(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006087
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】支持金具、及び支持金具の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20250109BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20250109BHJP
F16L 3/22 20060101ALI20250109BHJP
F16L 3/24 20060101ALI20250109BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04B5/40 J
E04B9/00 F
F16L3/22 B
F16L3/24
F24F13/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106654
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】515285062
【氏名又は名称】株式会社アイデアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】坂爪 和人
【テーマコード(参考)】
3H023
3L080
【Fターム(参考)】
3H023AC05
3H023AC13
3L080AA09
3L080AC01
(57)【要約】
【課題】天井デッキプレートに対する装着作業及び、横走り配管を支持する耐震架台の装着作業を容易に行うことができ、且つ各部材同士を強固に締結できるようにした新規な支持金具を提供する。
【解決手段】支持金具1は、長手方向に離間して配置されると共に、天井デッキプレートの異なる凹条部の下面に夫々固定される複数の上板20と、長手方向に延在すると共に、上面が両上板の下面と対向するように両上板の下方に配置されて、少なくとも柱部材の一方が取り付けられる下板30と、各上板と下板とを連接すると共に、各上板が固定される各凹条部間に位置する凸条部を回避する切欠部41を有した連接板40と、下板から各上板までの間に形成される作業用空間50と、を備える。作業用空間は長手方向と交差する前後方向の少なくとも一方に外部空間と連通する前面開口52を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に突出して第一の方向に延びる凸条部と上方に突出して前記第一の方向に延びる凹条部とを備えると共に前記凸条部と前記凹条部とが前記第一の方向と交差する第二の方向に繰り返す天井デッキプレートの下面に対して、長手方向が前記凸条部と前記凹条部とを横断するように装着されて、耐震架台を吊り下げ支持する支持金具であって、
前記耐震架台は、前記第二の方向に所定間隔を空けて配置される一対の柱部材と、前記両柱部材の下端部によって支持されると共に、保持対象物を保持する対象物保持部と、を備え、
前記支持金具は、
前記長手方向に離間して配置されると共に、前記天井デッキプレートの異なる前記凹条部の下面に夫々固定される複数の上板と、
前記長手方向に延在すると共に、上面が前記両上板の下面と対向するように前記両上板の下方に配置されて、少なくとも前記柱部材の一方が取り付けられる下板と、
前記各上板と前記下板とを連接すると共に、前記各上板が固定される前記各凹条部間に位置する前記凸条部を回避する切欠部を有した連接板と、
前記下板から前記各上板までの間に形成される作業用空間と、を備え、
前記作業用空間は前記長手方向と交差する前後方向の少なくとも一方に前記作業用空間と外部空間とを連通させる開口部を有し、前記支持金具が前記天井デッキプレートに位置決めされた状態で、前記天井デッキプレートに対する前記支持金具の装着作業と前記支持金具に対する前記柱部材の装着作業とを前記開口部を介して前記外部空間から行えるようにしたことを特徴とする支持金具。
【請求項2】
前記下板の面内には前記柱部材を締結する取付孔が貫通形成されており、該取付孔は前記長手方向に延在する長孔であることを特徴とする請求項1に記載の支持金具。
【請求項3】
前記長手方向の両端部に、前記上板、前記連接板、及び、前記下板に跨がって固定された第一補強板を備えることを特徴とする請求項1に記載の支持金具。
【請求項4】
前記切欠部の前記長手方向の両端部に、前記上板と前記連接板とに跨がって固定された第二補強板を備えることを特徴とする請求項1に記載の支持金具。
【請求項5】
下方に突出して第一の方向に延びる凸条部と上方に突出して前記第一の方向に延びる凹条部とを備えると共に前記凸条部と前記凹条部とが前記第一の方向と交差する第二の方向に繰り返す天井デッキプレートの下面に対して、長手方向が前記凸条部と前記凹条部とを横断するように装着されて、耐震架台を吊り下げ支持する支持金具の製造方法であって、
所定の長手方向長を有する溝形鋼又はH形鋼を準備する準備工程と、
前記溝形鋼又は前記H形鋼の長手方向の中間部の適所において、上フランジの短手方向の全体とウェブの少なくとも上部とを連続的に除去して前記天井デッキプレートの前記凸条部を回避する切欠部を形成すると共に、上フランジの残部を前記天井デッキプレートの前記凹条部の下面に対して固定される上板とする除去工程と、
前記上フランジの面内適所に前記支持金具を前記天井デッキプレートの前記凹条部の下面に取り付ける上取付孔を貫通形成する工程と、
下フランジの面内適所に前記耐震架台を取り付ける下取付孔を貫通形成する工程と、
を有することを特徴とする支持金具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井デッキプレートの下面に対して装着されて、配管及びこれを支持する耐震架台等の重量物を吊り下げ支持する支持金具、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気、水、ガス等の種々の流体の流路となる配管のうち天井面に沿って伸びる所謂「横走り配管」(以下単に「配管」という)は、その自重を支えるために天井から吊り下げ支持される。配管の自重を支持する手段としては、吊りボルトや山形鋼等が用いられる。吊りボルトや山形鋼等は、長手方向が鉛直方向に伸びるように一端部が天井に固定され、長手方向の他端部において配管を支持する。
特許文献1には、空気調和機等の天井吊り下げ物を波形の天井デッキプレートから吊り下げ支持する吊りボルトを、天井面に簡単かつ効率的に設置できるようにしたボルト支持金具が記載されている。
波形の天井デッキプレートは、上方に突出して(凹陥して)第一の方向に延びる山部と下方に突出して第一の方向に延びる谷部とが第二の方向に交互に繰り返す構成を備える。ボルト支持金具は、第二の方向に延びて谷部の下面に接触状態で装着されるボルト保持部と、ボルト保持部の長手方向の各端部から上方に延びると共に天井デッキプレートの谷部の下面に夫々固定される固定部と、を備える。ボルト保持部は、吊りボルトを垂下させた状態に保持する。
