(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006023
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】乾燥麺塊の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20250109BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106552
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000244109
【氏名又は名称】明星食品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】栗田 辰乃佑
(72)【発明者】
【氏名】有見 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仰喜
(72)【発明者】
【氏名】芦田 研
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓広
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LB06
4B046LC12
4B046LE06
4B046LP14
4B046LP35
(57)【要約】
【課題】
熱風乾燥による乾燥麺塊の製造において、より湯戻り性を向上させる新たな方法を提供する。
【解決手段】
熱風乾燥による乾燥麺塊の製造において、乾燥工程において加湿乾燥を実施することによって熱風乾燥後の麺塊の湯戻り性を向上させることができる。特に、当該乾燥麺塊については、内層及び外層を有する多層麺に対して、その湯戻り性の向上において優れた効果を発揮する。さらに、当該加湿乾燥の前乾燥として高温高速熱風乾燥又は過熱蒸気乾燥の工程を付加してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層及び外層を有する多層麺においてα化後の麺線群を加湿乾燥することを特徴とする乾燥麺塊の製造方法。
【請求項2】
前記加湿乾燥の前にさらに乾燥処理を実施する請求項1に記載の乾燥麺塊の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥処理が高温高速熱風乾燥又は過熱蒸気による乾燥である請求項2に記載の乾燥麺塊の製造方法
【請求項4】
内層及び外層を有する多層麺においてα化後の麺線群を加湿乾燥することを特徴とする麺線群の乾燥方法。
【請求項5】
内層及び外層を有する多層麺においてα化後の麺線群を加湿乾燥することを特徴とする乾燥麺塊の湯戻り向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内層及び外層を有する多層麺についてα化後の麺線群を枠体に収納して熱風乾燥して製造する乾燥麺塊の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
即席麺に利用される熱風乾燥タイプ(ノンフライタイプ)の乾燥麺塊の製造においては、まず、小麦粉等の粉体と練水を混練しドウを形成させ、当該ドウを圧延→切出しして生麺線を調製する。次に、当該麺線群を蒸煮した後、多孔性の枠体(リテーナとも称される)に蒸煮後の麺線を収納して、一般的には40℃~160℃程度の熱風(熱風、過熱蒸気等)により10~180分程度かけて、麺線の水分を5~13%程度に乾燥して麺塊を完成させる。
【0003】
一方、この熱風乾燥麺塊の製造においては乾燥時間がある程度の時間が必要であることも多く、また、カップ麺等に利用する場合、当該熱風乾燥麺塊にお湯を注加した場合においてその湯戻り性が油熱処理したフライ麺よりも劣っているため、湯戻り性をより向上させることが望まれていた。
例えば、以下の先行特許文献1においては、過熱蒸気を利用しつつ、湯戻り性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
