(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006089
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】排気浄化性能制御システムおよび排気浄化性能制御方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20250109BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20250109BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20250109BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20250109BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250109BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250109BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20250109BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250109BHJP
【FI】
F01N3/24 R
F01N3/20 K
F01N3/18 D
B60K6/445 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/16
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106657
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄士
(72)【発明者】
【氏名】是永 真吾
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 重正
(72)【発明者】
【氏名】飯田 達雄
【テーマコード(参考)】
3D202
3G091
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB05
3D202BB09
3D202BB11
3D202CC43
3D202DD20
3D202DD21
3D202DD22
3D202DD24
3G091AA14
3G091AB03
3G091BA03
3G091CA03
3G091FA01
3G091FB02
3G091FC04
3G091HA45
5H125AA01
5H125AC08
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA01
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】冷間運転中に排気を浄化することが可能な技術の提供。
【解決手段】車両が備える内燃機関の排気通路に配設された排気浄化触媒の温度を調整する温度調整部を制御して前記排気浄化触媒を活性状態にさせる触媒状態制御部と、前記内燃機関を始動させる内燃機関制御部と、前記排気浄化触媒が前記活性状態であり、かつ、前記内燃機関が冷間運転されている場合に、前記内燃機関の空燃比を調整する空燃比調整部を制御し、前記空燃比を所定の値よりリッチにさせる制御と前記空燃比を前記所定の値よりリーンにさせる制御とを繰り返すパータベーションを実行させるパータベーション制御部と、を備える排気浄化性能制御システムが構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が備える内燃機関の排気通路に配設された排気浄化触媒の温度を調整する温度調整部を制御して前記排気浄化触媒を活性状態にさせる触媒状態制御部と、
前記内燃機関を始動させる内燃機関制御部と、
前記排気浄化触媒が前記活性状態であり、かつ、前記内燃機関が冷間運転されている場合に、前記内燃機関の空燃比を調整する空燃比調整部を制御し、前記空燃比を所定の値よりリッチにさせる制御と前記空燃比を前記所定の値よりリーンにさせる制御とを繰り返すパータベーションを実行させるパータベーション制御部と、
を備える排気浄化性能制御システム。
【請求項2】
前記内燃機関において前記パータベーションによって発生するトルク変動に対する逆位相のトルクを、前記車両が備えるモータに発生させるトルク制御部をさらに備える、
請求項1に記載の排気浄化性能制御システム。
【請求項3】
車両が備える内燃機関の排気通路に配設された排気浄化触媒の温度を調整する温度調整部を制御して前記排気浄化触媒を活性状態にさせる工程と、
前記内燃機関を始動させる工程と、
前記排気浄化触媒が前記活性状態であり、かつ、前記内燃機関が冷間運転されている場合に、前記内燃機関の空燃比を調整する空燃比調整部を制御し、前記空燃比を所定の値よりリッチにさせる制御と前記空燃比を前記所定の値よりリーンにさせる制御とを繰り返すパータベーションを実行させる工程と、
を含む排気浄化性能制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化性能制御システムおよび排気浄化性能制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気浄化触媒を加熱することによって排気浄化触媒を活性状態にする電気加熱式触媒が知られている。例えば、特許文献1には、内燃機関の始動に先立って電源装置を制御して電気加熱式触媒に電力を供給し、排気浄化触媒を暖機するプレヒート処理を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、絶縁コートが施されているケース24内に、排気に含まれるカーボンが付着したり、排気中の水分が凝縮した凝縮水が付着したりすることによって、導通パスが形成された状態から回復させるために回復処理が行われることが開示されている(特許文献1、0068)。回復処理は、電気加熱式触媒において低下した絶縁抵抗を回復させるための処理であり、一部の気筒の空燃比をリーンとし、残りの気筒の空燃比をリッチとし、サイクル毎に気筒毎の空燃比の切り替えを行う制御を行うことが開示されている(特許文献1、0073)。