(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006029
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04746 20160101AFI20250109BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20250109BHJP
H01M 8/04828 20160101ALI20250109BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20250109BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0656
H01M8/04828
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106564
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】北條 芙美
(72)【発明者】
【氏名】高井 希紗
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】竹前 昭宏
【テーマコード(参考)】
4K021
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021DC03
4K021DC11
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA39
5H127BA59
5H127BA65
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB37
5H127BB39
5H127DC02
5H127DC07
5H127DC08
5H127DC09
5H127DC12
5H127DC17
5H127DC18
5H127DC19
5H127DC22
5H127DC27
5H127DC29
5H127DC32
5H127DC37
5H127DC39
(57)【要約】
【課題】燃料電池ユニットによる発電コストの低減を図る。
【解決手段】発電に際して、制御部9が、開閉弁8を制御して配管5wを閉塞する閉状態に移行させ、かつ切替弁7を制御してポンプ2における吸気口2iを気液分離槽3に対して接続させた状態においてポンプ2を動作させることにより、気液分離槽3を介してセパレータ11から第1の気体をポンプ2に吸引させることで新たな第1の気体をセパレータ11に流入させる第1の制御態様と、開閉弁8を制御して配管5wを開口する開状態に移行させ、かつ切替弁7を制御してポンプ2における排気口2oを気液分離槽3に対して接続させた状態においてポンプ2を動作させることにより、気液分離槽3を介してポンプ2からセパレータ11に第1の気体を圧送させると共に、気液分離槽3において分離された水を気液分離槽3から配管5wを介して燃料供給装置に圧送させる第2の制御態様とのいずれかでこれらを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含む第1の気体が通過させられる第1のセパレータ、水素を含む第2の気体が通過させられる第2のセパレータ、および当該第1のセパレータと当該第2のセパレータとの間に配設される膜電極接合体を少なくとも含む平板状の被積層物が複数積層されて一体化されると共に、当該膜電極接合体を介して当該第1の気体と当該第2の気体とを反応させて発電可能に構成された燃料電池本体と、
前記第1のセパレータに前記第1の気体を供給するポンプと、
原料の水を電気分解して前記水素を発生させて前記第2の気体を生成すると共に、生成した当該第2の気体を前記第2のセパレータに供給する燃料供給装置とを備えた燃料電池ユニットであって、
前記第1のセパレータと前記ポンプとの間に配設されて当該第1のセパレータから排出される排気に含まれている水を当該排気から分離させて回収する気液分離槽と、
前記ポンプにおける吸気口および排気口のいずれかを前記気液分離槽に対して選択的に接続する接続切替え装置と、
前記気液分離槽において分離された水を前記原料として前記燃料供給装置に供給する第1の配管と、
前記第1の配管に配設された第1の弁機構と、
前記ポンプ、前記接続切替え装置および前記第1の弁機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記燃料電池本体において発電を行うときに、
前記第1の弁機構を制御して前記第1の配管を閉塞する閉状態に移行させ、かつ前記接続切替え装置を制御して前記ポンプにおける前記吸気口を前記気液分離槽に対して接続させた状態において当該ポンプを動作させることにより、前記気液分離槽を介して前記第1のセパレータから前記第1の気体を当該ポンプに吸引させることで新たな当該第1の気体を当該第1のセパレータに流入させる第1の制御態様と、
前記第1の弁機構を制御して前記第1の配管を開口する開状態に移行させ、かつ前記接続切替え装置を制御して前記ポンプにおける前記排気口を前記気液分離槽に対して接続させた状態において当該ポンプを動作させることにより、前記気液分離槽を介して当該ポンプから前記第1のセパレータに前記第1の気体を圧送させると共に、当該気液分離槽において分離された水を当該気液分離槽から当該第1の配管を介して前記燃料供給装置に圧送させる第2の制御態様とのいずれかで、当該ポンプ、当該接続切替え装置および当該第1の弁機構を制御可能に構成されている燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記燃料供給装置から前記第2のセパレータに前記第2の気体を供給する第2の配管と、
前記第2のセパレータにおける排気口を前記気液分離槽に接続する第3の配管と、
前記第2の配管に対する前記第1の気体の流入を規制/許容する第2の弁機構と、
前記第3の配管に配設された第3の弁機構とを備え、
