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特開2025-6063制御棒挿入試験装置、制御棒挿入試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006063
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】制御棒挿入試験装置、制御棒挿入試験方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/10 20060101AFI20250109BHJP
   G21C 7/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G21C17/10 750
G21C7/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106619
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】十河 直也
(72)【発明者】
【氏名】小出 祐一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 直伴
(72)【発明者】
【氏名】古田 安彦
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA03
2G075BA16
2G075CA39
2G075DA04
2G075FA03
2G075FC03
2G075GA28
(57)【要約】
【課題】
1台の水圧制御ユニットで2本以上の制御棒を駆動する制御棒駆動系において、スクラム配管の圧力損失を考慮しつつ、比較的簡単に制御棒挿入試験が可能な制御棒挿入試験装置を提供する。
【解決手段】
水圧制御ユニットと、前記水圧制御ユニットに接続されたスクラム配管と、前記スクラム配管に接続された制御棒駆動装置と、前記制御棒駆動装置のピストンが前記水圧制御ユニットより伝達される駆動水の水圧により移動することで容器内へ挿入される制御棒と、を備え、前記スクラム配管は、1つの前記水圧制御ユニットと複数の前記制御棒駆動装置とを接続するように分岐されており、制御棒挿入試験において、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失を予め定めた所定の値に調節することを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧制御ユニットと、
前記水圧制御ユニットに接続されたスクラム配管と、
前記スクラム配管に接続された制御棒駆動装置と、
前記制御棒駆動装置のピストンが前記水圧制御ユニットより伝達される駆動水の水圧により移動することで容器内へ挿入される制御棒と、を備え、
前記スクラム配管は、1つの前記水圧制御ユニットと複数の前記制御棒駆動装置とを接続するように分岐されており、
制御棒挿入試験において、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失を予め定めた所定の値に調節することを特徴とする制御棒挿入試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御棒挿入試験装置であって、
制御棒挿入試験前に前記制御棒の挿入解析を実施し、
前記挿入解析により、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間が最も遅くなるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めておき、
制御棒挿入試験時のスクラム配管の圧力損失に、前記求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定することを特徴とする制御棒挿入試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御棒挿入試験装置であって、
制御棒挿入試験前に前記制御棒の挿入解析を実施し、
前記挿入解析により、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間を求めておき、
前記制御棒挿入時間の最大値から一定の範囲内の前記制御棒挿入時間に関係づけられるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めておき、
制御棒挿入試験時のスクラム配管の圧力損失に、前記求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定することを特徴とする制御棒挿入試験装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御棒挿入試験装置であって、
制御棒挿入試験前に前記制御棒の挿入解析を実施し、
前記挿入解析により、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間を求めておき、
前記制御棒挿入時間が目安時間から一定の範囲内の前記制御棒挿入時間に関係づけられるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めておき、
