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特開2025-6018温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置
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  • 特開-温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006018
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6572 20140101AFI20250109BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/6572
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/643
H01M10/651
H01M10/647
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106537
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恩田 敬治
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH08
5H031KK03
(57)【要約】
【課題】二次電池の電池特性を好適であるように維持し得る技術を提供すること。
【解決手段】電池容器80内に電池構成要素が収容されている単電池8と、
可撓性を有し、前記単電池8に電気的に接続され吸熱および/または発熱する熱電変換素子22を含み、撓んだ状態で前記電池容器80の周壁81に沿って配置されている熱源要素20と、
前記単電池8と前記熱源要素20との間に電気的に介在し、前記単電池8の温度に応じて前記熱電変換素子22の吸熱および/または発熱を制御する制御要素30と、を具備する、温度制御装置2付き二次電池装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池容器内に電池構成要素が収容されている単電池と、
可撓性を有し、前記単電池に電気的に接続され吸熱および/または発熱する熱電変換素子を含み、撓んだ状態で前記電池容器の周壁に沿って配置されている熱源要素と、
前記単電池と前記熱源要素との間に電気的に介在し、前記単電池の温度に応じて前記熱電変換素子の吸熱および/または発熱を制御する制御要素と、を具備する、温度制御装置付き二次電池装置。
【請求項2】
前記制御要素は可撓性を有する、請求項1に記載の温度制御装置付き二次電池装置。
【請求項3】
前記熱源要素はエラストマ製の熱源基体を含むペルチェ素子シートであり、
前記熱源要素のデュロメータ硬さ A硬さは、30~70の範囲内である、請求項1または請求項2に記載の温度制御装置付き二次電池装置。
【請求項4】
前記制御要素は樹脂製の制御基体を含むフレキシブルプリント配線板であり、
前記制御要素の最小曲げ半径は5~20mmの範囲内である、請求項1または請求項2に記載の温度制御装置付き二次電池装置。
【請求項5】
前記熱電変換素子はペルチェ素子であり、
前記制御要素は前記単電池と前記熱電変換素子とに電気的に接続される制御回路を具備し、
前記制御回路は、サーミスタと、前記ペルチェ素子に給電する電源の極性を切り替える極性切替スイッチと、を有する、請求項1または請求項2に記載の温度制御装置付き二次電池装置。
【請求項6】
可撓性を有し、電池容器内に電池構成要素が収容されている単電池に電気的に接続され吸熱および/または発熱する熱電変換素子を含み、撓んだ状態で前記電池容器の周壁に沿って配置されている熱源要素と、
前記単電池と前記熱源要素との間に電気的に介在し、前記単電池の温度に応じて前記熱電変換素子の吸熱および/または発熱を制御する制御要素と、を具備する、二次電池用温度制御装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の温度制御装置付き二次電池装置を複数具備する組電池装置。
【請求項8】
請求項6に記載の二次電池用温度制御装置を複数具備する組電池用温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池の温度制御を行う二次電池用温度制御装置、二次電池と二次電池用温度制御装置とを含む二次電池装置、複数の二次電池用温度制御装置を具備する組電池用温度制御装置、および、複数の二次電池装置を具備する組電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の単電池を電気的に接続しホルダに収容した組電池は、例えば、車両の走行用バッテリに代表される種々の用途に供されている。
