IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル金門株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人幾徳学園の特許一覧

特開2025-6025漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法
<>
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図1
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図2
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図3
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図4
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図5
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図6
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図7
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図8
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図9
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図10
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図11
  • 特開-漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006025
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/28 20060101AFI20250109BHJP
   F17D 5/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01M3/28 B
F17D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106558
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】村上 英治
(72)【発明者】
【氏名】塩野 直志
【テーマコード(参考)】
2G067
3J071
【Fターム(参考)】
2G067AA14
2G067CC04
2G067DD02
2G067EE08
2G067EE12
2G067EE13
3J071AA02
3J071CC02
3J071CC17
3J071DD14
3J071EE06
3J071EE21
3J071EE24
3J071EE38
3J071FF03
(57)【要約】
【課題】導管網における流体の漏洩位置を推定することができる漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法を提供する。
【解決手段】漏洩位置推定装置(10)は、導管網から流体の供給を受ける複数の需要家に対する流体の供給圧力を示す圧力情報を、複数の需要家毎に取得する圧力情報取得部(16)と、圧力情報取得部によって取得された複数の圧力情報の変化に関する圧力変化情報を取得する圧力変化情報取得部(17)と、圧力変化情報取得部によって取得された圧力変化情報に基づいて、導管網における流体の漏洩位置を推定する推定部(18)と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管網から流体の供給を受ける複数の需要家に対する前記流体の供給圧力を示す圧力情報を、前記複数の需要家毎に取得する圧力情報取得部と、
前記圧力情報取得部によって取得された複数の圧力情報の変化に関する圧力変化情報を取得する圧力変化情報取得部と、
前記圧力変化情報取得部によって取得された圧力変化情報に基づいて、前記導管網における前記流体の漏洩位置を推定する推定部と、を備えた
ことを特徴とする漏洩位置推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記圧力情報取得部によって取得された複数の圧力情報間の差と、前記圧力変化情報取得部によって取得された圧力変化情報と、に基づいて、前記導管網における前記流体の漏洩位置を推定する
ことを特徴とする請求項1記載の漏洩位置推定装置。
【請求項3】
前記圧力情報取得部は、前記複数の需要家のうちいずれかの需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を超えたことを示す圧力情報を取得した場合、前記いずれかの需要家の位置に基づいて選択された他の需要家に対する供給圧力を示す圧力情報を取得する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の漏洩位置推定装置。
