(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060425
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/10 20060101AFI20250403BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
B32B5/10
B32B5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144417
(22)【出願日】2024-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2023169321
(32)【優先日】2023-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024023760
(32)【優先日】2024-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
(72)【発明者】
【氏名】小岸 優太
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AD11A
4F100AD11C
4F100AD11H
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK21B
4F100AK25C
4F100AK41A
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100AK51C
4F100AK73B
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA01A
4F100CA02A
4F100CA02B
4F100CA13A
4F100CA13C
4F100DD31B
4F100DD31C
4F100DD32B
4F100DD32C
4F100DG03A
4F100DG04A
4F100DG12B
4F100DG15B
4F100DH01B
4F100DH02A
4F100DH02B
4F100EH46C
4F100JL09
(57)【要約】
【課題】樹脂成形体の耐候性を高めるために、樹脂成形体の表面上に高い耐候性を有する塗膜を形成して複合体とする方法があるが、樹脂成形体の表面上に塗膜を形成する方法では、製造工程が煩雑になり、生産性が低下する。かかる事情を鑑み、複合体の耐候性及び生産性の向上を図る。
【解決手段】 樹脂成形体と、前記樹脂成形体の表面の一部又は全部を覆うシートと、を有し、前記樹脂成形体は、樹脂硬化物と、1本以上の繊維と、を有し、前記シートは、基材層と前記基材層の一方の面に位置するコーティング層と、を有し、前記基材層は、前記コーティング層よりも前記樹脂成形体寄りに位置していることよりなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体と、前記樹脂成形体の表面の一部又は全部を覆うシートと、を有し、
前記樹脂成形体は、樹脂硬化物と、1本以上の繊維と、を有し、
前記シートは、基材層と前記基材層の一方の面に位置するコーティング層と、を有し、
前記基材層は、前記コーティング層よりも前記樹脂成形体寄りに位置している、複合体。
【請求項2】
前記樹脂成形体は、2本以上の繊維を含み、
前記2本以上の繊維は、互いに平行であり、
前記シートは、前記樹脂成形体における前記繊維の長さ方向と平行な面の一部又は全部に位置する、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記樹脂成形体は、多角柱状であり、
前記樹脂成形体に含まれる前記繊維は、前記樹脂成形体の一方の端面から他方の端面に向かって伸び、
前記シートは、前記樹脂成形体の側面の一部又は全部に位置する、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記基材層は、繊維を含む、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項5】
前記基材層は、ガラス繊維マット、ガラス繊維クロス又は不織布である、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項6】
金型内に前記シートを配置する工程と、
前記繊維と樹脂組成物とを前記金型内に充填する工程と、
前記金型内で前記樹脂組成物を硬化させて、複合体とする工程と、
を有する、請求項1又は2に記載の複合体の製造方法。
【請求項7】
前記2本以上の前記繊維を一方向に引き揃えた繊維束を、前記繊維束の長さ方向に進行させつつ、前記繊維束に樹脂組成物を供給する工程と、
前記供給した樹脂組成物を前記繊維束に含浸させて、樹脂含浸繊維束を得る工程と、
前記樹脂含浸繊維束の表面に前記シートを配置する工程と、
前記樹脂含浸繊維束を前記シートと共に成形用通路を通過させ、前記樹脂組成物を硬化させて、連続複合体とする工程と、
前記連続複合体を任意の長さに切断する工程と、
を有する、請求項2に記載の複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体とシートとを備える複合体に関する。また、本発明は、複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材等の構造材として、木材等に代えて樹脂成形体が用いられることがある。例えば、鉄道用枕木として、木枕木及びコンクリート枕木に代えて樹脂成形体の枕木が用いられることがある。樹脂成形体は、一般的に、軽量でありながら、機械的強度が高いという特性を有する。
【0003】
樹脂成形体の一例として、下記の特許文献1には、発泡性樹脂組成物の硬化物と、複数の長繊維補強材が一方向に引き揃えられて形成された繊維束とを含む長繊維補強発泡成形体が開示されている。長繊維補強発泡成形体は、長繊維束に発泡性樹脂組成物を含浸させて樹脂含浸繊維束を得る工程と、樹脂含浸繊維束の表面に多孔質シートを配置する工程と、樹脂含浸繊維束を多孔質シートと共に成形用通路内を通過させ、発泡性樹脂組成物を発泡及び硬化させる工程とを備える製造方法により製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の樹脂成形体では、耐候性を十分に高めることができないことがある。具体的には、樹脂成形体に長時間(例えば、500時間)にわたり光が照射された場合に、樹脂成形体の表面に色むらが発生したり、樹脂成形体中の繊維が露出したりすることがある。樹脂成形体の表面に色むらが発生した場合には、樹脂成形体の外観の品質が悪化するという課題がある。また、樹脂成形体中の繊維が露出した場合には、樹脂成形体の機械的強度が低下するという課題がある。
【0006】
従来の樹脂成形体の耐候性を高めるために、樹脂成形体の表面上に高い耐候性を有する塗膜を形成して複合体とする方法がある。しかしながら、樹脂成形体の表面上に塗膜を形成する方法では、製造工程が煩雑になり、生産性が低下するという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、耐候性に優れ、かつ生産性に優れる複合体を提供することである。また、本発明は、複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、以下の複合体及び複合体の製造方法を開示する。
<1>
樹脂成形体と、前記樹脂成形体の表面の一部又は全部を覆うシートと、を有し、
前記樹脂成形体は、樹脂硬化物と、1本以上の繊維と、を有し、
前記シートは、基材層と前記基材層の一方の面に位置するコーティング層と、を有し、
前記基材層は、前記コーティング層よりも前記樹脂成形体寄りに位置している、複合体。
<2>
前記樹脂成形体は、2本以上の繊維を含み、
前記2本以上の繊維は、互いに平行であり、
前記シートは、前記樹脂成形体における前記繊維の長さ方向と平行な面の一部又は全部に位置する、<1>に記載の複合体。
<3>
前記樹脂成形体は、多角柱状であり、
前記樹脂成形体に含まれる前記繊維は、前記樹脂成形体の一方の端面から他方の端面に向かって伸び、
前記シートは、前記樹脂成形体の側面の一部又は全部に位置する、<2>に記載の複合体。
<4>
前記基材層は、繊維を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の複合体。
<5>
前記基材層は、ガラス繊維マット、ガラス繊維クロス又は不織布である、<1>~<4>のいずれかに記載の複合体。
【0009】
<6>
金型内に前記シートを配置する工程と、
前記繊維と樹脂組成物とを前記金型内に充填する工程と、
前記金型内で前記樹脂組成物を硬化させて、複合体とする工程と、
を有する、<1>~<5>のいずれかに記載の複合体の製造方法。
<7>
前記繊維が2本以上の長繊維を含み
前記2本以上の前記繊維を一方向に引き揃えた繊維束を、前記繊維束の長さ方向に進行させつつ、前記繊維束に樹脂組成物を供給する工程と、
前記供給した樹脂組成物を前記繊維束に含浸させて、樹脂含浸繊維束を得る工程と、
前記樹脂含浸繊維束の表面に前記シートを配置する工程と、
前記樹脂含浸繊維束を前記シートと共に成形用通路を通過させ、前記樹脂組成物を硬化させて、連続複合体とする工程と、
前記連続複合体を任意の長さに切断する工程と、
を有する、<1>~<6>のいずれかに記載の複合体の製造方法。
<8>
前記連続複合体を任意の長さに切断した後に、前記複合体の切断面に塗膜を形成する工程を有する、<7>に記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る複合体は、樹脂成形体と、樹脂成形体の表面上に配置されたシートとを備える。本発明に係る複合体では、樹脂成形体が、繊維と、樹脂組成物の硬化物とを含む。本発明に係る複合体では、シートが、基材層と、基材層の表面上に配置されたコーティング層とを有し、シートが、シートにおける基材層側から樹脂成形体の表面上に積層されている。本発明に係る複合体では、上記の構成が備えられているので、耐候性に優れ、かつ生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る複合体を模式的に示す斜視図である。(b)複合体を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る複合体の製造方法(連続式製造方法)を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る複合体の製造方法(連続式製造方法)における成形用通路を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る複合体を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る複合体を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態に係る複合体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る複合体は、樹脂成形体と、樹脂成形体の表面上に配置されたシートとを備える。本発明に係る複合体では、樹脂成形体が、繊維と、樹脂組成物の硬化物とを含む。本発明に係る複合体では、シートが、基材層と、基材層の表面上に配置されたコーティング層とを有し、シートが、シートにおける基材側から樹脂成形体の表面上に積層されている。