【0003】
重量物である配管は、地震による設備の損傷等を防止するために地震に起因する横揺れを抑制する振止手段によって振れ止め支持(耐震支持)される。振れ止め手段は、配管の延在方向と直交する方向における配管の揺れを抑制する。振れ止め手段としては、例えば斜材(ブレース)が用いられる。一例として斜材は、特許文献2に記載されているように、その長手方向が鉛直方向に対して傾斜した方向に伸びるように一端部(上側)が天井に固定され、長手方向の他端部(下側)が吊りボルトと配管との固定部の近傍に固定される。或いは他の例として斜材は、特許文献1の
図27等に記載されているように、隣接する2本の吊りボルト間にX字状に挿入される。挿入される2本の斜材は、隣接する吊りボルト同士が平行四辺形状に位置変位することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開特開2022-107492公報
【特許文献2】特開平6-117576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のボルト支持金具におけるボルト保持部は、谷部の下部を受け入れて係合させる凹部を有している。ボルト支持金具は、凹部を谷部の下部に係合させることで、地震が発生したとしてもボルト保持部の第二の方向への揺動を抑制する。
しかし、ボルト支持金具は、ボルト保持部の下面に突出させたロングナットに対して吊りボルトの上端部を螺着する構成である。吊りボルトは水平力を抑えられないため、重量物である配管を、耐震基準を満たした状態で吊り下げるには適していない。即ち、重量物である配管を吊り下げるには水平力に耐えられる架台で固定する必要がある。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、天井デッキプレートに対する装着作業及び、配管を支持する耐震架台の装着作業を容易に行うことができる新規な支持金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、下方に突出して第一の方向に延びる凸条部と上方に突出して前記第一の方向に延びる凹条部とを備えると共に前記凸条部と前記凹条部とが前記第一の方向と交差する第二の方向に繰り返す天井デッキプレートの下面に対して、長手方向が前記凸条部と前記凹条部とを横断するように装着されて、耐震架台を吊り下げ支持する支持金具であって、前記耐震架台は、前記第二の方向に所定間隔を空けて配置される一対の柱部材と、前記両柱部材の下端部によって支持されると共に、保持対象物を保持する対象物保持部と、を備え、前記支持金具は、前記長手方向に離間して配置されると共に、前記天井デッキプレートの異なる前記凹条部の下面に夫々固定される複数の上板と、前記長手方向に延在すると共に、上面が前記両上板の下面と対向するように前記両上板の下方に配置されて、少なくとも前記柱部材の一方が取り付けられる下板と、前記各上板と前記下板とを連接すると共に、前記各上板が固定される前記各凹条部間に位置する前記凸条部を回避する切欠部を有した連接板と、前記下板から前記各上板までの間に形成される作業用空間と、を備え、前記作業用空間は前記長手方向と交差する前後方向の少なくとも一方に前記作業用空間と外部空間とを連通させる開口部を有し、前記支持金具が前記天井デッキプレートに位置決めされた状態で、前記天井デッキプレートに対する前記支持金具の装着作業と前記支持金具に対する前記柱部材の装着作業とを前記開口部を介して前記外部空間から行えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天井デッキプレートに対する装着作業及び、配管を支持する耐震架台の装着作業を容易に行うことができる新規な支持金具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】複数の耐震架台によって支持された配管の一例を示す斜視図である。
【
図2】(a)、(b)は、耐震架台を構成する柱部材の上部の構造を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は下面図である。
【
図3】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る支持金具が取り付けられたコンクリート天井の例を模式的に示した正面図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第三の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第四の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第五の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第六の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第七の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図11】本発明の第八の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
【
図12】(a)~(d)は、溝形鋼から支持金具を作製する方法について説明する斜視図である。
【
図13】
図5に示す支持金具の解析について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
また、各実施形態に共通する部材については同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0010】
〔配管の吊り下げ支持構造〕
図1は、複数の耐震架台によって支持された配管の一例を示す斜視図である。図中、鉛直方向をZ方向、配管100の長手方向(気流が流れる方向)をY方向、Z方向とY方向に直交する方向をX方向(配管の幅方向)とする。
空調等のために水等の流体を運搬する配管100、100は、その長手方向に所定の間隔毎に設置された複数の耐震架台200、200…によって支持される。
以下、配管100の横断面形状(ZX平面における断面形状)が概略円形状である配管の例に基づき本発明を説明するが、配管100は、円形状以外の横断面形状を備えてもよい。
【0011】
〔耐震架台〕
耐震架台の一例について
図1及び
図2を用いて説明する。
図2(a)、(b)は、耐震架台を構成する柱部材の上部の構造を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は下面図である。
耐震架台200は、配管等の重量物を天井110や梁等からから吊り下げ支持する手段として機能する。耐震架台200は、地震時等においては、配管等の振れ(図中X方向への横揺れ)を抑制し、或いは振れを低減する振れ止め手段として機能する。
