(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060128
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】D級増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20250403BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
H03F1/52
H03F3/217
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170664
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 勇一
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA02
5J500AA17
5J500AA27
5J500AA41
5J500AA66
5J500AC56
5J500AF12
5J500AH09
5J500AH17
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK15
5J500AK25
5J500AK33
5J500AK47
5J500AK53
5J500AK62
5J500AM09
5J500AM21
5J500AS05
5J500AT01
5J500AT06
5J500PF02
5J500PF06
5J500PF10
5J500PG06
5J500WU01
5J500WU09
(57)【要約】
【課題】遅延処理が行われた場合でも、異常の検出を正確に行うことが可能なD級増幅回路を提供する。
【解決手段】入力された信号に対してPWM変調処理を行うPWM変調処理部と、PWM変調された信号をスイッチング素子により増幅する信号増幅部と、信号増幅部を通過後の信号において、設定された時間以上連続して電圧降下が生じた場合に、異常として検出する異常検出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された信号に対してPWM変調処理を行うPWM変調処理部と、
PWM変調された信号をスイッチング素子により増幅する信号増幅部と、
前記信号増幅部を通過後の信号において、設定された時間以上連続して電圧降下が生じた場合に、異常として検出する異常検出部と、を備える
D級増幅回路。
【請求項2】
前記異常検出部は、電界効果トランジスタと、前記電界効果トランジスタの入力端子に接続され、前記信号増幅部を通過後の信号の論理を反転させる第1反転回路と、前記電界効果トランジスタの出力端子に接続され、抵抗及び静電容量が並列に接続されてなる並列回路と、を備える
請求項1に記載のD級増幅回路。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記電界効果トランジスタの出力端子に接続され、前記電界効果トランジスタの出力信号の論理を反転させる第2反転回路と、前記第2反転回路の出力信号と外部から入力された異常検出の有効を示す信号との論理積演算を行う論理積回路と、をさらに備える
請求項2に記載のD級増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、D級増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
PWM(Pulse Width Modulation)変調された信号をスイッチング素子による信号増幅部により増幅するD級増幅回路においては、非常に大きい出力のトランジスタを使用しているため、出力端子の地絡、又は、出力端子間の短絡等の異常が生じると、大電流が発生して回路を故障させるおそれがある。そのため、D級増幅回路においては、異常が検出された場合に回路を保護する保護回路の搭載が要求される。
【0003】
特許文献1には、そのような保護回路を搭載したD級増幅回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のD級増幅回路では、PWM変調された信号のレベルと信号増幅部から出力された信号のレベルとをサンプリング回路にて比較することにより、異常の検出を行なっている。
【0006】
一般的に、D級増幅回路では、信号増幅部の前段のプリドライバにおいて、スイッチング素子に貫通電流が流れるのを防止するための遅延処理を行う遅延処理部が設けられている。
【0007】
そのため、PWM変調された信号のタイミングと信号増幅部から出力された信号のタイミングとの間にずれが生じ、遅延が大きくタイミングのずれが大きい場合、異常の検出を正確に行えないおそれがある。
