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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006094
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106666
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】竹松 佑介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】石津 岳明
(72)【発明者】
【氏名】仲野 彰義
(72)【発明者】
【氏名】水上 大乗
(72)【発明者】
【氏名】岩川 裕
(72)【発明者】
【氏名】白尾 高
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA03
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB90
5F157AC26
5F157BB14
5F157BB23
5F157BB24
5F157BB32
5F157BB43
5F157BG13
5F157BG14
5F157BG76
5F157BG86
5F157BH18
5F157CB15
5F157CB22
5F157CB23
5F157CF02
5F157CF14
5F157CF32
5F157CF34
5F157CF60
5F157CF70
5F157CF74
5F157CF92
5F157DA21
(57)【要約】
【課題】基板の周縁部のパターンの倒壊率を低減させることができる技術を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、保持工程と、液処理工程と、乾燥工程とを備える。保持工程では、基板を保持する。液処理工程では、基板Wの第1主面Waに処理液を供給する。乾燥液供給工程では、液処理工程の後に、基板Wを回転させ、かつ、基板Wの第2主面Wbを加熱しつつ、処理液よりも表面張力の低い乾燥液を基板Wの第1主面Waに供給する。乾燥液供給工程の少なくとも一部の時間において、吐出部3の第1吐出口3iaから乾燥液を吐出させて基板Wの第1主面Wの中央部に着液させつつ、吐出部3の第2吐出口3ibから乾燥液を吐出させて基板Wの第1主面Waの周縁部に着液させる。乾燥工程では、乾燥液供給工程の後に、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液を蒸発させて基板Wを乾燥させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された第1主面と、前記第1主面とは逆側の第2主面とを有する基板を保持する保持工程と、
前記基板の前記第1主面に処理液を供給する液処理工程と、
前記液処理工程の後に、前記基板を回転させ、かつ、前記基板の前記第2主面を加熱しつつ、前記処理液よりも表面張力の低い乾燥液を前記基板の前記第1主面に供給する乾燥液供給工程と、
前記乾燥液供給工程の後に、前記基板の前記第1主面上の前記乾燥液を蒸発させて前記基板を乾燥させる乾燥工程と
を備え、
前記乾燥液供給工程の少なくとも一部の時間において、吐出部の第1吐出口から前記乾燥液を吐出させて前記基板の前記第1主面の中央部に着液させつつ、前記吐出部の第2吐出口から前記乾燥液を吐出させて前記基板の前記第1主面の周縁部に着液させる、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥工程において、前記基板の前記第1主面のうち前記中央部と前記周縁部との間に位置するミドル領域が前記中央部よりも先に乾燥する、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥液供給工程において、加熱された前記乾燥液を前記第1吐出口および前記第2吐出口から吐出させる、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥液供給工程において、前記乾燥液が前記基板の前記第1主面に供給される乾燥液供給時間のうちの少なくとも後時間において、前記第1吐出口から吐出される前記乾燥液の中央流量は前記第2吐出口から吐出される前記乾燥液の周縁流量よりも小さい、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥液供給工程において、前記乾燥液が前記基板の前記第1主面に供給される乾燥液供給時間のうちの前時間において、前記第1吐出口からの前記乾燥液の中央流量は前記第2吐出口からの前記乾燥液の周縁流量よりも大きく、前記前時間よりも後の後時間における前記周縁流量は、前記前時間における前記周縁流量よりも大きい、基板処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理方法であって、
前記後時間における前記中央流量は、前記前時間における前記中央流量よりも小さい、基板処理方法。
【請求項7】
請求項5に記載の基板処理方法であって、
前記後時間は前記前時間よりも短い、基板処理方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥液供給工程において、前記基板の前記第2主面の中央部に熱媒体を供給して、前記基板を加熱する、基板処理方法。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥工程において、加熱された不活性ガスを前記基板の前記第1主面の中央部に供給する、基板処理方法。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥液供給工程において、前記基板の前記第2主面の少なくとも一部の温度が前記乾燥液の沸点以上となるように前記基板の前記第2主面を加熱しつつ、前記基板の前記第1主面の温度が前記沸点未満となる流量で前記乾燥液を前記基板の前記第1主面に供給する、基板処理方法。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記乾燥液供給工程において、前記乾燥液を供給する乾燥液供給時間のうちの後時間のみにおいて、前記基板の前記第2主面を加熱する、基板処理方法。
【請求項12】
パターンが形成された第1主面と、前記第1主面とは逆側の第2主面とを有する基板を保持しつつ、前記基板を回転させる基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第1主面に処理液を吐出する吐出部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第2主面を加熱する基板加熱部と
を備え、
前記吐出部は、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第1主面の中央部に向かって乾燥液を吐出させる第1吐出口と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第1主面の周縁部に向かって前記乾燥液を吐出させる第2吐出口とを有する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を処理する枚葉式の基板処理装置が開示されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、基板にリンス液を供給した後に、リンス液よりも表面張力が低いイソプロピルアルコールを基板に供給し、その後、基板を乾燥させる。これにより、乾燥時における基板のパターンの倒壊を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-23182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、基板の周縁部のパターンの倒壊率は、なお高かった。
【0005】
そこで、本開示は、基板の周縁部のパターンの倒壊率を低減させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、基板処理方法であって、パターンが形成された第1主面と、前記第1主面とは逆側の第2主面とを有する基板を保持する保持工程と、前記基板の前記第1主面に処理液を供給する液処理工程と、前記液処理工程の後に、前記基板を回転させ、かつ、前記基板の前記第2主面を加熱しつつ、前記処理液よりも表面張力の低い乾燥液を前記基板の前記第1主面に供給する乾燥液供給工程と、前記乾燥液供給工程の後に、前記基板の前記第1主面上の前記乾燥液を蒸発させて前記基板を乾燥させる乾燥工程とを備え、前記乾燥液供給工程の少なくとも一部の時間において、吐出部の第1吐出口から前記乾燥液を吐出させて前記基板の前記第1主面の中央部に着液させつつ、前記吐出部の第2吐出口から前記乾燥液を吐出させて前記基板の前記第1主面の周縁部に着液させる。
【0007】
第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥工程において、前記基板の前記第1主面のうち前記中央部と前記周縁部との間に位置するミドル領域が前記中央部よりも先に乾燥する。
【0008】
第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥液供給工程において、加熱された前記乾燥液を前記第1吐出口および前記第2吐出口から吐出させる。
【0009】
第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥液供給工程において、前記乾燥液が前記基板の前記第1主面に供給される乾燥液供給時間のうちの少なくとも後時間において、前記第1吐出口から吐出される前記乾燥液の中央流量は前記第2吐出口から吐出される前記乾燥液の周縁流量よりも小さい。
【0010】
第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥液供給工程において、前記乾燥液が前記基板の前記第1主面に供給される乾燥液供給時間のうちの前時間において、前記第1吐出口からの前記乾燥液の中央流量は前記第2吐出口からの前記乾燥液の周縁流量よりも大きく、前記前時間よりも後の後時間における前記周縁流量は、前記前時間における前記周縁流量よりも大きい。
【0011】
第6の態様は、第5の態様にかかる基板処理方法であって、前記後時間における前記中央流量は、前記前時間における前記中央流量よりも小さい。