【請求項4】
前記圧力情報取得部は、前記複数の需要家のうちいずれかの需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を超えたことを示す圧力情報を取得した場合、前記いずれかの需要家の位置からの距離が予め設定された範囲内である他の需要家に対する供給圧力を示す圧力情報を取得する
ことを特徴とする請求項3記載の漏洩位置推定装置。
【請求項5】
前記圧力情報取得部は、前記複数の需要家のうちいずれかの需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を超えたことを示す圧力情報を取得した場合、前記いずれかの需要家の位置からの前記導管網に沿った経路長が予め設定された範囲内である他の需要家に対する供給圧力を示す圧力情報を取得する
ことを特徴とする請求項3記載の漏洩位置推定装置。
【請求項6】
前記圧力情報取得部は、前記複数の需要家のうちいずれかの需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を超えたことを示す圧力情報を取得した場合、前記いずれかの需要家が位置する住所と少なくとも一部が共通する住所に位置する他の需要家に対する供給圧力を示す圧力情報を取得する
ことを特徴とする請求項3記載の漏洩位置推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記複数の需要家のうちいずれかの需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を連続して超えた時間に基づいて、前記導管網における前記流体の漏洩位置を推定する
ことを特徴とする請求項3記載の漏洩位置推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記複数の需要家のうちいずれかの需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を超えた頻度に基づいて、前記導管網における前記流体の漏洩位置を推定する
ことを特徴とする請求項3記載の漏洩位置推定装置。
【請求項9】
前記圧力情報取得部は、前記他の需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を超えたことを示す圧力情報を取得した場合、更に別の需要家に対する供給圧力を示す圧力情報を取得する
ことを特徴とする請求項3記載の漏洩位置推定装置。
【請求項10】
圧力情報取得部と、圧力変化情報取得部と、推定部と、を備えた装置が行う漏水位置推定方法であって、
前記圧力情報取得部が、導管網から流体の供給を受ける複数の需要家に対する前記流体の供給圧力を示す圧力情報を、前記複数の需要家毎に取得するステップと、
前記圧力変化情報取得部が、前記圧力情報取得部によって取得された複数の圧力情報の変化に関する圧力変化情報を取得するステップと、
前記推定部が、前記圧力変化情報取得部によって取得された圧力変化情報に基づいて、前記導管網における前記流体の漏洩位置を推定するステップと、を備えた
ことを特徴とする漏洩位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設された上水道管に配置されたセンサによって検知された振動信号に基づいて、上水道管の漏水を検知する漏水位置推定システムが開示されている(特許文献1参照)。この漏水位置推定システムは、センサからの振動信号の強度に基づいて、漏水位置の推定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-183936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、需要家のガスの使用量を測定すると共に、需要家に対するガスの供給圧力を測定し、供給圧力を示す情報を外部へ送信可能な通信機能付きのスマートメータが知られている。このようなスマートメータを利用することによって、仮に、特定の需要家の近くの導管でガスの漏洩が発生した場合に、当該特定の需要家のスマートメータからの情報に基づいて、当該特定の需要家に対する供給圧力の変化を検知することが可能である。
【0005】
