(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060161
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/42 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
A47C7/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170714
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 将太
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084FA06
(57)【要約】
【課題】背フレームに対して背シートを簡単に着脱することが可能な椅子を提供する。
【解決手段】本発明に係る椅子Aは、背フレームh1および背部h2を有する背凭れを備え、背部h2は、上部連結部huおよび下部連結部によって背フレームh1に連結されており、上部連結部huにおける連結が解除された状態で下部連結部によって回動可能となり、且つ、所定位置まで回動された状態で下部連結部における連結が解除可能となる構成である。
【選択図】
図43
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背フレームおよび背部を有する背凭れを備え、
前記背部は、上部連結部および下部連結部によって前記背フレームに連結されており、前記上部連結部における連結が解除された状態で前記下部連結部によって回動可能となり、且つ、所定位置まで回動された状態で前記下部連結部における連結が解除可能となる構成であること
を特徴とする椅子。
【請求項2】
前記背フレームおよび前記背部の一方に回動軸が設けられ、他方に軸受が設けられており、前記回動軸と前記軸受とが係脱可能に構成されていること
を特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記軸受は、断面がC字状もしくはU字状で前記回動軸が進入、進出可能な第1開口を有すること
を特徴とする請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記軸受が弾性変形するスナップフィット構造によって前記回動軸と前記軸受とが係脱可能に構成されていること
を特徴とする請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記背部が前記所定位置まで回動されていない状態において、前記回動軸と前記軸受との係合離脱を規制する離脱規制部をさらに備えること
を特徴とする請求項3記載の椅子。
【請求項6】
前記背フレームおよび前記背部の一方に前記軸受が進入、進出可能な第2開口を有する収容部が設けられ、前記収容部内に前記回動軸が配置されており、
前記離脱規制部として、
前記第1開口の開口方向と、前記第2開口の開口方向とのなす角度が、同一直線上となる180度から所定角度ずれた場合に、前記背フレームおよび前記背部の他方の所定部位を当接させる配置となることで前記回動軸と前記軸受との係合離脱を規制する当接部材が前記背フレームおよび前記背部の一方に設けられていること
を特徴とする請求項5記載の椅子。
【請求項7】
前記所定部位は、前記軸受の外面であり、
前記当接部材は、前記回動軸を軸方向と平行に挟む配置で離間して設けられた二つの壁部であること
を特徴とする請求項6記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、背凭れの構成として、背フレームに対して、着座者の背が接触する張地が固定される背部が前面に別に設けられた椅子が存在する(特許文献1:特開2017-086669号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今は椅子の分野においても環境配慮の観点や、多様なデザイン嗜好に対応する観点等から、使用者自身がシート等の構成部品を簡単に着脱できる椅子が求められている。特に、着座する際に直接触れる背凭れは、着座の繰り返しによる擦れ等に起因して張地の破損や汚損が生じ易く、またデザイン面でも主要な要素となる構成部品であることから、上記のニーズが大きかった。したがって、張地が固定される背部を簡単に着脱できる構造の実現が重要となる。しかしながら、上記の特許文献1に例示される従来の椅子においては、背部は背フレームに対してネジ等を用いて固定される構造であった。そのため、背部の着脱作業は時間がかかり、労力を要するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、背フレームに対して背部を簡単に着脱することが可能な椅子を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係る椅子は、背フレームおよび背部を有する背凭れを備え、前記背部は、上部連結部および下部連結部によって前記背フレーム(背フレームに支持、固定された部材を含む)に連結されており、前記上部連結部における連結が解除された状態で前記下部連結部によって回動可能となり、且つ、所定位置まで回動された状態で前記下部連結部における連結が解除可能となる構成であることを要件とする。
【0008】
これによれば、背フレームに対して背部を簡単に着脱することが可能な椅子を実現できる。
【0009】
また、前記背フレーム(背フレームに支持、固定された部材を含む)および前記背部(背部に支持、固定された部材を含む)の一方に回動軸が設けられ、他方に軸受が設けられており、前記回動軸と前記軸受とが係脱可能に構成されていることが好ましい。これによれば、上部連結部における連結が解除された状態で、背フレームに対して背部を回動および係脱させることができる。
【0010】
また、前記軸受は、断面がC字状もしくはU字状で前記回動軸が進入、進出可能な第1開口を有することが好ましい。これによれば、直線的な移動により回動軸と軸受とを係脱させることができる。
【0011】
また、前記軸受が弾性変形するスナップフィット構造によって前記回動軸と前記軸受とが係脱可能に構成されていることが好ましい。これによれば、背部を背フレームに対して移動させる際にガタツキが生じることなく、且つ、極めて簡単且つ短時間で背フレームに対して背部を着脱することができる。
【0012】
また、前記背部が前記所定位置まで回動されていない状態において、前記回動軸と前記軸受との係合離脱を規制する離脱規制部をさらに備えることが好ましい。これによれば、使用状態において背フレームから背部が外れてしまう不具合を防止することができる。
【0013】
また、前記背フレームおよび前記背部の一方に前記軸受が進入、進出可能な第2開口を有する収容部が設けられ、前記収容部内に前記回動軸が配置されており、前記離脱規制部として、前記第1開口の開口方向と、前記第2開口の開口方向とのなす角度が、同一直線上となる180度から所定角度ずれた場合に、前記背フレームおよび前記背部の他方の所定部位を当接させる配置となることで前記回動軸と前記軸受との係合離脱を規制する当接部材が前記背フレームおよび前記背部の一方に設けられていることが好ましい。これによれば、回動軸と軸受けとを係脱させる構成を利用して、離脱規制部を実現することができる。
【0014】
また、前記所定部位は、前記軸受の外面であり、前記当接部材は、前記回動軸を軸方向と平行に挟む配置で離間して設けられた二つの壁部であることが好ましい。これによれば、離脱規制部を簡素な構成により実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、背フレームに対して背部を簡単に着脱することが可能な椅子を実現できる。特に、下部連結部における連結を行う際にネジ等の固定構造を用いず、所定位置まで回動させれば直線的に移動させるだけで背部の着脱が可能となるため、簡素な構造で且つ極めて簡単な作業を実現できる。また、使用状態すなわち上部連結部における連結が解除されていない状態においては背部の着脱が不可能となるため、使用上の安全性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における椅子の前方側斜視図である。
【
図2】本実施形態における椅子の後方側斜視図である。
【
図3】肘掛けが取り外され、支持基部から取り外した座を分解した状態を示す前方側斜視図である。
【
図7】
図6内のVII-VII線における概略断面図である。
【
図8】押圧板の前方側斜視図(A)と押圧板の後方側斜視図(B)である。
【
図9】
図6内のIX-IX線における概略断面図である。(A)はストッパ体の装着前の図であり、(B)はストッパ体装着後の図である
。
【
図10】ストッパ体の前方側斜視図(A)とストッパ体の後方側斜視図(B)である。
【
図12】背凭れを分解した状態を示す前方側斜視図である。
【
図13】背凭れを分解した状態を示す後方側斜視図である。
【
図14】第1張地係合体の正面図(A)と第2張地係合体の正面図(B)である。
【
図15】背部への第1張地係合体の係合状態を示す説明図である。
【
図16】背部とランバーサポートの後方側斜視図である。
【
図21】ヘッドレストからクランプ部を取り外した状態を示す前方側斜視図である。
【
図22】高さ調整機構のコマの後方側斜視図(A)と高さ調整機構のコマの前方側斜視図(B)である。
【
図23】コマとカム面との状態を示す側面図である。
【
図24】コマとカム面との状態を示す断面図である。
【
図25】コマが抜け止めストッパにより抜け止めされた状態を示す断面図である。
【
図26】非装着状態のコマが誤装着防止ストッパにより規制された状態を示す断面図である。
【
図28】
図27から化粧枠を取り外した状態を示す後方側斜視図である。
【
図29】第3張地係合体と第4張地係合体が取り付けられた張地の枠体への装着方法を示す説明図である。
【
図30】第3張地係合体と第4張地係合体が取り付けられた張地の背面図である。
【
図31】第4張地係合体の正面図(A)、第4張地係合体が長さ方向に伸びた状態を示す正面図(B)、第4張地係合体が長さ方向に圧縮された状態を示す正面図(C)および第4張地係合体が長さ方向に対して曲がった状態を示す正面図(D)である。
【
図32】肘掛けを分解した状態を示す前方側斜視図である。
【
図33】肘掛けを分解した状態を示す後方側斜視図である。
【
図34】肘当てを分解した状態を示す前方側斜視図である。
【
図35】肘当てを後方側に移動させたときの状態を示す要部側面図(A)と、同要部平面図(B)と、同第1経路の平面図(C)および同第2経路部の平面図(D)である。
【
図36】肘当てを前方側に移動させたときの状態を示す要部側面図(A)と、同要部平面図(B)と、同第1経路の平面図(C)および同第2経路部の平面図(D)である。