【0008】
本開示は、上記の事情を踏まえ、遅延処理が行われた場合でも、異常の検出を正確に行うことが可能なD級増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のD級増幅回路は、入力された信号に対してPWM変調処理を行うPWM変調処理部と、PWM変調された信号をスイッチング素子により増幅する信号増幅部と、前記信号増幅部を通過後の信号において、設定された時間以上連続して電圧降下が生じた場合に、異常として検出する異常検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示のD級増幅回路によれば、遅延処理が行われた場合でも、異常の検出を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態のD級増幅回路を備えたD級増幅器の構成を示す図である。
【
図2】上記D級増幅器におけるプリドライバの構成を示す図である。
【
図3】上記D級増幅器における信号波形を示すグラフである。
【
図5】比較例のD級増幅器における信号波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本開示の一実施形態のD級増幅回路を備えたD級増幅器1の回路構成を示す図である。
図2は、上記D級増幅器1におけるプリドライバ20Pの構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のD級増幅器1は、D級増幅回路としてのLSI(Large Scale Integration)10と、LSI10に対して電源を供給する外部電源50と、LSI10に対して音声のデジタル信号DSを出力するデジタル信号出力部51と、を備える。D級増幅器1には、負荷としてスピーカRSPが接続される。
【0014】
LSI10は、入力されたデジタル信号DSに対してPWM変調処理を行うPWM変調処理部11と、スピーカ出力のプラス側の信号を処理するプラス側信号回路部12と、スピーカ出力のマイナス側の信号を処理するマイナス側信号回路部13と、LSI10の全体の動作制御を行う制御部14と、を備える。
【0015】
プラス側信号回路部12は、PWM変調処理された信号の正出力信号PWMPに対して遅延処理を行う遅延処理部21P(
図2に表示)を備えたプリドライバ20Pと、プリドライバ20Pを通過後の信号をスイッチング素子31Pにより増幅する信号増幅部30Pと、信号増幅部30Pを通過後の信号の異常を検出する異常検出部40Pと、を備える。
【0016】
信号増幅部30Pは、D級増幅回路の最終出力段であり、PチャネルトランジスタP1及びNチャネルトランジスタN1から構成されるスイッチング素子31Pを備える。各トランジスタP1及びN1は、それぞれ例えば電界効果トランジスタ等により構成されている。
【0017】
PチャネルトランジスタP1のソース端子は、配線抵抗R1及び配線抵抗ROUTを介して外部電源50に接続されている。また、NチャネルトランジスタN1のソース端子は、配線抵抗R2を介してグランドに接続されている。また、PチャネルトランジスタP1及びNチャネルトランジスタN1のドレイン端子同士が接続され、この接続点がスピーカのプラス側出力端子SPOUTPに接続されている。
【0018】
プリドライバ20Pは、PWM変調処理された信号の正出力信号PWMPを2系統に分配して、PチャネルトランジスタP1のゲート端子及びNチャネルトランジスタN1のゲート端子に出力する。
【0019】
また、プリドライバ20Pは、スイッチング素子31Pに貫通電流が流れるのを防止するため、PチャネルトランジスタP1及びNチャネルトランジスタN1に正出力信号PWMPを出力する際に、2つのトランジスタP1及びN1が同時にオン状態とならないように、遅延処理を行う。
【0020】
ここで、遅延処理は、2つのトランジスタP1及びN1が同時にオン状態とならないようにする処理であって、例えば、スイッチングのオン・オフの切り替わり時に、2つのトランジスタP1及びN1ともにオフになるデッドタイムを設ける等、どのような処理であってもよい。
【0021】
図2に示すように、プリドライバ20Pは、遅延処理部21Pを備える。遅延処理部21Pは、PチャネルトランジスタP1のゲート端子及びNチャネルトランジスタN1のゲート端子に出力する信号に対して共通に遅延処理を行う共通遅延処理部22Pと、PチャネルトランジスタP1のゲート端子及びNチャネルトランジスタN1のゲート端子に出力する信号に対して個別に遅延処理を行う個別遅延処理部23Pと、を備える。
【0022】
