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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006042
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】コネクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20250109BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/639 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106589
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 秀人
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 博
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FC40
5E021HC20
5E087EE02
5E087LL04
5E087LL13
5E087MM06
5E087QQ04
5E087RR04
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】ケーシングの大型化を抑制することができるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】コネクタ1は、電線Wの端末に設けられた端子3を内部に保持し、相手装置100(接続対象)の相手側コネクタ110と嵌合方向Xに沿って嵌合される筒状部11Aを有したケーシング2と、筒状部11Aの外周面と相手側コネクタ110との間の環状の空間をシールするパッキン30と、ケーシング2の嵌合方向Xの一端面に形成された貫通孔2aから筒状部11Aの内部を嵌合方向Xに沿って貫通するように取り付けられ、筒状部11Aと相手側コネクタ110とが嵌合された状態で、相手装置100の固定壁面103aに固定される締結部材40と、締結部材40の外周面と貫通孔2aの内面との間の環状の隙間をシールするシール部材50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に設けられた端子を内部に保持し、接続対象の相手側コネクタと嵌合方向に沿って嵌合される筒状部を有したケーシングと、
前記筒状部の外周面と前記相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキンと、
前記ケーシングの前記嵌合方向の一端面に形成された貫通孔から前記筒状部の内部を前記嵌合方向に沿って貫通するように取り付けられ、前記筒状部と前記相手側コネクタとが嵌合された状態で、前記接続対象の固定壁面に固定される締結部材と、
前記締結部材の外周面と前記貫通孔の内面との間の環状の隙間をシールするシール部材と、
を備えた、コネクタ。
【請求項2】
前記締結部材は、
前記貫通孔に挿通されるボルトと、
前記ボルトの頭部と前記貫通孔の周縁部との間に介在される環状の座金本体と、前記座金本体の内面と前記ボルトの軸部との間に介在され前記シール部材と前記嵌合方向に隣接する環状の止水ゴムと、を有した防水座金と、
を含んで構成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記電線は、前記ケーシングに対して前記嵌合方向と交差する高さ方向に沿って引き出される、
請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
導電性を有する電線と、
前記電線の端末に設けられるコネクタと、を備え、
前記コネクタは、
前記電線の端末に設けられた端子を内部に保持し、接続対象の相手側コネクタと嵌合方向に沿って嵌合される筒状部を有したケーシングと、
前記筒状部の外周面と前記相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキンと、
前記ケーシングの前記嵌合方向の一端面に形成された貫通孔から前記筒状部の内部を前記嵌合方向に沿って貫通するように取り付けられ、前記筒状部と前記相手側コネクタとが嵌合された状態で、前記接続対象の固定壁面に固定される締結部材と、
前記締結部材の外周面と前記貫通孔の内面との間の環状の隙間をシールするシール部材と、
