(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006044
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】発熱塗料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20250109BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20250109BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20250109BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250109BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250109BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C01B32/05
C01B32/194
C09D5/02
C09D7/61
C09D201/00
H05B3/20 301
H05B3/20 373
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106591
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】592032175
【氏名又は名称】東急ジオックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318008886
【氏名又は名称】ジカンテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518148294
【氏名又は名称】木下 貴博
(74)【代理人】
【識別番号】100167690
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 直
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
【テーマコード(参考)】
3K034
4G146
4J038
【Fターム(参考)】
3K034AA05
3K034AA06
3K034AA10
3K034JA01
4G146AA01
4G146AB01
4G146AB07
4G146AC04B
4G146AC08B
4G146AC09B
4G146AC16B
4G146AC20A
4G146AC20B
4G146AC22B
4G146AD19
4G146BA31
4G146BB03
4G146BB06
4G146BC03
4G146CB17
4J038CG001
4J038DG191
4J038DG261
4J038DL031
4J038HA036
4J038MA06
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA13
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物性原料を炭素源として製造した炭素素材を使用し、CO2削減やよって製造可能な発熱塗料及び様々な温度帯にあっても強度を保つことができる発熱塗料を提供することにある。
【解決手段】ケイ素成分を5%以上含有した植物性原料から製造した1wt%から50wt%のケイ素成分を含んだ炭素素材を顔料としたことを特徴とする。また、官能基を多く含む炭化物19をグラフェン113と混合して塗料の顔料とすることによって強度を安定させながら直流だけでなく交流等の高電圧の電力を供給することも可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性原料から製造した炭素素材を合成樹脂エマルジョンに混合し分散したことを特徴とする発熱塗料の製造方法。
【請求項2】
炭素素材の重量割合が10から75wt%であることを特徴とする請求項1に記載の発熱塗料の製造方法。
【請求項3】
官能基を含む炭素素材を顔料とした請求項1に記載の発熱塗料の製造方法。
【請求項4】
植物性原料を水に浸漬し攪拌して水洗いする洗浄工程と、
前記洗浄工程の後に前記植物性原料を容器に収納し、回転式の脱水装置によって回転をし、前記植物性原料に含まれる水分を脱水する脱水工程と、
前記植物性原料を焼成する焼成工程と、
によって製造した炭素素材を使用したことを特徴とする請求項1に記載の発熱塗料の製造方法。
【請求項5】
前記脱水装置の回転する回転数は、300rpmから3000rpmであることを特徴とする請求項4に記載の発熱塗料の製造方法。
【請求項6】
粉体抵抗が1.0×10-3Ω・cmから3.8×10-2Ω・cmの炭素素材を含む請求項1に記載の発熱塗料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性原料から生成したグラフェンや炭素素材を使用して製造した発熱用途や導電用途に使用する発熱塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から発熱体は、様々な分野において使用されている。例えば、熱プレス機、配管ヒーター、ヒートシール・ラミネート装置、乾燥装置、除曇装置、融雪装置、コピー機などの熱源として用いられている。