【0012】
第7の態様は、第5または第6の態様にかかる基板処理方法であって、前記後時間は前記前時間よりも短い。
【0013】
第8の態様は、第1から第7のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥液供給工程において、前記基板の前記第2主面の中央部に熱媒体を供給して、前記基板を加熱する。
【0014】
第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥工程において、加熱された不活性ガスを前記基板の前記第1主面の中央部に供給する。
【0015】
第10の態様は、第1から第9のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥液供給工程において、前記基板の前記第2主面の少なくとも一部の温度が前記乾燥液の沸点以上となるように前記基板の前記第2主面を加熱しつつ、前記基板の前記第1主面の温度が前記沸点未満となる流量で前記乾燥液を前記基板の前記第1主面に供給する。
【0016】
第11の態様は、第1から第10のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記乾燥液供給工程において、前記乾燥液を供給する乾燥液供給時間のうちの後時間のみにおいて、前記基板の前記第2主面を加熱する。
【0017】
第12の態様は、基板処理装置であって、パターンが形成された第1主面と、前記第1主面とは逆側の第2主面とを有する基板を保持しつつ、前記基板を回転させる基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第1主面に処理液を吐出する吐出部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第2主面を加熱する基板加熱部とを備え、前記吐出部は、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第1主面の中央部に向かって乾燥液を吐出させる第1吐出口と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記第1主面の周縁部に向かって前記乾燥液を吐出させる第2吐出口とを有する。
【発明の効果】
【0018】
第1および第12の態様によれば、基板の周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。
【0019】
第2の態様によれば、乾燥工程においてミドル領域が中央部よりも先に乾燥する。このため、ミドル領域の乾燥後には、中央部側の乾燥液中に残留した処理液は周縁部にあまり移動できない、と考えられる。つまり、表面張力の低い処理液が周縁部に集まりにくい、と考えられる。したがって、周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。
【0020】
第3の態様によれば、乾燥液供給工程において、温度が高い乾燥液を基板の第1主面に供給することができる。このため、次の乾燥工程においても、乾燥液の温度を高めることができ、表面張力を低減させつつ乾燥液の蒸発をさらに促進させることができる。したがって、パターンの倒壊率をさらに低減させることができる。
【0021】
第4の態様によれば、基板の周縁部のパターンの倒壊率をさらに低減させることができる。
【0022】
第5の態様によれば、前時間において、乾燥液についての基板の主面のカバレッジを向上させることができる。このため、基板の第1主面へのパーティクルの付着を抑制することができる。また、後工程における周縁流量が大きいので、基板の周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。
【0023】
第6の態様によれば、乾燥液の総流量を低減させることができる。
【0024】
第7の態様によれば、基板の第1主面へのパーティクルの付着をさらに抑制することができる。
【0025】
第8の態様によれば、簡易な構成で基板を加熱することができる。
【0026】
第9の態様によれば、基板の第1主面のうち、最後に乾燥液が蒸発する中央部に、加熱された不活性ガスを供給する。このため、乾燥時間の終了時点を効果的に早めることができる。つまり、乾燥時間を効果的に短縮することができる。
【0027】
第10の態様によれば、乾燥液供給工程において、基板の第1主面の温度を乾燥液の沸点のより近い温度に上昇させることができる。
【0028】
第11の態様によれば、消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】制御部の内部構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図3】第1実施形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図4】処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図5】乾燥液供給工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図6】乾燥工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図7】基板の第1主面上の乾燥液が蒸発する順番を説明するための図である。
図8】実験結果としてのパターンの倒壊率を示すグラフである。
図9】第1実施形態にかかる処理ユニットの一部の他の一例を概略的に示す図である。
図10】第2実施形態にかかる処理ユニットのタイミングチャートおよび乾燥液の流量の時間変化の一例を示す図である。
図11】第3実施形態にかかる処理ユニットのタイミングチャートの一例を模式的に示す図である。
図12】第4実施形態にかかる処理ユニットのタイミングチャート、熱媒体の流量、熱媒体の温度および基板の第1主面の温度の時間変化の一例を模式的に示す図である。
図13】第5実施形態にかかる処理ユニットの動作の第1例を示すフローチャートである。
図14】第5実施形態にかかる処理ユニットの動作の第2例を示すフローチャートである。
図15】第6実施形態にかかる処理ユニットの構成の第1例を概略的に示す図である。
図16】第6実施形態にかかる処理ユニットの構成の第2例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ実施形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。
【0031】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0032】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0033】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0034】
<第1実施形態>
<基板処理装置の全体構成>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0035】
基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、有機EL(Electroluminescence)用基板、FPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板である。基板Wは、第1主面Waおよび第2主面Wbを有する、薄い平板形状を有する。第2主面Wbは第1主面Waと逆側の面である。以下では、基板Wが半導体ウエハであるものとする。基板Wは例えば円板形状を有している。基板Wの直径は例えば300mm程度であり、基板Wの厚さは例えば0.5mm程度以上かつ3mm程度以下である。基板Wの主面にはパターンが形成されている。ここでいうパターンは、例えば、配線パターン、電極パターン、半導体パターンおよび絶縁パターンの少なくとも一つを含む。パターンにおけるアスペクト比は、例えば、5以上かつ500以下である。パターン幅は、例えば、3nm以上かつ50nm以下である。このような高アスペクト比のパターンは倒壊しやすい。
【0036】
図1の例では、基板処理装置100は、インデクサブロック110と、処理ブロック120と、制御部90とを含んでいる。処理ブロック120は、主として基板Wの処理を行う部分であり、インデクサブロック110は、主として、基板処理装置100の外部と処理ブロック120との間での基板Wの搬送を行う部分である。
【0037】
インデクサブロック110は、ロードポート111と、第1搬送部112とを含む。ロードポート111には、外部から搬入された基板収容器(以下、キャリアと呼ぶ)Cが載置される。キャリアCには、複数の基板Wが、例えば鉛直方向において互いに間隔を空けて並んだ状態で、収容される。図1の例では、複数のロードポート111が配列される。
【0038】
第1搬送部112は搬送ロボットであって、各ロードポート111に載置されたキャリアCから未処理の基板Wを取り出すことができる。第1搬送部112はインデクサロボットとも呼ばれ得る。第1搬送部112は、キャリアCから取り出した未処理の基板Wを処理ブロック120に搬送する。処理ブロック120は該未処理の基板Wに処理を行うことができる。また、第1搬送部112は、処理済みの基板Wを処理ブロック120から受け取り、処理済みの基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送することができる。
【0039】
図1の例では、処理ブロック120は、複数の処理ユニット1と、第2搬送部122とを含んでいる。第2搬送部122は搬送ロボットであって、第1搬送部112と複数の処理ユニット1との間で基板Wを搬送することができる。図1の例では、処理ブロック120は載置部123も含んでいる。載置部123は、例えば、複数の基板Wを鉛直方向に並べた状態で載置することができる棚である。第1搬送部112は未処理の基板Wを載置部123に載置する。第2搬送部122は載置部123から未処理の基板Wを取り出し、該基板Wを処理ユニット1に搬送する。処理ユニット1は基板Wを処理する。処理ユニット1の構成については後に述べる。第2搬送部122は処理済みの基板Wを処理ユニット1から取り出し、該基板Wを載置部123に搬送する。第1搬送部112は載置部123から該基板Wを取り出し、該基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送する。