しかしながら、需要家に対する供給圧力は、導管網での漏洩が発生していない状態であっても、需要家による消費活動に応じて刻々と変化するものであり、また、需要家による消費量や導管網の形状、供給元であるガバナからの距離等によって、需要家毎に供給圧力が異なる。このため、需要家に対する供給圧力を知ることが可能である場合であっても、導管網における漏洩位置の推定精度を向上させることが難しいという課題がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するものであって、従来よりも、導管網における流体の漏洩位置の推定精度を向上させることができる漏洩位置推定装置及び漏洩位置推定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る漏洩位置推定装置は、導管網から流体の供給を受ける複数の需要家に対する流体の供給圧力を示す圧力情報を、複数の需要家毎に取得する圧力情報取得部と、圧力情報取得部によって取得された複数の圧力情報の変化に関する圧力変化情報を取得する圧力変化情報取得部と、圧力変化情報取得部によって取得された圧力変化情報に基づいて、導管網における流体の漏洩位置を推定する推定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、従来よりも、導管における流体の漏洩位置の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る圧力監視システムの概略構成を示すブロック図。
図2】実施の形態1に係る圧力監視装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】実施の形態1に係る圧力監視装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図4】実施の形態1に係る圧力監視装置が行う処理の一例を示すフローチャート。
図5】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、報知情報に対応するガスメータから圧力情報を取得した状態を示す模式図。
図6】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、選択したガスメータへ圧力情報送信命令を出力した状態を示す模式図。
図7】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、特定のガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩の可能性がないと判定される状態を示す模式図。
図8】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、選択したガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩の可能性がないと判定される状態を示す模式図。
図9】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、選択したガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩の可能性があると判定される状態を示す模式図。
図10】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、選択したガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩位置が情報取得範囲外である可能性があると判定される状態を示す模式図。
図11】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、情報取得範囲を拡大した状態を示す模式図。
図12】実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、拡大した情報取得範囲のガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩の可能性があると判定される状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る圧力監視システムの概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態1に係る圧力監視システムは、圧力監視装置10と、圧力監視装置10によって監視される導管網によってガスの供給を受ける複数の需要家のそれぞれが有する複数のガスメータ20と、を備えている。圧力監視装置10と複数のガスメータ20とは、情報の通信が可能になるように電気的に接続されている。例えば、圧力監視装置10と複数のガスメータ20とは、無線通信を介した情報通信網によって接続されている。なお、実施の形態1に係る圧力監視システムは、圧力監視装置10によって監視される導管網の全ての需要家がガスメータ20を有していてもよいし、一部の需要家のみがガスメータ20を有していてもよい。
【0011】
複数のガスメータ20は、それぞれ、対応する需要家の、ガスの消費量を検知するセンサ、及びガスの供給圧力を検知するセンサを有しており、対応する需要家のガスの消費量を示す情報、及び対応する需要家に対するガスの供給圧力を示す情報を取得して、取得した情報を所定の契機に基づいて圧力監視装置10へ送信する、所謂スマートメータである。例えば、ガスメータ20は、圧力監視装置10から命令を受信したことに基づいて、当該命令に応じた情報を圧力監視装置10へ送信する。具体的には、ガスメータ20は、圧力監視装置10から命令を受信したことに基づいて、対応する需要家に対するガスの供給圧力を示す圧力情報を圧力監視装置10へ送信する。
【0012】