耐震架台200は、上部が天井110等に固定される一対の柱部材210、210と、柱部材210、210の下端部において柱部材210、210間を連結する水平材220と、水平材220と各柱部材210、210の双方に固定されるガセットプレート230、230とを備える。
【0012】
<<柱部材>>
柱部材210は、柱本体211と、柱本体211の上端面に溶接されたトッププレート212とを備える。
柱本体211、211は、配管100の両側部に配置されるように、X方向に所定の間隔を空けて天井110から垂下する。柱本体211、211は、例えば溝形鋼等から構成される。柱本体211を構成する鋼材の種類(断面規格)と長手方向長は、支持する配管の重量と配管の取り付け高さレベルに応じて、必要な強度を満たすように決定される。
【0013】
トッププレート212は、柱部材210を天井110等に対して固定する手段である。トッププレート212の面内の適所には少なくとも1つの孔213が貫通形成される。孔213内には、天井(スラブ)に打ち込まれるあと施工アンカーやボルトの軸部が挿通される。
図示するトッププレート212の一辺(長手方向・X方向の一端部)は、柱本体211の一側面(一方のフランジの外側側面)よりも外方に突出している。本例においては、トッププレート212のX方向に離間して2つの孔213、213が貫通形成されている。2つの孔のうちの一つは柱本体211に囲まれた領域内に配置され、他方は柱本体211の外部に配置されている。
【0014】
トッププレート212のうち、柱本体211の側面よりも外方に突出した部位の下面には、必要に応じて補強リブ214が配置される。図示する補強リブ214は、概略三角形の平板状であり、直交する2辺がトッププレート212の下面と柱本体211の側面(外周面)との双方に溶接されている。
以下、便宜上、柱本体211に関して溝形鋼のウェブ側を前方、その反対側を後方、フランジ側を側方として説明する。
【0015】
図示するトッププレート212は柱本体211に対してX方向に非対称な形状を有する。補強リブ214は、柱本体211の一側方に固定されたサイドリブである。
柱部材210が柱本体211の一側方のみに補強リブ214を備える場合、
図1(又は
図3)に示すように、一の耐震架台200中において補強リブ214をX方向に対称に配置することが望ましい。つまり、柱部材210、210同士が対向する側に補強リブ214を配置するか、又は、柱部材210、210同士が対向しない側に補強リブ214を配置する。一の耐震架台200中において補強リブ214をX方向に対称に配置することで、X方向への揺れ又は変形を耐震架台200全体としてバランス良く抑制できる。
なお、トッププレート212の形状、及び、補強リブ214の位置や数量は、柱本体211を構成する鋼材の種類(断面規格)、配管の重量、及び配管の取り付け高さレベル(柱本体211の長さ)等に応じて、必要な強度を得られるように設定される。
例えば、柱部材210は、柱本体211の前側に配置された補強リブ(フロントリブ)と柱本体の後側に配置された補強リブ(バックリブ)の一方又は双方を備えてもよい。また、柱部材210は、柱本体211の両側方に補強リブ(サイドリブ)を備えてもよい。
【0016】
<<水平材>>
図1に示すように、水平材220は、両柱部材210、210の下端部によって支持される。
水平材220は、例えば溝形鋼等から構成される。
水平材(対象物保持部)220は、配管(保持対象物)100の下面を支持するか、又は、配管100の下部を適宜の方法によって支持する。
【0017】
<<ガセットプレート>>
ガセットプレート230は、水平材220と各柱部材210、210とを接合する手段である。また、ガセットプレート230は、水平材220と各柱部材210、210との角度変位を抑制する変形抑制手段である。ガセットプレート230は、耐震架台200のX方向への揺れによる変形(耐震架台200が平行四辺形状に変形すること)を抑制する。
一例としてガセットプレート230は五角形状である。
柱本体211、211と水平材220が溝形鋼から構成される場合、柱本体211、211と水平材220は、夫々のウェブの外側面が前方(又は後方)を向くように配置される。ガセットプレート230、230は、柱本体211、211の下端部と水平材220の長手方向(X方向)の各端部とに跨がって、両部材のウェブの外側面に添設される。ガセットプレート230、230は、ボルト及びナットを用いて柱本体211、211と水平材220とに締結される。
【0018】
〔コンクリート天井〕
耐震架台の取り付け対象について説明する。
図3(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る支持金具が取り付けられたコンクリート天井の例を模式的に示した正面図である。
本発明の実施形態に係る支持金具1の取り付け対象となるコンクリート天井300は合成スラブであり、金属製のデッキプレート(天井デッキプレート)310(310A、310B)と、デッキプレート310の上面側に打設されて、デッキプレート310と一体化されたコンクリート層320とを備える。
【0019】
デッキプレート310は、下方(-Z方向)に突出すると共にY方向(第一の方向)に延びる複数の凸条部315(リブ部315A、谷部315B)と、上方(+Z方向)に突出(又は凹陥)すると共にY方向に延びる複数の凹条部311(凹条部311A、山部311B)と、を備え、凸条部315と凹条部311とがY方向と交差するX方向(第二の方向)に交互に繰り返す構成を備える。なお、符号312は凹条部311の下面312(平板部312A、下面312B)である。
【0020】
図3(a)に示すデッキプレート310Aは、床及び屋根スラブのコンクリート打設時に型枠材として使用される所謂フラットデッキである。デッキプレート310Aは、下方に突出すると共にY方向に延びるリブ部315Aと、リブ部315Aよりも上方に位置してY方向に帯状に延びる平板部312A(凹条部311Aの下面)とを備える。
デッキプレート310Aは下側から見てリブ部315Aと平板部312AとがX方向に交互に繰り返す形状である。図示するリブ部315Aの下部は、横断面視(ZX平面における断面視)で概略三角形状であり、リブ部315Aは最下部に平板部と並行する下面316Aを有する。デッキプレート310Aの上面は概ね平坦面である。なお、概ね平坦とは厳密な意味での平坦面であることを意味するものではなく、成型する上で必然的に発生する凹凸、及び強度や意匠性の向上を目的として平板部312Aに形成された凹凸或いはエンボス等の存在を許容するものである。
【0021】
図3(b)に示すデッキプレート310Bは、それ自体が構造材として機能する波形デッキプレートである。デッキプレート310Bは、下方に突出すると共にY方向に延びる谷部315Bと、上方に突出すると共にY方向に延びる山部311Bとを備える。デッキプレート310Bは谷部315Bと山部311BとがX方向に交互に繰り返す形状である。
【0022】
支持金具1は
図3(a)、(b)の何れのデッキプレート310A、310Bにも装着可能である。
図示するように、耐震架台の柱部材210、210は、