制御棒挿入試験時のスクラム配管の圧力損失に、前記求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定することを特徴とする制御棒挿入試験装置。
【請求項5】
1つの水圧制御ユニットと複数の制御棒駆動装置とを接続するように分岐されたスクラム配管を有する制御棒挿入試験装置を用いた制御棒挿入試験方法であって、
(a)制御棒挿入試験前に、制御棒の挿入解析を実施するステップと、
(b)前記(a)ステップで実施した挿入解析に基づいて、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失調査範囲を対象に、スクラム配管の圧力損失の組合せを求めるステップと、
(c)制御棒挿入試験時に、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失に、前記(b)ステップで求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定するステップと、
を有することを特徴とする制御棒挿入試験方法。
【請求項6】
請求項5に記載の制御棒挿入試験方法であって、
前記(b)ステップにおいて、制御棒挿入時間が最も遅くなるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めることを特徴とする制御棒挿入試験方法。
【請求項7】
請求項5に記載の制御棒挿入試験方法であって、
前記(b)ステップにおいて、前記(a)ステップで実施した挿入解析に基づいて、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間を求め、
前記制御棒挿入時間の最大値から一定の範囲内の前記制御棒挿入時間に関係づけられるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めることを特徴とする制御棒挿入試験方法。
【請求項8】
請求項5に記載の制御棒挿入試験方法であって、
前記(b)ステップにおいて、前記(a)ステップで実施した挿入解析に基づいて、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間を求め、
前記制御棒挿入時間が目安時間から一定の範囲内の前記制御棒挿入時間に関係づけられるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めることを特徴とする制御棒挿入試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉における制御棒の挿入性を評価する制御棒挿入試験装置の構成とその試験方法に係り、特に、1台の水圧制御ユニットに複数の制御棒駆動装置を接続する制御棒駆動系に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、大規模地震時には炉心に制御棒を挿入し、自動的に停止する仕組みになっている。地震時は炉心に配置された燃料集合体が弓なりに振動するため、制御棒は燃料集合体と接触し、地震が発生していないときの制御棒挿入時間より遅れが生じる場合がある。このため、制御棒挿入性は、原子力発電設備の耐震設計上、重要な評価項目の1つである。
【0003】
一方で、原子力発電設備の建設コスト削減のため、制御棒を駆動する水圧制御ユニットの台数を低減した改良型制御棒駆動機構が検討されている。改良型制御棒駆動機構の例として、1台の水圧制御ユニットにスクラム配管を介して2台の制御棒駆動機構が接続されており、1台の水圧制御ユニットで2台の制御棒駆動機構を駆動する方式が知られている。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「水圧制御ユニットと、前記水圧制御ユニットの下流側に接続された複数のスクラム配管と、前記スクラム配管のうち、一部のスクラム配管の下流側に接続された制御棒駆動機構と、残るスクラム配管の下流側に接続された流量制御弁と、前記流量制御弁を制御する制御装置を備える制御棒挿入性耐震試験装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-114440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1台の水圧制御ユニットに2本以上の制御棒を接続する場合、それらの制御棒のスクラム時(緊急停止時)の挿入時間には差が生じる可能性がある。この差は、制御棒の質量差やスクラム配管の圧力損失差によって生じることが考えられる。
【0007】
実際の原子炉では、スクラム配管の長さや曲がりの角度、曲がりの回数などにより圧力損失はある範囲を有するため、試験装置を用いてスクラム性能をより詳細に評価するには、圧力損失の差異に対する影響を確認することが有効である。
【0008】
しかしながら、確認すべき圧力損失範囲を広く設定すると自ずと試験ケースが増加し、また、1台の水圧制御ユニットに接続される制御棒の本数が増えるほど試験条件が複雑になっていくことから、制御棒挿入試験におけるスクラム配管の圧力損失の調整や調整に伴う機器の交換に掛かる工数が膨大となり、効率的な試験方法が必要である。
【0009】