一方、上述の方法以外にも他の方法の検討する余地があり得るところである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは熱風乾燥による乾燥麺塊の製造において、より湯戻り性を向上させる新たな方法を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの鋭意研究の結果、熱風乾燥による乾燥麺塊の製造において、加湿乾燥を施することによって熱風乾燥後の麺塊の湯戻り性が向上することを見出すとともに、当該乾燥麺塊については、内層及び外層を有する多層麺を利用して製造した乾燥麺塊についてその湯戻り性において優れた効果を発揮することを見出して、本願発明を完成させたものである。
すなわち、本願第一の発明は、
“内層及び外層を有する多層麺においてα化後の麺線群を加湿乾燥することを特徴とする乾燥麺塊の製造方法。”、である。
【0008】
次に、前記の加湿乾燥の前においてさらに、前乾燥として乾燥処理を実施することが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記加湿乾燥の前にさらに乾燥処理を実施する請求項1に記載の乾燥麺塊の製造方法。”、である。
【0009】
次に、前記の乾燥処理については、高温高速による熱風乾燥又は過熱蒸気による乾燥であることが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
“前記乾燥処理が高温高速熱風乾燥又は過熱蒸気による乾燥である請求項2に記載の乾燥麺塊の製造方法。”、である。
【0010】
次に、本願出願人は、多層麺においてα化後の麺線群を加湿乾燥することによる麺線群の乾燥方法についても意図している。
すなわち、本願第四の発明は。
“内層及び外層を有する多層麺においてα化後の麺線群を加湿乾燥することを特徴とする麺線群の乾燥方法。”、である。
【0011】
次に、本願出願人は、多層麺について加湿乾燥することによって麺線群の湯戻りを向上させる方法についても意図している。
すなわち、本願第五の発明は、
“内層及び外層を有する多層麺においてα化後の麺線群を加湿乾燥することを特徴とする乾燥麺塊の湯戻り向上方法。”、である
【発明の効果】
【0012】
本発明を利用することによって、多層麺を利用した乾燥麺塊についてその湯戻り性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明における原料の混錬から麺塊の完成までの流れの具体例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施態様について説明する。但し、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0015】
─乾燥麺塊─
即席麺に利用される熱風乾燥タイプ(ノンフライタイプ)の乾燥麺塊の製造においては、まず、小麦粉等の粉体と練水を混練しドウを形成させ、当該ドウを圧延→切出しして生麺線を調製する。次に、当該麺線群を蒸煮した後、多孔性の枠体(リテーナとも称される)にα化後の麺線を収納して、一般的には40℃~160℃程度の熱風(熱風、過熱蒸気等)により10~180分程度かけて、麺線の水分を5~13%程度に乾燥して麺塊を完成させる。
本願においては、このような熱風乾燥による乾燥麺塊の製造において利用できる発明である。
【0016】
─多層麺─
本願においては特に多層麺から製造される熱風乾燥麺塊を対象とする。本発明にいう多層麺とは、内層と外層を有することによって多層となった状態の麺線をいう。
【0017】
─内層及び外層を有する多層麺─
本発明による多層麺の製造方法については特に限定されるものではないが、通常であると、内層用の麺生地と、外層用の麺生地を重ね合わせて、圧延して多層麺の生地を調製する。
例えば、内層用の麺生地と外装用の麺生地をロール間に挿入して圧力を加えながら内層と外層を密着させて一体となった麺帯とすることができる。そして、当該麺帯を必要に応じて複数の圧延機を通過させて、必要な厚みの麺帯とすることができる。
【0018】
また、内層と外層のそれぞれの麺帯を必要な厚みに調整してから重ねた後、さらに圧延して製造することも可能である。
次に、本発明においては、上下の外層の間に内層を挟んだ三層とするのが一般的であるが、これに限定されず、複数の内層を含んだタイプとしてもよい。すなわち、三層以上の四層や五層の麺であっても差し支えないことは勿論である。
【0019】
─内層の配合─
本発明のおいては、内層の配合において通常の製麺原料である小麦粉、澱粉、グルテン、難消化性澱粉と増粘剤等を利用することできる。より具体的には、内層の製麺原料としては、小麦粉、澱粉、グルテン、卵白、卵粉、色素、カルシウム、油脂、各種フレーバ等の通常の麺原料が挙げられる。
