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  • 特開-車両前部構造 図1
  • 特開-車両前部構造 図2
  • 特開-車両前部構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006037
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20250109BHJP
   B62D 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   B60R 19/48 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B62D37/02 A
B62D35/00 B
B60R19/48 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106580
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 力
(57)【要約】
【課題】空力性能の向上に加えて、汎用性および意匠性も向上できる車両前部構造を実現する。
【解決手段】車両前部構造は、フロントバンパ12の側面に設けられるゴム製のカナード14を備え、前記カナード14は、車両側面視において、車両上下方向における上面が略平面の半月形状であり、車両前後方向における後端部が前端部よりも上方に位置するように前記フロントバンパ12に取り付けられ、前記カナード14の短手方向の断面形状は、前記フロントバンパ12に対して略垂直方向に車幅方向の外側に延びて外側の先端が丸められ、当該先端から前記フロントバンパ12に向けて斜め下方に膨らむように延びる三角形状であり、前記カナード14の長手方向の断面形状は、中央部から両端に向けて厚みが薄くなるなだらかな山型形状である、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパの側面に設けられるゴム製のカナードを備え、
前記カナードは、
車両側面視において、車両上下方向における上面が略平面の半月形状であり、
車両前後方向における後端部が前端部よりも上方に位置するように前記フロントバンパに取り付けられ、
前記カナードの短手方向の断面形状は、前記フロントバンパに対して略垂直方向に車幅方向の外側に延びて外側の先端が丸められ、当該先端から前記フロントバンパに向けて斜め下方に膨らむように延びる三角形状であり、
前記カナードの長手方向の断面形状は、中央部から両端に向けて厚みが薄くなるなだらかな山型形状である、
ことを特徴とする車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関し、特に、車両の前部に取り付けられるカナードに関する。
【背景技術】
【0002】
フロントバンパの側面や下面の両端に設けられるカナードを備える車両がある。カナードは、車両の空力性能を制御し、走行性能を向上させるためのエアロパーツの一種である。そして、従来から、カナードの形状、大きさ、材質などに工夫を加えることで、車両の空力性能の向上(特に、車体に作用するダウンフォースを増大させる、整流板として機能させるなど)を実現させる車両前部構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、歩行者保護性能を確保しつつ空力性能を向上させるカナードスポイラが開示されている。このカナードスポイラは、フィンを備え、当該フィンは、車体外板の材料に比べて軟らかい軟質材により形成されている。そのため、空力性能の向上を目的としてフィンの形状を大きくした場合であっても、歩行者保護性能を損なわないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-077334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カナードの車両への取り付け方やカナード自体の形状を従来の構造から変えることで、空力性能の向上に加えて、汎用性および意匠性も向上できるとよい。空力性能については、操舵感の向上および接地感の向上が両立できるとよい。ここで、操舵感とは、ハンドルを操作した際の運転者の操舵感覚を評価するための指標である。空力との関係では、外乱(例えば、横風など)の影響を受け難いことで、操舵感が向上する。また、接地感とは、車体が路面に押し付けられている感覚のことである。一般に、車両が走行するときに空気の流れによって生じる負の揚力であるダウンフォースが増大することで、接地感が向上する。また、汎用性については、車種などに合わせてそれぞれ専用の設計品を製造する必要がなく、様々な車種の取付面に対応し易い材質であるとよい。従来のカナードのなかには、その材質によっては、車両の取付面の形状に沿ってカナードを成形する必要が生じ、汎用性が低いものがあるため、かかる難点を解消できるとよい。さらに、意匠性については、機能美を感じさせるような外観であるとよい。