共通遅延処理部22Pは、複数のバッファ回路、複数のバッファ抵抗、及び、複数のバッファコンデンサ等から構成される。本実施形態の構成では、スイッチング素子31Pを通過後の信号は、通過前の信号に対して論理が反転される。そのため、共通遅延処理部22Pは、PWM変調処理された信号の正出力信号PWMPの論理を反転させるNOT回路を含み、PWM変調処理された信号の正出力信号PWMPと、信号増幅部30Pを通過後の信号とが同相となるように構成されている。個別遅延処理部23Pは、バッファ回路から構成される。
【0023】
なお、遅延処理部21Pの構成は、上記の構成に限らず、2つのトランジスタP1及びN1が同時にオン状態とならないよう処理する回路であれば、どのような回路としてもよい。
【0024】
異常検出部40Pは、信号増幅部30Pを通過後の信号において、設定された時間以上連続して電圧降下が生じた場合に、異常として検出する。
【0025】
詳細には、異常検出部40Pは、Pチャネルトランジスタ41Pと、Pチャネルトランジスタ41Pの入力端子であるゲート端子に接続され、信号増幅部30Pを通過後の信号の論理を反転させるNOT回路42Pと、Pチャネルトランジスタ41Pの出力端子であるドレイン端子に接続され、抵抗R5及び静電容量C1が並列に接続されてなるRC並列回路43Pと、Pチャネルトランジスタ41Pのドレイン端子に接続され、Pチャネルトランジスタ41Pの出力信号の論理を反転させるNOT回路44Pと、NOT回路44Pの出力信号と外部から入力された異常検出の有効を示す信号ENPとの論理積演算を行うAND回路45Pと、を備える。
【0026】
NOT回路42Pは、本開示の技術における第1反転回路の一例である。NOT回路44Pは、本開示の技術における第2反転回路の一例である。AND回路45Pは、本開示の技術における論理積回路の一例である。
【0027】
Pチャネルトランジスタ41Pは、電界効果トランジスタにより構成されている。Pチャネルトランジスタ41Pの接地端子であるソース端子は、配線抵抗ROUTを介して外部電源50に接続されている。
【0028】
AND回路45Pは、NOT回路44Pの出力信号及び信号ENPがともにハイレベル状態場合に、出力信号端子ERRPから異常を検知したことを示す信号、すなわち、ハイレベル信号を出力する。AND回路45Pの出力信号端子ERRPは、制御部14に接続されている。
【0029】
制御部14は、AND回路45Pの出力信号端子ERRPに基づいて、D級増幅器1において異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生している場合には、スイッチング素子31Pへの電源の供給を停止して、スイッチング素子31Pを保護する。
【0030】
マイナス側信号回路部13は、PWM変調処理された信号の反転出力信号PWMNに対して遅延処理を行う遅延処理部を備えたプリドライバ20Mと、プリドライバ20Mを通過後の信号をスイッチング素子31Mにより増幅する信号増幅部30Mと、信号増幅部30Mを通過後の信号の異常を検出する異常検出部40Mと、を備える。
【0031】
マイナス側信号回路部13は、プリドライバ20MにPWM変調処理された信号の反転出力信号PWMNが入力される点、及び、スイッチング素子31MのPチャネルトランジスタP2及びNチャネルトランジスタN2のドレイン端子同士の接続点がスピーカのマイナス側出力端子SPOUTMに接続されている点以外は、上記のプラス側信号回路部12と同様の構成のため、説明を省略する。
【0032】
D級増幅器1では、プラス側出力端子SPOUTPとマイナス側出力端子SPOUTMとの間に、負荷であるスピーカRSPを接続することにより、入力されたデジタル信号DSに対応する音声を再生することができる。
【0033】
次に、プラス側信号回路部12の異常検出部40P及びマイナス側信号回路部13の異常検出部40Mにおける異常検出処理について詳細に説明する。異常検出部40Pにおける処理と異常検出部40Mにおける処理は基本的に同じであるため、ここでは、異常検出部40Pを例として説明する。
図3は、上記D級増幅器1における信号波形を示すグラフである。
【0034】
図3の「通常時」の領域に示すように、出力端子の地絡、又は、出力端子間の短絡等の異常が生じていない状態、すなわち、D級増幅器1が正常に作動している状態において、信号増幅部30Pを通過後の信号SPOUTPにおけるハイレベル信号は、閾値電圧VThを上回るレベルとなる。
【0035】
ここで、閾値電圧VThとしては、一例として下記の値とすることができる。例えば、一般的なスピーカ出力電力の仕様として、電源電圧が5V、出力が1W、負荷抵抗が8Ωの場合、最大出力電流は800mA程度になる。出力端子の地絡、又は、出力端子間の短絡等により、スイッチング素子31Pにおいて800mA以上の電流が流れた場合の信号SPOUTPの電圧レベルを基準として、閾値電圧VThを決定してもよい。
