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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006050
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20250109BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B41J29/38 104
B41J3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106602
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】山上 修平
(72)【発明者】
【氏名】相馬 宗厳
(72)【発明者】
【氏名】石山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平松 佑基
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 大毅
【テーマコード(参考)】
2C055
2C061
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC01
2C055CC03
2C061AP10
2C061AQ04
2C061AS08
2C061HJ10
2C061HK11
2C061HN08
2C061HN15
2C061HQ20
(57)【要約】
【課題】外部デバイスへの給電開始後にバッテリの残量が変動した場合においても、印刷に必要な電力を確保できるプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタは、バッテリで駆動可能である。プリンタは、印刷部と給電部とUSBPDICと備える。印刷部は、バッテリの電力に基づき、媒体に印刷を実行可能である。給電部は、バッテリの電力に基づき給電される電力である給電電力を、外部デバイスへ給電可能である。USBPDICは、給電部による外部デバイスへの給電電力の給電開始後に、バッテリの残量を監視する(S9)。USBPDICは、監視されたバッテリの残量に応じて、外部デバイスへの給電電力を変更する(S11)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリで駆動可能なプリンタであって、
前記バッテリの電力に基づき、媒体に印刷を実行可能な印刷部と、
前記バッテリの電力に基づき給電される電力である給電電力を、外部デバイスへ給電可能な給電部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記給電部による前記外部デバイスへの前記給電電力の給電開始後に、前記バッテリの残量を監視する監視処理と、
前記監視処理により監視された前記バッテリの残量に応じて、前記外部デバイスへの前記給電電力を変更する変更処理と
を実行する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記変更処理は、
前記監視処理により監視された前記バッテリの残量の低下に応じて、前記給電電力を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記バッテリは、外部電源の電力により充電され、
前記変更処理は、
前記外部電源の電力で前記バッテリを充電中の場合、前記監視処理により監視された前記バッテリの残量の増加に応じて、前記給電電力を増加させる
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記変更処理は、
前記バッテリの残量が閾値未満の場合、前記外部デバイスへの前記給電電力の給電を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記給電部は、
USB PD(USB Power Delivery)規格に準じたネゴシエーションを、前記外部デバイスとの間で実行し、
前記ネゴシエーションの結果に基づき、前記外部デバイスに前記給電電力を給電する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記バッテリの残量に応じて前記給電部が給電可能な前記給電電力を示すPDO(Power Data Object)を記憶する記憶部を更に備え、
前記変更処理は、
前記記憶部に記憶した前記PDO(Power Data Object)を参照して、前記バッテリの残量に応じた前記給電電力に変更する