【
図37】肘当てを前方側に移動させて内側に向けたときの状態を示す要部側面図(A)と、同要部平面図(B)と、同第1経路の平面図(C)および同第2経路部の平面図(D)である。
【
図38】
図1の椅子の背凭れの動作を説明する説明図である。
【
図39】
図1の椅子の操作機構の分解斜視図である。
【
図40】
図1の椅子の操作機構の例を示す図であって、
図40(A)は斜視図であり、
図40(B)は正面図であり、
図40(C)は側面断面図である。
【
図43】
図1の椅子の操作機構と背部との連結構造を説明する説明図である。
【
図44】
図1の椅子の離脱規制部の例を示す図であって、
図44(A)は操作機構が可動範囲内の前端位置にある状態の図であり、
図44(B)は操作機構が可動範囲内の後端位置にある状態の図である。
【
図45】背フレームに対する背部の着脱動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。なお、本明細書中においては、椅子の座に座った着座者を基準にして「上」および「下」、「前(正面)」および「後(背面)」、並びに「左」および「右」を定義する(言い換えると、着座者から見て「上」および「下」、「前(正面)」および「後(背面)」、並びに「左」および「右」を意味する)。
【0018】
本実施形態は、回動軸としてのシンクロシャフトJ2に回動体としての座受d1を連結させる際の連結構造に本発明を適用した椅子Aを例示している。
【0019】
図1~
図3に示すように、本実施形態における椅子Aは、脚Bと、この脚Bに旋回可能に支持された支持基部Cと、この支持基部Cの上に配された座Dと、支持基部Cに対して後傾動作可能に支持された背凭れ構造体Fと、背凭れ構造体Fに取り付けられたヘッドレストXと、座Dに取り付けられた肘掛けYと、を備えたものである。背凭れ構造体Fは、支持基部Cに支持された背支持体Gと、背支持体Gに支持された背凭れHを具備している。
【0020】
以下、この椅子Aの各構成について詳述する。
【0021】
(脚B)
脚Bは、先端にキャスタb1を有し放射状に配置された複数本の脚羽根b2と、これら脚羽根b2の基端部に立設された脚支柱b3とを備えたものである。脚支柱b3は、上下方向に伸縮可能である。脚支柱b3は図示しないガススプリングを有しており、このガススプリングにより支持基部Cが上下に位置変更可能に支持されている。なお、脚Bの具体的な形状は特に限定されるものではなく、他の公知の構成を適宜採用することができる。
【0022】
(支持基部C)
図4は
図3中の支持基部Cの周辺部分の斜視図である。本実施形態における支持基部Cは有底箱型に形成されている。支持基部Cの後方側底面には取付穴c1(
図2参照)が形成されている。脚支柱b3を取付穴c1に差し込むことにより脚支柱b3の上部に支持基部Cが取り付けられている。支持基部Cの左右方向には、ロッキング動作時における回転軸J1と、回動軸としてのシンクロシャフトJ2とロッキング時の反力ばねc2の第1端部を係止するための係止軸J3が掛け渡されている。反力ばねc2の第2端部は支持基部Cに配設された反力ばね受部c3に係合されている。回転軸J1、シンクロシャフトJ2および係止軸J3はいずれも左右の壁の間に配設されたリンク板c4を貫通している。回転軸J1には背支持体Gのアームg1が連結されている。シンクロシャフトJ2には座Dの座受d1がシンクロシャフトJ2の軸線周りに回動可能に嵌合されている。係止軸J3には反力ばねc2の一端部が係合されている。リンク板c4は回転軸J1を回転の中心として回動することによりロッキング動作を実現している。また、背凭れHのロッキング動作時にはリンク板c4とシンクロシャフトJ2により、ロッキング動作に同期させた状態で座Dが移動する。このように回転軸J1、シンクロシャフトJ2、係止軸J3およびリンク板c4によりシンクロロッキング機構をなし、シンクロロッキング動作が実現されている。
【0023】
また、支持基部Cの前端部分における左右の壁には円弧状の長孔c5が形成されている。この長孔c5どうしを左右方向に掛け渡すようにして軸体J4が配設されている。長孔c5と軸体J4は、背凭れHをロッキング動作させた際に、リンク板c4とシンクロシャフトJ2による座Dの移動が所定の軌跡で移動させるようにガイドしている。また、この軸体J4は後述する座Dの前傾動作機構の一部も兼ねている。支持基部Cの右側前方部分にはロッキング動作をさせるために必要な作動力を調整するためのロッキング力調整レバーc6が配設されている。支持基部Cの左側後方部分にはロッキング動作の初期位置(起立位置)でのロックのオン―オフを切り替えるロッキング操作レバーc7が配設されている。
図3、
図4に示されている支持基部Cの他の構成部分については公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0024】
(座D)
座Dは、
図3に示すようにシェル状をなす回動体としての座受d1と、この座受d1上に前後位置を変更可能に設けられた座本体d2とクッションd3を備えている。また、
図5~
図7に示すように、座受d1の下面前方側部分には下面が開口する凹部d4が形成されている。凹部d4には下面が円弧面をなす突出体d5が2本立設されている。突出体d5の左右方向における外側位置には突出体d5の円弧面の高さ位置と同じ高さ位置に位置合わせされた軸体収容孔d6が穿設されている。左右の軸体収容孔d6に軸体J4が挿通されている。この状態における軸体J4の上面は突出体d5の円弧面に当接した状態になっている。座受d1の上面には、軸体収容孔d6の左右方向の外側となる平面位置に開口部d7が配設されている。座Dの側方断面図にあらわされているように、開口部d7には軸体J4の上面にスプリング保持体d8とスプリングd9が軸体J4の側(下側)から記載順に収容されている。また開口部d7には、スプリングd9を付勢した状態で収容するための押圧板d10が取り付けられている。
【0025】
図8に示すように、押圧板d10は平面視長方形状に形成されている。長手方向における一方の端縁部分には上側に突出する上方突起d10aが形成されている。上方突起d10aが形成されている側の端部とは反対側の端面には押圧板d10の長手方向に突出する前方突起d10bが形成されている。座受d1の開口部d7には上方突起d10aが通過可能な後方進入部d7aが形成されており、後方進入部d7aの後方で後方進入部d7aに隣接する位置には、上方突起d10aが嵌合する嵌合孔d7bが形成されている。また、開口部d7の前方位置には前方突起d10bが進入可能な前方進入部d7cが形成されている。嵌合孔d7bと前方進入部d7cの平面位置は、押圧板d10の上方突起d10aと前方突起d10bの平面位置に位置合わせされている。なお後方進入部d7aの奥行寸法は、押圧板d10の長手方向の長さ寸法よりも大きく形成されている。
【0026】
前述の開口部d7にスプリング保持体d8とスプリングd9が収容された後、押圧板d10でスプリングd9を下向きに押圧(圧縮)しながら押圧板d10が開口部d7に装着される。具体的には、下向きに開口された状態で後方にスライドさせた押圧板d10は、上方突起d10aが嵌合孔d7bを一旦通過し、開口部d7に押圧板d10の全体が収容されるまで後方進入部d7aの奥側位置まで押圧板d10を移動させる。開口部d7に押圧板d10の全体が収容された後、スプリングd9に対する押圧力を緩め、押圧板d10を前方にスライド移動させれば、上方突起d10aが嵌合孔d7bに嵌合し、前方突起d10bが前方進入部d7cに進入し、開口部d7に対して押圧板d10を抜け止めした状態で装着することができる。この状態におけるスプリングd9は押圧板d10により所定の付勢力が発生している状態であるため、上方突起d10aは嵌合孔d7bとの嵌合状態が維持され、押圧板d10が開口部d7から脱落してしまうことはない。
【0027】
このようにして座受d1は、支持基部Cに保持させた軸体J4と、軸体J4に載置されたスプリング保持体d8およびスプリングd9と押圧板d10により軸体J4の上面高さ位置と押圧板d10の下面高さ位置の間においてスプリングd9が圧縮可能な範囲での往復移動が可能になる。すなわち、着座者が座Dの前方部分をスプリングd9の付勢力に抗して下方に向けた力(外力)を掛けると、座Dを前傾姿勢にすることができる。座Dが前傾姿勢になると、スプリングd9の付勢力が増大し、座Dに付与した外力を解除すると蓄積された付勢力の一部により座Dが初期位置に戻る。このとき軸体J4は、支持基部Cに形成された長孔c5に沿って斜め上下方向に往復動する。
【0028】
また、
図5に示すように、座受d1の下面中央部分には、座受d1の上面と下面を連通させる連通部であるシンクロシャフト装着部d11が設けられている。本実施形態におけるシンクロシャフト装着部d11は、座受d1の下側に向けて立設された複数の傾斜面形成体としての傾斜凸部d11aと、円弧状の当接面を有する複数の当接部としての円弧状当接部d11bを有している。傾斜凸部d11aと円弧状当接部d11bはいずれもリブ形状に形成されており、シンクロシャフト装着部d11の長さ方向に沿って配設されている。シンクロシャフトJ2に座受d1を装着する際は、シンクロシャフトJ2を傾斜凸部d11aに沿ってシンクロシャフト装着部d11に差し込ませ、シンクロシャフトJ2の外周面を円弧状当接部d11bに当接させればよい。シンクロシャフトJ2を円弧状当接部d11bに当接させることで、シンクロシャフトJ2に対して座受d1を適切な状態で取り付けることができる。
【0029】
図9は、座受d1をシンクロシャフトJ2に取り付けた状態の要部断面図である。
図9(A)から明らかなように、座受d1の上面にはシンクロシャフト装着部d11に連通する開口孔d12が形成されている。本実施形態における開口孔d12は、円弧状当接部d11bのシンクロシャフト装着部d11の長さ方向(左右方向)における配設位置と同じ長さ方向位置に配設されている。なお、開口孔d12は、円弧状当接部d11bのシンクロシャフト装着部d11の長さ方向(左右方向)における配設位置とは異なる長さ方向位置に配設することもできる。この開口孔d12は、側面視した際において傾斜凸部d11aの傾斜面d11xに交差する形状に形成されている。より詳細には、傾斜凸部d11aには下側前方に開口する下面開口部から上側後方に延びる傾斜面d11xが形成されている。これに対し、開口孔d12は下側後方に開口する下面開口部から上側前方に延びる(傾斜面d11xとは逆方向に傾斜する)方向に延びる逆傾斜孔に形成されている。これにより、傾斜凸部d11aによって形成される傾斜面d11xと、開口孔d12の内周面d12xとにより側面視形状がV字形状をなしている。
【0030】
この開口孔d12の内周面d12xには第1係合凹部d12aが形成されており、開口孔d12の座受d1の上面における開口部周縁には第2係合凹部d12bが形成されている(