当該回復処理は、凝縮水を蒸発させるなどの処理(特許文献1、0069)であるため、回復処理を実行するためには、内燃機関20の暖機がある程度完了しており、排気の温度が高くなっていることが必要である(特許文献1、0071)。そこで、特許文献1においては、内燃機関20の冷却水の温度である水温Twが既定温度T0よりも高くなっている場合に回復処理を行っている(特許文献1、0071)。当該従来の技術においては、内燃機関の暖機が完了していないと回復処理ができないため、内燃機関の暖機が完了していない冷間運転中に電気加熱式触媒の性能を充分に発揮させることができなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、冷間運転中に排気を浄化することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、排気浄化性能制御システムは、車両が備える内燃機関の排気通路に配設された排気浄化触媒の温度を調整する温度調整部を制御して前記排気浄化触媒を活性状態にさせる触媒状態制御部と、前記内燃機関を始動させる内燃機関制御部と、前記排気浄化触媒が前記活性状態であり、かつ、前記内燃機関が冷間運転されている場合に、前記内燃機関の空燃比を調整する空燃比調整部を制御し、前記空燃比を所定の値よりリッチにさせる制御と前記空燃比を前記所定の値よりリーンにさせる制御とを繰り返すパータベーションを実行させるパータベーション制御部と、を備える。
【0006】
パータベーションは、空燃比を所定の値よりリッチにさせる制御と空燃比を所定の値よりリーンにさせる制御とを繰り返すことで実現され、排気浄化触媒における酸素の吸蔵と放出を繰り返すことで、排気浄化触媒の浄化性能を向上させることができる。そして、排気浄化触媒の温度が調整されて活性状態にあれば、排気浄化触媒による浄化が実現するため、排気浄化触媒の活性化と、パータベーションを併用することによって排気浄化触媒の性能を最大化することができる。このため、排気浄化触媒が活性状態であり、かつ、内燃機関が冷間運転されている場合に、パータベーションを実行させる構成とすれば、排気が多い冷間においても排気浄化触媒の性能を有効に活用することができ、冷間運転中に排気を浄化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】車両が備える内燃機関の断面図とともに、内燃機関が備える各種センサとECUとの関係を示す図である。
【
図3】燃料噴射量を段階的に増加または減少させる構成におけるパータベーションの制御例を示す図である。
【
図4】排気浄化性能制御処理のフローチャートである。
【
図5】
図5Aは移動平均によって得られたトルクを模式的に示す図、
図5Bはパータベーションによるトルク変動を示す図、
図5Cは逆位相のトルクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)排気浄化性能制御システムの構成:
(2)排気浄化性能制御処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)排気浄化性能制御システムの構成:
排気浄化性能制御システムは、車両に搭載されて使用される。
図1は、排気浄化性能制御システムとして機能するECU(Electronic Control Unit)100が搭載された車両10の構成を示す図である。
図2は、車両10が備える内燃機関20の断面図とともに、内燃機関20が備える各種センサとECU100との関係を示す図である。
【0010】
車両10は、内燃機関20及び第2モータジェネレータ32を動力源として備えている。すなわち車両10は、ハイブリッド車両である。なお、車両10は、ハイブリッド車両の中でも、外部電源60に接続してバッテリ50を充電することができるプラグインハイブリッド車両である。そのため、バッテリ50には、外部充電用の充電器51が接続されている。なお、バッテリ50は、例えば400Vの高圧バッテリである。また、第2モータジェネレータ32は、例えば三相交流型のモータジェネレータである。
【0011】
内燃機関20の排気通路21には、触媒コンバータ29が設置されている。触媒コンバータ29には排気浄化触媒210が搭載されている。本実施形態において、排気浄化触媒210は、酸素吸蔵作用を有する三元触媒である。この三元触媒は、セリア(CeO2)等の成分を有し、排気中の酸素を吸蔵・放出する性質を有している。すなわち、排気浄化触媒210は、排気中の空燃比がリーンになると排気中に存在する過剰酸素を吸着保持し、空燃比がリッチになると吸着保持した酸素を放出する。また、本実施形態において、排気浄化触媒210は、通電に応じて発熱する発熱部によって温度が調整される電気加熱式触媒である。排気浄化触媒210は、電源装置70を介してバッテリ50と接続されている。
【0012】
第2モータジェネレータ32は、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)35を介してバッテリ50と接続されている。第2モータジェネレータ32は、減速機構34を介して駆動輪40に連結されている。
【0013】
また、内燃機関20は、動力分割機構30及び減速機構34を介して駆動輪40に連結されている。なお、動力分割機構30には、第1モータジェネレータ31も連結されている。第1モータジェネレータ31は、例えば三相交流型のモータジェネレータである。動力分割機構30は、遊星歯車機構であり、内燃機関20の駆動力を第1モータジェネレータ31と駆動輪40とに分割することができる。
【0014】
第1モータジェネレータ31は、内燃機関20の駆動力や駆動輪40からの駆動力を受けて発電を行う。また、第1モータジェネレータ31は、内燃機関20を始動する際に、内燃機関20の回転軸を駆動するスタータとしての役割も担う。その際には、第1モータジェネレータ31は、バッテリ50からの電力の供給に応じて駆動力を発生するモータとして機能する。
【0015】
第1モータジェネレータ31及び第2モータジェネレータ32は、パワーコントロールユニット35を介してバッテリ50に接続されている。第1モータジェネレータ31によって発電された交流電力は、パワーコントロールユニット35により直流に変換されてバッテリ50に充電される。すなわち、パワーコントロールユニット35はインバータとして機能する。
