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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006039
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】安全フック
(51)【国際特許分類】
   F16B 45/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F16B45/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106583
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】513096347
【氏名又は名称】株式会社 アイダ
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴章
【テーマコード(参考)】
3J038
【Fターム(参考)】
3J038AA01
3J038BA02
3J038BC07
(57)【要約】
【課題】ロック機構の構造を極めて簡略化すると共に、ロック機構を解除する操作も容易になり、安全性に優れた安全装置を提供する。
【解決手段】記フック本体1を貫通する揺動軸4の両端にゲート3を揺動自在に軸支する。スプリング部材5の曲げ応力にてゲート3を押圧付勢してフック2を閉塞する。フック本体1に突出した係止ブロック6を設ける。スプリング部材5の圧縮力にてゲート3を押圧付勢するロック機構を構成する。ゲート3がスライドして係止ブロック6に係止し閉塞状態のゲート3を固定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック本体の先端側のフックと、フックを開閉するゲートと、フックを閉じたゲートを固定するロック機構と備えた安全フックにおいて、
前記ゲートは、前記フック本体を貫通すると共に貫通方向にスライド移動する揺動軸の両端に揺動自在に軸支され、前記フック本体と前記ゲートとの間に装着されたスプリング部材の曲げ応力にて前記ゲートを押圧付勢して前記フックを閉塞し、
前記ロック機構は、前記フック本体に突出した係止ブロックを備え、前記フック本体の前記スプリング部材の圧縮力にて前記ゲートを押圧付勢すると、前記ゲートがスライドして前記係止ブロックに係止し、閉塞状態の前記ゲートをロックすることを特徴とする安全フック。
【請求項2】
前記ゲートは、前記フック本体の一側面と他側面にそれぞれ重合する重合部を備えた断面コ字状に形成され、各重合部は、前記フック本体を貫通すると共に貫通方向にスライド移動する揺動軸の両端に揺動自在に軸支され、前記フック本体の一側面と前記ゲートの一方の重合部との間に装着された前記スプリング部材の曲げ応力にて前記ゲートを押圧付勢して前記フックを閉塞する請求項1記載の安全フック。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記フック本体の他側面に突出した前記係止ブロックを備え、前記フック本体の一側面側の前記スプリング部材の圧縮力にて前記ゲートの一方の重合部を押圧付勢すると、前記ゲートの他方の重合部がスライドして前記係止ブロックに係止する請求項1又は2記載の安全フック。
【請求項4】
前記ゲートは、ロック解除時に一方の前記重合部を指で押圧しながら前記フックを開放する方向に揺動するように構成する請求項2記載の安全フック。
【請求項5】
前記スプリング部材はピッチ巻のねじりコイルばねとし、腕の回転力で前記ゲートを閉塞方向に押圧付勢し、ピッチ巻コイルの圧縮力で前記ゲートの他方の前記重合部が前記係止ブロックに係止する方向に押圧付勢する請求項3記載の安全フック。
【請求項6】
前記スプリング部材は、前記フック本体の一側面に端部が埋設された請求項1記載の安全フック。
【請求項7】
前記スプリング部材は、前記揺動軸に装着された請求項2記載の安全フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業用安全帯のロープ先端に連結する安全フックに係り、意図しない解除を防止するために2工程で解除される安全フックに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業安全帯用フックに使用される安全フックは、ロープ等の先端に係止するフックの開口部を開閉する開閉キャップが揺動自在に設けられている。更に、この開閉キャップが使用中に不用意に開かないようにするため、様々なロック機構が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載されているロック機構は、開閉キャップ4の回動を阻止する安全レバー5が使用されている。すなわち、バネ51で付勢した安全レバー5を開閉キャップ4に当接させることで、開閉キャップ4の不用意な開放を防止するものである。
【0004】
一方、特許文献2に記載のロック機構は、フック本体3の鈎部2を開閉する片開翼4に、片開翼4の開閉を防止する補助翼13を設けたものである。この片開翼4には更に係合爪8を設け、片開翼4が鈎部2を閉じたときに、係合爪8の他端部が係合部11に係合することで、片開翼4の揺動を防止している。
【0005】