【0040】
図1の例では、複数(例えば4つ)の処理ユニット1は平面視において第2搬送部122の周りを囲むように設けられている。この第2搬送部122はセンターロボットとも呼ばれ得る。平面視上の各位置において、複数の処理ユニット1が鉛直方向に積層されていてもよい。つまり、鉛直方向に積層された複数の処理ユニット1によって構成されるタワーTWの複数(図では4つ)が、第2搬送部122を囲むように設けられてもよい。
【0041】
制御部90は、基板処理装置100を統括的に制御する。具体的には、制御部90は第1搬送部112、第2搬送部122および処理ユニット1を制御する。図2は、制御部90の内部構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶部92を有している。図2の具体例では、データ処理部91と記憶部92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部92は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory))921および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶部921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90が実行する処理の一部または全部が専用の論理回路などのハードウェアによって実行されてもよい。
【0042】
<処理ユニットの概要>
図3は、第1実施形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す縦断面図である。なお、基板処理装置100に属する全ての処理ユニット1が、図3に例示された構成を有している必要はない。基板処理装置100の少なくとも一つの処理ユニット1が、図3に例示された構成を有していればよい。
【0043】
処理ユニット1は、基板保持部2と、吐出部3と、基板加熱部4とを含んでいる。
【0044】
図3の例では、処理ユニット1にはチャンバ10も設けられている。チャンバ10は箱形の形状を有し、その内部空間は、基板Wを処理する処理空間に相当する。チャンバ10には、開閉可能な搬出入口(不図示)が設けられる。第2搬送部122は搬出入口を通じて未処理の基板Wをチャンバ10内に搬入し、また、搬出入口を通じて処理済みの基板Wをチャンバ10から搬出する。
【0045】
図3の例では、チャンバ10の天井部にはファンフィルタユニット11が設けられている。ファンフィルタユニット11は、チャンバ10の外部の空気を取り込んで清浄化し、その清浄化後の空気をチャンバ10の内部に送風する。ファンフィルタユニット11の作動により、チャンバ10内には清浄な空気によるダウンフローが形成される。図3の例では、チャンバ10の側壁の下部には、排気管13の上流端が接続されている。チャンバ10内のガスは排気管13を通じて外部に排出される。
【0046】
基板保持部2はチャンバ10内に設けられており、基板Wを水平姿勢で保持しつつ、基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。回転軸線Q1は、基板Wの中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。このような基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。
【0047】
ここでは、パターンが形成された基板Wの第1主面Waが鉛直上方を向いている。つまり、図3の例では、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waが上面に相当する。パターンは、例えば、配線パターン、絶縁パターンおよび半導体パターンの少なくともいずれかを含む。
【0048】
図3の例では、基板保持部2は、スピンベース21と、チャックピン22と、回転駆動部23とを含んでいる。スピンベース21は板状の形状(例えば円板形状)を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。スピンベース21の上面には複数のチャックピン22が設けられている。複数のチャックピン22は、回転軸線Q1についての周方向に沿って等間隔に設けられる。複数のチャックピン22は、次に説明する保持位置と解除位置との間で変位可能に設けられている。保持位置とは、チャックピン22が基板Wの周縁に当接する位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの保持位置で停止することにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。図3では、保持位置で停止したチャックピン22が示されている。解除位置とは、各チャックピン22が基板Wから離れた位置である。複数のチャックピン22がそれぞれの解除位置で停止することにより、複数のチャックピン22による基板Wの保持が解除される。基板保持部2は、チャックピン22を変位させるピン駆動部(不図示)も含む。ピン駆動部は、例えば、モータおよびエアシリンダ等の駆動源を含み、制御部90によって制御される。
【0049】
回転駆動部23はシャフト231とモータ232とを含んでいる。シャフト231の上端はスピンベース21の下面に接続されており、シャフト231はスピンベース21の下面から回転軸線Q1に沿って延びている。モータ232は制御部90によって制御され、シャフト231を回転軸線Q1のまわりで回転させる。これにより、スピンベース21、チャックピン22および基板Wが回転軸線Q1のまわりで一体に回転する。
【0050】
なお、基板保持部2は必ずしもチャックピン22を有している必要はない。例えば、基板保持部2は、真空チャック、静電チャックおよびベルヌーイチャック等のチャック方式により、基板Wを保持してもよい。
【0051】
吐出部3は、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waに向かって処理液を吐出する。図3に示されるように、吐出部3は少なくとも一つのノズル30を含む。ノズル30は、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waに向かって、処理液を吐出する。ここでは、第1主面Waは基板Wの上面に相当するので、ノズル30は、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方に設けられる。ノズル30は、例えば連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルである。
【0052】
図3の例では、ノズル30として、ノズル30c、ノズル30w、ノズル30iaおよびノズル30ibが示されている。図3の例では、ノズル30c、ノズル30wおよびノズル30iaは鉛直方向に沿って延びている。図3の例では、ノズル30cの下面には吐出口3cが形成され、ノズル30wの下面には吐出口3wが形成され、ノズル30iaの下面には吐出口3ia(第1吐出口に相当)が形成される。ノズル30cは吐出口3cから薬液を吐出し、ノズル30wは吐出口3wからリンス液を吐出し、ノズル30iaは吐出口3iaから乾燥液を吐出する。薬液、リンス液および乾燥液はいずれも処理液の一例であり、その具体例は後に述べる。
【0053】
ノズル30c、ノズル30wおよびノズル30iaは、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waの中央部に向かって、処理液を吐出する。図3の例では、ノズル30c、ノズル30wおよびノズル30iaは水平方向において互いに隣り合っており、互いに固定されている。図3の例では、ノズル30c、ノズル30wおよびノズル30iaは対向部材60の内部に設けられている。対向部材60は例えば円柱状の形状を有している。対向部材60は中空形状を有しており、その中空部の下端口は対向部材60の下面において開口している。ノズル30c、ノズル30wおよびノズル30iaは対向部材60の中空部内に設けられており、各ノズル30から吐出された処理液は、対向部材60の下端口から流出する。図3の例では、対向部材60は、基板保持部2によって保持された基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置に設けられている。
【0054】
ノズル30ibは吐出口3ib(第2吐出口に相当)を有しており、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waの周縁部に向かって、吐出口3ibから乾燥液を吐出する。このため、ノズル30ibから吐出された乾燥液の第1主面Wa上の着液位置(以下、周縁着液位置と呼ぶ)は、ノズル30iaから吐出された乾燥液の第1主面Wa上の着液位置(以下、中央着液位置と呼ぶ)よりも、基板Wの周縁に近い。周縁着液位置は、例えば、次に説明する仮想的な円環領域内にあってもよい。該円環領域の仮想的な中心は回転軸線Q1と一致する。該円環領域の仮想的な外径は、例えば、基板Wの直径の90%であってもよく、80%であってもよく、70%であってもよい。該円環領域の仮想的な内径は、例えば、基板Wの直径の10%であってもよく、20%であってもよく、30%であってもよく、40%であってもよい。
【0055】
図3の例では、ノズル30ibは、基板保持部2によって保持された基板Wの周縁よりも径方向外側に設けられている。ノズル30ibは、回転軸線Q1側かつ鉛直下方の斜め方向に向かって、乾燥液を吐出する。この場合、ノズル30ibから吐出されて基板Wの第1主面Wa上に着液した乾燥液は、一旦、回転軸線Q1側(つまり径方向内側)に流れ得る。そして、乾燥液は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて、径方向外側に流れる。
【0056】
乾燥液を吐出する機能に着目すると、吐出部3は、基板Wの第1主面Waの中央部に向かって乾燥液を吐出する吐出口3iaと、基板Wの第1主面Waの周縁部に向かって乾燥液を吐出する吐出口3ibとを有している、といえる。
【0057】