また、例えば、ガスメータ20は、センサによって取得された情報に基づいて、ガスの供給圧力が予め設定されている範囲を超えたことを示す情報を取得した場合、圧力監視装置10に、ガスの供給圧力が予め設定されている範囲を超えたことを報知する報知情報を送信する。また、例えば、ガスメータ20は、センサによって取得された情報に基づいて、ガスの供給圧力が予め設定されている範囲を超えたことを示す情報を取得した場合、圧力監視装置10に、対応する需要家に対するガスの供給圧力を示す圧力情報を送信する。
【0013】
圧力監視装置10は、複数のガスメータ20との間で情報の通信を行うことによって、ガスの導管網における漏洩の有無を推定する。また、ガスの導管網における漏洩があったと推定された場合、漏洩位置推定装置としての圧力監視装置10は、複数のガスメータ20との間で情報の通信を行うことによって、ガスの導管網における漏洩位置を推定する。図1に示すように、圧力監視装置10は、閾値設定部11と、報知情報取得部12と、メータ情報取得部13と、取得対象選択部14と、命令出力部15と、圧力情報取得部16と、圧力変化情報取得部17と、推定部18と、圧力監視装置10が各種処理を行う際に用いられる情報及びこれら各種処理の結果に関する情報を記憶する記憶部19と、を備えている。
【0014】
閾値設定部11は、圧力監視装置10が各種処理を行う際の判定に用いられる閾値を設定する。例えば、閾値設定部11は、複数のガスメータ20に対して、供給圧力の標準の範囲の上限値及び下限値を示す閾値を設定する。なお、閾値設定部11は、複数のガスメータ20のそれぞれについて、互いに異なる閾値を設定するように構成されていてもよいし、全てのガスメータ20に同一の閾値を設定するように構成されていてもよい。また、閾値設定部11は、複数の上限値及び複数の下限値を示す閾値を設定するように構成されていてもよい。例えば、設定された閾値は、各ガスメータ20の図示しない記憶部によって記憶される。
【0015】
報知情報取得部12は、複数のガスメータ20から、対応する需要家への供給圧力が、閾値設定部11によって予め設定されている閾値を超えたことを報知する報知情報を取得する。言い換えると、報知情報取得部12は、複数のガスメータ20から、対応する需要家への供給圧力が、閾値設定部11によって予め設定されている供給圧力の範囲を超えたことを報知する報知情報を取得する。
【0016】
メータ情報取得部13は、複数のガスメータ20に関するメータ情報を取得する。例えば、メータ情報は、各ガスメータ20が配置されている位置に関する位置情報、各ガスメータ20に設定されている閾値に関する閾値情報、各ガスメータ20が対応する需要家への供給圧力の変化を示す圧力変化情報等の情報を含む。例えば、各ガスメータ20が配置されている位置に関する情報は、各ガスメータ20が配置されている位置の緯度及び経度を示す情報、各ガスメータ20が配置されている位置の標高を示す情報、各ガスメータ20が配置されている位置の住所を示す情報、各ガスメータ20が配置されている導管網上の位置を示す情報等の情報を含む。例えば、圧力変化情報は、各ガスメータ20が対応する需要家への供給圧力が閾値を超えた時刻及び供給圧力が閾値内になった時刻を示す情報、特定の期間において各ガスメータ20が対応する需要家への供給圧力が閾値を超えた回数を示す情報等の情報を含む。
【0017】
取得対象選択部14は、圧力監視装置10が、複数のガスメータ20から各種情報を取得する際に、ガスメータ20が情報を圧力監視装置10に送信する契機となる情報送信命令の対象になるガスメータ20を、複数のガスメータ20から選択する。例えば、取得対象選択部14は、ガスメータ20から取得した情報に基づいて、情報送信命令の対象になるガスメータ20を、複数のガスメータ20から選択する。取得対象選択部14による選択内容の詳細は、後述する。
【0018】
命令出力部15は、取得対象選択部14による選択結果に基づいて、1つ又は複数の選択されたガスメータ20に対して、圧力監視装置10に情報を送信させるための情報送信命令を出力する。例えば、命令出力部15は、1つ又は複数の選択されたガスメータ20に対して、圧力監視装置10に圧力情報を送信させるための圧力情報送信命令を出力する。
【0019】
圧力情報取得部16は、複数のガスメータ20からの情報を取得する。例えば、圧力情報取得部16は、ガスメータ20から、対応する需要家に対するガスの供給圧力を示す圧力情報を取得する。
【0020】
圧力変化情報取得部17は、各ガスメータ20の対応する需要家への供給圧力の変化に関する圧力変化情報を取得する。例えば、圧力変化情報取得部17は、各ガスメータ20の対応する需要家への供給圧力が、閾値設定部11によって予め設定されている閾値を連続して超えた時間を示す圧力変化情報、及び当該閾値を超えた頻度に関する圧力変化情報を取得する。圧力変化情報取得部17は、圧力変化情報をガスメータ20から取得するように構成されていてもよいし、ガスメータ20から取得した圧力情報を蓄積する記憶部19から取得するように構成されていてもよい。
【0021】