図6参照)。また、
図9(B)に示すように、開口孔d12には、シンクロシャフト装着部d11に進入させたシンクロシャフトJ2を抜け止め固定するためのストッパ体d13が装着される。
図9(B)に示すように開口孔d12にストッパ体d13が装着されることにより、回動体連結構造としての座受―シンクロシャフト連結構造10が構成され、シンクロシャフトJ2の外周面に沿って座受d1が回動可能に連結される。
【0031】
ストッパ体d13は
図10に示すように、上部d13aと傾斜部d13bを有する側面視略L字形状体に形成されている。上部d13aの上面には座受d1の上面の格子模様と同様の格子模様が形成されている。上部d13aの後方側面には後方に突出する位置ずれ防止用凸部としての後方突出部d13cが形成されている。傾斜部d13bは、開口孔d12の内周面d12xと同一傾斜に形成されており、開口孔d12に進入可能に形成されていると共に、傾斜部d13bの前面から突出する係合爪d13dが配設されている。係合爪d13dは、弾性変形により傾斜部d13bの前面に対して突出入可能な片持ち梁状に形成されている。傾斜部d13bの下端部には下方突出部d13eが形成されている。上部d13aの下面側と傾斜部d13bの後面側によって円弧状の内底面を有するシンクロシャフト嵌合部d13fが形成されている。
【0032】
このように形成されたストッパ体d13は、座受d1の上面側から傾斜部d13bを開口孔d12の内周面d12xに沿って挿し込むようにして装着される。このとき傾斜部d13bの前面に形成された係合爪d13dは、弾性変形しながら開口孔d12の内周面d12xに沿って移動する。係合爪d13dが開口孔d12の内周面d12xに形成された第1係合凹部d12aの位置に到達すると係合爪d13dの弾性変形が復元し、第1係合凹部d12aと凹凸嵌合し、ストッパ体d13が抜け止めされた状態になる。この状態においては、後方突出部d13cが開口孔d12の開口部に形成された第2係合凹部d12bと係合(嵌合)した状態にもなる。すなわち、シンクロシャフト嵌合部d13fにシンクロシャフトJ2が遊嵌または嵌合した状態が解除される2方向の動きが規制された状態にすることができる。なお、下方突出部d13eは、シンクロシャフト嵌合部d13fの下端部を補強する補強部として用いられている。
【0033】
このようにしてシンクロシャフトJ2およびストッパ体d13が装着された座受d1は、座受d1を上側に向けて引っ張って
図9(B)内の矢印A方向の力が作用しても、座受d1の矢印A方向への移動がストッパ体d13で規制された状態になる。これにより、座受d1をシンクロシャフトJ2から抜け止めされた状態にすることができる。なお、ストッパ体d13を座受d1の開口孔d12から抜き取れば、座受d1はシンクロシャフトJ2から容易に引き抜くことができる。このように本実施形態における座受d1は、工具を用いることなくシンクロシャフトJ2への装着や分解を行うことができる点において好都合である。このようにしてシンクロシャフトJ2に取り付けられた座Dは、回転軸J1、リンク板c4およびシンクロシャフトJ2により、背凭れHの後傾動作(ロッキング動作)に同期して動くように構成されている。
【0034】
(背凭れ構造体F)
背凭れ構造体Fは、支持基部Cに回動可能に支持された背支持体Gと、この背支持体Gを介して支持基部Cに後傾動作可能に支持された背凭れHを具備している。
【0035】
(背支持体G)
図11に示すように背支持体Gは、回転軸J1に回動可能に支持された左右のアームg1と、これらアームg1の後端部間を連結する連結プレートg2とを備えている。この背支持体Gは、金属製のものであり、アームg1と連結プレートg2は溶接により接合されている。
【0036】
左右のアームg1は、対をなしており前後方向に延びる板状のもので、その前方部分に回転軸J1およびシンクロシャフトJ2を挿通固定させるための軸孔g3が配設されている。左右のアームg1は、軸孔g3に挿通固定した回転軸J1を回転の中心として回動可能に支持されている。連結プレートg2の後方側の面(背面)には、複数のボルト(図示はせず)を挿通させるための複数のボルト挿通孔(図示はせず)が設けられている。各々のボルト挿通孔の前面側(正面側)には、ナット部g4が溶接により固定されている。また、アームg1にはロッキング操作レバーc7が回動可能に取り付けられている。
【0037】
(背凭れH)
図12および
図13に示すように、背凭れHは、背フレームh1と、背フレームh1の前側に配された背部h2と、背部h2に張り設けられた張地h3、張地h3の背面側位置で背部h2に取り付けられたランバーサポートh4および背部h2を背フレームh1に対して前後方向に位置変更可能に位置決めする操作機構h5を具備している。なお、操作機構h5は、他の構成要素(座、脚、ヘッドレスト、肘掛け等)位置を変える機構に適用することができる(不図示)。
【0038】
背凭れHは、背フレームh1の前側に、張地h3を張り設けた背部h2を前後方向に位置変更可能に配してなる。このような背凭れHの構成であると、背部h2は、全体として弾性変形を行いやすい構造にし易いものとなり、背部h2に、着座者の背部を包み込むような柔軟性を付与させやすくなっている。背凭れHの全体は、支持基部Cに設けられた回転軸J1を中心にして後傾動作を行うことができるようになっている。具体的には、この背凭れHは、背支持体Gを介して支持基部Cの回転軸J1まわりに回動可能に支持されたものである。
【0039】
(背フレームh1)
背フレームh1は、支持基部Cに設けられた回転軸J1を中心に後傾動作が可能であり、左右の側フレーム部h1aと、これら左右の側フレーム部h1aの上端部間に架設された上フレーム部h1bと、左右の側フレーム部h1aの下端部からそれぞれ前方に延びる左右の下フレーム部h1cと、これら左右の下フレーム部h1cどうしを結合し背支持体Gの連結プレートg2に止着される下連結部h1dとを備えたものである。これら左右の側フレーム部h1a、上フレーム部h1b、左右の下フレーム部h1cと下連結部h1dは、合成樹脂により成形されており、一体に組み立てられている。
【0040】
背フレームh1における左右の側フレーム部h1aは、それぞれ下に向かって漸次幅広となる部材の形状をなしている。背フレームh1の側フレーム部h1aは、背部h2に張設された張地h3を主体に構成された背凭れ面の側部裏側に配されている。左右の側フレーム部h1aは、それぞれを側面視かつ正面視した際において、略くの字状をなし、左右の側フレーム部h1aにおける上側部分と下側部分は、屈曲部分を介して連続している。
【0041】
背フレームh1における上フレーム部h1bは、背凭れ面の上部裏側に配されており、側フレーム部h1aの上端部どうしを連結する構造枠体である。上フレーム部h1bには、背部h2の上端部を取り付けるための上部連結部を構成する要素が設けられている。すなわち、この上フレーム部h1bの前面には前方に開口する複数の凹陥部h1eおよび凸部h1fが左右方向に設けられている。この上フレーム部h1bの底面には各凹陥部h1e内に連通するボルト挿通孔h1gが設けられている。
【0042】
背フレームh1における左右の下フレーム部h1cは、左右の側フレーム部h1aに連続し、前部が左右の側フレーム部h1aの下端から回転軸J1に対応する位置まで延びている。すなわち、左右の下フレーム部h1cは、その一部が背支持体Gにおける左右のアームg1の外側に位置している。換言すれば、左右の下フレーム部h1cは、前後方向に延びてなるものであり、前端部が座Dの下方に配置された支持基部Cの両側にまで延出したものとなっている。また、下フレーム部h1cには第2ブラケットh1hが立設されている。
【0043】
(背部h2)
背フレームh1の前方に配された背部h2は、上端部と左右の下部において背フレームh1に取り付けられている。背部h2の上端部の背面側には、背フレームh1の上フレーム部h1bに形成された凹陥部h1eに凹凸嵌合する凸部h2aと、凸部h1fが嵌合する凹部h2bが各々の凹陥部h1eおよび凸部h1fに対応するように配設されている。また、背部h2の背面側には背フレームh1の側フレーム部h1aと下フレーム部h1cに対応する箇所に張地h3を係合させるための係合溝h2cが配設されている。背部h2の下側左右後方部分には、背フレームh1に連結された操作機構h5に連結される第1ブラケットh2dが形成されている。すなわち背部h2は、操作機構h5を介して背フレームh1に移動可能に連結されている。
【0044】
背部h2に張設される張地h3には、
図14(A)に示すような第1張地用係合体h6が張地h3の上端縁部分に縫製によって取り付けられている。第1張地用係合体h6は、背部h2の上端部の幅寸法と同程度の幅寸法に形成された長尺の合成樹脂製の薄板材である。第1張地用係合体h6には、背部h2の上端部背面側の凸部h2aおよび凹部h2bの部分に対応させた位置に凸部h2aおよび凹部h2bの形状に合わせた開口を有する装着部h6aおよびh6bが形成されている。装着部h6aは第1張地用係合体h6の幅方向の端縁に開口する形状に形成されており、装着部h6bは第1張地用係合体h6に対して透孔形状に形成されている。
【0045】
また、第1張地用係合体h6の背部h2の上端部中央部分には係合ピンKPを挿通させる挿通孔h6cが形成されている。また挿通孔h6cの周辺には挿通孔h6cを逆U字状に取り囲むようにして切込線h6dが形成されており、挿通孔h6cに係合ピンKPを挿入した際における局所的な弾性変形を許容して背部h2の上端部への第1張地用係合体h6の浮き上がりが防止されている。なお、張地h3の側方部分および下端部における外周縁には、
図14(B)に示すような係合溝h2cに差し込むための第2張地用係合体h7が縫製によって取り付けられている。
【0046】
本実施形態における第2張地用係合体h7には、タグ位置決め用のスリットh7aが形成されている。タグ位置決め用のスリットh7aは、タグTと同じ幅寸法に形成されている。スリットh7aにタグTを差し込んだ状態で張地h3に縫製すれば、タグTを椅子Aの所定位置に容易に取り付けることができる。タグTには、椅子Aのメーカー名やブランド名または椅子Aの取り扱い説明用動画再生ページの他、宣伝広告用ページまたはSNS(ソーシャルネットワークサービス)への誘導用ページへのURLを表示することができる。
【0047】
このように外周縁の全体に第1張地用係合体h6と第2張地用係合体h7が縫製された張地h3の背部h2への張設について説明する。背部h2の正面側から張地h3で背部h2が包み込まれ、張地h3の上端縁部分の第1張地用係合体h6の装着部h6aおよびh6bを、