【0006】
そこで、本明細書では、空力性能の向上に加えて、汎用性および意匠性も向上できる車両前部構造を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する車両前部構造は、フロントバンパの側面に設けられるゴム製のカナードを備え、前記カナードは、車両側面視において、車両上下方向における上面が略平面の半月形状であり、車両前後方向における後端部が前端部よりも上方に位置するように前記フロントバンパに取り付けられ、前記カナードの短手方向の断面形状は、前記フロントバンパに対して略垂直方向に車幅方向の外側に延びて外側の先端が丸められ、当該先端から前記フロントバンパに向けて斜め下方に膨らむように延びる三角形状であり、前記カナードの長手方向の断面形状は、中央部から両端に向けて厚みが薄くなるなだらかな山型形状である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示の車両前部構造によれば、カナードがゴム製のため、カナードの取付面に対する汎用性が高い。また、カナードの後端部が前端部よりも上方に位置するようにフロントバンパに取り付けられるため、カナードの空力性能の向上としての役割を視覚的に理解し易く機能美を感じさせる。さらに、カナードの形状により、風の流れを上に向け易くすることでダウンフォースの増大が可能となり、また、風を流し易くもなるため、整流板としてもカナードを機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カナードを備える車両前部構造の概略側面図である。
図2図1のカナード周辺の空気の流れをイメージとして示す斜視図である。
図3】カナード周辺の空気の流れを説明するための図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して車両前部構造について説明する。なお、各図において、「Fr」、「Up」、および、「Rh」は、それぞれ、車両前方、上方、および、右側方を示している。
【0011】
図1は、カナードを備える車両前部構造の概略側面図である。図1に示すように、車両10において、フロントバンパ12の側部には、エアロパーツの一種であるカナード14が取り付けられている。なお、本例においては、カナード14は、フロントバンパ12の左右にそれぞれ2つずつ取り付けられているが(右側図示なし)、これに限らない。本例において、カナード14は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのゴム製である。カナード14は、ゴム製(すなわち、柔軟性の高い材質)であるため変形させ易く、その結果、取付面であるフロントバンパ12の面に追従し易い。
【0012】
次に、カナード14の車両10への取り付けおよび形状について説明する。図1に示すように、カナード14は、車両前後方向における後端部が前端部よりも上方に位置するようにフロントバンパ12に取り付けられる。また、カナード14は、半月形状である。より詳しくは、カナード14は、車両10の側面視において、車両上下方向における上面が略平面であり、下方に向けて緩やかな山型に膨らむ半月形状である。
【0013】
図1においては、カナード14の形状をより詳しく説明するために、短手方向の断面を表したA-A断面図、および、長手方向の断面を表したB-B断面図を、それぞれ破線で囲み拡大して示している。A-A断面図に示すように、カナード14は、フロントバンパ12に対して略垂直方向に車幅方向の外側に延びて外側の先端が丸められている。そして、カナード14は、当該先端からフロントバンパ12に向けて斜め下方に膨らむように延びる。そのため、カナード14の短手方向の断面は、三角形状(または、略フの字形状とも表せる)となるように形成されている。また、B-B断面図には、カナード14は、中央部から両端に向けて厚みが薄くなる構造が示されている。すなわち、カナード14の長手方向の断面は、なだらかな山型形状である。なお、より具体的には、カナード14の長手方向においては、その前後端の断面が極力薄くなるように形成されている。
【0014】
次に、カナード14周辺の空気の流れ(または、適宜、「風の流れ」とも称する。)について、図2,3を参照して説明する。図2は、図1のカナード周辺の空気の流れをイメージとして示す斜視図である。また、図3は、カナード周辺の空気の流れを説明するための図1と同様の図である。
【0015】