そして、発熱体を塗料化することでは、形状にとらわれることなく設置することができる点に利点がある。また、コストを考慮しても塗料化することによって欲しい面積又欲しい箇所にだけ塗ることができるためコスト的にもメリットが大きくなる。
【0003】
このように、メリットが大きな発熱塗料の発明は様々な発明が提案されている。
例えば、特許文献1には、前記支持体の上に形成された、厚さ10~150μmの発熱層と 相互に離間して前記発熱層に接続された複数の電極とを具備し、前記電極の外部回路への接続部以外が、絶縁性被覆で封止され、全体の最大厚さが500μm以下であることを特徴とする、発熱シート。このシートの発熱層は、コロナ放電処理された樹脂製支持体の上に導電性材料を含む水性組成物を塗布することで形成される発明が挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献2には、低電圧でも高い発熱性を有し、高い温度領域でも塗料膜を維持できる断線の少ない塗料膜を形成することができる発熱塗料を提供することを目的とし、微細炭素材料と無機系バインダーとを主成分とした発熱塗料の発明が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-163540号公報
【特許文献2】特開2020-26458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のように無機系バインダーと微細炭素材料によって構成されている。これらは、多くが鉱石から製造され、CO2削減に寄与するものではないことが問題としてあげられる。
また、炭素材料と無機材料との異素材を均一に分散させて塗料化することにより断線等の強度を向上することが必要である。そのため、抵抗値を下げるため炭素材料の割合が多すぎても発熱塗料の強度を上げることが困難となる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、植物性原料をから製造した炭素素材を使用することによってCO2削減に貢献可能であって、様々な温度帯にあっても強度を保つことができる発熱塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
植物性原料から製造した炭素素材を合成樹脂エマルジョンに混合し分散したことを特徴とする発熱塗料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
以上の特徴により、本発明は、植物性原料から製造した炭素素材を使用することによってCO2削減に貢献可能であって、様々な温度帯にあっても強度を保つことができる発熱塗料を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態のグラフェンのラマンスペクトルである。
【
図2】実施形態の炭化物のラマンスペクトルである。
【
図3】実施形態の発熱塗料を塗膜下した発熱体の構成を示す概要図である。
【
図4】実施形態の発熱体の温度特性を示す概要図である。
【
図5】実施形態の発熱体の温度特性を示す概要図である。
【
図6】実施形態のプラズマ装置の構成を示す概要図である。
【
図7】実施形態の炭素素材を製造する製造工程を示すプロセスフローを示す図であ る。
【
図8】実施形態の炭素素材を製造する製造工程を示すプロセスフローを示す図であ る。
【
図10】実施形態の中和処理に使用する別例の装置の概念図である。
【
図11】実施形態の炭素素材を製造する製造工程を示すプロセスフローを示す図である。
【
図12】実施形態の発熱塗料を塗膜下した別例の発熱体の構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる発熱塗料について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0012】
<バイオマス材料>
グラフェンを製造する植物性原料9について説明する。本発明は、食物の残渣や廃棄される植物性原料9を使用して最終生成物であるグラフェンを製造する。植物性原料9は、植物や木材等を使用するが、特に植物を収穫した際の残渣等の廃棄される植物性原料9をグラフェンを製造する原料として使用すれば安価に、原料を入手することが可能である。
【表1】
【0013】
表1は、植物性原料9の成分表である。表1は、最も左に示す原料を構成する成分の割合を以下右に百分率で示している。例えば、稲わらは、炭素(C)が37.4%、窒素(N)が0.53%、リン(P)が0.06%、リン酸(P2O5)が0.14%、カリウム(K)が1.75%、カリ(K2O)が2.11%、カルシウム(Ca)が0.05%、マグネシウム(Mg)が0.19%及びナトリウム(Na)が0.11%となっている。
【0014】
ここで、植物由来のケイ素含有の多孔質の植物性原料9は、低温(300℃以上且つ1000℃以下)にて炭化しても実質的な変化がなく、ケイ素を除去することで細孔の配列を維持できる。植物性原料9は、細胞が軸に沿って規則正しく配列し、細胞壁にケイ酸が沈積して肥厚している構造のものが多くある。そして、ケイ化細胞列の間には圧縮された狭い細胞列があり、炭素化後ケイ素等を除去することにより高い比表面積を有する炭素材料を得ることが可能である。上述したようにケイ酸が13%以上且つ35%以下と多くケイ酸が含まれるものが適している。ケイ酸が多すぎても得られるグラフェンが少なくなるため、20%程度の範囲の植物性原料9が良い。