即ち、本発明に係る複合体は、樹脂成形体と、樹脂成形体の表面の一部又は全部を覆うシートとを備える。
【0014】
本発明に係る複合体では、上記の構成が備えられているので、耐候性に優れる。具体的には、本発明に係る複合体では、上記の構成が備えられているので、複合体に長時間(例えば、500時間)にわたり光が照射された場合にも、複合体の表面に色むらが発生することを抑制することができる。結果として、複合体の外観の品質を維持することができる。また、本発明に係る複合体では、上記の構成が備えられているので、複合体に長時間(例えば、500時間)にわたり光が照射された場合にも、複合体(特に、樹脂成形体)中の繊維が露出することを抑制することができる。結果として、複合体の機械的強度を維持することができる。本発明に係る複合体では、上記の構成が備えられているので、樹脂成形体(樹脂組成物の硬化物)が比較的耐候性の低い樹脂(例えば、ウレタン樹脂)を含む場合にも、複合体の耐候性を高めることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る複合体では、上記の構成が備えられているので、生産性に優れる。
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、大きさ、厚み、及び形状等は、図示の便宜上、実際の大きさ、厚み、及び形状等と異なる場合がある。
【0017】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る複合体を模式的に示す斜視図であり、
図1(b)は、該複合体を模式的に示す断面図である。
図1(b)は、
図1(a)のI-I線に沿う断面図である。
【0018】
図1(a)及び(b)の複合体10は、樹脂成形体9と、樹脂成形体9の表面上に配置されたシート8とを備える。複合体10では、樹脂成形体9が、繊維6と、樹脂組成物の硬化物(樹脂硬化物)5Xとを含む。複合体10では、シート8が、基材層8Aと、基材層8Aの表面(一方の面)上に配置されたコーティング層8Bとを有し、シート8が、シート8における基材層8A側から樹脂成形体9の表面上に積層されている。
即ち、複合体10は、樹脂成形体9と、樹脂成形体9の表面に位置するシート8とを備え、シート8は、基材層8Aと基材層8Aの一方の面に位置するコーティング層8Bとを有し、複合体10の状態で、基材層8Aはコーティング層8Bよりも樹脂成形体9寄りに位置している。
【0019】
複合体10及び樹脂成形体9は、四角柱状である。複合体10及び樹脂成形体9は、側面視で一方を長手とする直方体状である。複合体10及び樹脂成形体9は、端面と側面とを備える。具体的には、複合体10及び樹脂成形体9は、長さ方向の両端に位置する2つの端面と、2つの端面を繋ぐ4つの側面とを備える。樹脂成形体9は、端面として、面9b、及び面9bと合同かつ平行な面(
図1(a)で隠れている面)を有する。樹脂成形体9は、側面として、底面(面9b、及び面9bと合同かつ平行な面)以外の面を有する。樹脂成形体9は、側面として、面9a、面9aと平行な面(
図1(a)で隠れている面)、面9c、及び面9cと平行な面(
図1(a)で隠れている面)を有する。なお、複合体10は、一の端面が下側に向けられて用いられてもよく、一の側面が下側に向けられて用いられてもよい。
【0020】
複合体10では、シート8は、樹脂成形体9の全ての表面上に配置されている。即ち、複合体10では、シート8は、樹脂成形体9の全ての端面及び側面に位置している。
【0021】
複合体10では、樹脂成形体9における繊維6が、繊維束を含む。複合体10では、樹脂成形体9における繊維6が、2本以上の長繊維を含む。複合体10では、繊維6(2本以上の長繊維)は、一方向に引き揃えられている。
即ち、樹脂成形体9は、長さ方向(一方の端面から他方の端面に向かう方向)に伸びる繊維束を有する。
【0022】
複合体10では、樹脂成形体9における繊維6(繊維束)の長さ方向が、樹脂成形体9の側面(面9a、面9aと合同かつ平行な面、面9c、及び面9cと合同かつ平行な面)に平行である。樹脂成形体9が、繊維6(繊維束)の長さ方向に平行な側面(面9a、面9aと合同かつ平行な面、面9c、及び面9cと合同かつ平行な面)を有するように、繊維6(繊維束)が、樹脂成形体9に含まれている。即ち、複合体10では、シート8が、樹脂成形体9における繊維6(繊維束)の長さ方向に平行な面(樹脂成形体9の側面)の表面上に位置している。
【0023】
<樹脂成形体>
樹脂成形体9は、2本以上の繊維6と、樹脂硬化物5Xとを有する。即ち、樹脂成形体9は、樹脂硬化物5Xと、樹脂硬化物5X内に存在する繊維6とを有する。
繊維6は、2本以上の長繊維の束(繊維束)でもよいし、短繊維でもよいし、長繊維と短繊維とが混在してもよい。
樹脂成形体9が繊維束を含む場合、樹脂硬化物5Xは、繊維束の繊維同士の隙間に含浸している。
【0024】
本実施形態の樹脂成形体9は、直方体状であるが、本発明はこれに限定されない。樹脂成形体9は、柱状であってもよく、球状であってもよい。樹脂成形体9は、柱状であることが好ましい。
樹脂成形体9は、円柱状であってもよく、多角柱状であってもよい。複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、樹脂成形体9は、多角柱状であることが好ましい。樹脂成形体9は、三角柱状であってもよく、四角柱状であってもよく、五角柱状であってもよく、八角柱状であってもよい。樹脂成形体は、立方体状であってもよく、直方体状であってもよい。
【0025】
樹脂成形体の大きさは、特に限定されない。樹脂成形体の大きさは、複合体の用途及び樹脂成形体中の繊維の長さに応じて適宜選択することができる。
【0026】
≪繊維≫
樹脂成形体9における繊維6としては、短繊維、及び長繊維が挙げられる。繊維6は、短繊維であってもよく、長繊維であってもよい。繊維6は、短繊維と長繊維とを含んでいてもよい。長繊維の繊維長については、例えば、平均繊維長が50mm以上である。短繊維の繊維長については、例えば、平均繊維長が2mm以上50mm未満である。
【0027】
複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、繊維6は、長繊維を含むことが好ましく、強化長繊維を含むことがより好ましい。強化長繊維は、強化繊維であり、長繊維である。強化繊維は、一定の強度を持つ繊維状物である。強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びアラミド繊維等が知られている。強化長繊維は、強化長繊維シートであってもよい。
【0028】
強化長繊維としては、炭素長繊維、ガラス長繊維、アラミド長繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、及び長尺強化繊維等が挙げられる。強化長繊維は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、強化長繊維は、ガラス長繊維であることが好ましい。ガラス長繊維とは、ガラスが融解、牽引されて繊維状にされた繊維状物である。
【0030】
複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、強化長繊維の繊維長は、50mm以上であることが好ましく、70mm以上であることがより好ましい。なお、強化長繊維は、引抜成形後に所望の大きさで裁断することができ、裁断する長さによって強化長繊維の繊維長を適宜変えることができるため、強化長繊維の繊維長の上限は、特に限定されない。寸法精度を高める観点からは、強化長繊維の繊維長は、10m以下であってもよい。また、強化長繊維の繊維長が長くても、強化長繊維以外の成分を含む組成物を強化長繊維に含浸させることにより、強化長繊維が切断されたり、絡み合ったりしにくくすることができる。また、樹脂成形体9は、引抜成形することにより、強化長繊維の配合割合を多くしても成形可能である。
【0031】
強化長繊維の繊維長は、強化長繊維自体又は樹脂成形体に含まれている強化長繊維を、マイクロスコープ写真などの画像解析を用いたり、直尺又はノギスなどの寸法測定器具を用いたりして測定することができる。
【0032】
強化長繊維の繊維長は、任意に選択した100個以上の強化長繊維の繊維長の平均値である。なお、得られるマイクロスコープ写真に100個以上の強化長繊維が存在しない場合には、強化長繊維の数が100個以上となるまで、新たな領域をマイクロスコープで撮影する。
【0033】
強化長繊維は、モノフィラメントであってもよく、フィブリル化繊維(髭状に繊維が突き出た物質)であってもよい。
【0034】
樹脂成形体9における繊維6は、2本以上の長繊維を含むことが好ましい。樹脂成形体における2本以上の長繊維は、互いに平行に位置することが好ましい。
【0035】
複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、樹脂成形体9における繊維6は、繊維束を含むことが好ましく、強化長繊維を含む繊維束がより好ましい。繊維束では、2本以上の長繊維が、一方向に引き揃えられている。繊維束は、互いに平行に位置する2本以上の長繊維を含むことが好ましい。複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高める観点からは、樹脂成形体9が繊維束の長さ方向に平行な面を有するように、繊維束が樹脂成形体9に含まれていることが好ましい。複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高める観点からは、シート8は、樹脂成形体9における繊維束の長さ方向に平行な面(側面)の表面に位置することが好ましい。樹脂成形体9が繊維束の長さ方向に平行な面を少なくとも1つ有するように、繊維束が樹脂成形体9に含まれていてもよい。樹脂成形体9が繊維束の長さ方向に平行な面を少なくとも2つ有するように、繊維束が樹脂成形体9に含まれていてもよい。樹脂成形体9が繊維束の長さ方向に平行な面を少なくとも4つ有するように、繊維束が樹脂成形体9に含まれていてもよい。
【0036】
樹脂成形体9が多角柱状である場合に、繊維束の長さ方向は、樹脂成形体9の端面に平行であってもよく、側面に平行であってもよい。複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高める観点からは、繊維束の長さ方向は、樹脂成形体9の側面に平行であることが好ましい。複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高める観点からは、樹脂成形体9が多角柱状である場合に、樹脂成形体9が繊維束の長さ方向に平行な側面を有するように、繊維束が樹脂成形体9に含まれていることが好ましい。複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高める観点からは、樹脂成形体9が多角柱状である場合に、樹脂成形体9が繊維束の長さ方向に平行な側面を有するように、繊維束が樹脂成形体9に含まれており、シート8は、樹脂成形体9の側面に位置することが好ましい。なお、本明細書において、樹脂成形体9が四角柱状(特に、直方体状)である場合には、四角柱において最も長い辺を有する4面を側面とし、最も長い辺以外の辺で形成される2面を端面とする。即ち、四角柱における長さ方向の両端が端面であり、長さ方向に平行な面が側面である。この場合に、四角柱の長さ方向の両側に2つの端面が位置する。