図2に示すように、カナード14は、後端部が前端部よりも上方に位置するようにフロントバンパ12に取り付けられるため、前方からの風は、車両10の後方に行くに従い上方に流れ易くなる。その結果、ダウンフォースが得やすくなる。このダウンフォースを得やすいという効果は、カナード14の車両10への取り付け方に加え、カナード14の形状によっても実現される。図2に示す二点鎖線の矢印aは、カナード14の上面の略平面に沿って上向きに流れる風を表している。かかるカナード14の上面の形状により、前方からの風の流れを当該略平面に沿って跳ね上げ易くなる。その結果、ダウンフォースがより得やすくなる。なお、本例においては、カナード14は、後端部が前端部よりも上方に位置するが、その前端部から後端部にかけての形状は、車両後方に向かって上に緩やかなRを描く形状である。かかる構成により、走行風の空気抵抗ともなり得るカナードのデメリットが改善され、空気抵抗の悪化を低減することもできる。
【0016】
また、図2の二点鎖線の矢印bには、カナード14の車幅方向外側の端部から小さな渦を巻くように風が流れる様子を示している。このように、車両10の側部に流れる風がカナード14によって剥離されるため、車両10の側部に流れる風量が減る。すなわち、カナード14近傍に設置されるフロントフェンダ(図示なし)内から空気を吸い出すことができ、その結果、フロントフェンダ内で発生するアップフォースの抑制が可能となる。なお、図2に示すように、矢印aの風はスムーズに流れており、矢印bの風は渦を発生させているが、当該渦は小さな渦である。したがって、風の流れは、カナード14周辺の空気の流れを大きく乱すものではないため、操舵感が大きく悪化するようなことはない。
【0017】
また、図3においては、カナード14周辺の空気の流れと形状との関係を示すために、カナード14の長手方向の断面を表したB-B断面図、および、カナード14の車両前後方向の断面を表したC-C断面図を、それぞれ破線で囲み拡大して示している。なお、図3に示すB-B断面図は、図1に示すB-B断面図に風の流れを追加した図である。上述したように、カナード14の長手方向においては、その前後端の断面が極力薄くなるように形成されている。その結果、B-B断面図に示すように、カナード14の端部がなだらかなため(すなわち、端部の断面の変化が小さいため)、横風などの外乱に対しても、風をスムーズに流すことができる。かかるスムーズな風の流れは、B-B断面図において、二点鎖線の矢印cで示す風の流れによって表されている。なお、カナード14の長手方向の前後端の断面が極力薄い形状であることは、フロントバンパ12に追従し易くなる、すなわち、汎用性が高くなる、という効果がある。さらに、カナード14の長手方向の前後端の断面が極力薄い形状であることは、例えば、両面テープや接着剤を用いてフロントバンパ12に取り付ける場合であっても、ゴムの反発力は強くなり難いため、前後端が剥れることを抑制できる、という効果もある。C-C断面図に示す二点鎖線の矢印dは、前方から来た風を跳ね上げている様子を示している。すなわち、C-C断面図にも示すように、カナード14は、フロントバンパ12に対して略垂直方向に車幅方向の外側に延びているが、当該略垂直の平面によって、前方からの風を跳ね上げ易くなっている。その結果、ダウンフォースが得やすくなる。また、C-C断面図に示す二点鎖線の矢印eは、カナード14の端部から小さな渦を巻いて流れる風を表している。例えば、カナードの形状がフィン形状であった場合には、端部の断面の変化が大きいため、流れてきた風が当該端部で急変する。その結果、風の流れが乱れ易くなってしまう。しかし、本例のカナード14の端部は、形状がなだらかなため、風の流れが乱れ難い。その結果、カナード14は、整流板としても機能することになる。
【0018】
なお、本明細書で開示する車両前部構造においては、図2,3の空気の流れと形状との関係にも表れているように、カナード14の空力性能を向上させるための役割が視覚的にも理解し易く機能美を感じさせるような形状であるため、意匠性の向上も実現している。
【0019】
なお、これまでの説明は一例であり、本明細書で開示する車両前部構造においては、カナードのフロントバンパへの取付方法、取付箇所、取付個数など、適宜、されてもよい。例えば、実施形態においては、カナードのフロントバンパへの取り付け方は特に限定していないが、ボルトおよびナットを用いて締結してもよい。かかる構成により、カナードを取り付ける対象である車両が様々な車種であり、各車両のフロントバンパの取付面の形状差が大きい場合であっても、当該形状差への対応がより容易となる。すなわち、カナードがゴム製であり変形させ易いことに加え、ボルトおよびナットにより締結することで、カナードを取付面であるフロントバンパの面により追従し易くできる。また、バンパなどをこする程度の軽い衝突時にも、カナードが脱落し難くなる。さらに、実施形態においては、フロントバンパの左右にそれぞれ2つずつ取り付けたカナードの取付箇所については特に限定していないが、例えば、2つのカナード間の距離を100mm程度としてもよい。かかる構成により、カナードで発生する風の影響(例えば、渦など)を互いに干渉させないようにでき、より整流板としての効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 車両、12 フロントバンパ、14 カナード。
図1
図2
図3