推定部18は、圧力情報取得部16によって取得された圧力情報に基づいて、導管網における漏洩の有無を推定し、漏洩があったと推定された場合には漏洩位置を推定する。例えば、推定部18は、圧力情報取得部16によって取得された複数の圧力情報間の差と、圧力変化情報取得部17によって取得された圧力変化情報と、に基づいて、導管網におけるガスの漏洩位置を推定する。推定部18による推定内容の詳細については、後述する。
【0022】
次に、図2及び図3を参照して、圧力監視装置10のハードウェア構成について説明する。図2は、実施の形態1に係る圧力監視装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図であり、図3は、実施の形態1に係る圧力監視装置10の図2とは異なるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。例えば、図2に示すように、圧力監視装置10は、プロセッサ10a、メモリ10b及びI/Oポート10cを有し、メモリ10bに格納されているプログラムをプロセッサ10aが読み出して実行するように構成されている。メモリ10bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリであってよい。また、メモリ10bは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等であってもよい。さらにメモリ10bは、HDD又はSSDであってもよい。
【0023】
また、例えば、図3に示すように、圧力監視装置10は、専用のハードウェアである処理回路10d及びI/Oポート10cを有している。処理回路10dは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、システムLSI(Large-Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらの組み合わせによって構成される。圧力監視装置10の各機能は、これらプロセッサ10a又は専用のハードウェアである処理回路10dがソフトウェア、ファームウェア又はソフトウェアとファームウェアとの組合せであるプログラムを実行することによって実現される。
【0024】
なお、圧力監視装置10は、単一のコンピュータ等の装置によって構成されていてもよいし、複数のコンピュータが協業することによって実現されるクラウドコンピューティングによって構成されていてもよい。
【0025】
次に、図4乃至図12を参照して、実施の形態1に係る圧力監視装置10が行う処理の一例について説明する。図4は、実施の形態1に係る圧力監視装置10が行う漏水位置推定方法に係る処理を示すフローチャートである。処理を開始すると、圧力監視装置10は、閾値設定部11によって各ガスメータ20に係る供給圧力の閾値を設定する(ステップST1)。この処理において、閾値設定部11は、各ガスメータ20に係る供給圧力の標準の範囲を示す上限値と下限値からなる閾値をガスメータ20毎に設定している。なお、図4に示す処理において、各ガスメータ20に対して、供給圧力の閾値として一律の値が設定されているものとして説明する。
【0026】
ステップST1の処理を行うと、圧力監視装置10は、複数のガスメータ20のうちいずれかのガスメータ20から、報知情報を取得したか否かを判定する(ステップST2)。ステップST2の処理において、いずれのガスメータ20からも報知情報を取得していない場合(ステップST2のNO)、圧力監視装置10は、報知情報を取得するまで処理を待機する。ステップST2の処理において、いずれかのガスメータ20から報知情報を取得した場合(ステップST2のYES)、取得した報知情報に対応するガスメータ20に対して、圧力情報を圧力監視装置10に送信させるための圧力情報送信命令を出力し(ステップST3)、当該ガスメータ20からの圧力情報を取得し(ステップST4)、当該ガスメータ20から位置情報を取得する(ステップST5)。
【0027】
図5は、実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、報知情報に対応するガスメータから圧力情報を取得した状態を示す模式図である。詳しくは、図5は、導管網R1に複数のガスメータ20として、ガスメータS1、S2、・・・S26が設けられており、圧力監視装置10が、供給圧力の閾値が下限値1.5kPa、上限値2.0kPaとして設定されているガスメータS23から、報知情報と、供給圧力が閾値の範囲を下方に超える1.4kPaであることを示す圧力情報と、位置情報と、を取得した状態を示している。
【0028】
ステップST3~ST5の処理を行うと、圧力監視装置10は、ガスメータS23の位置に基づいて、圧力情報を取得する対象となる他のガスメータを取得対象選択部14によって選択する(ステップST6)。言い換えると、圧力監視装置10は、導管網R1によってガスが供給される複数の需要家のうち、いずれかの需要家に対する供給圧力が、予め設定された圧力の範囲を超えたことを示す圧力情報を取得した場合、当該いずれかの需要家の位置に基づいて、圧力情報を取得する対象となる他の需要家を取得対象選択部14によって選択する。