【0015】
炭素が多く含まれる植物性原料9の例として表1に示しているが、稲わらの他に、小麦わら、大麦わら、小麦殻、大麦殻、カカオハスク、カカオポット、米ぬか、籾殻、そばわら、大豆つる、サツマイモのつる、カブの葉、ニンジンの葉、トウモロコシの稈、サトウキビ梢頭部、酒粕、ヤシ殻、ヤシ粕、ピーナッツ殻、みかんの皮、コーヒー殻、コーヒーかす、レッド杉のおがくず、カラ松の樹皮及び銀杏の落ち葉がある。その他、残渣ではなく植物そのものを使用しても良く。
【0016】
例えば、竹は、繊維素がセルロース、ヘミセルロース、リグニンで構成され、ミネラルが鉄、マグネシウム、カルシウム、マンガン、銅、ニッケル等から構成されているため。
また、竹の葉には焼成すると、シラノール基(Si-OH)が抽出され、焼成の過程でSiO4となって抽出される。
【0017】
【0018】
表2、3は、本発明にて、上述した表1の植物性原料9のうち、炭素材料を製造する方法で最も適している植物性原料9の成分組成表である。表2は、原料を構成する成分の割合を百分率で示している。例えば、水分が8%~10%、灰分が10%~18%、脂質が0.1%~0.5%、リグニンが18%~25%、ヘミセルロースが16%~20%、セルロースが30%~35%及びその他が5%~10%である。このように、シリカ灰19となる主な成分は、リグニン、ヘミセルロース、セルロースである。
【0019】
表3は、表2に示す植物性原料9の無機質の化学成分である。表2に示す植物性原料9は、セルロース等の有機質が80wt%であり、無機質は20wt%である。表3の無機質の化学成分は、SiO2が92.14wt%、Al2O3が0.04wt%、CaOが0.48wt%、Fe2O3が0.03wt%、K2Oが3.2wt%、MgOが0.16wt%、MnOが0.18wt%、Na2Oが0.09wt%となっている。表2に示す植物性原料9は、無機質に酸化ケイ素(SiO2)が多く含まれている。
【0020】
(実施例)
<プロセスフロー1>
図6及び
図7を参照し、グラフェン113や炭化物19を製造する方法について製造工程を説明する。
図7は、実施形態の製造工程を示すプロセスフローを示す図である。
先ず、前処理工程S1は、上述のように植物性原料9を乾燥した後、植物性原料9を粉砕し、その粉砕した植物性原料9とPVA等の造粒剤を10対1の割合に、水を混ぜ合わせて植物性原料9を適度な大きさにして練り合わせ、ホットプレート等の乾燥装置の上で100℃近くに加熱し水分を蒸発させて植物性原料9を生成する。ここで、粉砕方法は、ミル、ミキサー、グラインダー等が挙げられる。特に、造粒剤は、誘導加熱の際に、植物性原料9の蒸気による突沸を防ぐことができる。
【0021】
次に、炭化工程S2を説明する。前処理工程S1で植物性原料9を0.8g程度、るつぼ5に入れて金属の網等で覆う。上述したプラズマ装置10の所定の加熱する位置にるつぼ5を配置する。チャンバー1内の圧を真空ポンプ30により80Paまで減圧を行い、不活性ガス6をチャンバー1内に8から10ml/分の流量により注入し、チャンバー1内は、1300から1500Paの圧力に保たれている。尚、炭化工程S2は、実施例1及び実施例3を使用しても同様のグラフェンが製造可能である。
【0022】
500℃から800℃にて36%と最も大きな収率が測定され、300℃以上且つ1000℃以下で比較的大きな収率が得られた。本測定では、稲わら、ぬか、ヤシ殻、もみ殻及びピーナッツ殻等を行ったが、同様の結果が得られた。炭化工程S2において、植物性原料9は、不活性ガス6を流入しながらアーク放電による熱プラズマにより300℃から1000℃の温度帯の加熱により、10~30分程度で炭化される。
【0023】
次に、賦活工程S3を説明する。上記で得られた炭化物19を1に対し、水酸化カリウムを5の比率の重量で混合し、小型るつぼの壺中に入れて蓋をする。また小型るつぼは、大型るつぼの中に収容し、周りに活性炭を埋設する。小型るつぼ内への酸素の侵入を防ぐために活性炭が埋設されている。加熱炉は、炉を950℃近くまでの温度にし、2~3時間程度焼成を行った。
【0024】
ここで水酸化カリウムは、ケイ素の除去を促進させるため、最終生成物であるグラフェン113の収率向上を挙げる観点から使用される。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウム等のアルカリ土類金属硫化物などが挙げられる。その他に、炭化しきれなかったリグニンは酸により塩酸、硫酸、PTSA、及び塩化アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸により除去することも考えられる。
【0025】
水酸化カリウムと反応させた炭化物19のうち、ケイ酸は水酸化カリウムと反応し、ケイ酸カリウムとなり、水溶性である残った水酸化カリウム(KOH)やケイ酸カリウムを水に溶かし、この混合液を濾紙セットし、真空や減圧した濾過器に通すことにより酸化ケイ素(ケイ素)を除去する。そして、乾燥させた賦活工程S3では、最初の植物性原料9を造粒したときと比較して約1/8~1/10の重量の最終生成物となるグラフェン113の生成が可能であった。
