(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060893
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】消泡剤及び非イオン性界面活性剤を含む低粘度液体洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20250403BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20250403BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20250403BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20250403BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20250403BHJP
C11D 1/22 20060101ALI20250403BHJP
C11D 1/12 20060101ALI20250403BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20250403BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/72
C11D3/22
C11D3/20
C11D3/37
C11D1/22
C11D1/12
C11D1/29
C11D1/14
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024230302
(22)【出願日】2024-12-26
(62)【分割の表示】P 2023526990の分割
【原出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ハイヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、イージア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消泡剤及び非イオン性界面活性剤を含む低粘度液体洗剤組成物を提供する。
【解決手段】低粘度液体洗剤組成物は、組成物の0.03重量%~5重量%の消泡剤と、組成物の3重量%~30重量%の、式(I)のアルコールエトキシレートである非イオン性界面活性剤と、を含む。
(式中、Rは、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖のC
8~C
20アルキル基から選択され、nの90%超は0≦n≦15であり、nの平均値は4~14であり、アルコールエトキシレートの約20重量%未満は、8未満のnを有するエトキシレートである)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体洗剤組成物であって、
a)前記組成物の0.03重量%~5重量%の消泡剤と、
b)前記組成物の3重量%~30重量%の、式(I)のアルコールエトキシレートである非イオン性界面活性剤
【化1】
(式中、Rは、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖のC
8~C
20アルキル基から選択され、nの90%超は0≦n≦15であり、nの平均値は4~14であり、前記アルコールエトキシレートの約20重量%未満は、8未満のnを有するエトキシレートである)と、を含む、液体洗剤組成物。
【請求項2】
式(I)の前記アルコールエトキシレートは、nの平均値が5~10であることを含む、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項3】
式(I)の前記アルコールエトキシレートは、前記アルコールエトキシレートの10重量%~20重量%が、nが8であるエトキシレートであることを含む、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項4】
式(I)の前記アルコールエトキシレートにおいて、前記アルコールエトキシレートの約10重量%未満が、7未満のnを有するエトキシレートである、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項5】
式(I)の前記アルコールエトキシレートにおいて、nの平均値が8~11である、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項6】
式(I)の前記アルコールエトキシレートは、前記アルコールエトキシレートの約30重量%~約55重量%が、nが9~10であるエトキシレートであることを含む、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項7】
式(I)の前記アルコールエトキシレートは、前記アルコールエトキシレートの80重量%超が、7を超えるnを有するエトキシレートであることを含む、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項8】
前記アルコールエトキシレートは、天然アルコール、合成アルコール、又はこれらの混合物に由来する、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤は、前記組成物の3重量%~25重量%、好ましくは3.5重量%~20重量%、より好ましくは4重量%~18重量%、更により好ましくは4.5重量%~16重量%、最も好ましくは5重量%~15重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項10】
前記液体洗剤組成物は、
c)前記組成物の0.01重量%~10重量%の結晶性ヒドロキシル含有安定化剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物。
【請求項11】
前記安定化剤は、前記組成物の0.01重量%~9重量%、好ましくは0.02重量%~8重量%、より好ましくは0.03重量%~5重量%、更により好ましくは0.05重量%~3重量%、最も好ましくは0.06重量%~2重量%の範囲の量で存在し、
好ましくは、前記安定化剤は、微結晶性セルロース又はその誘導体、ヒマシ油又はその誘導体、硬化ヒマシ油又はその誘導体、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、前記安定化剤は、微結晶性セルロース及び/又は硬化ヒマシ油である、請求項9に記載の液体洗剤組成物。
【請求項12】
前記消泡剤は、前記組成物の0.04重量%~3重量%、好ましくは0.08重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で存在し、
好ましくは、前記消泡剤は、シリコーン、シリカ、又はこれらの任意の混合物を含み、
より好ましくは、前記消泡剤は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物。
【請求項13】
前記液体洗剤組成物は、