図15に示すように背部h2の凸部h2aおよび凹部h2bに位置合わせして配設する。このとき、装着部h6aが凸部h2aの上側から進入した状態にする。この状態で背部h2の凸部h2aが背フレームh1の凹陥部h1eに、背部h2の凹部h2bが背フレームh1の凸部h1fにそれぞれ凹凸嵌合し、係合ピンKPを用いて背部h2、第1張地用係合体h6および背フレームh1が係合される。これにより、背フレームh1と背部h2により張地h3が位置決めされた状態で挟持され、背フレームh1、背部h2および張地h3の上端部が一体化される。そして張地h3の上端部分以外の部分は、第2張地用係合体h7を背部h2の背面側の側方および底部の外周縁に沿って形成された係合溝h2cに差し込むことによって取り付けられる。なお、前述のとおり、背部h2の下側部分は、操作機構h5を介して背フレームh1に回動可能に連結される。
【0048】
(ランバーサポートh4)
図16に示すように背部h2に張設された張地h3の後方(背面側)には、ランバーサポートh4が配設されている。ランバーサポートh4は、背部h2の背面側下部において背部h2の幅方向に掛け渡した状態で取り付けられている。
図17に示すようにランバーサポートh4は着座者の腰部分を当接保持する保持部h4aと幅方向両端部において幅狭に形成された差込部h4bを有している。差込部h4bにはC字形状の凹部h4cが形成されている。ランバーサポートh4は、背部h2に形成された差込開口部h2eに差込部h4bを差し込むことにより装着されている。この差込開口部h2eの奥側部分には凹部h4cと凹凸嵌合する嵌合凸部(図示はせず)が形成されている。したがって差込開口部h2eに差込部h4bを差し込むことで、ランバーサポートh4の凹部h4cと背部h2嵌合凸部が凹凸嵌合し、ランバーサポートh4が背部h2に抜け止めされた状態で装着される。
【0049】
背部h2に装着されたランバーサポートh4は、マイナスドライバー等を差込開口部h2eからランバーサポートh4の凹部h4cと背部h2嵌合凸部との間に差し込むことで凹凸嵌合を解除することができる。すなわち、ランバーサポートh4は背部h2に対して着脱可能になっている。
【0050】
(操作機構h5)
続いて、操作機構h5の概略構成および操作機構h5による概略動作について説明する。上記のようにランバーサポートh4が取り付けられた背部h2は、操作機構h5により背フレームh1に対する背部h2のポジションが変更可能になっている。操作機構h5は、
図18および
図19に示すように、本体部(第1本体部)h5a、操作レバーh5b、ストッパ部材h5c、付勢部材としてのコイルばねh5e、第1ねじh5fおよび本体部(第2本体部)h5gを具備している。また、第2ブラケットh1hは、係止部h5dを具備している。本体部h5aには、筒状部h5hと第1回動軸h5iが形成されている。操作レバーh5bには、軸体h5jに直交する方向に起立させた把持部が形成されており、軸体h5jを筒状部h5hの小径側から挿入することで本体部h5aに組み付けられている。なお、軸体h5jは、筒状部h5hの内部で回動可能になっている。
【0051】
ストッパ部材h5cの中央部には挿通孔h5kが形成されている。本実施形態におけるストッパ部材h5cは挿通孔h5kを中心点とした円周方向に所定角度(一例として、60度)の間隔で凹凸部が形成されている。係止部h5dが設けられる第2ブラケットh1hは、背フレームh1の左右の下部後方側に係合面を左右方向の外側に向けた状態で立設されている。係止部h5dの中央部には挿通孔h5lが形成されている。また、係止部h5dは、ストッパ部材h5cと同一形状(対応形状)の係合面を有し、ストッパ部材h5cと対をなすものであり、互いに凹凸係合可能である。ストッパ部材h5cと係止部h5dの係合面どうしを係合させた状態においては、それぞれの挿通孔h5kと挿通孔h5lは中心点が同一直線上になった状態で連通する。
【0052】
本体部h5aの筒状部h5hの大径側からはコイルばねh5eとストッパ部材h5cが記載順に収容される。コイルばねh5eの他端部にはストッパ部材h5cが当接した状態で配設されている。この状態で第1ねじh5fによりストッパ部材h5cが、操作レバーh5bのねじ穴h5mにねじ留めにより固定される。また、本体部h5aの筒状部h5hの大径側開口部は、ストッパ部材h5cが係合する係合面h5nに形成されており、この係合面h5nにストッパ部材h5cが係合している。なお、ストッパ部材h5cは筒状部h5hの大径側開口部から突出した状態になっている。
【0053】
操作レバーh5b、コイルばねh5eおよびストッパ部材h5cが収容された本体部h5aは、ストッパ部材h5cの露出部を係止部h5dに凹凸係合させた状態で組み付けられる。そして、本体部(第2本体部)h5gの第2回動軸h5oを係止部h5dの挿通孔h5lの内側から差し込み、第2ねじh5pを本体部h5aに形成された雌ねじ部h5qに螺合させることで背フレームh1に操作機構h5が装着される。このようにして装着された操作機構h5は、内蔵されたコイルばねh5eの付勢力により、ストッパ部材h5cが常時係止部h5dに向けて付勢された状態になり、意図しない背部h2(ランバーサポートh4)の移動が規制される。これにより、背フレームh1に対する背部h2の位置変更は、操作機構h5の操作レバーh5bの回動操作が必須となる。
【0054】
操作レバーh5bの軸体h5jの基部には軸体h5jの外周面に沿ってテーパ面h5rが設けられている。操作レバーh5bの軸体h5jが挿し込まれる本体部h5aの筒状部h5hの内部には周方向に沿って180度間隔でテーパ面h5sが設けられている。このような操作レバーh5bを筒状部h5hの内部で回動させると、テーパ面h5rとテーパ面h5sとが相互に摺動し、筒状部h5hの軸線方向における操作レバーh5bの突出量が増加する。これによりコイルばねh5eが圧縮され、ストッパ部材h5cを係止部h5dに押圧させる付勢力が低下し、操作レバーh5bの回動が可能になり、ストッパ部材h5cと係止部h5dとの係合状態を解除することができる。
【0055】
このようにストッパ部材h5cと係止部h5dの係合力を低下させた状態であれば、操作レバーh5bの回動動作により係止部h5dとストッパ部材h5cとの係合面を摺動させながらストッパ部材h5cの回動が可能になる。これにより本体部h5aに形成され、背部h2の第1ブラケットh2dに連結された軸体h5jの作用により背部h2が回動する。本実施形態における操作機構h5は、3つのポジションを提供することができるが、ストッパ部材h5cと係止部h5dの係合面の設計により、操作機構h5により提供可能なポジション数は適宜変更可能である。
【0056】
また、本体部(第2本体部)h5gの軸体h5jの径外方向に所要間隔をあけた位置には軸体h5jの外周面に沿った所要長さ範囲に起立壁h5tが立設されている。操作機構h5による背部h2の所定のポジションにおいては、起立壁h5tにより背部h2の第1ブラケットh2dが抜け止めされた状態になっている。背部h2を操作機構h5が取り付けられた状態の背フレームh1から取り外しする際は、背フレームh1と背部h2の上端部におけるピン留めによる連結を解除し、背部h2の上端部を前傾させ、背フレームh1に対する背部h2の前傾角度を所定角度にした状態で背部h2を引き抜くと、起立壁h5tによる背部h2の第1ブラケットh2dの抜け止め規制が解除された状態になり、背フレームh1から背部h2を取り出すことができる。このような第1ブラケットh2dと起立壁h5tの位置関係の設定により、通常の使用範囲内においては背フレームh1から背部h2を抜き取ることができないようなっている。
【0057】
(ヘッドレストX)
背凭れHの上端部にはヘッドレストXが着脱可能に取り付けられている。
図20に示すように、ヘッドレストXは、背凭れHへの装着部x1と装着部x1の上端部で左右方向に延びる水平軸周りに回動可能な頭部当接部x2を有している。
【0058】
装着部x1は、
図20および
図21に示すように、背凭れHの上端部を挟持するクランプ部x3、クランプ部x3に対して上下方向にスライド移動可能に保持されたスライダ部x4および背凭れHに対する頭部当接部x2の高さ位置を調節する高さ調整機構x5を具備している。
【0059】
クランプ部x3は背凭れHの上端部上面に当接する第1部材x3aと、背凭れHの上端部下面に当接する第2部材x3bを有し、第1部材x3aと第2部材x3bで背凭れHを挟持させた状態で正面の下面側からねじ留めにより一体化されている。第1部材x3aの背面側には高さ調整機構x5の一部であるコマx5aとコマx5aをスライダ部x4の側に付勢する付勢ばねx5bを収容するためのコマ収容部(図示はせず)が形成されている。コマ収容部には付勢ばねx5bとコマx5aが記載順に収容されており、コマ収容部の前端部からコマx5aの一部が突出した状態になっている。第1部材x3aの後面(背面)側には、スライダ部x4の正面側に高さ方向に沿って立設された2列のガイドレールx4aを幅方向に挟持するガイドレール挟持部x3cが高さ方向に沿って形成されている。スライダ部x4は、ガイドレールx4aをガイドレール挟持部x3cに挟持させることにより高さ方向にスライド移動可能である。
【0060】
図22に示すように、本実施形態における高さ調整機構x5は、コマx5a、付勢ばねx5b、カム板x5g、抜け止めストッパx5jおよび誤装着防止ストッパx5kを具備している。以下に高さ調整機構x5について詳細に説明する。
【0061】
コマx5aは合成樹脂により直方形の一面に高さ調整機構x5の要素が形成されたブロック体に形成されている。コマx5aのクランプ部x3の側の面には付勢ばねx5bを収容するばね収容穴x5cが配設されている。ばね収容穴x5cの深さ寸法は付勢ばねx5bの長さ寸法よりも十分小さいため、ばね収容穴x5cに付勢ばねx5bを収容しても付勢ばねx5bはコマx5aの外表面から確実に突出した状態になる。コマx5aのばね収容穴x5cとは反対側の面には高さ調整機構x5の要素である山型部x5d、リブ部x5eおよび傾斜リブx5fが形成されている。
【0062】
山型部x5dは、コマx5aの幅方向両端部に配設されている。山型部x5dの傾斜面は互いに異なる傾斜面に形成されている。本実施形態においては、正規状態で装着したコマx5aにおける山型部x5dの上側傾斜面の傾斜角度は同下側傾斜面の傾斜角度よりも急傾斜に形成された非対称形状になっている。また、2つの山型部x5dの間を補完するようにコマx5aの上側を開口させたコの字型のリブ部x5eが立設されている。コマx5aのブロック部に対するリブ部x5eの高さは一定高さであって、山型部x5dの頂上高さよりは低く形成されている。これを換言すると、山型部x5dの頂上部以外ではリブ部x5eの方が高く形成されていることになる。傾斜リブx5fはリブ部x5eの左右方向の中間位置に立設されている。
【0063】
図20、
図21、
図23および