組電池用の単電池としては、繰り返し充放電可能することが可能な二次電池を用いるのが一般的である。
【0003】
二次電池にはその電池性能を十分に発揮するのに適した温度範囲がある。例えば、低温下においては二次電池の容量や出力が低下したり、サイクル性能の低下が生じたりしてしまう場合がある。一方、高温下においては、電解液の揮発や分解等が生じたり、サイクル性能の低下が生じたりしてしまう場合がある。
二次電池にこれらの性能低下が生じると、当該二次電池から電力が供給される各種の電気装置の動作性能が低下する虞がある。
【0004】
特許文献1、2には、熱電変換素子の一種であるペルチェ素子を用いて二次電池の温度制御を行う技術が紹介されている。
特許文献1、2に紹介されている技術によると、二次電池をその温度に基づいて適宜加熱または冷却することができ、低温や高温に曝されることに因る二次電池の性能低下を抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-157624号公報
【特許文献2】特開2022-128184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように特許文献1、2に紹介されている技術によると、低温時や高温時における二次電池の性能低下を抑制できると考えられる。しかし乍ら、特許文献1、2に紹介されている技術によってもなお、二次電池の電池特性を好適であるように維持することは困難である。
このため、二次電池の電池特性を好適であるように維持し得る技術が望まれている事情がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、二次電池の電池特性を好適であるように維持し得る技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の二次電池装置は、
電池容器内に電池構成要素が収容されている単電池と、
可撓性を有し、前記単電池に電気的に接続され吸熱および/または発熱する熱電変換素子を含み、撓んだ状態で前記電池容器の周壁に沿って配置されている熱源要素と、
前記単電池と前記熱源要素との間に電気的に介在し、前記単電池の温度に応じて前記熱電変換素子の吸熱および/または発熱を制御する制御要素と、を具備する、温度制御装置付き二次電池装置である。
【0009】
また、上記課題を解決する本発明の温度制御装置は、
可撓性を有し、電池容器内に電池構成要素が収容されている単電池に電気的に接続され吸熱および/または発熱する熱電変換素子を含み、撓んだ状態で前記電池容器の周壁に沿って配置されている熱源要素と、
前記単電池と前記熱源要素との間に電気的に介在し、前記単電池の温度に応じて前記熱電変換素子の吸熱および/または発熱を制御する制御要素と、を具備する、温度制御装置である。
【0010】
上記課題を解決する本発明の組電池装置は、上記した本発明の温度制御装置付き二次電池装置を複数具備する組電池装置である。
【0011】
さらに、上記課題を解決する本発明の組電池用温度制御装置は、上記した本発明の二次電池用温度制御装置を複数具備する組電池用温度制御装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の温度制御装置付き二次電池装置、二次電池用温度制御装置、組電池装置および組電池用温度制御装置によると、二次電池の電池特性を好適であるように維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の二次電池装置の外観を模式的に説明する説明図である。
図2】実施例1の組電池装置の外観を模式的に説明する説明図である。
図3図2中のX-X位置における実施例1の組電池装置の断面を模式的に説明する説明図である。
図4】実施例1の温度制御装置における制御回路を模式的に説明する説明図である。
図5】実施例1の二次電池装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体例を挙げて本発明の温度制御装置付き二次電池装置、二次電池用温度制御装置、組電池装置および組電池用温度制御装置を説明する。なお、本発明の温度制御装置付き二次電池装置は、構成要素として、本発明の温度制御装置に加えて単電池を具備するものである。
【0015】
以下、特に説明のない場合、単電池とは二次電池の単電池を意味するものとする。
また、必要に応じて、本発明の温度制御装置付き二次電池装置を単に本発明の二次電池装置と称する場合がある。また、必要に応じて、本発明の二次電池用温度制御装置を単に本発明の温度調整装置と称する場合がある。さらに、特に説明のない場合、本発明の温度制御装置とは、本発明の温度調整装置と、本発明の二次電池装置における温度調整装置、本発明の組電池用温度制御装置、および、本発明の組電池装置における温度調整装置を総称するものとする。
【0016】
