(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060178
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】アセタールの製造方法及び炭酸ジエステル製造システム
(51)【国際特許分類】
C07C 41/50 20060101AFI20250403BHJP
C07C 43/303 20060101ALI20250403BHJP
C07C 68/04 20060101ALI20250403BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20250403BHJP
C07C 43/305 20060101ALI20250403BHJP
C07C 41/56 20060101ALI20250403BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250403BHJP
【FI】
C07C41/50
C07C43/303
C07C68/04 A
C07C69/96 Z
C07C43/305
C07C41/56
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170737
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 訓久
(72)【発明者】
【氏名】崔 準哲
(72)【発明者】
【氏名】プトロ サトプリヨ ワヒュー
(72)【発明者】
【氏名】松本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】飯島 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 清児
(72)【発明者】
【氏名】羽村 敏
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC43
4H006AC48
4H006BD81
4H006BE41
4H006BJ10
4H006BP90
4H006GN37
4H006GN38
4H006GP01
4H006GP02
4H006KA54
4H039CA61
4H039CF30
4H039CG10
4H039CL60
(57)【要約】
【課題】カルボニル化合物とアルコールとからアセタールを製造する新規な方法を提供する。
【解決手段】固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させるアセタール化反応工程を含む、アセタールの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させるアセタール化反応工程を含む、アセタールの製造方法。
【請求項2】
前記カルボニル化合物が、一般式(1)で表される化合物であり、
前記アルコールが、一般式(2)で表される化合物である、請求項1に記載のアセタールの製造方法。
【化1】
R
3OH (2)
(一般式中、R
1は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基であり;R
2は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基又は水素原子であり;R
3は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基であり;R
1及びR
2がともに肪族炭化水素基である場合、R
1とR
2とは互いに単結合又は連結基を介して結合し環を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記固体酸触媒が、陽イオン交換樹脂である、請求項1に記載のアセタールの製造方法。
【請求項4】
前記固体脱水剤が、モレキュラーシーブである、請求項1に記載のアセタールの製造方法。
【請求項5】
前記アセタール化反応工程が、前記固体酸触媒及び前記固体脱水剤からなる群より選択される1種以上が充填されたカートリッジを有する回転式リアクタを用いて行われる、請求項1に記載のアセタールの製造方法。
【請求項6】
固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させ、アセタールを製造するアセタール製造部と、
アセタール製造部で製造された前記アセタールを加水分解し、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを製造する加水分解部と、
二酸化炭素と前記加水分解部で製造された前記アルコールとを含む原料から炭酸ジエステルを製造する炭酸ジエステル製造部と、
を含む、炭酸ジエステル製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アセタールの製造方法及び炭酸ジエステル製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アセタールは、様々な工業製品の原材料として広く用いられており、その製造方法の開発も盛んに行われている。
【0003】
アセタールは、ケトンやアルデヒドとアルコールとの反応により製造することが一般的であり、例えば、非特許文献1には、強酸性陽イオン交換樹脂を触媒として利用したアセタール製造方法が開示されており、非特許文献2には、イオン性液体を触媒として利用したアセタール製造方法が開示されている。
また、非特許文献3には、触媒の非存在下、アセトンと超臨界メタノールとを反応させることでアセタールを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】N. B. LORETTE et al., The Journal of Organic Chemistry, Vol.24, No.11, 1959, p.1731-1733
【非特許文献2】Hui Jiang et al., Green Chemistry, Vol.8, 2006, p.1076-1079
【非特許文献3】Yoshiteru Horikawa et al., Chemistry Letters, Vol.32, No.3, 2003, p.232-233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、24℃条件下での転化率が低く、-28℃の低温で反応を行う必要がある上、アセトン及びブタノン等の非環状ケトンを基質として用いると、低収率でしかアセタールが得られえないという問題がある。また、非特許文献2に記載の方法では、触媒に高価なイオン性液体を使用する必要がある。一方、非特許文献3では、触媒を使用する必要がないものの、アルコールが超臨界状態になる条件で反応を行う必要があるだけでなく、350℃もの高温でないと反応が進行せず、30%未満の低収率でしかアセタールを得ることができないという問題がある。そのため、これらとは別の新たなアセタールの製造方法の開発が求められている。
【0006】
本開示の課題は、カルボニル化合物とアルコールとからアセタールを製造する新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、固体酸触媒及び固体脱水剤の存在下でカルボニル化合物とアルコールとを反応させることにより、効率よくアセタールを製造できることを見出した。すなわち、本開示は、以下を要旨とする。
【0008】
〔1〕
固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させるアセタール化反応工程を含む、アセタールの製造方法。
〔2〕
前記カルボニル化合物が、一般式(1)で表される化合物であり、
前記アルコールが、一般式(2)で表される化合物である、〔1〕に記載のアセタールの製造方法。
【化1】
R
3OH (2)
(一般式中、R
1は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基であり;R
2は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基又は水素原子であり;R
3は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基であり;R
1及びR