図3(a)のリブ部315Aと平板部312Aとを横断する横断方向(X方向)に、又は
図3(b)の谷部315Bと山部311Bとを横断する横断方向(X方向)に所定間隔を空けて配置される。
【0023】
〔第一の実施形態〕
本発明の一実施形態に係る支持金具について
図3及び
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第一の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
支持金具1は、支持対象物である耐震架台200(及び配管100)を天井から吊り下げ支持する手段である。支持金具1は、その長手方向(X方向)がデッキプレート310の凹条部311と凸条部315とを横断するようにコンクリート天井300の下面に対して装着される。
以下では、支持金具1の長手方向が凹条部311(及び凸条部315)の延在方向に対して直交するものとして説明する。
【0024】
支持金具1は、その長手方向に離間して配置されると共に、デッキプレート310の異なる凹条部311の下面312に対して夫々固定される複数の上板(上フランジ)20、20と、長手方向に延在すると共に、上面が両上板20、20の下面と対向するように両上板20、20の下方に配置されて、耐震架台200の柱部材210(対象物)の少なくとも一方が取り付けられる下板(下フランジ)30と、各上板20、20と下板30とを連接すると共に、各上板20、20が固定される各凹条部311、311間に位置する凸条部315を回避する切欠部41を有した連接板(ウェブ)40と、を備える。
【0025】
<<上板>>
図示する支持金具1の上板20、20は、支持金具1の長手方向の両端部に配置されており、デッキプレート310の隣接する凹条部311、311の下面に固定される。
上板20、20の長手方向長は、凹条部311の下面312のX方向長と同等かこれよりも短くなるように設定される。
各上板20、20の面内適所には、支持金具1をデッキプレート310に固定するための取付孔(上取付孔)25、25が貫通形成されている。各取付孔25、25には、コンクリート天井300に打ち込まれること等によりデッキプレート310からその下方に突出したアンカーボルトABが挿通される。取付孔25、25から突出したアンカーボルトABにナットNを螺着することで、支持金具1はデッキプレート310に固定される。
取付孔25は、支持金具1の長手方向に伸びる長孔としてもよい。取付孔25を長孔とすれば、コンクリート天井300に対するアンカーボルトABの打ち込み位置に関して厳密な管理が不要となる。
【0026】
<<下板>>
下板30は、長手方向に延在すると共に、上面が両上板20、20の下面と対向するように(両上板20、20と並行する姿勢で)両上板20、20の下方に離間配置されている。下板30には、少なくとも柱部材210の一方が取り付けられる。図示する支持金具1は、一の耐震架台200を構成する柱部材210、210の配置間隔よりも短い長手方向長を有する。このため、支持金具1には一本の柱部材210が取り付けられる。
【0027】
下板30の面内適所には、ボルトB及びナットNを用いて柱部材210を支持金具1に対して締結するための取付孔(下取付孔)31、31、31が貫通形成されている。取付孔31…と
図2に示す柱部材210のトッププレート212の各孔213とを連通させた状態で、各孔31、213内にボルトBの軸部を挿通してナットNを螺着することで、柱部材210は支持金具1に固定される。
ここで、取付孔31…は、支持金具1の長手方向に延在する長孔となっている。
図3中に両矢印にて示すように、支持金具1は柱部材210の取り付け位置をX方向に調整可能に構成されている。これにより、デッキプレート310の凹条部311、311の間隔に関係なく、柱部材210、210の間隔を配管100の幅に合わせて自由に設定できる。また、凹条部311の位置によらず配管100の取付位置を決定できるため、利便性が高まる。
なお、下板30に開口する取付孔31…の位置、形状(長さ)、及び数量は、支持金具1の耐震性が維持される範囲で適宜に設定される。取付孔31…は、下板30の面内のうち、凸条部315の下面316と対向する部位に配置されてもよい。
取付孔31のX方向長は、トッププレート212の孔213、213のX方向における間隔よりも短く設定されている。即ち、下板30においては、一つの取付孔31に一つの孔213が連通するように、各取付孔31の位置及び大きさが設定されている。トッププレート212の2つの孔213を3つの取付孔31の何れに連通させるかによっても、柱部材210の取り付け位置をX方向に調整できる。
【0028】
<<連接板>>
連接板40は、支持金具1の短手方向(Y方向)の適所において、上板20と下板30とを連接する。本例において連接板40は、短手方向の一端部(後端部)に配置されており、該部位において上板20と下板30とを連接する。本例に示す支持金具1は、側面視で概略C字形状(角C字形状)である。
連接板40は、各上板20、20が固定される凹条部311、311間に位置する凸条部315を回避する切欠部41を備える。切欠部41の形状及び大きさは、支持金具1が耐震架台200及び配管100を支持するに当たって必要な強度を満たすように決定される。ここで、切欠部41に面する連接板40の各端縁について、切欠部41の長手方向両端に位置する各端縁を内側端縁40aと称し、切欠部41の下端に位置する端縁を上側端縁40bと称する。支持金具1がデッキプレート310に装着されたときに、内側端縁40aは凹条部311の側面313(313A、313B)と対向し、上側端縁40bは凸条部315の下面316と対向する。なお、側面313は凸条部315の側面とも言いうる。
【0029】
切欠部41の形状は、内側端縁40aが側面313とは並行しない形状でもよい。例えば、
図4や
図3(a)に示す切欠部41は、デッキプレート310A、310Bの何れの側面313A、313Bとも並行しない形状である。或いは、切欠部41の形状は、内側端縁40aが側面313に沿って並行に伸びる形状でもよい。例えば、
図3(b)の支持金具1Bにおいて内側端縁40aは、側面313Bに沿って並行に伸びると共に側面313Bに添設される形状である。
また、切欠部41の大きさは、単一の凸条部315のみを回避する大きさでもよいし、複数の凸条部315、315…を一括して回避する大きさでもよい。支持金具1自体が、地震等に起因する揺れに抵抗しうる剛性を備えているならば、切欠部41に面する連接板40の各端縁をデッキプレート310の側面313と下面312の何れとも密着させる必要はない。
図示する例では、一つの連接板40が短手方向の一端部に配置されているが、支持金具は複数の連接板を備えてもよい。例えば、支持金具は、短手方向の各端部に夫々連接板を備えてもよい。
【0030】
<<作業用空間と開口部>>
支持金具1は、下板30から上板20、20までの間に形成される作業用空間50を備える。作業用空間50は、上板20、20、下板30、及び連接板40によって囲まれる空間である。作業用空間50は、外部空間と作業用空間50とを連通させる開口部51(52、53、53)を備える。図示する支持金具1は、前面に前面開口52を、長手方向の両端に側部開口53、53を備える。