そして、鈎部2を開放するに際には、この補助翼13を片開翼4に指がかかるようにして握り、片開翼4をフック本体1の方向に揺動させると共に、係合爪8の一端部を指で押圧する。そうすると、片開翼4の後端部の押圧により、その片開翼4先端側の係合片16が片開翼4から離反して係合が解除される構造である。
【0006】
これら特許文献1、2の安全フックは、ロック機構における解除の構造の大半が外部に露出しているため、安全レバーに何らか物品が当たるなどして、安全レバーが跳ね上がってしまうおそれがある。すなわち、これら従来のロック機構は、いずれも揺動する機構であるので、意図しない衝撃が揺動機構に加わるとロック解除が起きやすい構造であった。
【0007】
そこで、当出願人が先に提案した特許文献3のロック機構は、従来の揺動機構に代えて、フックの開口部を開閉するゲート120に係止するピン状のロック部材130をフレーム110に出没自在に設けたものである。そして、このロック部材130をコイルバネや弾性樹脂等の付勢部材にて押圧付勢しておき、突出時のロック部材130の側面にゲート120が係止してフックの閉塞状態を維持する。更に、フックを開放するには、このロック部材130の頭部を指等で押し込むことでゲート120の係止状態を解除した後にゲート120を開く構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案第3035268号公報
【特許文献2】特開2000-205235号公報
【特許文献3】特開2021-65372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、これら従来の安全フックは、いずれもロック機構を備えるので全体の構成が複雑になり、しかも、ロック機構の解除操作に多くの手間を要する課題があった。
【0010】
すなわち、従来の安全フックは、フックを開閉する開閉キャップなどの開閉機構と、この開閉機構をロックするロック機構とを別々のスプリング等で押圧付勢する構成であった。そのため、開閉機構やロック機構に使用するスプリングの数が多くなることから、安全フック全体の構成が複雑になっていた。また、安全フックを解除するには、ロック機構を解除する操作と開閉機構を開放する操作との異なる操作を同時に行うので、フックを外す操作に多くの手間を要するものであった。
【0011】
そこで、本発明は上述の課題を解決するために創出されたもので、ロック機構の構造を極めて簡略化すると共に、ロック機構を解除する操作も容易になり、安全性に優れた安全装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成すべく本発明の第1の手段は、フック本体1の先端側のフック2と、フック2を開閉するゲート3と、フック2を閉じたゲート3を固定するロック機構と備えた安全フックにおいて、
前記ゲート3は、前記フック本体1を貫通すると共に貫通方向にスライド移動する揺動軸4の両端に揺動自在に軸支され、前記フック本体1と前記ゲート3との間に装着されたスプリング部材5の曲げ応力にて前記ゲート3を押圧付勢して前記フック2を閉塞し、
前記ロック機構は、前記フック本体1に突出した係止ブロック6を備え、前記フック本体1の前記スプリング部材5の圧縮力にて前記ゲート3を押圧付勢すると、前記ゲート3がスライドして前記係止ブロック6に係止し、閉塞状態の前記ゲート3をロックすることにある。
【0013】
第2の手段の前記ゲート3は、前記フック本体1の一側面と他側面にそれぞれ重合する重合部3Aを備えた断面コ字状に形成され、各重合部3Aは、前記フック本体1を貫通すると共に貫通方向にスライド移動する揺動軸4の両端に揺動自在に軸支され、前記フック本体1の一側面と前記ゲート3の一方の重合部との間に装着された前記スプリング部材5の曲げ応力にて前記ゲート3を押圧付勢して前記フック2を閉塞する構成を成す。
【0014】
第3の手段の前記ロック機構は、前記フック本体1の他側面に突出した係止ブロック6を備え、前記フック本体1の一側面側の前記スプリング部材5の圧縮力にて前記ゲート3の一方の重合部3Aを押圧付勢すると、前記ゲート3の他方の重合部3Aがスライドして前記係止ブロック6に係止する構成である。
【0015】
第4の手段の前記ゲート3は、ロック解除時に一方の前記重合部3Aを指で押圧しながら前記フック2を開放する方向に揺動するように構成する。
【0016】
第5の手段の前記スプリング部材5は、ピッチ巻のねじりコイルばねとし、腕5Aの回転力で前記ゲート3を閉塞方向に押圧付勢し、ピッチ巻コイルの圧縮力で前記ゲート3の他方の前記重合部3Aが前記係止ブロック6に係止する方向に押圧付勢する構成である。
【0017】
第6の手段の前記スプリング部材5は、前記フック本体1の一側面に端部が埋設されている。
【0018】
第7の手段の前記スプリング部材5は、前記揺動軸4に装着されたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、開閉機構とロック機構とのスプリング部材を一体化し、スプリング部材の曲げ応力と圧縮力を合理的に利用することで、安全フック全体の構造を極めて簡略化することができる。しかも、ロック機構を解除する操作も容易になり、安全性に優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例を裏から示す斜視図である。
図2】本発明の一実施例を示す正面図である。
図3】本発明の一実施例を示す左側面図である。
図4】本発明のロック機構を示し、(イ)はロック時、(ロ)は解除時を示す側面図である。