図24に示すように、スライダ部x4の正面側において2列のガイドレールx4aの間の部分には、高さ方向に沿って2列のカム板x5gが左右方向に所要間隔をあけて平行に立設されている。カム板x5gは山型に形成された複数の凸部x5hが等間隔で立設されており、カム板x5gの下端部には他の凸部x5hよりも背高な大凸部x5iが配設されている。本実施形態における凸部x5hの傾斜面は、下側傾斜面の傾斜角度が上側傾斜面の傾斜角度よりも大きく形成された非対称形状になっており、コマx5aの山型部x5dと凹凸嵌合する。また大凸部x5iについても下面側傾斜面の傾斜角度が上面側権斜面の傾斜角度よりも大きく形成されている。
【0064】
また、カム板x5gの下側部分には抜け止めストッパx5jが互いの他方のカム板x5gに向けてそれぞれ直交する方向に形成されている。カム板x5gの下端部位置には2列のカム板x5gの幅方向における中央部分に誤装着防止ストッパx5kが抜け止めストッパx5jに平行に立設されている。抜け止めストッパx5jの高さは、同じ高さ位置におけるカム板x5gの高さと同一高さとなるように形成されている。誤装着防止ストッパx5kは凸部x5hの突出高さに比較して十分に低く形成されている。
【0065】
コマx5aのカム板x5gへの装着方法について説明する。コマx5aを正規状態(リブ部x5eの開口部が上側を向いた状態)で山型部x5dをカム板x5gのカム面上をスライドさせると、リブ部x5eの開口部および傾斜リブx5fの傾斜面により誤装着防止ストッパx5kおよび抜け止めストッパx5jとは干渉せずにカム板x5gの上方に向けてスライド移動させることができる。
図23および
図24に示すように、カム面を構成する凸部x5hと山型部x5dは嵌合可能であるため、付勢ばねx5bの付勢力に抗してコマx5aをカム面上でスライド移動させれば、凸部x5hの配設間隔でコマx5aがクリック感と共に凹凸嵌合する。コマx5aの嵌合位置を選択することにより、クランプ部x3からのスライダ部x4の突出量(頭部当接部x2の高さ位置)が選択可能になっている。正規状態でカム板x5gに取り付けられたコマx5aは、
図25に示すように、平坦面に形成されたコマx5aの最下部である底面x5lが抜け止めストッパx5jに当接してスライダ部x4からコマx5aが抜けないようになっている。
【0066】
これに対しコマx5aを非正規状態(リブ部x5eの開口部が下側を向いた状態)で山型部x5dをカム板x5gのカム面上をスライドさせようとすると、
図26に示すように、山型部x5dがカム板x5gのカム面に乗り上がる前にリブ部x5eの底面側壁面x5mが誤装着防止ストッパx5kに当接し、コマx5aの移動が規制される。これによりカム板x5gのカム面にコマx5aを進入させることができなくなり、スライダ部x4へのクランプ部x3の誤装着を防止することができる。
【0067】
図27および
図28に示すように、頭部当接部x2は、枠体x6と張地x7を具備している。2つの背面側斜視図に示すように、枠体x6は張地x7を保持する張地保持枠x6aと張地保持枠x6aの後面(背面)に取り付けられる化粧枠x6bを有している。張地保持枠x6aにはスライダ部x4との連結部x6cが配設されている。この連結部x6cは公知の構成を採用することができるため、ここでの説明は省略する。張地保持枠x6aの背面には張地保持枠x6aの外周縁に沿って舌片x6dが周設されている。この舌片x6dと張地保持枠x6aとの間には隙間を有しており、この隙間に張地x7の外周縁(第3張地係合体x7bおよび第4張地係合体x7c)が収容保持される(
図29参照)。
【0068】
図30に示すように、本実施形態における張地x7は張地本体x7aと張地本体x7aの外周縁に沿って第3張地係合体x7bと第4張地係合体x7cが縫製により取り付けられている。第3張地係合体x7bは、単純な合成樹脂製の薄板材に形成された公知の構成である。第4張地係合体x7cは、
図31に示すように、長さ方向に沿ってX字状の透孔x7dが一定間隔で形成されていると共に各々の透孔x7dの中心部分に位置合わせして配設された切欠部x7eが形成されている。切欠部x7eは第4張地係合体x7cの幅方向両端部から幅方向内側に向けて透孔x7dとは独立に形成されている。
【0069】
また、第4張地係合体x7cの幅方向中央部には、長さ方向に一定間隔で透孔x7dが形成されているが、切欠部x7eの幅方向内側端部は幅方向中心線を基準とする所定幅範囲には到達していない。このため第4張地係合体x7cの幅方向中央部は板部分(未加工部分)を多く残すことができる。これにより第4張地係合体x7cを張地本体x7aへの縫製を行う際の縫い代を多くとることができる。また、第4張地係合体x7cの切欠部x7eは、幅方向両端部における長さ方向における切り欠き量が多く、外力に対し変形しやすくなっている。このように第4張地係合体x7cは縫い代を多くして張地本体x7aのほつれを少なくしつつも、変形しやすくした形状になっている。
【0070】
このような第4張地係合体x7cを採用することにより、第4張地係合体x7cは張地本体x7aと共に第4張地係合体x7cの長さ方向に伸長および圧縮させることができる(
図31(B)、(C))。また、第4張地係合体x7cの長さ方向に対して同一平面内で曲げることができる(
図31(D))。これら第4張地係合体x7cの特徴により、第2張地用係合体h7では対応することができなかった曲率の小さい曲線部であっても第4張地係合体x7cであれば変形が容易であるため、曲線部に第4張地係合体x7cを追従させることができる。このような第4張地係合体x7cを用いて張地本体x7aを第4張地係合体x7cと共に張地保持枠x6aと舌片x6dの隙間部分に係合させることができる。これにより長期に亘って使用しても張地本体x7aが張地保持枠x6aからはみ出してしまう不具合を確実に回避することができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、
図30に示すように、張地本体x7aの外周縁に沿って第3張地係合体x7bと第4張地係合体x7cを取り付けているが、第4張地係合体x7cのみが取り付けられた形態を採用することもできる。要は、張地本体x7aの外周縁全体に第3張地係合体x7bまたは第4張地係合体x7cが張地保持枠x6aと舌片x6dの隙間部分に係合させることができればよい。
【0072】
(肘掛けY)
本実施形態における椅子Aの座Dには肘掛けYが着脱可能に取り付けられている。
図32および
図33に示すとおり、本実施形態における肘掛けYは、座取付部y1、高さ調整筒y2、スライド筒y3、肘当てy4、操作レバーy5および高さ位置保持部y6を具備している。
【0073】
座取付部y1は、座固定部y1aと筒部y1bを有し、座固定部y1aと上面が開口する筒部y1bによりL字型に形成されている。座固定部y1aには上下方向に貫通するねじ孔y1cが配設されており、座Dの下面に形成されたねじ穴(図示はせず)にねじ孔y1cを位置合わせし、ねじ孔y1cの下面から締結させたねじy1dにより座Dに取り付けられている。筒部y1bは上面が開口しており、高さ調整筒y2とスライド筒y3が組み立てられた状態で収容され、筒部y1bと高さ調整筒y2が公知の手法により固定されている。
【0074】
本実施形態における高さ調整筒y2は、前方側半分の底部から所要高さ範囲の部分が切り欠かれた形状に形成されている。高さ調整筒y2の後方側周面y2aには複数の貫通孔y2bが高さ方向に一定間隔をあけて穿設されている。
図34から明らかなように、高さ方向に延設されたリブy2cを同じ高さ位置で左右方向から挟み込む配置で2つの貫通孔y2bが配設されている。なお、リブy2cは後方側周面y2aの正面側に突出した状態になっている。高さ調整筒y2の内部にはスライド筒y3が挿抜可能に挿し込まれている。
【0075】
スライド筒y3は、高さ調整筒y2に挿し込まれる筒部y3aと肘当てy4を受けるシェル状の肘受部y3bを有している。筒部y3aの前方側周面y3cには高さ方向に延びる前面凹溝y3dが形成されている。筒部y3aの後方側周面y3eには高さ方向に延びる後面凹溝y3fが形成されている。また後方側周面y3eの下部には、後面凹溝y3fを分断する配置で開口部y3gが形成されている。このように形成されたスライド筒y3の筒部y3aは、後面凹溝y3fにリブy2cを嵌合させた状態で高さ調整筒y2に挿し込まれている。
【0076】
高さ位置保持部y6は、本体y6a、係合爪y6bおよび付勢ばねy6cを有している。本体y6aの前面にはスライド筒y3に形成された前面凹溝y3d内に係合する係合片y6dが形成されている。また、本体y6aの後面には付勢ばねy6cと係合爪y6bが記載順に配設されている。すなわち、係合爪y6bは本体y6aとの間に配設された付勢ばねy6cの付勢力により本体y6aの後面から突出する方向に付勢されている。このように形成された高さ位置保持部y6は、スライド筒y3の下側開口部から収容される。そして係合片y6dを前面凹溝y3dに係合し、係合爪y6bをスライド筒y3の開口部y3gから露出させた状態でスライド筒y3に高さ位置保持部y6が位置決め固定されている。したがって、先述のように高さ調整筒y2にスライド筒y3を挿し込むと、係合爪y6bが同じ高さ位置にある2つの貫通孔y2bに係合し、かつ後面凹溝y3fにリブy2cが進入した状態でスライド筒y3が高さ調整筒y2に固定される。
【0077】
このようにしてスライド筒y3に取り付けられ、高さ調整筒y2に係合された高さ位置保持部y6は、ワイヤy7により操作レバーy5と連結されている。より詳細には、操作レバーy5はワイヤy7によって係合爪y6bと連結されている。すなわち、着座者等により操作レバーy5の回動動作がなされると、ワイヤy7により係合爪y6bが付勢ばねy6cにより付勢されている向きとは逆側にスライド移動するようになっている。着座者等が操作レバーy5を回動操作することにより、係合爪y6bと高さ調整筒y2の貫通孔y2bとの係合状態が解除される。着座者等は操作レバーy5を回動させたままの状態で肘受部y3bを持ち上げることにより、スライド筒y3の一部を高さ調整筒y2から引き上げることができるようになっている。
【0078】
図34に示すように、肘当てy4は、第1経路体y4a、第1保持体y4bが上下方向に重ねられて構成された肘当て受部y21と、第2経路体y4c、第2保持体y4d、肘当てパッドy4eが上下方向に重ねられて構成された肘当て本体y22と、から構成される。肘当て受部y21に対して肘当て本体y22が前後方向にスライド移動可能となっている。肘当て本体y22の後方側には、一方のガイド溝y4mが形成されており、肘当て受部y21に固定された固定軸N2が一方のガイド溝y4mに進入する。肘当て受部y21の前方側には他方のガイド溝y4jが形成されており、肘当てy4のナット保持部y4nに固定された段付きねじである可動軸N1が他方のガイド溝y4jに進入する。
【0079】
第1経路体y4aは、開口部y4fが形成された本体y4gと、開口部y4fの中央部分に開口部y4fよりも小さい平面領域を有する島部形成体y4hと、島部形成体y4hを開口部y4fの平面中央部分に浮かせた状態で保持するための保持材y4iを有している。図に示すように本体y4gと島部形成体y4hとにより、リング状(概略ロの字型)の他方のガイド溝y4jが形成されている。保持材y4iは他方のガイド溝y4jの平面位置を所要高さ範囲で回避する略U字形状に形成されている。