作業用空間50及び開口部51は、支持金具1がデッキプレート310に位置決めされた状態で、デッキプレート310に対する支持金具1の装着作業や支持金具1に対する柱部材210の装着作業等を、開口部51を介して外部空間から容易に行えるように構成される。
開口部51は、支持金具1がデッキプレート310に位置決めされた状態で、上記作業に必要な物体(ボルトやナット等の締結用金具、工具、及び作業員の手等)を外部から作業用空間50に挿入し、又は作業用空間50から外部へ取り出し可能とする。支持金具1においては、特に前面の全体を開口部51とすることで、上記装着作業をより容易に、且つ確実に実施しうる。即ち、ボルト及びナット等を用いた部材同士の締結作業を容易に行うことができ、これにより各部材を強固に固定できる。
【0031】
ここで、支持金具1の高さH1は、下面312からの凸条部315の突出量よりも大きくなるように設定される。これにより、
図3に示すように支持金具1がデッキプレート310に装着された場合に、凸条部315の下面316と下板30との間に所定の離隔が生じ、該部分に作業用空間50が残存する。仮に切欠部41の高さH2が凸条部315の高さと同等である場合には、凸条部315の下面316と下板30との間に高さH3の作業用空間50が残存する。
この構成により、支持金具1の長手方向の全体に連続した作業用空間50が確保され、各種作業を効率的に実施可能となる。また、凸条部315の直下に位置する下板30の部分に柱部材210を装着可能となり、柱部材210の装着位置の自由度を高められる。
【0032】
<<支持金具を構成する材料の一例>>
支持金具1は、耐震架台200が必要な耐震性能を発揮できるように、耐震基準を満たした状態で耐震架台200(及び配管100)を天井から吊り下げ支持する。このため、支持金具1は、耐震基準を満たすように構成される。支持金具1は一例としてSS材(一般構造用圧延鋼材)等から構成される。
例えば、作業用空間50側において、上板20、20及び下板30は自由端側(前端部)から連接板40に向かって肉厚が漸増するテーパ形状を有し、上板20、20と連接板40、及び下板30と連接板40とは、円弧状の湾曲部により接続される。支持金具1にはこのような鋼材として溝形鋼を用いることができる。溝形鋼を用いることにより、下板30の特に取付孔31付近に印加される下向き荷重に対する強度を確保できる。また、振れ止め手段の一部として機能するために必要な剛性を確保できる。溝形鋼を用いた支持金具の製造方法については後述する。
もちろん、支持金具1は、上板20、20、下板30、及び連接板40を互いに溶接により接合して作製されてもよい。
【0033】
〔第二の実施形態〕
図5は、本発明の第二の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。本実施形態に係る支持金具2は、長手方向の両端部に上板20、連接板40、及び、下板30に跨がって固定された第一補強板(端部補強板)61、61を備える点で第一の実施形態と異なる。
【0034】
支持金具2において上板20は長手方向の両端部に配置されている。支持金具2の長手方向の両端部において、連接板40と下板30の端縁位置(端面位置)と、上板20の長手方向の外側端縁22(端面)の位置とが整合している。図示する第一補強板61は概略矩形状の平板である。第一補強板61の3辺(端縁)に対して上板20と連接板40と下板30の各長手方向の端部が溶接により固定されている。
【0035】
図5に示す第一補強板61は、
図4に示す側部開口53、53の全体を閉止する形状であるが、第一補強板61は側部開口53、53の一部のみを閉止する形状でもよい。例えば、第一補強板を概略矩形状とし、対向する2辺(端縁)を夫々上板20の端縁と下板30の端縁とに接合する構成でもよい。或いは、第一補強板は、隣接する2辺が上板20の端縁と連接板40の端縁とに接合される概略逆三角形状でもよい。更に第一補強板は、隣接する2辺が下板30の端縁と連接板40の端縁とに接合される概略三角形状でもよい。
【0036】
第一補強板61によって、
図4に示す側部開口53の全部又は一部が閉止されたとしても、作業用空間50に対しては前面開口52を介して外部からアクセス可能であり、第一の実施形態と同様に、各種作業を実施するための作業性は確保される。
本例においては、支持金具2の長手方向の端部に第一補強板61、61を配置したので、柱部材210(
図3等)を介して印加される下向き荷重に対する強度が向上する。
【0037】
〔第三の実施形態〕
図6は、本発明の第三の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。本実施形態に係る支持金具3は、切欠部41の長手方向の両端部(支持金具3の長手方向の中間部)に、上板20と連接板40とに跨がって固定された第二補強板(中間補強板)62、62を備える点に特徴がある。
【0038】
図示する第二補強板62は概略逆三角形状の平板である。第二補強板62の上端部は、切欠部41寄りに位置する上板20の長手方向の端部(内側端縁21、
図4参照)に接合される。第二補強板62の後端部は、切欠部41の長手方向両端位置に相当する連接板40の内側端縁40a(
図4参照)に接合される。
第二補強板62は、支持金具3がデッキプレート310(
図3)に装着されたときに、凹条部311の側面313と対向する。
第二補強板62の前後方向長は上板20の前後方向長(内側端縁21の長さ)と同等であり、第二補強板62の上下方向長は上下方向に延びる内側端縁40aの長さと同等であるが、第二補強板62のサイズはこれ以外としてもよい。
また、第二補強板62は、矩形状等、三角形以外の形状の平板としてもよい。
【0039】
本例においても、作業用空間50に対しては前面開口52を介して外部からアクセス可能である。仮に、支持金具3がコンクリート天井300に対して位置決めされた場合でも、第二補強板62は凹条部311の側面313と近接した位置にあるため、第二補強板62の存在は各種作業の作業性に大きな影響を与えない。
第二補強板62は凹条部311の側面313と平行してもよいし、平行しなくてもよい。凹条部311の側面313に対する第二補強板62の位置は、切欠部41の形状により決定される。
上板20と連接板40とを接続する第二補強板62を備えることにより、支持金具3の強度が向上する。
【0040】
なお、支持金具は、第一補強板61、61を備えずに、且つ第二補強板62、62を備える構成であってもよい。
また、第二補強板62を利用して、支持金具3がより強固にコンクリート天井300に固定されるようにしてもよい。例えば、アンカーボルトを第二補強板62の面内適所に設けた孔を介して
図3(b)に示すコンクリート天井300の谷部315B内に打ち込むと共に、該アンカーボルトにナットを螺着して、支持金具3をより強固にコンクリート天井に対して固定するようにしてもよい。或いは、対向する山部311Bの側面313Bと第二補強板62とを離間させる方向に加圧するような部材を配置してもよい。