【0029】
例えば、この処理において、圧力監視装置10は、ガスメータS23の位置から導管網R1に沿った経路長が、予め設定された範囲内である他のガスメータを選択する。言い換えると、圧力監視装置10は、供給圧力が閾値を超えた需要家の位置から導管網R1に沿った経路長が、予め設定された範囲内である他の需要家を選択する。また、例えば、この処理において、圧力監視装置10は、ガスメータS23の位置からの距離が予め設定された範囲内である他のガスメータを選択する。また、例えば、この処理において、圧力監視装置10は、ガスメータS23(需要家)が位置する住所と少なくとも一部が共通する住所に位置する他のガスメータ(需要家)を選択する。具体的には、この処理において、圧力監視装置10は、ガスメータS23が位置する住所の番地が共通する住所に位置する他のガスメータを選択する。ステップST6の処理を行うと、圧力監視装置10は、1つ又は複数の選択したガスメータに対して、圧力情報送信命令を出力する(ステップST7)。
【0030】
図6は、実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、選択したガスメータへ圧力情報送信命令を出力した状態を示す模式図である。図6は、複数のガスメータS1、S2、・・・S26のうち、ガスメータS12、S13、S16、S17、S18、S21、S22及びS24に対して、圧力監視装置10が圧力情報送信命令を出力した状態を示している。ステップST7の処理を行うと、圧力監視装置10は、圧力情報送信命令を出力した各ガスメータから、圧力情報を取得する(ステップST8)具体的には、圧力監視装置10は、圧力情報送信命令を出力した先のガスメータS12、S13、S16、S17、S18、S21、S22及びS24(図6に示すハッチングされているガスメータ)から、圧力情報取得部16によって圧力情報を取得する。
【0031】
なお、圧力情報取得部16は、圧力情報送信命令に基づいて取得する圧力情報とは別に、他の契機に基づいて圧力情報を取得するように構成されていてもよい。例えば、圧力情報取得部16は、圧力情報送信命令によらず、ガスメータが報知情報を出力する際、報知情報と共に送信された圧力情報を取得するように構成されていてもよいし、ガスメータから報知情報としての圧力情報を取得するように構成されていてもよいし、圧力情報送信命令に基づいて取得する圧力情報に加えて、又は圧力情報送信命令に基づいて取得する圧力情報に代えて、一定時間毎にガスメータから圧力情報を取得するように構成されていてもよい。
【0032】
図7は、実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、特定のガスメータから圧力情報を取得した状態を示す模式図である。言い換えると、図7は、圧力監視システムにおいて、圧力監視装置10が圧力情報送信命令を出力した各ガスメータから圧力情報を取得した状態を示す模式図である。例えば、圧力監視装置10は、圧力情報送信命令を出力した各ガスメータから圧力情報を取得する際に、合わせて報知情報に対応するガスメータS23から、新たな圧力情報を取得するように構成されていてもよい。例えば、図7に示すように、ガスメータS23から新たな圧力情報を取得した結果、ガスメータS23に係る供給圧力は、閾値内に収まる1.8kPaに変化している。
【0033】
ステップST8の処理を行うと、圧力監視装置10は、取得対象選択部14によって、圧力情報を取得する対象のガスメータの範囲である情報取得範囲が十分であるか否かを判定する(ステップST9)。例えば、取得対象選択部14は、圧力情報を取得したガスメータの圧力分布に基づいて、情報取得範囲が十分であるか否かを判定する。具体的には、取得対象選択部14は、情報取得範囲の境界付近に位置するガスメータである、ガスメータS12、S13、S16、S18、S21、S22、S23及びS24のうち、各ガスメータに係る供給圧力(ガスメータに対する矢印で記載された数値)が閾値によって設定されている範囲を下方又は上方に超えているガスメータの有無に基づいて、情報取得範囲が十分であるか否かを判定する。
【0034】
例えば、図7に示すように、取得対象選択部14は、これら情報取得範囲の境界付近に位置するガスメータのうち、予め設定されている供給圧力の範囲である1.5kPaから2.0kPaの範囲を超えているガスメータがない場合、導管網における情報取得範囲の境界よりも外で漏洩が発生している可能性は低く、情報取得範囲が十分であると判定する。
【0035】
ステップST9の処理において、情報取得範囲が十分であると判定された場合(ステップST9のYES)、圧力監視装置10は、当該情報取得範囲におけるガスメータから、圧力変化情報を取得する(ステップST10)。例えば、この処理において、圧力監視装置10は、各ガスメータ20が対応する需要家への供給圧力が、連続して閾値を超えた時間を示す圧力変化情報を取得する。また、例えば、この処理において、圧力監視装置10は、各ガスメータ20が対応する需要家への供給圧力が、閾値を超えた頻度を示す圧力変化情報を取得する。