d)前記組成物の0.01重量%~3重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%、より好ましくは0.02重量%~0.5重量%、最も好ましくは0.03重量%~0.3重量%の抗菌剤、好ましくはジフェニルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される抗菌剤、
e)前記組成物の4.5重量%~40重量%、好ましくは5.5重量%~30重量%、より好ましくは6重量%~20重量%、最も好ましくは6.5重量%~18重量%の有機酸、好ましくはクエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される有機酸、並びに/又は
f)前記組成物の2重量%~35重量%、好ましくは3重量%~30重量%、より好ましくは4重量%~25重量%、最も好ましくは5重量%~20重量%のアニオン性界面活性剤、好ましくはC6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、C6~C20アルキル硫酸塩(AS)、C6~C20アルキルアルコキシ硫酸塩(AAS)、C6~C20メチルエステルスルホン酸塩(MES)、C6~C20アルキルエーテルカルボン酸塩(AEC)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアニオン性界面活性剤を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物。
【請求項14】
前記組成物は、
a)前記組成物の0.1重量%~0.5重量%の前記消泡剤であって、前記消泡剤は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、前記消泡剤、
b)前記組成物の10重量%~15重量%の、式(I)の前記アルコールエトキシレート、
c)前記組成物の0.06重量%~2重量%の硬化ヒマシ油、
d)前記組成物の0.03重量%~0.3重量%の4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル、
e)前記組成物の6.5重量%~18重量%のクエン酸、及び/又は
f)前記組成物の5重量%~20重量%のC6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含む、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤及び非イオン性界面活性剤を含む低粘度液体洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤製品が進化するにつれて、洗浄に関する消費者のニーズは十分に満たされてきた。また、消費者は、洗浄性能に加えて、いくらかの他の利益を期待している。例えば、一部の分野では、消費者は、低粘度かつ低起泡性の液体洗剤製品を好む。これらの分野の消費者は、高粘度が「厄介なこと」に相当し、操作が困難であると考えている。したがって、低粘度であることが非常に望ましい。更に、泡が多いと、水の量が多くなり、すすぎのための時間が長くなる原因となるおそれがあるので、低起泡性能は洗濯機使用者にとって好ましい。
【0003】
しかしながら、液体洗剤組成物に一般的に使用される消泡剤(例えば、シリコーン)は高粘性であるため、これらの2つの利点は幾分相反する。したがって、消泡剤の存在下では、低粘度液体洗剤組成物を提供することは非常に困難である。更に、消泡剤を添加することにより、液体洗剤組成物の安定性が損なわれ、相分離及び/又は凝集がもたらされるおそれがある。この場合、場合によっては、粘度を更に増加させるであろう安定化剤を更に含むことが必要となるおそれがある。このような安定化剤の添加によって、粘度が更に増加するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、消泡剤を含む低粘度液体洗剤組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示による低粘度液体洗剤組成物が上記要求を満たし得ること、すなわち、本開示による低粘度液体洗剤組成物が低起泡性能及び低粘度の両方をもたらし得ることは、本発明の驚くべき予想外の発見である。
【0006】
特に、従来の非イオン性界面活性剤を新規非イオン性界面活性剤で置き換えることにより、粘度が著しく低下することは驚くべきことである。そのような発見は、本発明者らが粘度を低下させるための多くのアプローチを試験したが失敗したので、全く予想外である。例えば、粘度を改変するために一般的に使用される溶媒は、比較的高レベルの消泡剤の状況では機能しなかった。
【0007】
これに対応して、本発明は、一態様では、低粘度液体洗剤組成物であって、
a)組成物の0.03重量%~5重量%の消泡剤と、
b)組成物の3重量%~30重量%の、
式(I)のアルコールエトキシレートである非イオン性界面活性剤
【0008】
【化1】
(式中、Rは、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖のC8~C20アルキル基から選択され、
nの90%超は0≦n≦15であり、nの平均値は4~14であり、
アルコールエトキシレートの約20重量%未満は、8未満のnを有するエトキシレートである)と、を含む、液体洗剤組成物に関する。
【0009】
いくつかの実施形態では、式(I)のアルコールエトキシレートは、nの平均値が5~10であることを含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、式(I)のアルコールエトキシレートは、アルコールエトキシレートの10重量%~20重量%が、nが8であるエトキシレートであってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、アルコールエトキシレートの約10重量%未満が、7未満のnを有するエトキシレートであってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、式(I)におけるnの平均値は、8~11であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、式(I)のアルコールエトキシレートは、アルコールエトキシレートの約30重量%~約55重量%が、nが9~10であるエトキシレートを含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、式(I)のアルコールエトキシレートは、アルコールエトキシレートの80重量%超が、7を超えるnを有するエトキシレートを含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、アルコールエトキシレートは、天然アルコール、合成アルコール、又はこれらの混合物に由来し得る。
【0016】
特に、本出願において好適な非イオン性界面活性剤は、組成物の3重量%~25重量%、好ましくは3.5重量%~20重量%、より好ましくは4重量%~18重量%、更により好ましくは4.5重量%~16重量%、最も好ましくは5重量%~15重量%の範囲の量、例えば、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、12重量%、14重量%、又はこれらの間の任意の範囲の量で存在し得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、液体洗剤組成物は、