【0041】
〔第四の実施形態〕
図7は、本発明の第四の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。本実施形態に係る支持金具4は、概略矩形状の第二補強板(中間補強板)62、62と、該第二補強板62、62の下端部間を連結する中板70(第三補強板)と、を備える。
【0042】
本例において、第二補強板62、62は概略矩形状である。
図示する中板70は概略矩形状であり、下面が下板30の上面と対向するように下板30と並行に配置される。中板70の後端部は、切欠部41の下端位置に相当する連接板40の上側端縁40b(
図4参照)に溶接により接合される。中板70の長手方向の両端部は、第二補強板62、62の下端部に溶接により接合される。中板70は、連接板40と第二補強板62とに跨がって固定されており、支持金具4の強度を向上させる。
【0043】
中板70は、支持金具4がデッキプレート310(
図3)に装着されたときに、凸条部315の下面316と対向する。図示する中板70の面内適所には、取付孔71が貫通形成されている。取付孔71は、中板70を凸条部315に固定する際に用いられる。取付孔71には、コンクリート天井300に打ち込まれること等によりデッキプレート310からその下方に突出したアンカーボルトを挿通することができる。取付孔71から突出したアンカーボルトにナットを螺着することで、支持金具4を補助的にデッキプレート310の凸条部315に固定することができる。
【0044】
〔第五の実施形態〕
図8は、本発明の第五の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
本例は、第一の実施形態(
図4)に示す支持金具を長手方向に延長して、より多くの凸条部315の下面316(
図3参照)によって支持金具を支持するものである。本実施形態に係る支持金具5は、長手方向の両端部と中間部とに合計3つの上板20、20…を備え、各上板20、20…の間に切欠部41、41を備える。このように、支持金具5が3つ以上の凸条部315の下面316によって支持されるようにしてもよい。
【0045】
耐震架台及び耐震架台によって保持される配管が大型化且つ重量化する場合には、支持金具を長手方向に延長することによって、支持に必要な強度を確保することができる。
なお、支持金具5は、第二~第四実施形態に示した第一補強板61、第二補強板62、及び中板70の全部又は何れかを備えてもよい。この場合に、支持金具は、各補強板又は中板を備えることによって得られる各効果を夫々享受できる。
【0046】
〔第六の実施形態〕
図9は、本発明の第六の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。本実施形態に係る支持金具6において連接板40は、短手方向の中間部に配置されており、該部位において上板20と下板30とを連接する。本例に示す支持金具6は、側面視で概略H字形状である。
上板20、20及び下板30に開口する取付孔25、25、31は、連接板40との接合部を回避した部位に配置されている。本例においては、連接板40よりも前部側と後部側の双方に、それぞれ取付孔25、25、31が貫通形成されている。各取付孔25、25、31の長手方向位置は第一の実施形態と同様である。
【0047】
連接板40が支持金具6の短手方向の中間部に配置されていることで、連接板40の前方と後方に夫々作業用空間50、50が形成される。各作業用空間50は、外部空間と作業用空間50とを連通させる開口部51(52~54)を備える。連接板40の前方に位置する作業用空間50は、前面開口52及び側部開口53を備える。連接板40の後方に位置する作業用空間50は、幅方向の両端に側部開口53を備え、後面に後面開口54を備える。
【0048】
第一の実施形態と同様に、支持金具6は、上板20、20、下板30、及び連接板40を互いに溶接により接合して作製されてもよいが、H形鋼を加工して作製されてもよい。H形鋼を用いることにより、下板30の特に取付孔31付近に印加される下向き荷重に対する強度を確保できる。
【0049】
なお、支持金具6は、第二~第四実施形態に示した第一補強板61、第二補強板62、及び中板70の全部又は何れかを備えてもよい。この場合に、支持金具は、各補強板又は中板を備えることによって得られる各効果を夫々享受できる。
【0050】
〔第七の実施形態〕
図10は、本発明の第七の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
本実施形態に係る支持金具7は、デッキプレート310の凹条部311の下面312に対して固定される上板20と、凸条部315の下面316に対して固定される中板70と、上板20及び中板70の下方において上板20及び中板70と並行する姿勢で長手方向に延在するように上板20及び中板70に対して離間配置されて、耐震架台200の柱部材210(対象物)が取り付けられる下板30と、上板20、中板70、及び下板30と連接する連接板40と、を備える。
上板20及び下板30の面内には、取付孔25、31が夫々貫通形成されている。各取付孔25、31は、第一の実施形態等にて説明したものと同様である。
連接板40は、凸条部315を回避する段差部43を有する。なお、本例において内側端縁40aは段差部43と面している。
中板70の長手方向長は、デッキプレート310への固定に必要な長さに設定される。例えば、
図3(b)に示す谷部315Bの下面316BのX方向長と同等に設定されるが、これより長くても短くてもよい。
中板70の面内適所には、支持金具7をデッキプレート310に固定するための取付孔71が貫通形成されている。取付孔71の使用方法は、第四の実施形態(
図7)にて説明した通りである。
【0051】
支持金具7は、作業用空間50と、外部空間と作業用空間50とを連通させる複数の開口部51(52、53A、53B)を備える。支持金具7は、前面に前面開口52を、長手方向の両端に側部開口53(53A、53B)を備える。
前面開口52は、下板30と上板20との間に形成される開口部と、下板30と中板70との間に形成される開口部とを含み構成される。
図中左方に位置する側部開口53Aは、上板20、連接板40、及び下板30によって形成されており、第一の実施形態(
図4)に示す側部開口53と同様の構成である。図中右方に位置する側部開口53Bは、中板70、連接板40、及び下板30によって形成されている。
【0052】
本例によっても、耐震架台200をコンクリート天井に固定することが可能となる。また、支持金具7がデッキプレート310に位置決めされた状態で、開口部51を介して作業用空間50にアクセスできるため、作業性が向上する。
なお、支持金具7は
図5~