【0020】
尚、小麦粉、グルテン、増粘剤及び難消化性澱粉以外の麺原料となる各種成分を含んでいてもよいことは勿論である。
次に、麺の調製のための練り水としては、水にかん水や食塩等の種々の原料を添加することができる。かん水については、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、各種ピロリン酸塩、各種ポリリン酸塩、各種メタリン酸塩、各種リン酸塩等を広く利用することができる。また、練り水に対しては、色素、エキス、各種食品添加物を添加して利用してもよいことは勿論である。
本発明における内層については、原料粉と練り水を混合して混練することによってドウを形成させる。
【0021】
─内層のドウの調製及び押出し成形─
内層のドウの調製においては、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサー等で麺の原料と練水が混練されるようにして、一つないし数個の生地塊とする。また、機械製麺の場合、そぼろ状を呈する場合が多い。
次に、これらのそぼろ状の生地を一つにまとめる必要があるが、ここでの作業を押出しという。すなわち、通常、これらのそぼろ状の生地をまとめて成形して帯状の麺生地とするが、
【0022】
本発明においては、常圧下においてロール間に押し込み帯状の麺生地とすることが可能である。また、エクストルーダー等の押し出し機を利用してもよい。
さらに、本発明では押出し成形の工程を真空押出法により麺帯に成形することも可能である。ここで、真空押出法とは、真空(減圧)下において、麺帯に押出しする方法をいい、真空(減圧)下で麺帯に成形することができる手段であれば種々の方法を利用することができる。
【0023】
─外層の配合─
本発明のおいては、外層の配合において通常の麺原料である小麦粉、澱粉、グルテン等を利用することできる。より具体的には、内層の製麺原料としては、小麦粉、澱粉、グルテン、卵白、卵粉、色素、カルシウム、油脂、各種フレーバ等が挙げられる。
【0024】
尚、上述のように本発明においては、小麦粉、グルテン、増粘剤及び難消化性澱粉以外の麺原料となる各種成分を含んでいてもよいことは勿論である。
次に、麺の調製のための練り水としては、水にかん水や食塩等の種々の原料を添加することができる。さらに、当該外層については、原料粉と練り水を混合して混練することによってドウを形成させる。
【0025】
─外層のドウの調製及び押出し─
内層のドウの調製においては、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサー等で麺の原料と練水が混練されるようにして、一つないし数個の生地塊とする。尚、外層の混練においては真空ミキサーを利用することが好ましい。また、機械製麺の場合、そぼろ状を呈する場合が多い。尚、本発明においては当該混練時について減圧状態で実施することが好ましい。
【0026】
次に、これらのそぼろ状の生地を一つにまとめる必要があるが、ここでの作業を先に記載したように押出し成形工程により行う。
すなわち、通常、そぼろ状の生地をまとめて帯状の生地とする。外層については常圧下で行ってもよい。常圧下においてロール間に押し込み帯状の麺生地とすることが可能である。また、エクストルーダー等の押し出し機を利用してもよい。さらに、減圧下で麺生地を押し出すことも可能である。外層について押出し方法は種々の方法を利用できる。
このようにして、押出し工程を経ることによって、外層の麺生地を麺帯に成形することができる。当該外層の麺生地によって前述した内層の麺生地を挟んでさらに圧延することよって多層構造を有する麺帯を調製することが可能となる。
【0027】
─麺線の調製─
本発明による多層麺の製造方法においては、内層用の麺生地と、外層用の麺生地を重ね合わせて、圧延して多層麺の生地を調整する。より具体的には、押出後の内層を押出後の外層で挟んで当該重ねた麺生地をロール間に挿入等して圧力を加えながら内層と外層を密着させて一体となった麺帯を調製することができる。
【0028】
また、押出後の内層及び/又は外層のそれぞれについて必要に応じてロール間等に挿入して圧延した後において、当該内層や外層を重ね合わせる方法でも良いことは勿論である。
