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特開2025-60306テラヘルツ波を用いた計測装置及び計測方法
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  • 特開-テラヘルツ波を用いた計測装置及び計測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060306
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】テラヘルツ波を用いた計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3581 20140101AFI20250403BHJP
【FI】
G01N21/3581
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170974
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椴山 誉
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059AA10
2G059EE01
2G059EE02
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH05
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】計測者が計測対象物の現在計測している位置を視覚的に確認できるテラヘルツ波計測装置及び計測方法を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波計測器2は計測対象物100に照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、反射されて入力したテラヘルツ波を検出し、RGBカメラ3で計測対象物100のテラヘルツ波照射表面101を撮影する一方、ビームスプリッター9でテラヘルツ波測定器2のテラヘルツ波を計測対象物100に照射する光軸中心と、RGBカメラ3の光軸中心を一致させるようにし、演算処理部5でテラヘルツ波検出信号と計測対象物撮影信号から、RGBカメラ3の撮影画像の中心に計測対象物100に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークが位置する表示画像を生成し、表示部6に表示画像を表示する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、カメラと、ビームスプリッターと、演算処理部と、表示部とを備え、
前記テラヘルツ波計測器は、計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、反射されて入力したテラヘルツ波を検出するものであり、
前記カメラは、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影するものであり、
前記ビームスプリッターは、前記テラヘルツ波計測器から出力されたテラヘルツ波を前記計測対象物に照射する光軸中心と、前記カメラの光軸中心を一致させるよう配置したものであり、
前記演算処理部は、前記テラヘルツ波計測器からのテラヘルツ波検出信号と前記カメラからの計測対象物撮影信号が入力され、同期する前記両信号から前記カメラの撮影画像の中心に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークが位置する表示画像を生成するものであり、
前記表示部は前記演算処理部で生成された表示画像を表示するものである
ことを特徴とするテラヘルツ波を用いた計測装置。
【請求項2】
一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、カメラと、演算処理部と、記憶部と、表示部とを備え、
前記テラヘルツ波計測器は、計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、反射されて入力したテラヘルツ波を検出するものであり、
前記カメラは、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影するもので、あらかじめその内部パラメータを測定し、この測定データを前記記憶部に格納するものであり、
前記演算処理部は、前記テラヘルツ波計測器からのテラヘルツ波検出信号と前記カメラからの計測対象物撮影信号が入力され、同期する前記両信号から、前記カメラの撮影画像に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークを表示した表示画像を生成するもので、この表示画像の生成は、前記テラヘルツ波計測器から出力されたテラヘルツ波を前記計測対象物に照射する光軸中心位置の座標と、前記カメラの光軸中心位置の座標を、同一座標系に変換して行うものであり、