【0037】
樹脂成形体9が円柱状である場合に、繊維束の長さ方向は、樹脂成形体9の端面に平行でもよく、側面に平行でもよい。複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高める観点からは、樹脂成形体9が円柱状である場合に、繊維束の長さ方向は、樹脂成形体9の側面に平行であることが好ましい。複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高める観点からは、樹脂成形体9が円柱状である場合に、樹脂成形体9が繊維束の長さ方向に平行な側面を有するように、樹脂成形体9に含まれており、シート8は、樹脂成形体9の側面に位置することが好ましい。
【0038】
複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、樹脂成形体9が繊維束を含む場合に、樹脂硬化物5Xは、繊維束の繊維間に含浸していることが好ましい。
【0039】
強化長繊維は、ロービング及びヤーン等のストランドがバインダーに付着された紐状の繊維であってもよい。複合体10の製造において、繊維間に樹脂組成物を容易に含浸させ、樹脂成形体9を容易に成形し、かつ複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、強化長繊維は、ロービングがバインダーに付着された紐状の繊維であることが好ましい。
【0040】
複合体10の製造において、繊維間に樹脂組成物を容易に含浸させ、樹脂成形体9を容易に成形し、かつ複合体10の機械的強度をより一層高める観点からは、強化長繊維は、ガラス長繊維のモノフィラメントが引き揃えられて、ロービングにされた繊維であることが特に好ましい。
【0041】
モノフィラメントの繊維径の下限値は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。モノフィラメントの繊維径の上限値は、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。モノフィラメントの繊維径が上記下限値以上かつ上記上限値以下であると、複合体10の製造において、繊維間に樹脂組成物を含浸させやすくなり、樹脂成形体9を容易に成形し、かつ複合体10の機械的強度をより一層高めることができる。
【0042】
繊維径は、平均径であることが好ましい。平均径とは、数平均径であり、ランダムに選択した100個の繊維の繊維径の相加平均値である。また、繊維径とは、繊維の長さ方向に直交する方向に沿った断面の円相当径の直径を意味する。
【0043】
樹脂成形体9の総質量(100質量%)に対して、繊維6の含有量の下限値は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。樹脂成形体9の総質量(100質量%)に対して、繊維6の含有量の上限値は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。繊維6の含有量が上記下限値以上であると、複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高めることができる。繊維6の含有量が上記上限値以下であると、複合体10の製造において、繊維間に樹脂組成物を含浸させやすくなり、樹脂成形体9の比重のばらつきを小さくすることができ、複合体10の耐摩耗性及び曲げ弾性率を高めることができる。
【0044】
樹脂硬化物5Xの100質量部に対して、繊維6の含有量の下限値は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。樹脂硬化物5Xの100質量部に対して、繊維6の含有量の上限値は、好ましくは380質量部以下、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。繊維6の含有量が上記下限値以上であると、複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高めることができる。繊維6の含有量が上記上限値以下であると、複合体10の製造において、繊維間に樹脂組成物を含浸させやすくなり、樹脂成形体9の比重のばらつきを小さくすることができ、複合体10の耐摩耗性及び曲げ弾性率を高めることができる。
【0045】
樹脂成形体9の材料である樹脂組成物に対する繊維6の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。樹脂組成物に対する繊維6の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは380質量部以下、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。繊維6の含有量が上記下限値以上であると、樹脂成形体9の機械的強度及び耐候性をより一層高めることができる。繊維6の含有量が上記上限値以下であると、複合体10の製造において、繊維間に樹脂組成物を含浸させやすくなり、樹脂成形体9の比重のばらつきを小さくすることができ、複合体10の耐摩耗性及び曲げ弾性率を高めることができる。
【0046】
樹脂組成物がポリオール化合物とイソシアネート化合物とを含む場合に、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との合計100質量部に対して、繊維6の含有量の下限値は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。樹脂組成物がポリオール化合物とイソシアネート化合物とを含む場合に、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との合計100質量部に対して、繊維6の含有量の上限値は、好ましくは380質量部以下、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。繊維6の含有量が上記下限値以上であると、複合体10の機械的強度及び耐候性をより一層高めることができる。繊維6の含有量が上記上限値以下であると、複合体10の製造において、繊維間に樹脂組成物を含浸させやすくなり、樹脂成形体9の比重のばらつきを小さくすることができ、複合体10の耐摩耗性及び曲げ弾性率を高めることができる。
【0047】
<樹脂硬化物>
樹脂硬化物5Xは、樹脂組成物の硬化物である。樹脂組成物は、樹脂を含む。樹脂としては、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。樹脂組成物中の樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
ビニル樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。熱可塑性ブロック共重合体としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0049】
樹脂硬化物5X及び樹脂成形体9の加工性を良好にする観点からは、樹脂硬化物5Xは、ウレタン樹脂を含むことが好ましい。ウレタン樹脂は、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との反応により得ることができる。ウレタン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
樹脂硬化物5X及び樹脂成形体9の加工性を良好にする観点からは、樹脂組成物は、ポリオール化合物とイソシアネート化合物とを含むことが好ましい。
【0051】
ポリオール化合物とは、2個以上の水酸基(-OH基)を有する化合物である。
ポリオール化合物における水酸基の個数は、2個であってもよく、2個以上であってもよく、3個であってもよく、3個以上であってもよく、4個であってもよく、4個以上であってもよい。ポリオール化合物における水酸基の個数は、6個以下であってもよく、5個以下であってもよく、4個以下であってもよい。樹脂組成物の硬化物及び樹脂成形体の加工性を良好にする観点からは、ポリオール化合物における水酸基の個数は、3個以上4個以下であることが好ましい。
【0052】
ポリオール化合物としては、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリオール化合物は、ポリマーポリオールであってもよい。ポリオール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
樹脂硬化物5X及び樹脂成形体9の加工性を良好にする観点からは、ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールであることが好ましい。
【0054】
イソシアネート化合物とは、イソシアネート基(-NCO基)を有する化合物である。
【0055】
イソシアネート化合物におけるイソシアネート基の個数は、1個であってもよく、2個であってもよく、2個以上であってもよく、3個であってもよく、3個以上であってもよく、4個であってもよく、4個以上であってもよい。イソシアネート化合物におけるイソシアネート基の個数は、6個以下であってもよく、5個以下であってもよく、4個以下であってもよい。
【0056】
硬化反応性を高める観点からは、イソシアネート化合物におけるイソシアネート基の個数は、2個以上であることが好ましい。すなわち、イソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物(イソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物)であることが好ましい。
【0057】
イソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
入手が容易であり、利便性に優れることから、イソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又は変性ジフェニルメタンジイソシアネートであることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートであることがより好ましい。
【0059】
ポリオール化合物とイソシアネート化合物とは、ウレタン結合を効率的に形成するように、適宜の配合量で用いることができる。ポリオール化合物100質量部に対して、イソシアネート化合物の含有量の下限値は、好ましくは100質量部以上、より好ましくは120質量部以上、さらに好ましくは130質量部以上である。ポリオール化合物100質量部に対して、イソシアネート化合物の含有量の上限値は、好ましくは180質量部以下、より好ましくは160質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。イソシアネート化合物の含有量が上記範囲内であると、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との反応効率を高めることができ、未反応のポリオール化合物又は未反応のイソシアネート化合物をより一層少なくすることができる。結果として、良好な曲げ弾性率を有する複合体10又は樹脂成形体9が得られる。
【0060】