次に、内層と外層の各層の厚みの割合については特に限定されず、食感や製麺性に応じて適宜変更することができる。具体的には、各層の厚みの比は、例えば三層であれば、外層:内層:外層の比が概ね2:1:2(1:0.5:1)~1:5:1程度の幅広い範囲とすることが可能である。但し、好ましくは外層:内層:外層の比が1:1:1~1:3:1程度である。
【0029】
通常、圧延の工程は、得られる麺帯を複数の圧延ロール間を通過させることにより徐々に厚みを薄くする。そして、得られた薄くされた麺帯を切刃ロールによって切り出すことによって麺線群に調製する。
そして、得られた麺線群はカット後、蒸煮や茹で処理によってα化した後、熱風乾燥によって水分を減少させることによって乾燥麺塊とすることができる。そして、当該乾燥麺塊を即席カップ麺における麺塊として利用することができる。
【0030】
─麺線群のα化─
上記の得られた多層麺について、次にこれを蒸煮(蒸すこと)又は茹でることによってα化を行う。ここでα化とは澱粉の糊化ともいい、小麦粉等の澱粉は原料粉の段階では、消化しにくいところ、水を加えて加熱することで膨潤化して、糊状のα化澱粉となり、消化酵素の作用を受けやすくなることをいう。本α化の工程は麺線群を蒸煮したり、茹でることによって行うことができる。
【0031】
─前段階の乾燥─
本発明においては、後述する加湿乾燥の前において、通常の熱風乾燥、高温高速の熱風による乾燥(高温高速熱風乾燥)又は過熱蒸気による乾燥(過熱蒸気乾燥)の工程を実施することも好ましい。
具体的には、例えば、通常の熱風乾燥であると、概ね、温度70℃~130℃程度の温度範囲で所定時間の乾燥を行うことができる。
【0032】
また、高温高速の熱風による乾燥(高温高速熱風乾燥)や過熱蒸気による乾燥(過熱蒸気乾燥)を利用することもできる。 これらの乾燥方法であると、乾燥時間を短縮することができるとともに、麺線中の気泡の数や大きさをコントロールすることができるため、多様な麺線の食感を提供することができる。
【0033】
その一方、麺の表面側が過乾燥になりやすい場合もあり、麺の湯戻り性は下がる場合があった。このため、前段階の乾燥として高温高速熱風乾燥や過熱蒸気乾燥を利用し、その後、加湿乾燥を実施することで、乾燥時間が比較的短く湯戻り性が良い熱風乾燥麺塊の製造となることを本発明者らは見出したものである。そして、特に多層麺においてこの効果が高いことを見出して、本発明を完成するに至ったのである。
【0034】
ここで、条件としては、高温高速熱風乾燥であると、105℃~150℃で風速は好ましくは、60m/s以上、さらに好ましくは70m/s程度とするのが好ましい。また、時間は概ね4~15分程度である。
次に、過熱蒸気乾燥の場合においては、麺線が触れる過熱蒸気の温度が125~330℃程度、好ましくは150~240℃程度となるように過熱蒸気を吹き付けるのが好ましい。
また、上記の前段階の乾燥の前にさらに、別途、予備乾燥工程を設けてもよい。
【0035】
─加湿乾燥─
本発明においては、麺線群を加湿乾燥することを特徴とする。本加湿乾燥を実施することによって多層麺を熱風乾燥した場合の湯戻り性を向上することが可能となる。尚、本発明における加湿乾燥とは、乾燥機庫内の湿度を高めた状態で熱風乾燥を実施することをいう。
ここで、加湿乾燥の条件としては、まず、温度については50℃~100℃の範囲内とすることが好ましい。ここで温度が高温過ぎると適切な湿度条件を保つことができなくなるためである。
【0036】
次に、本願における加湿乾燥における湿度は20~80%をいうものとする。湿度が20%未満では、本願の湯戻り向上効果を得ることが困難になる。また、80%を超えると高温を維持しにくい等の問題がある。
次に、乾燥時間は20~60分が好ましい。次に、乾燥風速は0.5~15.0m/sで実施することが好ましい。
また、加湿乾燥後の麺塊の水分として3.0~15.0重量%程度に調整することが好ましい。
【0037】
─加湿乾燥と各種乾燥の組み合わせ─
本願においては、加湿乾燥と各種乾燥(通常の熱風乾燥、高速高温熱風乾燥、過熱蒸気乾燥)を交互に実施したり、これを繰り返して実施してもよい。例えば、各種乾燥(通常の熱風乾燥、高速高温熱風乾燥、過熱蒸気乾燥)の後に加湿乾燥を実施し、さらに各種乾燥(通常の熱風乾燥、高速高温熱風乾燥、過熱蒸気乾燥)を実施する方法等が挙げられる。
【0038】
本発明における原料の混錬から麺塊の完成までの流れの具体例として、
図1(1)~(6)に示すような処理工程が例示として挙げられる。但し、これらの処理工程に限定されるものではなく、加湿乾燥との種々の組み合わせの工程が可能であることは勿論である。