ことを特徴とする請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
外部電源の接続の有無に応じて前記外部デバイスへの給電経路を切り替える給電経路切り替え部を更に備え、
前記給電経路切り替え部は、
前記外部電源が接続されている場合に、前記外部電源の電力から給電するように前記給電経路を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の送電装置は、バッテリで駆動する。送電装置は、バッテリの電力に基づき、受電装置へ給電する電力である給電電力を決定する。送電装置は、決定した給電電力を、受電装置に給電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-127933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記送電装置は、バッテリの残量が低下した場合でも、決定した給電電力での給電を継続する。この場合、バッテリの残量によっては、送電装置に必要な電力が不足する可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、外部デバイスへの給電開始後にバッテリの残量が変動した場合においても、印刷に必要な電力を確保できるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプリンタは、バッテリで駆動可能なプリンタであって、前記バッテリの電力に基づき、媒体に印刷を実行可能な印刷部と、前記バッテリの電力に基づき給電される電力である給電電力を、外部デバイスへ給電可能な給電部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記給電部による前記外部デバイスへの前記給電電力の給電開始後に、前記バッテリの残量を監視する監視処理と、前記監視処理により監視された前記バッテリの残量に応じて、前記外部デバイスへの前記給電電力を変更する変更処理とを実行することを特徴とする。
【0007】
プリンタは、バッテリ残量の変動に応じて給電電力を変更することで、外部デバイスへの給電電力の給電を適切に制御できる。故に、プリンタは、外部デバイスへの給電開始後にバッテリの残量が変動した場合においても、印刷に必要な電力を確保できる。プリンタは、バッテリ残量の変動に応じて給電電力を変更することで、外部デバイスへの給電電力の給電を適切に制御できる。故に、プリンタは、外部デバイスへの給電開始後にバッテリの残量が変動した場合においても、印刷に必要な電力を確保できる。
【0008】
本発明において、前記変更処理は、前記監視処理により監視された前記バッテリの残量の低下に応じて、前記給電電力を低下させてもよい。プリンタは、バッテリ残量の低下に応じて給電電力を低下させることで、外部デバイスへの給電電力を確保しつつ、印刷に必要な電力を確保できる。
【0009】
本発明において、前記バッテリは、外部電源の電力により充電され、前記変更処理は、前記外部電源の電力で前記バッテリを充電中の場合、前記監視処理により監視された前記バッテリの残量の増加に応じて、前記給電電力を増加させてもよい。プリンタは、充電によりバッテリの残量が増加した場合には、印刷に必要な電力を確保しつつ、外部デバイスへの給電電力を増加できる。
【0010】
本発明において、前記変更処理は、前記バッテリの残量が閾値未満の場合、前記外部デバイスへの前記給電電力の給電を停止してもよい。プリンタは、外部デバイスへの給電電力の給電を停止することで、印刷に必要な電力を確保できる。
【0011】
本発明において、前記給電部は、USB PD(USB Power Delivery)規格に準じたネゴシエーションを、前記外部デバイスとの間で実行し、前記ネゴシエーションの結果に基づき、前記外部デバイスに前記給電電力を給電してもよい。プリンタは、USB PD(USB Power Delivery)規格に準じて、外部デバイスへ給電電力を給電できる。
【0012】
本発明において、プリンタは、前記バッテリの残量に応じて前記給電部が給電可能な前記給電電力を示すPDO(Power Data Object)を記憶する記憶部を更に備え、前記変更処理は、前記記憶部に記憶した前記PDO(Power Data Object)を参照して、前記バッテリの残量に応じた前記給電電力に変更してもよい。プリンタは、PDO(Power Data Object)によって、給電電力の給電をより詳細に制御できる。
