(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060126
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 19/0185 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
H03K19/0185 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170662
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 勇一
【テーマコード(参考)】
5J056
【Fターム(参考)】
5J056AA11
5J056BB19
5J056BB59
5J056CC21
5J056DD13
5J056DD29
5J056EE06
5J056FF08
5J056GG11
5J056KK01
(57)【要約】
【課題】異電源間インターフェイス用のレベルシフト回路の出力信号を特定電位に固定する際の電力損失を低減し得る半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、入力信号端子及び反転入力信号端子を介して、第1電源電圧で動作する回路から出力された特定電位の第1信号を入力し、第1信号を電位が第1信号の電位とは異なる第2信号に変換し、出力信号端子を介して、電位が第1電源電圧とは異なる電位の第2電源電圧で動作する回路に第2信号を出力するレベルシフト部と、ゲートに第1電源電圧が印加され、ソースに第2電源電圧が印加され、ドレインが入力信号端子に接続される第1極性の第1トランジスタと、ゲートに第1電源電圧が印加され、ソースに第2電源電圧が印加され、ドレインが出力信号端子に接続される第1極性の第2トランジスタと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号端子及び反転入力信号端子を介して、第1電源電圧で動作する回路から出力された特定電位の第1信号を入力し、前記第1信号を電位が前記第1信号の電位とは異なる第2信号に変換し、出力信号端子を介して、電位が前記第1電源電圧とは異なる電位の第2電源電圧で動作する回路に前記第2信号を出力するレベルシフト部と、
ゲートに前記第1電源電圧が印加され、ソースに前記第2電源電圧が印加され、ドレインが前記入力信号端子に接続される第1極性の第1トランジスタと、
ゲートに前記第1電源電圧が印加され、ソースに前記第2電源電圧が印加され、ドレインが前記出力信号端子に接続される前記第1極性の第2トランジスタと、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1トランジスタは、前記第1電源電圧の電位が特定電位より低い場合、オン状態になることで、前記第2電源電圧を前記入力信号端子に印加し、
前記第2トランジスタは、前記第1電源電圧の電位が特定電位より低い場合、オン状態になることで、前記第2電源電圧を前記出力信号端子に印加する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記レベルシフト部は、前記第1極性の第3トランジスタと、前記第1極性の第4トランジスタと、第2極性の第5トランジスタと、前記第1極性の第6トランジスタと、前記第1極性の第7トランジスタと、前記第2極性の第8トランジスタと、を備え、
前記第3トランジスタは、ソースに前記第1電源電圧が印加され、ドレインが前記第4トランジスタのソースに接続され、ゲートが前記出力信号端子と前記第7トランジスタのドレインと前記第8トランジスタのドレインに接続され、
前記第4トランジスタは、ソースが前記第3トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第5トランジスタのドレインと反転出力信号端子と前記第6トランジスタのゲートに接続され、ゲートが前記第1トランジスタのドレインと前記入力信号端子と前記第5トランジスタのゲートに接続され、
前記第5トランジスタは、ソースが接地され、ゲートが前記第1トランジスタのドレインと前記入力信号端子と前記第4トランジスタのゲートに接続され、ドレインが前記第4トランジスタのドレインと前記反転出力信号端子と前記第6トランジスタのゲートに接続され、
前記第6トランジスタは、ソースに前記第1電源電圧が印加され、ドレインが前記第7トランジスタのソースに接続され、ゲートが前記第4トランジスタのドレインと前記反転出力信号端子と前記第5トランジスタのドレインに接続され、
前記第7トランジスタは、ソースが前記第6トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第2トランジスタのドレインと前記第3トランジスタのゲートと前記出力信号端子と前記第8トランジスタのドレインに接続され、ゲートが前記反転入力信号端子と前記第8トランジスタのゲートに接続され、