図7に示したような各種の補強板を備えてもよい。具体的には、支持金具7は長手方向の端部に、側部開口53A、53Bの全部又は一部を閉止する第一補強板を備えてもよい。なお、側部開口53Bの全部を閉止する補強板は、中板70、連接板40、及び下板30に跨がって配置される。支持金具7は、長手方向の中間部に、上板20と連接板40と中板70との全部又は何れかに跨がって固定される第二補強板62(
図6、
図7参照)を備えてもよい。
【0053】
〔第八の実施形態〕
図11は、本発明の第八の実施形態に係る支持金具を示す斜視図である。
支持金具8は、長手方向の両端部に中板70、70を備え、長手方向の中間部に上板20を備える構成である。中板70と上板20の構成は、上記各実施形態に示したものと同様であるため、その説明を省略する。
本例によっても、耐震架台200をコンクリート天井300に固定することが可能となる。また、支持金具8がデッキプレート310に位置決めされた状態で、開口部51を介して作業用空間50にアクセスできるため、作業性が向上する。
支持金具8は、
図5~
図7に示したような各種の補強板を備えてもよい。
【0054】
〔製造方法〕
支持金具1~8は、上板20、下板30、連接板40等を互いに溶接することで作製できる。また支持金具1~5、7、8は、溝形鋼を加工して作製することもできる。以下、溝形鋼を用いた支持金具1~3の製造方法について説明する。
図12(a)~(d)は、溝形鋼から支持金具を作製する方法について説明する斜視図である。
まず、
図12(a)に示すように、所定の長手方向長を有する溝形鋼80を準備する(準備工程)。溝形鋼80の長手方向長は、作製する支持金具の長手方向全長に応じて決定される。
溝形鋼80の一方のフランジ81(上フランジ81U)の長手方向の中間部と、これと連続するウェブ83の上フランジ81U側の一部とに、溝形鋼80から除去する除去部85を設定する。図中、除去部85と他の部分との境界は破線にて示されている。
【0055】
図12(b)に示すように、溝形鋼80の長手方向の中間部において、上フランジ81Uとウェブ83の上部とを連続的に切り欠いて(除去部85を除去して)切欠部41を形成する(除去工程)。これにより、上フランジ81Uの残部がデッキプレート310の凹条部311の下面312に対して固定される上板20、20となる。除去部85に相当する部位は、デッキプレート310の凸条部315を回避する部分となる。ウェブ83から除去された部分は切欠部41となる。なお、下フランジ81Lは下板30となり、ウェブ83の残部は連接板40となる。
各上板20の面内適所に、取付孔25を貫通形成する。下板30の面内適所に、取付孔31、31、31を貫通形成する。
以上の工程を経ることで、第一の実施形態に示す支持金具1(
図4)が完成する。
【0056】
更に、
図12(c)に示すように、支持金具1の長手方向の両端部に第一補強板61、61を接合することで、第二の実施形態に示す支持金具2(
図5)が完成する。
更に、
図12(d)に示すように、切欠部41の長手方向の両端部に第二補強板62、62を接合することで、第三の実施形態に示す支持金具3(
図6)が完成する。
同様に、第二補強板62、62を矩形状とした場合にはその下端部間に跨がって中板70を接合することにより、第四の実施形態に示す支持金具4(
図7)が完成する。
支持金具5(
図8)は、準備する溝形鋼80の長手方向長及び除去部85の位置を適宜に設定することで、上記方法により作製可能である。
支持金具7、8(
図10、
図11)についても上記と同様に作製可能である。
なお、上記各工程は適宜入れ替えて実施されてもよい。
【0057】
このように、溝形鋼80を加工することで支持金具を容易に作製できる。また、構造部材としても使用される溝形鋼80のフランジ81U、81Lには、各フランジ81U、81Lの端縁(図中前側)からウェブ83(図中後方)に向かってテーパが付けられており、ウェブ83に対してフランジ81U、81Lの角度が拡大する方向への変形を抑制する形状である。従って、耐震架台(及び配管)を支持するために必要な強度を容易に確保できる。
【0058】
なお、所定の長手方向長を有するH形鋼に対して
図12(a)、(b)と同様の加工を施すことで、支持金具6(
図9)も容易に作製される。また、必要に応じて
図12(c)、(d)と同様の加工を追加的に施してもよいし、中板70(
図7)を接合してもよい。
【0059】
〔解析結果〕
図13は、
図5(第二の実施形態)に示す支持金具の解析内容について説明する図である。本解析では、支持金具2が水平地震荷重による引き抜き力に耐えうるか否かを、解析ソフトウェアmidas igenを用いて有限要素法により解析した。
解析対象とした支持金具の諸元は以下の通りである。
ベースとなる溝形鋼:180×75×7×10.5[mm]
溝形鋼の長手方向長:320[mm]
第一補強板の大きさ:180×75×t5[mm]
切欠部の幅(長手方向長):120[mm]
切欠部の高さ:100[mm](上板の上面から上側端縁40bまでの長さ)
取付孔25の大きさ:40×20[mm]
取付孔31の大きさ:80×20[mm]
取付孔31の離隔:20[mm]
支持金具を構成する鋼材種:SS400
柱部材を支持するボルトのサイズ:M16
【0060】
図示するように、耐震架台200の柱部材210A、210Bの長さを2500mm、柱本体211、211の間隔を1000mmとした。耐震架台200の重量を100kg、配管100の重量を900kgとし、1つの耐震架台200が負担する荷重を1000kgと設定した。更に、一方の柱部材210Aの下端部(支持金具2から2500mm下方の位置)に、地震による水平荷重として1000kg(1G)が印加される場合を想定した。
まず、構造計算により、水平荷重が印加された側の柱部材210Aに作用する引き抜き力(重力方向)を算出した。引き抜き力は3250kgとなった。この引き抜き力を、図中斜線にて示す取付孔31B、31Cの長手方向の中央部(ボルトB、Bの取り付け位置)に作用させて、有限要素法解析を行った。
なお、支持金具2の各上板20…は、その全面がコンクリート天井300に固定されているものとして計算した。
図中、破線円にて示す支持金具2の部位45(切欠部41の隅部周辺)に最大の応力が発生し、その大きさは190kN/mm^2であった。これは支持金具2を構成するSS400材の降伏応力240kN/mm^2を下回っており、柱長さ2500mm、配管荷重900kgの条件下で支持金具を使用することの安全性が示された。なお、SS400材の降伏応力時における配管100の荷重は1160kgであった。
【0061】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様は、下方に突出して第一の方向(Y方向)に延びる凸条部315と上方に突出して第一の方向に延びる凹条部311とが第一の方向と交差する第二の方向(X方向)に繰り返す天井デッキプレート310の下面に対して、長手方向が凸条部と凹条部とを横断するように装着されて、耐震架台200を吊り下げ支持する支持金具1~8である。
ここで、耐震架台は、第二の方向に所定間隔を空けて配置される一対の柱部材210、210と、両柱部材の下端部によって支持されると共に、保持対象物(重量物である配管100)を保持する対象物保持部(水平材220)と、を備える。対象物保持部は、例えば保持対象物の下面を支持する水平材である。