【0016】
また、バッテリ50の直流電力は、パワーコントロールユニット35により交流に変換されて、第2モータジェネレータ32に供給される。なお、車両10を減速させる際には、駆動輪40からの駆動力を利用して第2モータジェネレータ32で発電を行う。そして、発電した電力はバッテリ50に充電される。すなわち、この車両10では回生充電を行う。この際には、第2モータジェネレータ32は、ジェネレータとして機能する。このときには、第2モータジェネレータ32によって発電された交流電力は、パワーコントロールユニット35により直流に変換されてバッテリ50に充電される。
【0017】
なお、第1モータジェネレータ31をスタータとして機能させるときは、パワーコントロールユニット35は、バッテリ50の直流電力を交流に変換して第1モータジェネレータ31に供給する。
【0018】
ECU100は、演算を行うCPUや演算結果などの各種情報量を記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、各制御プログラムを格納したROM等を有している。ECU100は、車両10が搭載する各装置を制御することができる。本実施形態において、ECU100は、排気浄化性能制御システムとして機能する。また、ECU100は、通常の車両の制御装置としての機能も有している。例えば、ECU100は、内燃機関20、第1モータジェネレータ31及び第2モータジェネレータ32を制御する。すなわち、ECU100は、プラグインハイブリッド車両である車両10のパワートレーンを制御する制御装置として機能する。
【0019】
内燃機関20は、
図2に示すように、点火プラグ220、シリンダ230、インジェクタ240a,240b、スロットル250を備えている。ECU100は、内燃機関20を始動させ、また、始動後に運転を継続させることが可能である。始動は種々の手法で実施されてよく、例えば、ECU100がPCU35を介して第1モータジェネレータ31を制御し、内燃機関20のクランクシャフトを回転させるスタータとして機能させる例が挙げられる。内燃機関20が始動されると、ECU100は、点火プラグ220を制御し、各シリンダ230内の混合気に対して点火を行うことによって内燃機関20に駆動力を発生させる。
【0020】
また、シリンダ230内の燃焼に際して、ECU100は、インジェクタ240a,240bの少なくとも一つを制御し、吸気通路22内またはシリンダ230内に燃料を噴射させる。インジェクタ240aは、吸気通路22用のインジェクタであり、吸気通路22を通って外部から吸入した空気が、インジェクタ240aから噴射された燃料と混合され、混合気としてシリンダ230内に吸気される。インジェクタ240bは、シリンダ230用のインジェクタであり、吸気通路22を通って外部から吸入されてシリンダ230に達した空気が、インジェクタ240bから噴射された燃料と混合され、混合気となる。吸気された混合気がシリンダ230の内部で燃焼すると、燃焼後のガスが排気通路21に排気される。なお、インジェクタ240a,240bによって混合気を生成する際の制御法は種々の手法を採用可能であり、インジェクタ240aのみ、インジェクタ240bのみ、インジェクタ240a,240bの双方、のいずれによって混合気が生成されてもよい。また、内燃機関20は、インジェクタ240a,240bの一方のみを備えていても良い。
【0021】
吸気通路22には、シリンダ230内に吸入される吸入空気量を調節するスロットル250が配設されている。スロットル250よりも上流側(吸気口側)には、エアフローセンサ260aが設けられている。エアフローセンサ260aは、吸気通路22内を通る空気の量を検出するセンサである。ECU100は、エアフローセンサ260aの出力信号に基づいて、吸気通路22内を通る空気の量を取得する。
【0022】
内燃機関20のクランクシャフト近傍には、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサ260bが取り付けられている。ECU100は、クランク角センサ260bの出力信号に基づいてクランク角を取得し、当該クランク角からクランクの角加速度等を取得する。
【0023】
シリンダ230の周りには、内燃機関20の冷却水が流れる通路Pwが設けられており、当該通路Pwの出口260c1には、冷却水の温度を検出する水温センサ260cが取り付けられている。ECU100は、水温センサ260cの出力信号に基づいて、内燃機関20の冷却水の温度を取得することができる。ECU100は、水温センサ260cが示す冷却水の温度が予め決められた暖機判定閾値(例えば80℃~90℃の温度のいずれか)以上である場合に、内燃機関20の暖機が完了したと判定することができる。従って、例えば、内燃機関20の暖機が完了したと判定される場合には、特許文献1に記載された回復処理を行うことが可能である。
【0024】
排気通路21には、空燃比センサ260d1,260d2が設けられている。本実施形態において、空燃比センサは、排気浄化触媒210を挟むように合計2カ所に設けられている。すなわち、排気浄化触媒210よりも上流側(シリンダ230側)に空燃比センサ260d1が設けられ、排気浄化触媒210よりも下流側(シリンダ230の逆側)に空燃比センサ260d2が設けられている。
【0025】
本実施形態において、空燃比センサ260d1,260d2は、その取付位置における排気中の酸素濃度から排気空燃比をリニアに検出するリニア空燃比センサである。なお、これらの空燃比センサ260d1,260d2は、所定の温度(例えば、350℃)以上とならなければ正確な検出を行えない。そこで、ECU100は、図示しない電力供給部を制御して空燃比センサ260d1,260d2に電力を供給し、空燃比センサ260d1,260d2が所定の温度以上になるように制御することができる。
【0026】
ECU100は、ROMに保存された各種制御プログラムを実行することができる。本実施形態においては、各種制御プログラムに排気浄化性能制御プログラムが含まれている。ECU100が排気浄化性能制御プログラムを実行すると、ECU100は、触媒状態制御部100a,内燃機関制御部100b,パータベーション制御部100c,トルク制御部100dとして機能する。
【0027】