2がともに肪族炭化水素基である場合、R
1とR
2とは互いに単結合又は連結基を介して結合し環を形成していてもよい。)
〔3〕
前記固体酸触媒が、陽イオン交換樹脂である、〔1〕又は〔2〕に記載のアセタールの製造方法。
〔4〕
前記固体脱水剤が、モレキュラーシーブである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のアセタールの製造方法。
〔5〕
前記アセタール化反応工程が、前記固体酸触媒及び前記固体脱水剤からなる群より選択される1種以上が充填されたカートリッジを有する回転式リアクタを用いて行われる、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のアセタールの製造方法。
〔6〕
固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させ、アセタールを製造するアセタール製造部と、
アセタール製造部で製造された前記アセタールを加水分解し、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを製造する加水分解部と、
二酸化炭素と前記加水分解部で製造された前記アルコールとを含む原料から炭酸ジエステルを製造する炭酸ジエステル製造部と、
を含む、炭酸ジエステル製造システム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、カルボニル化合物とアルコールとからアセタールを製造する新規な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態においてに用いられる回転式リアクタの模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る炭酸ジエステル製造システムを説明した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本開示の実施態様の一例(代表例)であり、本開示はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、「X~Y」又は「X以上Y以下」で表される数値範囲が段階的(例えば、好ましい順)に記載
されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0013】
〔1 アセタールの製造方法〕
本開示の第1の実施形態は、固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させるアセタール化反応工程を含む、アセタールの製造方法である。
【0014】
本実施形態によれば、カルボニル化合物とアルコールとからアセタールを製造することができる。また、本実施形態では、触媒が固体酸触媒であり、脱水剤も固体脱水剤であるため、アセタール化反応工程後に、遠心分離及びろ過等により触媒及び脱水剤を容易に分離及び回収することができる。
さらに、本実施形態の好適な態様によれば、原料を超臨界状態で反応させる必要がなく、低温条件及び高温条件でなくとも、0℃~室温程度で反応が進行し、良好な収率でアセタールを製造し得る。また、本実施形態の好適な態様によれば、非環状ケトン、環状ケトン、及びアルデヒド等の種々のカルボニル化合物から、良好な収率でアセタールを製造し得るため、高い工業的利用価値を有する。なお、本開示において、「室温」とは、15℃~35℃の温度範囲を意味する。
【0015】
〔1.1 カルボニル化合物〕
本実施形態において、アセタールの原料となるカルボニル化合物は、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有する化合物である限り、特に限定されず、目的のアセタールに応じて適宜選択することができる。カルボニル化合物が有するケトン性カルボニル基及びホルミル基の数は、特に限定されないが、好ましくは1以上3以下、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
【0016】
好適なカルボニル化合物としては、一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【0018】
一般式(1)中、R1は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基であり;R2は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基又は水素原子であり;R1及びR2がともに肪族炭化水素基である場合、R1とR2とは互いに単結合又は連結基を介して結合し環を形成していてもよい。
なお、本開示において、「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよく、炭素-炭素不飽和結合を有していてもよいものとする。
【0019】
R1は、無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
R1で表される無置換の肪族炭化水素基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上20以下、より好ましくは2以上16以下、さらに好ましくは3以上8以下である。
【0020】
R1で表される無置換の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、
n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、及びシクロヘキシルメチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、2-メチルアリル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、及びデセニル基等のアルケニル基;並びにこれらの異性体基;等が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
【0021】
R1で表される脂肪族炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基としては、アセタール化反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば重水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基等の炭素数1以上4以下のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の炭素数3以上6以下のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert-ブトキシ基等の炭素数1以上4以下のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、及びシクロヘキシル基等の炭素数3以上6以下のシクロアルキルオキシ基;フェニル基、1-ナフチル基、及び2-ナフチル基等の炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基;フラニル基、チエニル基、モルホリノ基、及びピリジル基等の複素環基;ベンジル基及び2-フェニルエチル基等のアラルキル基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、及びヨード基等のハロゲノ基;ヒドロキシ基;並びにニトロ基;等が挙げられる。
【0022】
R2で表される置換基を有していてもよい肪族炭化水素基は、R1で表される置換基を有していてもよい肪族炭化水素基と同義であり、その好ましい態様も同様である。
【0023】
R1とR2とは互いに単結合又は連結基を介して結合し環を形成する場合、当該連結基としては、アセタール化反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、-CH2-、-O-、及び-S-等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)で表されるカルボニル化合物の具体例としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、及びシクロヘキサノン等が挙げられる。これらのうち、カルボニル化合物は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、及びシクロヘキサノンから選択される1種以上であることが好ましい。