【0013】
本発明において、プリンタは、外部電源の接続の有無に応じて前記外部デバイスへの給電経路を切り替える給電経路切り替え部を更に備え、前記給電経路切り替え部は、前記外部電源が接続されている場合に、前記外部電源の電力から給電するように前記給電経路を切り替えてもよい。プリンタは、外部電源が接続されている場合には、外部電源の電力から外部デバイスへ給電する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】プリンタ1とタブレットPC5の接続態様を示す図である。
図2】プリンタ1の電気構成を示すブロック図である。
図3】メイン処理のフローチャートである。
図4】PDO(Power Data Object)を示す図表である。
図5】変形例におけるメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1の右斜め下方向、左斜め上方向、右斜め上方向、左斜め下方向、上方向、及び下方向を、各々プリンタ1の右方、左方、後方、前方、上方、及び下方とする。
【0016】
図1に示すように、プリンタ1は、印刷用の媒体に対して印刷可能に構成される。媒体は、例えば、長尺状の台紙に連続的に貼付された複数の感熱ラベルである。プリンタ1は、バッテリ11から電力の供給を受けて駆動する。バッテリ11は、プリンタ1の内部に設けた装着部42(図2参照)に着脱可能に装着される。バッテリ11は、例えばリチウムイオン二次電池である。なお、プリンタ1は、例えば商用コンセント(図示略)に接続する外部電源から電力の供給を受けて駆動可能である。外部電源は、例えばACアダプタ9(図2参照)である。ACアダプタ9は、プリンタ1の右側面の後下部に設けた装着部41に接続される。
【0017】
プリンタ1の右側面の前下部には、インタフェイス43が設けられる。インタフェイス43は、USB Type-C(登録商標)規格に準拠するUSBインタフェイス(I/F)である。インタフェイス43には、ケーブル3が接続される。ケーブル3は、USB Type-C規格に準拠するコネクタを備え、USB PD(USB Power Delivery)に対応する。例えばケーブル3は、最大5Aの電流に対応する電力の送信と、各種情報の伝達を行うことができる。
【0018】
プリンタ1は、インタフェイス43及びケーブル3を介して、例えば外部デバイスと接続可能である。外部デバイスは、例えばタブレットPC5である。タブレットPC5は、例えばLCDのタッチパネルを備える。ユーザは、タッチパネルで文字、図形等の印刷データを編集して、ケーブル3を介してプリンタ1に印刷データを送信する。プリンタ1は、外部デバイスから受信した印刷データに基づいて、媒体に文字、図形等のキャラクタを印刷する。
【0019】
また、プリンタ1は、USB PD(USB Power Delivery)規格に準じて、タブレットPC5に電力を給電可能である。これにより、プリンタ1は、タブレットPC5を充電できる。
【0020】
図2を参照してプリンタ1の電気的構成を説明する。プリンタ1は、更に、充電IC31、OR回路32、DCDC電源33、35、デジタル回路部6、印刷部7、及び給電部8等を備える。充電IC31は、ACアダプタ9からの電力に基づき、装着部42に装着されたバッテリ11の充電を実行する。バッテリ11は、バッテリ残量を検出可能なセンサ11Aを備える。センサ11Aからの出力結果は、CPU21へ送信される。CPU21は、受信した出力結果からバッテリ11の残量を検出する。
【0021】
OR回路32は、バッテリ11とACアダプタ9の接続の有無に応じてタブレットPC5への給電経路を切り替える。OR回路32は、例えばACアダプタ9のみが接続されている場合に、ACアダプタ9の電力から給電するように給電経路を切り替える。OR回路32は、例えばバッテリ11のみが接続されている場合に、バッテリ11の電力から給電するように給電経路を切り替える。ACアダプタ9とバッテリ11が接続されている場合には、例えばOR回路32は、ACアダプタ9の電力をバッテリ11に給電しつつ、バッテリ11の電力をデジタル回路部6、印刷部7、給電部8等に給電するように給電経路を切り替える。なお、バッテリ11とACアダプタ9がプリンタ1に接続されている場合、OR回路32は、ACアダプタ9の電力をバッテリ11に給電し、ACアダプタ9の電力からタブレットPC5へ給電するように給電経路を切り替えてもよい。この場合、OR回路32は、バッテリ11又はACアダプタ9の何れかの電力からデジタル回路部6、印刷部7、給電部8等に給電するように給電経路を切り替えてもよい。なお、OR回路32の給電経路の切り替えは、自動で実行されるが、ユーザにより設定可能でもよい。