【0036】
ステップST10の処理を行うと、圧力監視装置10は、ステップST8で情報取得範囲におけるガスメータから取得した圧力情報と、ステップST10で情報取得範囲におけるガスメータから取得した圧力変化情報と、に基づいて、導管網R1におけるガスの漏洩の有無を判定する(ステップST11)。例えば、図8に示すように、圧力監視装置10は、最後に取得した各ガスメータの圧力情報が示す各供給圧力の値が閾値を超えていないことに基づいて、導管網R1におけるガスの漏洩の可能性がないものと判定する。また、例えば、圧力監視装置10は、各ガスメータの圧力変化情報が示す各供給圧力の値が閾値を連続して超えた時間が、予め設定されている時間を超えていないことに基づいて、導管網R1におけるガスの漏洩の可能性がないものと判定する。
【0037】
また、例えば、圧力監視装置10は、最後に取得した各ガスメータの圧力情報が示す各供給圧力の値が供給圧力の閾値を超えていないが、特定の期間において供給圧力の値が予め設定されている回数を超えて閾値から外れたことを示す圧力変化情報を取得したことに基づいて、導管網R1におけるガスの漏洩の可能性があるものと判定する。また、例えば、圧力監視装置10は、過去の供給圧力(例えば、前日同時刻の圧力値、過去の特定期間における圧力値の平均値等)に対して、現在の供給圧力が予め設定された値よりも下がっている場合、漏洩の可能性があるものと判定する。
【0038】
また、例えば、図8に示すように、特定のガスメータS23に係る供給圧力のみが閾値を下方に超えており、周囲のガスメータS23に係る供給圧力が閾値内に収まっている場合、当該ガスメータS23に係る需要家の設備に原因がある可能性が高く、導管網R1に漏洩の可能性がないものと判定する。なお、このような場合、需要家に供給圧力が低下していることを通知することが望ましいため、推定部18は、需要家への通知を促すための報知オペレータに行うように構成されていてもよい。
【0039】
図9は、実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、選択したガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩の可能性があると判定される状態を示す模式図である。図9は、最も低い供給圧力に係るガスメータが報取得範囲の境界付近に位置しておらず、最も低い供給圧力に係るガスメータに隣接するガスメータに係る供給圧力よりも、最も低い供給圧力に係るガスメータに隣接しないガスメータの方が供給圧力が高い状態を示している。言い換えると、図9は、最も供給圧力が低いガスメータから離れるにつれて供給圧力が高くなる圧力分布になっている。このような場合、推定部18は、導管網R1に漏洩の可能性があると判定する。
【0040】
図10は、実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、選択したガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩位置が情報取得範囲外である可能性があると判定される状態を示す模式図である。例えば、ステップST9の処理において、情報取得範囲において最も供給圧力が低いガスメータであるガスメータS24が、情報取得範囲の境界付近に位置している場合、情報取得範囲外に漏洩位置が存在する可能性があるため、圧力監視装置10は、情報取得範囲が十分でないと判定し(ステップST9のNO)、処理をステップST6に戻し、取得対象選択部14によって、圧力情報の取得対象となるガスメータの再選択を行う(ステップST6)。例えば、この処理において、取得対象選択部14は、情報取得範囲を拡大するように、圧力情報の取得対象となるガスメータを新たに選択する。なお、取得対象選択部14は、これら情報取得範囲の境界付近に位置するガスメータのうち、予め設定されている供給圧力の範囲である1.5kPaから2.0kPaの範囲を超えているガスメータがある場合、導管網における情報取得範囲の境界よりも外で漏洩が発生している可能性があり、情報取得範囲が十分でないと判定するように構成されていてもよい。
【0041】
図11は、実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、情報取得範囲を拡大した状態を示す模式図である。例えば、情報取得範囲を拡大したことに基づいて、圧力監視装置10は、新たなガスメータS7、S8、S14、S19、S20、S25及びS26に対して、圧力情報送信命令を出力する。
【0042】
図12は、実施の形態1に係る圧力監視システムにおいて、拡大した情報取得範囲のガスメータから圧力情報を取得した結果、漏洩の可能性があると判定される状態を示す模式図である。図12に示す状態では、図9に示す状態と同様に、最も供給圧力が低いガスメータが情報取得範囲の境界付近に位置しておらず、最も供給圧力が低いガスメータから離れるにつれて供給圧力が高くなっているため、推定部18は、導管網R1に漏洩の可能性があると推定する(ステップST11のYES)。