【0036】
ノードAは、信号増幅部30Pの電圧降下を検知する電圧降下検知信号を示すノードであり、信号増幅部30Pを通過後の信号の論理を反転させるNOT回路42Pの出力端である。信号増幅部30Pにおいて電圧降下が生じている場合、ノードAの信号がハイレベル状態となる。
【0037】
NOT回路42Pは、信号増幅部30Pを通過後の信号SPOUTPにおいて、閾値電圧VThを上回るハイレベル信号部分のみをローレベルに反転して出力する。また、NOT回路42Pは、信号増幅部30Pを通過後の信号SPOUTPにおいて、閾値電圧VTh以下の信号はローレベルとみなし、当該ローレベル部分をハイレベルに反転して出力する。
【0038】
ノードBは、Pチャネルトランジスタ41Pの出力端、すなわち、Pチャネルトランジスタ41Pのドレイン端子であり、ノードAの反転信号が出力される。
【0039】
ただし、ノードBには、抵抗R5及び静電容量C1が並列に接続されてなるRC並列回路43Pが接続されている。そのため、ノードBにおけるハイレベル信号がローレベル信号に変化する、すなわち、ハイレベル信号が閾値電圧VTh以下の信号に変化する際に、抵抗R5及び静電容量C1の時定数分の時間が必要となる。
【0040】
ノードCは、信号増幅部30Pの異常を検知する異常検知信号を示すノードであり、Pチャネルトランジスタ41Pの出力信号の論理を反転させるNOT回路44Pの出力端である。信号増幅部30Pにおいて異常が生じている場合、ノードCの信号がハイレベル状態となる。
【0041】
NOT回路44Pは、Pチャネルトランジスタ41Pの出力信号において、閾値電圧VThを上回るハイレベル信号部分のみをローレベルに反転して出力する。また、NOT回路44Pは、Pチャネルトランジスタ41Pの出力信号において、閾値電圧VTh以下の信号はローレベルとみなし、当該ローレベル部分をハイレベルに反転して出力する。
【0042】
先ず、音声再生開始時には、信号SPOUTPはローレベル状態であるため、電圧降下検知信号であるノードAは、必ずハイレベル状態となる。その際に、ノードBはローレベル状態となり、それを受けてノードCがハイレベル状態となる。
【0043】
この状態でのノードCのハイレベル状態を異常として検出しないように、音声再生開始時には信号ENPをローレベル状態とし、AND回路45Pから異常検出信号を出力させないようにしている。そして、音声再生開始後に、信号ENPをハイレベル状態とし、以降ノードCがハイレベル状態になった場合に、異常を検出するようにしている。
【0044】
出力端子の地絡、又は、出力端子間の短絡等の異常が生じていない通常時において、ノードAは、ハイレベル状態とローレベル状態とが繰り返し発生するが、その反転信号であるノードBは、一度ハイレベル状態になると、ローレベル状態となるために、抵抗R5及び静電容量C1により決定される時定数分の時間が必要となる。
【0045】
信号PWMPでは、通常時において最も長くローレベル状態が連続する場合の最大連続時間が仕様により定まっているため、抵抗R5及び静電容量C1により、最大連続時間よりも余裕を持たせた時間である非検出時間分の時定数を確保することにより、通常時にノードBがローレベル状態となることがなくなる。
【0046】
その結果、通常時にノードCがハイレベル状態になることがなくなるため、通常時に異常が検出されることがなくなる。
【0047】
一例として、通常時において最も長くローレベル状態が連続する場合の最大連続時間に余裕を持たせた時間である非検出時間を100μSとし、ノードBが100μS以上ローレベル状態になった場合に、異常を検出するようにする場合、抵抗R5は1MΩ、静電容量C1は100pFとすればよい。
【0048】
出力端子の地絡又は出力端子間の短絡等の異常の発生時においては、ノードAはハイレベル状態を維持しつづけるため、ノードBは徐々にローレベル状態となり、閾値電圧VTh以下の信号になった際に、ノードCがハイレベル状態となり、異常が検出される。
【0049】
ここで、本実施形態のD級増幅器1の効果を分かりやすく説明するため、比較例のD級増幅器100について説明する。
図4は、比較例のD級増幅器の構成を示す図である。
図5は、比較例のD級増幅器における信号波形を示すグラフである。
【0050】
図4に示すように、比較例のD級増幅器100は、本実施形態のD級増幅器1と比較して、プラス側信号回路部12の異常検出部140P及びマイナス側信号回路部13の異常検出部140Mの構成が異なる。異常検出部140Pにおける処理と異常検出部140Mにおける構成及び処理は基本的に同じであるため、ここでは、異常検出部140Pを例として説明する。
【0051】