【実施例0039】
以下に本願発明の実施例を説明する。但し、本願発明は当該実施例に限定されるものではない。
【0040】
[試験例1](単層麺と多層麺の比較)
─試験区1(単層麺 通常乾燥)─
小麦粉820g、澱粉180gに対して練水391.8g(かんすい1.8g、塩30g、水360g添加して溶解したもの)を添加し、20分間の混錬をした後、ドウを形成させて、これを複合処理(2枚の麺帯を重ね一枚の麺帯とすること)した後、圧延処理して1.40mmの麺帯を形成した。さらに、当該麺帯を切刃11番によって麺線を切り出した。
切出し後の生麺線を99℃で2分間蒸煮した。当該α化後の麺線30cm程度にカットして、α化後(糊化後)の麺線群を得た。
【0041】
当該麺線群110gを底部に多数の孔を設け通孔性を有する上部開口の金属製カップ状枠体に収納し、上部に網状の蓋を被せた。
当該枠体に麺線群を収納した状態で124℃~128℃で8分間の前乾燥を実施した後、通常乾燥として95℃、湿度10%で40分の乾燥処理を実施し、乾燥麺塊を完成させた。
次に、当該得られえた乾燥麺塊の官能評価は、以下のように熟練の麺技術者7名によって以下のように実施した。
【0042】
まず、調理方法は、カップに麺塊70g+粉末スープ20gを入れ、沸騰させたお湯を380ml注ぎ、5分経過後に、液体オイルを3.5g添加して麺をほぐして試食評価をした。
次に評価方法は、麺の評価に長けたパネラー7人に試験区1を3点の評価として他の試験区を5段階評価で実施し、その7人の平均値として行った。概ね4.00以上を良好とした。
5点:試験区1よりも麺表面の湯入りが良く、表面に硬さを全く感じない。
4点:試験区1よりも麺表面の湯入りが良く、表面に硬さを感じない。
3点:試験区1と同程度の湯入りであり、表面に硬さを感じる場合がある。
2点:試験区1よりも麺表面の湯入りがやや悪く、表面に硬さを感じる。
1点:試験区1よりも麺表面の湯入りが悪く、表面の硬さを強く感じる。
結果を表1に示す。
【0043】
─試験区2(多層麺 通常乾燥)─
内層として、小麦粉760g、澱粉240gに対して練水391.8g(かんすい1.8g、塩30g、水360g添加して溶解したもの)を添加し、20分間の混錬をした後、ドウを形成させて、ロール間に押し込み、押し出して帯状の内層麺帯を形成した。
次に、外層として、小麦粉880g、澱粉120gに対して練水391.8g(かんすい1.8g、塩30g、水360g添加して溶解したもの)を添加し、20分間 混錬した後、ドウを形成させて、ロール間に押し込み、押し出して帯状の外層麺帯を形成した。
【0044】
前述の得られた内層麺帯と外層麺帯について、麺帯厚が外層:内層:外層=1:2:1、となるように内層麺帯と外層麺帯(2枚)とを三枚重ねて圧延を繰り返し、麺厚を1.40mmとした。当該圧延後の麺帯を11番の切刃で切出し、多層麺の麺線群を得た。
切出し後の生麺線を99℃で2分間蒸煮した。当該α化後の麺線を30cm程度にカットして、α化後(糊化後)の麺線群を得た。
【0045】
当該麺線群110gを底部に多数の孔を設け通孔性を有する上部開口の金属製カップ状枠体に収納し、上部に網状の蓋を被せた。
当該枠体に麺線群を収納した状態で124℃~128℃で8分間の前乾燥を実施した後、通常乾燥として95℃、湿度10%で40分の乾燥処理を実施した。また、官能評価は試験区1と同様に実施した。官能評価の結果を表1に示す。
【0046】
─試験区3(単層麺 加湿乾燥)─
試験例1と同様に処理した麺線群について、前乾燥後の加湿乾燥として95℃、湿度30%で40分の乾燥処理を実施した以外は試験例1と同様に処理した。官能評価の結果を表1に示す。
【0047】
─試験区4(多層麺 加湿乾燥)─
試験例2と同様に処理した麺線群について、前乾燥後の加湿乾燥として95℃、湿度30%で40分の乾燥処理を実施した以外は試験例2と同様に処理した。官能評価の結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
─結果─
加湿乾燥の効果については、通常乾燥である10%と比較して、加湿乾燥した30%では湯戻り向上の効果が大きいことが分かった。また、単層麺よりも多層麺について加湿乾燥の効果がより見られることがわかった。
【0049】
[試験例2](加湿の条件を変えた場合の比較)