前記表示部は、前記演算処理部で生成した表示画像を表示するものである
ことを特徴とするテラヘルツ波を用いた計測装置。
【請求項3】
前記テラヘルツ波計測器からのテラヘルツ波検出信号と前記カメラからの計測対象物撮影信号の同期は、前記ケース内に設けた前記テラヘルツ波測定器と前記カメラに同期信号を送出する同期信号発生部で行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテラヘルツ波を用いた計測装置。
【請求項4】
前記テラヘルツ波計測器からのテラヘルツ波検出信号と前記カメラからの計測対象物撮影信号の同期は、前記演算処理部において、同時刻に入力したテラヘルツ波検出信号と計測対象物撮影信号とに対して行うよう構成した
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテラヘルツ波を用いた計測装置。
【請求項5】
一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、カメラと、ビームスプリッターと、演算処理部と、表示部とを備えたテラヘルツ波計測装置を用いた計測方法であって、
前記テラヘルツ波計測器で、計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、反射されて入力したテラヘルツ波を検出し、
前記カメラで、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影し、
前記ビームスプリッターで、前記テラヘルツ波測定器から出力されたテラヘルツ波を計測対象物に照射する光軸中心と、前記カメラの光軸中心を一致させ、
前記演算処理部で、前記テラヘルツ波計測器から入力したテラヘルツ波検出信号と前記カメラから入力した計測対象物撮影信号で同期する前記両信号から、前記カメラの撮影画像の中心に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークが位置する表示画像を生成し、この表示画像を前記表示部に表示する
ことを特徴とするテラヘルツ波を用いた計測方法。
【請求項6】
一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、例えばRGBカメラなどのカメラと、演算処理部と、記憶部と、表示部とを備えたテラヘルツ波計測装置を用いた計測方法であって、
前記テラヘルツ波計測器で、計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、反射されて入力したテラヘルツ波を検出し、
前記カメラで、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影し、あらかじめその内部パラメータを測定して、この測定データを前記記憶部に格納し、
前記演算処理部で、前記テラヘルツ波計測器から入力したテラヘルツ波検出信号と前記カメラから入力した計測対象物撮影信号で同期する前記両信号から、前記カメラの撮影画像に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークを表示した表示画像を生成して表示部に表示し、前記表示画像の生成は、前記テラヘルツ波測定器から出力されたテラヘルツ波を前記計測対象物に照射する光軸中心位置の座標と、前記カメラの光軸中心位置の座標を、同一座標系に変換して行う
ことを特徴とするテラヘルツ波を用いた計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波を用いた計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数がおおよそ0.1THz~10THzの電磁波であるテラヘルツ波は、プラスチックや紙、布、セラミック、石膏などの材料に対して高い透過性を示すため、これらの材料で隠された対象物に対しテラヘルツ波を照射し、透過あるいは反射波を検出することで、対象物を可視化することができる。例えば建築建造物の壁の内部や天井の裏にある、人の目では視認不能な内部構造物を可視化することができる。また、可視光が透過しにくい前記材料の厚さを測定することができる。そして、この種のテラヘルツ波を用いた計測装置(以下「テラヘルツ波計測装置」という。)