【0026】
本実施例のプラズマ装置10について
図6を参照し説明する。
図6、本実施例のプラズマ装置10の構成を示す概要図である。プラズマ装置10は、主に、不活性ガス6、コントロール装置20、チャンバー1、真空ポンプ30から構成されている。
【0027】
ガスボンベに収められる不活性ガス6は、主にアルゴンを使用したが、その他にヘリウム、ネオン、窒素等が挙げられる。不活性ガス6は、導入管7からガス量コントロール装置21を経由し、チャンバー1に充填が可能である。ガス量コントロール装置21は、不活性ガス6の流量を調整することが可能である。
【0028】
チャンバー1は、制御弁22と接続され、真空ポンプ30によりチャンバー1内を真空状態に減圧が可能である。チャンバー1に接続され、チャンバー1内に不活性ガス6を導入している。制御弁22とチャンバー1との間には、チャンバー1内の真空状態を大気圧に開放するリーク弁23が設けられている。また、チャンバー1内の空気を導入する導出管8と真空ポンプ30との間にも制御弁14と、チャンバー1内の真空状態を大気圧に開放するリーク弁15とが設けられている。
【0029】
また、温度制御装置24は、高周波電源4を制御し、チャンバー1内の温度保持や保持時間等を管理している。本実施例のプラズマ装置10は、真空状態に近い低圧下に、作動ガスとして、不活性ガス6であるアルゴンガスを流し、電極間であるカソード2及びアノード3間に高電流を流し、アーク放電により熱プラズマを得る方法である。このカソード2及びアノード3間には、カーボン製のるつぼ5が設置され、そのるつぼ5には後述する植物性原料9が入っている。植物性原料9は、アーク放電による熱プラズマにより300℃から1000℃の温度帯の加熱により、10~30分程度で炭化される。尚、上述したプラズマ装置の他にバリヤ放電、コロナ放電、パルス放電、直流放電型により熱プラズマを得る方法がある。
【0030】
上記製造方法においては、気相反応が起こり、特に不活性ガス6等の若干量の反応性ガスを混ぜることにより、-OH(ヒドロキシル基)、-CHO、-C=O(カルボニル基)、-COOH(カルボキシル基)などの官能基が生成され、親水性が付与される。
尚、製造方法は上記にとらわれることない。また熱源は、プラズマ装置以外に、誘導加熱、ガス、電気炉であってもよい。
【0031】
誘導加熱の場合にあっては植物性原料9の中に二酸化ケイ素(SiO2)等の絶縁物があっても磁束が透過し植物性原料9が導電し、植物性原料9自体も加熱され、また加熱が加速し短時間で炭化することができる。また、二酸化ケイ素(SiO2)等の絶縁物自体は、交番磁束を貫通させるため二酸化ケイ素(SiO2)自体は、収納箱205からの加熱のみであり、また溶融する温度ではないため、そのまま残り、二酸化ケイ素(SiO2)等の多くの絶縁物が残る。
【0032】
<プロセスフロー2>
図8に炭素素材100を製造する製造方法に関するメインフローを示す。本実施例ではグラフェン化させる炭素素材100を製造する方法についてS11からS16のフローに基づいて説明する。
【0033】
先ず、上述した植物性原料9を粉砕機により粉砕するが、後述するスリットや孔や網状の脱水容器15に保持して脱水処理を行うため、微粉末になり過ぎない程度に粉砕を行う炭素原粉砕処理を行う(S11)。炭素原粉砕処理(S11)は、次の工程の際にアルカリ溶液が染みこみやすい程度の粉砕で良い。尚、S11の工程は、特に最初に処理を行う必要はなく、最後に粉砕を行う方法であっても良い。
【0034】
次に、粉砕した植物性原料9を、アルカリ性の水溶液20によって水温60℃以上に1時間から10時間反応させる水溶液浸透処理(S12)を行う。4時間程度反応させる工程を設けることが最も生産効率が良い。
【0035】
尚、本工程(S12)は、水溶液20に1週間程度の間、常温で植物性原料9を浸しておく方法であっても良い。この場合には、水溶液20のpHを調整し、pH9前後の弱アルカリ性の水溶液20を使用することも可能である。
【0036】
水溶液20中のアルカリの濃度は、10~50%wt濃度の水溶液20にし、この水溶液中20にて植物性原料9を反応させることにより、植物性原料9に含まれるシリカ成分の除去を主に行い、水溶液20中にシリカ成分を抽出する。
【0037】
これにより、有機出成分の濃度を高め、最終製品である炭素素材100の炭素の割合を高めている。アルカリ性の濃度は、30%wtが最も良く、pHが9から14程度である。pH13の水酸化カリウムによって生成した水溶液20が最も良い。植物性原料9の投入量は、水に溶かす前の水酸化カリウムに対して、80%wtmから200%wtの範囲が最も良い。
【0038】
アルカリ性の材料としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリがあるが、最も良いのは、植物性原料9に含まれるもカリウムと同じくする成分であるpH13の水酸化カリウムを使用すると、炭素素材100のグラフェン化をするのに有効である。
【0039】
アルカリ処理を行わずに300℃から500℃にて炭化処理をした際の走査透過電子顕微鏡により透過して現した写真である。元素分布を確認するとAl(アルミニュウム)は、微粒子状に点在している。またK(カリウム)は、大きな粒子として存在している。
【0040】