ノズル30は供給管31の下流端に接続され、供給管31の上流端は処理液供給源に接続される。図3の例では、供給管31として、供給管31c、供給管31w、供給管31iaおよび供給管31ibが示されている。
【0058】
供給管31cの下流端はノズル30cに接続され、供給管31cの上流端は薬液供給源に接続される。薬液供給源は、薬液を貯留するタンク(不図示)を有し、供給管31cの上流端に薬液を供給する。薬液としては、例えば、フッ酸と硝酸と水とを混合して得られるフッ硝酸、フッ酸と過酸化水素と水とを混合して得られるフッ酸過酸化水素水溶液(FPM)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM)、アンモニア水、アンモニアと過酸化水素と水との混合液(SC-1)、および、塩化水素と過酸化水素と水との混合液(SC-2)等の液体を適用できる。なお、薬液は混合液ではなく、単液でもよい。例えば、フッ酸(HF)、過酸化水素水および硫酸等の単液を薬液として適用できる。
【0059】
供給管31wの下流端はノズル30wに接続され、供給管31wの上流端はリンス液供給源に接続される。リンス液供給源は、リンス液を貯留するタンク(不図示)を有し、供給管31wの上流端にリンス液を供給する。リンス液としては、例えば、純水、二酸化炭素水またはオゾン水を適用することができる。
【0060】
供給管31iaの下流端はノズル30iaに接続され、供給管31iaの上流端は乾燥液供給源に接続される。供給管31ibの下流端はノズル30ibに接続され、供給管31ibの上流端は乾燥液供給源に接続される。乾燥液供給源は、乾燥液を貯留するタンク(不図示)を有し、供給管31iaおよび供給管31ibの上流端に乾燥液を供給する。乾燥液としては、例えば、イソプロピルアルコール等の有機溶剤を適用することができる。乾燥液の表面張力は他の処理液の表面張力(例えば薬液の表面張力およびリンス液の表面張力の両方)よりも低い。また、乾燥液の揮発性は他の処理液の揮発性(例えば薬液の揮発性およびリンス液の揮発性の両方)よりも高い。
【0061】
供給管31には供給弁32および流量調整弁33が介挿されている。図3の例では、供給管31cには供給弁32cおよび流量調整弁33cが介挿され、供給管31wには供給弁32wおよび流量調整弁33wが介挿され、供給管31iaには供給弁32iaおよび流量調整弁33iaが介挿され、供給管31ibには供給弁32ibおよび流量調整弁33ibが介挿される。供給弁32は供給管31の開閉を切り換える。流量調整弁33は、供給管31を流れる処理液の流量を調整する。流量調整弁33はマスフローコントローラであってもよい。供給弁32および流量調整弁33は制御部90によって制御される。
【0062】
吐出部3は各種の処理液を後述の順序で基板Wの第1主面Waに向かって吐出する。これにより、処理ユニット1は、処理液の種類に応じた各種の処理を基板Wの第1主面Waに対して順次に行うことができる。具体的な処理については後に述べる。
【0063】
図3の例では、対向部材60は、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waに向かってガスを吐出可能に構成されている。図3の例では、対向部材60の中空部のうちノズル30以外の空間がガス流路30gとして機能する。対向部材60の下面の下端口はガス流路30gの吐出口に相当する。
【0064】
図3の例では、対向部材60の上部は供給管31gの下流端に接続されている。つまり、供給管31gの下流端はガス流路30gにつながっている。供給管31gの上流端はガス供給源に接続される。ガス供給源は、不活性ガスを貯留する貯留部(不図示)を有しており、不活性ガスを供給管31gの上流端に供給する。不活性ガスは、例えば、窒素ガスおよび希ガスの少なくともいずれか一方を含む。希ガスは例えばアルゴンガスを含む。
【0065】
供給管31gには供給弁32g、流量調整弁33gおよびヒータ34gが設けられている。供給弁32gは供給管31gの開閉を切り換える。流量調整弁33gは、供給管31gを流れる不活性ガスの流量を調整する。ヒータ34gは、供給管31gを流れる不活性ガスを加熱する。ヒータ34gは、例えば、電熱線を有する電気抵抗式のヒータであってもよい。供給弁32g、流量調整弁33gおよびヒータ34gは制御部90によって制御される。
【0066】
供給弁32gが開き、かつ、ヒータ34gが作動すると、対向部材60の下面の中央部(つまり、ガス流路30gの下端口)から高温の不活性ガスが、基板Wの第1主面Waの中央部に向かって吐出される。これにより、基板Wの乾燥を促進させることができる。
【0067】
図3の例では、処理ユニット1には移動駆動部35が設けられている。移動駆動部35は、ノズル30c、ノズル30w、ノズル30iaおよび対向部材60を含む吐出ヘッドを一体に移動させる。具体的には、移動駆動部35は吐出ヘッドを、次に説明する処理位置と待機位置との間で移動させる。処理位置とは、ノズル30c、ノズル30wおよびノズル30iaが処理液を基板Wの第1主面Waに向かって吐出する位置であり、例えば、基板Wの第1主面Waの中央部と鉛直方向において対向する位置である。処理位置は、対向部材60が基板Wの第1主面Waに向かって不活性ガスを吐出する位置でもある。図3の例では、処理位置で停止した吐出ヘッドが示されている。待機位置とは、ノズル30c、ノズル30wおよびノズル30iaが処理液を基板Wの第1主面Waに向かって吐出しない位置であり、例えば、基板保持部2よりも径方向外側の位置である。待機位置は、対向部材60が基板Wの第1主面Waに向かって不活性ガスを吐出しない位置でもある。
【0068】
図3では、移動駆動部35の具体的な構成の一例が示されている。図3の例では、移動駆動部35は、アーム351と、支持柱352と、駆動源353とを含んでいる。支持柱352は、後述のガード7よりも径方向外側に設けられており、鉛直方向に沿って延びている。アーム351は水平方向に沿って延びており、その先端が吐出ヘッドに接続され、その基端が支持柱352に接続されている。駆動源353は制御部90によって制御され、支持柱352をその中心軸線Q2のまわりで所定の角度範囲で正逆方向に回転させる。駆動源353は例えばモータを含む。支持柱352が中心軸線Q2のまわりで所定の角度範囲で正逆方向に回転すると、吐出ヘッドは、中心軸線Q2についての周方向に沿って往復移動する。支持柱352は、吐出ヘッドの移動軌跡上に処理位置および待機位置が位置するように、設置される。なお、移動駆動部35は必ずしも図3の態様に限らず、例えばリニアモータ等の直動機構を含んでいてもよい。
【0069】
基板加熱部4は、基板保持部2によって保持された基板Wの第2主面Wbを加熱する。図3の例では、基板加熱部4は、基板Wの第2主面Wbと鉛直方向において対向する位置に設けられている。図3の例では、基板Wの第2主面Wbは下面に相当するので、基板加熱部4は基板Wの直下に設けられている。
【0070】
図3の例では、基板加熱部4はノズル40を含んでいる。ノズル40は基板Wの第2主面Wbに向かって熱媒体を吐出する。図3の例では、基板Wの第2主面Wbは下面に相当するので、ノズル40は下面ノズルとも呼ばれ得る。図3の例では、基板保持部2のスピンベース21の中央部には貫通穴が形成されており、シャフト231は中空シャフトである。スピンベース21の貫通穴およびシャフト231の中空部は鉛直方向においてつながっている。ノズル40の一部は当該貫通穴に配置されている。ノズル40の上面には吐出口が形成されており、ノズル40の吐出口は基板Wの第2主面Wbの中央部と鉛直方向において対向している。ノズル40は熱媒体を基板Wの第2主面Wbの中央部に向かって吐出する。
【0071】
ノズル40には供給管41の下流端が接続される。供給管41はシャフト231の内部において延びており、シャフト231を貫通している。供給管41の上流端は熱媒体供給源に接続される。熱媒体は流体(気体または液体)であり、より具体的な一例として水等の液体である。熱媒体供給源は、例えば熱媒体を貯留するタンク(不図示)を有し、熱媒体を供給管41の上流端に供給する。
【0072】
図3の例では、供給管41には供給弁42、流量調整弁43およびヒータ44が設けられている。供給弁42は供給管41の開閉を切り換える。流量調整弁43は、供給管41を流れる熱媒体の流量を調整する。流量調整弁43はマスフローコントローラであってもよい。ヒータ44は、供給管41を流れる熱媒体を加熱する。ヒータ44は、例えば、電熱線を有する電気抵抗式のヒータであってもよい。供給弁42、流量調整弁43およびヒータ44は制御部90によって制御される。
【0073】
供給弁42が開き、かつ、ヒータ44が作動すると、ノズル40から基板Wの第2主面Wbの中央部に高温の熱媒体が吐出される。基板Wの第2主面Wbの中央部に着液した熱媒体は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて、第2主面Wbに沿って径方向外側に流れ、基板Wの周縁から外側に飛散する。高温の熱媒体が基板Wの第2主面Wbに沿って流れる際に、熱媒体から基板Wに熱が移動し、基板Wが加熱される。
【0074】
図3の例では、処理ユニット1にはガード7およびガード昇降駆動部71が設けられている。ガード7は、回転軸線Q1を中心軸とした筒状の形状を有しており、基板保持部2を囲む。ガード7は、基板Wの周縁から飛散する処理液および熱媒体を受け止めることができる。ガード昇降駆動部71はガード7を、次に説明する上位置と下位置との間で昇降させる。上位置とは、ガード7の上端が、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直上方となる位置である。ガード7は、上位置に位置する状態で、基板Wの周縁から飛散した処理液および熱媒体を受け止めることができる。下位置は、上位置よりも低い位置であり、例えば、ガード7の上端がスピンベース21の上面よりも鉛直下方となる位置である。
【0075】
図3の例では、複数のガード7が設けられている。複数のガード7は同心状に配置される。複数のガード7は処理液の種類に応じて使い分けられてもよい。図3の例では、各ガード7に対応したカップ72が設けられている。カップ72は、回転軸線Q1を囲む環状(例えば円環状)の凹部(溝)を有する。各カップ72は、対応するガード7の内周面を流下した処理液を受け止める。各カップ72の例えば底部には、排出管12の上流端が接続されている。各カップ72で受け止められた処理液は排出管12を通じて処理ユニット1の外部に排出される。