【0025】
カルボニル化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0026】
〔1.2 アルコール〕
本実施形態において、アセタールの原料となるアルコールは、特に限定されず、目的のアセタールに応じて適宜選択することができる。
【0027】
アルコールは、脂肪族アルコールであってもよく、芳香族アルコールであってもよいが、脂肪族アルコールであることが好ましい。また、アルコールは、多価アルコールであってもよく、モノオールであってもよいが、モノオールであることが好ましい。したがって、アルコールとしては、脂肪族モノオールが好ましく、より具体的には、一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0028】
R3OH (2)
一般式(2)中、R3は、置換基を有していてもよい肪族炭化水素基である。
【0029】
R3で表される置換基を有していてもよい肪族炭化水素基は、R1で表される置換基を有していてもよい肪族炭化水素基と同義であり、その好ましい態様も下記(i)及び(ii)を除いて同様である。
(i)R3で表される無置換の肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは2以上3以下である。
(ii)R3で表される置換基を有していてもよい肪族炭化水素基は、好ましくは無置換のアルキル基であり、より好ましくは無置換の1級アルキル基である。
【0030】
一般式(2)で表されるアルコールの具体例としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、n-ノナノール、及びn-デカノール等が挙げられる。これらのうち、アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びn-ブタノールから選択される1種以上であることが好ましく、メタノール、エタノール、及びn-プロパノールから選択される1種以上であることがより好ましく、エタノールであることがさらに好ましい。
【0031】
アルコールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0032】
アセタール化反応工程におけるアルコールの使用量は、特に限定されない。本実施形態においては、後述する実施例に示されるように、カルボニル化合物に対するアルコールのモル比によらず、アセタールを高収率で製造することができる。
【0033】
ただし、反応速度及び製造コスト等の観点から、アルコールの使用量(仕込量)は、カルボニル化合物の使用量(仕込量)1molに対して、好ましくはk×0.4mol以上k×20.0mol以下、好ましくはk×1.0mol以上k×15.0mol以下、よりに好ましくはk×2.0mol以上k×10.0mol以下である(kは、カルボニル化合物1分子あたりのケトン性カルボニル基及びホルミル基の合計数である。)。
【0034】
〔1.3 アセタール〕
本実施形態に係る製造方法により得られるアセタールとしては、上記原料に由来する構造を有するアセタールである。好適なアセタールとしては、一般式(3)で表される化合物が挙げられる。一般式(3)で表される化合物は、一般式(1)で表されるカルボニル化合物と一般式(2)で表されるアルコールとの反応により得られるアセタールである。
【0035】
【0036】
一般式(3)中のR1及びR2は、それぞれ、一般式(1)中のR1及びR2と同義であり、その好ましい態様も同様である。また、一般式(3)中のR3は、一般式(2)中のR3と同義であり、その好ましい態様も同様である。一般式(3)中の2つのR3は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0037】
一般式(3)で表されるアセタールの具体例としては、例えば下記化合物が挙げられる。
【0038】
【0039】
〔1.4 固体酸触媒〕
本実施形態におけるアセタール化反応工程では、カルボニル化合物とアルコールとの反応を促進する触媒として、固体酸触媒を用いる。固体酸触媒は、無機系固体酸触媒であってもよく、有機系固体酸触媒であってもよい。反応後に固体酸触媒を回収し、アセタールの製造に再利用する場合は、固体酸触媒を繰り返し再利用しても高い触媒活性を示し得る点で、固体酸触媒は、有機系固体酸触媒であることが好ましい。
【0040】
無機系固体酸触媒としては、プロトン性水素原子又は第3族~第15族の元素の陽イオンを有するゼオライト又はモンモリロナイト;メソポーラス物質;ヘテロポリ酸;硫酸化ジルコニア;及び硫酸化ナノグラフェン;等が挙げられる。これらのうち、無機系固体酸触媒は、ゼオライト及び硫酸化ジルコニアから選択される1種以上であることが好ましい。
【0041】
第3族~第15族の元素の陽イオンとしては、たとえば、スカンジウム(III)、ランタン(III)、セリウム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、鉄(III)、ルテニウム(II)、ニッケル(II)、パラジウム(II)、銅(II)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、ガリウム(III)、インジウム(III)、及びスズ(IV)等が挙げられる。これらのうち、第3族~第15族の元素の陽イオンとしては、スカンジウム(III)、ランタン(III)、セリウム(III)、チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、鉄(III)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、ガリウム(III)、インジウム(II
I)、及びスズ(IV)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0042】
モンモリロナイトの中でも、第3族~第15族の元素の陽イオンとしてランタン(III)、セリウム(III)、チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、鉄(III)、アルミニウム(III)、ガリウム(III)、インジウム(III)、及びスズ(IV)から選ばれる1種以上の陽イオンを有するモンモリロナイト;及びプロトン性水素原子を有するモンモリロナイト;がより好ましく、ガリウム(III)、インジウム(III)、及びスズ(IV)から選ばれる1種以上の陽イオンを有するモンモリロナイトがさらに好ましい。
【0043】
第3族~第15族の元素の陽イオンを有するモンモリロナイトは、例えばナトリウム(I)を有する市販のモンモリロナイト(例えば、クニミネ工業株式会社製「クニピアF」)を、第3族~第15族の元素の陽イオンを含む水溶液で処理することにより、容易に調製できる。
また、プロトン性水素原子を有するモンモリロナイトとしては、市販品等を使用できる。プロトン性水素原子を有するモンモリロナイトの市販品としては、例えばメルク社製「モンモリロナイトK10」及び「モンモリロナイトK30」等が挙げられる。
【0044】
ゼオライトとしては、Y型、ベータ型、ZSM-5型、モルデナイト型、及びSAPO型等の基本骨格を有する各種のゼオライトを使用することができ、触媒活性の観点から、Y型が好ましい。
【0045】
また、Y型ゼオライト(Na-Y)を二次的処理して得られる、SUSY型(Super Ultrastable Y)、VUSY型(Very Ultrastable Y)、及びSDUSY型(Super dealuminated ultrastable Y)等として知られるUSY型(Ultrastable Y;G. T. KERR et al., “Molecular Sieves”, Vol.121, (米), American Chemical Society, June 1, 1973,
p.219-229(Chapter 19)参照)も好ましく使用できる。
【0046】
ゼオライトとしては、プロトン性水素原子を有するブレンステッド酸型ゼオライト及び第3~第15族の元素の陽イオンを有するルイス酸型ゼオライト等の各種のゼオライトを使用することもできる。