【0080】
また、第1保持体y4bの開口部y4fの内周面の一部周方向長さ範囲には、他方のガイド溝y4jの内側方向に突出して他方のガイド溝y4jの所定箇所を幅狭となるように構成した抵抗付与体y4kが配設されている。抵抗付与体y4kは、第1保持体y4bに平面視π形状の弾性を有するばね体として形成されているが、この形態に限定されるものではなく、例えば弾性を有する材質によって形成されていてもよい。また、抵抗付与体y4kは、第1保持体y4bではなく、第1経路体y4aに形成することもできる。抵抗付与体y4kが配設されている範囲における他方のガイド溝y4jの幅寸法は、抵抗付与体y4kが配設されていない範囲における他方のガイド溝y4jの幅寸法よりも狭くなっている。なお、可動軸N1が他方のガイド溝y4jの抵抗付与体y4kの配設範囲に進入した際には、可動軸N1の外周面が抵抗付与体y4kを弾性変形させながら抵抗付与体y4kの配設範囲を通過するので、他の範囲よりも移動の際の抵抗が大きくなる。本実施形態における第1経路体y4aは、第1保持体y4bとは別体として形成されており、第1保持体y4bに形成された係合片y4lにより一体に係合されているが、第1経路体y4aと第1保持体y4bは一体形成することもできる。
【0081】
第2経路体y4cは後方側においてS字状に形成された一方のガイド溝y4m、一方のガイド溝y4mに進入して一方のガイド溝y4m内を移動する可動軸N1が螺合するナットN1aを保持するナット保持部y4n、操作レバーy5を装着するための開口孔y4oおよび装着部y4pを具備する。一方のガイド溝y4mは、平面視S字形状に形成されており、後方から前方に向かう最初の方向が、他方のガイド溝y4jにおけるリング状のどちらか一方の方向とほぼ一致するように構成されている。これにより第2経路体y4c、第2保持体y4dおよび肘当てパッドy4eからなる肘当て本体y22を前後方向および左右方向のそれぞれに移動可能なS字軌道で移動させることができるようになっている。また、一方のガイド溝y4mに進入する固定軸N2には、一方のガイド溝y4mの幅寸法よりも幅広寸法に形成されていると共に一方のガイド溝y4mの上面に載置されたワッシャN2aとの間にOリングN2bが配設されている。固定軸N2の軸部N2cが一方のガイド溝y4mを移動する際は、OリングN2bの弾性変形により、第2経路体y4cとの間の上下方向のガタツキが防止されている。
【0082】
ナット保持部y4nには、可動軸N1の細径部に形成された雄ねじ部が螺着するナットN1aが固定された状態で収容されている。ナットN1aとワッシャN1bとの間にはOリングN1cが配設されており、可動軸N1が他方のガイド溝y4jを周回する際に生じるOリングN1cの弾性変形により摺動抵抗が付与されている。
【0083】
開口孔y4oは、第2経路体y4cの前方側周面に穿設されている。開口孔y4oには操作レバーy5の把持部y5aが挿通される。装着部y4pは、操作レバーy5に配設された回動軸y5bを回動可能に係合する開口部を有する板状体に形成されており、回動軸y5bの長さ方向両端部に位置合わせして第2経路体y4cの上面に立設されている。開口孔y4oは操作レバーy5が上下方向に所定の角度範囲で回動可能にするに必要な高さ寸法に形成されている。操作レバーy5の把持部y5aの基部には開口孔y4oと把持部y5aとの隙間を閉塞するための肉厚部y5cが形成されているので、操作レバーy5と開口孔y4oとの隙間からの異物の侵入を防止している。
【0084】
第2保持体y4dは平板状に形成されている。第2保持体y4dの外周縁には、第2経路体y4cに形成された係合部y4qに係合する係合片y4rが複数形成されている。第2保持体y4dの係合片y4rを第2経路体y4cの係合部y4qに係合することにより第2経路体y4cの上面は閉塞された状態になり、第2経路体y4cへの異物の侵入が防止されている。また、第2保持体y4dの上面には公知の手法により肘当てパッドy4eが着脱可能に取り付けられている。
【0085】
操作レバーy5は前述のようにして第2経路体y4cに回動可能に取り付けられている。操作レバーy5の回動軸y5bにはワイヤ係合部y5dが配設されており、ワイヤ係合部y5dにワイヤy7の第1端部が連結されている。ワイヤy7は第2経路体y4cの一方のガイド溝y4mからスライド筒y3の内部に引きこまれ、第2端部が高さ位置保持部y6の係合爪y6bに連結されている。このように操作レバーy5の回動動作を高さ位置保持部y6にワイヤy7で伝達する形態を採用したことにより、前後左右に移動可能な肘当てパッドy4e(第2経路体y4c)に操作レバーy5を配設することができる。また、一方のガイド溝y4mを肘当てy4におけるワイヤy7の取り回しに利用することにより、ワイヤy7の屈曲を軽減させることも可能になり、肘当てパッドy4eの位置にかかわらず操作レバーy5の円滑な操作ができる。
【0086】
図35および
図36に示すように、肘当て本体y22が後方から前方に移動するときは、最初に後方側に位置する一方のガイド溝y4mのS字に沿って肘当て本体y22が移動する。一方、肘当て本体y22と共に他方のガイド溝y4j内に沿って移動する可動軸N1は、他方のガイド溝y4jにおいて抵抗付与体y4kが配設されている箇所(前方側の端面)に到達して抵抗感を得られる。肘当て本体y22が前方から後方に移動するときは、前方側に設けられている他方のガイド溝y4jのリング状のどちらか一方の側を通って移動できる。このように他方のガイド溝y4jをリング状にしたことで着座者は肘当て本体y22の多様な移動経路を体験できる。また、このとき、肘当て本体y22と共に他方のガイド溝y4j内に沿って移動する可動軸N1は、他方のガイド溝y4jにおいて抵抗付与体y4kが配設されている箇所から配設されていない箇所に向かうため、移動初期には抵抗感を得られ、その後抵抗感が無くなって移動できる。
【0087】
他方のガイド溝y4jにおいて抵抗付与体y4kが配設されている範囲は、他の部分よりも経路幅が狭くなっており、可動軸N1がこの範囲を通過する際は、可動軸N1の外周で抵抗付与体y4kを押し広げながら通過することになる。このように抵抗付与体y4kを弾性変形させることにより可動軸N1の移動の抵抗感を付与することができ、椅子Aの高級感を演出することができると共に、着座者の肘当てy4の現在位置の認識やこれから動作させる方向への認識が容易に行われることができる。なお、本実施形態においては、可動軸N1が他方のガイド溝y4jを周回する際に生じるOリングN1cの弾性変形によって摺動抵抗が付与されているので、可動軸N1の移動時における抵抗の付与は、OリングN1cまたは抵抗付与体y4kのいずれか一方が配設されていればよい。
【0088】
図35~
図37に示すように、本実施形態における肘当て本体y22は、後方から前方に移動させる際にはS字状の一方のガイド溝y4mに沿って、肘当て本体y22の前方側端部はまず外側を向き徐々に内側を向くような移動軌跡となり、前方から後方へ移動させる際には他方のガイド溝y4jのリング状のどちらの経路を通ってもよいため、従来技術における肘当て本体y22の単なる往復動軌道とは異なり多様な移動形態を提供することができる。
【0089】
続いて、操作機構h5の詳細構成および操作機構h5による詳細動作について説明する。ここで、
図38は、背凭れHの動作を説明する説明図であり、
図38(A)は左側面図、
図38(B)は右側面図である。なお、操作機構h5について、背凭れHの背部h2の位置を変える場合を例に挙げて説明するがこれに限定されるものではなく、他の構成要素(座D、脚B、ヘッドレストX、肘掛けY等)の位置を変える操作を行う(すなわち、当該構成要素を設定可動範囲内で移動を行う)操作機構として適用することができる。
【0090】
前述の通り、背凭れHは、背フレームh1と背部h2とを備えており、上部連結部huおよび下部連結部(後述)によって相互に連結されている。また、操作機構h5を操作することによって背部h2を背フレームh1に対して前後方向に移動(具体的には、上部連結部huを支点とする揺動による接近・離反移動)が可能に構成されている(可動範囲が適宜設定される)。これによれば、後傾姿勢および前傾姿勢のそれぞれの着座姿勢に合わせて背部h2を移動させることにより、背骨(特に、骨盤)のサポート位置を好適に調整することができる。一例として、
図38(A)、
図38(B)における実線は背部h2が背フレームh1に対して後端位置まで移動した状態であり、破線は背部h2が背フレームh1に対して前端位置まで移動した状態である。前述の通り、上部連結部huには、凹凸嵌合による簡素で着脱容易な構造が採用されている。
【0091】
一例として、背フレームh1は、樹脂材料を用いて形成されている(これに限定されるものではない)。また、背部h2は、弾性を有する樹脂材料を用いて枠状、板状等に形成されている(これに限定されるものではない)。また、背部h2に張られる張地h3は、合成繊維等を用いて形成されたいわゆるメッシュタイプ、クッションタイプ等のシート用生地が採用されている(これに限定されるものではない)。
【0092】
下部連結部の例として、背部h2(もしくは背部h2に固定された部材でもよい)に第1ブラケットh2dが設けられている。また、背フレームh1(もしくは背フレームh1に固定された部材でもよい)に支持部となる第2ブラケットh1hが設けられている。当該第1ブラケットh2dおよび第2ブラケットh1hに対して、操作機構h5が回動可能に連結されている。
図2に示すように、操作機構h5は、椅子A(具体的には、背フレームh1)の左右の位置に一対で設けられている。一方、下部連結部の他の例として、操作機構h5を介在させずに背部h2と背フレームh1とが連結される構成としてもよい(不図示)。
【0093】
次に、操作機構h5について詳しく説明する。ここで、
図39は、操作機構h5の分解斜視図である(以下、第1本体部h5aと第2本体部h5gとを組み付けた状態で本体部h5aとして説明する場合がある)。また、
図40(A)は、操作機構h5の斜視図であり、
図40(B)はその正面図であり、
図40(C)はその側面断面図である。いずれの図においても椅子Aの左位置の操作機構h5(h5A)を例に挙げて説明する。なお、椅子Aの右位置の操作機構h5(h5B)は、操作機構h5(h5A)と左右対称に構成されている。なお、第1ブラケットh2d、第2ブラケットh1hも、それぞれ左右対称に構成されている。
【0094】
操作機構h5は、第1ブラケットh2dに回動可能に連結される第1回動部h31と、第2ブラケットh1hに回動可能に連結される第2回動部h32と、を備えている。
【0095】