は、従来から様々な構成のものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、テラヘルツ発生装置によって構成される10GHzから10THzの発振周波数を持つ電磁波発生源を用い、発振周波数の異なる複数の発振素子を組み合わせ、あるいは複数の検出器を用い、建造物に発生電磁波を照射しその透過あるいは反射画像を得ることによって、建造物の表面および内部の欠陥分布のイメージングを可能にした検査システムが記載されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、サンプルの厚さを測定することができるテラヘルツ波を用いたリアルタイム非接触非破壊厚さ測定装置が記載されている。この測定装置は、波長固定レーザと波長掃引レーザをカプラーに入力し、形成した混合光をテラヘルツ波を発生する発生器に入力し、発生器から放出されてサンプルを透過または反射したテラヘルツ波を検出器に入力し、検出器は混合光によって励起される光キャリアをテラヘルツ波の電場によってバイアスして光電流を生成し、光電流をデータ取得部がデジタルデータの形態で取得し、これを演算部に出力して周波数領域データに変換し、この周波数領域データを高速フーリエ変換して時間領域データを生成し、この時間領域データに基づいてサンプルの厚さを演算するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-132915号
【特許文献2】特開2017-15681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これら従来の検査システムあるいは測定装置では、発生器から照射されたテラヘルツ波は視認できないので、計測者はテラヘルツ波が計測対象物のどの位置に照射されているか認識できない、すなわち、計測者は計測対象物のどの位置を検査し、あるいは計測しているかが視覚的に認識できないという問題がある。この問題は、特に広い範囲にわたって検査あるいは計測する場合に顕著である。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決したもので、計測者が計測対象物の現在計測している位置をリアルタイムで視覚的に確認できるテラヘルツ波計測装置及びテラヘルツ波計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るテラヘルツ波計測装置の第1の態様は、一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、例えばRGBカメラなどのカメラと、ビームスプリッターと、演算処理部と、表示部とを備え、前記テラヘルツ波計測器は、可視光では不透明な計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、前記計測対象物及び内部構造物で反射されて入力したテラヘルツ波を検出するものであり、前記カメラは、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影するものであり、前記ビームスプリッターは、前記テラヘルツ波測定器のテラヘルツ波を計測対象物に照射する光軸中心と、前記カメラの光軸中心を一致させるよう配置したものであり、前記演算処理部は、前記テラヘルツ波計測器からのテラヘルツ波検出信号と前記カメラからの計測対象物撮影信号が入力され、同期する前記両信号から、前記カメラの撮影画像の中心に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置(反射位置でもある)を示すテラヘルツ波照射マークが位置する表示画像を生成するものであり、前記表示部は前記演算処理部で生成された前記表示画像を表示するものである。
【0009】
同じく上記目的を達成するため、本発明に係るテラヘルツ波計測装置の第2の態様は、一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、例えばRGBカメラなどのカメラと、演算処理部と、記憶部と、表示部とを備え、前記テラヘルツ波計測器は、可視光では不透明な計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、前記計測対象物及び内部構造物で反射されて入力したテラヘルツ波を検出するものであり、前記カメラは、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影するもので、あらかじめその内部パラメータを測定し、この測定データを前記記憶部に格納するものであり、前記演算処理部は、前記テラヘルツ波計測器からのテラヘルツ波検出信号と前記カメラからの計測対象物撮影信号が入力され、同期する前記両信号から、前記カメラの撮影画像に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークを表示した表示画像を生成するもので、この表示画像の生成は、前記テラヘルツ波測定器から出力されたテラヘルツ波を前記計測対象物に照射する光軸中心位置の座標と、前記カメラの光軸中心位置の座標を、同一座標系、例えばワールド座標系に変換して行うものであり、前記表示部は、前記演算処理部で生成した表示画像を表示するものである。