【0076】
<基板処理装置の動作の一例>
次に、処理ユニット1の動作の一例について説明する。図4は、処理ユニット1の動作の一例を示すフローチャートである。制御部90は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS1からステップS7の処理を処理ユニット1に実行させる。図5は、後述の乾燥液供給工程における処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図であり、図6は、後述の乾燥工程における処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図である。
【0077】
まず、第2搬送部122が基板Wを処理ユニット1に搬送する。そして、基板保持部2が、第2搬送部122から受け取った基板Wを保持する(ステップS1:保持工程)。具体的な一例として、基板保持部2は複数のチャックピン22をそれぞれの解除位置から保持位置に変位させる。これにより、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。基板保持部2は、基板Wに対する処理の終了まで基板Wを保持し続ける。
【0078】
次に、基板保持部2は基板Wの回転を開始させる(ステップS2:回転開始工程)。基板保持部2は、基板Wの処理が完了するまで基板Wに対する回転を継続してもよい。
【0079】
次に、処理ユニット1は基板Wの第1主面Waに薬液を供給する(ステップS3:薬液工程)。まず、移動駆動部35が吐出ヘッドを処理位置に移動させる。また、ガード昇降駆動部71が薬液用のガード7を上位置に上昇させる。そして、制御部90は供給弁32cを開く。つまり、制御部90は供給弁32cを閉状態から開状態に切り替える。これにより、ノズル30cから回転中の基板Wの第1主面Waに向かって薬液が吐出される。基板Wの第1主面Waに着液した薬液は基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から飛散する。このとき、薬液が基板Wの第1主面Waに作用することにより、薬液の種類に応じた薬液処理が基板Wの第1主面Waに対して行われる。例えば処理ユニット1は、基板Wの第1主面Wa上の不純物を洗浄除去する洗浄処理、あるいは、基板Wの第1主面Waの所定膜をエッチングするエッチング処理を行う。基板Wの周縁から飛散した薬液はガード7で受け止められ、排出管12を通じてチャンバ10の外部に排出される。
【0080】
基板Wに対する処理が十分に行われると、制御部90は供給弁32cを閉じる。具体的な一例として、制御部90は薬液の吐出開始からの経過時間を測定し、当該経過時間が所定の薬液時間以上であるか否かを判定する。薬液時間は、薬液処理が十分に行われる程度の時間に予め設定される。経過時間の測定は、例えば制御部90に属するタイマ回路(不図示)によって行われる。制御部90は当該経過時間が薬液時間以上であるときに、供給弁32cを開状態から閉状態に切り替える。
【0081】
次に、処理ユニット1は基板Wの第1主面Waにリンス液を供給する(ステップS4:リンス工程)。リンス液用のガード7が薬液用のガード7と相違する場合には、ガード昇降駆動部71がガード7を適宜に昇降させて、リンス液用のガード7を上位置に位置させる。そして、制御部90は供給弁32wを開く。つまり、制御部90は供給弁32wを閉状態から開状態に切り替える。これにより、ノズル30wから回転中の基板Wの第1主面Waに向かってリンス液が吐出される。基板Wの第1主面Waに着液したリンス液は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から飛散する。このとき、リンス液が基板Wの第1主面Wa上の薬液を径方向外側に押し流す。これにより、基板Wの第1主面Wa上の処理液が薬液からリンス液に置換される。基板Wの周縁から飛散した処理液はガード7で受け止められ、排出管12を通じてチャンバ10の外部に排出される。
【0082】
薬液からリンス液への置換が十分に行われると、制御部90は供給弁32wを閉じる。具体的な一例として、制御部90はリンス液の吐出開始からの経過時間を測定し、当該経過時間が所定のリンス時間以上となったときに、供給弁32wを開状態から閉状態に切り替える。リンス時間は、薬液からリンス液の置換が十分に行われる程度の時間に予め設定される。
【0083】
次に、処理ユニット1は基板Wの第1主面Waに乾燥液を供給する(ステップS5:乾燥液供給工程)。乾燥液用のガード7がリンス液用のガード7と相違する場合には、ガード昇降駆動部71がガード7を適宜に昇降させて、乾燥液用のガード7を上位置に上昇させる。そして、制御部90は供給弁32iaおよび供給弁32ibを開く。つまり、制御部90は供給弁32iaおよび供給弁32ibを閉状態から開状態に切り替える。
【0084】
供給弁32iaおよび供給弁32ibが開くと、図5に示されるように、ノズル30iaの吐出口3iaおよびノズル30ibの吐出口3ibから回転中の基板Wの第1主面Waに向かって乾燥液が吐出される。乾燥液の温度は例えば常温(例えば摂氏25度程度)であってもよい。ここでいう乾燥液の温度とは、例えば、吐出口3iaおよび吐出口3ibの各々における乾燥液の温度である。また、ここでいう常温とは、例えば、吐出口3iaおよび吐出口3ibよりも上流側において、乾燥液を加熱するヒータが設けられていない、あるいは、当該ヒータが作動していないときの乾燥液の温度を含む。つまり、常温は、加熱されていない乾燥液の温度を含む。
【0085】
ノズル30iaからの乾燥液は基板Wの第1主面Waの中央部に着液し、ノズル30ibからの乾燥液は基板Wの第1主面Waの周縁部に着液する。第1主面Wa上に着液した乾燥液は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から飛散する。このとき、乾燥液が基板Wの第1主面Wa上のリンス液を押し流すことにより、基板Wの第1主面Wa上の処理液がリンス液から乾燥液に置換される。基板Wの周縁から飛散した処理液はガード7で受け止められ、排出管12を通じてチャンバ10の外部に排出される。
【0086】
ノズル30iaおよびノズル30ibから吐出される乾燥液の総流量は、例えば100mL(ミリリットル)/min以上に設定されてもよく、具体的な一例として、例えば250mL/minに設定され得る。乾燥液供給工程における基板Wの回転速度は、例えば150rpm以上かつ600rpm以下に設定されてもよく、200rpm以上かつ400rpm以下に設定されてもよい。より具体的な一例として、回転速度は300rpmに設定され得る。
【0087】
また、処理ユニット1は乾燥液の供給時に基板Wの第2主面Wbを加熱する。つまり、基板加熱部4は基板Wの第2主面Wbを加熱する。より具体的な一例として、制御部90は供給弁42を開き、かつ、ヒータ44を作動させる。これによれば、図5に示されるように、ノズル40から回転中の基板Wの第2主面Wbの中央部に向かって高温の熱媒体(例えば温水)が吐出される。基板Wの第2主面Wbの中央部に着液した熱媒体は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて径方向外側に流れ、基板Wの周縁から飛散する。高温の熱媒体が基板Wの第2主面Wbに沿って流れる際に、熱媒体から基板Wに熱が伝達され、基板Wが加熱される。基板Wの熱は第1主面Wa上の乾燥液に伝達される。このため、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液も加熱され、昇温する。
【0088】
ヒータ44は熱媒体を例えば摂氏60度以上にしてもよく、摂氏70度以上に加熱してもよく、摂氏80度以上に加熱してもよい。また、ヒータ44は熱媒体の温度を、例えば乾燥液の沸点未満に調整してもよい。ここでいう熱媒体の温度とは、例えば、ノズル40の吐出口における熱媒体の温度である。流量調整弁43は熱媒体の流量を、例えば、乾燥液の流量よりも大きな値に調整してもよい。より具体的には、流量調整弁43は熱媒体の流量を1000mL/min以上に調整してもよく、1500mL/min以上に調整してもよい。
【0089】
以上のように、処理ユニット1は乾燥液供給工程において、基板Wを回転させ、かつ、基板Wの第2主面Wbを加熱しつつ、乾燥液を基板Wの第1主面Waに供給する。しかも、処理ユニット1は吐出口3iaおよび吐出口3ibから乾燥液を吐出させて、基板Wの第1主面Waの中央着液位置および周縁着液位置に乾燥液を着液させる。
【0090】
リンス液から乾燥液への置換が十分に行われると、処理ユニット1は基板Wを乾燥させる(ステップS6:乾燥工程)。具体的には、処理ユニット1は乾燥液の吐出開始からの経過時間を測定し、当該経過時間が所定の乾燥液供給時間以上であるか否かを判定する。乾燥液供給時間は、リンス液から乾燥液への置換が十分に行われる程度の時間に予め設定される。乾燥液供給時間は例えば数十秒程度以上に設定され、具体的な一例として40秒程度に設定され得る。そして、当該経過時間が乾燥液供給時間以上であるときに、処理ユニット1は基板Wを乾燥させる。具体的には、制御部90は供給弁32iaおよび供給弁32ibを閉じる。制御部90は供給弁32iaおよび供給弁32ibをほぼ同時に開状態から閉状態に切り替えてもよい。ここでいう「ほぼ同時」とは、例えば、1秒以下の時間差を含む。また、基板加熱部4は基板Wの第2主面Wbの加熱を停止する。具体的には、制御部90は供給弁42を閉じる。供給弁42を閉じるタイミングは、供給弁32iaおよび供給弁32ibを閉じるタイミングとほぼ同時であってもよい。
【0091】
さらに制御部90は基板保持部2に基板Wの回転速度を増加させる。例えば、基板保持部2は例えば800rpm以上かつ2500rpm以下の回転速度で基板Wを回転させてもよく、800rpm以上かつ1500rpm以下の回転速度で基板Wを回転させてもよい。また、基板保持部2は基板Wの回転速度を徐々に(例えば段階的に)増加させてもよい。基板Wの回転速度の上昇を開始するタイミングは、供給弁32iaおよび供給弁32ibを閉じるタイミングとほぼ同時であってもよい。
【0092】