【0022】
DCDC電源33は、ACアダプタ9又はバッテリ11からの入力電圧を、デジタル回路部6を駆動する為の出力電圧(例えば、3.3V)に変換する。デジタル回路部6は、CPU21、RAM22、フラッシュメモリ23、及びEEPROM24等を含む。CPU21は、プリンタ1の統括制御を行う。CPU21は、RAM22、フラッシュメモリ23、EEPROM24、印刷部7、及び給電部8に電気的に接続する。
【0023】
RAM22は、タブレットPC5から受信した印刷データ等、種々のデータを一時的に記憶する。フラッシュメモリ23には、プリンタ1を制御する為にCPU21及びUSBPDIC37により実行される各種プログラム等が記憶される。EEPROM24には、プリンタ設定や印刷履歴などの情報が記憶される。
【0024】
ACアダプタ9又はバッテリ11からの電力は、印刷部7に供給される。印刷部7は、ACアダプタ9又はバッテリ11の電力に基づき、媒体に印刷を実行可能である。印刷部7は、サーマルヘッド13、及び搬送モータ15を備える。サーマルヘッド13は、CPU21からの信号に応じて発熱し、媒体に印刷を行う。搬送モータ15は、媒体を送る為の送りローラを駆動する。CPU21は、サーマルヘッド13と搬送モータ15とを制御して、媒体に印刷を実行する。
【0025】
給電部8は、DCDC電源35、USBPDIC37、FET36、及びインタフェイス43等を備える。DCDC電源35は、ACアダプタ9又はバッテリ11からの入力電圧を、タブレットPC5への給電に適した出力電圧(例えば9V、5V等)に変換する。以下、DCDC電源35が出力する電力を「給電電力」ともいう。給電電力は、タブレットPC5へ給電される。USBPDIC37は、CPU21との間で相互に通信可能である。USBPDIC37は、DCDC電源35からの出力電圧の値を制御可能である。USBPDIC37は、インタフェイス43を介して、USB PD(USB Power Delivery)規格に準じたネゴシエーションを、タブレットPC5との間で実行する。USBPDIC37は、FET36をオンオフ制御することで、DCDC電源35からタブレットPC5への給電電力の給電を制御する。例えば、FET36がオンされた場合、インタフェイス43、ケーブル3を介して給電電力がタブレットPC5へ給電される。つまり、給電部8は、ACアダプタ9又はバッテリ11の電力に基づき給電される電力である給電電力を、タブレットPC5へ給電可能である。なお、USBPDIC37は、記憶部37A等を備える。例えば記憶部37Aは、後述するPDO(Power Data Object)を記憶する。
【0026】
図3を参照して、メイン処理について説明する。以下の説明では、ACアダプタ9がプリンタ1に接続されていない場合と、接続された場合とで分けて説明する。初めに、ACアダプタ9がプリンタ1に接続されていない場合を説明する。この場合、プリンタ1は、バッテリ11の電力でのみ駆動する。ACアダプタ9が接続されていないので、プリンタ1はバッテリ11の充電を行わない。ユーザによりプリンタ1の電源ボタンが押下されると、USBPDIC37は、フラッシュメモリ23からプログラムを読み出して実行する。これにより、USBPDIC37は、メイン処理を開始する。
【0027】
メイン処理を開始すると、USBPDIC37は、タブレットPC5との間でネゴシエーションを開始するか否か判断する(S1)。例えばUSBPDIC37は、プリンタ1にタブレットPC5が接続されたことを検出した場合に、ネゴシエーションを開始すると判断する。ネゴシエーションを開始しないと判断した場合(S1:NO)、USBPDIC37は、処理を戻して待機する。ネゴシエーションを開始すると判断した場合(S1:YES)、USBPDIC37は、ネゴシエーションを、タブレットPC5との間で実行する(S3)。
【0028】
USBPDIC37は、ネゴシエーションが成功したか否か判断する(S5)。USBPDIC37は、例えば、タブレットPC5が要求する給電電力を、給電部8が給電可能か否かで成否を決定する。ネゴシエーションが失敗したと判断した場合(S5:NO)、USBPDIC37は、給電部8からタブレットPC5への給電電力の給電を不可に設定する(S19)。この場合、USBPDIC37は、FET36をオフする。これにより、DCDC電源35からの給電電力の給電が不能となる。USBPDIC37は、処理をS1に戻す。
【0029】