【0062】
本態様に係る支持金具は、長手方向に離間して配置されると共に、天井デッキプレートの異なる凹条部の下面に夫々固定される複数の上板20(上フランジ)と、長手方向(X方向)に延在すると共に、上面が両上板の下面と対向するように両上板の下方に配置されて、少なくとも柱部材の一方が取り付けられる下板30(下フランジ)と、各上板と下板とを連接すると共に、各上板が固定される各凹条部間に位置する凸条部を回避する切欠部41を有した連接板40(ウェブ)と、下板から各上板までの間に形成される作業用空間50と、を備える。
この作業用空間は長手方向と交差する前後方向(Y方向)の少なくとも一方に作業用空間と外部空間とを連通させる開口部(前面開口52、後面開口54)を有し、支持金具が天井デッキプレートに位置決めされた状態で、天井デッキプレートに対する支持金具の装着作業と支持金具に対する柱部材の装着作業とを開口部を介して外部空間から行えるようにしたことを特徴とする。
【0063】
天井デッキプレートは、床及び屋根スラブのコンクリート打設時に型枠材として使用されるフラット型のデッキプレート310Aでもよいし、それ自体が構造材として機能する波形デッキプレート310Bでもよい。
連接板は、支持金具の前後方向の任意の位置に配置される。
開口部は、支持金具が天井デッキプレートに位置決めされた状態で、上記各装着作業に必要な物体(工具、ボルト、ナット及び作業員の手等)を外部から作業用空間に挿入し、又は作業用空間から外部へ取り出し可能とする。支持金具においては、上記装着作業を、開口部を介して外部空間から行うことができる。開口部は支持金具の側面に設けられてもよい(側部開口53)。支持金具においては、特に前面又は後面の全体を開口部とすることで、上記装着作業をより容易に、且つ確実に実施しうる。即ち、ボルト及びナット等を用いた部材同士の締結作業を容易に行うことができ、また、各部材を強固に固定できる。
なお、支持金具は、天井デッキプレートに位置決めされた状態で、天井デッキプレートの凸条部の下面と下板との間に作業用空間が残存するように構成されることが望ましい。これにより、凸条部の直下に位置する下板の部分に対して柱部材を装着可能となり、柱部材の装着位置の自由度を高められる。
本態様によれば、天井デッキプレートに対する装着作業及び配管を支持する耐震架台の装着作業を容易に行うことができる。また、各部材同士を強固に締結できる。
ここで、切欠部は矩形状としてもよいし、連接板の端縁が天井デッキプレート(特に波形デッキプレート)の凸条部の側面に添設される逆台形状でもよい。
【0064】
<第二の実施態様>
本態様に係る支持金具1~8において、下板30の面内には柱部材210を締結する取付孔31が貫通形成されており、該取付孔は支持金具の長手方向に延在する長孔であることを特徴とする。
取付孔は、ボルトB及びナットNを用いて、柱部材を下板に対して締結する際に使用される。取付孔を長孔とすることで、下板に対する柱部材の取り付け位置を長孔に沿って調整することができる。
本態様によれば、デッキプレート310の凹条部311の下面312の間隔に因らず、柱部材の取り付け位置を配管100の幅に合わせて調整することができる。
【0065】
<第三の実施態様>
本態様に係る支持金具2~4は、長手方向の両端部に、上板20、連接板40、及び、下板30に跨がって固定された第一補強板61を備えることを特徴とする。
本態様において、上板、連接板、及び、下板の長手方向における端面位置は支持金具の長手方向の端部において整合しており、第一補強板は各板の端面に溶接等により固定される。第一補強板は、支持金具に印加される下向き荷重に対する強度を向上させる。
第一補強板を配置することで作業用空間50の長手方向の両端に位置する開口部の少なくとも一部は第一補強板によって閉止されるが、前面又は後面の開口部(前面開口52、
図9に示す後面開口54)は閉止されない。前面又は後面の開口部の存在により、支持金具と柱部材の装着作業に係る作業性は確保される。
【0066】
<第四の実施態様>
本態様に係る支持金具3、4は、切欠部41の長手方向の両端部に、上板20と連接板40とに跨がって固定された第二補強板62を備えることを特徴とする。
第二補強板は支持金具の長手方向の中間部において、支持金具に印加される下向き荷重に対する強度を向上させる。
【0067】
<第五の実施態様>
本態様は、下方に突出して第一の方向(Y方向)に延びる凸条部315と上方に突出して第一の方向に延びる凹条部311とが第一の方向と交差する第二の方向(X方向)に繰り返す波形の天井デッキプレート310の下面に対して、長手方向が凸条部と凹条部とを横断するように装着されて、耐震架台200を吊り下げ支持する支持金具1~8の製造方法である。
本態様に係る支持金具の製造方法は、所定の長手方向長を有する溝形鋼80又はH形鋼を準備する準備工程(
図12(a))と、溝形鋼又はH形鋼の長手方向の中間部の適所において、上フランジ81Uの短手方向の全体とウェブ83の少なくとも上部とを連続的に除去して天井デッキプレートの凸条部を回避する切欠部41を形成すると共に、上フランジの残部を天井デッキプレートの凹条部の下面に対して固定される上板20とする除去工程(
図12(a)~(b))と、上フランジの面内適所に支持金具を天井デッキプレートの凹条部311の下面312に取り付ける上取付孔(取付孔25)を貫通形成する工程(
図12(b))と、下フランジ81Lの面内適所に耐震架台を取り付ける下取付孔(取付孔31)を貫通形成する工程(
図12(b))と、を有することを特徴とする。
重量物を支持する支持金具を溝形鋼又はH型鋼から作製することで、必要な強度を備えた支持金具を容易に、且つ短時間で大量に作製できる。
【符号の説明】
【0068】
B…ボルト、N…ナット、1~8…支持金具、20…上板、21…内側端縁、22…外側端縁、25…取付孔(上取付孔)、30…下板、31…取付孔(下取付孔)、40…連接板、40a…内側端縁、40b…上側端縁、41…切欠部、43…段差部、45…部位、50…作業用空間、51…開口部、52…前面開口、53…側部開口、54…後面開口、61…第一補強板、62…第二補強板、70…中板、71…取付孔、80…溝形鋼、81…フランジ、81L…下フランジ、81U…上フランジ、83…ウェブ、85…除去部、100…配管(保持対象物)、110…天井、200…耐震架台、210…柱部材、211…柱本体、212…トッププレート、213…孔、214…補強リブ、220…水平材(対象物保持部)、230…ガセットプレート、300…コンクリート天井、310、310A、310B…デッキプレート、311、311A…凹条部、311B…山部、312…(凹条部の)下面、312A…平板部、312B…(山部の)下面、313、313A、313B…側面、315…凸条部、315A…リブ部、315B…谷部、316…(凸条部の)下面、316A…(リブ部の)下面、316B…(谷部の)下面、320…コンクリート層