処理ユニット1は基板Wの第1主面Waの中央部に向かって不活性ガスを供給してもよい。具体的には、制御部90は供給弁32gを開き、かつ、ヒータ34gを作動させてもよい。これにより、図6に示されるように、対向部材60の下面の中央部のガス吐出口(つまり、ガス流路30gの下端口)から、高温の不活性ガスが基板Wの第1主面Waの中央部に向かって吐出される。図6では、不活性ガスの流れる方向が、対向部材60の直下の矢印で模式的に示されている。基板Wの第1主面Waの中央部にあたった不活性ガスは第1主面Waに沿って径方向外側に流れる。ヒータ34gは不活性ガスを例えば摂氏60度以上に加熱してもよく、摂氏70度以上に加熱してもよく、摂氏80度以上に加熱してもよい。不活性ガスの温度は、例えば、ガス流路30gのガス吐出口における不活性ガスの温度であってもよい。流量調整弁33gは不活性ガスの流量を、例えば、10L(リットル)/min以上かつ300L/min以下に調整してもよい。
【0093】
乾燥液が十分に蒸発すると、処理ユニット1は不活性ガスの吐出を停止させつつ、基板Wの回転を停止させる。具体的な一例として、制御部90は、乾燥液の吐出停止からの経過時間を測定し、当該測定時間が所定の乾燥時間以上であるか否かを判定する。乾燥時間は、基板Wが十分に乾燥する程度の時間に予め設定される。当該経過時間が乾燥時間以上であるときに、制御部90は供給弁32gを開状態から閉状態に切り替えるとともに、基板保持部2に基板Wの回転を停止させる。また、移動駆動部35が吐出ヘッドを待機位置に移動させ、ガード昇降駆動部71がガード7を下位置に下降させる。
【0094】
次に、基板保持部2が基板Wに対する保持を解除する(ステップS7:保持解除工程)。そして、第2搬送部122が処理済みの基板Wを処理ユニット1から搬出する。
【0095】
以上のように、処理ユニット1は基板Wに対する処理を行うことができる。しかも、本実施形態では、薬液工程およびリンス工程を含む液処理工程の後の乾燥液供給工程において、吐出部3は、基板Wの第1主面Waのうちの中央着液位置および周縁着液位置に向かってそれぞれ乾燥液を吐出する(図5参照)。上述の例では、ノズル30iaが乾燥液を中央着液位置に向かって吐出し、ノズル30ibが乾燥液を周縁着液位置に向かって吐出する。このため、基板Wの第1主面Waのうちの中央着液位置および周縁着液位置の各々に乾燥液が着液する。
【0096】
しかも、本実施の形態では、乾燥液供給工程において、基板加熱部4が基板Wの第2主面Wbを加熱する。上述の例では、ノズル40が高温の熱媒体を基板Wの第2主面Wbの中央部に向かって吐出する。このため、基板Wおよび基板Wの第1主面Wa上の乾燥液が熱媒体によって加熱される。
【0097】
このような乾燥液供給工程が行われることにより、次の乾燥工程において、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液を以下に説明する順番で蒸発させることができる。図7は、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液が蒸発する順番を説明するための図である。図7では、基板Wの第1主面Waが時系列に模式的に示されている。図7では、基板Wの第1主面Waのうち乾燥液が存在している領域には、斜線のハッチングが付与される。図7に示されるように、初期的には、基板Wの第1主面Waの全面に乾燥液が存在している。時間の経過によって、基板Wの第1主面Waのうち、まず、ミドル領域Wa2上の乾燥液が蒸発してミドル領域Wa2が露出(あるいは乾燥、以下同様)する。ミドル領域Wa2とは、基板Wと同心状かつ円環状の領域であり、基板Wの中央部と周縁部との間に位置する領域である。そして、その乾燥領域が時間の経過とともに径方向に広がって、第1主面Waのうちの周縁領域Wa3が露出する。周縁領域Wa3とはミドル領域Wa2よりも径方向外側かつ基板Wと同心状の円環領域である。そして、最後に第1主面Waのうちの中央領域Wa1が露出する。
【0098】
なお、上述の蒸発順序は、少なくとも基板Wの第1主面Waのパターンよりも上側において生じることが、発明者によって確認されている。蒸発は主として乾燥液の上面から生じることに鑑みれば、パターンの内部でも、上述の蒸発順序で乾燥液が蒸発していると考えられる。
【0099】
このような蒸発順序で乾燥液が蒸発する理由は必ずしも定かではないが、その一つとして次の理由が考えられる。すなわち、乾燥液供給工程において、中央着液位置のみならず周縁着液位置にも乾燥液が着液することにより、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液の膜厚がミドル領域Wa2上で薄くなっている、と考えられる。しかも、乾燥液供給工程において、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液が加熱されるので、乾燥液は蒸発しやすい状態にある。このため、乾燥工程において、基板Wが高速回転することにより、ミドル領域Wa2上の乾燥液の蒸発が他の領域に先立って完了し、ミドル領域Wa2が最初に露出する、と考えられる。
【0100】
以上のように、本実施の形態では、乾燥液供給工程において、乾燥液を中央着液位置および周縁着液位置に着液させつつ、基板Wの第2主面Wbを加熱することにより、乾燥工程において、ミドル領域Wa2、周縁領域Wa3および中央領域Wa1の順に乾燥液の蒸発を完了させ得る。つまり、ミドル領域Wa2が中央領域Wa1よりも先に乾燥する。
【0101】
比較のために、乾燥液供給工程において、中央着液位置のみに乾燥液を着液させる場合について説明する。この場合、乾燥工程では、第1主面Waのうち中央領域Wa1が最初に露出し、その乾燥領域が時間とともに径方向外側に広がっていく。つまり、比較例のように、周縁着液位置に着液する乾燥液の流量がゼロである場合には、第1主面Waはその中央領域Wa1から露出していく。
【0102】
逆に言えば、本実施形態では、乾燥工程においてミドル領域Wa2が中央領域Wa1よりも先に露出するように、乾燥液供給工程において中央着液位置に着液する乾燥液の流量(以下、中央流量Faと呼ぶ)および周縁着液位置に着液する乾燥液の流量(以下、周縁流量Fbと呼ぶ)が設定され得る。より具体的には、乾燥工程において、ミドル領域Wa2、周縁領域Wa3および中央領域Wa1の順で第1主面Waが露出するように、中央流量Faおよび周縁流量Fbが設定され得る。
【0103】
次に、パターンの倒壊率について説明する。図8は、実験結果としてのパターンの倒壊率を示すグラフである。図8は、比較例にかかる倒壊率および本実施形態にかかる倒壊率を示している。図8の左側の2つの棒グラフは比較例にかかる倒壊率を示し、中央の2つの棒グラフおよび右側の2つの棒グラフは本実施形態にかかる倒壊率を示している。中央の2つの棒グラフは、周縁流量Fbが中央流量Faよりも大きいときの倒壊率を示し、右側の2つの棒グラフは、周縁流量Fbが中央流量Faよりも小さいときの倒壊率を示している。左側、中央および右側の各々において、2つの棒グラフはそれぞれ基板Wの第1主面Waの中央部および周縁部おける倒壊率を示している。
【0104】
図8に示されるように、比較例では、周縁部におけるパターンの倒壊率が高くなる。より具体的には、比較例では、中央部におけるパターンの倒壊率は低いものの、中央部のパターンの倒壊率が高くなる。この理由は必ずしも定かではないが、次のように考えられ得る。まず、乾燥液供給工程の終了時点において、第1主面Wa上の乾燥液の液膜中にはわずかなリンス液(例えば純水)が残留していると考えられる。比較例では、乾燥工程において、基板Wの第1主面Waは中央部から露出し始め、その乾燥領域が時間の経過とともに外側に広がる。残留したリンス液は乾燥液の液膜中を移動するので、基板Wの周縁側に移動し、基板Wの周縁部にはリンス液が集まると考えられる。このようにリンス液が基板Wの周縁部に集まってから蒸発することにより、基板Wの周縁部におけるパターンの倒壊率が高くなると考えられる。
【0105】
また、当該理由として次のように考えることも可能である。すなわち、乾燥液供給工程において、乾燥液が基板Wの周縁部のパターン内部に十分に侵入できず、パターン内部からリンス液を十分に排出できていない可能性もある。この場合、周縁部のパターン内部でのリンス液の残留量が大きくなり、乾燥工程において、周縁部におけるパターンの倒壊率が高くなる。
【0106】
これに対して、本実施形態では、周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。具体的には、図8に示されるように、中央部におけるパターンの倒壊率はやや高くなるものの、周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。この理由は次のように考えられる。すなわち、乾燥工程において、ミドル領域Wa2が最初に露出(あるいは乾燥)するので、中央領域Wa1上の乾燥液の液膜中のリンス液は、周縁領域Wa3にはあまり移動できない。このため、基板Wの周縁部にリンス液があまり集まらず、周縁部におけるパターンの倒壊率が改善されている、と考えられる。なお、この考察は、図8に示されるように、中央部におけるパターンの倒壊率が高くなっていることからも、ある程度の妥当性を有していると考えられる。
【0107】
あるいは、乾燥液供給工程において、乾燥液が周縁着液位置にも着液することで、周縁部においても乾燥液がパターン内部に侵入し、リンス液を周縁部のパターン内部から十分に排出させることができている可能性もある。
【0108】
このように、本実施形態によれば、周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。また、図8から理解できるように、本実施形態では、中央部における倒壊率と周縁部における倒壊率との差を低減させることもできる。つまり、第1主面Wa上のパターンの倒壊率をより均一にすることが可能である。
【0109】
また、乾燥液供給工程において、基板加熱部4は基板Wの第2主面Wbを加熱しているので、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液の温度を高めることができる。このため、次の乾燥工程においても、乾燥液の温度を高くすることができる。したがって、乾燥液の表面張力を低減させつつ、乾燥液の蒸発を促進させることができる。より短時間で乾燥液を蒸発させることができれば、蒸発時において乾燥液の表面張力によるパターンへの力積を低減させることができる。このため、パターンの倒壊率をさらに低減させることができる。
【0110】
また、基板加熱部4は基板Wの第2主面の中央部に向かって熱媒体をノズル40から吐出させて、基板Wを加熱する。これによれば、簡易な構成で基板Wを加熱することができる。
