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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006045
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】プロテクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20250109BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20250109BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G11/00
H02G3/04 018
B60R16/02 620A
B60R16/02 620C
B60R16/02 623T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106592
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DE03
5G357DE05
5G357DE08
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
(57)【要約】
【課題】グリスの漏れを抑制することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】プロテクタ1は、ベース10と、カバー20と、を備え、カバー20は、鉛直方向Zの下側に位置されるカバー側第1周壁22aを有し、カバー側第1周壁22aとカバー側底壁21との間の内面角部27には、円弧状の曲面形状部28が設けられ、ベース10は、鉛直方向Zの下側に位置されカバー側第1周壁22aの内側に重ねられるベース側第1周壁12aを有し、ベース側第1周壁12aの先端部12a1における鉛直方向Zに沿った第1厚さT1は、ベース側第1周壁12aの基端部12a2における鉛直方向Zに沿った第2厚さT2よりも薄く構成され、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28に乗り上げてカバー側底壁21と密着した状態で、ベース10とカバー20とが組み付けられる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース側底壁と、前記ベース側底壁の周縁部から当該ベース側底壁と交差する積層方向の一方側に突出したベース側周壁と、を有し、前記ベース側周壁の内側に車両に配索される配索材が収容される収容空間部が設けられたベースと、
前記ベース側底壁と対向するカバー側底壁と、前記カバー側底壁の周縁部から前記積層方向の他方側に突出したカバー側周壁と、を有し、前記収容空間部を前記積層方向の一方側から覆うように前記ベースに組み付けられるカバーと、
を備え、
前記ベースおよび前記カバーには、前記収容空間部と外部とを連通し、前記配索材が前記収容空間部内に導入または前記収容空間部外に引き出される一対の開口部が設けられ、
前記カバー側周壁は、前記積層方向と交差する鉛直方向の下側に位置されるカバー側第1周壁を含み、
前記カバー側第1周壁と前記カバー側底壁との間の内面角部には、円弧状の曲面形状部が設けられ、
前記ベース側周壁は、前記鉛直方向の下側に位置され、前記カバー側第1周壁の内側に重ねられるベース側第1周壁を含み、
前記ベース側第1周壁の先端部における前記鉛直方向に沿った第1厚さは、前記ベース側第1周壁の基端部における前記鉛直方向に沿った第2厚さよりも薄く構成され、
前記ベース側第1周壁の前記先端部が前記曲面形状部に乗り上げて前記カバー側底壁と密着した状態で、前記ベースと前記カバーとが組み付けられる、
プロテクタ。
【請求項2】
前記ベースと前記カバーとが組み付けられた状態で、前記ベース側第1周壁の前記先端部が前記曲面形状部に沿って湾曲し、当該ベース側第1周壁の前記先端部と前記基端部との間に凹部が形成される、
請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記ベース側第1周壁の前記先端部における前記第1厚さは、前記曲面形状部の上端部と下端部との間の前記鉛直方向に沿った曲面範囲よりも薄く構成される、
請求項1または2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記内面角部には、前記積層方向および前記鉛直方向と交差する延在方向に互いに間隔をあけて複数の前記曲面形状部が設けられる、
請求項1または2に記載のプロテクタ。
【請求項5】
導電性を有し、車両に配索される配索材と、
前記配索材を保護するプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは、
ベース側底壁と、前記ベース側底壁の周縁部から当該ベース側底壁と交差する積層方向の一方側に突出したベース側周壁と、を有し、前記ベース側周壁の内側に前記配索材が収容される収容空間部が設けられたベースと、
