。シード層30aの外縁31は、接着層100の内壁面100Tから離隔している。シード層30aの外縁31と接着層100の内壁面100Tとの間に、空隙GPが構成される構造が実現される。
【0046】
シード層30aの外縁31から接着層100の内壁面100Tまでの距離L2は、2μm以下である。シード層30aの一部は、パッド14の上面と、樹脂絶縁層20の傾斜面29の間に、内側から入り込んでいる。すなわち、シード層30aのうち、パッド14の上面と、樹脂絶縁層20の傾斜面29の間に入り込んでいる部分が傾斜面29に接触している。ビア導体40の、パッド14から離隔する方向(
図2Bにおける上方向)の移動を阻止できる。ビア導体40とパッド14との接触状態を維持できる。
【0047】
実施形態のプリント配線板2(
図1参照)では樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80で形成されている。第一面22には無機粒子90が露出しない。第一面22には凹凸が形成されない。樹脂絶縁層20の第一面22近傍部分の比誘電率の標準偏差が大きくなることが抑制される。第一面22の比誘電率は場所によって大きく変わらない。第一信号配線32と第二信号配線34が第一面22に接していても、第一信号配線32と第二信号配線34間の電気信号の伝搬速度の差を小さくすることができる。そのため、実施形態のプリント配線板2ではノイズが抑制される。実施形態のプリント配線板2にロジックICが実装されても、第一信号配線32で伝達されるデータと第二信号配線で伝達されるデータがロジックICにほぼ遅延なく到達する。ロジックICの誤動作を抑制することができる。第一信号配線32の長さと第二信号配線34の長さが5mm以上であっても、両者の伝搬速度の差を小さくすることができる。第一信号配線32の長さと第二信号配線34の長さが10mm以上、20mm以下であっても、ロジックICの誤動作を抑制することができる。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0048】
実施形態のプリント配線板2では、シード層30aはスパッタで形成される(
図3G参照)。シード層30aを形成する粒子は第一面22と垂直に衝突する。そのため、第一面22とシード層30aとの密着強度は高い。一方、シード層30aを形成する粒子とビア孔26の内壁面27は斜めに衝突する。ただし、ビア孔26の内壁面27は凹凸を有する。そのため、シード層30aとビア孔26の内壁面27間の密着強度は高い。第一面22が凹凸を有していなく、且つ、ビア孔26の内壁面27が凹凸を有しても、第二導体層30と第一面22との間の密着強度とビア導体40とビア孔26の内壁面27との間の密着強度の差を小さくすることができる。第二導体層30と第一面22との間の界面にストレスが集中し難い。ビア導体40とビア孔26の内壁面27との間の界面にストレスが集中し難い。プリント配線板2がヒートサイクルを受けても、ビア導体40が樹脂絶縁層20から剥離し難い。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0049】
本開示の技術では、シード層30aの第一シード層31aは、銅と第二元素で形成されている。第二元素は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、炭素、酸素、スズ、カルシウム、マグネシウム、鉄、モリブデン、銀、の中から選ばれる。第一シード層31aは銅を含む合金で形成される。第二シード層31bは銅で形成される。第二シード層31bを形成している銅の量(原子量%)は99.9%以上である。99.95%以上が好ましい。
【0050】
シード層30aの第一シード層31aは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、炭素、酸素、スズ、カルシウム、マグネシウム、鉄、モリブデン、銀、のうちのいずれか1つの金属で形成されてもよい。
【0051】
本開示の技術のプリント配線板2では、樹脂絶縁層20は樹脂80と無機粒子90を含むが、繊維補強材を含んでいてもよい。繊維補強材としては、例えば、ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布を用いてもよい。
【0052】
本開示の技術のプリント配線板2では、樹脂絶縁層が一層であるが、二層以上積層されてもよい。
【0053】
本開示の技術のプリント配線板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態のプリント配線板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態のプリント配線板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。
【0054】
本開示の技術のプリント配線板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば、各絶縁層は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。実施形態のプリント配線板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
2 プリント配線板
4 絶縁層
6 第三面
8 第四面
10 第一導体層
10a シード層
10b 電解めっき層
12 信号配線
14 パッド
20 樹脂絶縁層
22 第一面
24 第二面
26 ビア孔
27 内壁面
27T 内壁面の端部
29 傾斜面
30 第二導体層
30a シード層
30b 電解めっき層
31a 第一シード層
31b 第二シード層
32 第一信号配線
34 第二信号配線
35 被膜層
36 ランド
40 ビア導体
40B ビア導体の底部
50 保護膜
60 レジスト
80 樹脂
90 無機粒子
100 接着層
100T 接着層の端部