【0010】
前記演算処理部における、前記テラヘルツ波測定器のテラヘルツ波を計測対象物に照射する光軸中心位置の座標と、前記カメラの光軸中心位置の座標を同一座標系、例えばワールド座標系へ変換するには、例えば、前記各光軸中心位置のオフセット値と、前記各光軸中心位置の角度オフセット値と、前記テラヘルツ波計測器で計測したテラヘルツ波反射面までの距離値と、前記内部パラメータに基いて、並進(平行移動)行列、回転行列を用いて行えば良い。
【0011】
前記第1,第2に態様において、前記テラヘルツ波計測器からのテラヘルツ波検出信号と前記カメラからの計測対象物撮影信号の同期は、前記ケース内に設けた前記テラヘルツ波測定器と前記カメラにシャッタートリガなどの同期信号を送出する発振回路のような同期信号発生部で行うと好適である。また、前記テラヘルツ波検出信号と前記計測対象物撮影信号の同期は、前記演算処理部において、同時刻に入力したテラヘルツ波検出信号と計測対象物撮影信号とを同期させるよう構成しても好適である。
【0012】
また、第2の実施形態における記憶部は、前記演算処理部の内部に設けた記憶部で兼用しても良い。
【0013】
同じく上記目的を達成するため、本発明に係るテラヘルツ波計測方法は、一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、例えばRGBカメラなどのカメラと、ビームスプリッターと、演算処理部と、表示部とを備えたテラヘルツ波計測装置を用いた計測方法であって、前記テラヘルツ波計測器で、可視光では不透明な計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、前記計測対象物及び内部構造物で反射されて入力したテラヘルツ波を検出し、前記カメラで、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影し、前記ビームスプリッターで、前記テラヘルツ波測定器から出力されたテラヘルツ波を計測対象物に照射する光軸中心と、前記カメラの光軸中心を一致させ、前記演算処理部で、前記テラヘルツ波計測器から入力したテラヘルツ波検出信号と前記カメラから入力した計測対象物撮影信号で同期する前記両信号から、前記カメラの撮影画像の中心に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置(反射位置でもある)を示すテラヘルツ波照射マークが位置する表示画像を生成し、この表示画像を前記表示部に表示するものである。
【0014】
また、同じく上記目的を達成するため、本発明に係るテラヘルツ波計測方法は、一つのケースに、テラヘルツ波計測器と、例えばRGBカメラなどのカメラと、演算処理部と、記憶部と、表示部とを備えたテラヘルツ波計測装置を用いた計測方法であって、前記テラヘルツ波計測器で、可視光では不透明な計測対象物に向けて照射するテラヘルツ波を生成して出力するとともに、前記計測対象物及び内部構造物で反射されて入力したテラヘルツ波を検出し、前記カメラで、前記計測対象物のテラヘルツ波照射表面を撮影し、あらかじめその内部パラメータを測定し、この測定データを前記記憶部に格納しておき、前記演算処理部で、前記テラヘルツ波計測器から入力したテラヘルツ波検出信号と前記カメラから入力した計測対象物撮影信号で同期する前記両信号から、前記カメラの撮影画像に前記計測対象物表面に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークを表示した表示画像を生成して表示部に表示するもので、この表示画像の生成は、前記テラヘルツ波測定器から出力されたテラヘルツ波を前記計測対象物に照射する光軸中心位置の座標と、前記カメラの光軸中心位置の座標を、同一座標系、例えばワールド座標系に変換して行うものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テラヘルツ波計測装置を一つのケースに設け、また、視認不能なテラヘルツ波の計測対象物表面に対する照射位置をリアルタイムで視覚的に確認することができるので、計測者は、自由に移動しながら計測対象物の計測位置を確認しつつ計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るテラヘルツ波計測装置の第1の実施形態を示すブロック図。
図2】同じく計測状態を示す模式図。
図3】同じく表示部における表示状態を概略的に示す正面図。
図4】本発明に係るテラヘルツ波計測装置の第2の実施形態を示すブロック図。
図5】同じく表示部における表示状態を概略的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のテラヘルツ波計測装置の第1の実施形態を添付図面の図1図3に基づいて説明する。