前記制御部は、前記第1の制御態様および前記第2の制御態様で制御を行うときに、前記第2の弁機構を制御して前記第2の配管に対する前記第1の気体の流入を規制させると共に、前記第3の弁機構を制御して前記第3の配管を閉塞する閉状態に移行させ、
前記燃料電池本体において発電を行わない状態において予め規定された条件が満たされたときに、前記第1の弁機構を制御して前記閉状態に移行させ、前記第2の弁機構を制御して前記第2の配管に対する前記第1の気体の流入を許容させ、かつ、前記第3の弁機構を制御して前記第3の配管を開口する開状態に移行させると共に、前記接続切替え装置を制御して前記ポンプにおける前記吸気口を前記気液分離槽に対して接続させた状態において当該ポンプを動作させることにより、前記気液分離槽および第3の配管を介して前記第2のセパレータから前記第1の気体を当該ポンプに吸引させることで、当該第2のセパレータから排気される前記第1の気体に含まれている水を当該気液分離槽において分離させて回収させる第3の制御態様で当該ポンプ、当該接続切替え装置、当該第1の弁機構、当該第2の弁機構および当該第3の弁機構を制御可能に構成されている請求項1記載の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤を含む第1の気体と水素を含む第2の気体とを反応させて発電可能に構成された燃料電池ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、病院において生成した水素や酸素を、病院、水素ステーションおよび住宅などで活用することができるように構成されたエネルギー供給システム(以下、単に「システム」ともいう)が開示されている。具体的には、このシステムは、電力を発生させる(太陽光発電を行う)発電部と、電気再生式の純水生成装置によって生成された水(純水)を貯留する純水貯留部と、発電部において発電された電力を利用して水を電気分解する電気分解装置と、電気分解装置において得られた水素を貯留する水素タンクと、電気分解装置において得られた酸素を貯留する酸素タンクと、水素を利用して電力を発生させる燃料電池と、酸素吸入用に酸素を提供する酸素供給装置とを備えて構成されている。
【0003】
この場合、電気分解装置において生成された水素は、水素の補給施設である水素ステーションに供給されて水素タンクに貯留され、その後、水素ステーションから燃料電池に供給されて発電に利用される。また、電気分解装置において生成された酸素は、酸素供給装置の酸素タンクに貯留されて病院内の医療用途に用いられる。このように、このシステムでは、電気分解装置による水の電気分解によって得られた酸素を水素と共に有効に活用することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-047417号公報(第3-5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献に開示のシステムには、以下のような解決すべき問題点が存在する。
【0006】
具体的には、上記のシステムでは、電気再生式の純水生成装置によって生成した水(純水)を純水貯留部に貯留し、貯留した水を電気分解装置に供給して電気分解させることによって燃料電池における発電に使用する水素を得る構成が採用されている。この場合、このシステムでは、発電を目的とする燃料電池において使用する水素を生成する電気分解装置において原料として使用する水(純水)を、電気再生式の純水生成装置によって生成する構成が採用されている。つまり、このシステムでは、発電に必要な水素を得るための水を生成するときに電力を消費しており、これに起因して、水素の生成コストが高騰し、発電コストの低減が困難となっているという問題点がある。
【0007】
一方、上記のシステムにおける燃料電池などでは、発電に際して酸素と水素とが反応させられることで膜電極接合体におけるカソード電極側に多量の水が発生し、この水が排気と共に燃料電池から排出される。そこで、出願人は、排気と共に排出されるこの水を回収して水素生成用の原料として使用する発電方法を試みた。これにより、電気再生式の純水生成装置によって生成した水を原料として水素を生成する上記システムの構成と比較して、原料としての水の生成に電力を必要としない分だけ、発電コスト(水素の生成コスト)を低減することが可能となった。
【0008】
しかしながら、出願人が試みた発電方法では、回収した水を搬送用容器などで搬送して水素発生装置に注水する作業が煩雑であり、これを自動化すべく液送ポンプなどを配設した場合には、水素発生装置への水の供給のために電力を使用することとなる。このため、発電用セルからの排水を水素生成用の原料として使用するには、この点を改善する必要がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、煩雑な作業を行うことなく、発電コストを十分に低減し得る燃料電池ユニットを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の燃料電池ユニットは、酸化剤を含む第1の気体が通過させられる第1のセパレータ、水素を含む第2の気体が通過させられる第2のセパレータ、および当該第1のセパレータと当該第2のセパレータとの間に配設される膜電極接合体を少なくとも含む平板状の被積層物が複数積層されて一体化されると共に、当該膜電極接合体を介して当該第1の気体と当該第2の気体とを反応させて発電可能に構成された燃料電池本体と、前記第1のセパレータに前記第1の気体を供給するポンプと、原料の水を電気分解して前記水素を発生させて前記第2の気体を生成すると共に、生成した当該第2の気体を前記第2のセパレータに供給する燃料供給装置とを備えた燃料電池ユニットであって、前記第1のセパレータと前記ポンプとの間に配設されて当該第1のセパレータから排出される排気に含まれている水を当該排気から分離させて回収する気液分離槽と、前記ポンプにおける吸気口および排気口のいずれかを前記気液分離槽に対して選択的に接続する接続切替え装置と、前記気液分離槽において分離された水を前記原料として前記燃料供給装置に供給する第1の配管と、前記