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施形態中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0017】
単電池は、一般に、正極、負極、電解質、端子、セパレータ等の電池構成要素が電池容器内に収容されたものである。単電池の形状は、電池容器の形状により方向付けられる。一般的な電池容器としては、例えば、角筒状や円筒状をなす金属製の缶が挙げられる。またその他の電池容器として、ラミネータフィルムを材料とした袋状のものも挙げられる。
【0018】
組電池は、当該単電池を複数個電気的に接続してホルダに収容したものである。一般的な組電池は、樹脂製または金属製のホルダに収容される。
【0019】
既述したように、特許文献1、2には熱電変換素子の一種であるペルチェ素子を用いて二次電池の温度制御を行う技術が紹介されているが、これらの技術によっても二次電池の電池特性を好適であるように維持することは困難である。
【0020】
本発明の発明者は、二次電池の電池特性を好適であるように維持し得る技術を開発すべく、その理由を鋭意検討した。そして、個々の二次電池すなわち単電池を個別に温度制御することに到達した。
【0021】
つまり、二次電池の電池特性を好適であるように維持するためには、個々の単電池の温度を好適な範囲に維持することが肝要と考えられる。そして、二次電池の温度を好適な範囲に維持するためには、個々の単電池につきその温度変化に対応した温度調整を迅速に行うことが有用と考えられる。
【0022】
本発明の二次電池装置は、一つの単電池に対応する一つの温度制御装置を備える。同様に、本発明の温度制御装置は一つの単電池に対応する。
【0023】
二次電池には使用状態に応じて発熱が生じる場合があることが知られている。当該発熱は組電池に含まれる全ての単電池で同期して生じるのではなく、個々の単電池で独立して生じる現象である。
【0024】
本発明の発明者は、特許文献1、2に紹介されているような従来の技術によっても二次電池の電池特性を好適であるように維持することが困難である理由を、以下のように考えた。
【0025】
すなわち、特許文献1、2に紹介されているような従来の技術においては、組電池の全体を纏めて温度制御している。このような技術によると、組電池に含まれる各々の単電池を同時に均等に温度制御するために、発熱した単電池を十分に冷却できず、また、発熱していない単電池に不要な冷却を行う虞がある。
【0026】
これにより、当該技術によると、個々の単電池の温度変化に迅速に対応することは困難であり、個々の単電池の温度を好適な範囲に維持することもまた困難である。そして、その結果、個々の単電池や組電池の電池特性を好適であるように維持することもまた困難である。
【0027】
本発明の二次電池装置および温度制御装置では、一つの単電池につき一つの温度制御装置で温度制御を行う。換言すると、本発明の二次電池装置および温度制御装置では、個々の単電池を独立して温度制御する。
【0028】
これにより、個々の単電池の温度変化にきめ細かく迅速に対応し、当該単電池に的確な温度調整を行うことが可能になる。同様に、本発明の組電池装置および組電池用温度制御装置では、個々の単電池を独立して温度制御することにより、個々の単電池の温度変化にきめ細かく迅速に対応し、当該単電池に的確な温度調整を行うことが可能になる。
【0029】
また、本発明の温度制御装置は、熱電変換素子を含む熱源要素と、当該熱源要素における熱電変換素子の吸熱および/または発熱を制御する制御要素と、を具備する。そしてこのうち熱源要素として、可撓性を有するものを用いる。
【0030】
上記の熱源要素を、撓んだ状態で電池容器の周壁に沿って配置することにより、熱電変換素子をこれに対応する単電池に近い位置に配置し、かつ、熱電変換素子によって単電池の表面を広い面積で覆うことが可能になる。
このことによっても、本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置によると、個々の単電池を、その温度変化に対応して迅速に温度調整することができる。そしてその結果、当該単電池の温度を好適な範囲に維持することが可能になり、ひいては、個々の単電池や組電池の電池特性を好適であるように維持することが可能になる。
【0031】
さらに、本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置では、熱電変換素子を単電池に電気的に接続する。つまり、本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置では、温度調整の対象である単電池を熱電変換素子の電源として利用する。
これにより、本発明の温度制御装置はコンパクトになり、本発明の温度制御装置を具備する本発明の二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置もまたコンパクトになる。