樹脂硬化物5Xは、発泡樹脂体であってもよく、非発泡樹脂体であってもよい。樹脂成形体9を軽量化する観点からは、樹脂硬化物5Xは、発泡樹脂体であることが好ましい。
【0061】
樹脂硬化物5Xが発泡樹脂体である場合には、樹脂硬化物5Xの密度の下限値は、好ましくは0.4g/cm3以上、より好ましくは0.6g/cm3以上である。樹脂硬化物5Xの密度の上限値は、好ましくは1.2g/cm3以下、より好ましくは1.0g/cm3以下である。樹脂硬化物5Xの密度が上記下限値以上であると、複合体10の機械的強度をより一層高めることができる。樹脂硬化物5Xの密度が上記上限値以下であると、複合体10を軽量化することができる。樹脂硬化物5Xの密度は、発泡剤の量及び発泡剤の種類の組み合わせ等で調節することができる。
【0062】
複合体100質量%中、樹脂硬化物5Xの含有量の下限値は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。複合体100質量%中、樹脂硬化物5Xの含有量の上限値は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。樹脂硬化物5Xの含有量が上記下限値以上であると、樹脂成形体9の製造において、繊維6に樹脂組成物をより均一に含浸させることができる。樹脂硬化物5Xの含有量が上記上限値以下であると、複合体10の機械的強度をより一層高めることができる。
【0063】
樹脂組成物は、樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。即ち、樹脂硬化物5Xは、樹脂以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、着色剤、発泡剤、整泡剤、触媒、難燃剤、及び珪砂等が挙げられる。他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
樹脂組成物は、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。樹脂組成物は、着色剤を含むことが好ましい。即ち、樹脂硬化物5Xは、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよく、含むことが好ましい。着色剤としては、顔料、及び染料等が挙げられる。複合体の耐候性(特に、色むらの抑制性)をより一層高める観点からは、樹脂組成物又は樹脂硬化物5X中の着色剤は、顔料を含むことが好ましい。樹脂組成物又は樹脂硬化物5X中の着色剤は、黒色顔料を含むことが好ましく、カーボンブラックを含むことがより好ましい。
【0065】
複合体10の耐候性(特に、色むらの抑制性)をより一層高め、複合体10の外観の品質を向上させる観点からは、樹脂硬化物5X及びシート8(特に、コーティング層8B)が着色剤を含み、かつ樹脂硬化物5X中の着色剤とシート8(特に、コーティング層8B)中の着色剤とが同色であることが好ましい。樹脂硬化物5X中の着色剤とシート8(特に、コーティング層8B)中の着色剤とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0066】
発泡剤とは、分解により気体を生じる物質又はそれ自体気体となる物質である。
【0067】
樹脂組成物は、発泡剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。軽量である複合体10又は樹脂成形体9を得る観点からは、樹脂組成物は、発泡剤を含むことが好ましい。樹脂組成物が発泡剤を含む場合には、樹脂成形体9の樹脂硬化物5Xは発泡樹脂体となる。発泡樹脂体は、軽量であるという利点を有する。
【0068】
発泡剤としては、水、及び有機ハロゲン化合物等が挙げられる。入手が容易であり、利便性に優れることから、発泡剤は水であることが好ましい。水は、イソシアネート化合物と反応してCO2を発生させることにより発泡剤として作用する。発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
有機ハロゲン化合物としては、有機塩素化合物、有機フッ素化合物、有機臭素化合物、及び有機ヨウ素化合物等が挙げられる。有機ハロゲン化合物は、水素原子の全てがハロゲン原子で置換された有機ハロゲン化合物であってもよく、水素原子の一部がハロゲン原子で置換された有機ハロゲン化合物であってもよい。樹脂成形体の形成時の発泡性を良好にし、樹脂成形体の熱伝導率を長期にわたり低く維持する観点からは、有機ハロゲン化合物は、有機塩素化合物、又は有機フッ素化合物であることが好ましい。
【0070】
有機塩素化合物としては、飽和有機塩素化合物、及び不飽和有機塩素化合物等が挙げられる。飽和有機塩素化合物としては、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、及びイソペンチルクロライド等が挙げられる。樹脂成形体の形成時の発泡性を良好にし、樹脂成形体の熱伝導率をより一層長期にわたり低く維持する観点からは、有機塩素化合物は、飽和有機塩素化合物であることが好ましく、炭素数が2~5の飽和有機塩素化合物であることがより好ましい。
【0071】
有機フッ素化合物としては、飽和有機フッ素化合物、及び不飽和有機フッ素化合物等が挙げられる。
【0072】
飽和有機フッ素化合物としては、ハイドロフルオロカーボン等が挙げられる。ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等が挙げられる。
【0073】
不飽和有機フッ素化合物としては、ハイドロフルオロオレフィン等が挙げられる。ハイドロフルオロオレフィンとしては、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)(E及びZ異性体)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)(E及びZ異性体)等が挙げられる。
【0074】
さらに、有機フッ素化合物としては、塩素原子とフッ素原子と炭素-炭素2重結合とを有する化合物も挙げられる。塩素原子とフッ素原子と炭素-炭素2重結合とを有する化合物としては、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエテン(E及びZ異性体)、及びヒドロクロロフルオロオレフィン等が挙げられる。ヒドロクロロフルオロオレフィンとしては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)(E及びZ異性体)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)(E及びZ異性体)、1-(4)クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)(E及びZ異性体)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)(E及びZ異性体)、2-クロロ-2,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)(E及びZ異性体)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd)(E及びZ異性体)、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E及びZ異性体)、及び2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(E及びZ異性体)等が挙げられる。
【0075】
樹脂成形体9の形成時の発泡性を良好にし、樹脂成形体9の熱伝導率をより一層長期にわたり低く維持する観点からは、有機ハロゲン化合物は、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボン又はハイドロフルオロオレフィンであることが好ましい。
【0076】
発泡性を考慮して、発泡剤は、適宜の含有量で用いることができる。ポリオール化合物100質量部に対して、発泡剤の含有量(複数の発泡剤を用いる場合には合計の含有量)の下限値は、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。ポリオール化合物100質量部に対して、発泡剤の含有量の上限値は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。発泡剤の含有量が上記下限値以上であると、発泡が促進され、樹脂成形体9が良好に形成され、樹脂成形体9の寸法不良が発生しにくくなる。発泡剤の含有量が上記上限値以下であると、過度の発泡により金型から樹脂組成物が溢れ出ることを抑えることができる。
【0077】
樹脂硬化物5X中のウレタン樹脂の発泡倍率(即ち、樹脂硬化物5Xの発泡倍率)の下限値は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。樹脂硬化物5X中のウレタン樹脂の発泡倍率の上限値は、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下である。発泡倍率が上記下限値以上であると、軽量な樹脂成形体9又は複合体10が得られやすい。発泡倍率が上記上限値以下であると、良好な曲げ弾性率を有する樹脂成形体9又は複合体10が得られやすい。
【0078】
整泡剤とは、気泡の粗大化、不均一化を防ぎ、気泡を安定かつ良好に形成させることができる物質である。
【0079】
樹脂組成物は、整泡剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。整泡剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、及びオルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等が挙げられる。整泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
整泡剤は、気泡が安定かつ良好に形成するように、適宜の含有量で用いることができる。気泡を安定かつ良好に形成する観点からは、ポリオール化合物100質量部に対して、整泡剤の含有量の下限値は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上である。ポリオール化合物100質量部に対して、整泡剤の含有量の上限値は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0081】
<シート>
シート8は、基材層8Aと、基材層8Aの表面上に配置されたコーティング層8Bとを有する。即ち、シート8は、基材層8Aと、基材層8Aの一方の面に位置するコーティング層8Bとを有する。なお、本発明はこれに限定されず、基材層8Aの他方の面に、他の層を有してもよい。他の層としては、コーティング層8Bと同様のコーティング層、接着層などを例示できる。
シート8は、シート8における基材層8A側から樹脂成形体9の表面上に積層されている。即ち、基材層8Aは、コーティング層8Bよりも樹脂成形体9寄りに位置している。複合体10では、シート8における基材層8Aと、樹脂成形体9とが接している。