第1の配管に配設された第1の弁機構と、前記ポンプ、前記接続切替え装置および前記第1の弁機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記燃料電池本体において発電を行うときに、前記第1の弁機構を制御して前記第1の配管を閉塞する閉状態に移行させ、かつ前記接続切替え装置を制御して前記ポンプにおける前記吸気口を前記気液分離槽に対して接続させた状態において当該ポンプを動作させることにより、前記気液分離槽を介して前記第1のセパレータから前記第1の気体を当該ポンプに吸引させることで新たな当該第1の気体を当該第1のセパレータに流入させる第1の制御態様と、前記第1の弁機構を制御して前記第1の配管を開口する開状態に移行させ、かつ前記接続切替え装置を制御して前記ポンプにおける前記排気口を前記気液分離槽に対して接続させた状態において当該ポンプを動作させることにより、前記気液分離槽を介して当該ポンプから前記第1のセパレータに前記第1の気体を圧送させると共に、当該気液分離槽において分離された水を当該気液分離槽から当該第1の配管を介して前記燃料供給装置に圧送させる第2の制御態様とのいずれかで、当該ポンプ、当該接続切替え装置および当該第1の弁機構を制御可能に構成されている。
【0011】
また、請求項2記載の燃料電池ユニットは、請求項1記載の燃料電池ユニットにおいて、前記燃料供給装置から前記第2のセパレータに前記第2の気体を供給する第2の配管と、前記第2のセパレータにおける排気口を前記気液分離槽に接続する第3の配管と、前記第2の配管に対する前記第1の気体の流入を規制/許容する第2の弁機構と、前記第3の配管に配設された第3の弁機構とを備え、前記制御部は、前記第1の制御態様および前記第2の制御態様で制御を行うときに、前記第2の弁機構を制御して前記第2の配管に対する前記第1の気体の流入を規制させると共に、前記第3の弁機構を制御して前記第3の配管を閉塞する閉状態に移行させ、前記燃料電池本体において発電を行わない状態において予め規定された条件が満たされたときに、前記第1の弁機構を制御して前記閉状態に移行させ、前記第2の弁機構を制御して前記第2の配管に対する前記第1の気体の流入を許容させ、かつ、前記第3の弁機構を制御して前記第3の配管を開口する開状態に移行させると共に、前記接続切替え装置を制御して前記ポンプにおける前記吸気口を前記気液分離槽に対して接続させた状態において当該ポンプを動作させることにより、前記気液分離槽および第3の配管を介して前記第2のセパレータから前記第1の気体を当該ポンプに吸引させることで、当該第2のセパレータから排気される前記第1の気体に含まれている水を当該気液分離槽において分離させて回収させる第3の制御態様で当該ポンプ、当該接続切替え装置、当該第1の弁機構、当該第2の弁機構および当該第3の弁機構を制御可能に構成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、燃料電池本体において発電を行うときに、第1の弁機構を制御して第1の配管を閉塞する閉状態に移行させ、かつ接続切替え装置を制御してポンプにおける吸気口を気液分離槽に対して接続させた状態においてポンプを動作させることにより、気液分離槽を介して第1のセパレータから第1の気体をポンプに吸引させることで新たな第1の気体を第1のセパレータに流入させる第1の制御態様と、第1の弁機構を制御して第1の配管を開口する開状態に移行させ、かつ接続切替え装置を制御してポンプにおける排気口を気液分離槽に対して接続させた状態においてポンプを動作させることにより、気液分離槽を介してポンプから第1のセパレータに第1の気体を圧送させると共に、気液分離槽において分離された水を気液分離槽から第1の配管を介して燃料供給装置に圧送させる第2の制御態様とのいずれかで、ポンプ、接続切替え装置および第1の弁機構を制御可能に構成されている。
【0013】
したがって、請求項1記載の燃料電池ユニットによれば、水素を生成する電気分解装置において原料として使用する水(純水)を電気再生式の純水生成装置によって生成する構成とは異なり、第1の制御態様で各部を制御することで、発電に際して燃料電池本体(第1のセパレータ)から排出される水を気液分離槽において分離させて回収し、この水を燃料供給装置における水素の生成のための原料として使用することができ、原料の水の生成に電力を必要としない分だけ水素の生成コストを十分に低減することができる。また、気液分離槽に回収した水を搬送用容器などで搬送して燃料供給装置に注水したり、気液分離槽から燃料供給装置に水を圧送する液送ポンプなどを配設したりすることなく、第2の制御態様で各部を制御することで、発電を継続しつつ気液分離槽から燃料供給装置に気液分離槽内の水を圧送することができるため、水素の生成コストを一層低減することができる。これにより、燃料供給装置において生成される水素を使用した発電コストを十分に低減することができる。
【0014】
また、請求項2記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、第1の制御態様および第2の制御態様で制御を行うときに、第2の弁機構を制御して第2の配管に対する第1の気体の流入を規制させると共に、第3の弁機構を制御して第3の配管を閉塞する閉状態に移行させ、燃料電池本体において発電を行わない状態において予め規定された条件が満たされたときに、第1の弁機構を制御して閉状態に移行させ、第2の弁機構を制御して第2の配管に対する第1の気体の流入を許容させ、かつ、第3の弁機構を制御して第3の配管を開口する開状態に移行させると共に、接続切替え装置を制御してポンプにおける吸気口を気液分離槽に対して接続させた状態においてポンプを動作させることにより、気液分離槽および第3の配管を介して第2のセパレータから第1の気体をポンプに吸引させることで、第2のセパレータから排気される第1の気体に含まれている水を気液分離槽において分離させて回収させる第3の制御態様でポンプ、接続切替え装置、第1の弁機構、第2の弁機構および第3の弁機構を制御可能に構成されている。
【0015】