そのため、カリウムやアルミニュウムを除去することによって炭素の純度を向上させ、電気伝導度の向上にも繋がる。特に、アルミニュウムはアルカリに溶けやすく高温度で炭化させればより除去が可能である。またカリウムもアルカリに溶け込みやすく同じ水酸化カリウムを使用するとより良い。
【0041】
そのため、アルカリ性の材料としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリがあるが、最も良いのは、植物性原料9に含まれるもカリウムと同じくする成分であるpH13の水酸化カリウムを使用すると、炭素素材100のグラフェン化をするのに有効である。
【0042】
次に、アルカリ性を帯びた植物性原料9は、水溶液20の水分を除く脱水処理(S13)を行う、中和の処理を施すことなく、また水洗いをせずにアルカリ性の雰囲気を残した状態にする(S13)。この工程にて水分を除くことができるので、炭化する際の水分の蒸発による装置又はるつぼ等の容器へのアルカリ水分によるダメージを極力少なくすることが可能である。
【0043】
脱水処理(S13)は、水溶液浸透処理(S12)をした植物性原料9を、網目、スリット、及び孔の何れか又は組み合わせた構造が設けられている金属や布やプラスチックの脱水容器15に収用し、洗濯のように遠心による脱水機にかけて脱水を行う。脱水容器15は、遠心によって水分が外に出る容器であればよく、特に袋状、箱状、筒状等であっても良い。
【0044】
また脱水の他の方法としては、袋状の脱水容器15に植物性原料9を入れ、その袋を絞り器によって絞って水分を取り除く方法であっても良い。
【0045】
洗濯機に代表される回転式の脱水装置にて遠心によって脱水を行う(S13)。脱水時の回転数は、300から3000rpmが良く、最も良いのは、500rpmから1500rpmが最も良い。この遠心によって植物の細胞の破壊の促進と植物性原料9に含まれるシリカ等の不純物の排出の促進をすることが可能である。
【0046】
次に、同様に乾燥装置や陰干しにより水溶液20の水分を除く乾燥処理(S14)を行う。中和の処理を施すことなく、また水洗いをせずにアルカリ性の雰囲気を残した状態にする(S14)。この工程にて水分を除くことができるので、炭化する際の水分の蒸発による装置又はるつぼ等の容器へのアルカリ水分によるダメージを極力少なくすることが可能である。尚、アルカリ水分を除去すれば良いので、上述の脱水工程(S13)で水分を除去できれば、乾燥工程(S14)は必ずしも設ける必要はなく、あればより良い。
【0047】
次に、窒素やアルゴンガス等のガスを流し又はカーボンフェルト等で密閉し、酸素を含まない状態で、燃焼温度1100℃を5時間維持した状態でアルカリ雰囲気の植物性原料9を炭化する炭化処理を行う(S15)。
【0048】
炭化工程(S15)は、温度が高いほどグラフェン化及び黒鉛化が進み、燃焼温度1000℃から2200℃附近が最も良く、上記温度を2時間から10時間の炭化時間に維持できれば良い。
【0049】
また、製造装置には植物性原料9を収納する金属を使用する場合が多いが、アルカリ性に耐えるようにするためにアルミナ等の溶射やアルミナの素材により植物性原料9を収容する収納容器を使用する等、アルカリの耐性に耐えるようなロータリーキルン式の炭化装置又は誘導加熱炉、電気炉等を使用すると良い。
【0050】
従来のように、固形のアルカリ性の材料と植物性原料9を反応させて賦活処理する工程に比べ、S13の状態での植物性原料9は、金属への直接的なアルカリによる腐食を起こしにくくするため製造装置の耐久性を向上することが可能である。
【0051】
そして、最後に炭化処理(S15)が終わった炭素素材100を水また塩酸、硫酸及びクエン酸等の酸性水溶液に晒して中和処理(S16)を行い、更に残ったシリカ等を除去する(S16)。また、その後乾燥し、真空保管等を行えば、炭素素材100の電気伝導度等の物性を保持した状態で出荷をすることが可能である。
【0052】
中和処理(S16)は、純度を向上するために純水等の水のみを使用した洗浄による中和が望ましい。酸等による中和も良いが、酸を洗い流す必要もあり、シリカ等の固形物の除去も必要であるため、コスト的にも水を使用する中和処理(S16)が最も良い。
【0053】
その際、
図9に示すように容器80に純水81を入れ、袋状の水分子しか通さない浸透膜82に炭素素材100と純水を入れ、両端83を純水の中に沈めると、炭素素材100を含んだ不純物が入っている水溶液から圧力のバランスが働きアルカリ成分を含んだ水分は膜を通って純水81へ流れる。このように、浸透膜82を使用することによって早く処理が可能となる。
【0054】
また、
図10を参照し別例の中和処理(S16)について説明する。炭素素材100と純水を入れた浴槽64からポンプ61にて押し上げてチューブ状の逆浸透膜67を複数備えたチューブ62に、炭素素材100を含んだ水溶液(L1)を通す。
【0055】
チューブ62からはアルカリ成分が入った水溶液(L2)を回収容器63に回収し、炭素素材100を含んだ水溶液(L3)を浴槽64に戻す。浴槽64には、回収容器63に回収した量の純水を補充する。このように、循環することによって徐々にアルカリ分を含んだ水溶液は中和する。
【0056】
<プロセスフロー3>
実施例2に本実施形態の植物性原料9の内の籾殻を使用し、炭素素材100を製造する方法について