前記第8トランジスタは、ソースが接地され、ドレインが前記第2トランジスタのドレインと前記第3トランジスタのゲートと前記出力信号端子と前記第7トランジスタのドレインに接続され、ゲートが前記反転入力信号端子と前記第7トランジスタのゲートに接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記レベルシフト部は、D級アンプに適用される前記第2信号を出力する、請求項1から3の何れか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電源供給が必要なLSI(Large Scale Integration)を正常動作させるため、異電源間インターフェイス用のレベルシフト回路の出力信号を特定電位に固定(設定)する技術が知られている。例えば特許文献1には、第1電源電圧に対応した信号振幅を第2電源電圧に対応した信号振幅に変換するレベルシフト回路と、レベルシフト回路から出力された信号の電位が不定となることを防止するためのプルアップ抵抗とを備える半導体集積回路装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術は、信号の電位が不定となることを防止するため、つまり、出力信号の電位を特定電位に固定するために、レベルシフト回路にプルアップ抵抗、プルダウン抵抗などを用いている。この場合、プルアップ抵抗などに電流が流れることで、大きな電力損失を生じ得る。このように従来技術は、異電源間インターフェイス用のレベルシフト回路の出力信号を特定電位に固定する上で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記の事情を踏まえ、異電源間インターフェイス用のレベルシフト回路の出力信号を特定電位に固定する際の電力損失を低減し得る半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示にかかる半導体装置は、入力信号端子及び反転入力信号端子を介して、第1電源電圧で動作する回路から出力された特定電位の第1信号を入力し、前記第1信号を電位が前記第1信号の電位とは異なる第2信号に変換し、出力信号端子を介して、電位が前記第1電源電圧とは異なる電位の第2電源電圧で動作する回路に前記第2信号を出力するレベルシフト部と、ゲートに前記第1電源電圧が印加され、ソースに前記第2電源電圧が印加され、ドレインが前記入力信号端子に接続される第1極性の第1トランジスタと、ゲートに前記第1電源電圧が印加され、ソースに前記第2電源電圧が印加され、ドレインが前記出力信号端子に接続される前記第1極性の第2トランジスタと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、異電源間インターフェイス用のレベルシフト回路の出力信号を特定電位に固定する際の電力損失を低減し得る半導体装置を提供することが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本開示の実施形態にかかる半導体装置を備えた電源の構成例を示す図である。
【
図2】
図2はレベルシフト回路の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は半導体装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】
図4は比較例にかかるレベルシフト回路の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は比較例にかかるレベルシフト回路を備えた電源の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は比較例にかかるレベルシフト回路を備えた電源の機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0010】
(実施形態)
図1は本開示の実施形態にかかる半導体装置を備えた電源の構成例を示す図である。
図1には、LSIの外部に設けられている2つの外部電源が示されている。2つの外部電源は、具体的には、第1電源電圧DVDDを供給する回路と、第2電源電圧SPVDDを供給する回路と解釈してよい。
【0011】
第1電源電圧DVDDを供給する回路は、内部電源生成回路1、制御回路2、レベルシフト回路3、及びレベルシフト回路4を備えてよい。本開示において「レベルシフト回路」はレベルシフタと解釈してよい。
【0012】
内部電源生成回路1は、第1電源電圧DVDDに基づき内部電源電圧VDDLを生成してよい。
【0013】
制御回路2は、内部電源生成回路1で生成された内部電源電圧VDDLで動作する回路と解釈してよい。制御回路2は、電位が内部電源電圧VDDLの特定の信号を生成して出力してよい。
【0014】
レベルシフト回路3は、制御回路2から出力される信号を入力してよい。レベルシフト回路3は、当該信号を、電位が内部電源電圧VDDLの電位とは異なる第1電源電圧DVDDの信号(第1信号AMPEN)に変換して出力してよい。
【0015】