上記特許文献1では、上述したようなスクラム配管の圧力損失差は考慮されておらず、改善の余地がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、1台の水圧制御ユニットで2本以上の制御棒を駆動する制御棒駆動系において、スクラム配管の圧力損失を考慮しつつ、比較的簡単に制御棒挿入試験が可能な制御棒挿入試験装置及びその試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、水圧制御ユニットと、前記水圧制御ユニットに接続されたスクラム配管と、前記スクラム配管に接続された制御棒駆動装置と、前記制御棒駆動装置のピストンが前記水圧制御ユニットより伝達される駆動水の水圧により移動することで容器内へ挿入される制御棒と、を備え、前記スクラム配管は、1つの前記水圧制御ユニットと複数の前記制御棒駆動装置とを接続するように分岐されており、制御棒挿入試験において、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失を予め定めた所定の値に調節することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、1つの水圧制御ユニットと複数の制御棒駆動装置とを接続するように分岐されたスクラム配管を有する制御棒挿入試験装置を用いた制御棒挿入試験方法であって、(a)制御棒挿入試験前に、制御棒の挿入解析を実施するステップと、(b)前記(a)ステップで実施した挿入解析に基づいて、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失調査範囲を対象に、スクラム配管の圧力損失の組合せを求めるステップと、(c)制御棒挿入試験時に、前記分岐されたスクラム配管の圧力損失に、前記(b)ステップで求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1台の水圧制御ユニットで2本以上の制御棒を駆動する制御棒駆動系において、スクラム配管の圧力損失を考慮しつつ、比較的簡単に制御棒挿入試験が可能な制御棒挿入試験装置及びその試験方法を実現することができる。
【0014】
これにより、効率的な制御棒挿入試験が可能となる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係る制御棒挿入試験装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係る制御棒挿入試験方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施例1に係るスクラム配管の圧力損失と制御棒挿入時間のイメージを示す図である。
図4】本発明の実施例2に係るスクラム配管の圧力損失と制御棒挿入時間のイメージを示す図である。
図5】本発明の実施例3に係るスクラム配管の圧力損失と制御棒挿入時間のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0018】
また、本発明は、1台の水圧制御ユニットにより2台以上の制御棒を駆動する場合に適用可能であるが、説明を容易にするため、以下では1台の水圧制御ユニットにより2台の制御棒を駆動する制御棒駆動系を例にとって説明する。
【0019】
本発明を分かり易くするため、先ず、沸騰水型原子炉および制御棒挿入試験について詳しく説明する。
【0020】
原子炉における制御棒の挿入性試験では、一般的に、水圧制御ユニットや制御棒駆動機構およびスクラム配管などの制御棒挿入システムを構成する機器について、実機と同様の接続形態とすることで、要求仕様に対する性能検証や寿命試験が実施されている。
【0021】
沸騰水型原子炉には、原子炉内の制御棒を駆動するための制御棒駆動装置が備わっている。制御棒の駆動には2種類の機能があり、1つは原子炉の出力および反応度の制御のための駆動機能であり、もう1つは地震時など原子炉の緊急停止が必要な場合に制御棒を炉心に急速に挿入する機能、すなわちスクラム機能である。
【0022】
スクラムを達成するには、一般に水圧制御ユニットで予め蓄圧された高圧水を利用する。水圧制御ユニットに高圧の窒素ガスを蓄圧し、これを一気に解放することによって窒素ガス容器に接続されたアキュムレータのピストンを押し出すことで高圧水が生み出され、この高圧水は水圧制御ユニットを起点にスクラム配管を通り制御棒駆動機構に到達する。高圧水によって制御棒駆動機構内のピストンが押し上げられ、ピストンに接続された制御棒が炉内に挿入される。
【0023】
スクラムに係る水圧制御ユニットおよびスクラム配管、制御棒駆動機構、制御棒などを制御棒駆動系と呼ぶ。現行の改良型沸騰水型軽水炉では、水圧制御ユニット1台につき2台の制御棒駆動機構に高圧水を送る制御棒駆動系と、水圧制御ユニット1台につき1台の制御棒駆動機構に高圧水を送る制御棒駆動系とが混合されている。
【0024】
スクラムは原子炉の安全機能の1つであり、実機と同様の水圧制御ユニット1台につき2台の制御棒駆動機構に高圧水を送る制御棒駆動系でのスクラム性能が試験によって評価されている。
【0025】
スクラム性能で確認する項目は複数あるが、その内の1つとして制御棒の挿入時間が目安時間以下となることを確認するという項目がある。
【0026】
例えば、最も保守側の条件にあたる、実機炉内の高温高圧状態を模擬し、スクラム配管の圧力損失を最大値、水圧制御ユニットのアキュムレータ圧を最小値とし、かつ両方の制御棒ともに全引抜きを初期状態とする条件において、制御棒の挿入時間は十分な裕度をもって目安時間以下となっていることを確認することで、スクラム性能が十分に担保されていることを確認することができる。
【0027】