本発明に係る複合体10では、上記の構成が備えられているので、耐候性に優れ、かつ生産性に優れる。より具体的には、本発明に係る複合体10では、上記の構成が備えられているので、樹脂成形体9の樹脂硬化物5Xが比較的耐候性の低い樹脂(例えば、ウレタン樹脂)を含む場合にも、複合体10の耐候性を高めることができる。
【0082】
また、シート8は、コーティング層8Bを有するので、複合体10の外観識別性、意匠性及び耐候性を高めることができる。
【0083】
シート8の厚みの下限値は、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上、特に好ましくは0.2mm以上である。シート8の厚みの上限値は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。シート8の厚みが上記下限値以上であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。シート8の厚みが上記上限値以下であると、シート8の可撓性を高めることができ、シート8をロール状で保管することができるので、複合体10の生産性をより一層高めることができる。
【0084】
≪基材層≫
基材層8Aの厚みの下限値は、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上、特に好ましくは0.2mm以上である。基材層8Aの厚みの上限値は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。基材層8Aの厚みが上記下限値以上であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。基材層8Aの厚みが上記上限値以下であると、シート8の可撓性を高めることができ、シート8をロール状で保管することができるので、複合体10の生産性をより一層高めることができる。
【0085】
複合体10の耐候性をより一層高める観点からは、基材層8Aは、繊維を含むことが好ましい。基材層8Aは、繊維のみにより形成されていてもよく、繊維と繊維以外の成分とにより形成されていてもよい。基材層8Aは、繊維と繊維以外の成分とを含んでいてもよい。繊維以外の成分としては、バインダー等が挙げられる。基材層8Aは、バインダーを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。基材層8Aは、溶融可能な繊維のみにより形成されていてもよい。
【0086】
基材層8Aにおける繊維としては、ガラス繊維、石綿、セピオライト、炭素繊維、ロックウール、樹脂繊維、及びパルプ等が挙げられる。基材層における繊維は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。樹脂繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン(ポリエチレン、及びポリプロピレン等)繊維、及びポリエチレンテレフタレート繊維等が挙げられる。
【0087】
複合体10の耐候性をより一層高める観点からは、基材層8Aにおける繊維は、ガラス繊維を含むことが好ましい。ガラス繊維を含む基材層8Aとしては、ガラス繊維マット、及びガラス繊維クロス等が挙げられる。
【0088】
繊維を含む基材層8Aは、不織布であってもよく、織布であってもよく、編布であってもよい。不織布は、一般に、繊維同士がランダムに結合されて作られるため、繊維間に空隙を含む多孔質構造(ポーラス構造)を有する。シートの通気性を高め、樹脂成形体とシートとの間に空気が溜まることによる複合体の膨張を防ぐ観点からは、繊維を含む基材層8Aは、不織布であることが好ましい。
【0089】
不織布としては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、及びスパンレース不織布等が挙げられる。
【0090】
織布としては、ガラス繊維クロス等が挙げられる。織布は、ガラス繊維クロスであってもよい。織布の表層は、プラズマ処理やフッ素ガス処理をしてもよい。
【0091】
複合体10の耐候性をより一層高める観点からは、基材層8Aは、ガラス繊維マット、ガラス繊維クロス、又は不織布であることが好ましく、ガラス繊維マット、又はガラス繊維クロスであることがより好ましい。
【0092】
基材層8Aにおける繊維の繊維径の下限値は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。基材層8Aにおける繊維の繊維径の上限値は、好ましくは24μm以下、より好ましくは14μm以下である。基材層8Aにおける繊維の繊維径が上記下限値以上であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。基材層8Aにおける繊維の繊維径が上記上限値以下であると、繊維表面のひびや欠け(表面欠陥)を抑制することができ、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。
【0093】
繊維径は、平均径であることが好ましい。平均径とは、数平均径であり、ランダムに選択した100個の繊維の繊維径の相加平均値である。また、繊維径とは、繊維の長さ方向に直交する方向に沿った断面において、該断面の円相当径の直径を意味する。
【0094】
基材層8Aの総質量(100質量%)に対して、基材層8Aにおける繊維の含有量の下限値は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。基材層8Aの総質量(100質量%)に対して、基材層8Aにおける繊維の含有量の上限値は、好ましくは100質量%以下である。基材層8Aにおける繊維の含有量が上記下限値以上かつ上記上限値以下であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。
【0095】
基材層8Aにおけるバインダーとしては、例えば、樹脂等が挙げられる。樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、及びポリエステル等が挙げられる。基材層におけるバインダーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
基材層8Aにおけるバインダーは、基材層8Aにおける繊維の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、基材層8Aにおける繊維がガラス繊維である場合には、基材層におけるバインダーは、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又は酢酸ビニル樹脂であることが好ましい。
【0097】
基材層8Aの総質量(100質量%)中、基材層8Aにおけるバインダーの含有量の上限値は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。基材層8Aにおけるバインダーの含有量が上記上限値以下であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。基材層8Aにおけるバインダーの含有量の下限値は、特に限定されない。基材層8Aの100質量%中、基材層8Aにおけるバインダーの含有量は、0質量%(不含)であってもよく、1質量%以上であってもよい。
【0098】
基材層8Aは、加工助剤を含んでいてもよい。加工助剤としては、フタル酸誘導体、金属炭酸塩、及び金属水酸化物等が挙げられる。加工助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
フタル酸誘導体としては、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0100】
金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0101】
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0102】
基材層8Aの目付量の下限値は、好ましくは20g/cm2以上、より好ましくは40g/cm2以上である。基材層8Aの目付量の上限値は、好ましくは200g/cm2以下、より好ましくは150g/cm2以下である。基材層8Aの目付量が下限値以上であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。基材層8Aの目付量が上限値以下であると、シート8の可撓性を高めることができ、シート8をロール状で保管することができるので、複合体10の生産性をより一層高めることができる。
【0103】
[基材層の目付量]/[基材層の厚み]で表され、基材層8Aの厚みに対する基材層8Aの目付量の比(目付/厚み比)の下限値は、好ましくは70kg/m3以上、より好ましくは90kg/m3以上、さらに好ましくは120kg/m3以上、特に好ましくは200kg/m3以上である。目付/厚み比の上限値は、好ましくは1000kg/m3以下、より好ましくは900kg/m3以下、さらに好ましくは700kg/m3以下である。目付/厚み比が上記下限値以上であると、シート8(特に、基材層8A)における空隙が過度に大きくなることを防ぎ、樹脂成形体9が複合体10の表面に露出することを防ぐことができる。目付/厚み比が上記上限値以下であると、シート8の通気性を高めることができ、樹脂成形体9とシート8との間に空気が溜まることによる複合体10の膨張を防ぐことができる。
【0104】
シート8(特に、基材層8A)が空隙を有する場合に、シート8における空隙等から樹脂成形体9の一部が露出していることがある。樹脂成形体9においてシート8が配置されている部分の表面積100%中、樹脂成形体9の露出している部分の面積の割合(%)を、割合Xとする。割合Xは、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、より一層好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。割合Xが上記上限値以下であると、複合体10の耐候性(特に、色むらの抑制性)をより一層高め、複合体10の外観の品質を向上させることができる。割合Xの下限値は、特に限定されない。割合Xは、0%以上であってもよく、1%以上であってもよい。複合体10の耐候性(特に、色むらの抑制性)をより一層高め、複合体10の外観の品質を向上させる観点からは、割合Xは、最も好ましくは0%である。
【0105】
樹脂成形体9においてシート8が配置されている部分の表面積100%中、樹脂成形体9の露出している部分の面積の割合(割合X)は、例えば、以下の方法で測定することができる。デジタルカメラ又は顕微鏡を用いて、複合体10の表面を撮影する。撮影した画像について、画像解析ソフト(例えば、三谷商事社製「WinRoof」等)を用いて、コントラストを測定する。コントラストが大きい部分を樹脂成形体9が露出している部分として、樹脂成形体9においてシート8が配置されている部分の表面積100%中の、樹脂成形体9の露出している部分の面積の割合を計算する。
【0106】
樹脂成形体9の表面積100%中、シート8が配置されている部分の表面積の割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。樹脂成形体の表面積100%中、シートが配置されている部分の表面積の割合が上記下限値以上であると、複合体10の耐候性(特に、色むらの抑制性)をより一層高め、複合体10の外観の品質を向上させることができる。樹脂成形体9の表面積100%中、シート8が配置されている部分の表面積の割合の上限は、特に限定されない。樹脂成形体9の表面積100%中、シートが配置されている部分の表面積の割合は、100%であってもよく、95%以下であってもよい。