ネゴシエーションが成功したと判断した場合(S5:YES)、USBPDIC37は、給電部8からタブレットPC5への給電電力の給電を開始する(S7)。この場合、USBPDIC37は、FET36をオンする。これにより、DCDC電源35からの給電電力がタブレットPC5に給電される。例えばS7の処理で給電される給電電力は、S3の処理で実行されたネゴシエーションで、タブレットPC5が要求した電力に相当する。また、USBPDIC37は、タブレットPC5が要求する電圧値が出力されるように、DCDC電源35を制御する。USBPDIC37は、ネゴシエーションの結果に基づき、タブレットPC5に給電電力を給電する。
【0030】
USBPDIC37は、給電部8によるタブレットPC5への給電電力の給電開始後に、バッテリ11の残量を監視する(S9)。この場合、USBPDIC37は、バッテリ11の残量をCPU21から取得する。なお、USBPDIC37は、センサ11Aの検出結果を直接取得することで、バッテリ11の残量を監視してもよい。
【0031】
USBPDIC37は、監視されたバッテリ11の残量に応じて、タブレットPC5への給電電力を変更する(S11)。この場合、USBPDIC37は、図4に示すPDO(Power Data Object)を参照する。PDO(Power Data Object)は、バッテリ11の残量に応じて給電部8が給電可能な給電電力を示す。PDO(Power Data Object)は、バッテリ11の残量に対応した給電電力(電圧、電流)を、「PDO 0」~「PDO 4」に分類したものである。PDO(Power Data Object)によれば、バッテリ11の残量が減るにつれて、給電部8の給電可能な給電電力が抑制される。例えば、バッテリ残量が80%~100%の間にある場合、USBPDIC37は、分類「PDO 0」~「PDO 4」を選択可能となる。この場合、給電部8は、最大で27Wの給電電力を給電できる。一方、バッテリ残量が0%~20%の間にある場合、USBPDIC37は、分類「PDO 4」のみ選択可能となる。この場合、給電部8は、最大で5Wの給電電力を給電できる。
【0032】
USBPDIC37は、S11で変更された給電電力に基づき、タブレットPC5との間でネゴシエーションを開始する(S13)。USBPDIC37は、給電部8との通信によりネゴシエーションが成功したか否か判断する(S15)。ネゴシエーションが成功したと判断した場合(S15:YES)、USBPDIC37は、S11の処理で変更した給電電力の給電を開始する(S17)。USBPDIC37は、処理をS9に処理を戻す。
【0033】
例えば、S17の処理では、S7の処理で開始された給電電力の給電を引き続き給電可能な場合、その給電電力の給電を維持する。例えばタブレットPC5への給電開始時から分類「PDO 1」に対応する給電電力(15W)が給電されている場合、USBPDIC37は、分類「PDO 1」の設定を維持することとなる。従って、給電部8は、S17の処理では15Wに相当する給電電力の給電を維持する。
【0034】
一方、S7の処理での給電電力の給電開始時に「PDO 1」に対応する給電電力(15W)が給電されている場合を想定する。ここで、S9の監視によりプリンタ1のバッテリ11の残量が40%~60%であると判断した場合、USBPDIC37は、分類「PDO 2」に設定する。これに伴い、給電部8は、10Wに相当する給電電力を給電可能となる。また、バッテリ11の残量が20%~40%、又は0%~20%となった場合についても同様に給電電力が設定される。つまり、給電部8は、監視されたバッテリ11の残量の低下に応じて、給電電力を低下させる。
【0035】
一方、ネゴシエーションが失敗したと判断した場合(S15:NO)、例えばタブレットPC5が要求する給電電力を給電できないと判断した場合、USBPDIC37は、給電部8からタブレットPC5への給電電力の給電を不可に設定する(S19)。この場合、USBPDIC37は、FET36をオフする。USBPDIC37は、処理をS1に戻す。
【0036】
次に、ACアダプタ9がプリンタ1に接続されている場合について説明する。この場合、バッテリ11はACアダプタ9の電力で充電される。従って、バッテリ11の残量は時間の経過とともに増加する。なお、デジタル回路部6、印刷部7、及び給電部8等には、バッテリ11からの電力が給電される。
【0037】