レベルシフト回路4は、本開示の半導体装置と解釈してよい。レベルシフト回路4は、例えば第1電源電圧DVDDで動作するレベルシフト回路3から出力された特定電位の第1信号AMPENを入力してよい。レベルシフト回路4は、第1信号AMPENを、電位が第1信号AMPENの電位とは異なる第2信号AMPEN_HVに変換してよい。
【0016】
レベルシフト回路4は、電位が第1電源電圧DVDDとは異なる電位の第2電源電圧SPVDDで動作する回路に、第2信号AMPEN_HVを出力してよい。レベルシフト回路4の構成の詳細は後述する。
【0017】
外部電源SPVDDは、レベルシフト回路5及びD級アンプ6を備えてよい。
【0018】
レベルシフト回路5は、内部電源生成回路1で生成された内部電源電圧VDDLで動作する回路と解釈してよい。レベルシフト回路5は、制御回路2から出力される信号と、レベルシフト回路4から出力される第2信号AMPEN_HVを入力してよい。
【0019】
次に
図2を参照してレベルシフト回路4の構成を説明する。
図2はレベルシフト回路の構成例を示す図である。
【0020】
レベルシフト回路4は、レベルシフト部10、第1トランジスタ20、第2トランジスタ30、入力信号端子IN1、反転入力信号端子IN2、出力信号端子OUT1、反転出力信号端子OUT2、インバータ40、インバータ50、トランジスタ60、及びトランジスタ70を備えてよい。
【0021】
(レベルシフト部10)
レベルシフト部10は、入力信号端子IN1及び反転入力信号端子IN2を介して、第1電源電圧DVDDで動作する回路から出力された特定電位の第1信号AMPENを入力してよい。第1電源電圧DVDDで動作する回路は、
図1に示すレベルシフト回路3と解釈してよい。第1電源電圧DVDDで動作する回路は、
図1に示す内部電源電圧VDDLで動作する回路と解釈してもよい。
【0022】
レベルシフト部10は、第1信号AMPENを、電位が第1信号AMPENの電位とは異なる第2信号AMPEN_HVに変換してよい。レベルシフト部10は、出力信号端子OUT1を介して、電位が第1電源電圧DVDDとは異なる電位の第2電源電圧SPVDDで動作する回路に、第2信号AMPEN_HVを出力してよい。
【0023】
レベルシフト部10は、第1極性の第3トランジスタ11と、第1極性の第4トランジスタ12と、第2極性の第5トランジスタ13と、第1極性の第6トランジスタ14と、第1極性の第7トランジスタ15と、第2極性の第8トランジスタ16を備えてよい。
【0024】
本開示の実施形態では、第1極性のトランジスタはPチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)と解釈してよく、第2極性のトランジスタは、Nチャネル型のMOSFETと解釈してよい。
【0025】
第3トランジスタ11は、ソースに第1電源電圧DVDDが印加され、ドレインが第4トランジスタ12のソースに接続されてよい。第3トランジスタ11は、ゲートが出力信号端子OUT1と、第7トランジスタ15のドレインと、第8トランジスタ16のドレインに接続されてよい。
【0026】
第4トランジスタ12は、ソースが第3トランジスタ11のドレインに接続され、ドレインが第5トランジスタ13のドレインと、反転出力信号端子OUT2と、第6トランジスタ14のゲートに接続されてよい。第4トランジスタ12は、ゲートが第1トランジスタ20のドレインと、入力信号端子IN1と、第5トランジスタ13のゲートに接続されてよい。
【0027】
第5トランジスタ13は、ソースが接地され、ゲートが第1トランジスタ20のドレインと、入力信号端子IN1と、第4トランジスタ12のゲートに接続されてよい。第5トランジスタ13は、ドレインが第4トランジスタ12のドレインと、反転出力信号端子OUT2と、第6トランジスタのゲートに接続されてよい。
【0028】
第6トランジスタ14は、ソースに第1電源電圧DVDDが印加され、ドレインが第7トランジスタ15のソースに接続され、ゲートが第4トランジスタ12のドレインと、反転出力信号端子OUT2と、第5トランジスタ13のドレインに接続されてよい。
【0029】
第7トランジスタ15は、ソースが第6トランジスタ14のドレインに接続されてよい。第7トランジスタ15は、ドレインが第2トランジスタ30のドレインと、第3トランジスタ11のゲートと、出力信号端子OUT1と、第8トランジスタ16のドレインと、インバータ50のゲートに接続されてよい。第7トランジスタ15は、ゲートが反転入力信号端子IN2と、第8トランジスタ16のゲートと、トランジスタ60のドレインと、トランジスタ70のドレインに接続されてよい。
【0030】
第8トランジスタ16は、ソースが接地され、ドレインが第2トランジスタ30のドレインと、第3トランジスタ11のゲートと、出力信号端子OUT1と、第7トランジスタ15のドレインに接続されてよい。第8トランジスタ16は、ゲートが反転入力信号端子IN2と、第7トランジスタ15のゲートと、トランジスタ60のドレインと、トランジスタ70のドレインに接続されてよい。
【0031】
(第1トランジスタ20)