従って、現行の原子炉においては十分安全であることが確かめられているが、更なる安全性の向上が求められている。
【実施例0028】
図1から図3を参照して、本発明の実施例1に係る制御棒挿入試験装置及び制御棒挿入試験方法について説明する。
【0029】
図1は、本実施例の制御棒挿入試験装置の概略構成を示す図である。図2は、図1の制御棒挿入試験装置を用いた本実施例の制御棒挿入試験方法を示すフローチャートである。図3は、スクラム配管の圧力損失と制御棒挿入時間のイメージを示す図である。
【0030】
図1に示すように、本実施例の制御棒挿入試験装置は、主要な構成として、試験容器101と、試験容器101に内包された2組の模擬燃料集合体102と、2組の模擬燃料集合体102にそれぞれ接続された2つの制御棒案内管103と、各制御棒案内管103の内部にそれぞれ配置された2つの制御棒104と、2つの制御棒104にそれぞれ接続された2つの制御棒駆動装置105と、試験容器101に接続されたヒータ106及びポンプ107と、窒素ガスが充填された窒素ガス容器108と、アキュムレータ(蓄圧器)109と、スクラム配管110,110a,110bと、スクラム弁111と、2つのバルブ112a,112bと、スクラム弁111及びバルブ112a,112bを制御する制御部113とを備えている。
【0031】
液体で満たされた試験容器101内部に2組の模擬燃料集合体102が収納され、その試験容器101には制御棒案内管103と、制御棒案内管103内の制御棒104を模擬燃料集合体102間に挿入する制御棒駆動装置105が取り付けられている。
【0032】
制御棒駆動装置105内のピストン(図示せず)が、水圧制御ユニット(窒素ガス容器108及びアキュムレータ109)より伝達される駆動水の水圧により移動することで、容器内(図1では模擬燃料集合体102)へ制御棒104が挿入される。
【0033】
試験容器101にはヒータ106とポンプ107が接続されており、試験容器101内の液体を加熱・加圧することで原子炉内の温度・圧力を模擬できるようにしている。
【0034】
制御棒駆動装置105の先には、窒素ガスを蓄圧した窒素ガス容器108とアキュムレータ109から構成される水圧制御ユニットがスクラム配管110を介して接続されている。スクラム配管110は、途中でスクラム配管110aとスクラム配管110bに分岐され、個々の制御棒駆動装置105に接続されている。
【0035】
スクラム配管110と制御棒駆動装置105との間には、スクラム弁111とスクラム配管110aとスクラム配管110bの圧力損失を調整するためのバルブ112a,112bが配置されている。
【0036】
図2を用いて、制御棒挿入時間の確認試験を効率的に実施する方法を説明する。
【0037】
先ず、ステップS201において、スクラム配管110a,110bの圧力損失の調査範囲を予め設定する。
【0038】
次に、ステップS202において、このようなスクラム配管110a,110bを有する制御棒駆動系に対して、制御棒の挿入時間等を評価する解析を実施する。
【0039】
この解析では、計算機を用いて制御棒駆動系の駆動水の動的な水圧変化を模擬した解析モデルを用いた解析の他、簡易的な机上計算も使用できる。
【0040】
その後、ステップS203において、ステップS202での解析結果を基に制御棒挿入試験におけるスクラム配管110a,110bの圧力損失の設定を実施する。
【0041】
そして、ステップS204において、制御棒挿入試験装置のスクラム配管110a,110bの圧力損失を設定値に調整し、制御棒挿入試験を実施する。
【0042】
なお、ステップS201において、スクラム配管110a,110bの圧力損失の調査範囲としては任意の範囲を設定できる。
【0043】
スクラム配管110a,110bの圧力損失の調査範囲の例としては、沸騰水型原子炉実機におけるスクラム配管の圧力範囲を参考に設定する範囲や、沸騰水型原子炉の水圧制御ユニット室と制御棒駆動装置間の距離から推定したスクラム配管の圧力損失範囲などがある。
【0044】
図3を用いて、制御棒挿入試験におけるスクラム配管の圧力損失の設定方法の例を説明する。図3は、スクラム配管の圧力損失の調査範囲201に対して解析により制御棒挿入時間を確認した例を示している。
【0045】
グラフ301では、2本のスクラム配管110a,110bの圧力損失と制御棒挿入時間を軸にとっている。
【0046】
制御棒挿入試験においては、最も挿入時間が遅くなるようにスクラム配管の圧力損失を設定して制御棒挿入時間を確認すれば安全側の評価となることから、グラフ301において制御棒挿入時間が最大となる点302を持つとすると、その点におけるスクラム配管の圧力損失A,Bとなるように制御棒挿入試験装置のバルブ112a,112bを用いてスクラム配管の圧力損失を設定すれば良い。
【0047】
なお、グラフ301の作成は本発明には必ずしも必要ではなく、またスクラム配管の圧力損失を示すグラフの軸は例えばスクラム配管の長さや流体抵抗係数などのスクラム配管の圧力損失と同等な指標でも良く、グラフ301と異なる図表形式でも同様な考えの下で制御棒挿入試験に用いるスクラム配管の圧力損失を設定すれば良い。
【0048】