したがって、請求項2記載の燃料電池ユニットによれば、燃料供給装置において原料として使用する水の量を十分に確保できるだけでなく、燃料供給装置において生成した第2の気体と共に燃料供給装置から排出される水滴(液相の水)や、結露によって生じた水滴(液相の水)が第2のセパレータ内に大量に存在する状態となって、発電時に供給される第2の気体の通過抵抗が過剰に大きくなるのを好適に回避することができ、これにより、燃料電池本体において好適に発電をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】燃料電池ユニット1の構成を示す構成図であって、燃料電池セル10における発電と並行してセパレータ11からの排水を回収する動作モードについて説明する説明図である。
【
図2】燃料電池セル10における発電と並行して回収した水を水素発生装置20に供給する動作モードについて説明する説明図である。
【
図3】発電を行わない状態において燃料電池セル10のセパレータ12から水を回収する動作モードについて説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、燃料供給装置および燃料電池ユニットの実施の形態について説明する。
【0018】
図1に示す燃料電池ユニット1は、「燃料電池ユニット」の一例であって、発電用の気体(「酸化剤を含む第1の気体」の一例である空気(大気:酸素)、および「水素を含む第2の気体」の一例である水素ガス)を反応させることで電力を生じさせることができるように構成されている。具体的には、燃料電池ユニット1は、ポンプ2、気液分離槽3、後処理装置4、配管5a~5j,5w、切替弁6a~6d,7、開閉弁8、制御部9、燃料電池セル10および水素発生装置20を備えている。
【0019】
この場合、燃料電池セル10は、「第1の気体と第2の気体とを反応させて発電可能に構成された燃料電池本体」の一例であって、「第1のセパレータ」の一例であるセパレータ11、「第2のセパレータ」の一例であるセパレータ12、および「膜電極接合体(燃料電池用膜電極接合体)」の一例であるMEA13からなる発電用スタックや、冷却用の流体(空気や冷却液)を通過させるためのセパレータ(図示せず)、および各積層物の積層方向における両端に配設されたエンドプレート(図示せず)などを備えている。なお、この例では、セパレータ11,12、MEA13、冷却用のセパレータ、およびエンドプレートなどの各板体が「平板状の複数の被積層物」に相当し、これらが積層されて一体化されることで燃料電池セル10が構成されている。
【0020】
また、セパレータ11には、空気(大気)を通過させるための溝部(図示せず)が形成されると共に、セパレータ12には、水素ガスを通過させるための溝部(図示せず)が形成され、両セパレータ11,12の間にMEA13が挟み込まれるようにしてこれらが積層されている。これにより、セパレータ11の溝部およびMEA13の一面によって空気流路11cが構成されてセパレータ11が陽極(空気極:酸素極)として機能すると共に、セパレータ12の溝部およびMEA13の他の一面によって水素流路12cが構成されてセパレータ12が陰極(水素極)として機能する。また、MEA13は、電解質膜、触媒層およびガス拡散層などを備えて構成されている。
【0021】
なお、実際の燃料電池セル10は、燃料電池ユニット1に求められる発電能力に応じて、上記の発電用スタックや冷却用のセパレータを複数備えて構成されるが、燃料電池ユニット1の構成およびその動作に関する理解を容易とするために1つの発電用スタックのみを図示すると共に、冷却用のセパレータやエンドプレートについての図示および説明を省略する。
【0022】
また、水素発生装置20は、「燃料供給装置」の一例であって、「原料」としての水を電気分解処理することで水素を生成し、生成した水素(水素ガス)を燃料電池セル10のセパレータ12に「第2の気体:燃料」として供給することができるように構成されている。この場合、燃料電池セル10における発電に際しては、空気流路11cを通過させられる空気(酸素)が水素流路12cを通過させられる水素ガス(水素)と反応して空気流路11c内に水が発生し、この水が排気と共にセパレータ11から排出される。また、動作開始直後であることで低温(常温)となっている燃料電池セル10(セパレータ12)との熱交換や、空気流路11cを通過させられる空気および冷却用のセパレータを通過させられる冷媒などとの熱交換によって水素ガス中の水分が水素流路12c内で結露し、この水が排気と共にセパレータ12から排出されることもある。
【0023】
さらに、水素発生装置20における電気分解によって生成された水素(水素ガス)を燃料として燃料電池セル10において発電をする本例の燃料電池ユニット1では、水素発生装置20から水素ガスと共に少量の水(電気分解されなかった水)が排出され、この水が水素ガスと共にセパレータ12内に流入して排気と共にセパレータ12から排出されることもある。したがって、本例の燃料電池ユニット1では、後述するように、この水を気液分離槽3において回収し、回収した水を水素発生装置20に「原料」として供給して水素を生成する構成が採用されている。
【0024】
一方、ポンプ2は、「第1のセパレータに第1の気体を供給するポンプ」の一例であって、制御部9の制御に従い、セパレータ11の空気流路11cから空気を吸引したり空気流路11c内に空気を圧送したりする(セパレータ11に空気を供給する)。なお、後述するように、本例の燃料電池ユニット1では、このポンプ2による空気の圧送によってセパレータ11(空気流路11c)から回収した水を水素発生装置20に圧送する(供給する)構成が採用されている。
【0025】
気液分離槽3は、「第1のセパレータから排出される排気に含まれている水を排気から分離させて回収する気液分離槽」の一例であって、後述するように、燃料電池セル10におけるセパレータ11からポンプ2に向かって流れる空気、およびポンプ2からセパレータ11に向かって流れる空気の通過が可能にセパレータ11とポンプ2との間に配設されている。