前記ベース側底壁と対向するカバー側底壁と、前記カバー側底壁の周縁部から前記積層方向の他方側に突出したカバー側周壁と、を有し、前記収容空間部を前記積層方向の一方側から覆うように前記ベースに組み付けられるカバーと、
を備え、
前記ベースおよび前記カバーには、前記収容空間部と外部とを連通し、前記配索材が前記収容空間部内に導入または前記収容空間部外に引き出される一対の開口部が設けられ、
前記カバー側周壁は、前記積層方向と交差する鉛直方向の下側に位置されるカバー側第1周壁を含み、
前記カバー側第1周壁と前記カバー側底壁との間の内面角部には、円弧状の曲面形状部が設けられ、
前記ベース側周壁は、前記鉛直方向の下側に位置され、前記カバー側第1周壁の内側に重ねられるベース側第1周壁を含み、
前記ベース側第1周壁の先端部における前記鉛直方向に沿った第1厚さは、前記ベース側第1周壁の基端部における前記鉛直方向に沿った第2厚さよりも薄く構成され、
前記ベース側第1周壁の前記先端部が前記曲面形状部に乗り上げて前記カバー側底壁と密着した状態で、前記ベースと前記カバーとが組み付けられる、
ワイヤハーネス。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤハーネスのプロテクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、車両に配索される配索材が収容される収容空間部が設けられたベースと、収容空間部を積層方向の一方側から覆うようにベースに組み付けられるカバーと、を備えたプロテクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-143606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、例えば、車両の搭載要件等によってプロテクタを縦置きの状態で設置する場合があり、この場合、収容空間部内に塗布されているグリス等がベースとカバーとの間の隙間から外部に漏れてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、グリスの漏れを抑制することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプロテクタは、ベース側底壁と、前記ベース側底壁の周縁部から当該ベース側底壁と交差する積層方向の一方側に突出したベース側周壁と、を有し、前記ベース側周壁の内側に車両に配索される配索材が収容される収容空間部が設けられたベースと、前記ベース側底壁と対向するカバー側底壁と、前記カバー側底壁の周縁部から前記積層方向の他方側に突出したカバー側周壁と、を有し、前記収容空間部を前記積層方向の一方側から覆うように前記ベースに組み付けられるカバーと、を備え、前記ベースおよび前記カバーには、前記収容空間部と外部とを連通し、前記配索材が前記収容空間部内に導入または前記収容空間部外に引き出される一対の開口部が設けられ、前記カバー側周壁は、前記積層方向と交差する鉛直方向の下側に位置されるカバー側第1周壁を含み、前記カバー側第1周壁と前記カバー側底壁との間の内面角部には、円弧状の曲面形状部が設けられ、前記ベース側周壁は、前記鉛直方向の下側に位置され、前記カバー側第1周壁の内側に重ねられるベース側第1周壁を含み、前記ベース側第1周壁の先端部における前記鉛直方向に沿った第1厚さは、前記ベース側第1周壁の基端部における前記鉛直方向に沿った第2厚さよりも薄く構成され、前記ベース側第1周壁の前記先端部が前記曲面形状部に乗り上げて前記カバー側底壁と密着した状態で、前記ベースと前記カバーとが組み付けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るプロテクタおよびワイヤハーネスでは、ベース側第1周壁の先端部における鉛直方向に沿った第1厚さは、ベース側第1周壁の基端部における鉛直方向に沿った第2厚さよりも薄く構成され、ベース側第1周壁の先端部が曲面形状部に乗り上げてカバー側底壁と密着した状態で、ベースとカバーとが組み付けられる。この構成により、プロテクタおよびワイヤハーネスは、例えば、ベースとカバーとの組み付け時に、ベース側第1周壁の基端部よりも厚さの薄い先端部を比較的容易に変形させてベースとカバーとを組み付けることができ、ひいてはベース側第1周壁の先端部とカバー側底壁との間の密着性を高めて当該先端部とカバー側底壁との間の隙間を塞ぐことができる。この結果、プロテクタおよびワイヤハーネスは、収容空間部内に塗布されているグリスの漏れを抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るプロテクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るプロテクタの例示的な分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るプロテクタの例示的な断面図である。