以上説明したように、本実施例の制御棒挿入試験装置では、水圧制御ユニット(窒素ガス容器108及びアキュムレータ109)と、水圧制御ユニットに接続されたスクラム配管110,110a,110bと、スクラム配管に接続された制御棒駆動装置105と、制御棒駆動装置105のピストンが水圧制御ユニットより伝達される駆動水の水圧により移動することで容器内(図1では模擬燃料集合体102)へ挿入される制御棒104とを備えており、スクラム配管は、1つの水圧制御ユニットと複数の制御棒駆動装置105とを接続するように分岐されており、制御棒挿入試験において、分岐されたスクラム配管110,110a,110bの圧力損失を予め定めた所定の値に調節する。
【0049】
また、制御棒挿入試験前に制御棒104の挿入解析を実施し、挿入解析により、分岐されたスクラム配管110,110a,110bの圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間が最も遅くなるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めておき、制御棒挿入試験時のスクラム配管の圧力損失に、求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定する。
【0050】
これにより、スクラム配管の圧力損失を考慮しつつ、比較的簡単に制御棒挿入試験が可能な制御棒挿入試験装置及びその試験方法を実現することができ、効率的な制御棒挿入試験が可能となる。
【実施例0051】
図4を参照して、本発明の実施例2に係る制御棒挿入試験装置及び制御棒挿入試験方法について説明する。
【0052】
図4は、本実施例のスクラム配管の圧力損失と制御棒挿入時間のイメージを示す図であり、実施例1(図3)の変形例に相当する。
【0053】
グラフ401では、制御棒挿入時間の時刻T1より遅い制御棒挿入時間となる範囲をスクラム配管の圧力損失範囲402としている。
【0054】
制御棒挿入試験においては、挿入時間が遅くなるようにスクラム配管の圧力損失を設定して制御棒挿入時間を確認すれば安全側の評価が可能であるから、挿入時間が最も遅くなる点を含めたスクラム配管の圧力損失範囲402を網羅するように制御棒挿入試験装置のバルブ112a,112bを用いてスクラム配管の圧力損失を設定すれば良い。
【0055】
このとき、制御棒挿入試験装置ではスクラム配管の圧力損失は離散的にしか設定できないため、スクラム配管の圧力損失範囲402の範囲内の特性が把握できるだけの十分な間隔でスクラム配管の圧力損失を設定すれば良い。
【0056】
以上説明したように、本実施例の制御棒挿入試験装置では、制御棒挿入試験前に制御棒104の挿入解析を実施し、挿入解析により、分岐されたスクラム配管110,110a,110bの圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間を求めておき、制御棒挿入時間の最大値から一定の範囲内の制御棒挿入時間に関係づけられるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めておき、制御棒挿入試験時のスクラム配管の圧力損失に、求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定する。
【実施例0057】
図5を参照して、本発明の実施例3に係る制御棒挿入試験装置及び制御棒挿入試験方法について説明する。
【0058】
図5は、本実施例のスクラム配管の圧力損失と制御棒挿入時間のイメージを示す図であり、実施例1(図3)のさらに別の変形例に相当する。
【0059】
グラフ501では、スクラム配管の圧力損失の調査範囲201が大きいため、制御棒挿入時間が目安時間T2以上となる領域が存在する。
【0060】
この場合、制御棒挿入試験においては、挿入時間が遅くなるようにスクラム配管の圧力損失を設定して制御棒挿入時間を確認すれば安全側の評価が可能であるから、制御棒挿入時間がT2となる枠と、T2より小さな制御棒挿入時間T3の領域内にあるスクラム配管の圧力損失範囲502を網羅するように制御棒挿入試験装置のバルブ112a,112bを用いてスクラム配管の圧力損失を設定すれば良い。
【0061】
このとき、制御棒挿入試験装置ではスクラム配管の圧力損失は離散的にしか設定できないため、スクラム配管の圧力損失範囲502の範囲内の特性が把握できるだけの十分な間隔でスクラム配管の圧力損失を設定すれば良い。
【0062】
以上説明したように、本実施例の制御棒挿入試験装置では、制御棒挿入試験前に制御棒104の挿入解析を実施し、挿入解析により、分岐されたスクラム配管110,110a,110bの圧力損失調査範囲を対象に、制御棒挿入時間を求めておき、制御棒挿入時間が目安時間から一定の範囲内の制御棒挿入時間に関係づけられるスクラム配管の圧力損失の組合せを求めておき、制御棒挿入試験時のスクラム配管の圧力損失に、求めたスクラム配管の圧力損失の組合せを設定する。
【0063】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
101…試験容器
102…模擬燃料集合体
103…制御棒案内管
104…制御棒
105…制御棒駆動装置
106…ヒータ
107…ポンプ
108…窒素ガス容器
109…アキュムレータ(蓄圧器)
110,110a,110b…スクラム配管
111…スクラム弁
112a,112b…バルブ
113…制御部
201…スクラム配管の圧力損失の調査範囲
301,401,501…グラフ
302…グラフ301の制御棒挿入時間最大値
402…スクラム配管の圧力損失範囲
502…スクラム配管の圧力損失範囲。
図1
図2
図3
図4
図5