図5】本発明のロック機構を示し、(イ)はロック時、(ロ)は解除時を示す正面図である。
図6】本発明の他の実施例のロック機構を示し、(イ)はロック時、(ロ)は解除時を示す側面図である。
図7図6に示すロック機構の(イ)は正面図、(ロ)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、高所作業用安全帯のロープ先端に連結する安全フックであり、ロープ等を連結する連結体10が回転自在に連結されている(図1参照)。この連結体10には例えばランヤードのショックアブソーバーの接続用帯状部等が通される。
【0022】
本発明の構成は、フック本体1の先端側のフック2と、このフック2を開閉するゲート3と、フック2を閉じたゲート3を固定するロック機構と備えた構成である(図2参照)。
【0023】
ゲート3は、フック本体1を貫通する揺動軸4の両端に揺動自在に軸支される部材である(図2参照)。この揺動軸4は、貫通方向にスライド移動するもので、この両端に軸支したゲート3も揺動軸4と共にスライド移動する構成である(図3参照)。
【0024】
このゲート3はフック本体1とゲート3との間に装着されたスプリング部材5の曲げ応力にて押圧付勢され、常にフック2を閉塞している(図5(イ)参照)。図示例のゲート3は、フック本体1の一側面と他側面にそれぞれ重合する重合部3Aを備えている(図4参照)。
【0025】
各重合部3Aは、フック本体1を貫通すると共に貫通方向にスライド移動する揺動軸4の両端に揺動自在に軸支される(図5参照)。そして、フック本体1の一側面とゲート3の一方の重合部との間に装着されたスプリング部材5の曲げ応力にてゲート3を押圧付勢してフック2を閉塞する構成である(図4参照)。図示のゲート3は、フック2を開閉する板状を成し、両側の重合部3Aにより断面コ字状に形成されたものである(図1参照)。
【0026】
この断面コ字状のゲート3の重合部3A相互の内幅は、少なくともフック本体1の外側の幅に係止ブロック6の突起の高さを加えた長さが必要である(図6(ロ)参照)。そうすると、ロック解除時に、スプリング部材5側の重合部3Aをフック本体1の側面に重ねたときに、反対側の重合部3Aが係止ブロック6の突出分スライド移動して係止ブロック6から解除される。
【0027】
ロック機構は、フック本体1に突出した係止ブロック6を備えたものである(図2図3参照)。そして、ゲート3を閉塞方向に押圧しているスプリング部材5の圧縮力を利用してロックする。すなわち、スプリング部材5の圧縮力で、ゲート3を揺動軸4方向にスライドし、係止ブロック6にゲート3を係止する(図3参照)。この結果、閉塞状態のゲート3が固定される構成である。
【0028】
図示のロック機構は、フック本体1の他側面に突出した係止ブロック6を設けている(図4参照)。そして、フック本体1の一側面側のスプリング部材5の圧縮力でゲート3の一方の重合部3Aを押圧付勢するとゲート3が揺動軸4と共にスライドし、ゲート3の他方の重合部3Aが係止ブロック6に係止してロック状態が保持される(同図(イ)参照)。
【0029】
ロックを解除するには、スプリング部材5側の重合部3Aを指で押圧してスプリング部材5のコイル部分を圧縮する(図4(ロ)参照)。そうすると、ゲート3が係止ブロック6方向にスライドし、係止ブロック6に係止している他方の重合部3Aが係止ブロック6から外れてロック状態が解除される。したがって、ロック機構を解除する操作は、一方の重合部3Aを指で押圧しながらフック2を開放する方向に揺動する操作になるので、片手でも容易に解除することができる。
【0030】
スプリング部材5は、ピッチ巻のねじりコイルばねを使用する(図1参照)。このねじりコイルばねとは、コイルの中心軸まわりにねじりモーメントを受けるコイルばねを称し、バネに荷重が加わると腕5Aに曲げ応力が発生して回転し、この腕5Aがゲート3を閉塞方向に押圧付勢する。ピッチ巻とは間隔をあけてコイルを巻いたもので、コイルの間隔で圧縮コイルばねと同様の圧縮力が発生する。
【0031】
本発明のスプリング部材5は、ピッチ巻コイルの回転力でゲート3を押圧してフック2を閉塞すると共に、ピッチ巻コイルの圧縮力で閉塞状態のゲート3を係止ブロック6に係止してロックする構成である。尚、スプリング部材5のコイル内径や巻角度と巻き数、許容ねじり角度、そして腕の長さなどの寸法等は、図示例に限られるものではない。
【0032】
図示のスプリング部材5は、フック本体1の一側面に端部が埋設された状態を示している(図3参照)。また、スプリング部材5を揺動軸4に装着することも可能である(図6参照)。更に、係止ブロック6は四角形状を成し(図7(イ)参照)、厚みにテーパーを有するものでもよい(同図(ロ)参照)。このように、スプリング部材5の装着位置や装着手段、あるいは係止ブロック6の形状等は任意に変更することが可能である。
【0033】
また、本発明において、フック本体1、フック2、ゲート3、揺動軸4、スプリング部材5等の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で任意に変更することができるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 フック本体
2 フック
3 ゲート
3A 重合部
4 揺動軸
5 スプリング部材
5A 腕
6 係止ブロック
10 連結体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7