─試験区5(50℃、湿度10%)─
試験区2と同様に多層麺の麺線群を調製し、切出し後の生麺線を99℃で2分間蒸煮した。当該α化後の麺線を30cm程度にカットして、α化後(糊化後)の麺線群を得た。
当該麺線群110gを底部に多数の孔を設け通孔性を有する上部開口の金属製のカップ状枠体に収納し、上部に網状の蓋を被せた。
当該枠体に麺線群を収納した状態で133℃で8分間の前乾燥を実施した後、通常乾燥として50℃、湿度10%で40分の乾燥処理を実施した。
また、官能評価は試験区5の評価を4点として以下のように実施した。
【0050】
評価方法は、麺の評価に長けたパネラー11人に試験区5を4点の評価として他の試験区を5段階評価で実施し、その11人の平均値として行った。概ね4.00以上を良好とした。
5点:試験区5よりも麺表面の湯入りが良く、表面に硬さを全く感じない。
4点:試験区5と同程度の湯入りであり、表面に硬さを感じない。
3点:試験区5よりも麺表面の湯入りがやや悪く、表面に硬さを感じる場合がある。
2点:試験区5よりも麺表面の湯入りが悪く、表面に硬さを感じる。
1点:試験区5よりも麺表面の湯入りがかなり悪く、表面の硬さを強く感じる。
結果を表2に示す。尚、その他の条件は試験区1と同様に実施した。
【0051】
─試験区6(50℃、湿度40%)─
試験区5において、加湿乾燥として湿度40%で実施した点を除いて、試験区5と同様に実施した。官能評価の結果を表2に示す。
【0052】
─試験区7(50℃、湿度80%)─
試験区5において、加湿乾燥として湿度80%で実施した点を除いて、試験区5と同様に実施した。官能評価の結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
─結果─
多層麺の加湿乾燥においては、比較的低温の温度帯であったとしても、湿度条件を整えることで、通常乾燥である10%よりも湯戻りが良くなる効果が得られることが分かった。
【0054】
[試験例3](保存時の麺切れ率の比較)
本発明の加湿乾燥の方法をした場合、乾燥後に得られる麺塊を所定期間保管後、熱湯を注加後の麺線群の麺切れ率について比較試験した。
【0055】
─試験区8(多層麺、湿度30%)─
内層として、小麦粉680g、澱粉320gに対して練水409.2g(かんすい4.8g、塩29.4gに水375g添加して溶解したもの)を添加し、20分間 混錬した後、ドウを形成させて、ロール間に押し込み、押し出して帯状の内層麺帯を形成した。
次に、外層として、小麦粉720g、澱粉280gに対して練水382.6g(かんすい3.2g、塩29.4g、水350gを添加して溶解したもの)を添加し、20分間 混錬した後、ドウを形成させて、ロール間に押し込み、押し出して帯状の外層麺帯を形成した。
【0056】
前述の得られた内層麺帯と外層麺帯について、麺帯厚が外層:内層:外層=1:2:1、となるように内層麺帯と外層麺帯(2枚)とを三枚重ねて圧延を繰り返し、麺厚を1.40mmとした。当該圧延後の麺帯を11番の切刃で切出し、多層麺の麺線群を得た。
切出し後の生麺線を99℃で2分間蒸煮した。当該α化後の麺線を30cm程度にカットして、α化後(糊化後)の麺線群を得た。
当該麺線群110gを底部に多数の孔を設け通孔性を有する上部開口の金属製カップ状枠体に収納し、上部に網状の蓋を被せた。
【0057】
当該枠体に麺線群を収納した状態で110℃~113℃で8分間の前乾燥を実施した後、加湿乾燥として95℃、湿度30%で40分の乾燥処理を実施した。
次に、麺切れ率の評価は以下のように実施した。得られた麺塊70gと粉末スープ20gを縦型カップに収納し、上部にアルミ製の蓋をヒートシールした後、常温で一カ月保管した。
一カ月保管した後の縦型カップの蓋を開封し、お湯を380ml注加した。5分後に箸で麺をほぐして、麺線の長さが5cm以下の麺線群、5cm以上の麺線群に分けてそれらの総重量を測定した。
当該総重量の測定結果から、5cm以下の麺線群の総重量を全体の麺線群の総重量で除したものを麺切れ率(一カ月常温保管後)として計算した。評価結果を表3に示す。
【0058】
─試験区9(多層麺、湿度10%)─
試験区8において、通常乾燥として乾燥時の湿度を10%とした点を除いて試験区8と同様に実施した。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
─結果─
加湿乾燥の湿度が高いと麺切れ率が著しく低下することがわかった。