を有する、ワイヤハーネス。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、接続対象の相手側コネクタと嵌合方向に沿って嵌合される筒状部を有したケーシングと、筒状部の外周面と相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキンと、筒状部の外側でケーシングと接続対象の固定壁面とを固定する締結部材と、を備えたコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-102307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のコネクタでは、例えば、締結部材によって筒状部の外側、すなわちパッキンによる防水領域の外側でケーシングと接続対象の固定壁面とを固定する必要があるため、ケーシングが比較的大型化してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ケーシングの大型化を抑制することができるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、電線の端末に設けられた端子を内部に保持し、接続対象の相手側コネクタと嵌合方向に沿って嵌合される筒状部を有したケーシングと、前記筒状部の外周面と前記相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキンと、前記ケーシングの前記嵌合方向の一端面に形成された貫通孔から前記筒状部の内部を前記嵌合方向に沿って貫通するように取り付けられ、前記筒状部と前記相手側コネクタとが嵌合された状態で、前記接続対象の固定壁面に固定される締結部材と、前記締結部材の外周面と前記貫通孔の内面との間の環状の隙間をシールするシール部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタおよびワイヤハーネスは、締結部材の外周面とケーシングの嵌合方向の一端面に形成された貫通孔の内面との間の環状の隙間をシールするシール部材を備える。この構成により、コネクタおよびワイヤハーネスは、例えば、シール部材によって筒状部の内側、すなわちパッキンによる防水領域の内側に締結部材を設けることができる。この結果、コネクタおよびワイヤハーネスは、ケーシングの大型化を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るコネクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な断面図である。
図2図2は、実施形態に係るコネクタの例示的な斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るコネクタの例示的な平面図である。
図4図4は、実施形態に係るコネクタの例示的な分解斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るコネクタの例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るコネクタ1が適用されるワイヤハーネスWHの断面図である。図1に示される本実施形態のコネクタ1は、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ1等で当該複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、例えば、導電性を有する複数の電線Wと、複数の電線Wの端末に設けられるコネクタ1と、を備えている。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、プロテクタや、固定具等を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、および第3方向のうち、第1方向を「嵌合方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、嵌合方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。嵌合方向Xは、典型的には、コネクタ1と相手側コネクタ110との挿抜方向(嵌合方向)、コネクタ1の前後方向(厚さ方向)等に相当する。高さ方向Zは、典型的には、コネクタ1の長手方向(上下方向)、電線Wの延在方向、コネクタ1に対する電線Wの挿通方向等に相当する。幅方向Yは、典型的には、コネクタ1の幅方向(左右方向)等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、電線Wがコネクタ1に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
電線Wは、例えば、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆W2と、を含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。本実施形態の導体部W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線であるが、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0013】