【0107】
<コーティング層>
コーティング層8Bの厚みの下限値は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。コーティング層8Bの厚みの上限値は、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。コーティング層8Bの厚みが上記下限値以上であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。コーティング層8Bの厚みが上記上限値以下であると、シート8の可撓性を高めることができ、シート8をロール状で保管することができるので、複合体10の生産性をより一層高めることができる。なお、シート8では、コーティング層8Bの一部又は全部が基材層8Aに含浸していてもよい。即ち、シート8では、コーティング層8Bの一部又は全部が、基材層8Aの一部又は全部と一体化していてもよい。特に、基材層8Aが空隙を有する場合には、コーティング層8Bの一部又は全部が、基材層8Aの一部又は全部と一体化していることが好ましい。なお、コーティング層8Bの全部が基材層8Aの全部と一体化している場合に、コーティング層8bの厚みは、基材層8Aの厚み(シート8の厚み)と同一である。
【0108】
コーティング層8Bの材料は、硬化性樹脂を含むことが好ましい。即ち、コーティング層8Bは、硬化性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。コーティング層8Bの材料における硬化性樹脂は、コーティング層8Bに求める機能、及び基材層8Aとの密着性等を考慮して適宜選択することができる。コーティング層8Bの材料における硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、及びテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。コーティング層8Bの材料における硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
複合体10の耐候性をより一層高める観点からは、コーティング層8Bの材料は、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、又はアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0110】
また、コーティング層8Bは、可塑剤、分散剤、沈降防止剤、乳化剤、増粘剤、消泡剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、皮張り防止剤、乾燥剤、たれ防止剤、艶消し剤、着色剤、及び耐候性付与剤等を含んでいてもよい。
【0111】
着色剤としては、顔料、及び染料等が挙げられる。複合体10の耐候性(特に、色むらの抑制性)をより一層高め、複合体10の外観の品質を向上させる観点からは、コーティング層8B中の着色剤は、顔料を含むことが好ましく、カーボンブラックを含むことがより好ましい。
【0112】
コーティング層8Bの材料の総質量(100質量%)中、カーボンブラックの含有量の下限値は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。コーティング層8Bの材料の総質量(100質量%)中、カーボンブラックの含有量の上限値は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。カーボンブラックの含有量が上記下限値以上であると、コーティング層8Bを十分に着色することができる。カーボンブラックの含有量が上記上限値以下であると、コーティング層8Bの材料の流動性を高めることができ、作業性を高めることができる。
【0113】
耐候性付与剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び光安定剤等が挙げられる。
【0114】
コーティング層8Bの目付量の下限値は、好ましくは80g/m2以上、より好ましくは100g/m2以上である。コーティング層8Bの目付量の下限値は、好ましくは400g/m2以下、より好ましくは300g/m2以下である。コーティング層8Bの目付量が上記下限値以上であると、複合体10の耐候性をより一層高めることができる。コーティング層8Bの目付量が上記上限値以下であると、シート8の可撓性を高めることができ、シート8をロール状で保管することができるので、複合体10の生産性をより一層高めることができる。
【0115】
(複合体の他の詳細)
複合体は、建築物、車両・船舶、鉄道施設、水処理施設、工場施設、水産・養殖施設、電気設備、スポーツ・公園施設、及び土木現場等の用途に使用できる。
【0116】
複合体は、建築物において、バルコニー、フロアー材、土台、梁、根太、束、屋根、及び桟木等に好適に用いられる。
【0117】
複合体は、車両・船舶において、根太、繊維強化プラスチック(FRP)船、デッキ、バルクヘッド、トラック荷台材、及びブリッジ等に好適に用いられる。
【0118】
複合体は、鉄道施設において、歩道板、大三帆条保護板、プラットホーム、及び枕木(橋、分岐、並、短)等に好適に用いられる。
【0119】
複合体は、水処理施設において、覆蓋、角落し、セキ板、フロキューター羽根、ドア、ガラリ、整流板、迂流板、仕切り板、及び傾斜板等に好適に用いられる。
【0120】
複合体は、工場施設において、床板、歩廊、ピット蓋、薬液槽、水槽、作業台、架台、根太材、パレット、及び冷凍庫等に好適に用いられる。
【0121】
複合体は、水産・養殖施設において、孵化槽、養殖槽、活魚槽、及び歩廊等に好適に用いられる。
【0122】
複合体は、電気設備において、クリート、及び管枕等に好適に用いられる。
【0123】
複合体は、スポーツ・公園施設において、パーゴラ、橋、案内板、あずま屋、バックスクリーン、テニス練習板、スコアボード、浮桟橋、吊り橋、遊歩道、スキー板芯材、水車、及びプール部材等に好適に用いられる。
【0124】
複合体は、土木現場において、受圧板、及びシールド直接発進到達用の仮設部材(SEW土留め壁)等に好適に用いられる。
【0125】
複合体は、枕木として特に好適に用いられる。枕木の形状は特に限定されない。枕木は、例えば、直方体状の枕木であってもよく、直方体状の本体部と、該本体部から外側に突出している突出部とを備える枕木であってもよい。
【0126】
(複合体の製造方法)
上述した複合体の製造方法としては、バッチ式製造方法(複合体の第1の製造方法)及び連続式製造方法(複合体の第2の製造方法)が挙げられる。
【0127】
<バッチ式製造方法>
本発明に係る複合体の第1の製造方法(バッチ式製造方法)は、以下の工程を備える。金型内にシートをコーティング層側から配置する工程(シート配置工程)。金型内に繊維と樹脂組成物とを充填する工程(充填工程)。金型内で樹脂組成物を硬化させる工程(硬化工程)。
【0128】
本発明に係る複合体の第1の製造方法(バッチ式製造方法)では、上記の構成が備えられているので、複合体の生産性に優れ、かつ得られる複合体の耐候性を高めることができる。
【0129】
シート配置工程では、金型内にシート8をコーティング層8B側から配置する。シート配置工程では、シート8におけるコーティング層8Bと金型の内表面とが接している。即ち、シート配置工程は、コーティング層8Bを金型の内面に接するように、シート8を金型内に配置する。シート配置工程では、シート8が金型内の一部の面に配置されてもよく、金型内の全ての面に配置されてもよい。金型が柱状である場合には、シート8は金型の側面に配置されることが好ましい。即ち、シート配置工程においては、シート8で樹脂成形体9を覆う位置(複合体10においては、四角柱の4つの側面)に、シート8を配置する。
【0130】
シート8を製造する方法は、特に限定されない。シート8は、上述した基材層8Aの表面上に、コーティング層8Bが形成されて製造されてもよい。基材層8Aが空隙を有する場合に、シート8は、基材層8Aにコーティング層8Bの材料を浸透させて製造されてもよい。コーティング層8Bの材料が硬化性樹脂を含む場合には、コーティング層8Bの材料が基材層8Aの表面上に塗布された後に硬化されて、コーティング層8Bが形成されることが好ましい。
【0131】
充填工程では、金型内に繊維6と樹脂組成物とを充填する。充填工程では、繊維6が長繊維を含む場合には、長繊維を任意の一方向に引き揃えて、金型内に充填することが好ましい。充填工程では、繊維6が短繊維を含む場合には、短繊維と樹脂組成物とを混合して金型内に充填してもよく、短繊維と樹脂組成物とを混合せずに金型内に充填してもよい。
【0132】
硬化工程では、金型内で樹脂組成物を硬化させる。シート8が配置された金型内で、樹脂組成物が硬化することで、樹脂硬化物5Xを含む樹脂成形体9とシート8とが接合し、金型の形状に対応する複合体10を製造することができる。
【0133】
樹脂組成物の硬化条件は、特に限定されない。樹脂組成物の硬化条件は、樹脂組成物中の材料に応じて適宜選択することができる。
【0134】
樹脂組成物が発泡剤を含む場合には、硬化工程は、発泡硬化工程であってもよい。樹脂組成物が発泡剤を含む場合には、硬化工程は、樹脂組成物を発泡させる工程と、発泡した樹脂組成物を硬化させる工程とを有することが好ましい。
【0135】
樹脂組成物を発泡させる方法としては、樹脂組成物を加熱する方法等が挙げられる。樹脂組成物の加熱時間及び加熱温度は、特に限定されない。樹脂組成物の加熱時間及び加熱温度は、発泡剤の種類に応じて適宜選択することができる。樹脂組成物中の樹脂組成物の加熱時間は、5分以上であってもよく、60分以下であってもよい。樹脂組成物中の樹脂組成物の加熱温度は、40℃以上であってもよく、80℃以下であってもよい。
【0136】
発泡した樹脂組成物を硬化させる方法は、特に限定されない。発泡した樹脂組成物の硬化条件は、樹脂組成物中の樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
【0137】
金型における複合体10の端面に対応する位置にシートが配置されていない場合には、硬化工程後に、複合体10の端面に後述する塗膜を形成してもよい(塗膜形成工程)。
【0138】
<連続式製造方法>
本発明に係る複合体10の第2の製造方法(連続式製造方法)は、以下の工程を備える。繊維束を、繊維束の長さ方向に進行させて、繊維束に樹脂組成物を供給する工程(合流工程)。樹脂組成物を繊維束に含浸させて、樹脂含浸繊維束を得る工程(含浸工程)。樹脂含浸繊維束の表面上にシートを配置する工程(シート配置工程)。樹脂含浸繊維束及びシートを成形しながら、樹脂含浸繊維束中の樹脂組成物を硬化させる工程(硬化工程)。複合体の第2の製造方法(連続式製造方法)では、樹脂成形体における繊維が、繊維束を含む。
【0139】
本発明に係る複合体10の第2の製造方法(連続式製造方法)では、上記の構成が備えられているので、複合体10の生産性に優れ、かつ得られる複合体10の耐候性を高めることができる。