【0026】
後処理装置4は、セパレータ12の水素流路12cにおいて空気流路11c内の空気(酸素)と反応させられてセパレータ12から排気される気体(燃料電池セル10において未反応の水素を含む排気)に含まれる水素を除去(回収)する回収装置や、セパレータ12から排気された気体の水素濃度が既定値を下回るように空気(大気)を混合する(セパレータ12からの排気を希釈する)混合装置などで構成されている。なお、排気される気体の水素濃度が十分に低いときなどには、この後処理装置4を不要とすることもできる。
【0027】
配管5aは、セパレータ11の配管接続部11aに接続されると共に、その一端部が大気に連通させられている。配管5bは、「燃料供給装置から第2のセパレータに第2の気体を供給する第2の配管」の一例であって、水素発生装置20における水素ガスの排出口に一端部が接続されると共に、セパレータ12の配管接続部12aに他端部が接続されている。配管5cは、セパレータ11の配管接続部11bに一端部が接続されると共に、気液分離槽3に他端部が接続されている。配管5dは、セパレータ12の配管接続部12bに一端部が接続されると共に、後処理装置4に他端部が接続されている。配管5eは、気液分離槽3に一端部接続されると共に、切替弁7に他端部が接続されている。配管5fは、ポンプ2の吸気口2iに一端部が接続されると共に、切替弁7に他端部が接続されている。配管5gは、ポンプ2の排気口2oに一端部が接続されると共に、切替弁7に他端部が接続されている。配管5hは、切替弁7に接続されると共に、その一端部が大気に連通させられている。
【0028】
配管5iは、配管5a,5bを連通させる配管であって、配管5aに配設された切替弁6aに一端部が接続されると共に、配管5bに配設された切替弁6cに他端部が接続されている。配管5jは、配管5c,5dを連通させる配管であって、配管5cに配設された切替弁6bに一端部が接続されると共に、配管5dに配設された切替弁6dに他端部が接続されている。この場合、本例の燃料電池ユニット1では、配管5dにおける配管接続部12bと切替弁6dとの間、切替弁6d、配管5j、切替弁6b、および配管5cにおける切替弁6bと気液分離槽3との間によって「第2のセパレータにおける排気口を気液分離槽に接続する第3の配管」が構成されている。
【0029】
配管5wは、「気液分離槽において分離された水を原料として燃料供給装置に供給する第1の配管」の一例であって、一端部が気液分離槽3の底部に接続されると共に、他端部が水素発生装置20に接続されている。この場合、セパレータ11から空気と共に排出されて気液分離槽3において回収された水は、pH2程度の酸性となっている。また、水素発生装置20から水素と共に排出されて気液分離槽において回収された水や、水素流路12c内において結露によって発生した水も、pH4程度の酸性となっている。したがって、本例の燃料電池ユニット1では、上記の配管5wにイオン交換処理装置(一例として、SO4
2-(硫酸イオン)を除去可能な陰イオン交換樹脂フィルタ:図示せず)が配設されており、これらの水を水素発生装置20に供給するのに先立ち、イオン交換処理装置においてイオン交換処理することで、装置内の金属部品や配管などの劣化の回避、および水素発生装置20における電気分解処理の処理効率を向上させる構成が採用されている。
【0030】
切替弁6aは、配管5aに配設されており、後述するように、制御部9の制御に従い、配管5aからセパレータ11への空気の流入やセパレータ11から配管5aへの空気の流入(配管5aにおける切替弁6aの配設部位と配管接続部11aへの接続側端部との間の空気の通過)、および配管5aにおける切替弁6aの配設部位から配管5iへの空気の流入を許容/規制する。切替弁6bは、配管5cに配設されており、後述するように、制御部9の制御に従い、セパレータ11から配管5cへの空気の流入や配管5cからセパレータ11への空気の流入(配管5cにおける配管接続部11bへの接続側端部と切替弁6bの配設部位との間の空気の通過)、および配管5jから配管5cにおける切替弁6bの配設部位への空気の流入(配管5cにおける切替弁6bの配設部位と気液分離槽3への接続側端部との間の空気の通過)を許容/規制する。
【0031】
切替弁6cは、配管5bに配設されており、後述するように、制御部9の制御に従い、配管5bを介してのセパレータ12への水素ガスの流入、配管5bにおける切替弁6cの配設部位から配管5iへの水素ガスの流入、および配管5iから配管5bにおける切替弁6cの配設部位への空気の流入(配管5bにおける切替弁6cの配設部位と配管接続部12aへの接続側端部との間の空気の通過)を許容/規制する。切替弁6dは、配管5dに配設されており、後述するように、制御部9の制御に従い、配管5dを介しての後処理装置4への水素ガスの流入(配管5dにおける切替弁6dの配設部位と後処理装置4への接続側端部との間の水素ガスの通過)配管5dにおける切替弁6dの配設部位から配管5jへの水素ガスの流入、および配管5dにおける切替弁6dの配設部位から配管5jへの空気の流入を許容/規制する。
【0032】
この場合、本例の燃料電池ユニット1では、上記の切替弁6a,6cが相俟って「第2の弁機構」が構成されている。また、本例の燃料電池ユニット1では、切替弁6b,6dが相俟って「第3の弁機構」が構成されている。
【0033】
切替弁7は、「ポンプにおける吸気口および排気口のいずれかを気液分離槽に対して選択的に接続する接続切替え装置」の一例であって、制御部9の制御に従い、
図1,3に示すように配管5e,5fを連通させると共に配管5g,5hを連通させる接続態様と、
図2に示すように配管5e,5gを連通させると共に配管5f,5hを連通させる接続態様のいずれかに切替えることができるように構成されている。開閉弁8は、「第1の弁機構」の一例であって、配管5wに配設されると共に、制御部9の制御に従い、気液分離槽3から水素発生装置20への水の供給を許容/規制する。
【0034】