図11を参照し説明する。特に導電性材料として使用する炭素素材100を製造方法に適している。
【0057】
植物性原料9を粉砕するが、微粒子化は粉砕工程(S21)の工程で行われるので、この工程では水への浸漬の際に内部に染み込ませる程度の粉砕で良く、また脱水工程を経るのでスリットや孔の目をすり抜けない大きさであれば良い。粉砕後の大きさは5mmから10mm程度であれば最も良い。ここで、粉砕方法は、ミル、ミキサー、グラインダー等が挙げられる。また特に粉砕工程はなくても良く、洗浄する際に水等が原料に浸透すれば良い。
【0058】
次に、粉砕した植物性原料9を、水洗いを行う(S22)。例えば、純水に籾殻を浸す。1日程度籾殻を浸漬した後、石や泥等を洗い流す。液温は常温から80℃迄の温度が良い。水洗い(S22)は注水した後に攪拌し洗浄を行っても良い。また、少しずつ注水しながら攪拌する洗浄を行っても良い。 尚、攪拌は、渦流式の装置ややブレードを回転させて攪拌する装置を利用しても良く、スターラー装置等を使用しても良い。
【0059】
次に、水洗浄した植物性原料9を上述した脱水容器15に入れ、洗濯機に代表される回転式の脱水装置にて脱水を行う(S23)。脱水時の回転数は、300から3000rpmが良く、最も良いのは、500rpmから1500rpmが最も良い。
【0060】
脱水により、水分と一緒に不純物が排出される。そして、そのまま乾燥工程を経ることなく次の焼成工程に遷ることが可能である。この回転による脱水工程によって植物性原料9の組織の分解も促進されて特に乾燥工程を得ることなく、次の工程に進めることが確認された。そのため工程の削減により製造時間の短縮を行うことが可能となった。
【0061】
従って、実施例1においても回転式の脱水を行えば、乾燥工程を得ることは必ずしも必要がないが、乾燥すれば機械への腐食等の影響は軽減される。
【0062】
次に、焼成工程(S24)は、植物性原料9を炉に入れ、炉内を無酸素の状態をアルゴンガスや窒素ガスを充填し、1100℃まで炉内温度を上昇し、1100℃の温度で1~10時間程度の一定時間温度を保持する。その後、植物性原料9の自然焼成によって全焼成時間を1日とする。これによって炭素材料10が生成される。
【0063】
また、水洗い(S22)の際に圧力釜等の容器に植物性原料9を収納し、水と共に2気圧から2.45気圧によって圧力をかけ、120℃から128℃の温度をかけることによって、植物性原料9の細胞壁が早く破壊され、不純物の除去や純度の向上につながる。
【0064】
(グラフェン及び炭化物)
実施例により製造した炭化工程S2で得られた炭化物19及び賦活工程S3で得られた炭素素材100であるグラフェン113を以下に説明する。
【0065】
図1は、本発明の製造装置で得られたグラフェン113のラマンスペクトルである。
図2は、本発明の製造装置で得られた炭化物19のラマンスペクトルである。
これら図は、ラマン分光装置により解析し、得られたデータは、横軸を波長(波数(Raman shift(cm-1)))、縦軸を強度とするラマンスペクトルである。
【0066】
また、表4に示すように、ラマンスペクトル法による波長のピークとなるGバンド(2850cm-1)のピーク値IG及び2Dバンド(1650cm-1)のピーク値IDである。
【0067】
そして、表4に示すようにIGをID割った値は、グラフェン113が、1.68となっており、植物性原料9の中でも層が少ないことを示している。特に炭化物19は、ケイ素を多く含んでおり、また-OH、-CHO、-COOHなどの含む酸素官能基が生成されていることが確認できた。
グラフェン113のIGをID割った値は、好ましいのは0.9以上であって0.9から2.0程度の値を示している。
【0068】
炭化工程S2で得られた炭化物19は、炭素を除いた灰分が、熱重量測定によると37.1wt%と多くなっており、その灰分のうちケイ素(Si)は炭化物19全体の24wt%から50wt%となっている。その他に、Kが0.51wt%から7wt%、Alが0.1wt%から1.6wt%、Caが0.17wt%から0.5wt%、Feが0.4wt%となっており、Cr、Ni、Mn、Mg、P、S、Naが0.1wt%以下となっている。
【0069】
所謂賦活処理である賦活工程S3を行っていない炭化工程S2で得られた炭化物19は、ケイ素を多く含み、不活性ガス中で炭化される場合には、強還元されず、SiO2-xとなり、芳香族の-OH基などと-O-Si-O-Rの形で結合し、リグニン多糖複合体になり、C/SiOxの形になりやすいと考えられる。
【0070】
また、後述する賦活工程S3で得られたグラフェン113は、炭素を除いた灰分が、熱重量測定によると1%から24wt%と多くなっており、そのうちケイ素(Si)はグラフェン113全体の1wtから20wt%となっている。その他に、Kが4.3wt%、Alが1.5wt%、Caが1.3wt%、Feが0.4wt%となっており、P、Mn、Cl、S、Mgが0.1wt%以下となっている。
【0071】
以上のように、炭素素材100であるグラフェン113及び炭化物19のケイ素は、1wt%から50wt%とケイ素の量が多くなっている。
【0072】
【表4】
表4に示すようにCO2吸脱着測定の結果においてグラフェン113及び炭化物19は、細孔径が主に0.8nmから2nmの微細な細孔が形成されていることが確認できた。
【0073】