c)組成物の0.01重量%~10重量%の結晶性ヒドロキシル含有安定化剤を更に含んでもよい。
【0018】
特に、本出願において好適な安定化剤は、組成物の0.01重量%~9重量%、好ましくは0.02重量%~8重量%、より好ましくは0.03重量%~5重量%、更により好ましくは0.05重量%~3重量%、最も好ましくは0.06重量%~2重量%の範囲の量で存在し得る。好ましくは、安定化剤は、微結晶性セルロース又はその誘導体、ヒマシ油又はその誘導体、硬化ヒマシ油又はその誘導体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。より好ましくは、安定化剤は、微結晶性セルロース及び/又は硬化ヒマシ油であり得る。
【0019】
特に、本出願において好適な消泡剤は、組成物の0.04重量%~3重量%、好ましくは0.08重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量、例えば、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%又はそれらの間の任意の範囲の量で存在し得る。好ましくは、消泡剤は、シリコーン、シリカ又はそれらの任意の混合物を含んでもよい。より好ましくは、消泡剤は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、液体洗剤組成物は、
d)組成物の0.01重量%~3重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%、より好ましくは0.02重量%~0.5重量%、最も好ましくは0.03重量%~0.3重量%の抗菌剤、好ましくはジフェニルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される抗菌剤、
e)組成物の4.5重量%~40重量%、好ましくは5.5重量%~30重量%、より好ましくは6重量%~20重量%、最も好ましくは6.5重量%~18重量%の有機酸、好ましくはクエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される有機酸、並びに/又は
f)組成物の2重量%~35重量%、好ましくは3重量%~30重量%、より好ましくは4重量%~25重量%、最も好ましくは5重量%~20重量%のアニオン性界面活性剤、好ましくはC6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、C6~C20アルキル硫酸塩(AS)、C6~C20アルキルアルコキシ硫酸塩(AAS)、C6~C20メチルエステルスルホン酸塩(MES)、C6~C20アルキルエーテルカルボン酸塩(AEC)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアニオン性界面活性剤を更に含んでもよい。
【0021】
好ましい実施形態では、本出願による液体洗剤組成物は、
a)組成物の0.1重量%~0.5重量%の消泡剤であって、消泡剤は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、消泡剤、
b)組成物の10重量%~15重量%の、上記で示した式(I)のアルコールエトキシレート、
c)組成物の0.06重量%~2重量%の硬化ヒマシ油、
d)組成物の0.03重量%~0.3重量%の4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル、
e)組成物の6.5重量%~18重量%のクエン酸、及び/又は
f)組成物の5重量%~20重量%のC6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含んでもよい。
【0022】
本開示による液体洗剤組成物の利点は、低粘度の液体と低起泡性能の両方を提供し得ることである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で使用するとき、「a」及び「an」などの冠詞は、特許請求の範囲において使用されるときは、特許請求されている又は記載されるもののうちの1つ以上を意味するものと理解される。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprise、comprises、comprising)」、「包含する(include、includes、including)」、「含有する(contain、contains、containing)」は、非限定的であり、即ち、最終結果に影響を及ぼすことのない他の工程及び他の成分を加えることができることを意図している。上記用語には、「からなる」及び「から本質的になる」という用語が包含される。
【0025】
本明細書で使用するとき、組成物が特定の成分を「実質的に含まない」ときとは、その組成物が、一定基準未満の量、あるいは組成物の0.1重量%未満、あるいは0.01重量%未満、あるいは0.001重量%の特定成分を含むことを意味する。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「液体洗剤組成物」は、注ぐことが可能な液体、ゲル、クリーム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される形態である組成物を指す。液体洗剤組成物は、水性又は非水性のいずれかであってもよく、異方性、等方性、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「消泡剤」は、洗浄中に洗剤によって引き起こされる泡立ち又は起泡を抑えることを主に意図する機能とする化合物を指す。従来の消泡剤としては、シリコーン消泡剤化合物、アルコール消泡剤化合物、パラフィン消泡剤化合物、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「抗菌剤」は、細菌を死滅させること、及び/又は細菌の増殖又は繁殖を防止することを主に意図する機能とする化合物を指す。従来の抗菌剤としては、カチオン性抗菌剤(例えば、特定のアンモニウム塩化物)、非イオン性抗菌剤などが挙げられ、本発明において使用されるジフェニルエーテル化合物は、非イオン性抗菌剤である。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「主要界面活性剤」は、組成物中に、かかる組成物によって含有される一切の他の界面活性剤より大きい量で存在する界面活性剤を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「過半の界面活性剤」は、組成物中に、かかる組成物中の合計界面活性剤含有量の少なくとも50重量%である量で存在する界面活性剤を指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は、分枝鎖状又は非分枝鎖状、置換又は非置換であるヒドロカルビル部分を意味する。用語「アルキル」には、アシル基のアルキル部分が含まれる。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「洗浄液」は、1サイクルの洗濯洗浄のために使用される典型的な量、好ましくは、1L~50L、あるいは、手作業で洗浄する場合には1L~20L、機械で洗浄する場合には20L~50Lの水溶液を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「汚れた布地」は、非特定的に使用され、木綿、亜麻布、ウール、ポリエステル、ナイロン、絹、アクリル、及びこれらに類するもの等などであるがこれらに限定されない、天然繊維、人工繊維、及び合成繊維、並びに様々な混合及び組み合わせを含む、任意の種類の天然繊維又は人工繊維を指す場合がある。