制御部9は、燃料電池ユニット1を総括的に制御する。具体的には、制御部9は、「制御部」の一例であって、切替弁7を制御してポンプ2における吸気口2iおよび排気口2oのいずれかを気液分離槽3に対して選択的に接続させると共に、ポンプ2を制御して燃料電池セル10に空気を供給させる。また、制御部9は、水素発生装置20の水素発生装置20を制御して水素ガスを生成させて燃料電池セル10(セパレータ12)に供給させる。また、制御部9は、切替弁6a~6dや開閉弁8を開状態/閉状態に移行させる。なお、制御部9による各部の動作制御については、後に詳細に説明をする。
【0035】
この燃料電池ユニット1では、前述のように、空気(大気:酸素)と、水素発生装置20において生成した水素とを燃料電池セル10において反応させて発電を行う。また、水素発生装置20では、発電に際して燃料電池セル10(セパレータ11)において発生する水や、水素発生装置20における水素の生成に際して発生する水(水素と共に排出される水)、および結露によって水素流路12c内に生じる水を「原料」とする電気分解によって水素を生成する。したがって、燃料電池ユニット1の設置直後の初期運転時や、長期に亘る運転休止後の運転開始時など(気液分離槽3内に十分な量の水が存在しないとき)には、発電開始に必要な水素を生成するための水(原料)を水素発生装置20に注水する。
【0036】
この状態において、図示しない操作部の操作によって発電開始を指示されたときに(「燃料電池本体において発電を行うとき」の一例)、制御部9は、
図1に示すように、開閉弁8を閉状態に移行させる(「第1の弁機構を制御して第1の配管を閉塞する閉状態に移行させ」との制御の一例)。また、制御部9は、切替弁6aを制御して配管5aにおける切替弁6aの配設部位から配管5iへの空気の流入を規制させ、かつ切替弁6bを制御して配管5cにおける切替弁6bの配設部位から配管5jへの空気の流入を規制させると共に、切替弁6cを制御して配管5bにおける切替弁6cの配設部位から配管5iへの水素ガスの流入を規制させ、かつ切替弁6dを制御して配管5dにおける切替弁6dの配設部位から配管5jへの水素ガスの流入を規制させる(「第2の弁機構を制御して第2の配管に対する第1の気体の流入を規制させると共に、第3の弁機構を制御して第3の配管を閉塞する閉状態に移行させ」との制御の一例)。なお、同図および後に参照する
図2,3では、切替弁6a,6dおよび開閉弁8において閉状態に移行させられたポートを黒色で図示すると共に、開状態に移行させられたポートを白色で図示している。
【0037】
また、制御部9は、切替弁7を制御してポンプ2の吸気口2i(配管5f)を気液分離槽3(配管5e)に接続させると共に、排気口2o(配管5g)を配管5hに接続させる(「接続切替え装置を制御してポンプにおける吸気口を気液分離槽に対して接続させ」との制御の一例)。次いで、制御部9は、ポンプ2を制御して空気の圧送を開始させる。この際には、配管5f、切替弁7、配管5e、気液分離槽3および配管5cを介して燃料電池セル10(セパレータ11)における空気流路11c内の空気がポンプ2の吸気口2iから吸引されることにより、配管5aを介して新たな空気が配管接続部11aから空気流路11c内に吸引(供給)される(「気液分離槽を介して第1のセパレータから第1の気体をポンプに吸引させることで新たな第1の気体を第1のセパレータに流入させる第1の制御態様」の一例)。
【0038】
続いて、制御部9は、水素発生装置20を制御して水素の生成を開始させる。これに応じて、水素発生装置20は、原料としての水を電気分解して水素を生成し、生成した水素(水素ガス)を、配管5bを介して配管接続部12aからセパレータ12に流入させる。これにより、燃料電池セル10においてセパレータ11の空気流路11cを通過させられている空気(酸素)とセパレータ12の水素流路12cを通過させられている水素ガス(水素)とがMEA13を介して反応させられて電力が発生する。
【0039】
この場合、前述したように、燃料電池セル10において発電が行われているときには、酸素と水素との反応によってセパレータ11における空気流路11c内(MEA13におけるカソード電極側)に水が発生する。この際に、空気流路11c内において発生した水は、空気流路11cを通過させられた空気と共に配管接続部11bから配管5cに排出されて気液分離槽3に案内される。これにより、気液分離槽3において水滴(液相の水分)を分離された(水滴を除去された)空気が配管5e、切替弁7および配管5fを介して吸気口2iからポンプ2に吸引されて排気口2oから排気され、配管5g、切替弁7及び配管5hを介して大気に放出される。また、空気から分離された水は、気液分離槽3内に貯留される。
【0040】
一方、上記のような状態で発電を継続することで、気液分離槽3内に規定量の水が貯留されたとき、または、水素発生装置20において原料として使用可能な水の量が規定量を下回ったときに、制御部9は、燃料電池セル10における発電を継続しつつ、気液分離槽3内の水を水素発生装置20に対して水素生成用の原料として供給する。なお、上記の「気液分離槽3内に規定量の水が貯留されたとき」との条件については、「水素発生装置20に対して供給するのに充分な量の水が貯留されたとき(供給を開始しても直ちに供給停止させる必要が生じる程度の少量ではないとき)」との条件、および「貯留可能な量を超えるおそれ(気液分離槽3内の水がポンプ2に吸引されるおそれ)があるとき」との2つの条件のいずれかを既定することができる。
【0041】
ここで、上記の条件のいずれかが満たされたときに、制御部9は、
図2に示すように、切替弁6aを制御して配管5aにおける切替弁6aの配設部位から配管5iへの空気の流入を規制させ、かつ切替弁6bを制御して配管5cにおける切替弁6bの配設部位から配管5jへの空気の流入を規制させると共に、切替弁6cを制御して配管5bにおける切替弁6cの配設部位から配管5iへの水素ガスの流入を規制させ、かつ切替弁6dを制御して配管5dにおける切替弁6dの配設部位から配管5jへの水素ガスの流入を規制させた状態を維持すると共に(「第2の弁機構を制御して第2の配管に対する第1の気体の流入を規制させると共に、第3の弁機構を制御して第3の配管を閉塞する閉状態に移行させ」との制御の他の一例)、ポンプ2および水素発生装置20を継続して動作させた状態において、開閉弁8を開状態に移行させる(「第1の弁機構を制御して第1の配管を開口する開状態に移行させ」との制御の一例)。