本実施形態においては、操作機構h5の第1回動部h31に第1回動軸h5iが設けられ、第1ブラケットh2dに第1軸受h5vが設けられており、第1回動軸h5iが第1軸受h5vによって回転可能に支持される。これにより、第1ブラケットh2dに対して操作機構h5が回動可能に連結される。本実施形態においては、第1軸受h5vに滑り軸受構造が採用される(他の構成としてもよい)。また、第1回動軸h5iと第1軸受h5vとが簡易に係脱可能な構成としている(詳細については後述する)。なお、変形例として、第1ブラケットh2dに第1回動軸h5iが設けられ、操作機構h5の第1回動部h31に第1軸受h5vが設けられ、第1回動軸h5iと第1軸受h5vとが係脱可能な構成としてもよい(不図示)。
【0096】
また、操作機構h5の第2回動部h32に第2回動軸h5oが設けられ、第2ブラケットh1hに第2軸受(前述の挿通孔)h5lが設けられており、第2回動軸h5oが第2軸受h5lによって回転可能に支持される。これにより、第2ブラケットh1hに対して操作機構h5が回動可能に連結される。本実施形態においては、第2軸受h5lに滑り軸受構造が採用される(他の構成としてもよい)。なお、変形例として、第2ブラケットh1hに第2回動軸h5oが設けられ、操作機構h5の第2回動部h32に第2軸受h5lが設けられる構成としてもよい(不図示)。
【0097】
操作機構h5は、
図39および
図40(A)~
図40(C)に示すように、本体部h5aと、本体部h5aに対して一方向(矢印FD方向)および逆方向(矢印RD方向)に回動可能に取付けられた操作レバーh5bと、操作レバーh5bの回動に連動して本体部h5aから進出、進入し、第2ブラケットh1hに設けられた係止部h5dに係止、係止解除されるストッパ部材h5cと、を備えている。ここで、本体部h5aにおいて、前述の第1回動軸h5iと第2回動軸h5oとが、相互に平行となる配置(すなわち、それぞれの中心軸が平行となる配置)で設けられている。なお、本実施形態では、操作レバーh5bを後方から前方に向けて回動させたときに、第1回動部h31が後方から前方に向けて移動するように、第1回動部h31と第2回動部h32とが配置されている。具体的には、背部h2(第1ブラケットh2d)に連結される第1回動部h31が相対的に上となる位置に配置され、背フレームh1(第2ブラケットh1h)に連結される第2回動部h32が相対的に下となる位置に配置されている。
【0098】
また、操作機構h5は、操作レバーh5bが第2回動部h32の第2回動軸h5oと同軸で回動可能に本体部h5a(第1筒状部h5ha)に取付けられている。このとき、ストッパ部材h5cが第2回動部h32の第2回動軸h5oと平行に移動可能で当該第2回動軸h5oの軸周りに移動不能に本体部h5aに取付けられている。一例として、ストッパ部材h5cは、正面視の外周形状(すなわち、移動方向となる第2回動軸h5oの中心軸と平行方向に視た場合の形状)が、外周面に凹凸部を有する星形状(略星形状を含む)もしくは歯車形状(略歯車角形を含む)に形成されている。ただし、これに限定されるものではなく、楕円形状、長円形状、多角形状(略多角形状を含む)に形成されていてもよい。一方、ストッパ部材h5cが収納される本体部h5a(第2筒状部h5hb)の内周面(ストッパ部材h5cの収納位置)は、対応する係合形状(すなわち、平行に移動可能で軸周りに移動不能となる形状)に形成されている。また、ストッパ部材h5cが係止(および係止解除)される第2ブラケットh1hの係止部h5dは、ストッパ部材h5cが係止される程度に進入可能に形成され、その内周面(ストッパ部材h5cの進入位置)は、対応する係合形状(すなわち、平行に移動可能で軸周りに移動不能となる形状)に形成されている。ただし、ストッパ部材h5cと係止部h5dとの係合構造に関しては、ストッパ部材h5cの本体部h5aへの進入量(引き込み量)に応じて、操作レバーh5bからストッパ部材h5cに伝達される回動力により係止部h5dに対するスリップを発生させ、付勢力に抗してストッパ部材h5cを本体部h5aへ進入させつつ軸周りに移動可能となるように、当該ストッパ部材h5cの凸部が先端に向けて縮径し且つ周方向に縮径するテーパ面(曲面を含む)に形成されている。また、この構造を備えることによって、操作レバーh5bの操作により背部h2を移動させる際に、使用者がクリック感を得られる効果を生じさせている。なお、ストッパ部材h5cの外周面に設けられる凹凸部の数の設定によって、操作機構h5の切換位置を任意の複数段階に設定することができる(一例として、本実施形態においては、前段、中段、後段の3段階の設定であるが、これに限定されるものではない)。
【0099】
また、操作機構h5は、操作レバーh5bが本体部h5aに対していずれの方向(FD方向、RD方向)に回動された場合にも当該操作レバーh5bを中立位置に復帰させる中立位置復帰部h24を備えている。一例として、中立位置復帰部h24は、付勢部材(一例として、コイルばね)h5e、および相互に摺接可能なテーパ面(曲面を含む)h5r、h5sを備えて構成されている。テーパ面h5rは操作レバーh5bの外周面に設けられ、テーパ面h5sは本体部h5a(第1筒状部h5ha)の内周面に設けられ、操作レバーh5bが中立位置からいずれの方向に回動された場合にも、操作レバーh5bが本体部h5aから離間する方向に移動が生じる面形状に形成されている。付勢部材h5eは、本体部h5aの第2筒状部h5hb内において、操作レバーh5bに固定されるストッパ部材h5cと本体部h5aの仕切部h5hcとに挟持されて付勢力(弾発力)を発生させた状態で配置されている。これによれば、操作レバーh5bが中立位置から回動された場合(FD方向、RD方向)に、テーパ面h5rとh5sとが相互に摺接しながら、操作レバーh5bが本体部h5aから進出する(離れる)方向に移動すると共にストッパ部材h5cが本体部h5aに進入する(引き込まれる)方向に移動する。このとき、付勢部材h5eがストッパ部材h5cと仕切部h5hcとで圧縮されることにより戻ろうとする付勢力(弾発力)が発生する。したがって、操作レバーh5bの操作(回動させる動作)を停止すれば、当該付勢力によって、テーパ面h5rとh5sとが相互に摺接しながら、操作レバーh5bが本体部h5aに進入する方向に移動すると共にストッパ部材h5cが本体部h5aから進出する方向に移動し、操作レバーh5bが中立位置に復帰する。
【0100】
また、操作機構h5は、操作レバーh5bが本体部h5aに対していずれの方向(FD方向、RD方向)にも所定位置以上に回動された場合に、操作レバーh5bの回動力を本体部h5aに伝達する回動力伝達部h28を備えている。一例として、回動力伝達部h28は、操作レバーh5bが中立位置にある場合および中立位置から所定位置未満に回動された場合に相互に当接せず、且つ、操作レバーh5bが所定位置以上に回動された場合に相互に当接可能な突起h28aと溝h28bとを備えて構成されている。突起h28aは本体部h5a(第1筒状部h5ha)の内周面に設けられ、溝h28bは操作レバーh5bの外周面に設けられている(なお、操作レバーh5bに突起h28aが設けられ、本体部h5aに溝h28bが設けられる構成としてもよい)。これによれば、操作レバーh5bが所定位置以上に回動された場合(FD方向、RD方向)に、突起h28aと溝h28bとが相互に当接し、操作レバーh5bを回動させる力が本体部h5aに伝達されるため、本体部h5aが回動(操作レバーh5bと供回り)する。
【0101】
上記の構成を備える椅子Aにおける背部h2の移動動作について説明する。なお、操作機構h5Aを例に挙げて説明するが、本実施形態に係る椅子Aは、左右の位置に一対で操作機構h5(h5A、h5B)が設けられているため、操作機構h5Bに対しても同時に同様の操作を行うこととなる。
【0102】
ここで、
図41(A)~
図41(F)は操作機構h5Aの操作レバーh5bを矢印FD方向に回動させる場合であって、
図41(A)、
図41(C)、
図41(E)は正面方向から視た図(第1回動軸h5i、第2回動軸h5oと平行方向から視た図)であり、
図41(B)、
図41(D)、
図41(F)は側面方向から視た図(第1回動軸h5i、第2回動軸h5oと直交方向から視た図)である。
【0103】
先ず、
図41(A)、
図41(B)に示すように、操作レバーh5bが中立位置の場合(操作レバーh5bを操作していない場合)、中立位置復帰部h24の付勢部材h5eの付勢力(弾発力)によって、ストッパ部材h5cを本体部h5aから進出する方向(第2ブラケットh1hの第2軸受h5lの周囲に設けられる係止部h5dと当接する方向)に付勢された状態となる。これにより、ストッパ部材h5cが係止部h5dに係止されて、本体部h5aの回動が規制された状態となる。この状態では、仮に背部h2自体を保持して前後に押動した場合であっても、その押動力によって操作機構h5が回動することはないため、背部h2が前後に移動することはない。
【0104】
次いで、
図41(C)、
図41(D)に示すように、操作レバーh5bが中立位置から所定位置未満(すなわち、回動量が所定角度未満)に回動された場合に、操作レバーh5bのテーパ面h5rと本体部h5aのテーパ面h5sとが相互に摺接しながら、操作レバーh5bが本体部h5aから進出する(離れる)方向(矢印OD方向)に移動すると共にストッパ部材h5cが本体部h5aに進入する(引き込まれる)方向(矢印ID方向)に移動する。このとき、ストッパ部材h5cが係止部h5dに係止されて、本体部h5aの回動が規制された状態が維持されている。
【0105】
次いで、
図41(E)、
図41(F)に示すように、操作レバーh5bが中立位置から所定位置以上(すなわち、回動量が所定角度以上)に回動された場合に、本体部h5a(第1筒状部h5ha)の突起h28aと操作レバーh5bの溝h28bとが相互に当接し、操作レバーh5bを回動させる力が本体部h5aに伝達されるこのとき、テーパ面h5r、h5s同士の摺接が停止するため、操作レバーh5bが本体部h5aから進出する移動は停止する。その一方で、操作レバーh5bに固定されたストッパ部材h5cが回動されることによって、係止部h5dに対するスリップが生じ、付勢力に抗してストッパ部材h5cが本体部h5aへさらに微小量、進入しつつ、軸周りに移動する。すなわち、ストッパ部材h5cと係止部h5dとの係止が解除された状態となるため、本体部h5aが回動(操作レバーh5bと供回り)することができる。したがって、操作レバーh5bの回動に伴って本体部h5aが回動されて第1回動部h31が円弧状に移動する(矢印TD方向)。なお、この状態から操作レバーh5bの操作(FD方向へ回動させる動作)を停止すれば、前述した中立位置復帰部h24の作用によって、操作レバーh5bが逆方向(RD方向)へ回動しながら本体部h5aに進入する方向に移動すると共にストッパ部材h5cが本体部h5aから進出する方向に移動し、操作レバーh5bが中立位置に復帰する。