図4図4は、実施形態に係るプロテクタの曲面形状部の近傍の例示的な斜視図であって、曲面形状部にベース側第1周壁の先端部が乗り上げる前の状態を示した図である。
図5図5は、実施形態に係るプロテクタの曲面形状部の近傍の例示的な断面図であって、曲面形状部にベース側第1周壁の先端部が乗り上げた後の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロテクタ1が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図である。図1に示される本実施形態のプロテクタ1は、車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で配索材Wを各機器に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、配索材Wを保護するプロテクタ1と、を備えている。プロテクタ1は、例えば、車両に搭載された不図示のスライドシートやスライドドア等に配索される配索材Wの一部を余長部分として内部に収容して保護するものである。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブや、グロメット、電気接続箱、固定具、コネクタなど種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「延在方向X」といい、第2方向を「積層方向Y」といい、第3方向を「鉛直方向Z」という。ここでは、延在方向Xと積層方向Yと鉛直方向Zとは、相互に略直交する。延在方向Xは、典型的には、プロテクタ1の長手方向、プロテクタ1に対する配索材Wの引き出し方向(挿通方向)等に相当し、車両前後方向に沿う。積層方向Yは、典型的には、プロテクタ1における後述するベース10とカバー20との積層方向、プロテクタ1の厚さ方向等に相当し、車両幅方向に沿う。鉛直方向Zは、典型的には、プロテクタ1におけるベース10およびカバー20の幅方向(高さ方向)等に相当し、車両上下方向に沿う。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、プロテクタ1が車両に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
配索材Wは、例えば、車両において、スライドシートに設けられた電装品に対して電力を供給するものである。配索材Wは、例えば、複数の電線が束ねられた電線束と、当該電線束を覆う筒状の外装材としてのコルゲートチューブと、を含んで構成される。配索材Wは、電線束にコルゲートチューブが装着された装着状態において、相対的に高い柔軟性、良好な屈曲性を有する。本実施形態の配索材Wは、電線束にコルゲートチューブが装着された装着状態において、外力を加えていない自然の状態(略直線状態)から、外力を加えて屈曲させた屈曲状態にすると、屈曲された部分が弾性変形し屈曲部分に弾性反力が生じて元の状態に戻ろうとするものである。
【0013】
配索材Wは、プロテクタ1の内部に設けられた収容空間部4(図2参照)に一部が収容された状態で、当該配索材Wの一部が、スライドシートのスライド方向のうち一方のスライド移動に伴ってプロテクタ1の内側に導入され、スライド方向のうち他方のスライド移動に伴って、プロテクタ1の外側に引き出される。配索材Wは、一方の端部が、スライドシートに設けられた電装品に電気的に接続され、他方の端部が、車両に搭載されたバッテリ等に電気的に接続される。
【0014】
プロテクタ1は、延在方向Xに沿って延在し、延在方向Xの一端部に一対の開口部2、3が設けられている。開口部2、3は、プロテクタ1の内部に配索材Wの一部が収容された収容状態において、それぞれに配索材Wが挿通される。プロテクタ1は、スライドシートのスライド方向のうち、一方のスライド移動に伴って、配索材Wが一方の開口部2から導入され、スライド方向のうち、他方のスライド移動に伴って、配索材Wが当該開口部2から引き出される。配索材Wは、プロテクタ1の内部に一部が収容された収容状態で、一方の端部について、開口部2を介したプロテクタ1の内外への出し入れが可能に構成されている。
【0015】
一方、配索材Wは、プロテクタ1の内部に一部が収容された収容状態で、他方の端部について、開口部3から外側に突出した位置でプロテクタ1の一部にオプションテープや結束バンド等により結束されており、開口部3を介したプロテクタ1の内外への出し入れが規制されている。プロテクタ1は、後述するベース10およびカバー20の幅方向(短手方向)が鉛直方向Zに沿う縦置きの状態で設置され、延在方向Xの両端部に設けられた一対の取付部24、26を介して車体に締結される。
【0016】
図2は、プロテクタ1の分解斜視図であり、図3は、プロテクタ1の断面図である。図2、3に示されるように、プロテクタ1は、例えば、ベース10と、カバー20と、を含んで構成される。ベース10およびカバー20は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂等によって形成される。カバー20は、ベース10に対して積層方向Yの一方側に積層された状態で組付けられる。ベース10とカバー20とは、互いに別体で形成され、後述する係止部31および被係止部32による係止機構30によって互いに一体化される。プロテクタ1は、ベース10とカバー20とが相互に組み付けられることで、全体として略直方体状に形成される。