【0140】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る複合体の製造方法(連続式製造方法)を説明するための図であり、連続式製造方法に用いる製造装置の模式図である。
【0141】
図2に示す製造装置100は、第1原料タンク11と、第2原料タンク12と、供給装置15と、含浸機16と、一対のシート供給ロール18と、成形用通路(加熱部を有する金型)19とを備える。また、製造装置100は、第1原料タンク11に貯留された第1原料1を供給装置15に供給する第1原料ポンプ21と、第2原料タンク12に貯留された第2原料2を供給装置15に供給する第2原料ポンプ22とを備える。
【0142】
製造装置100において、長繊維が一方向に引き揃えられた繊維束6Aは、搬送手段(図示せず)によって繊維束6Aの長さ方向に連続的に進行する。
【0143】
含浸機16は、含浸板16aと、複数の揉み板16bとを備える。含浸機16は、含浸板に代えて、無端ベルトを使用してもよい。含浸機16は、含浸板16a及び無端ベルトの温度を所定の温度に調整するための温度調節機を備えていてもよい。
【0144】
例えば、樹脂組成物の硬化物がウレタン樹脂である場合には、第1原料1であるポリオール液が第1原料タンク11に貯留され、第2原料2であるイソシアネート液が第2原料タンク12に貯留されてもよい。この場合には、ポリオール液が第1原料ポンプ21により、イソシアネート液が第2原料ポンプ22により、各々供給装置15に供給され、ポリオール液とイソシアネート液とが供給装置15内で混合されて樹脂組成物5が作製される。樹脂組成物(第1原料及び第2原料)は、発泡剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。繊維束6Aを長さ方向に進行させながら、供給装置15から、繊維束6Aに樹脂組成物5を供給する(合流工程)。供給装置は、散布装置であってもよい。合流工程では、散布装置により、繊維束に対して樹脂組成物を散布してもよい。
【0145】
樹脂組成物5が供給された繊維束6Aを、含浸機16により処理する。含浸機16では、含浸板16a上で揉み板16bにより揉まれ、樹脂組成物5が繊維束6Aを構成する長繊維の間に均一に含浸される。このようにして、樹脂含浸繊維束7が得られる(含浸工程)。
【0146】
次いで、一対のシート供給ロール18から、樹脂含浸繊維束7に対して、樹脂含浸繊維束7の上下を挟むようにシート8を供給して、樹脂含浸繊維束7の表面上にシート8を配置する(シート配置工程)。
【0147】
樹脂含浸繊維束7及びシート8を成形用通路19に移送し、樹脂含浸繊維束7及びシート8を成形する。樹脂含浸繊維束7は、成形用通路19を通過する間に、樹脂含浸繊維束7中の樹脂組成物5が硬化して、樹脂成形体(図示せず)となる(硬化工程)。硬化工程において、樹脂成形体とシート8とが接合して、複合体10が形成される。樹脂含浸繊維束7中の樹脂組成物5は、成形用通路19内で硬化して、成形用通路19の形状に対応する複合体10が製造される。なお、樹脂含浸繊維束7及びシート8を成形用通路19に順次移送することで、複合体10を連続的に製造することができる。
【0148】
樹脂組成物が発泡剤を含む場合には、硬化工程は、発泡硬化工程であってもよい。樹脂組成物が発泡剤を含む場合には、硬化工程は、樹脂組成物を発泡させる工程と、発泡した樹脂組成物を硬化させる工程とを有することが好ましい。
【0149】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る複合体の製造方法(連続式製造方法)における成形用通路を模式的に示す断面図である。
【0150】
図3に示す成形用通路19は、4つの金属ベルト19aにより形成されている。成形用通路19は、4面が金属ベルト19aにより囲まれている。成形用通路が、複数の金属ベルトにより形成されている場合には、得られる複合体10を多様な形状に成形することができる。
【0151】
成形用通路の形状は、特に限定されない。成形用通路を通過する樹脂含浸繊維束(特に、樹脂組成物)を良好に硬化及び発泡させる観点からは、成形用通路は、加熱部を有することが好ましい。成形用通路を通過する樹脂含浸繊維束(特に、樹脂組成物)を良好に硬化及び発泡させる観点からは、成形用通路は、加熱部を有する金型であることが好ましい。
【0152】
成形用通路を通過する樹脂含浸繊維束(特に、樹脂組成物)を良好に硬化及び発泡させる観点からは、金属ベルトは、加熱されていることが好ましい。成形用通路を通過する樹脂含浸繊維束(特に、樹脂組成物)を良好に硬化及び発泡させる観点からは、金属ベルトの加熱温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは45℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
【0153】
バッチ式製造方法又は連続式製造方法により得られた複合体(連続複合体)は、必要に応じて、所定の長さに切断されて用いられてもよい。複合体は、所定の長さに切断された後、切断面の表面(端面)上にシートが配置されてもよく、シートが配置されなくてもよい。複合体は、所定の長さに切断された後、切断面の表面上に塗膜が形成されてもよく、塗膜が形成されなくてもよい。複合体は、所定の長さに切断された後、切断面から樹脂成形体が露出していてもよい。複合体の耐候性(特に、色むらの抑制性)をより一層高め、複合体の外観の品質を向上させる観点からは、複合体は、所定の長さに切断された後、切断面の表面上にシートが配置されることが好ましく、切断面の表面上に塗膜が形成されることが好ましい。複合体の生産性をより一層高める観点からは、複合体は、所定の長さに切断された後、切断面の表面上にシートが配置されないことが好ましく、切断面の表面上に塗膜が形成されないことが好ましい。
【0154】
なお、バッチ式製造方法及び連続式製造方法では、シート配置工程の後に硬化工程が行われてもよく、硬化工程の後にシート配置工程が行われてもよい。バッチ式製造方法及び連続式製造方法では、硬化工程の後に、樹脂成形体の表面上にシートが配置(シート配置工程)されてもよい。複合体の生産性をより一層高める観点からは、バッチ式製造方法及び連続式製造方法では、シート配置工程の後に硬化工程が行われることが好ましい。
【0155】
(他の実施形態)
第1の実施形態では、樹脂成形体の全ての面(側面及び端面)がシートで覆われているが、本発明はこれに限定されない。
複合体では、シートは、樹脂成形体の少なくとも一部の表面上に配置されている。複合体では、シートは、樹脂成形体の一部又は全部の表面上に配置されている。複合体では、シートは、樹脂成形体の一部の表面上に配置されていてもよく、樹脂成形体の全部の表面上に配置されていてもよい。樹脂成形体が柱状(例えば、多角柱状及び円柱状)である場合に、シートは、樹脂成形体の側面の表面上に配置されていてもよく、端面の表面上に配置されていてもよい。複合体の耐候性をより一層高める観点からは、樹脂成形体が柱状(例えば、多角柱状及び円柱状)である場合に、シートは、樹脂成形体の側面の表面上に配置されていることが好ましい。樹脂成形体が柱状(例えば、多角柱状及び円柱状)である場合に、シートは、樹脂成形体の端面の表面上に配置されていてもよく、配置されていなくてもよい。複合体の耐候性をより一層高める観点からは、樹脂成形体が柱状(例えば、多角柱状及び円柱状)である場合に、シートは、樹脂成形体の側面及び底面の表面上に配置されていることがより好ましい。なお、複合体は、端面が下側に向けられて用いられてもよく、側面が下側に向けられて用いられてもよい。
【0156】
樹脂成形体が柱状(例えば、多角柱状及び円柱状)であり、樹脂成形体の端面の表面上にシートが配置されていない場合には、樹脂成形体の端面の表面上に、塗膜が配置されていてもよい。複合体の外観識別性、意匠性及び耐候性を高める観点からは、樹脂成形体が柱状(例えば、多角柱状及び円柱状)であり、樹脂成形体の端面の表面上にシートが配置されていない場合には、樹脂成形体の端面の表面上に、塗膜が配置されていることが好ましい。塗膜は、シートにおけるコーティング層と同一であってもよく、異なっていてもよい。複合体の外観識別性、意匠性及び耐候性を高める観点からは、樹脂成形体の端面の表面上における塗膜は、シートにおけるコーティング層と同一であることが好ましい。
【0157】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る複合体を模式的に示す断面図である。
図4において、第1の実施形態の同じ構成には、同じ符号を付する。
【0158】
図4の複合体10Aは、樹脂成形体9と、樹脂成形体9の表面上に配置されたシート8とを備える。複合体10Aでは、樹脂成形体9が、繊維6と、樹脂硬化物5Xとを含む。複合体10Aでは、シート8が、基材層8Aと、基材層8Aの表面上に配置されたコーティング層8Bとを有し、シート8が、シート8における基材層8A側から樹脂成形体9の表面上に積層されている。即ち、基材層8Aはコーティング層8Bよりも樹脂成形体9寄りに位置している。
【0159】
図1に示す複合体10と
図4に示す複合体10Aとでは、シート8の配置が異なる。複合体10Aでは、シート8は、樹脂成形体9の一部の表面上に配置されている。複合体10Aでは、シート8は、樹脂成形体9の6面のうち、1つの側面(
図1(a)における面9aに相当)の表面上にのみ配置されている。複合体10Aでは、シート8は、樹脂成形体9の底面(端面)の表面上には配置されていない。複合体10Aでは、シート8は、樹脂成形体9の4つの側面のうち、3つの側面(
図1(a)における、面9aと合同かつ平行な面、面9c、及び面9cと合同かつ平行な面に相当)の表面上には配置されていない。
即ち、複合体10Aは、1つの側面にのみシート8を有し、他の3つの側面及び2つの端面には、シート8を有しない。
【0160】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る複合体を模式的に示す断面図である。
図5において、第1の実施形態と同じ構成には同じ符号を付する。
【0161】
図5の複合体10Bは、樹脂成形体9と、樹脂成形体9の表面上に配置されたシート8とを備える。複合体10Bでは、樹脂成形体9が、繊維6と、樹脂組成物の硬化物5Xとを含む。複合体10Bでは、シート8が、基材層8Aと、基材層8Aの表面上に配置されたコーティング層8Bとを有し、シート8が、シート8における基材層8A側から樹脂成形体9の表面上に積層されている。即ち、基材層8Aはコーティング層8Bよりも樹脂成形体9寄りに位置している。
【0162】
図1に示す複合体10と
図5に示す複合体10Bとでは、シート8の配置が異なる。複合体10Bでは、シート8は、樹脂成形体9の一部の表面上に配置されている。複合体10Bでは、シート8は、樹脂成形体9の6面のうち、2つの側面(
図1(a)における、面9a及び面9aと合同かつ平行な面に相当)の表面上にのみ配置されている。複合体10Bでは、シート8は、樹脂成形体9の底面(端面)の表面上には配置されていない。複合体10Bでは、シート8は、樹脂成形体9の4つの側面のうち、2つの側面(
図1(a)における、面9c、及び面9cと合同かつ平行な面に相当)の表面上には配置されていない。
即ち、複合体10Aは、互いに平行な2つの側面にのみシート8を有し、他の2つの側面及び2つの端面には、シート8を有しない。
【0163】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る複合体を模式的に示す斜視図である。