【0032】
視点を変えると、本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置によると、温度調整の対象である単電池自身の電力を使って、当該単電池に巻き付けた温度制御装置で冷却・加熱を行うため、対象である単電池を確実に温度制御することが可能である。
【0033】
さらに、温度制御装置のうち可撓性を有する熱源要素は、クッション材として機能し得る。このため、本発明の二次電池装置および温度制御装置によると、単電池に作用する衝撃を緩和することができ、単電池が損傷することを防止または抑制して、単電池や組電池の電池特性を好適であるように維持することが可能になる。
【0034】
以下、本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置をその構成要素毎に説明する。
【0035】
以下の単電池に関する説明は、二次電池装置に含まれる単電池、組電池装置に含まれる単電池、温度制御装置が接続される単電池、および、組電池用温度制御装置が接続される単電池の説明を兼ねるものとする。同様に、以下の温度制御装置に関する説明は、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置に含まれる温度制御装置の説明を兼ねるものとする。
【0036】
本発明の二次電池装置は、単電池と、本発明の温度制御装置とを具備する。
【0037】
単電池は、二次電池すなわち繰り返し充放電可能な電池であれば良く、正極、負極、電解質等の組成は特に限定しない。
【0038】
当該単電池は、例えば、有機溶媒を含む液状の電解液を有するものであっても良いし、有機溶媒を含まない固体電解質を有する所謂全固体電池であっても良い。本発明の温度制御装置は温度上昇し易い単電池の温度制御装置として特に好適であり、本発明の二次電池装置は温度上昇し易い単電池を具備する二次電池装置として特に好適である。
【0039】
電荷担体としてリチウムを含むリチウム二次電池やリチウムイオン二次電池は、温度上昇し易い二次電池として知られている。本発明の二次電池装置および温度制御装置は、単電池がリチウム二次電池またはリチウムイオン二次電池である場合に特に有用といい得る。
【0040】
熱源要素は、可撓性を有し、熱電変換素子を含む。熱電変換素子は熱と電力とを変換可能なものであり、熱電素子とも称される。熱源要素に含まれる熱電変換素子は、電力を消費して吸熱可能なものであっても良いし発熱可能なものであっても良いが、ペルチェ素子のように吸熱可能かつ発熱可能であるものが特に好適である。この種の熱電変換素子によると、必要に応じて単電池を適宜適切に冷却しまたは加熱することができ、これにより、単電池の温度を好適な範囲に維持することができる。
【0041】
熱電変換素子がカバーし得る温度範囲については特に限定しないが、二次電池が動作する温度範囲を考慮すると、15~25℃の範囲を含むのが好ましく、0~35℃の範囲を含むのがより好ましい。
【0042】
既述したように、熱源要素は、可撓性を有し、撓んだ状態で前記電池容器の周壁に沿って配置されている。このような熱源要素として、シート状のペルチェ素子装置を用いるのが好適である。本明細書では、当該ペルチェ素子装置をペルチェ素子シートと称する。
ペルチェ素子シートは、可撓性を有する基体(熱源基体)に比較的薄型のペルチェ素子を一体化したものであり、当該熱源基体に起因する可撓性を発揮する。
【0043】
ペルチェ素子と熱源基体とは如何なる方法で一体化しても良く、例えば、接着や塗布、印刷等の方法を用いて一体化しても良いし、両者の少なくとも一部が化学結合することにより一体化しても良い。
【0044】
熱源基体は、可撓性を有するものであれば良く、エラストマ製であるのがより好適である。熱源基体の材料は特に限定しないが、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ウレタンゴム、フッ素ゴム等を例示することができる。
【0045】
ペルチェ素子シートに含まれるペルチェ素子の厚みは、2mm以下、1mm以下、0.7mm以下または0.5mm以下であるのが好適である。一つのペルチェ素子シートには一つのみのペルチェ素子が含まれても良いし、複数のペルチェ素子が含まれても良い。
ペルチェ素子シートは、熱源基体およびペルチェ素子以外の構成要素を有し得る。当該構成要素の一例として、リード線、放熱体、熱拡散体を挙げることができる。
【0046】
このようなペルチェ素子シートとして、以下の文献に公開されているものを好ましく使用することができるが、これに限定されるものではない。
・特開2009-302168号公報、
・特開2014-144664号公報、
・特開2017-216352号公報、