電線Wは、それぞれ高さ方向Zに沿って線状に延在し、高さ方向Z(延在方向)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。また、電線Wは、例えば、導体部W1の断面形状(高さ方向Zと交差する断面形状)が略円形状、絶縁被覆W2の断面形状が略円環形状に形成されており、全体として略円形状の断面形状に形成される。電線Wは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆W2が剥ぎ取られており、当該絶縁被覆W2から露出している導体部W1に後述する端子3(図4参照)が圧着されている。
【0014】
ここで、本実施形態のコネクタ1は、接続対象となる相手装置100(図1参照)との間で機械的かつ電気的に接続されるものである。コネクタ1は、相手装置100の筐体101に形成されたコネクタ挿入孔103に挿入されることで相手側コネクタ110に嵌合し、当該相手側コネクタ110との間で電気的な接続部位を形成する。コネクタ1は、例えば、相手側コネクタ110と嵌合する筒状部11Aを有したケーシング2と、ケーシング2の嵌合方向Xの一端面に形成される貫通孔2aから挿入され、筒状部11Aと相手側コネクタ110とが嵌合した状態で、相手装置100の固定壁面103aと固定される締結部材40と、を含んで構成される。ケーシング2の一端面は、嵌合方向Xにおいて、筒状部11Aとは反対側の端面である。
【0015】
コネクタ挿入孔103は、相手装置100の筐体101の嵌合方向Xの一方側(コネクタ1側)の壁面102に設けられている。コネクタ挿入孔103は、例えば、壁面102から嵌合方向Xの他方側に向けて凹み、嵌合方向Xの一方側に向けて開放された凹部である。コネクタ挿入孔103には、内側に相手側コネクタ110が収容されている。コネクタ挿入孔103は、コネクタ1が相手側コネクタ110と嵌合した状態で、筒状部11Aが挿入および嵌合する部分である。コネクタ挿入孔103の開口形状は、筒状部11Aの外径形状に沿って形成される。コネクタ挿入孔103は、例えば、嵌合方向Xから視た開口形状が略楕円状に形成される。
【0016】
固定壁面103aは、コネクタ挿入孔103の底部の壁面であって、コネクタ1が締結部材40によって固定される部分である。固定壁面103aは、一様な平坦面状に形成される。また、固定壁面103aには、締結部材40が締結される締結孔104が設けられている。締結孔104には、コネクタ1が相手側コネクタ110と嵌合した状態で、締結部材40のボルト41が締結される。締結孔104は、内周面に螺合溝が形成された孔であり、ボルト41の軸部41bが螺合される。
【0017】
図2は、コネクタ1の斜視図であり、図3は、コネクタ1の平面図であり、図4は、コネクタ1の分解斜視図である。図2~4に示されるように、コネクタ1は、例えば、ハウジング10やシールドシェル20等を含む複数の部品の組み合わせによって構成されるケーシング2と、複数のパッキン30、60と、締結部材40と、後述するシール部材50と、を含んで構成される。コネクタ1は、例えば、ハイブリッド自動車や、電気自動車等の車両において、インバータからモータへ電力を供給する電力供給用の電線Wを有するワイヤハーネスWH等に用いられる。なお、本実施形態では、コネクタ1がオス型のコネクタとして構成され、相手側コネクタ110がメス型のコネクタとして構成される場合が例示されるが、この例には限定されない。
【0018】
ハウジング10は、ケーシング2のうち端子3を内部に保持し、相手側コネクタ110と嵌合する筒状部11Aを有する部分である。図4に示されるように、ハウジング10は、複数の部品の組み合わせによって構成される。具体的には、ハウジング10は、例えば、ハウジング本体11と、リアカバー12と、フロントホルダー13と、インナーハウジング14と、を含んで構成される。ハウジング本体11、リアカバー12、フロントホルダー13、およびインナーハウジング14は、それぞれ絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。本実施形態では、筒状部11Aは、ハウジング10のうちのハウジング本体11に設けられ、当該ハウジング本体11から嵌合方向Xの他方側(相手側コネクタ110側)に向けて筒状に突出している。
【0019】
ハウジング本体11およびリアカバー12は、互いに組み付けられることで端子3を内部に収容する部材である。端子3は、導電性を有する金属材で構成されたオス型の端子金具であり、相手側コネクタ110のメス型の端子と電気的に接続される。本実施形態では、ハウジング本体11には、幅方向Yに互いに間隔をあけて4つの端子3が設けられている。端子3は、例えば、相手側コネクタ110のメス型の端子と電気的に接続される電気接続部と、電線Wの端末と電気的に接続される電線圧着部と、を含んで構成される。なお、ハウジング本体11およびリアカバー12は、互いに組み付けられた状態において、4つの端子3を収容する場合が例示されるが、端子3の数はこれに限定されない。
【0020】