【0047】
プロトン性水素原子を有するプロトン型ゼオライトは、H-Y型、H-SDUSY型、H-SUSY型、H-ベータ型、H-モルデナイト型、及びH-ZSM-5型等で表される。また、アンモニウム型ゼオライトであるNH4-Y型、NH4-VUSY型、NH4-ベータ型、NH4-モルデナイト型、及びNH4-ZSM-5型等のゼオライトを焼成し、プロトン型に変換したものをプロトン型ゼオライトとして使用することができる。
【0048】
上述したゼオライトとしては、市販品を含む各種のものを使用できる。
USY型ゼオライトとしては、例えばゼオリスト社製「CBV760」、「CBV780」、「CBV720」、「CBV712」及び「CBV600」等が挙げられる。
Y型ゼオライトとしては、例えば東ソー株式会社製「HSZ-360HOA」及び「HSZ-320HOA」等が挙げられる。
ベータ型ゼオライトとしては、例えばゼオリスト社製「CP811C」、「CP814N」、「CP7119」、「CP814E」、「CP7105」、「CP814CN」、「CP811TL」、「CP814T」、「CP814Q」、「CP811Q」、「CP811E-75」、「CP811E」及び「CP811C-300」等;並びに東ソー株式会社製「HSZ-930HOA」及び「HSZ-940HOA」等;等が挙げられる。
【0049】
有機系固体酸触媒としては、陽イオン交換樹脂が好ましく挙げられる。陽イオン交換樹脂は、ポーラス型、ゲル型、及びマクロポーラス型のいずれであってもよい。
【0050】
陽イオン交換樹脂としては、プロトン性水素原子を有するH+型陽イオン交換樹脂等の酸性官能基を有するポリマー等を使用することができる。酸性官能基としては、スルホ基、カルボキシ基、及びホスホリル基等が挙げられ、好ましくはスルホ基又はカルボキシ基であり、より好ましくはスルホ基である。また、ポリマーとしては、パーフルオロ側鎖を有するテフロン(登録商標)骨格ポリマー、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、及び(メタ)アクリル酸-ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0051】
酸性官能基を有するポリマーの具体例としては、「Nafion NR50」等のNafionシリーズ(富士フィルム和光純薬株式会社及びメルク社等より入手可能);「Dowex 50Wx2」及び「Dowex 50Wx4」等のDowexシリーズ(富士フィルム和光純薬株式会社及びメルク社等より入手可能);「Amberlite IR-120」及び「Amberlite IRP64」等のAmberliteシリーズ(メルク社等より入手可能);「Amberlyst 15(H)」及び「Amberlyst 36」等のAmberlystシリーズ(メルク社等より入手可能);並びに「Purolite CT75」等のPuroliteシリーズ(ピュロライト株式会社より入手可能);等が挙げられる。
【0052】
これらのうち、陽イオン交換樹脂としては、Nafionシリーズ、Amberlystシリーズ、及びDowexシリーズから選択される1種以上であることが好ましく、Nafion NR50、Amberlyst 15(H)、及びDowex 50Wx2から選択される1種以上であることがより好ましく、Amberlyst 15(H)であることがさらに好ましい。
【0053】
固体酸触媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0054】
固体酸触媒の使用量(仕込量)は、原料の種類及び固体酸触媒の種類等にもよるが、カルボニル化合物の使用量(仕込量)1molに対して、好ましくはk×0.1g以上k×100g以下、より好ましくはk×0.5g以上k×80g以下、さらに好ましくはk×1.0g以上k×50g以下である(kは、前記と同義である。)。固体酸触媒を反応後に回収して再利用する場合も、固体酸触媒の使用量は上述の通りである。
【0055】
固体酸触媒を反応後に回収し、アセタールの製造に再利用する場合は、再利用に先立って、回収した固体酸触媒を洗浄及び乾燥することが好ましい。
【0056】
固体酸触媒の洗浄には、有機溶媒を好適に使用できる。有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール及びエタノール等のアルコール;ノルマルヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン等の芳香族炭化水素;等が好ましく挙げられる。これらのうち、有機溶媒としては、アルコールが好ましく、アセタール化の原料であるアルコールと同種のアルコールがより好ましい。
【0057】
固体酸触媒の乾燥条件は、固体酸触媒に付着した液体を除去できる限り特に限定されない。固体酸触媒が無機系固体酸触媒である場合は、100℃~600℃で1時間~48時間常圧乾燥又は減圧乾燥することが好ましい。また、固体酸触媒が有機系固体酸触媒である場合は、50℃~150℃で1時間~48時間常圧乾燥又は減圧乾燥することが好ましい。
【0058】
〔1.5 固体脱水剤〕
本実施形態においては、カルボニル化合物とアルコールとが反応してアセタールが生成する際に副生する水を除去するため、アセタール化反応を固体脱水剤の存在下で行う。脱水剤として固体脱水剤を使用することにより、逆反応の進行を効果的に抑制することができ、また、反応後に遠心分離及びろ過等により脱水剤を容易に分離及び回収することができる。
【0059】
固体脱水剤は、反応系内の水を除去し得る固体であって、固体酸触媒に該当しないものである限り、特に限定されず、任意の脱水剤を使用することができる。任意の脱水剤としては、例えばモレキュラーシーブ、シリカゲル、五酸化リン、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、固体脱水剤としては、モレキュラーシーブが好ましく、水を選択的に除去できる点で、モレキュラーシーブ3A及びモレキュラーシーブ4Aから選択される1種以上であることがより好ましく、モレキュラーシーブ3Aであることがさらに好ましい。また、固体脱水剤は、十分な脱水能力を発揮させるため、使用前に乾燥させておくことが好ましい。例えば、固体脱水剤が無機系固体脱水剤である場合には、使用前に100℃~600℃で1時間~48時間常圧乾燥又は減圧乾燥しておくことが好ましい。
【0060】
固体脱水剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0061】
固体脱水剤の形状は、特に限定されず、塊状、顆粒状、及び粉末状等であってよいが、単位重量あたりの脱水能力をより高めるためには、顆粒状又は粉末状であることが好ましい。また、後述する回転式リアクタを用いてアセタール化反応工程を行う場合には、カートリッジ内での反応液の流通が容易になる点で、固体脱水剤の形状は、顆粒状であることが好ましい。
【0062】
顆粒状の固体脱水剤の平均粒径は、好ましくは0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1.0mm以上8.0mm以下、さらに好ましくは1.5mm以上5.0mm以下である。
粉末状の固体脱水剤の平均粒径は、好ましくは10μm以上500μm未満、より好ましくは30μm以上300μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
なお、本開示において、「平均粒径」とは、累積重量平均径D50(メジアン径)を意味し、レーザー光散乱法により測定される。
【0063】
固体脱水剤の使用量は、反応系内の水を十分に除去できる限り特に限定されず、固体脱水剤の脱水能力等に応じて適宜設定すればよい。例えば、固体脱水剤としてモレキュラーシーブ3Aを使用する場合、固体脱水剤の使用量(仕込量)は、カルボニル化合物の使用量(仕込量)1molに対して、好ましくはk×5g以上k×250g以下、より好ましくはk×20g以上k×200g以下、さらに好ましくはk×25g以上k×150g以下である(kは、前記と同義である。)。
【0064】
〔1.6 反応溶媒〕