触媒状態制御部100aは、車両10が備える内燃機関20の排気通路21に配設された排気浄化触媒210の温度を調整する温度調整部を制御して排気浄化触媒210を活性状態にさせる機能である。本実施形態において、温度調整部は電源装置70および図示しない発熱部である。すなわち、ECU100は、触媒状態制御部100aの機能により、電源装置70に制御指示を行い、排気浄化触媒210が備える発熱部に電力を供給させる。この結果、排気浄化触媒210の温度が閾値(例えば、350℃)以上になると排気浄化触媒210が活性状態になる。
【0028】
内燃機関制御部100bは、内燃機関20を始動させる機能である。本実施形態においては、ECU100が第1モータジェネレータ31を制御し、内燃機関20の回転軸を駆動させることで内燃機関20を始動させる。内燃機関20が始動された後、内燃機関20を停止する条件が発生していなければ、ECU100は、点火プラグ220およびインジェクタ240a,240bの少なくとも一つを制御し、空燃比を制御しつつ、内燃機関20の運転を続ける。
【0029】
パータベーション制御部100cは、空燃比調整部を制御して、パータベーションを実行させる機能である。本実施形態において、空燃比調整部は、インジェクタ240a,240b、エアフローセンサ260aおよび空燃比センサ260d1を含む。すなわち、ECU100は、エアフローセンサ260a、空燃比センサ260d1,260d2(空燃比センサ260d2が用いられなくても良い)の出力結果に基づいて、インジェクタ240a,240bによる燃料噴射量を増減させるフィードバック制御を行うことができる。
【0030】
パータベーションは、内燃機関20の空燃比を所定の値よりリッチにさせる制御と空燃比を所定の値よりリーンにさせる制御とを繰り返す制御である。なお、本実施形態において、所定の値は、理論空燃比である。
【0031】
具体的には、内燃機関20の駆動中にECU100は、空燃比センサ260d1の出力値に基づいて、現在の空燃比を推定する。現在の空燃比が、理論空燃比よりもリーンであると推定される場合、ECU100は、インジェクタ240a,240bを制御して、燃料噴射量を増加させる。現在の空燃比が、理論空燃比よりもリッチであると推定される場合、ECU100は、インジェクタ240a,240bを制御して、燃料噴射量を減少させる。
【0032】
燃料噴射量の増加量および減少量は、種々の手法で特定されて良い。例えば、ECU100は、燃料噴射量を段階的に増加または減少させても良いし、空燃比の値や排気浄化触媒210の酸素吸蔵量に応じて燃料噴射量の増加量および減少量を決定しても良い。
図3は、燃料噴射量を段階的に増加または減少させる構成における制御例を示す図である。
図3においては、上下に2個のグラフを示しており、上側に空燃比センサの出力から推定される現在の空燃比の時間変化を示し、下側に燃料噴射量の補正値を示している。
【0033】
現在の空燃比を示す上側のグラフにおいては、空燃比センサの出力値に基づいて推定される空燃比が理論空燃比である状態を基準にして現在の空燃比の時間変化を例示している。当該グラフにおいては、理論空燃比を挟んで空燃比がリーンの状態、リッチの状態を繰り返している。
【0034】
燃料噴射量の補正値の下側のグラフにおいては、理論空燃比とするための燃料噴射量を1.0とした場合の相対的な燃料噴射量を示しており、1.0より大きいと理論空燃比よりも空燃比がリッチになり、1.0より小さいと理論空燃比よりも空燃比がリーンになる。ECU100は、
図3に示すように、現在の空燃比が理論空燃比よりもリーンになると、理論空燃比を実現する燃料噴射量よりも、燃料噴射量を増加させる。また、ECU100は、現在の空燃比が理論空燃比よりもリッチになるまで燃料噴射量を段階的に増加させる。
【0035】
一方、ECU100は、
図3に示すように、現在の空燃比が理論空燃比よりもリッチになると、理論空燃比を実現する燃料噴射量よりも、燃料噴射量を減少させる。また、ECU100は、現在の空燃比が理論空燃比よりもリーンになるまで燃料噴射量を段階的に増加させる。燃料噴射量の段階的な増加量および減少量は、予め決められた量であれば良い。また、燃料噴射量の増加量および減少量は、空燃比の変動幅が、予め決められた範囲になるように調整されて良い。例えば、理論空燃比の±4%程度の範囲で空燃比が変化するように燃料噴射量の増加量および減少量が決められていて良い。さらに、燃料噴射量の増加量および減少量は、空燃比の変動周波数が、予め決められた範囲になるように調整されて良い。例えば、変動周波数が1Hz程度になるように燃料噴射量の増加量および減少量が決められていて良い。
【0036】
以上のような段階的な制御に限定されないが、ECU100は、空燃比を理論空燃比よりもリッチな状態、リーンな状態、を繰り返すパータベーションを実行することができる。そして、本実施形態において、ECU100は、排気浄化触媒210が活性状態であり、かつ、内燃機関20が冷間運転されている場合に、パータベーションを実行させる。
【0037】
排気浄化触媒210が活性状態であるという条件は、排気浄化触媒210が所望の浄化性能を発揮するための条件である。すなわち、本実施形態に係る排気浄化触媒210は、温度が閾値以上である場合に所望の浄化性能を発揮するため、ECU100は、排気浄化触媒210の温度が閾値より低い場合には、パータベーションを実行しない。
【0038】
内燃機関20が冷間運転されているという条件は、排気を浄化すべきニーズが高い状態で排気浄化触媒210を実施させるための条件である。すなわち、内燃機関20が冷間運転されている場合、従来は、排気浄化触媒210による排気浄化が行われておらず、パータベーションを含む排気浄化も行われていなかった。このため、内燃機関20を冷間始動した直後など、冷間運転が行われている場合に、排気浄化が行われなかった。
【0039】
そこで、本実施形態においては、内燃機関20が冷間運転中の場合に、排気浄化触媒210の機能を停止させるのではなく、排気浄化触媒210を活性化させ、かつ、パータベーションも実施することとした。以上の構成によれば、内燃機関20が冷間運転されている状態において、排気浄化触媒210が機能するため、内燃機関20が冷間始動された直後など、冷間運転されている状態において、排気を浄化させることができる。
【0040】