また、ハウジング本体11は、例えば、嵌合方向Xの両側が開口して形成されている。ハウジング本体11は、筒状部11Aに端子3が収容された状態において、嵌合方向Xの他方側の開口から端子3が外部に露出する一方で、嵌合方向Xの一方側の開口がリアカバー12により閉塞される。ハウジング本体11は、例えば、嵌合方向Xから視た形状が略矩形状に形成される。ハウジング本体11は、筒状部11Aが相手側コネクタ110と嵌合した嵌合状態において、相手装置100の壁面102と対向する。また、ハウジング本体11の下端部には、複数の電線挿通部15が設けられている。
【0021】
電線挿通部15は、電線Wが挿通される部分である。電線挿通部15は、ハウジング本体11の下端部から高さ方向Zに沿って下側に突出するように形成される。電線挿通部15は、筒状に形成され、その内側を電線Wが高さ方向Zに沿って配索される。つまり、ハウジング本体11は、嵌合方向Xに沿って端子3を保持すると共に、当該嵌合方向Xと直交する高さ方向Zに沿って電線Wが引き出される。ここでは、ハウジング本体11には、幅方向Yに並んで4つの電線挿通部15が設けられ、当該4つの電線挿通部15のそれぞれに電線Wが挿通される。
【0022】
リアカバー12は、ハウジング本体11の開口を嵌合方向Xの一方側から閉塞するための部材である。リアカバー12は、例えば、ハウジング本体11の開口を覆うカバー部12bと、ハウジング本体11の外周面に係止される複数の係止部12aと、を有している。リアカバー12は、カバー部12bがハウジング本体11の開口を覆った状態で、係止部12aによるスナップフィットによってハウジング本体11と一体化される。
【0023】
フロントホルダー13は、例えば、パッキン30をハウジング本体11との間に保持するための部材である。フロントホルダー13は、筒状部11Aの外周面に沿った筒状に形成され、当該筒状部11Aの外周面に嵌合される。フロントホルダー13は、例えば、嵌合方向Xから視た場合に、略楕円の筒状に形成される。フロントホルダー13は、パッキン30をハウジング本体11との間に挟んだ状態で、爪嵌合等により筒状部11Aと一体化される。
【0024】
パッキン30は、水分や粉塵などの異物が相手側コネクタ110と筒状部11Aの外周面との間の環状の隙間からコネクタ1の内部に入り込むことを抑制するものである。パッキン30は、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材によって形成される。パッキン30は、例えば、筒状部11Aの外周面に沿った略楕円の筒状に形成され、当該筒状部11Aの外周面に嵌合される。パッキン30は、筒状部11Aが相手側コネクタ110と嵌合した嵌合状態において、フロントホルダー13の嵌合方向Xの一方側で相手側コネクタ110と筒状部11Aとの間に介在される。
【0025】
インナーハウジング14は、ハウジング本体11とは別体で形成された部材であって、筒状部11Aの内側に装着された状態で、嵌合方向Xに沿って端子3を収容し保持する部材である。インナーハウジング14には、端子3が嵌合方向Xに沿って挿通される複数の挿通孔14aが設けられている。複数の挿通孔14aは、幅方向Yに並んでいる。言い換えると、複数の端子3は、インナーハウジング14によって幅方向Yに互いに仕切られた状態で保持されている。
【0026】
シールドシェル20は、ケーシング2のうち端子3や電線Wの周囲を覆うことによって、電線Wから発生するノイズがコネクタ1の外部に漏れることを抑制する部分である。図4に示されるように、シールドシェル20は、複数の部品の組み合わせによって構成される。具体的には、シールドシェル20は、例えば、シェル本体21と、ロアシェル25と、を含んで構成される。シェル本体21およびロアシェル25は、例えば、それぞれが導電性を有する金属材料によって形成される。
【0027】
シェル本体21は、例えば、ハウジング10の嵌合方向Xの一方側を覆うように桶状に形成される。すなわち、シェル本体21には、嵌合方向Xの他方側に向けて開放され、ハウジング10のリアカバー12やハウジング本体11の一部が収容される収容空間部が設けられている。また、シェル本体21には、締結部材40のボルト41が嵌合方向Xに沿って挿通される貫通孔2aが設けられている。貫通孔2aは、リアカバー12に設けられる貫通孔や、ハウジング本体11に設けられる中心孔(図5参照)と嵌合方向Xに並び連通している。
【0028】
また、シェル本体21の下端部には、電線Wを保持する電線保持部22(図4参照)が設けられている。電線保持部22は、嵌合方向Xの他方側に向けて開放される略U字状の断面を有しており、その内側に電線Wが高さ方向Zに沿って配索される。ここでは、シェル本体21には、幅方向Yに並んで4つの電線保持部22が設けられ、当該4つの電線保持部22のそれぞれに電線Wが挿通される。
【0029】
ロアシェル25は、シェル本体21に対して締結具70等によって締結されることで、ハウジング本体11をシールドシェル20に固定する部分である。ロアシェル25は、ハウジング本体11に対して嵌合方向Xの他方側(シェル本体21とは反対側)に位置される。ロアシェル25は、シェル本体21との間でハウジング本体11の電線挿通部15を嵌合方向Xに挟んだ状態で、2本の締結具70の締結によってシェル本体21に固定される。