第1トランジスタ20は、ゲートに第1電源電圧DVDDが印加され、ソースに第2電源電圧SPVDDが印加され、ドレインが入力信号端子IN1に接続される第1極性のトランジスタと解釈してよい。
【0032】
第1トランジスタ20のドレインは、第4トランジスタ12のゲートと、第5トランジスタ13のゲートと、インバータ40の出力端子と、トランジスタ60のゲートと、トランジスタ70のゲートに接続されてよい。
【0033】
第1トランジスタ20は、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い場合、オン状態になることで、第2電源電圧SPVDDを入力信号端子IN1に印加してよい。特定電位は、第1トランジスタ20のしきい値電圧Vt(約0.7V)と解釈してよい。これにより、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間は、第4トランジスタ12にオフ状態を継続させ、また第5トランジスタ13にオン状態を継続させることができる。
【0034】
(第2トランジスタ30)
第2トランジスタ30は、ゲートに第1電源電圧DVDDが印加され、ソースに第2電源電圧SPVDDが印加され、ドレインが出力信号端子OUT1に接続される第1極性のトランジスタと解釈してよい。
【0035】
第2トランジスタ30のドレインは、第7トランジスタ15のドレインと、第8トランジスタ16のドレインと、第3トランジスタ11のゲートと、インバータ50の入力端子に接続されてよい。
【0036】
第2トランジスタ30は、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い場合、オン状態になることで、第2電源電圧SPVDDを出力信号端子OUT1に印加してよい。特定電位は、第2トランジスタ30のしきい値電圧Vt(例えば約0.7V)と解釈してよい。これにより、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間は、インバータ50の出力AMPEN_HVの電圧レベルがLレベルに固定される。
【0037】
トランジスタ60は、ゲートがインバータ40の出力端子に接続され、ソースに特定の電源電圧(例えば第1電源電圧DVDD)が印加され、ドレインがトランジスタ70のドレインに接続される第1極性のトランジスタと解釈してよい。トランジスタ60のドレインは、反転入力信号端子IN2と、第7トランジスタ15のゲートと、第8トランジスタ16のゲートに接続されてよい。
【0038】
トランジスタ70は、ゲートがインバータ40の出力端子に接続され、ソースが接地され、ドレインがトランジスタ60のドレインに接続される第1極性のトランジスタと解釈してよい。トランジスタ70のドレインは、反転入力信号端子IN2と、第7トランジスタ15のゲートと、第8トランジスタ16のゲートに接続されてよい。
【0039】
次に
図3を参照して半導体装置の動作を説明する。
図3は半導体装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0040】
時刻t1において、第1電源電圧DVDDが未供給状態において、第1トランジスタ20及び第2トランジスタ30はオン状態である。これにより、インバータ50のゲートの電圧レベルがHレベルになるため、インバータ50の出力(AMPEN_HV)の電圧レベルは、Lレベルに固定される。
【0041】
その後、第1電源電圧DVDDの供給が開始され、時刻t2において、第1電源電圧DVDDがしきい値電圧Vtに達するまでは、第1トランジスタ20及び第2トランジスタ30がオン状態を維持する。これにより、インバータ50のゲートの電圧レベルがHレベルを維持する。従って、インバータ50の出力(AMPEN_HV)の電圧レベルは、Lレベルに固定され続ける。しきい値電圧Vtは、第2トランジスタ30のソースとドレイン間が導通して電流が流れるゲート電圧と解釈してよい。しきい値電圧Vtは、前述した特定電位と解釈してもよい。
【0042】
これにより、制御信号の状態にかかわらず、つまり制御信号の電圧のレベルが、HレベルであるかLレベルであるかにかかわらず、レベルシフト回路5の出力信号OUTが特定の電位に固定される。具体的には、第1電源電圧DVDDが未供給(0V)状態であり、かつ、第2電源電圧SPVDDが供給状態の場合でも、レベルシフト回路5の出力信号OUTが不定状態になることを抑制できる。
【0043】
従って、D級アンプ6の出力端子SPP及び出力端子SPMの電位が不定状態になることを抑制できる。つまり、D級アンプ6は、出力端子SPP及び出力端子SPMの電位が、所望の電位(つまり期待している状態)となるように、コントロールすることができる。制御信号は、制御回路2から出力される信号と解釈してよく、レベルシフト回路3から出力される第1電源電圧DVDDの信号(第1信号AMPEN)と解釈してもよい。
【0044】
D級アンプ6の出力端子SPP及び出力端子SPMの電位が不定状態の場合には、例えば、外付けのスピーカを介して、大電流が発生したり、不要な音が発生する場合がある。