【0106】
このように、操作機構h5A(h5Bも同様に操作する)の操作レバーh5bを可動範囲内において後方から前方(FD方向)に向けて回動させることによって、第1回動部h31を後方から前方に向けて移動させることができる。したがって、第1回動部h31が連結された第2ブラケットh1hを後方から前方に向けて移動させることができるため、背フレームh1に対して背部h2を後方から前方に向けて移動(具体的には、上部連結部huを支点とする揺動によって前方に向けて移動)させることができる。
【0107】
一方、
図42(A)~
図42(F)は操作機構h5Aの操作レバーh5bを矢印RD方向に回動させる場合であって、
図42(A)、
図42(C)、
図42(E)は正面方向から視た図(第1回動軸h5i、第2回動軸h5oと平行方向から視た図)であり、
図42(B)、
図42(D)、
図42(F)は側面方向から視た図(第1回動軸h5i、第2回動軸h5oと直交方向から視た図)である。なお、
図42(A)~
図42(F)の場合は、操作レバーh5bおよび本体部h5aの回動方向が
図41(A)~
図41(F)の場合に対して逆になること以外は同様の動作となる(繰り返しの説明を省略する)。
【0108】
このように、操作機構h5A(h5Bも同様に操作する)の操作レバーh5bを可動範囲内において前方から後方(RD方向)に向けて回動させることによって、第1回動部h31を前方から後方に向けて移動させることができる。したがって、第1回動部h31が連結された第2ブラケットh1hを前方から後方に向けて移動させることができるため、背フレームh1に対して背部h2を前方から後方に向けて移動(具体的には、上部連結部huを支点とする揺動によって後方に向けて移動)させることができる。
【0109】
一方、操作レバーh5bを操作していない場合には、上記の通り、操作レバーh5bを中立位置に維持できる。すなわち、操作機構h5の移動が規制された状態を維持できるため、背部h2の位置が変化しない状態を維持できる。したがって、操作レバーh5bを操作しない限り背部h2が移動せず、操作レバーh5bを回動させることによって背部h2が移動する構成を実現できるため、背部h2が不意に移動してしまうことを防止できる。
【0110】
なお、他の実施形態として、操作機構h5を設けずに背部h2が背フレームh1に対して前後に移動しない構成、すなわち、第1回動軸h5iが背フレームh1に直接固定される構成の椅子Aとしてもよい(不図示)。
【0111】
次に、操作機構h5と背部h2との連結構造について詳しく説明する。ここで、
図43は、操作機構h5と背部h2との連結構造を説明するための断面図(第1回動軸h5i、第2回動軸h5oと平行方向から視た図)である。
【0112】
前述の通り、操作機構h5の第1回動部h31に第1回動軸h5iが設けられ、第1ブラケットh2dに第1軸受h5vが設けられ、第1回動軸h5iと第1軸受h5vとが係脱可能に構成されている。
【0113】
具体的には、
図43に示すように、第1軸受h5vは、弾性を有する樹脂材料を用いて背部h2と一体構造(別体構造でもよい)により断面形状がC字状(U字状でもよい)に形成されており、第1回動軸h5iがその中心軸と直交する向きに進入、進出可能な第1開口h13を有している。一方、操作機構h5は、第1軸受h5vが進入、進出可能な第2開口h23を有する収容部h30が設けられており、当該収容部h30内に第1回動軸h5iが配置されている。なお、第1回動軸h5iは、断面形状が中空円筒状(もしくは中実円柱状でもよい)に形成されている。本実施形態においては、第1軸受h5vが弾性変形するスナップフィット構造によって当該第1軸受h5vと第1回動軸h5iとが係脱可能に構成されている。これによれば、極めて簡単且つ短時間で背フレームh1に対して背部h2を着脱することができる構成で、且つ、操作機構h5によって背部h2を背フレームh1に対して移動させる際にガタツキが生じることのない構成を実現できる。
【0114】
さらに、本実施形態に係る椅子Aは、背フレームh1に背部h2が連結された状態で、且つ、操作機構h5が(すなわち、係合された第1軸受h5vおよび第1回動軸h5iが)可動範囲内の少なくとも前端に位置した状態において、第1軸受h5vと第1回動軸h5iとの係合離脱(係合が解除されて一方が他方から離脱した状態となることを指す)を規制する離脱規制部h60を備えている。ここで、
図44は、離脱規制部h60の構成例を示す図であって、
図44(A)は操作機構h5が可動範囲内の前端位置にある状態の図であり、
図44(B)は操作機構h5が可動範囲内の後端位置にある状態の図である。
【0115】
離脱規制部h60は、
図44(A)に示すように、第1開口h13の開口方向と、第2開口h23の開口方向とのなす角度が、同一直線上となる180度から所定角度θ度ずれた場合に、操作機構h5に設けられる当接部材と、第1ブラケットh2dの所定部位とが当接する配置として、第1軸受h5vと第1回動軸h5iとの係合離脱を規制する構成となっている。これによれば、操作機構h5に対して背部h2を矢印DD方向に引く動作を行っても、第1ブラケットh2d(所定部位)が操作機構h5(当接部材)と当接するため、第1軸受h5vと第1回動軸h5iとの係合が解除されない作用が得られる。一例として、θ=20度に設定しているが、これに限定されるものではない。なお、操作機構h5が可動範囲内の前端位置に到達するよりも手前の位置から離脱規制部h60による離脱規制が作用するように角度θを設定してもよい。
【0116】
一例として、操作機構h5に設けられる当接部材は、第1回動軸h5iを軸方向と平行に挟む配置で離間して設けられた二つの壁部(第1壁部h5ta、第2壁部h5tb)により構成されている。一方、第1ブラケットh2dの所定部位は、第1軸受h5vの外面h5vaにより構成されている。このように、第1軸受h5vと第1回動軸h5iとを係脱させる構成を利用して、離脱規制部h60を簡素な構成により実現している。ただし、この構成に限定されるものではない。なお、前述した他の例(下部操作機構h5を介在させない下部連結部)を採用する場合には、上記当接部材を背フレームh1に設ければよい(不図示)。
【0117】
上記の構成によれば、極めて簡単且つ短時間で背フレームh1に対して背部h2を着脱可能な構成を実現しつつ、操作機構h5によって背部h2を背フレームh1に対して移動させる際に、意図しない力が加えられたような場合であっても背フレームh1から背部h2が外れてしまう不具合を防止することができる。本実施形態においては、第1軸受h5vと第1回動軸h5iとを係脱させる構成を利用して、離脱規制部h60を簡素な構成により実現することができる。
【0118】
なお、本実施形態においては、
図44(B)に示すように、操作機構h5が(すなわち、係合された第1軸受h5vおよび第1回動軸h5iが)可動範囲内の後端に位置した状態においても、上記と同様の作用が得られる構成としている。また、上記と同様に、操作機構h5が可動範囲内の後端位置に到達するよりも手前の位置から離脱規制部h60による離脱規制が作用するように角度θを設定してもよい。
【0119】
一方、背フレームh1に対して背部h2を着脱する場合には、離脱規制部h60による離脱規制が作用しないようにすればよい。具体的には、
図45に示すように、上部連結部huにおける背部h2と背フレームh1との連結を解除して、背部h2を背フレームh1に対して前方の所定位置まで移動(回動)する(このとき、第1回動軸h5iの中心軸が支点となる)。この場合の所定位置は、第1開口h13の開口方向と、第2開口h23の開口方向とのなす角度が、同一直線上となる180度となる位置、もしくは180度に対する角度θが離脱規制作用を生じない角度(上記の例では0度<θ<20度)となる位置である。当該所定位置となるまで背部h2が移動(回動)された状態では、第1軸受h5vと第1回動軸h5iとの係合および係合解除ができるため、背フレームh1に対して背部h2を着脱することができる。これに対し、上記所定位置となるまで背部h2が移動(回動)されていない状態では、第1軸受h5vと第1回動軸h5iとの係合および係合解除ができないため、背フレームh1に対して背部h2を着脱することができない。
【0120】
以上、説明した通り、本発明によれば、背フレームに対して背部を簡単に着脱することが可能な椅子を実現できる。したがって、製造時の組立工程において、工程の簡素化および時間短縮を図ることが可能となる。また、使用開始後において、張地の破損や汚損の発生時に、あるいは、使用者のデザイン嗜好等に応じて、背部を簡単に交換することが可能となる。
【0121】
特に、下部連結部における連結を行う際にネジ等の固定構造を用いず、所定位置まで回動させれば直線的に移動させるだけで背部の着脱が可能となるため、簡素な構造で且つ極めて簡単な作業を実現できる。また、使用状態すなわち上部連結部における連結が解除されていない状態においては背部の着脱が不可能となるため、使用上の安全性も確保できる。
【0122】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。特に、下部連結部の例として、操作機構を介在させた構成、すなわち背フレームに支持、固定された操作機構に背部が連結された構成を例に挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、他の例として、操作機構を介在させない構成、すなわち背フレームに直接、背部が連結された構成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
A:椅子
B:脚
b1:キャスタ,b2:脚羽根,b3:脚支柱
C:支持基部
c1:取付穴,c2:反力ばね,c3:反力ばね受部,c4:リンク板,c5:長孔,
c6:ロッキング力調整レバー,c7:ロッキング操作レバー
D:座
d1:座受,d2:座本体,d3:クッション,d4:凹部,d5:突出体,
d6:軸体収容孔,d7:開口部,d8:スプリング保持体,d9:スプリング,
d10:押圧板,d11:シンクロシャフト装着部,d12:開口孔,
d13:ストッパ体
F:背凭れ構造体
G:背支持体
g1:アーム,g2:連結プレート,g3:軸孔,g4:ナット部
H:背凭れ
h1:背フレーム,h2:背部,h3:張地,h4ランバーサポート,
h5:操作機構,h6:第1張地用係合体,h7:第2張地用係合体
J1:回転軸,J2:シンクロシャフト,J3係止軸,J4:軸体
T:タグ
X:ヘッドレスト
x1:装着部,x2:頭部当接部,x3:クランプ部,x4:スライダ部,
x5:高さ調整機構,x6:枠体,x7:張地
Y:肘掛け
y1:座取付部,y2:高さ調整筒,y3:スライド筒,y4:肘当て,
y5:操作レバー,y6:高さ位置保持部,y7:ワイヤ,y21:肘当て受部,
y22:肘当て本体
10:座受-シンクロシャフト連結構造(回動体連結構造)