図3に示すように、USBPDIC37は上記と同様にS1~S5、S7、S19の処理を実行する。USBPDIC37は、バッテリ11の残量を監視する(S9)。USBPDIC37は、監視されたバッテリ11の残量に応じて、タブレットPC5への給電電力を変更する(S11)。この場合、USBPDIC37は、図4に示すPDO(Power Data Object)を参照して、監視されたバッテリ11の残量の増加に応じて、給電電力を増加させる。例えば、バッテリ11の残量が20%~40%(分類「PDO 3」)から40%~60%(分類「PDO 2」)に増加した場合、USBPDIC37は、7.5W(分類「PDO 3」)から10W(分類「PDO 2」)に給電電力を増加できる。
【0038】
その後、USBPDIC37は、S13~S17、S19の処理を実行する。S13~S17、S19の処理は、ACアダプタ9がプリンタ1に接続されていない場合の処理と同様である。
【0039】
以上説明したように、USBPDIC37は、給電部8によるタブレットPC5への給電電力の給電開始後に、バッテリ11の残量を監視する。USBPDIC37は、監視されたバッテリ11の残量に応じて、タブレットPC5への給電電力を変更する。
【0040】
プリンタ1は、バッテリ11残量の変動に応じて給電電力を変更することで、タブレットPC5への給電電力の給電を適切に制御できる。故に、プリンタ1は、タブレットPC5への給電開始後にバッテリ11の残量が変動した場合においても、印刷に必要な電力を確保できる。
【0041】
USBPDIC37は、監視されたバッテリ11の残量の低下に応じて、給電電力を低下させる。プリンタ1は、バッテリ11残量の低下に応じて給電電力を低下させることで、タブレットPC5への給電電力を確保しつつ、印刷に必要な電力を確保できる。
【0042】
バッテリ11は、ACアダプタ9の電力により充電される。USBPDIC37は、ACアダプタ9の電力でバッテリ11を充電中の場合、監視されたバッテリ11の残量の増加に応じて、給電電力を増加させる。プリンタ1は、充電によりバッテリ11の残量が増加した場合には、印刷に必要な電力を確保しつつ、タブレットPC5への給電電力を増加できる。
【0043】
給電部8は、USB PD(USB Power Delivery)規格に準じたネゴシエーションを、タブレットPC5との間で実行する。給電部8は、ネゴシエーションの結果に基づき、タブレットPC5に給電電力を給電する。プリンタ1は、USB PD(USB Power Delivery)規格に準じて、タブレットPC5へ給電電力を給電できる。
【0044】
記憶部37Aは、バッテリ11の残量に応じて給電部8が給電可能な給電電力を示すPDO(Power Data Object)を記憶する。USBPDIC37は、記憶部37Aに記憶したPDO(Power Data Object)を参照して、バッテリ11の残量に応じた給電電力に変更する。プリンタ1は、PDO(Power Data Object)によって、給電電力の給電をより詳細に制御できる。
【0045】
OR回路32は、ACアダプタ9の接続の有無に応じてタブレットPC5への給電経路を切り替える。OR回路32は、ACアダプタ9が接続されている場合に、ACアダプタ9の電力から給電するように給電経路を切り替える。故に、プリンタ1は、ACアダプタ9が接続されている場合には、ACアダプタ9の電力からタブレットPC5へ給電できる。
【0046】
図5を参照して、変形例におけるメイン処理を説明する。上記実施形態では、バッテリ11の残量に基づき、図4に示すPDO(Power Data Object)を参照して給電電力が決定された。これに対して、変形例のメイン処理では、PDO(Power Data Object)を参照せずに、バッテリ11の残量と所定の閾値との関係で給電の可否を変更する点が異なる。
【0047】
メイン処理を開始すると、USBPDIC37は、タブレットPC5との間でネゴシエーションを開始するか否か判断する(S101)。例えばタブレットPC5が接続されておらず、ネゴシエーションを開始しないと判断した場合(S101:NO)、USBPDIC37は、処理を戻して待機する。タブレットPC5が接続されて、ネゴシエーションを開始すると判断した場合(S101:YES)、USBPDIC37は、タブレットPC5との間でネゴシエーションを実行する(S103)。
【0048】
USBPDIC37は、ネゴシエーションが成功したか判断する(S105)。ネゴシエーションが失敗したと判断した場合(S105:NO)、USBPDIC37は、給電部8からの給電電力の給電を不能に設定する(S115)。この場合、USBPDIC37は、FET36をオフする。
【0049】