【0030】
図5は、コネクタ1の断面図である。図5に示されるように、締結部材40は、コネクタ1を上述した相手装置100の固定壁面103aに固定するための部材である。締結部材40は、例えば、ボルト41と、防水座金42と、を含んで構成される。ボルト41は、嵌合方向Xに沿って延びる軸部41bと、軸部41bの嵌合方向Xの一端部に設けられ軸部41bよりも大径の頭部41aと、を有している。頭部41aは、例えば、嵌合方向Xから視た形状が六角形に構成される。頭部41aは、シールドシェル20の嵌合方向Xの一端面における貫通孔2aの周縁部に係止される。
【0031】
軸部41bは、嵌合方向Xに沿ってシールドシェル20の貫通孔2aや、リアカバー12の貫通孔、ハウジング本体11の中心孔に挿通される部分である。軸部41bは、円柱状に形成される。軸部41bの表面には、嵌合方向Xに沿って螺旋状の螺合溝が形成されている。ボルト41は、軸部41bが貫通孔2a等に挿通された状態で、上述した固定壁面103aの締結孔104に螺合されることで当該締結孔104に締結される。つまり、コネクタ1は、ボルト41が筒状部11Aの内部を嵌合方向Xに沿って貫通した状態で、相手装置100の固定壁面103aに固定される。ボルト41は、筒状部11Aの中心孔に挿入されることで、上述した4つの端子3のうちの内側2つの端子3の間の中心部に位置される。
【0032】
防水座金42は、例えば、座金本体42aと、止水ゴム42bと、を有している。座金本体42aは、ボルト41の頭部41aとシールドシェル20の嵌合方向Xの一端面における貫通孔2aの周縁部との間に介在される部材である。座金本体42aは、円環状(リング状)に形成される。座金本体42aは、ボルト41の頭部41aとシールドシェル20との干渉を抑制する機能を有している。
【0033】
止水ゴム42bは、水分等が座金本体42aとボルト41の頭部41aとの間の環状の隙間から貫通孔2a側に入り込むことを抑制するものである。止水ゴム42bは、ゴム等の弾性変形可能な部材によって形成される。止水ゴム42bは、座金本体42aの内面とボルト41の軸部41bとの間に介在される。止水ゴム42bは、座金本体42aの内面に沿った円環状(リング状)に形成される。なお、本実施形態では、リアカバー12における嵌合方向Xの他端面側にも防水座金42が設けられている。すなわち、締結部材40には、嵌合方向Xに互いに間隔をあけて一対の防水座金42が設けられている。
【0034】
また、本実施形態では、ボルト41の軸部41bには、止水ゴム42bと嵌合方向Xに隣接してシール部材50が設けられている。シール部材50は、水分等が軸部41bの外周面と貫通孔2aの内面との間の環状の隙間からコネクタ1の内部に入り込むことを抑制するものである。シール部材50は、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材によって形成される。シール部材50は、例えば、軸部41bの外周面と貫通孔2aの内面との間、および軸部41bの外周面とリアカバー12の貫通孔の内面との間に介在される。シール部材50は、例えば、軸部41bの外周面に沿った円筒状に形成され、当該軸部41bの外周面に嵌合される。シール部材50は、ブッシュ等とも称される。
【0035】
また、本実施形態では、ハウジング本体11とリアカバー12との間にはパッキン60が設けられている。パッキン60は、水分や粉塵などの異物がハウジング本体11とリアカバー12(シールドシェル20)との間の環状の隙間からコネクタ1の内部に入り込むことを抑制するものである。パッキン60は、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材によって形成される。パッキン60は、例えば、リアカバー12の外周面に沿った環状に形成され、当該リアカバー12の外周面に嵌合される。パッキン60は、リアカバー12がハウジング本体11と一体化された状態において、ハウジング本体11の嵌合方向Xの一方側の端部とリアカバー12の外周面との間に介在される。そして、本実施形態では、締結部材40は、上述した2つのパッキン30、60による防水領域の内側に設けられている。
【0036】
次に、上記構成を有するコネクタ1を相手側コネクタ110(図1参照)に嵌合し、相手装置100の固定壁面103aに固定する作業動作について説明する。まず、作業者は、コネクタ1におけるシールドシェル20の貫通孔2a、リアカバー12の貫通孔、ハウジング本体11の中心孔に締結部材40のボルト41を挿通させた状態で、当該ボルト41を固定壁面103aの締結孔104に差し込んで螺合させる。
【0037】
このとき、コネクタ1は、ボルト41が筒状部11Aの中心を嵌合方向Xに沿って貫通しているため、固定壁面103aに対するコネクタ1の傾きが抑制される。そして、作業者は、さらにボルト41を締め込むことで、筒状部11Aが相手側コネクタ110に嵌合すると共に、端子3が相手側コネクタ110の端子と接続される。このように、締結部材40のボルト41は、筒状部11Aと相手側コネクタ110との嵌合時のアシストボルトとして機能する。