【0034】
消泡剤
好適な消泡剤としては、例えば、シリコーン消泡剤化合物、アルコール消泡剤化合物、パラフィン消泡剤化合物、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0035】
特に、本明細書で使用するのに好適な好ましい消泡剤化合物は、シリコーン成分を含むシリコーン消泡剤化合物である。多くのこのようなシリコーン消泡剤化合物は、シリカ成分もまた含有する。本明細書で使用するとき、また業界全体を通して一般的に使用するとき、用語「シリコーン」は、ポリジメチルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンオイル、ポリオルガノシロキサンのオイル若しくは樹脂の分散液又はエマルション、ポリオルガノシロキサンがシリカに化学吸着又は融合しているポリオルガノシロキサンとシリカ粒子との組み合わせのような、シロキサン単位及び種々のヒドロカルビル基を有する比較的高分子量のポリマーを包含する。シリカ粒子は、例えば、トリメチルシロキシケイ酸として疎水化されることが多い。好適なシリコーン消泡剤化合物であるモノ/ジグリセリドを有する直鎖ポリジメチルシロキサンの例は、Dow Corning、Wacker Chemie及びMomentiveから市販されている直鎖ポリジメチルシロキサンである。
【0036】
他の好適な消泡剤化合物としては、例えば、パラフィンなどの高分子量炭化水素、軽油無臭炭化水素、脂肪エステル(例えば、脂肪酸トリグリセリド、グリセリル誘導体、ポリソルベート)、一価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪族C18~C40ケトン(例えば、ステアロン)、塩化シアヌルと2又は3モルの1~24個の炭素原子を含有する第一級アミン又は第二級アミンとの生成物として形成されるトリ~ヘキサ10アルキルメラミン又はジ~テトラアルキルジアミンクロロトリアジンなどのN-アルキル化アミノトリアジン、プロピレンオキシド、モノステアリルアルコールホスフェートエステル並びにモノステアリルジアルカリ金属(例えば、K、Na、及びLi)ホスフェート及びホスフェートエステルなどのビスステアリン酸アミド及びモノステアリルホスフェート、並びに非イオン性ポリヒドロキシル誘導体が挙げられる。
【0037】
本明細書で有用な他の消泡剤としては、第二級アルコール(例えば、独国特許第40 21 265号に記載されているような2-アルキルアルカノール)、及びこのようなアルコールとシリコーン油との混合物が挙げられる。第二級アルコールとしては、2-ヘキシルデカノール、2-オクチルドデカノール、及び2-ブチルオクタノールのようなC1~C16鎖を有するC6~C16アルキルアルコールが挙げられる。
【0038】
非イオン性界面活性剤
本開示による組成物は、特定の構造を有する非イオン性界面活性剤を含む。特に、本開示による液体洗剤組成物に好適に使用される非イオン性界面活性剤は、以下の一般式(I)を有するアルコールエトキシレート
【0039】
【化2】
(式中、Rは、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖のC
8~C
20アルキル基から選択され、nの90%超は0≦n≦15である)である。
【0040】
本明細書に記載のアルコールエトキシレートは、典型的には、それらの一般式(I)によって示唆されるような単一の化合物ではなく、むしろ、アルコールエトキシレートは、様々なポリアルキレンオキシド鎖長及び分子量を有するいくつかの同族体の混合物を含む。同族体の中では、アルコール1モル当たりの総アルキレンオキシド単位の数が最も優勢なアルキレンオキシド付加物に近いものが望ましく、総アルキレンオキシド単位の数が最も優勢なアルキレンオキシド付加物よりもはるかに少ないか又ははるかに多い同族体は、あまり望ましくない。換言すれば、「狭い範囲」又は「ピークのある」アルコキシル化アルコール組成物が望ましい。「狭い範囲」又は「ピークのある」アルコキシル化アルコール組成物は、アルキレンオキシド付加モル数の分布が狭いアルコキシル化アルコール組成物を指す。
【0041】
「狭い範囲」又は「ピークのある」アルコキシル化アルコール組成物は、選択された用途に望ましい場合がある。選択された標的分布範囲内の同族体は、選択された用途のための適切な親油性-親水性バランスを有し得る。例えば、1分子当たり平均比5のエチレンオキシド(EO)単位を含むエトキシル化アルコール生成物の場合、所望の親油性-親水性バランスを有する同族体は、2EO~9EOの範囲であり得る。
【0042】
本開示のアルコキシル化アルコール組成物は、約0~約15の範囲、例えば、約4~約14、約5~10、約8~11、及び約6~9などの範囲の平均エトキシル化度を有し得る。本開示のアルコキシル化アルコール組成物は、11、10、9、8、7、6又は5の平均エトキシル化度を有し得る。いくつかの好ましい実施形態では、本開示のアルコキシル化アルコール組成物は、少なくとも8又は9の平均エトキシル化度を有し得る。
【0043】
本開示は、式(I)のアルコールエトキシレートを含む組成物
【0044】
【化3】
(式中、Rは、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖のC
8~C
20アルキル基から選択され、nの90%超は0≦n≦15であり、nの平均値は約6~約10であり、アルコールエトキシレートの約10重量%未満は、7未満のnを有し、アルコールエトキシレートの約10重量%~約20重量%は、nが8であるエトキシレートである)を提供することによって、1つ以上の要求を解決しようと試みる。
【0045】
組成物は、約10のnの平均値を含んでもよい。組成物は、以下のnのそれぞれについて以下の範囲を有してもよい。
n=0は最大5%、n=1、2、3、4、5はそれぞれ、最大2%、n=6は最大4%、n=7は最大10%、n=8は12%~20%、n=9は15%~25%、n=10は15%~30%、n=11は10%~20%、n=12は最大10%、n>12は最大10%。組成物は、30%~70%でnが9~10であってもよい。組成物は、その組成の50%超でnが8~11であってもよい。
【0046】
上記の範囲を表1に例示する。以下の表1に示すように、通常範囲の非イオン性界面活性剤及び狭い範囲の非イオン性界面活性剤のサンプルを、DMF-SO3錯体で誘導体化した後にLCMS ESI(-)及びLCMS ESI(+)により分析した。相対存在量%を以下の表に列挙する。相対存在量割合は、サンプル中のすべてのエトキシマーの総存在度に対する各エトキシマーの加重平均である。
【0047】
【0048】