図1に示すように、テラヘルツ波計測装置1は、テラヘルツ波計測器2と、RGBカメラ3と、同期信号発生部4と、演算処理部5と、表示部6と、操作部7と、記憶部8と、ビームスプリッター9を備え、これらが一つのケース10(図2参照)に設けられている。図2に示すように、前記ケース10は、計測者Mが手に持って移動しながら計測作業ができる大きさ及び重量である。
【0018】
図1に示すように、テラヘルツ波計測器2は、計測対象物である、例えば建築構造物の不透明な壁100の裏側の内部構造物を検出するために、壁表面101に照射する周波数が0.1THz~10THz、好ましくは75GHz~110GHzあるいは20GHz~30GHzのテラヘルツ波を生成して、出力するテラヘルツ波発生器21と、前記壁表面101及び壁100裏側の内部構造物102で反射して、入力されたテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器22を有している。また、RGBカメラ3は、テラヘルツ波を照射する前記壁表面101を撮影するものである。
【0019】
テラヘルツ波測定器2のテラヘルツ波を壁表面101に照射する光軸中心Pと、RGBカメラ3の光軸中心Qは、ビームスプリッター9によって、一致させるように構成している。前記ビームスプリッター9は、例えばITO(酸化インジウムスズ)の塗膜が形成されたガラス板からなり、可視光は透過するが、テラヘルツ波は反射するものである。前記テラヘルツ波測定器2のテラヘルツ波を壁表面101に照射する光軸中心Pと、前記RGBカメラ3の光軸中心Qを一致させることによって、テラヘルツ波の壁表面101に対する照射位置(反射位置でもある)が、前記RGBカメラ3の撮影画像の中心位置に対応する。
【0020】
演算処理部5は、テラヘルツ波検出器22から送られたテラヘルツ波検出信号とRGBカメラ3からの計測対象物撮影信号が、同期信号発生部4の同期信号により、同期して入力され、同期した前記両信号に基いて、前記RGBカメラ3の撮影画像の中心に前記壁100の壁表面101に対するテラヘルツ波照射位置を示すテラヘルツ波照射マークが位置する表示画像60を生成するものである。すなわち、図3に示すように、前記RGBカメラ3の撮影画像の中心位置には、テラヘルツ波照射マークとしての小円61が表示され、この小円61が表示された表示画像60が、表示部6に表示される。この表示部6は、液晶ディスプレイなどからなる。
【0021】
操作部7は、計測者M(図2参照)が、テラヘルツ波計測装置1の各種操作を行うためのもので、例えば電源キー、数字キー、実行キーなどを有している。また、記憶部8は、演算処理部5の演算プログラムなどが格納されたROMと、一時的に画像データなどを格納するRAMからなる。
【0022】
本実施形態では、図2に示すように、上述したテラヘルツ波計測装置1を計測者Mが手に持って、壁表面101と平行に往復移動しながら前記壁表面101の上部からジグザグ状に順次下部に向けてテラヘルツ波を照射し、壁100裏側の内部構造物102を検出する。この時、図1に示すように、テラヘルツ波測定器2のテラヘルツ波を壁表面101に照射する光軸中心Pと、RGBカメラ3の光軸中心Qを、ビームスプリッター9によって、一致させるように構成しているので、図3に示すように、前記RGBカメラ3の撮影画像の中心にテラヘルツ波照射位置を示す小円61が表示される。このため、計測者Mは、表示部6に表示される前記小円61を視認することによって、前記テラヘルツ波の照射位置を視覚的にリアルタイムに確認できる。そして、計測者Mは前記小円61を目標にすることで、壁100の裏側の内部構造物102を検出したい位置に対応する壁表面101に、確実にテラヘルツ波を照射することができる。
【0023】
図1に示すように、壁表面101に照射されたテラヘルツ波は、前記壁表面101の材質に応じた反射率で反射されるとともに壁100内部を透過し、内部構造物102にあたるとこの内部構造物102の材質に応じた反射率で反射される。前記内部構造物102が金属の場合は、高い反射率で反射される。この反射されたテラヘルツ波は、ビームスプリッター9によってテラヘルツ波検出器22に入力し、検出データ化されて演算処理部5に送られ、壁表面101までの距離及びその材質が特定され、また、内部構造物102までの距離及びその材質が特定される。これらの距離及び材質の特定は、通常後処理段階で行われる。なお、図1において、テラヘルツ波の照射波は実線で示し、反射波は破線で示している。この照射波と反射波は、図示の便宜上位置をずらして示している。そして、内部構造物102が複数存在する場合でも、上述と同様に検出できるものである。
【0024】
続いて、本発明のテラヘルツ波計測装置の第2の実施形態を図4及び図5に基いて説明する。