なお、本実施形態において冷間運転は、内燃機関20の温度が所定値以下の状態で内燃機関20が駆動していることを指す。本実施形態において、内燃機関20の温度は、水温センサ260cの検出値である。また、所定値は、予め決められた値であり、本実施形態においては、40℃である。従って、ECU100は、排気浄化触媒210が活性状態であり、かつ、水温センサ260cの検出値が所定値より低い状態で、上述のパータベーションを実行する。
【0041】
トルク制御部100dは、内燃機関20においてパータベーションによって発生するトルク変動に対する逆位相のトルクを、車両10が備えるモータに発生させる機能である。本実施形態において、トルク制御部100dによる制御対象は、第2モータジェネレータ32である。ECU100は、内燃機関20においてパータベーションによって発生するトルク変動を特定する。そして、ECU100は、トルク制御部100dの機能により、PCU35に制御指示を行い、第2モータジェネレータ32を制御して、逆位相のトルクを発生させる。本実施形態においては、第2モータジェネレータ32において発生しているトルク(車両10を駆動するためのトルク)に対して、逆位相のトルクを重畳することを、逆位相のトルクを発生させること、と見なしている。以上の構成によれば、パータベーションによって発生するトルク変動を低減することができ、車両10の乗員が感じる快適さを向上させることができる。
【0042】
(2)排気浄化性能制御処理:
次に、以上の構成を用いた排気浄化性能制御処理を詳細に説明する。
図4は、排気浄化性能制御処理を示すフローチャートである。車両10の電源がオンの状態(イグニションオンの状態)において、ECU100は、予め定められた演算周期毎に図示しないメインルーチンを実行する。当該メインルーチンの実行下において、所定の条件が成立した場合に
図4に示す排気浄化性能制御処理が開始される。所定の条件は、種々の条件であって良いが、例えば、内燃機関20が始動されておらず、第2モータジェネレータ32を動力源として車両10が走行している(すなわちEV走行している)状態で、内燃機関20の運転禁止状態が解除され、ハイブリッド走行モードへの移行が許可されている場合が挙げられる。他にも、内燃機関20の始動前に排気浄化触媒210を加熱するプレヒートの開始条件が成立した場合に排気浄化性能制御処理が開始されてもよい。
【0043】
排気浄化性能制御処理が開始されると、ECU100は、パータベーション制御部100cの機能により、空燃比センサ260d1,260d2の暖機を行う(ステップS100)。すなわち、ECU100は、図示しない電力供給部を制御して空燃比センサ260d1,260d2に電力を供給する。この結果、空燃比センサ260d1,260d2の温度が上昇していく。
【0044】
次に、ECU100は、触媒状態制御部100aの機能により、排気浄化触媒210の温度を閾値以上にするために必要な電力量である目標電力量を取得する(ステップS105)。具体的には、ECU100は、排気浄化触媒210の現在の温度の推定値と、閾値との差分を取得する。また、ECU100は、予め決められた単位温度の上昇に必要な電力量と当該差分とを乗じて目標電力量を取得する。なお、
図4に示す排気浄化性能制御処理が繰り返される過程において、既に目標電力量が取得済であれば、ステップS105は省略されても良いし、繰り返される過程において都度ステップS105が実行されてもよい。また、排気浄化触媒210の現在の温度の推定値は、種々の手法で取得されて良く、例えば、水温センサ260cの検出値に基づいて推定値が取得されて良い。
【0045】
次に、ECU100は、触媒状態制御部100aの機能により、排気浄化触媒210の暖機を行う(ステップS110)。すなわち、ECU100は、触媒状態制御部100aの機能により、電源装置70に制御指示を行い、排気浄化触媒210が備える発熱部に電力を供給させる。この結果、排気浄化触媒210の温度が上昇していく。なお、本実施形態において、ECU100は、排気浄化触媒210に供給した電力の積算値である電力量が目標電力量に達するまで排気浄化触媒210への通電を継続することによって暖機を行う。
【0046】
次に、ECU100は、パータベーション制御部100cの機能により、空燃比センサ260d1,260d2の暖機が完了したか否かを判定する(ステップS115)。本実施形態において、ECU100は、空燃比センサ260d1,260d2のインピーダンス値を検出することができ、当該インピーダンス値に基づいて空燃比センサ260d1,260d2の温度を特定することができる。そこで、ECU100は、空燃比センサ260d1,260d2の温度を特定し、温度が所定の温度以上である場合に、空燃比センサ260d1,260d2の暖機が完了したと判定する。なお、ステップS115において、空燃比センサ260d1,260d2の暖機が完了したと判定された場合、排気浄化性能制御処理が繰り返される過程で、再度、空燃比センサ260d1,260d2の暖機が完了したと判定されなくなるまで、ステップS100はスキップされても良い。
【0047】
ステップS115において、空燃比センサ260d1,260d2の暖機が完了したと判定されない場合、ECU100は、排気浄化性能制御処理を終了し、メインルーチンに戻る。すなわち、空燃比センサ260d1,260d2によって正確な検出が行えない状態である場合、ECU100は、パータベーションを行わず、排気浄化性能制御処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS115において、空燃比センサ260d1,260d2の暖機が完了したと判定された場合、ECU100は、触媒状態制御部100aの機能により、排気浄化触媒210の暖機が完了したか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、排気浄化触媒210に供給した電力の積算値が、ステップS105で取得された目標電力量に達した場合に、ECU100は、排気浄化触媒210の暖機が完了したと判定する。なお、ステップS120において、排気浄化触媒210の暖機が完了したと判定された場合、ステップS105,S110はスキップされても良い。また、排気浄化触媒210の温度を直接的に、または間接的に検出するセンサが用いられる場合や、排気浄化触媒210の温度を推定可能な場合、排気浄化触媒210の暖機完了後、再度、暖機未完了になったと検出することがある。この場合、再度ステップS105,S110が実行されてもよい。