・国際公開第2019-092876号。
【0047】
熱源要素は、撓んだ状態で電池容器の周壁に沿って配置される。このような熱源要素は軟質であるのが特に好適である。熱源要素の硬さは、例えば、電池容器の曲率半径に応じて適宜適切なものを選択すれば良いが、例えば、熱源要素のデュロメータ硬さ A硬さは、30~70の範囲内であるのが好適である。当該デュロメータ硬さはJIS K 7215に準拠する方法で測定すれば良い。
【0048】
熱源要素は電池容器の近傍にあるのが好適であり、熱源要素の少なくとも一部が電池容器に接触しているのがより好適である。熱源要素は電池容器の外部に配置されるのが好適であるが、例えば単電池が全固体電池である場合等には電池容器の内部に配置されても良い。何れの場合にも、熱源要素と電池構成要素とが短絡しないよう、両者を絶縁するのが良い。
【0049】
熱源要素は、電池容器の周壁に沿って配置される。換言すると、熱源要素は、電池容器の周壁に対面する。電池容器の周壁のうち熱源要素と対面する部分が占める割合は多い程良い。例えば、電池容器の周壁全体の面積を100面積%としたときに、熱源要素と対面する部分は20面積%以上、50面積%以上または70面積%以上であるのが好適である。
【0050】
制御要素は、単電池と熱源要素との間に電気的に介在し、単電池の温度に応じて熱電変換素子の吸熱および/または発熱を制御する。
【0051】
このような制御要素は、単電池の温度を測定する機能を有しても良い。または、制御要素とは別の温度センサから単電池の温度情報を収集しても良い。
本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置を簡素化するためには、制御要素自体が温度検知部すなわち単電池の温度を測定する部分を有するのが好適である。
【0052】
制御要素に含まれる回路を、制御回路と称する。制御回路は、単電池と熱電変換素子とに電気的に接続され、熱電変換素子への給電を行うための電源回路ともいい得る。
【0053】
制御要素自体が温度検知部を有する場合、当該温度検知部は制御回路に設けられるのが好適である。この種の温度検知部としてサーミスタを例示できる。
【0054】
その他、熱電変換素子がペルチェ素子であれば、制御回路はさらに当該ペルチェ素子に給電する電源の極性を切り替えてペルチェ素子の吸熱/発熱を切り替えるための極性切替スイッチを有するのが好適である。
【0055】
なお、制御要素自体が温度検知部を有する場合、制御要素は単電池の近くに配置されるのが好適であり、制御要素のうち温度検知部の少なくとも一部が単電池に接触するのがより好適である。
【0056】
制御要素と熱源要素とは重ねられても良いし重ねられず離隔していても良いが、制御要素が温度検知部を有する場合には、制御要素のうち少なくとも温度検知部は熱源要素と重ねられず離隔しているのが特に好適である。熱源要素に因る温度検知部への熱的な影響を避けるためである。
【0057】
制御要素と単電池との位置関係は特に限定しないが、本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置をコンパクトにするためには、制御要素は、単電池の電極端子近くに配置されるのが好適である。さらには、当該制御要素は、単電池の周壁、単電池の電極端子、または、二次電池装置や組電池装置の端子付近構造(具体的にはリード線やバスバー等)に沿って配置されるのがより好適である。
【0058】
これらを勘案すると、制御要素もまた可撓性を有するのが好適である。
可撓性を有する制御要素として、具体的には、フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible printed circuits)を例示することが可能である。
【0059】
具体的には、FPCは、樹脂製の基体(制御基体と称する)に導電性の制御回路が一体化されたものであり、当該制御回路は接着、印刷等の方法により制御基体に一体化されるのが一般的である。
制御基体の材料は絶縁材料であれば良く特に限定しないが、例えばポリイミド等の樹脂材料を好適に用い得る。
【0060】
可撓性を有する制御要素は曲げ変形し易いのが特に好適である。制御要素は、上記した電極端子や端子付近構造の形状に応じて適宜適切曲げ変形可能であるよう設計すれば良いが、例えば、制御要素はその最小曲げ半径が5~20mmの範囲内であるのが好ましい。
【0061】
本明細書において、制御要素の最小曲げ半径とは、通電状態を維持しつつ曲げることのできる制御要素の半径の最小値を意味する。最小曲げ半径が小さい程、制御要素はより曲げ変形自在であるといい得る。
【0062】