図6において、第1実施形態の同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0164】
複合体10Cは、四角柱状の樹脂成形体9と、樹脂成形体9の4つの側面に位置するシート8とを有する。本実施形態において、樹脂成形体9の端面には、シート8を有しない。本実施形態において、樹脂成形体9の両端面(面9b及びその反対側の端面)には、塗膜130が位置している。
【0165】
塗膜130は、コーティング層8Bと同様に、コーティング組成物の硬化物である。塗膜130は、コーティング層8Bと同じでもよいし、異なってもよい。ただし、意匠性、耐侯性を高める観点からは、塗膜130とコーティング層8Bとは、同じが好ましい。
【実施例0166】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0167】
以下の材料を用意した。
【0168】
(樹脂成形体)
ガラス長繊維(繊維径10μm~20μmのモノフィラメントが多数引き揃えられてロービングにされたガラス長繊維)。
ポリオール化合物:プロピレンオキサイドが付加されたポリエーテルポリオール(住化コベストロウレタン社製「SBU ポリオール K660」)。
イソシアネート化合物:ジフェニルメタンジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製「スミジュール44V20L」)。
着色剤:カーボンブラック(三菱ケミカル社製「MA-100」、粒子径24nm)。 発泡剤:水。
【0169】
(基材層がガラス繊維マットであるシート)
・シート1:ガラス繊維マット(オリベスト社製「SB-030」、繊維径9μm、繊維長13mm、バインダー=PVA+SBR、目付量=30g/m2、厚み=0.31mm)と、ガラス繊維マットの一方の表面上にコーティング層(アクリル樹脂、目付量=56g/m2)とを有するシート。
・シート2:ガラス繊維マット(オリベスト社製「SB-030」、繊維径9μm、繊維長13mm、バインダー=PVA+SBR、目付量=30g/m2、厚み=0.31mm)と、ガラス繊維マットの一方の表面上にコーティング層(アクリル樹脂、目付量=80g/m2)を有するシート。
・シート3:ガラス繊維マット(オリベスト社製「SB-050」、繊維径9μm、繊維長13mm、バインダー=PVA+SBR+架橋剤、目付量=50g/m2、厚み=0.37mm)と、ガラス繊維マットの一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=120g/m2)を有するシート。
・シート4:ガラス繊維マット(オリベスト社製「SB-073」、繊維径9μm、繊維長13mm、バインダー=PVA+架橋剤、目付量=73g/m2、厚み=0.54mm)と、ガラス繊維マットの一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=120g/m2)を有するシート。
・シート5:ガラス繊維マット(オリベスト社製「SB-073」、繊維径9μm、繊維長13mm、バインダー=PVA+架橋剤、目付量=73g/m2、厚み=0.54mm)と、ガラス繊維マットの一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=250g/m2)を有するシート。
・シート6:ガラス繊維マット(オリベスト社製「SB-150」、繊維径9μm、繊維長13mm、バインダー=PVA+架橋剤、目付量=150g/m2、厚み=1.15mm)と、ガラス繊維マットの一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=120g/m2)を有するシート。
【0170】
(基材層が樹脂繊維又はパルプを含むシート)
・シート7:不織布(PET繊維、目付量=75g/m2、厚み=0.17mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリル樹脂、目付量=191g/m2)を有するシート。
・シート8:不織布(PET繊維、目付量=60g/m2、厚み=0.25mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリル樹脂、目付量=261g/m2)を有するシート。
・シート9:不織布(PET繊維、目付量=90g/m2、厚み=0.13mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=162g/m2)を有するシート。
・シート10:不織布(ポリエステル繊維、目付量=90g/m2、厚み=0.63mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=343g/m2)を有するシート。
・シート11:不織布(パルプ、目付量=51g/m2、厚み=0.055mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=125g/m2)を有するシート。
・シート12:不織布(PP/PE繊維、目付量=70g/m2、厚み=0.22mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂組成物(アクリルウレタン樹脂100質量部に対してカーボンブラック1質量部添加)、目付量=280g/m2)を有するシート。
・シート13:不織布(PP繊維、目付量=45g/m2、厚み=0.57mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂組成物(アクリルウレタン樹脂100質量部に対してカーボンブラック1質量部添加)、目付量=390g/m2)を有するシート。
・シートA:不織布(PP繊維、目付量=45g/m2、厚み=0.57mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=390g/m2)を有するシート。
・シートB:表面上にコーティング層が形成されていない不織布(PP繊維、目付量=45g/m2、厚み=0.57mm)からなるシート。
・シートC:表面上にコーティング層が形成されていない不織布(PP繊維、目付量=90g/m2、厚み=0.13mm)からなるシート。
・シートD:不織布(オレフィン繊維、目付量=40g/m2、厚み=0.09mm)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=100g/m2)を有するシート。
・シートE:不織布(オレフィン繊維、目付量=40g/m2、厚み=0.09mm、プラズマ表面処理)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=100g/m2)を有するシート。
・シートF:不織布(オレフィン繊維、目付量=70g/m2、厚み=0.20mm、フッ素ガス表面処理)と、不織布の一方の表面上にコーティング層(アクリルウレタン樹脂、目付量=120g/m2)を有するシート。
【0171】
なお、シート1,2,7,8において、アクリル樹脂として、日本ペイント社製「ケンエース」を用いた。また、シート3~6,9~13,A、D、E、Fにおいて、アクリルウレタン樹脂として、大同塗料社製「ミズユカ」を用いた。また、シート12,13において、カーボンブラックとして、三菱ケミカル社製「MA-100」(粒子径24nm)を用いた。
【0172】
(実施例1~17及び比較例1~3)
表1~4に示す材料を表1~4に示す含有量で用いて、
図2(及び
図3)に示す製造装置100と同様の製造装置を用い、複合体(50mm×50mm×300mmの四角柱状)を以下のようにして作製した。なお、
図2に示す第1原料として、ポリオール化合物と発泡剤(ポリオール化合物100質量部に対して発泡剤1質量部)とを含む液を用いた。また、
図2に示す第2原料として、イソシアネート化合物を用いた。
【0173】
<樹脂組成物を得る工程>
第1原料タンクに投入された第1原料をポンプによって供給装置(混合散布装置)へ供給した。また、第2原料タンクに投入された第2原料をポンプによって供給装置へ供給した。供給装置にて、第1原料と第2原料とを均一に混合し、樹脂組成物を得た。
【0174】
<供給工程>
樹脂組成物を、供給装置(混合散布装置)の吐出口から、ガラス長繊維が一方向に引き揃えられたガラス長繊維束(ガラス長繊維の繊維束)に散布した。なお、ガラス長繊維束を一方向に進行させながら、樹脂組成物をガラス長繊維束に散布した。
【0175】
<合流工程>
樹脂組成物とガラス長繊維束とを、15℃~25℃の条件で、揉み板と含浸板との間で揉みこみ、ガラス長繊維束を構成する各強化長繊維の間に樹脂組成物を含浸させて、樹脂組成物がガラス長繊維束に含浸された樹脂含浸繊維束を得た。
【0176】
<シート配置工程>
一対のシート供給ロールから、樹脂含浸繊維束に対して、樹脂含浸繊維束の上下を挟むようにシートを供給して、樹脂含浸繊維束の表面上にシートを配置した。
【0177】
<硬化工程(発泡硬化工程)>
樹脂含浸繊維束及びシートを成形用通路(加熱部を有する金型、加熱温度:50℃)に移送し、成形用通路内で樹脂含浸繊維束中の樹脂組成物を硬化(発泡硬化)させて、複合体を得た。
【0178】
実施例1~17及び比較例1~3で得られた複合体では、長繊維の長さ方向が、樹脂成形体の側面に平行であり(即ち、長繊維は樹脂成形体の一方の端面から他方の端面に向かって伸びている)、シートが樹脂成形体の4つの側面の表面上に配置されていた。なお、シートは、樹脂成形体の端面の表面上には配置されていなかった。
【0179】
(評価方法)
<割合X>
得られた複合体について、上述した方法で、割合X(樹脂成形体においてシートが配置されている部分の表面積100%中の、樹脂成形体の露出している部分の面積の割合)を測定した。なお、実施例12,13では、樹脂成形体及びシートが同一の着色剤を含むので、割合Xは測定不可能であった。
【0180】
<耐候性>
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製「WEL-SAN-HC」)を用いて、下記の条件で複合体に光を照射した。光照射後の複合体の表面を観察し、複合体の表面から樹脂成形体中のガラス繊維が露出しているか否かを観察した。また、光照射後の複合体の表面を観察し、色むらの発生の有無を観察した。複合体の耐候性を、以下の判定基準で判定した。
・照射強度:255W/m2。
・波長:300nm~700nm。
・照射時間:1000時間。
【0181】
≪耐候性(ガラス繊維の露出)の判定基準≫
○:ガラス繊維の露出なし。
×:ガラス繊維の露出あり。
【0182】
≪耐候性(色むら)の判定基準≫
○○:色むらが発生していない。
○:色むらがごくわずかに発生している(実使用上問題なし)。
×:色むらが発生している。
【0183】
組成及び結果を下記の表1~4に示す。
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
また、実施例1~17では、シートを樹脂成形体の表面上に配置することにより複合体を効率的に製造することができ、生産性が良好であった。また、実施例12,13の複合体では、樹脂成形体及びシート(特に、コーティング層)が同一の着色剤を含むので、複合体の表面の色むらの発生が特に良好に抑制されており、複合体の外観の品質が高く維持されていた。