異常検出部140Pは、入力された2つの信号の論理積演算を行うAND回路141Pと、入力された信号の論理を反転させるNOT回路142Pと、を備える。
【0052】
AND回路141Pには、2つのトランジスタP1及びN1の接続点から出力され、NOT回路142Pにより反転された信号INVPと、PWM変調された信号PWMPである基準信号INPとが入力される。
【0053】
異常検出部140Pは、AND回路141Pにより、信号INVP及び基準信号INPがともにハイレベル状態場合に、出力信号端子ERRPから異常を検知したことを示す信号、すなわち、ハイレベル信号を出力する。
【0054】
換言すると、異常検出部140Pは、信号INVPを、基準信号INPに基づいてサンプリングし、信号INVP及び基準信号INPの2つの信号を比較することにより、異常の検出を行う。
【0055】
この場合、2つの信号のタイミングにずれが生じていると、異常の検出を正確に行えないおそれがある。
【0056】
本実施形態のD級増幅器1及び比較例のD級増幅器100における遅延処理部21Pでは、最大300ns程度の遅延が発生する。また、信号増幅部30Pにおいても、遅延処理部21Pと比較したら小さいが、数ns程度の遅延が発生する。
【0057】
比較例のD級増幅器100では、PWM変調された信号PWMNを基準信号INPとし、この基準信号INPと、信号増幅部30Pを通過後にNOT回路42Pにより反転された信号INVPの2つの信号を比較している。
【0058】
この場合、
図5に示すように、信号増幅部30Pを通過後の信号SPOUTPは、遅延処理部21P及び信号増幅部30Pにおいて大きく遅延が発生するため、2つの信号のタイミングにずれ(遅延時間TD)が生じ、2つの信号を同じタイミングで比較できないため、異常の検出を正確に行うことができない。
【0059】
その結果、例えば、
図5の「通常時」の領域に示すように、異常が発生していない領域でも、異常の誤検出が発生してしまう。
【0060】
これに対して、本実施形態のD級増幅器1では、プリドライバ20P及び信号増幅部30Pを通過する前の信号である信号PWMPを基準信号として用いたサンプリングを行わないようにして、上記の遅延処理の影響をなくしている。
【0061】
また、本実施形態の異常検出部40Pでは、異常検出部40Pに、抵抗R5及び静電容量C1が並列に接続されてなるRC並列回路43Pを設けたことにより、RC並列回路43Pにより決定される非検出時間以下の時間で、ノードAにおいてハイレベル状態とローレベル状態とが周期的に発生する状態では異常が検出されないため、通常時に異常が誤検出されることがなくなる。
【0062】
また、本実施形態の異常検出部40Pでは、出力端子の地絡又は出力端子間の短絡等の異常が発生して、非検出時間を上回る長さの時間、ノードAにおいて連続してローレベル状態となった場合には、異常として検出することができる。
【0063】
そのため、本実施形態のD級増幅器1によれば、遅延処理が行われた場合でも、異常の検出を正確に行うことができる。
【0064】
[変形例]
以上、本開示のD級増幅回路の好ましい実施形態について説明したが、本開示のD級増幅回路は上記実施形態の態様に限らず、種々の変更を行ってもよい。
【0065】
例えば、上記実施形態では、異常検出部40P及び異常検出部40Mのトランジスタとして、Pチャネルトランジスタを用いていたが、これに限らず、Nチャネルトランジスタを用いてもよい。
【0066】
なお、異常検出部40P及び異常検出部40MのトランジスタとしてNチャネルトランジスタを用いる場合には、Nチャネルトランジスタの周辺回路を適宜変更すればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、PWM変調処理部11にデジタル信号を入力するデジタル方式のD級増幅回路としていたが、PWM変調処理部11にアナログ信号を入力するアナログ方式のD級増幅回路としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1、100 D級増幅器
11 変調処理部
12 プラス側信号回路部
13 マイナス側信号回路部
14 制御部
20M、20P プリドライバ
21P 遅延処理部
22P 共通遅延処理部
23P 個別遅延処理部
30M、30P 信号増幅部
31M、31P スイッチング素子
40M、40P 異常検出部
41M、41P Pチャネルトランジスタ
42M、42P NOT回路
43M、43P RC並列回路
44M、44P NOT並列回路
45M、45P AND回路
50 外部電源
51 デジタル信号出力部
140M、140P 異常検出部
141M、141P AND回路
142M、142P NOT回路