【0017】
ベース10は、例えば、ベース側底壁11と、ベース側底壁11の周縁部に設けられたベース側周壁12と、を有している。ベース側底壁11およびベース側周壁12は、プロテクタ1の内部空間部としての上述した収容空間部4を区画するための構造体である。収容空間部4は、配索材Wが収容される空間部である。ベース側底壁11は、例えば、平板状に形成され、延在方向Xに沿って延在している。ベース側底壁11の外面には、積層方向Yに沿って突出した複数のビード13が設けられている。複数のビード13は、ベース10を補強するためのものであり、例えば、延在方向Xおよび鉛直方向Zに沿って延びた格子状に形成される。
【0018】
ベース側周壁12は、ベース側底壁11の周縁部から積層方向Yの一方側に突出している。ベース側周壁12は、例えば、鉛直方向Zの下側に位置されるベース側第1周壁12aと、鉛直方向Zの上側に位置されるベース側第2周壁12bと、延在方向Xの他端部側(開口部2、3とは反対側)に位置されるベース側第3周壁12cと、を含んで構成される。ベース側第1周壁12aおよびベース側第2周壁12bは、延在方向Xに沿って直線状に延在している。ベース側第3周壁12cは、ベース側第1周壁12aおよびベース側第2周壁12bの延在方向Xの他端部と接続され、延在方向Xの他方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。
【0019】
また、ベース10の延在方向Xの一端部には、配索材Wが引き回される配線引き回し部15が設けられている。配線引き回し部15は、ベース側第1周壁12aの延在方向Xの一端部と接続され、延在方向Xの一方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。配線引き回し部15は、積層方向Yの一方側(カバー20側)に向けて開放される略U字状の断面を有しており、後述するカバー20側の配線引き回し部25と積層方向Yに重ねられる。一対の配線引き回し部15、25の内部空間部は、配索材Wが挿通される挿通空間部として機能し、当該挿通空間部の一端部は上述した収容空間部4と連通すると共に、他端部は上述した開口部2を構成している。
【0020】
また、ベース10の延在方向Xの両端部には、一対の取付部14、16が設けられている。取付部14は、ベース側第3周壁12cから鉛直方向Zの下側に突出した状態に設けられ、後述するカバー20側の取付部24と積層方向Yに重ねられる。取付部14、24には、プロテクタ1と車体とを締結するボルト等の締結部材が積層方向Yに貫通する取付穴14a、24aが設けられている。取付部16は、ベース側底壁11の延在方向Xの一端部に設けられ、後述するカバー20側の取付部26と積層方向Yに重ねられる。そして、取付部16、26には、上述したプロテクタ1と車体とを締結するボルト等の締結部材が積層方向Yに貫通する取付穴16c、26cが設けられている。
【0021】
カバー20は、ベース10に組み付けられ、当該ベース10における収容空間部4を覆う(塞ぐ)ものである。カバー20は、例えば、カバー側底壁21と、カバー側底壁21の周縁部に設けられたカバー側周壁22と、を有している。カバー側底壁21およびカバー側周壁22は、プロテクタ1の内部空間部としての上述した収容空間部4を区画するための構造体である。カバー側底壁21は、例えば、平板状に形成され、ベース側底壁11と対向するように延在方向Xに沿って延在している。カバー側底壁21の外面には、積層方向Yに沿って突出した複数のビード23(図1参照)が設けられている。複数のビード23は、カバー20を補強するためのものであり、例えば、延在方向Xおよび鉛直方向Zに沿って延びた格子状に形成される。
【0022】
カバー側周壁22は、カバー側底壁21の周縁部から積層方向Yの他方側に突出している。カバー側周壁22は、例えば、鉛直方向Zの下側に位置されるカバー側第1周壁22aと、鉛直方向Zの上側に位置されるカバー側第2周壁22bと、延在方向Xの他端部側(開口部2、3とは反対側)に位置されるカバー側第3周壁22cと、を含んで構成される。カバー側第1周壁22aおよびカバー側第2周壁22bは、延在方向Xに沿って直線状に延在している。カバー側第1周壁22aは、ベース側第1周壁12aの外側に重ねられ、カバー側第2周壁22bは、ベース側第2周壁12bの外側に重ねられる。カバー側第1周壁22aは、車両の床面と対向する。
【0023】
カバー側第3周壁22cは、カバー側第1周壁22aの延在方向Xの他端部22a2およびカバー側第2周壁22bの延在方向Xの他端部と接続され、延在方向Xの他方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。カバー側第3周壁22cは、ベース側第3周壁12cの外側に重ねられる。また、カバー側第3周壁22c、すなわちカバー20の延在方向Xの他端部には、取付部24が設けられている。取付部24は、カバー側第3周壁22cから鉛直方向Zの下側に突出している。