【0043】
ステップST11の処理において、漏洩の可能性がないと判定した場合(ステップST11のNO)、圧力監視装置10は、処理をステップST2に戻す。
【0044】
また、ステップST11の処理において、漏洩の可能性があると判定した場合(ステップST11のYES)、圧力監視装置10は、推定部18によって導管網における漏洩位置を推定する(ステップST12)。例えば、図9及び図12に示すように、最も供給圧力が低いガスメータが情報取得範囲の境界付近に位置しておらず、最も供給圧力が低いガスメータから離れるにつれて供給圧力が高くなっている場合、当該最も供給圧力が低いガスメータの近傍に漏洩位置が位置しているものと推定する。
【0045】
ステップST12の処理を行うと、圧力監視装置10は、漏洩位置を示す情報を出力して、処理を終了する。例えば、この処理において、圧力監視装置10は、図示しない液晶表示装置に、漏洩位置の推定結果を表示させて、圧力監視装置10のオペレータに、漏洩の可能性があること、及び漏洩位置の推定結果を通知する。
【0046】
以上、実施の形態1に係る圧力監視装置10は、導管網から流体の供給を受ける複数の需要家に対する流体の供給圧力を示す圧力情報を、複数の需要家毎に取得する圧力情報取得部と、圧力情報取得部によって取得された複数の圧力情報の変化に関する圧力変化情報を取得する圧力変化情報取得部と、圧力変化情報取得部によって取得された圧力変化情報に基づいて、導管網における流体の漏洩位置を推定する推定部と、を備えている。
【0047】
このように構成されていることにより、実施の形態1に係る圧力監視装置10は、各需要家に対する供給圧力と、供給圧力の変化と、に基づいて導管網における流体の漏洩位置を推定するので、例えば、導管の振動によって漏洩位置を推定する場合と比較して、導管網におけるガスの漏洩位置の推定精度を向上させることができる。
【0048】
また、実施の形態1に係る圧力監視装置10は、複数の需要家に対する供給圧力の差に基づいてガスの漏洩位置を推定するので、需要家毎に供給圧力の標準とされる範囲が異なる場合であっても、導管網におけるガスの漏洩位置の推定精度を向上させることができる。
【0049】
なお、実施の形態1に係る圧力監視装置10において、推定部18は、上述した以外の手順で漏洩の有無を推定するように構成されていてもよい。例えば、推定部18は、導管網における複数のガスメータから圧力情報を取得し、供給圧力が最も低い点から、ガスの供給方向の上流に位置するガバナに向かって導管網を辿り、過去の圧力値(例えば、前日同時刻の圧力値、過去の特定期間における圧力値の平均値等)に対する現在の圧力値が最も低いガスメータの近傍を漏洩位置として推定するように構成されていてもよい。このように推定を行うことにより、漏洩位置と供給圧力が最も低い位置とが異なる場合であっても、漏洩位置を推定することが可能になる。また、このような漏洩位置の推定は、漏洩位置からの水の侵入や導管の変形などによる導管の内径の変化がない場合に、特に推定精度を向上させることが可能になる。
【0050】
また、漏洩位置において導管に水の侵入が想定される場合、導管の実質的な内径の減少や導管の詰まりが発生する場合がある。このような場合において、推定部18は、導管網における複数のガスメータから圧力情報を取得し、供給圧力が最も低い点から、標高が高くなる方に向かって導管網を辿り、過去の圧力値(例えば、前日同時刻の圧力値、過去の特定期間における圧力値の平均値等)に対する現在の圧力値が最も低いガスメータの近傍を漏洩位置として推定するように構成されていてもよい。このように推定を行うことにより、漏洩位置と供給圧力が最も低い位置とが異なる場合であっても、漏洩位置を推定することが可能になる。
【0051】
また、例えば、推定部18は、時系列データの特徴的な変化を検出する方法として、RuLSIF法(非特許文献1参照)、又は、時系列データの変化を示す差分ベクトルの偏りに基づいて特徴的な変化の有無を推定する方法(特許文献1参照)に基づいて、漏洩の有無を推定するように構成されていてもよい。
【0052】
【非特許文献1】S.Liu,M.Yamada,N.Collier,and M.Sugiyama,Change-point detection in time-series data by relative density-ratio estimation,Neural Networks,43(2013),pp.72-83.
【特許文献2】特願2023-046097
【0053】
なお、本開示は、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 :圧力監視装置
11 :閾値設定部
12 :報知情報取得部
13 :メータ情報取得部
14 :取得対象選択部
15 :命令出力部
16 :圧力情報取得部
17 :圧力変化情報取得部
18 :推定部
19 :記憶部
20 :ガスメータ
R1 :導管網
S1~S26、SN:ガスメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12