【0038】
従来のコネクタでは、ボルト41が筒状部11Aの外側、すなわち筒状部11Aの中心部から離れた位置に設けられているため、ボルト41の締結時にコネクタ1が固定壁面103aに対して傾いてしまう虞があった。その点、本実施形態によれば、ボルト41が筒状部11Aの中心部を嵌合方向Xに沿って貫通しているため、ボルト41の締結時にコネクタ1が固定壁面103aに対して傾いてしまうことを抑制できる。したがって、端子3が相手側コネクタ110の端子に対して傾いた状態で接触して、両端子3間でこじり等が発生することを抑制できる。
【0039】
以上のように、本実施形態のコネクタ1およびワイヤハーネスWHは、電線Wの端末に設けられた端子3を内部に保持し、相手装置100(接続対象)の相手側コネクタ110と嵌合方向Xに沿って嵌合される筒状部11Aを有したケーシング2と、筒状部11Aの外周面と相手側コネクタ110との間の環状の空間をシールするパッキン30と、ケーシング2の嵌合方向Xの一端面に形成された貫通孔2aから筒状部11Aの内部を嵌合方向Xに沿って貫通するように取り付けられ、筒状部11Aと相手側コネクタ110とが嵌合された状態で、相手装置100の固定壁面103aに固定される締結部材40と、締結部材40の外周面と貫通孔2aの内面との間の環状の隙間をシールするシール部材50と、を備える。この構成により、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、シール部材50によって筒状部11Aの内側、すなわちパッキン30による防水領域の内側に締結部材40を設けることができる。この結果、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、ケーシング2の大型化を抑制することができ、ひいてはケーシング2をより小型に構成することができる。
【0040】
また、本実施形態のコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、締結部材40は、貫通孔2aに挿通されるボルト41と、ボルト41の頭部41aと貫通孔2aの周縁部との間に介在される環状の座金本体42aと、座金本体42aの内面とボルト41の軸部41bとの間に介在されシール部材50と嵌合方向Xに隣接する環状の止水ゴム42bと、を有した防水座金42と、を含んで構成される。この構成により、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、締結部材40の防水座金42によって貫通孔2aからケーシング2の内部、すなわちパッキン30による防水領域の内側への水の浸入をより一層抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態のコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、電線Wは、ケーシング2に対して嵌合方向Xと交差する高さ方向Zに沿って引き出される。この構成により、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、当該コネクタ1およびワイヤハーネスWHをより簡素に構成することができ、ひいてはケーシング2の嵌合方向Xの一端面に比較的容易に貫通孔2aに挿通される締結部材40や、締結部材40の外周面と貫通孔2aの内面との間の隙間をシールするシール部材50等を設けることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、電線Wは、ケーシング2に対して嵌合方向Xと交差する高さ方向Zに沿って引き出された場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、ケーシング2に対して嵌合方向Xに沿って電線Wが引き出されてもよいし、幅方向Yに沿って電線Wが引き出されてもよい。また、本実施形態では、ケーシング2は、ハウジング10とシールドシェル20とを含む複数の部品の組み合わせによって構成された場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、一つの部品によってケーシング2が構成されてもよい。また、パッキン60は、例えば、ハウジング10とシールドシェル20との間に設けられてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 コネクタ
2 ケーシング
2a 貫通孔
3 端子
11A 筒状部
30 パッキン
40 締結部材
41 ボルト
41a 頭部
41b 軸部
42 防水座金
42a 座金本体
42b 止水ゴム
50 シール部材
100 相手装置(接続対象)
103a 固定壁面
110 相手側コネクタ
W 電線
WH ワイヤハーネス
X 嵌合方向
Z 高さ方向

図1
図2
図3
図4
図5