【0024】
また、カバー20の延在方向Xの一端部には、配索材Wが引き回される配線引き回し部25が設けられている。配線引き回し部25は、カバー側第1周壁22aの延在方向Xの一端部22a1と接続され、延在方向Xの一方側に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。配線引き回し部25は、積層方向Yの他方側(ベース10側)に向けて開放される略U字状の断面を有しており、上述したベース10側の配線引き回し部15と積層方向Yに重ねられ、当該配線引き回し部15と共に配索材Wが挿通される挿通空間部を構成している。開口部2は、配線引き回し部15、25における収容空間部4とは反対側の端部に設けられ、開口部3は、配線引き回し部15、25における収容空間部4側の端部の近傍に設けられている。
【0025】
また、カバー20の延在方向Xの一端部には、取付部26が設けられている。取付部26は、上述したベース10側の取付部16と積層方向Yに重ねられる。取付部26は、例えば、カバー側底壁21から積層方向Yの他方側(ベース10側)に凸状に突出した状態に設けられる。これにより、カバー側底壁21と取付部26の頂部26a(凸部)との間には、積層方向Yの段差部26bが形成される。段差部26bの側面は、配索材Wの後述する折返し部W1(図2参照)に沿った円弧状に形成される。
【0026】
収容空間部4は、プロテクタ1内に形成され、一対の開口部2、3を介して外部と連通している。収容空間部4に配索された配索材Wは、積層方向Yから見た場合、鉛直方向Zの両側に直線状態にある直線部がそれぞれ配置され、鉛直方向Zの中央側に直線部を連結しかつ折返し状態にある折返し部W1が配置される。折返し部W1は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、延在方向Xの一方側から他方側にU字状に折り返された部分である。直線部の一方は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、折返し部W1の一端部と接続されベース側第1周壁12aおよびカバー側第1周壁22aと対向するように延在方向Xに沿って延在する部分である。直線部の他方は、収容空間部4に収容された配索材Wのうち、折返し部W1の他端部と接続されベース側第2周壁12bおよびカバー側第2周壁22bと対向するように延在方向Xに沿って延在する部分である。
【0027】
折返し部W1は、例えば、スライドシートのスライド移動に伴い、延在方向Xに沿って移動する。具体的には、折返し部W1は、スライドシートのスライド移動に伴って開口部2から出し入れされた場合に、段差部26bの側面と近接する第1位置P1と、ベース側第3周壁12cおよびカバー側第3周壁22cと近接する第2位置P2と、の間で延在方向Xに沿って移動可能である。配索材Wは、スライドシートのスライド移動に伴い、収容空間部4内で第1位置P1と第2位置P2との間で摺動する。このため、収容空間部4内で摺動する配索材Wの外周面には、摺動を円滑に行わせるためのグリスG(図5参照)等が塗布されている。
【0028】
係止機構30は、例えば、カバー20側に設けられた係止部31と、ベース10側に設けられた被係止部32と、を有している。係止部31は、例えば、カバー側第1周壁22aおよびカバー側第2周壁22bの外面に爪状に形成される。ここでは、カバー側第1周壁22aおよびカバー側第2周壁22bには、延在方向Xに互いに間隔をあけて複数の係止部31が設けられている。係止部31は、カバー側第1周壁22aおよびカバー側第2周壁22bから鉛直方向Zにおいて収容空間部4とは反対側に突出し、積層方向Yの一方側を向いた係止面31aを有している。係止面31aは、ベース10とカバー20とが係止された状態で、被係止部32と積層方向Yに対向する。
【0029】
被係止部32は、例えば、ベース側第1周壁12aおよびベース側第2周壁12bの外面に積層方向Yに沿って係止部31が挿入される開口を有した筒状に形成される。ここでは、被係止部32は、ベース側第1周壁12aおよびベース側第2周壁12bにおける係止部31と対応する位置に設けられており、当該係止部31が挿入および係止される。被係止部32は、積層方向Yの他方側を向いた被係止面32aを有している。被係止面32aは、係止面31aと積層方向Yに対向し、係止面31aと被係止面32aとが係止されることで、ベース10のカバー20に対する積層方向Yの他方側への移動(抜け)が制限される。
【0030】