【0049】
ステップS120において、排気浄化触媒210の暖機が完了したと判定されない場合、ECU100は、排気浄化性能制御処理を終了し、メインルーチンに戻る。すなわち、排気浄化触媒210の温度が充分に上昇していなければ、ECU100は、パータベーションを行わず、排気浄化性能制御処理を終了する。
【0050】
一方、ステップS120において、排気浄化触媒210の暖機が完了したと判定された場合、ECU100は、内燃機関制御部100bの機能により、内燃機関20が運転中であるか否か判定する(ステップS125)。すなわち、ECU100は、内燃機関20が始動され、点火プラグ220,インジェクタ240a,240b等の制御を行って運転を継続している状態であるか否か判定する。
【0051】
ステップS125において、内燃機関20が運転中であると判定されない場合、ECU100は、内燃機関制御部100bの機能により、内燃機関20を始動させる(ステップS130)。すなわち、ECU100は、PCU35を介して第1モータジェネレータ31を制御し、内燃機関20の回転軸を駆動させ、内燃機関20を始動させる。始動以後、ECU100は、点火プラグ220,インジェクタ240a,240b等の制御を行って内燃機関20の運転を継続させる。従って、内燃機関20が始動された後に、排気浄化性能制御処理が繰り返される過程で再度ステップS125が実行されると、内燃機関20が運転中であると判定される。ステップS125において、内燃機関20が運転中であると判定された場合、ステップS130はスキップされる。
【0052】
ステップS130が行われた場合、または、ステップS125において内燃機関20が運転中であると判定された場合、ECU100は、パータベーション制御部100cの機能により、内燃機関20が冷間運転中であるか否かを判定する(ステップS135)。すなわち、ECU100は、水温センサ260cの検出値を取得し、当該検出値が示す内燃機関20の温度が所定値より低い場合に、冷間運転中であると判定する。
【0053】
ステップS135において、冷間運転中であると判定されない場合、ECU100は、排気浄化性能制御処理を終了し、メインルーチンに戻る。すなわち、内燃機関20が冷間運転中であり、排気浄化のニーズが高い状態でなければ、ECU100は、パータベーションを行わず、排気浄化性能制御処理を終了する。なお、ステップS115,S120,S135の判定を経て、ステップS140実行することなく排気浄化性能制御処理が終了され、メインルーチンに戻った場合、排気浄化性能制御処理と異なる条件を充足することによってパータベーションが行われることはあり得る。例えば、メインルーチンにおいて空燃比センサ260d1,260d2の暖機が完了し、排気浄化触媒210の暖機が完了し、内燃機関20の暖機が完了したことを条件としてパータベーションが行われることはあり得る。
【0054】
一方、ステップS135において、冷間運転中であると判定された場合、ECU100は、パータベーション制御部100cの機能により、パータベーションを実行する(ステップS140)。具体的には、ECU100は、空燃比センサ260d1の出力値に基づいて、現在の空燃比を推定し、現在の空燃比が、理論空燃比を挟んでリーン側、リッチ側となる状態を繰り返すように、インジェクタ240a,240bを制御して、燃料噴射量を変化させる。この結果、内燃機関20の冷間運転中において、排気浄化触媒の活性化された状態で、パータベーションを実行することができる。従って、内燃機関20の冷間運転中において、排気浄化触媒の性能を最大化することができ、排気が多い冷間においても排気浄化触媒の性能を有効に活用することができ、冷間運転中に排気を浄化することが可能である。
【0055】
次に、ECU100は、トルク制御部100dの機能により、第2モータジェネレータ32のトルク制御を実行する(ステップS145)。本実施形態において、第2モータジェネレータ32に発生させるトルクは、パータベーションによって生じる内燃機関20のトルクの変動を相殺するためのトルクである。
【0056】
具体的には、ECU100は、クランク角センサ260bの出力信号に基づいて内燃機関20のクランク角を取得し、当該クランク角からクランクシャフトの角加速度を取得する。さらに、ECU100は、当該角加速度から内燃機関20のトルクを取得する。トルクは、種々の手法で取得可能であり、例えば、トルクT(N・m)=慣性モーメントJ(kg・m2)×角加速度α(rad/sec2)として取得可能である。この場合、慣性モーメントは予め特定される。
【0057】
ECU100は、得られたトルクの時間変化を平滑化する。平滑化は、短期間におけるトルクの急変を抑制しつつ、パータベーションによるトルクの時間変化を明らかにするように実施されればよい。平滑化は、種々の手法で実施されてよく、例えば、移動平均を算出することによって平滑化を実施可能である。
【0058】
具体的には、内燃機関20の爆発ピークトルクの周期は、内燃機関20のクランクシャフトの回転周期に一致し、例えば、4気筒の内燃機関20を1000rpmで運転した場合において、30ms程度の周期である。一方、パータベーションの周波数は1Hz程度であり、1s程度の周期である。従って、ECU100は、クランクシャフトの回転に起因するトルクの変動を平滑化し、パータベーションに起因するトルクの変動を残存させる期間を設定し、当該期間毎の移動平均を算出する。
【0059】
図5Aは、当該移動平均によって得られたトルクを模式的に示す図である。
図5Aにおいては、移動平均後のトルクを実線で示しており、当該トルクを直線近似して得られた直線を一点鎖線で示している。すなわち、パータベーションによる影響を除外したトルクの時間変化が一点鎖線で示されている。当該一点鎖線で示す直線近似は、種々の手法で実施されて良く、実線で示すトルクを取得する際に用いた期間より長期の期間を用いた移動平均が取得されても良いし、最小二乗法等が用いられても良い。
【0060】
図5Aにおいて実線で示されるように、トルクは、一点鎖線で示すベースのトルクに対して、パータベーションの周期Tp毎の変化が重畳された状態で変化する。そこで、ECU100は、トルクからベースのトルクを減じることにより、パータベーションによって発生するトルク変動を取得する。