LCMS-ESI(+)は、3モル未満のエトキシマーにも遊離アルコールにも感受性でないことに留意されたい。更に、3~5モルのエトキシマーは、過小評価されている。典型的には、EOの平均分布が7モルのEOより大きい場合、分布はこの感度限界によってあまり影響されない。更に、LCMS-ESI(-)は、通常範囲の非イオン性界面活性剤サンプルのように、分布が非常に広い場合、より重いエトキシマーを過小評価することがある。このため、通常範囲の非イオン性界面活性剤試料を+/-両モードで分析し、平均をとった。
【0049】
触媒及び狭い範囲のアルコールアルコキシレートの製造方法
本明細書に記載のアルコキシル化触媒により、アルキレンオキシド付加モルの分布が狭いアルコールアルコキシレートの調製が可能になる。従来の塩基触媒アルコキシル化反応、例えば、KOH触媒アルコールエトキシル化反応では、エチレンオキシドが、未反応アルコールコンジュゲートと反応するのではなく、アルコールエトキシレートコンジュゲート(アルコールエトキシレートコンジュゲートはより酸性である)と反応する傾向があり、それによって、より高い割合の遊離アルコール及び高度エトキシル化アルコールを有する広い範囲の分布が得られると考えられる。
【0050】
本明細書に記載されるアルコキシル化触媒は、狭い分布のアルコキシレートを提供する既知の触媒と比較して、商業的製造のための多くの利点を有する。本明細書に記載のアルコキシル化触媒は、従来使用されている低コストの原料を含み、触媒は、容易に調製することができる。また、本明細書に記載のアルコキシル化触媒は安定であり、そのため、取り扱いが容易である。また、本明細書に記載のアルコキシル化触媒を使用する反応速度は、以前に使用されていたアルカリ触媒と同様であり、商業的生産に好適である。
【0051】
本明細書に記載のアルコキシル化触媒は、4~22個の炭素原子を有する、天然又は合成の、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のC8~20アルコール、アルキルフェノール、ポリオールなどをアルコキシル化するのに好適である。好適なアルコールとしては、純粋な直鎖物質(天然物)、C2位で軽度に分岐したもの(Neodol(登録商標))、軽度にランダム分岐したもの(Safols(登録商標))、C2位で高度に分岐したもの(Isalchem(登録商標))、及び高度に分岐した中鎖物質(HSA)が挙げられる。好適な合成アルコールとしては、Neodol(登録商標)25、Neodol(登録商標)23、Neodol(登録商標)45、及びNeodol(登録商標)5を含む商標Neodol(登録商標)でShell Chemical Companyによって販売されているものが挙げられる。好適な天然アルコールとしては、C1214が挙げられる。更に、アルキレンオキシドのための既知の反応手順、反応条件、及び反応器が、本明細書に記載のアルコキシル化触媒と共に使用され得る。
【0052】
本明細書に記載のアルコキシル化プロセスはまた、最初に本明細書に記載の酸触媒を使用し、次いでKOHなどの従来の既知の触媒を使用して連続して実施し、KOH触媒単独によって生成されるものより狭いが、本発明の触媒単独によって生成されるものより広いアルキレンオキシド付加モルの分布を有するアルコキシレートを生成してもよい。アルコキシル化プロセスを連続して実施することは、より高いエトキシル化度の標的、例えば、EO4、EO5、EO6に特に有用であり得る。
【0053】
アルコキシル化反応自体は、単一ポット又は連続プロセスで実施することができる。エチレンオキシド(EO)は、最初に、EOを求核攻撃に対して活性化する触媒と反応させてもよい。好適な滞留時間を有する連続プラントプロセスを使用することができる。
【0054】
本明細書に開示されるアルコキシル化プロセスは、具体的に挙げたEO1、EO2、及びEO3標的を含む、種々のエトキシル化度のアルコールエトキシレートを生成するために使用することができる。本明細書に開示されるアルコキシル化プロセスはまた、様々なアルコキシル化度の他のアルコールアルコキシレート、例えば、プロポキシル化アルコールを生成するために使用してもよい。
【0055】
本明細書に記載のエトキシル化アルコールを調製するための好適な方法は、i)約1%~約10%の新規触媒又はG2触媒の存在下で、エチレンオキシドの化学量論的標的モル比について、過剰(例えば、約0%~約5%過剰)のエチレンオキシドを直鎖又は分岐鎖のC8~C20アルコールと反応させる工程を含む。
【0056】
他の界面活性剤
本開示による組成物は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びこれらの任意の組み合わせを含む追加の界面活性剤を含んでもよい。
【0057】
本発明における組成物に好適なアニオン界面活性剤は、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、C6~C20アルキル硫酸塩(AS)、C6~C20アルキルアルコキシ硫酸塩(AAS)、C6~C20メチルエステルスルホン酸塩(MES)、C6C20アルキルエーテルカルボン酸塩(AEC)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。例えば、洗濯洗剤組成物は、C6~C20アルキルアルコキシサルフェート(AAxS)[式中、xは、約1~30、好ましくは約1~15、より好ましくは約1~10、最も好ましくは、xは約1~3である]を含有してもよい。かかるAAxS中のアルキル鎖は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれかであってもよく、中鎖分枝鎖状AAxS界面活性剤が特に好ましい。好ましい群のAAxSとしては、xが約1~3である、C12~C14アルキルアルコキシサルフェートが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の1重量%~30重量%、好ましくは2重量%~25重量%、より好ましくは3重量%~20重量%、例えば、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、12重量%、14重量%、16重量%、18重量%、20重量%、又はこれらの間の任意の範囲のアニオン性界面活性剤を含む。
【0058】
アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する比は、0.01~100、好ましくは0.05~20、より好ましくは0.1~10、最も好ましくは0.2~5であり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩界面活性剤(LAS)、好ましくはC10~C16LAS、より好ましくはC12~C14LASを含む。
【0060】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、アニオン性界面活性剤は、組成物中に主要な界面活性剤として、好ましくは大部分の界面活性剤として存在してもよい。好ましくは、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する比は、1.05~100、好ましくは1.1~20、より好ましくは1.2~10、最も好ましくは1.3~5であり得る。特に、アニオン性界面活性剤は、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含んでもよい。