図4は、プロテクタ1の曲面形状部28の近傍の斜視図であって、曲面形状部28にベース側第1周壁12aの先端部12a1が乗り上げる前の状態を示した図である。図4に示されるように、本実施形態では、カバー側第1周壁22aとカバー側底壁21との間の内面角部27には、円弧状の曲面形状部28が設けられている。曲面形状部28は、配索材Wに向けて開放される略U字状に構成される。ここでは、内面角部27には、延在方向Xに互いに間隔をあけて複数の曲面形状部28が設けられている。複数の曲面形状部28は、例えば、ベース10とカバー20との嵌合組み付け時に、ベース側第1周壁12aの先端部12a1を当該曲面形状部28の上端部28b側に向けて案内するガイドとして機能する。
【0031】
具体的には、曲面形状部28は、例えば、カバー側底壁21の内面と接続される上端部28bと、カバー側第1周壁22aの内面と接続される下端部28c(図5参照)と、上端部28bと下端部28cとの間に渡って延びる円弧面28a(R面)と、をそれぞれ有している。上端部28bは、カバー側底壁21の内面と略面一に形成され、下端部28cは、カバー側第1周壁22aの内面と略面一に形成される。また、円弧面28aは、カバー側底壁21の内面およびカバー側第1周壁22aの内面よりも収容空間部4内に突出している。したがって、本実施形態では、ベース10をカバー20に対して積層方向Yに沿ってスライドさせて嵌合させることにより、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28の下端部28c側から上端部28b側に向けて円弧面28aに沿ってガイドされる。
【0032】
また、ベース側第1周壁12aは、例えば、積層方向Yの一方側(カバー20側)に位置される先端部12a1と、積層方向Yの他方側に位置されベース側底壁11と接続される基端部12a2と、を有している。そして、本実施形態では、ベース側第1周壁12aの先端部12a1における鉛直方向Zに沿った第1厚さT1は、ベース側第1周壁12aの基端部12a2における鉛直方向Zに沿った第2厚さT2(図5参照)よりも薄く構成される。具体的には、ベース側第1周壁12aの先端部12a1における第1厚さT1は、曲面形状部28の上端部28bと下端部28cとの間の鉛直方向Zに沿った曲面範囲T3(図5参照)よりも薄く構成される。
【0033】
ここで、本実施形態では、ベース10とカバー20との嵌合組み付け時に、収容空間部4内に塗布されているグリスGの漏れを抑制するために、ベース側第1周壁12aの先端部12a1を弾性変形させて当該先端部12a1とカバー側底壁21との間の密着性を高めた状態でベース10とカバー20とを組み付ける必要がある。したがって、仮に、ベース側第1周壁12aにおける先端部12a1の第1厚さT1が基端部12a2の第2厚さT2と略同じに構成された場合、先端部12a1の弾性変形に要するベース10とカバー20との嵌合荷重が増加し、これらベース10とカバー20との組み付け性が悪化してしまう虞がある。
【0034】
その点、本実施形態では、ベース側第1周壁12aにおける先端部12a1の第1厚さT1が基端部12a2の第2厚さT2よりも薄く構成されるため、先端部12a1の弾性変形に要するベース10とカバー20との嵌合荷重の増加を抑制し、これらの組み付け性の悪化を抑制することができる。また、本実施形態では、ベース10とカバー20とが組み付けられた状態では、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が上述した曲面形状部28に乗り上げて当該先端部12a1とカバー側底壁21とが密着するように構成される。
【0035】
図5は、プロテクタ1の曲面形状部28の近傍の断面図であって、曲面形状部28にベース側第1周壁12aの先端部12a1が乗り上げた後の状態を示した図である。図5に示されるように、本実施形態では、ベース10とカバー20との嵌合組み付け時に、ベース側第1周壁12aの先端部12a1の剛性(強度)が基端部12a2の剛性(強度)と比べて低いため、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28に沿って湾曲しうる。これにより、ベース側第1周壁12aの先端部12a1と基端部12a2との間に凹部18が形成される。凹部18は、鉛直方向Zの下側に向けて凹み、鉛直方向Zの上側に向けて開放されたグリスGが溜まる空間部であり、延在方向Xに沿って延びている。なお、図5では、便宜上、ベース側第1周壁12aの先端部12a1における湾曲部分が誇張して示されている。
【0036】
また、本実施形態では、ベース側第1周壁12aの先端部12a1は、ベース10とカバー20とが組み付けられた状態において、自由状態よりも鉛直方向Zの上側かつ積層方向Yの他方側(ベース10側)に湾曲している。これにより、ベース側第1周壁12aの先端部12a1に弾性復元力が生じ、当該先端部12a1とカバー側底壁21(曲面形状部28の上端部28b)との間の面圧が増大してこれらの位置でのシール性が高められている。また、本実施形態では、上述した係止機構30は、ベース側第1周壁12aの先端部12a1に弾性復元力が生じた状態で、係止部31と被係止部32とが係止される。係止部31と被係止部32とが係止された状態では、ベース10のカバー20に対する積層方向Yの他方側への移動(抜け)が制限され、ベース側第1周壁12aの先端部12a1とカバー側底壁21との間の面圧が増大した状態が保持される。