図5Bは、以上のようにして得られたパータベーションによって発生するトルク変動を模式的に示す図である。
図5Bに示すようにパータベーションによって発生するトルクは、周期Tpで正のトルク、負のトルクが周期的に現れるように変化する。
【0061】
パータベーションによって発生するトルク変動が取得されると、ECU100は、当該トルク変動をトルク0に対して反転させた逆位相のトルクを取得する(
図5C参照)。そして、ECU100は、PCU35に制御指示を行い、第2モータジェネレータ32を制御して、逆位相のトルクを発生させる。逆位相のトルクを発生するための制御方法は種々の方法であって良い。例えば、第2モータジェネレータ32は、車両10の駆動に用いられるため、ステップS140,S145が実行される段階においては、車両10の駆動のために第2モータジェネレータ32が回転し、トルクが発生している。
【0062】
そこで、ECU100は、当該駆動のために第2モータジェネレータ32から発生しているトルクに逆位相のトルクを重畳させた値を取得し、第2モータジェネレータ32におけるトルクの制御目標とする。第2モータジェネレータ32における回転数とトルクとの関係は予め特定されており、ECU100は、当該関係に基づいて、任意のトルクを発生させるために必要な第2モータジェネレータ32の回転数を特定することができる。ECU100は、PCU35を介して第2モータジェネレータ32を制御し、制御目標のトルクを発生させる。この結果、パータベーションによって発生するトルク変動を低減することができ、車両10の乗員が感じる快適さを向上させることができる。
【0063】
ステップS145において、トルク制御が実行されると、ECU100は、メインルーチンに復帰する。なお、ステップS140においてパータベーションが実行され、ステップS145においてトルク制御が行われると、これらのパータベーションおよびトルク制御は継続して実行される。但し、排気浄化性能制御処理が繰り返される過程で、再度ステップS115,S120,S135が実行され、ステップS140,S145をスキップする条件が成立した場合、パータベーションとトルク制御は停止されて良い。
【0064】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、排気浄化性能制御システムが用いられる車両はプラグインハイブリット車両に限定されず、外部電源による充電が行われないハイブリッド車両であっても良い。また、上述の実施形態にかかる車両10はモータジェネレータが2個搭載されたシリーズパラレル方式の車両であるが、モータジェネレータが1個搭載されたパラレル方式の車両において排気浄化性能制御システムが用いられてもよい。
【0065】
さらに、上述の排気浄化触媒210は、直接加熱式の触媒であるが、間接加熱式の触媒において排気浄化性能制御システムが用いられてもよい。むろん、内燃機関20の燃料はガソリンに限定されず、軽油やCN燃料等であっても良い。さらに、空燃比センサ260d1,d2は、その取付位置における排気中の酸素濃度から排気空燃比が所定の値になっているか否かを検出する酸素センサであってもよい。
【0066】
さらに、
図4に示す処理の順序が変化しても良いし、省略可能な処理が省略されても良い。例えば、
図4に示すステップS115,S120,S125,S135の順序は互いに入れ替わっていても良い。但し、ステップS125とS130は、セットで順序が入れ替えられる。順序が入れ替わった場合、内燃機関20が始動される前に排気浄化触媒210が加熱されるプレヒートとは異なり、ポストヒートになり得る。
【0067】
例えば、ステップS125,S130がステップS115の前に存在する場合、排気浄化触媒210の暖機等が行われる前に内燃機関20が始動され、始動後の冷間運転中に空燃比センサ260d1,260d2と排気浄化触媒210の暖機が完了したらステップS140以降が実行される構成となる。ステップS115,S120,S135の順序も任意に入れ替え可能である。
【0068】
また、ステップS115の判定が省略される構成が採用される場合もある。例えば、メインルーチンによって空燃比センサの暖機完了が既に確認されている場合や、空燃比センサの暖機が不要である場合には、ステップS115が省略されても良い。さらに、メインルーチンにおいて内燃機関20が始動されるような構成においては、
図4に示す排気浄化性能制御処理を行うことでポストヒートの実施形態を実現可能である。なお、この場合には、ステップS120,S130が省略されても良い。
【0069】
さらに、ステップS140,S145におけるパータベーションおよびトルク制御は、各種の割り込みによって停止されても良い。例えば、内燃機関20の負荷が所定の基準を超える場合には、パータベーションおよびトルク制御が行われないように構成されていても良い。また、パータベーションによるトルク変動幅が基準幅未満であり、ドライバビリティに影響を及ぼさない程度であれば、ステップS145のトルク制御が省略されても良い。なお、内燃機関20の負荷は、種々の手法で特定されて良い。例えば、ECU100は、エアフローセンサ260aによって検出された空気の量が、排気量から推定される上限の量の所定割合以上に達している場合に基準を超える負荷であると判定することができる。そして、ECU100は、内燃機関20の負荷が所定の基準を超える場合に、パータベーションおよびトルク制御を停止させる。この構成によれば、排気系部品に過度の負荷をかけることがなく、排気系部品を保護することが可能である。
【0070】
さらに、パータベーションにおいて、空燃比の変動幅および変動周波数が種々の要素に依存していても良い。例えば、ECU100は、パータベーションにおける空燃比の変動幅と、空燃比の変動周波数と、の少なくとも一方を、排気浄化触媒210の種類、温度、劣化度合いの少なくとも一つに応じて変化させてもよい。
【0071】
例えば、排気浄化触媒210の種類が異なれば適切な変動幅、変動周波数が異なり得るため、ECU100が、排気浄化触媒210の種類に応じて変動幅、変動周波数を決定する構成としても良い。この構成によれば、排気浄化触媒210の種類が変わっても、各排気浄化触媒210におけるパータベーションの効果を引き出しやすくなる。
【0072】