アセタール化反応工程において、アセタール化反応は、反応溶媒中で行ってもよく、無溶媒で行ってもよい。反応溶媒中でアセタール化反応を行うと、各成分の濃度を容易に調整でき、反応を制御し易い点で好ましい。一方、無溶媒で熱分解を行うと、カルボニル化合物とアルコールとの接触機会が増えるため、反応速度が向上して反応時間の短縮が可能になる点、及びより低い反応温度での触媒反応が可能となる点で好ましい。
【0065】
なお、本開示において、「無溶媒」とは、反応基質、触媒、生成物、及びこれらに由来する化合物とは異なる液体を使用しないことを意味する。したがって、例えば、アルコールが溶媒としても働く場合であっても、アルコールは反応溶媒とはみなさず、アセタール化反応が「無溶媒」で行われるものとみなす。
【0066】
アセタール化反応を反応溶媒中で行う場合、反応溶媒は、カルボニル化合物、固体酸触媒、及びアセタールと反応しない不活性溶媒であることが好ましい。不活性溶媒としては、炭化水素及びハロゲン化炭化水素が好ましく挙げられる。
【0067】
炭化水素としては、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-オクタデカン、ビシクロヘキシル、及びデカリン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、ドデシルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、p-シメン、ナフタレン、及びビフェニル等の芳香族炭化水素;並びにシクロヘキシルベンゼン及びテトラリン等の芳香族炭化水素部分水素化物;等が挙げられる。
【0068】
ハロゲン化炭化水素としては、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,2,3-トリクロロプロパン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、及びブロモベンゼン等が挙げられる。
【0069】
反応溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0070】
反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応効率を損なわない範囲とすることが好ましく、例えばカルボニル化合物に対して、好ましくは0.1容量倍以上100容量倍以下、より好ましくは0.3容量倍以上50容量倍以下、さらに好ましくは0.5容量倍以上10容量倍以下である。
【0071】
〔1.7 反応条件〕
アセタール化反応工程における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは-10℃以上200℃以下、より好ましくは0℃以上100℃以下、さらに好ましくは0℃以上60℃以下、特に好ましくは0℃以上35℃以下である。
【0072】
アセタール化反応工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。より具体的には、アセタール化反応工程は、0.1気圧以上100気圧以下で行うことが好ましく、0.5気圧以上50気圧以下で行うことがより好ましく、0.8気圧以上10気圧以下で行うことがさらに好ましく、1.0気圧以上5気圧以下で行うことが特に好ましい。
【0073】
アセタール化反応工程は、厳密な禁水条件は必要としないが、窒素及びアルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0074】
アセタール化反応工程における反応時間は、反応スケール、原料の種類、触媒量、反応温度、及び反応装置等にもよるが、アセタールの収率及び生産性の観点から、好ましくは10分以上48時間以下、より好ましくは30分以上36時間以下、さらに好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0075】
〔1.8 反応装置〕
アセタール化反応工程を行うための反応装置としては、特に限定されず、例えばバッチ
式、フロー式、及び回転式等の任意の装置を採用できる。これらのうち、アセタール化反応工程は、固体酸触媒等の固相を充填したカートリッジを回転させ、原料等を含む流体をカートリッジ内外で循環させることにより反応を促進する回転式リアクタを用いて行うことが好ましい。以下、図を参照しながらアセタール化反応工程に用いる回転式リアクタについて説明する。
【0076】
図1(A)は、回転式リアクタのカートリッジ100を模式的に示した斜視図の一例であり、
図1(B)は、回転式リアクタ200の使用状態を模式的に示した図である。
【0077】
回転式リアクタ200のカートリッジ100は、有底円筒形状の本体16と有底円筒形状の本体16を複数の区画に分ける分離壁18とを有する。
図1(A)に示すカートリッジ100は、分離壁18により、カートリッジ内部が第1区画11、第2区画12、第3区画13、及び第4区画14の4つの区画に分けられている。固体酸触媒及び固体脱水剤は、混合して一部又は全部の区画に充填してもよいが、反応後の分離回収が容易になるため、それぞれ別の区画に充填することが好ましい。また、固体酸触媒及び固体脱水剤の一方をカートリッジ100の任意の区画に充填し、他方はカートリッジ100には充填せず、反応液中に分散させて使用してもよい。なお、本体16には、反応の際に反応液25を放出するための流体放出口17が設けられているため、固体酸触媒及び/又は固体脱水剤がカートリッジ100から流出しないよう、流体放出口17にはフィルター(図示せず)が設けられているか、或いは、フィルター(図示せず)を介してカートリッジ100に固体酸触媒及び/又は固体脱水剤が充填される。
【0078】
以下、カートリッジ100に固体酸触媒及び固体脱水剤を充填したものとして説明する。
反応の際には、
図1(B)に示すように、固体酸触媒及び固体脱水剤が充填されたカートリッジ100に蓋21と回転軸22とを取り付けて反応液25に浸漬し、回転軸22に接続したモーターにより反応液25中でカートリッジ100を回転させる。この回転により、カートリッジ100の本体16の底部の中央付近に設けられた流体吸入口(図示せず)から反応液25が吸い上げられ、固体酸触媒及び固体脱水剤に原料を含む反応液25が浸透し、反応が進行するとともに、反応により副生した水が除去される。反応液25は、カートリッジ100内部を移動し、固体酸触媒及び固体脱水剤と接触した後、流体放出口17からカートリッジ100外へ放出される。
【0079】
カートリッジ100から放出された反応液25は、再度流体吸入口からカートリッジ100内に吸い上げられ、固体酸触媒及び固体脱水剤と接触し、反応及び脱水が進行する。このように、回転式リアクタ200では、反応液25がカートリッジ100の内外を循環するため、原料及び副生水と固体酸触媒及び固体脱水剤との接触機会を増やすことができる。そのため、反応装置として回転式リアクタ200を使用することにより、反応速度を向上させることができる。
【0080】
また、回転式リアクタ200を使用し、固体酸触媒及び固体脱水剤の両方をカートリッジ100に充填して反応を行うことで、反応後に反応液をろ過することなく容易に反応液の後処理、並びに固体酸触媒及び固体脱水剤の分離回収をすることが可能となる。
【0081】
回転式リアクタとしては、国際公開第2015/060764号に記載されたリアクタ及びSpinChem社製「SpinChem roatating bed rector RBRS2」等を好適に使用することができる。
【0082】
〔1.8 他の工程装置〕
本実施形態に係るアセタールの製造方法は、アセタール化反応工程の他、任意の工程を
含んでいてもよい。任意の工程としては、例えば、アセタールの純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程におけるアセタールの精製方法としては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。
【0083】
〔2. 炭酸ジエステル製造システム〕
本開示の第2の実施形態は、固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させ、アセタールを製造するアセタール製造部と、アセタール製造部で製造された前記アセタールを加水分解し、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを製造する加水分解部と、二酸化炭素と前記加水分解部で製造された前記アルコールとを含む原料から炭酸ジエステルを製造する炭酸ジエステル製造部とを含む、炭酸ジエステル製造システムである。