そのため、金属イオン等を吸着しやすくと考えられる。また表4に示すようにガス吸着測定及び水蒸気吸着測定により測定されたメソ孔の容積は、グラフェン113が、0.487ml/gであり、炭化物19が、0.259ml/gであった。また、ミクロ孔容積は、グラフェン113が、0.46ml/gであり、炭化物19が、0.27ml/gであった。
【0074】
また、表4に示すようにグラフェン113又は炭化物19の粒子は、15μmから229μmの分布の径を示し、分布の積算値の中央値で示すメジアン径で約110μmである。
【0075】
このように、0.2ml/gから0.6ml/gのメソ孔容積を形成している。特に後述する不純物を除去する賦活処理を行った後のグラフェン113の方が高い値を示しており、ケイ素の除去によりメソ孔やミクロ孔が成長していると考えられる。
【0076】
また、表4に示すように水蒸気吸着測定法により測定され、BET式による比表面積は、グラフェン113が、1792m2/gを示し、この幅は890m2/g~2000m2/gの幅がある。炭化物19が、726.4m2/gを示し、この幅は890m2/g~1500m2/gの幅がある。何れも比表面積が大きくケイ素成分(Si)を取り除いた後のグラフェン113は、より比表面積が大きくなっている。そのため、グラフェン113は、吸着する作用が高くなっている。
【0077】
また、炭化物19は、同様に元素成分のSi(ケイ素)が、Si(シリコン)又は二酸化ケイ素(SiO2)の状態で炭化物19の表面や内部に微小となって含有している状態と、Si(シリコン)又は二酸化ケイ素(SiO2)の状態で炭化物19の表面や内部に凝集して形成される状態とがある。そして、炭化物19は、賦活処理を施すことによって、炭素の純度が上がっていくと同時に、比表面積が向上していく。
【0078】
表4に示すように、ガス置換密度測定装置により測定した真密度は、グラフェン113が2.56g/cm3及び炭化物19が2.27g/cm3であった。また、グラフェン113の嵩密度は、0.21から0.29g/cm3であった。
【0079】
また、二重リング法及び四端子法による測定した粉体抵抗値は、炭化物19が1.27×103~5Ω・cmとなり、ケイ素を除くことによりグラフェン113が、1.0×10-2Ω・cmとなり導電性が向上する。尚、抵抗値は低ければ低いほどよいが、グラフェン113は、1.0×10-3Ω・cmから3.8×10-2Ω・cmが最適である。
また、炭化物19は、ケイ素を多く残すことにより、ケイ素に吸着しやすい物質に溶け込みやすくなると、同時に絶縁性能が向上する。
【0080】
(発熱塗料)
以下に、上述した炭素素材100(炭化物19及びグラフェン113)を顔料として製造した発熱塗料について説明する。
出願人は、様々なタイプの塗料について試験を行い最適な条件を見いだしている。本実施例で上げる塗料のタイプとしては、溶剤2液型、溶剤1液型、水系1液型の試験を行った。
【表5】
【0081】
表5に示すように、溶剤2液型は、バインダーをアクリルウレタンとし、溶剤にキシレンを使用し希釈している。顔料として上述した炭素素材100(炭化物19及びグラフェン113)を使用した。この溶剤2液型は、硬化剤を使用して硬化させるタイプの塗料である。
【0082】
溶剤1液型は、バインダーをシリコーンとし、溶剤にキシレンを使用し、顔料として上述した炭素素材100(炭化物19及びグラフェン113)を使用した。この溶剤1液型は、熱により硬化するタイプであり、150℃もの耐熱性があり耐熱性に優れている。
【0083】
水系1液型は、バインダーをアクリルエマルジョンとし、溶剤に水を使用し、顔料として上述した炭素素材100(炭化物19及びグラフェン113)を使用した。
また、炭素材料にディスパー攪拌しながらバインダーを徐々に添加して、攪拌液が液状を保つ添加量を限界量として見極めた。また、その際の顔料重量濃度(PWC値)を算出した。
【0084】
【表6】
表6に示すように、各炭素材料とPWC値の異なる各塗膜の評価を行った。先ず、ブリキの板に各限界液を10g取り、設定した<>内のPWC値となるようにバインダーと硬化剤等を混合し、スパテールで攪拌し塗膜した。そして、乾燥膜厚の測定を行った。また目視での塗膜の凹凸、割れ、色や艶斑の有無の判定を行い、○の場合はこれら欠点が無い状態で有り、△は何れかが存在しており、×は目立った欠点があることを示している。
【0085】
また、成膜性は塗膜表面を爪等で引っ掻き塗膜が剥がれてこないかのテストの結果である。○の場合は剥がれが無い状態で有り、×は剥がれがあることを示している。
また、光沢は、60度光沢値を測定した結果である。<1は、1より小さいことを示している。
更に、膜性は塗膜表面を爪等で引っ掻き塗膜が剥がれてこないかのテストの結果である。○の場合は剥がれが無い状態で有り、×は剥がれがあることを示している。
【0086】
柔軟性は、紙に塗膜を形成し、紙を山折りに曲げた際に山頂部分に塗膜の割れや亀裂が発生しないかの評価を行った。○の場合は割れや亀裂が発生しない状態で有り、×は割れや亀裂が発生したことを示している。
【0087】
次に、発熱塗料としての性能について説明する。
図3は、紙、布又はプラスチック樹脂等の絶縁体51に、上述した溶剤1液型の発熱塗料50を塗布した図である。発熱塗料50の中心の端部に+電極52、-電極53を備え、その電極に電力を供給することによって発熱塗料50を塗った箇所から発熱をする。電極間の距離Hは、4.5cmであって、塗料が塗られた面積は22.5cm2である。