【0037】
なお、本実施形態では、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28に沿って湾曲した状態で先端部12a1とカバー側底壁21とが密着した場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28に単に乗り上げた状態、すなわち曲面形状部28に対して図4に示されるベース側第1周壁12aの先端部12a1を鉛直方向Zの上側にスライド移動させた状態(曲面形状部28に沿って湾曲しない状態)で先端部12a1とカバー側底壁21とが密着するように構成されてもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、ベース側第1周壁12aの先端部12a1における鉛直方向Zに沿った第1厚さT1は、ベース側第1周壁12aの基端部12a2における鉛直方向Zに沿った第2厚さT2よりも薄く構成され、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28に乗り上げてカバー側底壁21と密着した状態で、ベース10とカバー20とが組み付けられる。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、ベース10とカバー20との組み付け時に、ベース側第1周壁12aの基端部12a2よりも厚さの薄い先端部12a1を比較的容易に変形させてベース10とカバー20とを組み付けることができ、ひいてはベース側第1周壁12aの先端部12a1とカバー側底壁21との間の密着性を高めて当該先端部12a1とカバー側底壁21との間の隙間を塞ぐことができる。この結果、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、収容空間部4内に塗布されているグリスGの漏れを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、ベース10とカバー20とが組み付けられた状態で、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28に沿って湾曲し、当該ベース側第1周壁12aの先端部12a1と基端部12a2との間に凹部18が形成される。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、凹部18によって収容空間部4内に塗布されているグリスGが溜まるスペース(グリス溜り部)が形成されるため、これによりグリスGの漏れをより一層抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、ベース側第1周壁12aの先端部12a1における第1厚さT1は、曲面形状部28の上端部28bと下端部28cとの間の鉛直方向Zに沿った曲面範囲T3よりも薄く構成される。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、ベース側第1周壁12aの先端部12a1が曲面形状部28をより容易に乗り上げることができるようにしたり、ベース側第1周壁12aの先端部12a1を曲面形状部28に沿ってより容易に変形させることができたりする。
【0041】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、内面角部27には、積層方向Yおよび鉛直方向Zと交差する延在方向Xに互いに間隔をあけて複数の曲面形状部28が設けられる。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、曲面形状部28が内面角部27の延在方向Xの一端部と他端部との間に渡って連続的に設けられた場合と比べて、カバー20をより軽量に構成することができたり、カバー20とベース10の摩耗を抑制できたりする。
【0042】
なお、本実施形態では、複数の曲面形状部28がカバー側第1周壁22aとカバー側底壁21との間の内面角部27に延在方向Xに沿って間欠的に設けられた場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、曲面形状部28が内面角部27の延在方向Xの一端部と他端部との間に渡って連続的に設けられてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 プロテクタ
2、3 開口部
4 収容空間部
10 ベース
11 ベース側底壁
12 ベース側周壁
12a ベース側第1周壁
12a1 先端部
12a2 基端部
18 凹部
20 カバー
21 カバー側底壁
22 カバー側周壁
22a カバー側第1周壁
27 内面角部
28 曲面形状部
28b 上端部
28c 下端部
T1 第1厚さ
T2 第2厚さ
T3 曲面範囲
W 配索材
WH ワイヤハーネス
X 延在方向
Y 積層方向
Z 鉛直方向

図1
図2
図3
図4
図5