【0084】
以下、
図2を参照しながら、本実施形態に係る炭酸ジエステル製造システムを説明する。
炭酸ジエステル製造システム300のアセタール製造部31では、固体酸触媒と固体脱水剤の存在下で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとを反応させ、アセタールを製造する。
【0085】
本実施形態において、アセタール製造部31では、第1の実施形態に係るアセタールの製造方法によりアセタールの製造が行われる。アセタールの製造には、後述する加水分解部33で製造されたカルボニル化合物及びアルコールを用いることが好ましい。
【0086】
アセタール製造部31で製造されたアセタールは、加水分解部33で、ケトン性カルボニル基及びホルミル基のいずれか又は両方を有するカルボニル化合物とアルコールとに分解される。このカルボニル化合物及びアルコールは、それぞれ、アセタール製造部31でアセタールの原料として用いられるカルボニル化合物及びアルコールと同種のものである。
【0087】
本実施形態において、加水分解部33での加水分解は、加水分解対象としてアセタール製造部31で製造されたアセタールを使用する限り、特に限定されない。また、加水分解するアセタールには、アセタール製造部31で製造されたアセタール以外のアセタールを含まれていてもよい。加水分解の方法としては、公知の方法及びこれに準じた方法等の任意の方法を採用できる。
【0088】
加水分解部33で製造されたアルコールは、炭酸ジエステル製造部35において、二酸化炭素と反応し、炭酸ジエステルが製造されるとともに、水が副生する。副生した水は、脱水剤に吸着させて除去してもよいが、回収して加水分解部33でアセタールの加水分解に使用することが好ましい。
【0089】
本実施形態おいて、炭酸ジエステル製造部35での炭酸ジエステルの製造は、原料として二酸化炭素と加水分解部33で製造されたアルコールとを使用する限り、特に限定されない。また、原料のアルコールには、加水分解部33で製造されたアルコール以外のアルコールを含まれていてもよい。炭酸ジエステルの製造方法としては、公知の方法及びこれに準じた方法等の任意の方法を採用できる。公知の方法としては、例えば特開平06-262085号公報、特開平07-033715号公報、特開平09-208530号公報、又はMasafumi Sugiyama et al., Chemistry-Sustainability-Energy-Materials, 2020,
Vol.13, Issue7, p.1775-1784に記載された方法等が挙げられる。
【0090】
本実施形態においては、上述したように、加水分解部33で製造されたカルボニル化合物及びアルコールが、アセタール製造部31でアセタールの原料として使用されることが好ましく、また、炭酸ジエステル製造部35で副生した水が、加水分解部33でアセタールの加水分解に使用されることが好ましい。このように、各部間で原料、生成物、及び副生成物が循環することで、廃棄物の少ない環境調和型の炭酸ジエステル製造システム300を構築することができる。
【0091】
なお、
図2には、一般式(1)で表されるカルボニル化合物と一般式(2)で表されるアルコールとから一般式(3)で表されるアセタールを製造するアセタール製造部31を含む炭酸ジエステル製造システム300の例を示したが、本実施形態に係る炭酸ジエステル製造システムで使用できる化合物は、これらに限定されるものではない。また、本実施形態に係る炭酸ジエステル製造システムは、アセタール製造部、加水分解部、及び炭酸ジエステル製造部以外にも、任意の工程を行う処理部を有していてもよい。
【実施例0092】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0093】
<固体酸触媒の前処理>
・HSZ-320HOA:東ソー株式会社製Y型ゼオライト「HSZ-320HOA」を電気炉にて500℃で3時間焼成した。
・Nafion NR50:富士フィルム和光純薬株式会社製「Nafion NR50」を80℃で20時間減圧乾燥した。
・Amberlyst 15DRY:Thermo Scientific社(旧Alfa Aesar社)製「Amberlyst 15(H)」を80℃で20時間減圧乾燥した。
・硫酸化ジルコニア:富士フィルム和光純薬株式会社製硫酸化ジルコニアを、使用直前に電気炉にて400℃で10分間熱処理した。
・Dowex 50Wx2:富士フィルム和光純薬株式会社製「Dowex 50Wx2」を80℃で20時間減圧乾燥した。
【0094】
<固体脱水剤の前処理>
・粉末状MS3A:富士フィルム和光純薬株式会社製「合成ゼオライトA-3」(100mesh)を300℃で20時間減圧乾燥した。
・顆粒状MS3A:Merck社製モレキュラーシーブ0.3nm(ビーズ状~2mm)を300℃で20時間減圧乾燥した。
【0095】
<反応装置>
・スピンケム回転式リアクタ:SpinChem社製SpinChem roatating bed rector RBRS2
【0096】
<分析装置>
・ガスクロマトグラフ(GC)分析装置:島津製作所製GC-2014(カラム:RTX)
・核磁気共鳴(NMR)分析装置:ブルカー社製AVANCE 400(溶媒:C6D6)
【0097】
<収量及び収率の算出>
実施例及び比較例におけるアセタールの収量及び収率は、GCにより下記基準(a)又は(b)に基づいて算出した。
(a)アルコール/ケトン≧2の場合は、ケトンの量によって収量の上限が決まるため、ケトン基準で収量及び収率を算出した。
(b)アルコール/ケトン<2の場合は、アルコールの量によって収量の上限が決まるため、アルコール基準で収量及び収率を算出した。
【0098】
〔実施例1〕
粉末状MS3A 10g及びHSZ-320HOA 1.275gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で1時間撹拌した。反応後、反応混合物(1a)から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、6.6g(収率50%)であった。
【0099】
〔実施例2〕
粉末状MS3A 10g及びHSZ-320HOA 1.275gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、0℃で1時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、3.1g(収率23%)であった。
【0100】
〔実施例3〕
粉末状MS3A 10g及びNafion NR50 2.5gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物(3a)から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、5.8g(収率44%)であった。
【0101】
〔実施例4〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 0.1gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、5.4g(収率41%)であった。
【0102】
〔実施例5〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物(5a)から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、6.2g(収率47%)であった。
【0103】
〔実施例6〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 1.0gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、5.6g(収率42%)であった。
【0104】
〔実施例7〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 2.5gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、4.5g(収率34%)であった。