【0088】
また、
図4及び
図5は、発熱塗料50の発熱特性を示す図である。
図4は、塗膜の厚みが160μmから175μmの発熱体40の時間(秒)と温度(℃)のグラフである。V1は、DC20Vを供給した際に、
図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、4から4.8Wであり、室温22.1℃から約300秒で最高62℃程度まで昇温する。
【0089】
V2は、DC12Vを供給した際に、
図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、2から2.4Wであり、室温26.3℃から約300秒で最高43.4℃程度まで昇温する。
【0090】
図5は、塗膜の厚みが60μmから75μmの発熱体40の時間(秒)と温度(℃)のグラフである。V1は、DC20Vを供給した際に、
図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、1.6Wから2.0Wであり、室温25.4℃から約280秒で最高44.1℃程度まで昇温する。
【0091】
V2は、DC12Vを供給した際に、
図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、0.6Wであり、室温25.4℃から約240秒で最高32.6℃程度まで昇温する。
【0092】
炭素素材100は、ケイ素を多く含んでいるために、後から無機材料を添加する必要が無く、塗料の強度や耐電性能を向上させることが可能である。特に、ケイ素を炭素材料に含んだ発熱塗料は高温まで発熱させても塗料膜の連続性が維持でき、耐熱性の高い面状ヒーターを作製することができる。
【0093】
また、官能基を多く含む炭化物19をグラフェン113と混合して塗料の顔料とすることによって強度を安定させながら直流だけでなく交流等の高電圧の電力を供給することも可能である。
【0094】
また、抵抗値の調整においても官能基を多く含む炭化物19によって分散・混入が容易となる。混合割合は、炭化物19とグラフェン113の比が0.5:9.5から3:7程度が良い。また、粉体抵抗が1.0×10-3Ω・cmから3.8×10-2Ω・cmの範囲の炭素素材100を単体で使用するか、また炭素素材100を混合して使用しても良い。
【0095】
次に、
図12に発熱体40の別例を示す。
図12(A)は、発熱体40の正面図である。
図12(B)は、発熱体40を正面図のA―B線で切断した断面図である。
発熱塗料50は、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、アクリル系等に代表される合成樹脂エマルジョンに炭素素材100を10%wtから75%wtの割合で混合し練り込んで塗料化を行った。最も良い割合は、炭素の割合が40%wtから60%wtであった。
【0096】
塗膜の厚みtは、500μmから1000μmで形成した。理想的な塗膜の厚みは、100μmから1500μmであって抵抗値や使用箇所に応じて適宜変更可能である。アクリル系エマルジョンを使用した場合には、膜厚の厚い塗工が可能であった。
【0097】
発熱体40は、基材42の上に銅箔、銀箔、銅や銀のペースト等や電導線を使用した配線41に+電極52、―電極53を形成した。基材42は、ガラス、陶器、コンクリート、セメント、布(ガラス繊維、綿糸ポリエステル)、プラスチック等であっても良い。その基材と電極の上に発熱塗料50を塗り乾燥させた。
【0098】
発熱体40は、全長56cm、幅4cm、電極の幅は1cmで形成し、電極間の全体抵抗は、1Ωから10Ωであった。DC12Vを印可した場合には、電力24W前後において室温から20℃から30℃の温度上昇が確認された。ここで、最も発熱塗料に適した炭素素材100は、植物性原料9のうちカカオ殻、大麦殻、麦殻等を燃焼温度が900℃から1500℃において燃焼させた条件であった。
【0099】
その他に発熱塗料50は、ケイ酸ナトリウムを水で希釈した水溶液に炭素素材100を混入した塗料であったも良く。特にケイ素が5%から20%含まれる植物性原料9を炭素化した炭素素材100に最適である。炭素素材100に含まれるケイ素がケイ酸ナトリウムに溶け出して導電性の向上や強度が向上する。また耐火塗料としても最適であるため発熱塗料としては発火等の恐れを低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の発熱塗料の産業上の利用に関して、コンクリート等の建築用の発熱塗料、発熱塗料の他に導電塗料として電池材料、半導体、放熱材料等の利用が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 チャンバー
2 カソード
3 アノード
4 高周波電源
5 るつぼ
6 不活性ガス
7 導入管
8 導出管
9 植物性原料
10 プラズマ装置
14 制御弁
15 リーク弁
19 炭化物
20 コントロール装置
21 ガス量コントロール装置
30 真空ポンプ
40 発熱体
42
50 発熱塗料
51 絶縁体
52、53 電極
100 炭素素材
113 グラフェン
S1 前処理工程
S2 炭化工程
S3 賦活工程。