本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置は、例えば、本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置は、車両走行用バッテリとして用いることもできる。または、住宅や各種の設備等に設置し電力を備蓄するための蓄電池として用いることもできる。その他、ノートパソコンやタブレットに代表される各種モバイル機器用のバッテリとして用いても良い。本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置は、その他、二次電池を用いる種々の装置として具現化し得る。
【0063】
以下、具体例を挙げて本発明の温度制御装置、二次電池装置、組電池用温度制御装置および組電池装置を説明する。
【0064】
(実施例1)
実施例1の組電池装置は、実施例1の温度制御装置、実施例1の二次電池装置および実施例1の組電池用温度制御装置を各々複数含むものである。また、実施例1の組電池用温度制御装置および実施例1の組電池装置は、単電池として車載用のリチウムイオン二次電池を具備するものである。
【0065】
図1は実施例1の二次電池装置の外観を模式的に説明する説明図である。図2は実施例1の組電池装置の外観を模式的に説明する説明図である。図3図2中のX-X位置における実施例1の組電池装置の断面を模式的に説明する説明図である。図4は実施例1の温度制御装置における制御回路を模式的に説明する説明図である。図5は実施例1の二次電池装置の動作を説明する説明図である。
【0066】
実施例1の二次電池装置1は、図1に示すように単電池8と温度制御装置2とを具備する。
このうち単電池8は円柱状のリチウムイオン二次電池であり、金属性の電池容器80と、当該電池容器80内に収容されている図略の電池構成要素とを具備する。なお参考までに、当該電池構成要素は、具体的には正極、負極、セパレータ、電解液、電極端子およびリード線を含む。
【0067】
温度制御装置2は、熱源要素20および制御要素30を具備する。
実施例1の二次電池装置1においては、熱源要素20としてペルチェ素子シートを用いている。当該ペルチェ素子シートは、シリコーンゴム製の熱源基体21と、厚み0.5mm程度のペルチェ素子22とが化学的結合により一体化されたものである。
当該ペルチェ素子シートは、熱電変換素子として複数のペルチェ素子22を含み、そのデュロメータ硬さ A硬さは、50程度である。
【0068】
熱源要素20は、撓んだ状態で電池容器80の周壁81の外表面に対面し当該外表面に沿って配置されている。換言すると、熱源要素20は電池容器80の周壁81に外側から巻き付けられ、当該周壁81と熱源要素20とは接触している。
実施例1の二次電池装置1では、電池容器80の周壁81全体の面積を100面積%としたときに、当該周壁81のうち熱源要素20と対面する部分は70面積%程度である。
【0069】
制御要素30は、単電池8と熱源要素20との間に電気的に介在し、単電池8と熱源要素20とを電気的に接続し、単電池8の温度に応じてペルチェ素子22を吸熱または発熱させる。
【0070】
実施例の二次電池装置1における制御要素30は、単電池8の温度を測定する温度検知部31を有する。温度検知部31は図4に示される制御回路Cに含まれるサーミスタTHである。
【0071】
制御要素30は、熱源要素20よりも電極端子82側において、熱源要素20に並べられ、撓んだ状態で電池容器80の周壁81の外表面に対面し当該外表面に沿って配置されている。制御要素30もまた周壁81に接触している。
制御要素30と熱源要素20とは重ねられず、制御要素30の温度検知部31と熱源要素20とは離隔している。
【0072】
制御要素30は、ポリイミド樹脂製の制御基体に制御回路Cが一体形成されたフレキシブルプリント配線板(FPC)であり、全体として可撓性を有する。制御要素30の最小曲げ半径は10mmである。制御回路Cについては追って説明する。
【0073】
実施例1の組電池装置10は、図2および図3に示すように、複数の二次電池装置1、ホルダ16、2つのバスバー(上側バスバー部12、下側バスバー部13)、および、2つのセパレータ(上側セパレータ14、下側セパレータ15)を具備する。
【0074】
各単電池8は、軸方向の両端にそれぞれ電極端子82(正極電極端子82a、負極電極端子82b)を持つ。ホルダ16は略板状をなし、単電池8と同数の電池保持部160を持つ。各電池保持部160は貫通孔状をなし、各電池保持部160の内径は各単電池8の外径よりもやや大きく、当該単電池8および温度制御装置2を含む二次電池装置1の外径と同程度である。
【0075】
各電池保持部160にはそれぞれ対応する二次電池装置1が挿入される。実施例1の組電池装置10において、各二次電池装置1は、4個一組として上側バスバー部12および下側バスバー部13によって電気的に接続される。具体的には、上側バスバー部12は単電池8の一方の電極端子82に接続され、下側バスバー部13は同じ単電池8の他方の電極端子82に接続される。
【0076】