【0045】
本開示の半導体装置であるレベルシフト回路4では、第1トランジスタ20が、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間、オン状態になることで、第2電源電圧SPVDDを入力信号端子IN1に印加することができる。また第2トランジスタ30が、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間、オン状態になることで、第2電源電圧SPVDDを出力信号端子OUT1に印加することができる。これにより、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間は、第4トランジスタ12にオフ状態を継続させ、また第5トランジスタ13にオン状態を継続させることができる。また、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間は、インバータ50の出力AMPEN_HVの電圧レベルをLレベルに固定できる。つまり、レベルシフト回路5の出力信号OUTを固定することで、上記のような大電流の発生、不要な音の発生などを抑制できる。
【0046】
第1電源電圧DVDDがVtを超えると、第1トランジスタ20及び第2トランジスタ30はオフ状態になるため、インバータ50のゲート電圧の電圧レベルは、HレベルからLレベルに変化する。
【0047】
(比較例)
図4は比較例にかかるレベルシフト回路の構成例を示す図である。比較例にかかるレベルシフト回路4Aのレベルシフト部10Aは、プルダウン抵抗R1及びプルアップ抵抗R2を備えている。プルダウン抵抗R1及びプルアップ抵抗R2によって、インバータ50の出力(AMPEN_HV)の電圧レベルは、Lレベルに固定される。
【0048】
図5は比較例にかかるレベルシフト回路を備えた電源の構成例を示す図である。
図5に示すように、第1電源電圧DVDDを供給する回路は、内部電源生成回路1、制御回路2、レベルシフト回路3、レベルシフト回路4、リセット回路7、及びレベルシフト回路8を備える。外部電源SPVDDは、レベルシフト回路5、D級アンプ6、及び論理積回路9を備えてよい。
【0049】
図5に示す構成では、電源電圧(第1電源電圧DVDD)が供給されて、当該電源電圧がレベルシフト回路8が正常に動作できる電圧まで上昇した際、リセット回路7の出力信号(POR)を用いて、レベルシフト回路8の出力信号(POR_HV)の電圧レベルがLレベルに固定される。
【0050】
論理積回路9は、レベルシフト回路4Aの出力信号(AMPEN_HV)と、レベルシフト回路8の出力信号(POR_HV)との論理積が成り立つまで、LVSFTEN信号の電圧レベルをLレベルに固定する。すなわち、第1電源電圧DVDDが立ち上がるまで(第1電源電圧DVDDがレベルシフト回路8が正常に動作できる電圧になるまで)、LVSFTEN信号の電圧レベルをLレベルに固定する。これにより、レベルシフト回路5の出力信号OUTが固定される。
【0051】
レベルシフト回路4Aは、プルダウン抵抗R1及びプルアップ抵抗R2を備えることで、インバータ50のゲートの電圧レベルをHレベルにして、インバータ50の出力AMPEN_HVの電圧レベルをLレベルに固定している。
【0052】
ただし、この回路構成では、通常動作時に、第1信号であるAMPEN信号の電圧レベルをHレベルにしたときに、
図4に示すように、2つの電流経路が発生するため、プルダウン抵抗R1及びプルアップ抵抗R2に電流が流れることで、電力損失が生じる。
【0053】
また、この回路は、1V程度までしか有効にならないため、リセット回路7及びレベルシフト回路8を併用する必要がある。従って、第1電源電圧DVDDが供給されるまで、レベルシフト回路5が誤動作しないように調整が必要となり、回路構成が複雑になる。特に、電源がD級アンプ6に供給される電源と異なるリセット回路7は、アナログ回路であるため、リセット回路7からレベルシフト回路8などにアナログ信号を伝送するための配線Wの引き回しを、手配線で行う必要がある(
図6参照)。
【0054】
本開示の半導体装置であるレベルシフト回路4では、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間、つまり第1電源電圧DVDDが未供給のとき、第1トランジスタ20がオン状態になることで、第2電源電圧SPVDDを入力信号端子IN1に印加することができる。また第2トランジスタ30が、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間、オン状態になることで、第2電源電圧SPVDDを出力信号端子OUT1に印加することができる。これにより、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間は、第4トランジスタ12にオフ状態を継続させ、また第5トランジスタ13にオン状態を継続させることができる。また、第1電源電圧DVDDの電位が特定電位より低い間は、インバータ50の出力AMPEN_HVの電圧レベルをLレベルに固定できる。つまり、レベルシフト回路5の出力信号OUTを固定することで、上記のような大電流の発生、不要な音の発生などを抑制できる。