【0061】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、組成物中に主要な界面活性剤として、好ましくは大部分の界面活性剤として存在してもよい。好ましくは、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する比は、0.01~0.95、好ましくは0.05~0.9、より好ましくは0.1~0.85、最も好ましくは0.2~0.8であり得る。
【0062】
本発明の洗濯洗剤組成物は、カチオン性界面活性剤を更に含んでもよい。カチオン性界面活性剤の非限定的な例として、第四級アンモニウム塩界面活性剤(最高26個の炭素原子を有することができ、アルコキシル化四級アンモニウム(AQA)界面活性剤を含む)、ジメチルヒドロキシエチル四級アンモニウム;ジメチルヒドロキシエチルラウリルアンモニウムクロリド;ポリアミンカチオン性界面活性剤、及びアミン界面活性剤(具体的には、アミドプロピルジメチルアミン(APA))が挙げられる。
【0063】
本発明の洗濯洗剤組成物は、別の両性界面活性剤(すなわち、AO以外)を更に含んでもよい。他の両性界面活性剤の非限定的な例としては、第二級及び第三級アミンの誘導体、複素環式第二級及び第三級アミンの誘導体、又は第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム若しくは第三級スルホニウム化合物の誘導体が挙げられる。好ましい例としては、アルキルジメチルベタイン及びココジメチルアミドプロピルベタイン、スルホベタイン及びヒドロキシベタイン(アルキル基がC8~C18又はC10~C14であり得る、N-アルキル-N,N-ジメチルアミノ-1-プロパンスルホネートなど)を含むベタインが挙げられる。
【0064】
安定化剤
本発明における使用に適した安定化剤は、結晶性ヒドロキシル含有安定剤であり得る。
【0065】
好ましくは、安定化剤は、微結晶性セルロース(MCC)又はその誘導体、ヒマシ油又はその誘導体、硬化ヒマシ油(HCO)又はその誘導体、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。より好ましくは、安定化剤は、微結晶性セルロース若しくはその誘導体及び/又は硬化ヒマシ油若しくはその誘導体であってもよい。
【0066】
MCCは、天然由来のポリマーである。MCCは、1-4ベータグリコシド結合によって連結されたグルコース単位から構成される。これらの直鎖セルロース鎖は、植物細胞壁内で一緒にらせん状になったミクロフィブリルとして一緒に束ねられている。これらの直鎖セルロース鎖は、食品用途及び医薬錠剤において使用されている。
【0067】
ヒマシ油には、ヒドロキシル基を組み込むC10~C22アルキル又はアルケニル部分を含む、グリセリド、特にトリグリセリドを含むものもある。HCOを生成するためのヒマシ油の水素化は、出発油中にリシノレイル部分として存在する可能性のある二重結合を変換して、リシノレイル部分を飽和ヒドロキシアルキル部分、例えば、ヒドロキシステアリルに変換する。本明細書におけるHCOは、いくつかの実施形態では、トリヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、及びこれらの混合物から選択されてもよい。HCOは、固体、溶融物、及びこれらの混合物から選択されるものを含むが、これらに限定されない任意の好適な開始形態で加工することができる。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態では、安定化剤は、安定化剤を含む外部構造化系(複数可)(ESS)の使用を通じて液体洗剤組成物に混合される。本発明における使用に好適なESSは、(a)安定化剤、(b)アルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、(c)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)などのアニオン性界面活性剤、及び(d)追加成分を含み得る。
【0069】
HCOは、典型的には、本発明のESS中に、構造化系の約2重量%~約10重量%、約3重量%~約8重量%、又は約4重量%~約6重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、完成した洗濯洗剤製品に供給される硬化ヒマシ油の対応する割合は、約1.0%未満であり、典型的には0.1%~0.8%である。
【0070】
有用なHCOは以下の特性を有し得る。融点は約40℃~約100℃、若しくは約65℃~約95℃であり、かつ/又はヨウ素価は約0~約5、若しくは約0~約4、若しくは約0~約2.6の範囲である。HCOの融点は、ASTM D3418又はISO 11357のいずれかを使用して測定することができ、いずれの試験も、DSC:示差走査熱量測定を利用する。
【0071】
本発明で使用するHCOとしては、市販されているものが挙げられる。本発明において使用される市販のHCOの非限定的な例としては、Rheox,Inc製のTHIXCIN(登録商標)が挙げられる。HCOを形成するための水素化用ヒマシ油の供給源は、ブラジル産又はインド産のような、任意の好適な起源であり得る。好適な一実施形態では、ヒマシ油は、貴金属、例えば、パラジウム触媒を使用して水素化され、水素化温度及び圧力は、許容できないレベルの脱ヒドロキシル化を回避しながら、天然ヒマシ油の二重結合の水素化を最適化するように制御される。
【0072】
本開示による組成物中の安定化剤は、組成物の0.01重量%~9重量%、好ましくは0.02重量%~8重量%、より好ましくは0.03重量%~5重量%、更により好ましくは0.05重量%~3重量%、最も好ましくは0.06重量%~2重量%の範囲の量、例えば、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、1重量%、2重量%又はこれらの間の任意の範囲の量で存在し得る。
【0073】
抗菌剤
本発明において使用される好適な抗菌剤は、ジフェニルエーテル系抗菌剤であり得る。好ましくは、抗菌剤は、ヒドロキシルジフェニルエーテルである。本明細書の抗菌剤は、ハロゲン化又は非ハロゲン化のいずれかであり得るが、好ましくはハロゲン化である。一実施形態において、抗菌剤は、下記式(I):
【0074】
【化4】
(式中、
各Yは、塩素、臭素、又はフッ素から独立して選択され、好ましくは塩素又は臭素、より好ましくは塩素であり、
各Zは、SO
2H、NO
2、又はC
1~C
4アルキルから独立して選択され、
rは、0、1、2、又は3であり、好ましくは1又は2であり、
oは、0、1、2、又は3であり、好ましくは0、1又は2であり、
pは、0、1、又は2であり、好ましくは0であり、
mは、1又は2であり、好ましくは1であり、
nは、0又は1であり、好ましくは0である)のヒドロキシルジフェニルエーテルである。
【0075】
上記の式(I)の定義において、0は無を意味する。例えば、pが0の場合、zは式(I)に存在しない。各Y及び各Zは、同一であり得るか又は異なり得る。一実施形態において、oは1、rは2、Yは塩素又は臭素である。この実施形態では、1つの塩素原子がベンゼン環に結合すると同時に臭素原子及び他の塩素原子が他のベンゼン環に結合する、あるいは、臭素原子がベンゼン環に結合すると同時に2つの塩素原子が他のベンゼン環に結合する、ことがあり得る。