【0111】
また、図8の中央の棒グラフと右側の棒グラフとの比較から理解できるように、乾燥液供給工程において、周縁流量Fbが中央流量Faよりも大きい場合には、周縁部におけるパターンの倒壊率をさらに低減させることができる。ひいては、中央部におけるパターンの倒壊率および周縁部におけるパターンの倒壊率の差をさらに低減させることができる。
【0112】
また、上述の例では、乾燥工程において、対向部材60は高温の不活性ガスを基板Wの第1主面Waに向かって吐出する。高温の不活性ガスは、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液の蒸発を促進させることができるので、さらに短時間で乾燥液を蒸発させることができる。
【0113】
また、対向部材60は高温の不活性ガスを基板Wの中央部に向かって吐出する。この場合には、高温の不活性ガスが基板Wの第1主面Waの中央部にあたり、続けて第1主面Waに沿って径方向外側に流れる。これによれば、特に基板Wの中央部上の乾燥液の蒸発を促進させることができる。上述の例では、最後に中央部上の乾燥液が蒸発している。つまり、最後に蒸発する領域上の乾燥液に対して高温の不活性ガスを集中的に供給することができる。このため、基板Wの第1主面Waの乾燥に要する乾燥時間をより効果的に短縮することができる。
【0114】
なお、吐出部3は高温の乾燥液を吐出してもよい。図9は、第1実施形態にかかる処理ユニット1の一部の他の一例を概略的に示す図である。図9の例では、吐出部3はヒータ34iaおよびヒータ34ibをさらに含んでいる。ヒータ34iaは供給管31iaに設けられており、供給管31iaを流れる乾燥液を加熱する。ヒータ34ibは供給管31ibに設けられており、供給管31ibを流れる乾燥液を加熱する。ヒータ34iaおよびヒータ34ibは制御部90によって制御される。ヒータ34iaおよびヒータ34ibの各々は、乾燥液の温度が常温よりも大きく、かつ、乾燥液の沸点未満となるように、乾燥液を加熱する。例えばヒータ34iaおよびヒータ34ibの各々は乾燥液の温度を摂氏60度以上に上昇させてもよく、具体的な一例として摂氏70度程度に上昇させてもよい。
【0115】
図9の処理ユニット1の動作の一例も図4と同様であるが、乾燥液供給工程(ステップS5)において、吐出部3は、加熱された乾燥液を吐出口3iaおよび吐出口3ibから吐出させる。このため、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液の温度をさらに高めることができる。したがって、次の乾燥工程(ステップS6)における乾燥液の表面張力をさらに低減させつつ、乾燥液の蒸発をさらに促進させることができる。
【0116】
また、上述の例では、ノズル30cおよびノズル30wが対向部材60の内部に設けられているものの、これらの少なくとも一方が対向部材60の外部に設けられてもよい。この場合、ノズル30cおよびノズル30wの少なくとも一方を処理位置と待機位置との間で移動させる、移動駆動部35と同様の移動駆動部が別途に設けられ得る。
【0117】
<第2実施形態>
第1実施形態では、中央着液位置のみならず、周縁着液位置にも乾燥液を着液させる。このため、乾燥液の総流量(つまり、中央流量Faと周縁流量Fbとの和)の増加を招きやすい。この増加を回避するためには、中央流量Faおよび周縁流量Fbの各々を小さく設定する必要がある。もしも中央流量Faが小さくなると、第1主面Wa上の乾燥液の液膜が薄くなり、乾燥液による基板Wの第1主面Waのカバレッジが低下する。ひいては、基板Wの第1主面Waに多くのパーティクルが付着し得る。
【0118】
そこで、第2実施形態では、基板Wの周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させつつも、第1主面Waに付着するパーティクルの数を低減させることを企図する。
【0119】
第2実施形態にかかる基板処理装置100の構成の一例は第1実施形態と同様である。また、処理ユニット1の動作の一例も、図4に示す通りである。ただし、乾燥液供給工程において、処理ユニット1は中央流量Faおよび周縁流量Fbを時間の経過ともに変化させる。
【0120】
図10は、第2実施形態にかかる処理ユニット1のタイミングチャートおよび乾燥液の流量の時間変化の一例を示す図である。図10では、中央流量Faが実線で示され、周縁流量Fbが破線で示されている。図10の例では、時点t1において制御部90が供給弁32iaを閉状態から開状態に切り替える。これにより、ノズル30iaから基板Wの第1主面Waの中央着液位置に向かって乾燥液が吐出され始める。この時点t1において、実質的な乾燥液供給工程が始まる。一方で、図10の例では、供給弁32ibは閉状態を維持している。このため、ノズル30ibからは乾燥液が未だ吐出されない。
【0121】
また、制御部90は、例えば時点t1において、供給弁42を閉状態から開状態に切り替え、ヒータ44を作動させる。これにより、ノズル40から高温の熱媒体が基板Wの第2主面Wbに向かって吐出され、基板Wが加熱される。
【0122】
そして、制御部90は時点t1よりも後の時点t2において、供給弁32ibを閉状態から開状態に切り替える。これにより、ノズル30ibから乾燥液が基板Wの第1主面Waの周縁着液位置に向かって吐出され始める。つまり、ノズル30iaおよびノズル30ibの両方から乾燥液が吐出される。
【0123】
図10の例では、時点t2において、制御部90は流量調整弁33iaに中央流量Faを低減させている。これにより、中央流量Faと周縁流量Fbとの和の増加を抑制することができる。
【0124】
そして、時点t2の後の時点t3において、制御部90は供給弁32ia、供給弁32ibおよび供給弁42を開状態から閉状態に切り替える。つまり、時点t3において、実質的な乾燥液供給工程が終了する。
【0125】
以上のように、時点t1から時点t3までの乾燥液供給時間Tのうち、時点t1から時点t2までの所定の前時間T1において、中央流量Faは周縁流量Fbよりも大きい。例えば周縁流量Fbは中央流量Faの半分以下であってもよく、3分の1以下であってもよく、4分の1以下であってもよく、10分の1以下であってもよい。上述の例では、周縁流量Fbはゼロに設定されている。このため、より多くの乾燥液が中央着液位置に着液することができ、基板Wの第1主面Waの全面をより高いカバレッジで覆うことができる。したがって、基板Wの第1主面Waへのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0126】
一方、乾燥液供給時間Tのうち前時間T1よりも後の後時間T2(図では時点t2から時点t3までの時間)における中央流量Faは、前時間T1における中央流量Faよりも小さく、後時間T2における周縁流量Fbは前時間T1における周縁流量Fbよりも大きい。このため、中央流量Faと周縁流量Fbの和である総流量の増加を抑制しつつ、つまり、乾燥液の使用量の増加を抑制しつつ、乾燥液を中央着液位置および周縁着液位置の各々に着液させることができる。
【0127】
後時間T2は前時間T1よりも短く設定されてもよい。後時間T2は乾燥液供給時間Tの半分以下に設定されてもよく、3分の1以下に設定されてもよく、4分の1以下に設定されてもよく、10分の1以下に設定されてもよい。具体的な一例として、後時間T2は3秒以下に設定されてもよい。後時間T2が短いほど前時間T1を長く設定することができる。これによれば、処理ユニット1はパーティクルの付着をより確実に抑制しつつ、より効果的にリンス液から乾燥液への置換を促進することができる。
【0128】
図10に示されるように、後時間T2の終了時点(時点t3)は乾燥液供給時間Tの終了時点であってもよい。つまり、後時間T2が経過したときに、制御部90は供給弁32iaおよび供給弁32ibを閉じて、乾燥液の供給を停止してもよい。
【0129】
以上のように、第2実施形態では、前時間T1において、中央流量Faが周縁流量Fbよりも大きい。このため、乾燥液は高いカバレッジで基板Wの第1主面Waの全体を覆うことができ、基板Wの第1主面Waへのパーティクルの付着を適切に抑制することができる。
【0130】
しかも、後時間T2において、乾燥液がより大きな周縁流量Fbで基板Wの第1主面Waの周縁着液位置に着液する。また、第2実施形態においても、乾燥液供給工程において、基板加熱部4は基板Wの第2主面Wbを加熱している。このため、次の乾燥工程において、基板Wのミドル領域Wa2を中央領域Wa1よりも先に乾燥させることができる。したがって、基板Wの周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。
【0131】
また、図10の例では、後時間T2において、周縁流量Fbは中央流量Faよりも大きく設定されている。これによれば、第1実施形態で説明されたように、基板Wの周縁部におけるパターンの倒壊率をさらに低減させることができる。
【0132】
<第3実施形態>
第1実施形態および第2実施形態では、基板加熱部4は、乾燥液供給工程(ステップS5)の乾燥液供給時間の全体において、基板Wの第2主面Wbを加熱している。しかしながら、必ずしもこれに限らない。
【0133】
図11は、第3実施形態にかかる処理ユニット1のタイミングチャートの一例を模式的に示す図である。図11の例では、時点t1において、制御部90は供給弁32iaおよび供給弁32ibを閉状態から開状態に切り替える。これにより、ノズル30iaおよびノズル30ibから基板Wの第1主面Waに向かって乾燥液が吐出され始める。つまり、時点t1において実質的な乾燥液供給工程が始まる。一方で、図11の例では、制御部90は時点t1よりも後の時点t13において、供給弁42を閉状態から開状態に切り替える。これにより、ノズル40から高温の熱媒体が基板Wの第2主面Wbに向かって吐出され始める。つまり、基板加熱部4は基板Wの第2主面Wbを加熱し始める。そして、制御部90は時点t13の後の時点t3において、供給弁32ia、供給弁32ibおよび供給弁42を開状態から閉状態に切り替える。つまり、時点t3において、実質的な乾燥液供給工程が終了する。
【0134】