【0055】
また、レベルシフト回路4は、プルダウン抵抗R1及びプルアップ抵抗R2を利用することなく、インバータ50の出力AMPEN_HVの電圧レベルをLレベルに固定できるため、プルダウン抵抗R1及びプルアップ抵抗R2における電力損失の発生を削減できる。
【0056】
また、
図5に示すリセット回路7及びレベルシフト回路8を併用しないため、レベルシフト回路5が誤動作しないようにするための調整が不要になり、また回路構成が簡素化される。また、
図6に示すアナログ信号を伝送するための配線Wの引き回しが付与になり、回路の製造コストを削減できる。また、配線Wから発生するノイズ対策が不要になる。
【0057】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
【0058】
(付記1)
入力信号端子及び反転入力信号端子を介して、第1電源電圧で動作する回路から出力された特定電位の第1信号を入力し、前記第1信号を電位が前記第1信号の電位とは異なる第2信号に変換し、出力信号端子を介して、電位が前記第1電源電圧とは異なる電位の第2電源電圧で動作する回路に前記第2信号を出力するレベルシフト部と、
ゲートに前記第1電源電圧が印加され、ソースに前記第2電源電圧が印加され、ドレインが前記入力信号端子に接続される第1極性の第1トランジスタと、
ゲートに前記第1電源電圧が印加され、ソースに前記第2電源電圧が印加され、ドレインが前記出力信号端子に接続される前記第1極性の第2トランジスタと、
を備える半導体装置。
【0059】
(付記2)
前記第1トランジスタは、前記第1電源電圧の電位が特定電位より低い場合、オン状態になることで、前記第2電源電圧を前記入力信号端子に印加し、
前記第2トランジスタは、前記第1電源電圧の電位が特定電位より低い場合、オン状態になることで、前記第2電源電圧を前記出力信号端子に印加する、請求項1に記載の半導体装置。
【0060】
(付記3)
前記レベルシフト部は、前記第1極性の第3トランジスタと、前記第1極性の第4トランジスタと、第2極性の第5トランジスタと、前記第1極性の第6トランジスタと、前記第1極性の第7トランジスタと、前記第2極性の第8トランジスタと、を備え、
前記第3トランジスタは、ソースに前記第1電源電圧が印加され、ドレインが前記第4トランジスタのソースに接続され、ゲートが前記出力信号端子と前記第7トランジスタのドレインと前記第8トランジスタのドレインに接続され、
前記第4トランジスタは、ソースが前記第3トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第5トランジスタのドレインと反転出力信号端子と前記第6トランジスタのゲートに接続され、ゲートが前記第1トランジスタのドレインと前記入力信号端子と前記第5トランジスタのゲートに接続され、
前記第5トランジスタは、ソースが接地され、ゲートが前記第1トランジスタのドレインと前記入力信号端子と前記第4トランジスタのゲートに接続され、ドレインが前記第4トランジスタのドレインと前記反転出力信号端子と前記第6トランジスタのゲートに接続され、
前記第6トランジスタは、ソースに前記第1電源電圧が印加され、ドレインが前記第7トランジスタのソースに接続され、ゲートが前記第4トランジスタのドレインと前記反転出力信号端子と前記第5トランジスタのドレインに接続され、
前記第7トランジスタは、ソースが前記第6トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第2トランジスタのドレインと前記第3トランジスタのゲートと前記出力信号端子と前記第8トランジスタのドレインに接続され、ゲートが前記反転入力信号端子と前記第8トランジスタのゲートに接続され、
前記第8トランジスタは、ソースが接地され、ドレインが前記第2トランジスタのドレインと前記第3トランジスタのゲートと前記出力信号端子と前記第7トランジスタのドレインに接続され、ゲートが前記反転入力信号端子と前記第7トランジスタのゲートに接続される、付記1に記載の半導体装置。
【0061】
(付記4)
前記レベルシフト部は、D級アンプに適用される前記第2信号を出力する、付記1から3の何れか1つに記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0062】
1 内部電源生成回路
2 制御回路
3 レベルシフト回路
4 レベルシフト回路
4A レベルシフト回路
5 レベルシフト回路
6 D級アンプ
7 リセット回路
8 レベルシフト回路
9 論理積回路
10 レベルシフト部
10A レベルシフト部
11 第3トランジスタ
12 第4トランジスタ
13 第5トランジスタ
14 第6トランジスタ
15 第7トランジスタ
16 第8トランジスタ
20 第1トランジスタ
30 第2トランジスタ
40 インバータ
50 インバータ
60 トランジスタ
70 トランジスタ
100 半導体装置