【0105】
〔実施例8〕
粉末状MS3A 5g及びAmberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール4.6g(0.1モル等量)及びアセトン11.6g(0.2モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、3.0g(収率45%)であった。
【0106】
〔実施例9〕
粉末状MS3A 5g及びAmberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール4.6g(0.1モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、3.1g(収率47%)であった。
【0107】
〔実施例10〕
粉末状MS3A 10g、Amberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール9.2g(0.2モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、5.3g(収率40%)であった。
【0108】
〔実施例11〕
粉末状MS3A 10g、Amberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール27.6g(0.6モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、6.8g(収率52%)であった。
【0109】
〔実施例12〕
粉末状MS3A 10g、Amberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール36.9g(0.8モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、6.6g(収率50%)であった。
【0110】
〔実施例13〕
粉末状MS3A 10g、Amberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール46.1g(1.0モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、6.3g(収率48%)であった。
【0111】
〔実施例14〕
粉末状MS3A 5g、Amberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、3.7g(収率28%)であった。
【0112】
〔実施例15〕
粉末状MS3A 15g、Amberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、5.6g(収率43%)であった。
【0113】
〔実施例16〕
粉末状MS3A 10g、硫酸化ジルコニア3.83gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で3時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、7.2g(収率55%)であった。
【0114】
〔実施例17〕
粉末状MS3A 10g及びDowex 50Wx2 2.55gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で1時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、3.5g(収率27%)であった。
【0115】
〔実施例18〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びメチルエチルケトン7.2g(0.1モル等量)を加え、25℃で3時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、メチルエチルケトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、6.8g(収率46%)であった。
【0116】
〔実施例19〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びメチルプロピルケトン8.6g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、メチルプロピルケトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、6.0g(収率38%)であった。
【0117】
〔実施例20〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びジエチルケトン8.6g(0.1モル等量)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、ジエチルケトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、3.1g(収率19%)であった。
【0118】
〔実施例21〕
粉末状MS3A 10g及びAmberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びシクロヘキサノン9.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、シクロヘキサノンジエチルアセタールの収量を算出したところ、11.6g(収率67%)であった。
【0119】
〔比較例1〕
粉末状MS3A 10gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で1時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行ったが、アセトンジエチルアセタールの生成は認められなかった(収率0%)。
【0120】
〔比較例2〕
Amberlyst 15DRY 0.2gに、エタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、0.54g(収率4%)であった。
【0121】
〔比較例3〕
顆粒状MS3A 10g、エタノール23.0g(0.5モル等量)及びアセトン5.8g(0.1モル等量)に、濃硫酸0.0058g(0.00006モル等量)を加え、25℃で1時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、1.3g(収率10%)であった。
【0122】
実施例1~21及び比較例1~3における反応条件及びアセタール収率を表1にまとめて示す。
【0123】
【0124】
表1より、固体酸触媒及び固体脱水剤を使用した実施例1~21では、0℃~25℃の温度でもアセタール化反応が進行し、良好な収率でアセタールが得られることがわかる。また、実施例1~20ではカルボニル化合物として非環状ケトンを、実施例21ではカルボニル化合物として環状ケトンを使用しているところ、ケトンが非環状であるか環状であるかによらず、アセタールを良好な収率で得られることもわかる。
【0125】
一方で、固体酸触媒を使用しなかった比較例1では、アセタールが得られず、固体脱水剤を使用しなかった比較例1でもわずかにしかアセタールを得ることができないことが確認された。また、触媒として液体酸触媒を使用した比較例1でも、アセタールを良好な収率で得ることができないことが確認された。
【0126】
以下、反応後に固体酸触媒を回収し、再利用した場合の触媒活性について検討を行った。
【0127】
〔実施例22〕
(触媒利用回数:1回目)
実施例1が触媒利用回数1回目に該当する。
【0128】
(触媒利用回数:2回目)
実施例1の反応混合物(1a)から溶液部分を遠心分離(400rpm、6分)で除き、得られた固形分を500℃で3時間焼成した。得られた固形分(22a)の重量は、11.06gであり、実施例1における粉末状MS3AとHSZ-320HOAの仕込量合計の0.98倍であったので、触媒利用回数2回目の実験は、実施例1の0.98倍のスケールで行った。
【0129】
具体的には、固形分(22a)全量に、エタノール18.0g(0.39モル等量)及びアセトン5.7g(0.098モル等量)を加え、25℃で1時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、3.5g(収率27%)であった。