【0076】
より好ましくは、抗菌剤は、4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(「ジクロサン」)、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(「トリクロサン」)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。最も好ましくは、抗菌剤は、商標名Tinosan(登録商標)HP100の下で、BASFから市販されている、4-4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテルである。
【0077】
ジフェニルエーテルに加えて、製剤の不安定化を招く濃度で存在しないことを条件に、他の抗菌剤も存在してもよい。その中でも、有用な更なる抗菌剤はキレート剤であり、特に、硬水中のグラム陰性微生物の耐性を低減させる上で有用である。酸性殺生物剤も存在してもよい。
【0078】
ポリアミン
本明細書の洗濯洗剤組成物は、組成物の0.1重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%のポリアミン、好ましくはポリエチレンイミン、より好ましくはアルコキシル化ポリエチレンイミンを更に含んでもよい。
【0079】
本明細書の洗濯洗剤組成物に好適なポリアミンは、400g/molより高いMwのものであってもよい。ポリアミンの好ましいクラスは、エトキシル化PEIポリマー、プロポキシル化PEIポリマー、ポリアミン、ポリクアット、ポリグリセロールクアット、及び他のPEI誘導体、それらの塩又はそれらの混合物などの、ポリエチレンイミン(PEI)及びその誘導体である。いくつかの好ましい実施形態では、PEIは、分岐した球状ポリマーアミンであり、使用されるPEI又はPEI塩の分子量は、約800ダルトン~約200万ダルトンである。更に、いくつかの好ましい実施形態では、使用されるPEI又はPEI塩の電荷密度は、約15meq/g~約25meq/g、より好ましくは約16meq/g~約20meq/gである。そのような好ましいPEIの例としては、BASFの製品LUPASOL WF(25kDa;16~20meq/g)及びLupasol(登録商標)FG(800ダルトン;16~20meq/g)、及びBASFから入手可能なポリマーのSOKALAN(登録商標)ファミリー、例えば、SOKALAN(登録商標)HP20、及びSOKALAN(登録商標)HP22Gが挙げられる。
【0080】
補助成分
本明細書に記載の洗濯洗剤組成物は、補助成分を含んでもよい。好適な補助物質としては、ビルダー、キレート剤、レオロジー調整剤、移染防止剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒物質、漂白活性化剤、過酸化水素、過酸化水素源、事前形成された過酸、ポリマー分散剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、増白剤、泡抑制剤、染料、光退色剤、香料、香料マイクロカプセル、構造弾性化剤、柔軟仕上げ剤、担体、ハイドロトロープ、加工助剤、溶媒、色調剤、構造化剤、及び/又は顔料が挙げられるが、これらに限定されない。洗濯洗剤組成物中のこれら補助成分の正確な性質及びその濃度は、組成物の物理的形状、及び組成物が使用される洗濯動作の性質に依存する。
【0081】
一実施形態では、本明細書の組成物は、包装組立物により適するように組成物の粘度を調整するように機能する、レオロジー改変剤(特定の状況では「構造化剤」とも称される)を含む。本明細書のレオロジー改変剤は、液体組成物に微粒子を懸濁すること、及び/又はレオロジーを調整することができる、任意の既知の成分であり得る。好ましくは、レオロジー改変剤は、ヒドロキシ含有結晶物質、ポリアクリレート、多糖、ポリカルボキシレート、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、C12~C20脂肪族アルコール、ジベンジリデンポリオールアセタール誘導体(DBPA)、没食子酸ジアミド、メタクリルアミドに由来する第1の構造単位及びジアリルジメチルアンモニウムクロリドに由来する第2の構造単位を含むカチオン性ポリマー、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、レオロジー改変剤は、ヒマシ油及びヒマシ油誘導体などの、概ね結晶質であることを特徴とするヒドロキシ含有結晶物質、ヒドロキシル含有脂肪酸、脂肪族エステル、及び脂肪族ワックスである。より好ましいレオロジー改変剤は、硬質ヒマシ油(HCO)である。
【0082】
一実施形態では、組成物は、組成物の0.1重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~2重量%のキレート剤、好ましくはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及び/又はグルタミン酸二酢酸(GLDA)を更に含んでもよい。
【0083】
組成物の調製
本発明の洗濯洗剤組成物は、概して、洗濯洗剤組成物の製造の技術分野において既知である従来法によって調製される。かかる方法は、典型的には、加熱、冷却、真空の適用などをするか又はすることなく、必須成分及び任意成分を任意の所望の順序で比較的均一な状態まで混合することと、それによって、成分を必要濃度で含有する洗濯洗剤組成物を提供することとを含む。
【0084】
試験方法
試験1:粘度試験
本明細書に記載されるすべての粘度は、スピンドル#62を用いて60rpmで、20+/-1℃の温度で測定される。粘度は、任意の好適な粘度測定機器、例えば、LVDVII+、RVDVII又はBrookfield機器を用いて測定することができる。
【0085】
試験2:起泡性能試験
起泡性能試験は、洗濯機又は泡シリンダー試験セットのような模擬洗浄装置のいずれかで行う。洗濯機試験手順は以下の通りである。
1)洗濯機(WM)及び洗濯槽の間に水流計を接続する。WMは、自動フロントローディング洗濯機又はトップローディング洗濯機である。
2)水温を35℃±1℃に調整する
3)バラストを洗濯槽に入れる。バラストを、清潔な綿パンツ、ポリコットンパンツ、清潔なドレスシャツ、清潔なニットシャツ、着用Tシャツ、及びABS Tシャツと混ぜ合わせる。バラストサイズは、洗濯機のサイズに応じて1kg~5kgである。
4)洗剤をディスペンサーに加える。洗剤の量は、バラストサイズ及び洗濯機のサイズに応じて10g~100gであり得る。
5)WMを起動して、洗濯、すすぎ、及び脱水を行う。
6)洗濯の終了時(排水の直前)に泡の高さを記録し、写真を撮り、主洗浄中に排水があるかどうかをチェックする。
7)すすぎの終了時に泡の高さを記録し、写真を撮る。すすぎの合計時間及び時間の合計量及び水の合計量を記録する。
8)洗濯及びすすぎ時間中の泡の高さ、泡の写真、排水に基づいてリスクを評価する。
【0086】
試験3:安定性試験
安定性試験は、以下のように目視検査によって行う。
1)30mLの透明ガラス瓶中で成分を混合することによって、試験を行う液体組成物サンプルを調製する。