また、排気浄化触媒210の温度が異なれば適切な変動幅、変動周波数が異なり得るため、ECU100が、排気浄化触媒210の温度に応じて変動幅、変動周波数を決定する構成としても良い。この構成によれば、排気浄化触媒210の温度の変動によるパータベーションの効果の低下を抑制することができる。
【0073】
排気浄化触媒210の温度に応じて変動幅を決定する構成の例としては、例えば、排気浄化触媒210の温度と基準の温度との差分が大きいほど、ECU100が空燃比の変動幅を大きくする構成が挙げられる。すなわち、基準の温度は、排気浄化触媒210の性能が最大限発揮される温度の値または温度の範囲であり、排気浄化触媒210の温度が基準の温度から乖離するほど、排気浄化触媒210の性能が発揮されにくい構成を想定する。この場合、温度の乖離が大きいほど変動幅を大きくすれば、排気浄化触媒210における酸素の吸蔵・放出をより積極的に促すことができる。この結果、排気浄化触媒210の温度と基準の温度との乖離によるパータベーションの効果の低下を抑制することが可能になる。
【0074】
さらに、排気浄化触媒210の劣化度合いが異なれば適切な変動幅、変動周波数が異なり得るため、ECU100が、排気浄化触媒210の劣化度合いに応じて変動幅、変動周波数を決定する構成としても良い。この構成によれば、排気浄化触媒210の劣化の進行によるパータベーションの効果の低下を抑制することができる。なお、劣化度合いは、例えば、使用期間等に応じて判断可能である。
【0075】
排気浄化触媒210の劣化度合いに応じて変動幅を決定する構成の例としては、例えば、劣化度合いが大きいほど空燃比の変動幅が小さくなる構成が挙げられる。この構成は、劣化の進行とともに、空燃比の変動による酸素の吸蔵・放出の促進効果が低下する場合に採用される。すなわち、劣化の進行によって、空燃比の変動による酸素の吸蔵・放出の促進効果が低下する場合、空燃比を変動させても酸素の吸蔵・放出が促進されにくい状態となる。この状態は、空燃比の変動によって、吸蔵・放出に関して所望の効果が得られないにもかかわらず、トルクの変動が発生してしまう状態であるといえる。そこで、空燃比の変動を小さくすれば、酸素の吸蔵・放出の促進は不充分であることを許容しつつも、トルクの変動を抑制することができる。
【0076】
また、劣化度合いが大きいほど空燃比の変動幅が大きくなる構成も採用され得る。この構成は、劣化の進行とともに、酸素の吸蔵・放出が促進される速度が低下する場合に採用される。すなわち、劣化の進行によって、劣化前よりも空燃比の変動による酸素の吸蔵・放出の促進効果が低下しているが、より大きく空燃比を変動させれば、酸素の吸蔵・放出を促進させることが可能な場合がある。この場合、空燃比の変動を大きくすれば、排気浄化触媒210の劣化によるパータベーションの効果の低下を抑制することができる。
【0077】
触媒状態制御部は、車両が備える内燃機関の排気通路に配設された排気浄化触媒の温度を調整する温度調整部を制御して排気浄化触媒を活性状態にさせることができればよい。すなわち、排気浄化触媒が排気通路を通る排気を浄化することができればよい。上述の実施形態において、触媒担体に担持される触媒は三元触媒であるが、排気浄化触媒の種類は限定されず、例えば、酸化触媒、吸蔵還元型NOx触媒、選択還元型NOx触媒等であってもよい。
【0078】
温度の調整は、調整後の排気浄化触媒を活性状態とするための調整であれば良い。一般に、活性状態は、排気浄化触媒が既定以上の温度になることによって実現されるため、既定以上の温度にするための調整が温度の調整であって良いが、他の構成であっても良い。例えば、排気浄化触媒の温度を既定の範囲内にするための調整であっても良い。温度は、上述の実施形態のように、投入電力等によって間接的に評価されても良いし、温度センサ等によって評価されても良く、種々の構成を採用可能である。
【0079】
活性状態は、排気浄化触媒が所定の性能を発揮する状態であれば良く、排気浄化触媒が既定以上の温度である状態であっても良いし、他の要素が条件に加わっていても良い。例えば、排気に含まれるカーボンが付着したり、排気中の水分が凝縮した凝縮水が付着したりする状態から回復されているなどの条件が付加されていても良い。
【0080】
パータベーション制御部は、排気浄化触媒が前記活性状態であり、かつ、内燃機関が冷間運転されている場合に、内燃機関の空燃比を調整する空燃比調整部を制御し、空燃比を所定の値よりリッチにさせる制御と空燃比を所定の値よりリーンにさせる制御とを繰り返すパータベーションを実行させることができればよい。すなわち、パータベーション制御部は、内燃機関の空燃比が所定の値を挟んで変化するように制御することができればよい。所定の値は、上述の実施形態では理論空燃比の値であるが、この値に限定されず、理論空燃比に所定のマージンが与えられた値であっても良い。
【0081】
内燃機関が冷間運転されている状態は、内燃機関の温度が予め決められた所定値以下の状態で運転されている状態であり、内燃機関の温度は直接的に測定されても良いし、間接的に測定されても良い。間接的な測定は、例えば、上述の実施形態のように冷却水の温度による測定が挙げられる。所定値は、予め決められた値であれば良く、例えば、内燃機関の暖機が完了したと見なされる値より小さい値が挙げられる。当該値は、例えば、40℃が挙げられるが40℃に限定されない。また、内燃機関の温度の測定によらずに冷間運転されているか否か特定されても良い。例えば、内燃機関を外気温と同一以下の状態で始動する冷間始動が行われた場合、冷間始動後の所定期間以内は、冷間運転されていると見なされても良い。
【符号の説明】
【0082】
10…車両、20…内燃機関、21…排気通路、22…吸気通路、24…ケース、29…触媒コンバータ、30…動力分割機構、31…第1モータジェネレータ、32…第2モータジェネレータ、34…減速機構、35…パワーコントロールユニット、40…駆動輪、50…バッテリ、51…充電器、60…外部電源、70…電源装置、100…ECU、100a…触媒状態制御部、100b…内燃機関制御部、100c…パータベーション制御部、100d…トルク制御部、210…排気浄化触媒、220…点火プラグ、230…シリンダ、240…インジェクタ、250…スロットル、260a…エアフローセンサ、260b…クランク角センサ、260c…水温センサ、260d1,260d2…空燃比センサ