【0130】
(触媒利用回数:3回目)
触媒利用回数2回目の実験で得た反応混合物から溶液部分を遠心分離(400rpm、6分)で除き、得られた固形分を500℃で3時間焼成した。得られた固形分(22b)の重量は10.8gであり、実施例1における粉末状MS3AとHSZ-320HOAの仕込量合計の0.96倍であったので、触媒利用回数3回目の実験は、実施例1の0.96倍のスケールで行った。
【0131】
具体的には、固形分(22b)全量に、エタノール17.7g(0.38モル等量)及びアセトン5.6g(0.096モル等量)を加え、25℃で1時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、0.81g(収率6%)であった。
【0132】
実施例22おける反応条件及び実験結果を表2に示す。
【0133】
【0134】
〔実施例23〕
(触媒利用回数:1回目)
実施例3が触媒利用回数1回目に該当する。
【0135】
(触媒利用回数:2回目)
実施例3の反応混合物(3a)からデカンテーションで固形分(粉末状MS3AとNafion NR50の混合物)を取り出し、これを風乾した後に、目開き1mmのふるいを用いてNafion NR50を分離した。分離したNafion NR50は、20mLのエタノールを用いて3回洗浄を繰り返してから120℃で20時間減圧乾燥して再生した。得られた再生Nafion NR50(23a)の重量は、実施例3における仕込量と同じ(2.5g)であったので、触媒利用回数2回目の実験は、実施例3と同スケールで行った。
【0136】
具体的には、再生Nafion NR50(23a)全量に、粉末状MS3A 10g、エタノール18.4g(0.4モル等量)、アセトン5.8g(0.1モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出した。
【0137】
(触媒利用回数:3~5回目)
上記の手順を繰り返すことにより、触媒利用回数3回目、4回目、5回目の実験を行った。
【0138】
実施例23おける反応条件及び実験結果を表3に示す。
【0139】
【0140】
〔実施例24〕
(触媒利用回数:1回目)
実施例5が触媒利用回数1回目に該当する。
【0141】
(触媒利用回数:2回目)
実施例5の反応混合物(5a)からデカンテーションで固形分(粉末状MS3AとAmberlyst 15DRYの混合物)を取り出し、これを風乾した後に、目開き0.3mmのふるいを用いてAmberlyst 15DRYを分離した。分離したAmberlyst 15DRYは、20mLのエタノールを用いて3回洗浄を繰り返してから120℃で20時間減圧乾燥して再生した。得られた再生Amberlyst 15DRY(24a)の重量は0.18gであり、実施例5における仕込量の0.89倍であったので、触媒利用回数2回目の実験は、実施例5の0.89倍のスケールで行った。
【0142】
具体的には、再生Amberlyst 15DRY(24a)全量に、粉末状MS3A
8.9g、エタノール16.4g(0.356モル等量)及びアセトン5.2g(0.089モル等量)を加え、25℃で2時間撹拌した。反応後、反応混合物から溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出した。
【0143】
(触媒利用回数:3~5回目)
上記の手順を繰り返すことにより、触媒利用回数3回目、4回目、5回目の実験を行った。
【0144】
実施例24における反応条件及び実験結果を表4に示す。
【0145】
【0146】
〔実施例25〕
(触媒利用回数:1回目)
図1に示されるSpinChem回転式リアクタのカートリッジの4区画のうち3区画に顆粒状MS3A 10gを3分割して充填し、残る1区画にNafion NR50 5.1gを充填した後、所定の蓋と回転軸を装着した。ビーカーにエタノール18.4g(0.4モル等量)とアセトン5.8g(0.4モル等量)を入れておき、上方よりカートリッジを挿入した。次いで、回転軸をモーターに接続し、200rpmで回転させて24時間撹拌した。反応後、溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、2.6g(収率20%)であった。
【0147】
(触媒利用回数:2回目)
1回目の反応操作後のSpinChem回転式リアクタからカートリッジを取り外し、
ピンセットを用いてNafion NR50を回収した。次いで、20mLのエタノールを用いて3回洗浄を繰り返してから120℃で20時間減圧乾燥して再生した。この再生Nafion NR50(5.1g)を用いて、触媒利用回数2回目の実験を実施した。
【0148】
具体的には、SpinChem回転式リアクタのカートリッジの4区画のうち3区画に顆粒状MS3A 10gを3分割して充填、残る1区画に再生Nafion NR50全量を充填して、所定の蓋を装着した。ビーカーにエタノール18.4g(0.4モル等量)、アセトン5.8g(0.4モル等量)を入れておき、上方よりカートリッジを挿入した。次いで、回転軸をモーターに接続し、200rpmで回転させて20時間撹拌した。反応後、溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出した。
【0149】
(触媒利用回数:3~5回目)
上記の手順を繰り返すことにより、触媒利用回数3回目、4回目、5回目の実験を行った。
【0150】
実施例25における反応条件及び実験結果を表5に示す。
【0151】
【0152】
〔実施例26〕
(触媒利用回数:1回目)
顆粒状MS3A 10gとAmberlyst 15DRY 1.0gのそれぞれを、
図1に示されるSpinChem回転式リアクタのカートリッジの4区画に均等に充填して混合し、所定の蓋と回転軸を装着した。ビーカーにエタノール18.4g(0.4モル等量)とアセトン5.8g(0.4モル等量)を入れておき、上方よりカートリッジを挿入した。次いで、回転軸をモーターに接続し、200rpmで回転させて24時間撹拌した。反応後、溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出したところ、4.1g(収率31%)であった。
【0153】
(触媒利用回数:2回目)
1回目の反応操作後のSpinChem回転式リアクタからカートリッジを取り外し、カートリッジの内容物を風乾後、目開き0.3mmのふるいにかけてAmberlyst
15DRYを分離した。分離したAmberlyst 15DRYは、20mLのエタノールを用いて3回洗浄を繰り返してから120℃で20時間減圧乾燥して再生した。この再生Amberlyst 15DRY(1.0g)を用いて、触媒利用回数2回目の実験を実施した。
【0154】
具体的には、顆粒状MS3A 10gと再生Amberlyst 15DRY全量のそれぞれを、SpinChem回転式リアクタのカートリッジの4区画に均等に充填して混合し、所定の蓋と回転軸を装着した。ビーカーにエタノール18.4g(0.4モル等量)及びアセトン5.8g(0.4モル等量)を入れておき、上方よりカートリッジを挿入した。次いで、カートリッジをモーターにより200rpmで回転させて24時間撹拌した。反応後、溶液の一部を採取してGC分析を行い、アセトンジエチルアセタールの収量を算出した。
【0155】
(触媒利用回数:3~5回目)
上記の手順を繰り返すことにより、触媒利用回数3回目、4回目、5回目の実験を行った。
【0156】
実施例26における反応条件及び実験結果を表6に示す。
【0157】
【0158】
無機系固体酸触媒を使用した実施例22と有機系固体酸触媒を用いて実施例23~25とを比較すると、有機系固体酸触媒は、無機系固体酸触媒よりも再利用性に優れることがわかる。また、有機系固体酸触媒である陽イオン交換樹脂は、反応後に回収して再利用するサイクルを複数回繰り返した場合でも1回目の反応と同等程度の触媒活性を維持できることが確認されたことから、回転式リアクタと有機系固体酸触媒と組み合わせて使用すれば、触媒の回収容易性と再利用性とを発揮でき、有機合成分野において有用であると考えられる。
さらに、本アセタール製造方法を、炭酸ジエステル製造システムに適用することにより、廃棄物の少ない環境調和型の炭酸ジエステル製造システムを提供することも可能となる。