2)工程1)で調製されたサンプルを種々の温度(5℃又は40℃)で一定期間(1、2又は4週間)保管するか、又は工程1)で調製したサンプルを冷蔵庫(-18℃)で24時間凍結させた後、容器内(15℃)で24時間解凍させる凍結/解凍(-18℃及び15℃)サイクル(1、2又は3サイクル)を行う(1サイクル以上の場合は繰り返す)。
3)サンプルを目視検査して、サンプルが工程2)の後に依然として均質系であるかどうかを判定する。分離層の形成又は凝集などの相分離が存在する場合、「不合格」と判定される。相分離がない場合は「合格」と判定する。
【実施例0087】
実施例1:消泡剤の導入によって引き起こされた粘度の増加を示す比較試験
以下の表2に示す成分を含有する6つのサンプル液体洗濯洗剤組成物を調製した。サンプル1は消泡剤を含有せず、サンプル2~6は消泡剤と、消泡剤を含有する液体を安定化させるのに役立つ安定化剤と、を含む。更に、サンプル3~6は、液体系の粘度を低下させるために一般的に使用される様々な成分を含む。
【0088】
サンプル1~6の粘度(HS)を、上記の試験1に従ってBrookfield機器を使用することによって測定した。表2に示される結果は、本出願における液体洗剤組成物に消泡剤を導入することにより、粘度が著しく上昇し、粘度を低下させるために一般的に使用される成分では、粘度を所望のレベルまで低下させることができないことを示す。
【0089】
【表2】
a SIXIN(Jiangsu SIXIN Scientific Technological Application Research Institute Co.,Ltd)から入手可能な、ポリジメチルシリコーン(PDMS)、シリカ、ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン及びポリエーテルを含む混合物である消泡材料
b Neodol(登録商標)25-7は、非イオン性界面活性剤として平均7モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC
12~C
15アルコールであり、Shellから入手可能
c C
11~
13LAS
d Nidera BVから入手可能なHCO
e クメンスルホン酸ナトリウム
f BASFから入手可能な、エトキシル化された又はエトキシル化かつプロポキシル化されたポリエチレンイミン(PEI)ポリマー
g BASFから入手可能な非イオン性界面活性剤中のBrightener 49の溶液。Brightener 49の溶液は、7.56重量%のBrightener 49と、平均7モルのエチレンオキシド(すなわち、普通範囲のEO7)でエトキシル化された39.5%のC
12~C
15アルコールと、を含有する。このため、0.1%のBrightener 49を添加することにより、0.52%の普通のEO7が導入される。
【0090】
実施例2:従来の非イオン性界面活性剤を好ましい非イオン性界面活性剤で置き換えることによって粘度が有意に減少したことを示す比較試験
以下の表3に示す成分を含有する4種のサンプル液体洗濯洗剤組成物を調製した。サンプル7~10は、非イオン性界面活性剤が異なることを除いて同じ成分を含有する。特に、サンプル7は、普通範囲のEO7を有する12.7%の非イオン性界面活性剤を含有し、サンプル8は、普通範囲のEO7を有する6.35%の非イオン性界面活性剤及び普通範囲のEO9を有する6.35%の非イオン性界面活性剤を含有し、サンプル9は、普通範囲のEO9を有する12.7%の非イオン性界面活性剤を含有し、サンプル10は、狭い範囲のEO9を有する12.7%の非イオン性界面活性剤を含有する。
【0091】
サンプル7~10の粘度(HS)を、上記の試験1に従ってBrookfield機器を使用することによって測定した。表3に示す結果は、本出願の液体洗剤組成物中の従来の非イオン性界面活性剤(普通のEO7)を好ましい非イオン性界面活性剤で置き換えると、粘度の著しい減少がもたらされ、これは消費者にとって望ましいものであることを示す。特に、普通のEO9は、普通のEO7に比べて粘度の面で優れた性能を示し、狭い範囲のEO9は、普通のEO9に比べて更に優れた性能を示す。
【0092】
【表3】
a SIXIN(Jiangsu SIXIN Scientific Technological Application Research Institute Co.,Ltd)から入手可能な、ポリジメチルシリコーン(PDMS)、シリカ、ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン及びポリエーテルを含む混合物である消泡材料
b Neodol(登録商標)25-7は、非イオン性界面活性剤として平均7モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC
12~C
15アルコールであり、Shellから入手可能
c Neodol(登録商標)25-9は、非イオン性界面活性剤として平均9モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC
12~C
15アルコールであり、Shellから入手可能
d Ziegler NI EO9は、非イオン性界面活性剤として平均9モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC
12~C
15アルコールであり、Shellから入手可能
e C
11~
13LAS
f Nidera BVから入手可能なHCO
g BASFから入手可能な、エトキシル化された又はエトキシル化かつプロポキシル化されたポリエチレンイミン(PEI)ポリマー
h BASFから入手可能な非イオン性界面活性剤中のBrightener 49の溶液。Brightener 49の溶液は、7.56重量%のBrightener 49と、平均7モルのエチレンオキシド(すなわち、普通範囲のEO7)でエトキシル化された39.5%のC
12~C
15アルコールと、を含有する。このため、0.1%のBrightener 49を添加することにより、0.52%の普通のEO7が導入される。
【0093】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0094】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含めて、本明細書に引用されるすべての文書は、明示的に除外又は限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文書の引用も、それが本明細書で開示又は特許請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは任意の他の参考文献と組み合わせて、そのような発明を教示、示唆、若しくは開示していることを認めるものではない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が優先されるものとする。
【0095】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができることは当業者には明白であろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるすべてのそのような変更及び修正を網羅することが意図される。