【0042】
また、同図に示すように、制御部9は、切替弁7を制御してポンプ2の排気口2o(配管5g)を気液分離槽3(配管5e)に接続させると共に、吸気口2i(配管5f)を配管5hに接続させる(「接続切替え装置を制御してポンプにおける排気口を気液分離槽に対して接続させ」との制御の一例)。この際には、配管5h、切替弁7および配管5fを介して吸気口2iからポンプ2に吸引された空気が、配管5g、切替弁7、配管5e、気液分離槽3および配管5cを介して配管接続部11bから燃料電池セル10(セパレータ11)に流入させられ、空気流路11cを通過させられた後に配管接続部11aから排気されて配管5aを介して大気開放される。これにより、水素発生装置20から供給されて水素流路12cを通過させられている水素ガス(水素)と、上記の「第1の制御態様」時とは逆向きで空気流路11cを通過させられる空気(酸素)との反応によって発電が継続される。
【0043】
また、上記のようにポンプ2によって圧送された空気が気液分離槽3を介して燃料電池セル10(セパレータ11)に供給されている状態においては、気液分離槽3の内部が加圧された状態となっている。この際に、本例の燃料電池ユニット1では、気液分離槽3の底部近傍(分離された水が集水される部位)に配管5wを介して水素発生装置20が接続されている。したがって、空気から分離されて気液分離槽3内に貯留されている水が、気液分離槽3内に圧送される空気の力によって気液分離槽3から配管5wに排出され、液送ポンプなどの動力源を使用することなく水素発生装置20に圧送される(「気液分離槽において分離された水を気液分離槽から第1の配管を介して燃料供給装置に圧送させる第2の制御態様」の一例)。
【0044】
これにより、セパレータ11から空気と共に排出されて気液分離槽3に貯留された水が、水素を生成するための原料として水素発生装置20に供給される。また、水素発生装置20に対する水の供給を継続することで、気液分離槽3内に貯留されている水の量が規定量を下回ったときに、制御部9は、前述の「第1の制御態様」で各構成要素を制御する。これにより、セパレータ11内において発生した水が分離されて気液分離槽3内に貯留される状態となる。
【0045】
一方、発電のために水素発生装置20から燃料電池セル10(セパレータ12)に水素ガスが供給されているときには、前述したように、燃料電池セル10(セパレータ12)との熱交換、空気流路11cを通過させられている空気および冷却用のセパレータを通過させられる冷媒などとの熱交換によって水素ガス中の水分が水素流路12c内で結露し、水素流路12c内に水滴が生じた状態となることがある。また、水素発生装置20からも水素ガスと共に少量の水(電気分解されなかった水)が排出され、この水が水素ガスと共にセパレータ12に流入させられることもある。この場合、水素流路12c内に発生する水や配管5bを介して水素流路12c内に流入させられる水は、発電時に空気流路11c内において発生する水の量よりも少量であるが、水素流路12c内に存在する水滴(液相の水分)が水素ガスの通過抵抗となり、空気(酸素)と反応させるべき十分な量の水素を通過させるのが困難となるおそれがある。
【0046】
したがって、本例の燃料電池ユニット1では、一例として、発電の終了を指示されたときに(「燃料電池本体において発電を行わない状態において予め規定された条件が満たされたとき」の一例)、水素流路12c内の水をセパレータ12から排出させて気液分離槽3において回収する構成が採用されている。具体的には、制御部9は、ポンプ2を継続して動作させつつ、水素発生装置20を停止させる。
【0047】
次いで、制御部9は、
図3に示すように、開閉弁8を閉状態に移行させる(「第1の弁機構を制御して前記閉状態に移行させ」との制御の一例)。また、制御部9は、切替弁6aを制御して配管5aからセパレータ11への空気の流入(配管5aにおける切替弁6aの配設部位と配管接続部11aへの接続側端部との間の空気の通過)を規制させつつ、配管5aにおける切替弁6aの配設部位から配管5iへの空気の流入を許容させ、かつ切替弁6cを制御して配管5iから配管5bにおける切替弁6cの配設部位への空気の流入(配管5bにおける切替弁6cの配設部位と配管接続部12aへの接続側端部との間の空気の通過)を許容させる。
【0048】
また、制御部9は、同図に示すように、切替弁6dを制御して配管5dから後処理装置4への空気の流入(配管5dにおける切替弁6dの配設部位と後処理装置4への接続側端部との間の空気の通過)を規制させつつ、配管5dにおける切替弁6dの配設部位から配管5jへの空気の流入を許容させ、かつ切替弁6bを制御して配管5jから配管5cにおける切替弁6bの配設部位への空気の流入(配管5cにおける切替弁6bの配設部位と気液分離槽3への接続側端部との間の空気の通過)を許容させる(「第2の弁機構を制御して第2の配管に対する第1の気体の流入を許容させ、かつ、第3の弁機構を制御して第3の配管を開口する開状態に移行させる」との制御の一例)。
【0049】
また、制御部9は、切替弁7を制御してポンプ2の吸気口2i(配管5f)を気液分離槽3(配管5e)に接続させると共に、排気口2o(配管5g)を配管5hに接続させる(「接続切替え装置を制御してポンプにおける吸気口を気液分離槽に対して接続させ」との制御の一例)。
【0050】
この際には、配管5f、切替弁7、配管5e、気液分離槽3、配管5c,5j,5dを介して水素流路12c内の気体や水滴(この制御態様での動作に移行した直後においては、未反応の少量の水素を含む気体)が吸引され、この気体が気液分離槽3を通過させられる際に、水滴(液相の水分)を分離され(水滴を除去され)、その後に配管5e、切替弁7および配管5fを介して吸気口2iからポンプ2に吸引されて、配管5g、切替弁7及び配管5hを介して大気に放出される(「気液分離槽および第3の配管を介して第2のセパレータから第1の気体をポンプに吸引させることで、第2のセパレータから排気される第1の気体に含まれている水を気液分離槽において分離させて回収させる第3の制御態様」の一例)。