上側セパレータ14は、軸方向において、上側バスバー部12と単電池8との間に部分的に介在している。下側セパレータ15は、軸方向において、下側バスバー部13と単電池8との間に部分的に介在している。上側セパレータ14および下側セパレータ15は絶縁樹脂製である。
【0077】
以下、図4に示す制御回路Cを基に実施例1の二次電池装置1の動作を説明する。
【0078】
図4に示すように、実施例1の二次電池装置1は、単電池8と、当該単電池8に接続された制御回路Cと、当該制御回路Cに接続されたペルチェ素子22とを有する。
【0079】
なお、制御回路Cは制御要素30に含まれ、ペルチェ素子22は熱源要素20に含まれる。そして当該制御要素30および熱源要素20は実施例1の温度制御装置2に含まれる。
【0080】
制御回路Cは、温度検知部31としてのサーミスタTHに加えて、演算増幅器X1、演算増幅器X2、極性切替スイッチQ1~Q4、および抵抗R1~R5を有する。
【0081】
サーミスタTHは単電池8の近傍に配置されている。
単電池8の温度に応じてサーミスタTHの電気抵抗が変化し、これに応じて演算増幅器X1、X2の出力が変化して、極性切替スイッチQ1およびQ4が選択されるか、または、極性切替スイッチQ2およびQ3が選択され、これに応じてペルチェ素子22への電源の極性が切り替わる。
【0082】
具体的には、単電池8の温度が低い場合にはサーミスタTHの電気抵抗が小さくなり、サーミスタTHと抵抗R1との間の電位が下がる。当該電位が演算増幅器X2の設定閾値未満になると、当該演算増幅器X2の出力がハイとなり、極性切替スイッチQ2およびQ3がオンする。これによりペルチェ素子22に図4の下側から上側へ向かう電流が流れて、当該ペルチェ素子22が発熱し、単電池8が温められる。
【0083】
また、単電池8の温度が高い場合にはサーミスタTHの電気抵抗が大きくなり、サーミスタTHと抵抗R1との間の電位が上がる。当該電位が演算増幅器X1の設定閾値以上になると当該演算増幅器X1の出力がハイとなり、極性切替スイッチQ1およびQ4がオンする。これによりペルチェ素子22に図4の上側から下側へ向かう電流が流れて、当該ペルチェ素子22が吸熱し、単電池8が冷却される。
【0084】
二次電池は所定の動作温度範囲内において、良好に動作し得る。
例えば冬期の屋外等において車両が駐車されている場合等には、単電池8が冷却されて、図5中の上側のグラフに示すように当該単電池8の温度が動作温度範囲を下回る場合がある。
【0085】
実施例1の二次電池装置1は、単電池8に加えて制御要素30および熱源要素20を含む温度制御装置2を具備するために、この場合、ペルチェ素子22が発熱して単電池8が温められる。より詳しくは、サーミスタTHで検知した単電池8の温度が所定の第1温度に満たない場合に、演算増幅器X2が作動してスイッチQ2、Q3がオンすることにより、ペルチェ素子22が発熱し単電池8が加熱される。
【0086】
サーミスタTHで検知した単電池8の温度が上記の第1温度以上である場合には、演算増幅器X2は作動しない。
当該単電池8の温度が、上記の第1温度以上であり、かつ、所定の第2温度以下である場合には、演算増幅器X1もまた作動しない。
【0087】
また、単電池8の充電や、車両の走行に因る当該単電池8の放電等に伴って、単電池8が発熱する場合がある。
【0088】
実施例1の二次電池装置1は、単電池8に加えて制御要素30および熱源要素20を含む温度制御装置2を具備するために、この場合、ペルチェ素子22が吸熱して単電池8が冷却される。
より詳しくは、サーミスタTHで検知した単電池8の温度が所定の第2温度を超える場合に、演算増幅器X1が作動してスイッチQ1、Q4がオンすることによりペルチェ素子22が吸熱し単電池8が冷却される。
【0089】
以上説明したように実施例1の二次電池装置1では、実施例1の温度制御装置2によって、単電池8すなわち二次電池の温度を好適な範囲に維持し、ひいては当該二次電池の電池特性を好適であるように維持することが可能である。
【0090】
以上本発明を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、当該実施形態等に記載した要素を適宜抽出し組み合わせて実施することや、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
また、本発明の明細書は、出願当初における各請求項の引用関係に止まらず各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0091】
1:二次電池装置
2:温度制御装置
8:単電池
10:組電池装置
20:熱源要素
21:熱源基体
22:ペルチェ素子(熱電変換素子)
30:制御要素
80:電池容器
81:電池容器の周壁
TH:サーミスタ
C:制御回路
図1
図2
図3
図4
図5