ネゴシエーションが成功したと判断した場合(S105:YES)、USBPDIC37は、ネゴシエーションの結果に応じて、タブレットPC5への給電電力の給電を開始する(S107)。この場合、給電部8は、タブレットPC5の要求に応じた給電電力を給電する。
【0050】
USBPDIC37は、バッテリ11の残量を監視する(S109)。USBPDIC37は、監視したバッテリ11の残量が所定の閾値以上か否か判断する(S111)。ここで、閾値は、例えばバッテリ11の最大残量に対して30%とする。なお、ユーザは、実現したい印刷速度に応じて、閾値を適宜変更してもよい。
【0051】
バッテリ11の残量が閾値以上と判断した場合(S111:NO)、USBPDIC37は、タブレットPC5への給電電力の給電を継続する(S113)。USBPDIC37は、処理を、S109に戻す。一方、バッテリ11の残量が閾値未満の場合(S111:NO)、USBPDIC37は、給電部8からタブレットPC5への給電電力の給電を不可に設定する(S115)。USBPDIC37は、処理をS101に戻す。
【0052】
故に、プリンタ1は、タブレットPC5への給電電力の給電を停止することで、印刷に必要な電力を確保できる。
【0053】
本発明は、上記実施形態等に限定されず、更に種々の変更が可能である。上記実施形態及び変形例に開示の技術は、矛盾しない範囲で組み合わせ可能である。プリンタ1は、感熱式であったがこれに限らず、インクジェット方式を採用してもよい。外部デバイスは、タブレットPC5であったがこれに限らない。例えば、外部デバイスは、スマートフォンであってもよいし、PC等の機器であってもよい。外部電源として、ACアダプタ9を使用したがこれに限らない。例えば外部電源は、バッテリ等で代用してもよい。プリンタ1は、外部デバイスからUSB PD(USB Power Delivery)規格に準じて電力を受電してもよい。
【0054】
上記実施形態では、図4に示すPDO(Power Data Object)を参照して給電電力を変更したがこれに限らない。分類の数は、バッテリ11の残量に応じて、より少なく設定されてもよいし、より多く設定されてもよい。また、各分類の設定値も、適宜変更されてよい。
【0055】
上記実施形態では、メイン処理でのS7、S107では、外部デバイスが要求する給電電力が給電されたがこれに限らない。例えば、S1の処理の前にバッテリ11の残量を監視して、その残量に応じた給電電力を、PDO(Power Data Object)を参照して給電してもよい。
【0056】
上記実施形態では、USBPDIC37の記憶部37AにPDO(Power Data Object)が記憶されたがこれに限らない。例えば、PDO(Power Data Object)は、フラッシュメモリ23、EEPROM24等の他の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0057】
なお、USBPDIC37の代わりに、CPU、ASIC、FPGA (Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。各メイン処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。プリンタ1は、例えば、HDD等の他の非一時的な記憶媒体を備えてもよい。非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。
【0058】
各種のプログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(即ち、伝送信号として送信され)、HDD等のメモリに記憶されてもよい。この場合、各種のプログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【0059】
上記説明において、USBPDIC37は、本発明の「制御部」の一例である。ACアダプタ9は本発明の「外部電源」の一例である。タブレットPC5は本発明の「外部デバイス」の一例である。OR回路32は、本発明の「給電経路切り替え部」の一例である。USBPDIC37が実行するS9、S109の処理は、本発明の「監視処理」の一例である。USBPDIC37が実行するS11、S111の処理は、本発明の「変更処理」の一例である。
【符号の説明】
【0060】
1 プリンタ
5 タブレットPC
7 印刷部
8 給電部
9 ACアダプタ
11 バッテリ
37 USBPDIC
37A 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5