【0051】
また、ポンプ2によって水素流路12c内の空気が吸引されることにより、配管5b,5i,5aを介して配管接続部12aから水素流路12c内に空気が吸引され、この空気と共に水素流路12c内の水(液相の水分)がセパレータ12(配管接続部12b)から排出されて気液分離槽3において空気から分離される。したがって、この「第3の制御態様」で制御された状態において各部が動作させられることにより、水素流路12c内に水滴が存在しない状態となり、かつ水素発生装置20において水素を生成するための原料として使用可能な水が気液分離槽3内に貯留される。これにより、次に発電を行うとき(水素発生装置20において水素を生成するとき)に、前述の「第2の制御態様」で各部を制御することで、気液分離槽3から水素発生装置20に原料としての水を供給することができる。
【0052】
このように、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、燃料電池セル10において発電を行うときに、開閉弁8を制御して配管5wを閉塞する閉状態に移行させ、かつ切替弁7を制御してポンプ2における吸気口2iを気液分離槽3に対して接続させた状態においてポンプ2を動作させることにより、気液分離槽3を介してセパレータ11から第1の気体(本例では、空気)をポンプ2に吸引させることで新たな第1の気体をセパレータ11に流入させる「第1の制御態様」と、開閉弁8を制御して配管5wを開口する開状態に移行させ、かつ切替弁7を制御してポンプ2における排気口2oを気液分離槽3に対して接続させた状態においてポンプ2を動作させることにより、気液分離槽3を介してポンプ2からセパレータ11に第1の気体を圧送させると共に、気液分離槽3において分離された水を気液分離槽3から配管5wを介して水素発生装置20に圧送させる「第2の制御態様」とのいずれかで、ポンプ2、切替弁7および開閉弁8を制御可能に構成されている。
【0053】
したがって、この燃料電池ユニット1によれば、水素を生成する電気分解装置において原料として使用する水(純水)を電気再生式の純水生成装置によって生成する構成とは異なり、「第1の制御態様」で各部を制御することで、発電に際して燃料電池セル10(セパレータ11)から排出される水を気液分離槽3において分離させて回収し、この水を水素発生装置20における水素の生成のための原料として使用することができ、原料の水の生成に電力を必要としない分だけ、水素の生成コストを十分に低減することができる。また、気液分離槽3に回収した水を搬送用容器などで搬送して水素発生装置20に注水したり、気液分離槽3から水素発生装置20に水を圧送する液送ポンプなどを配設したりすることなく、「第2の制御態様」で各部を制御することで、発電を継続しつつ気液分離槽3から水素発生装置20に気液分離槽3内の水を圧送することができるため、水素の生成コストを一層低減することができる。これにより、水素発生装置20において生成される水素を使用した発電コストを十分に低減することができる。
【0054】
また、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、「第1の制御態様」および「第2の制御態様」で制御を行うときに、切替弁6a,6cを制御して配管5bに対する第1の気体の流入を規制させると共に、切替弁6b,6dを制御して配管5d,5j,5cを閉塞する閉状態に移行させ、燃料電池セル10において発電を行わない状態において予め規定された条件が満たされたとき(例えば、発電の終了を指示されたとき)に、開閉弁8を制御して閉状態に移行させ、切替弁6a,6cを制御して配管5bに対する第1の気体の流入を許容させ、かつ、切替弁6b,6dを制御して配管5d,5j,5cを開口する開状態に移行させると共に、切替弁7を制御してポンプ2における吸気口2iを気液分離槽3に対して接続させた状態においてポンプ2を動作させることにより、気液分離槽3および配管5d,5j,5cを介してセパレータ12から第1の気体をポンプ2に吸引させることで、セパレータ12から排気される第1の気体に含まれている水を気液分離槽3において分離させて回収させる「第3の制御態様」でポンプ2、切替弁7、開閉弁8および切替弁6a~6dを制御可能に構成されている。
【0055】
したがって、この燃料電池ユニット1によれば、水素発生装置20において原料として使用する水の量を十分に確保できるだけでなく、水素発生装置20において生成した水素ガスと共に水素発生装置20から排出される水滴(液相の水)や、結露によって生じた水滴(液相の水)がセパレータ12(水素流路12c)内に大量に存在する状態となって、発電時に供給される水素ガスの通過抵抗が過剰に大きくなるのを好適に回避することができ、これにより、燃料電池セル10において好適に発電をすることができる。
【0056】
なお、「燃料電池ユニット」の構成は、上記の燃料電池ユニット1の構成の例に限定されない。
【0057】
例えば、水素発生装置20から水素ガスと共に排出された水(気液分離槽において水素ガスから分離させた水)や、水素流路12c内において結露した水を「原料」として使用可能な構成を例に挙げて説明したが、水素発生装置20から排出される水や、水素流路12c内において結露する水の量が極く少量のときには、この水を「原料」として使用しない構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1 燃料電池ユニット
2 ポンプ
2i 吸気口
2o 排気口
3 気液分離槽
4 後処理装置
5a~5j,5w 配管
6a~6d 切替弁
7 切替弁
8 開閉弁
9 制御部
10 燃料電池セル
11,12 セパレータ
11a,11b,12a,12b 配管接続部
11c 空気流路
12c 水素流路
13 MEA
20 水素発生装置