図4に示すように、テラヘルツ波計測装置11は、テラヘルツ波計測器12と、RGBカメラ13と、同期信号発生部14と、演算処理部15と、表示部16と、操作部17と、記憶部18を備え、これらが一つのケース(図2のケース10参照)に設けられている。上述した第1の実施例と同様に、前記ケースは、計測者Mが手に持って移動しながら計測作業ができる大きさ及び重量である。
【0025】
テラヘルツ波計測器12は、上述した第1の実施態様と同様の構成であり、建築構造物の壁100のような計測対象物に照射するテラヘルツ波を生成して出力するテラヘルツ発生器121と前記壁100及び内部構造物102で反射されて入力したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器122を有する。
【0026】
RGBカメラ13は、計測対象物のテラヘルツ波照射表面、すなわち壁表面101を撮影するもので、あらかじめその内部パラメータを測定し、測定したデータを記憶部18に格納してある。前記内部パラメータは、具体的には、焦点距離、主点(画像中心)、歪みパラメータなどカメラレンズの特性に関するもので、RGBカメラ13でサークルグリッドなどのターゲットを撮影し、キャリブレーションを行って、取得している。
【0027】
演算処理部15は、テラヘルツ波検出器122からのテラヘルツ波検出信号とRGBカメラ13からの計測対象物撮影信号が、同期信号発生部14の同期信号により、同期して入力され、同期した前記両信号から表示部16に表示する表示画像を生成するものである。本実施形態では、第1の実施形態とは異なり、テラヘルツ波発生器121からテラヘルツ波を壁100に照射する光軸中心P1と、RGBカメラ13の光軸中心Q1は、一致しておらず、ずれている。前記演算処理部15は、例えば壁表面101における前記テラヘルツ波発生器121の光軸中心位置の座標と、前記RGBカメラ13の光軸中心位置の座標を、同一座標系、例えばワールド座標系に変換して、前記RGBカメラ13の撮影画像に前記壁100の表面101に対するテラヘルツ波照射位置(反射位置でもある)を示すテラヘルツ波照射マークである小円161を表示した表示画像160を生成するものである(図5参照)。
【0028】
前記演算処理部15における座標系の変換は、例えば、前記テラヘルツ波測定器12のテラヘルツ波を壁表面101に照射する光軸中心位置と、前記RGBカメラ13の光軸中心位置のオフセット値と、前記各光軸中心位置の角度オフセット値と、前記テラヘルツ波計測器12で計測したテラヘルツ波反射面までの距離値と、前記内部パラメータに基いて、並進(平行移動)行列、回転行列を用いて行う。
【0029】
このようにして、座標系を統合して生成された、前記RGBカメラ13の撮影画像に重ねてテラヘルツ波の照射位置を小円161で表示した表示画像160は、表示部16に表示される。なお、本実施形態では、前記小円161の表示位置は、必ずしも前記RGBカメラ13の撮影画像の中心と一致するものではない。
【0030】
本実施形態においても第1の実施形態と同様に、上述したテラヘルツ波計測装置11を計測者M(図2参照)が手に持って、壁表面101と平行に往復移動しながら前記壁表面101に向けてテラヘルツ波を照射し、壁100の裏側の内部構造物102を検出する。この時、表示部16に表示される小円161の位置が、テラヘルツ波の照射位置となり、計測者Mは、前記小円161を視認することによって、前記テラヘルツ波の照射位置を視覚的にリアルタイムに確認できる。したがって、計測者Mは壁100の裏側の内部構造物102を検出したい位置に対応する壁表面101に、確実にテラヘルツ波を照射することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されず、例えば、カメラはRGBカメラ3,13に限らず、またカメラに加えてLiDARを備えると、より精度の高い画像データを得られるとともに、撮影対象までの距離も測定できる。また、テラヘルツ波計測装置1,11は、計測者Mが手に持って計測するほか、より大きくて重い場合には、台車などに搭載して測定者Mが台車などを移動させながら計測することもできる。さらに、テラヘルツ波照射マークは小円61,161に限らず、適宜形状のマークを選定することができる。さらにまた、上述の各実施形態を当業者の知識に基づいて変形することも可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1,11 テラヘルツ波計測装置
2,12 テラヘルツ波計測器
3,13 RGBカメラ
4,14 同期信号発生部
5,15 演算処理部
6,16 表示部
7,17 操作部
8,18 記憶部
9 ビームスプリッター
21、121 テラヘルツ波発生器
22,122 テラヘルツ波検出器
60,160 表示画像
61,161 小円
100 壁
101 壁表面
102 内部構造物
P,P1 テラヘルツ波照射光軸中心
Q,Q1 RGBカメラ光軸中心
図1
図2
図3
図4
図5