以上のように、第3実施形態では、基板加熱部4は時点t1から時点t3までの乾燥液供給時間Tのうち、時点t1から時点t13までの所定の前時間T11においては、基板Wの第2主面Wbを加熱せず、時点t13から時点t3までの所定の後時間T12において、基板Wの第2主面Wbを加熱する。後時間T12は、時点t3における基板Wの第1主面Waの温度が乾燥液の沸点に十分近づく程度の時間に予め設定される。例えば、後時間T12は、乾燥液供給時間Tの半分以下に設定されてもよく、乾燥液供給時間Tの3分の1以下に設定されてもよく、4分の1以下に設定されてもよく、10分の1以下に設定されてもよい。
【0135】
以上のように、第3実施形態では、基板加熱部4は前時間T11において基板Wを加熱せず、後時間T12において基板Wの第2主面Wbを加熱する。つまり、基板加熱部4は後時間T12のみにおいて基板Wの第2主面Wbを加熱する。このため、基板加熱部4の作動時間を短縮することができ、基板処理装置100の消費電力を低減させることができる。また、基板加熱部4が基板Wの第2主面Wbに高温の熱媒体を供給する場合には、熱媒体の使用量を低減させることができる。熱媒体が液体である場合には、省液化を実現することができる。
【0136】
なお、第3実施形態において、供給弁32ibを開くタイミングとして第2実施形態を適用する場合には、後時間T12は後時間T2と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0137】
<第4実施形態>
第4実施形態にかかる基板処理装置100の構成は第1実施形態と同様である。ただし、第4実施形態では、乾燥液供給工程(ステップS5)において、基板加熱部4は基板Wの第2主面Wbの少なくとも一部(例えば中央部)の温度を乾燥液の沸点以上に上昇させる。具体的には、基板加熱部4は乾燥液の沸点以上の熱媒体を基板Wの第2主面Wbの中央部に供給する。
【0138】
図12は、第4実施形態にかかる処理ユニット1のタイミングチャート、熱媒体の流量、熱媒体の温度および基板Wの第1主面Waの温度(以下、基板温度と呼ぶ)の時間変化の一例を模式的に示す図である。図12の例では、乾燥液供給工程(ステップS5)において、ノズル40から吐出される熱媒体の温度は乾燥液の沸点bpよりも大きい。乾燥液がイソプロピルアルコールである場合、沸点bpは摂氏82.4度であり、熱媒体の温度は例えば摂氏85度程度に設定される。ただし、熱媒体の温度は熱媒体の沸点未満に設定され得る。例えば熱媒体が水である場合、沸点(摂氏100度)よりも10度低い摂氏90度未満に設定されてもよい。これによれば、SEMI規格を順守することができる。
【0139】
乾燥液供給工程においては、熱媒体よりも温度が低い乾燥液がノズル30iaおよびノズル30ibから吐出される。このため、基板Wの第1主面Waには低温の乾燥液が連続的に供給される。したがって、低温の乾燥液は基板Wの第1主面Waを冷却することができる。この乾燥液の冷却能力は乾燥液の中央流量Faおよび周縁流量Fbが大きいほど高くなる。そこで、流量調整弁33iaおよび流量調整弁33ibはそれぞれ乾燥液の中央流量Faおよび周縁流量Fbを、基板温度が沸点bp未満となる値に調整する。中央着液位置に着液する乾燥液は基板Wの第1主面Waの全面を流れるので、中央流量Faが特に重要である。例えば、乾燥液の中央流量Faは、100mL/min程度以上に予め設定される。
【0140】
図12の例では、基板Wの第1主面Waの基板温度として、基板Wの第1主面Waのうちの中央部の温度が示されている。高温の熱媒体は基板Wの第2主面Wbのうちの中央部に着液するので、基板Wの基板温度は次に説明する温度分布を有する。すなわち、基板温度は、基板Wの中央部において高く、径方向外側に向かうにつれて低減する。このため、図12の例では、基板Wの第1主面Waの温度分布において最も高い値が基板温度として示されている。
【0141】
図12に示されるように、乾燥液供給工程における基板温度は乾燥液の沸点bp未満である。乾燥液がイソプロピルアルコールである場合、基板Wの温度分布のうち最も高い基板温度は例えば摂氏80度程度以下に調整され得る。このため、乾燥液供給工程における乾燥液の沸騰をより確実に抑制することができる。もしも、乾燥液の供給時に基板Wの第1主面Wa上の乾燥液が沸騰すると、第1主面Waへのパーティクルの付着を招く。本実施形態では、乾燥液の沸騰をより確実に抑制するので、基板Wの第1主面Waへのパーティクルの付着をより確実に抑制することができる。
【0142】
しかも、第4実施形態では、乾燥液供給工程において吐出される熱媒体の温度は沸点bp以上である。このため、乾燥液供給工程において、基板Wの第1主面Waの温度分布における最大値を沸点bpにより近づけることができる。乾燥液供給工程における基板Wの第1主面Waの温度分布における最小値(つまり、第1主面Waの周縁部における基板温度)は例えば摂氏60度以上である。つまり、基板Wの第1主面Waの各位置の基板温度が、摂氏60度以上かつ乾燥液の沸点bp未満となるように、乾燥液の流量が設定され得る。
【0143】
第4実施形態では、乾燥液供給工程において、基板W自体の温度を高くしつつ、基板Wの第1主面Wa上の乾燥液の温度を沸点bpにより近づけることができる。このため、乾燥液の供給を停止した直後の乾燥工程において、乾燥液の温度をより高くすることができる。このため、乾燥工程において、乾燥液の表面張力をより低減させることができつつ、乾燥液の蒸発速度をより増加させることができる。また、乾燥工程の開始直後のより早いタイミングで乾燥液を蒸発させることができるので、ミドル領域Wa2上の乾燥液は薄い液膜のまま速やかに蒸発すると考えられる。このため、ミドル領域Wa2をより確実に中央領域Wa1よりも先に露出させることができる、と考えられる。
【0144】
<第5実施形態>
上述の例では、処理ユニット1は薬液工程(ステップS3)、リンス工程(ステップS4)、乾燥液供給工程(ステップS5)および乾燥工程(ステップS6)をこの順で行った。しかしながら、必ずしもこれに限らない。
【0145】
図13は、第5実施形態にかかる処理ユニット1の動作の第1例を示すフローチャートである。図13の例では、制御部90は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS11からステップS19の処理を処理ユニット1に実行させる。ステップS11からステップS15はそれぞれステップS1からステップS5と同様である。ただし、ステップS15(乾燥液供給工程)において、基板加熱部4は基板Wを加熱しなくてもよい。
【0146】
次に、処理ユニット1は基板Wの第1主面Waを疎水化させる(ステップS16:疎水化工程:液供給工程に相当)。具体的には、処理ユニット1は、疎水化液を吐出するノズルを含んでおり、当該ノズルから回転中の基板Wの第1主面Waに疎水化液を吐出させる。疎水化液は、例えば、シリコン系の疎水化液を含む。シリコン系の疎水化液は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる疎水化液である。疎水化液は、例えば、液体状のシリル化剤(シランカップリング剤ともいう)を含むシリル化液である。処理ユニット1は、基板Wの第1主面Waを十分に疎水化したときに、ノズルからの疎水化液の吐出を停止させる。
【0147】
次に、処理ユニット1はステップS17からステップS19を実行する。ステップS17からステップS19はステップS5からステップS7とそれぞれ同様である。
【0148】
以上のように、上述の第1例でも、第1実施形態から第4実施形態における乾燥液供給工程(ステップS5)と同様に乾燥液供給工程(ステップS17)が実行される。このため、基板Wのパターンの倒壊率を低減させることができる。しかも、基板Wの第1主面Waが疎水化されているので、第1主面Waの接触角を低減させることができる。このため、パターンに作用する表面張力を低減させることができ、パターンの倒壊率をさらに低減させることができる。
【0149】
図14は、第5実施形態にかかる処理ユニット1の動作の第2例を示すフローチャートである。図14の例では、制御部90は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS21からステップS26の処理を処理ユニット1に実行させる。ステップS21からステップS26はそれぞれステップS1からステップS3、ステップS5からステップS7と同様である。ただし、ステップS23(薬液工程:液供給工程に相当)の終了時点において、基板Wの第1主面Waには金属が露出している。第2例によれば、ステップS23の後に、ステップS24(乾燥液供給工程)が行われる。このため、基板Wの第1主面Waには水が供給されない。したがって、金属と水との反応を避けることができ、当該反応による不具合を避けることができる。また、上述の第2例でも、第1実施形態から第4実施形態における乾燥液供給工程(ステップS5)と同様に乾燥液供給工程(ステップS24)が実行される。このため、基板Wのパターンの倒壊率を低減させることができる。
【0150】
<第6実施形態>
図15は、第6実施形態にかかる処理ユニット1の構成の第1例を概略的に示す図である。第1例にかかる処理ユニット1は、ノズル30ibという点で、第1実施形態にかかる処理ユニット1と相違している。
【0151】
図15の例では、ノズル30ibは、移動駆動部35によって、吐出ヘッドと一体に移動可能に設けられている。具体的には、ノズル30ibは移動駆動部35のアーム351に連結されている。ノズル30ibは、吐出ヘッドが処理位置に位置する状態で、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waと鉛直方向において対向する。具体的には、ノズル30ibは第1主面Waの周縁部と鉛直方向において対向する。ノズル30ibは鉛直方向に延びており、その下面に吐出口3ibが形成されている。ノズル30ibは吐出口3ibから例えば鉛直下方に沿って乾燥液を吐出する。
【0152】
第1例にかかる処理ユニット1の動作も図4のフローチャートと同様である。つまり、第1実施形態から第4実施形態と同様に、乾燥液供給工程(ステップS5)が行われる。このため、基板Wの周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。
【0153】
図16は、第6実施形態にかかる処理ユニット1の構成の第2例を概略的に示す図である。第2例にかかる処理ユニット1は、吐出部3および対向部材60の構成という点で、第1実施形態にかかる処理ユニット1と相違している。図16の例では、対向部材60は遮断板6と中空軸61とを含んでいる。遮断板6は、基板保持部2によって保持された基板Wの第1主面Waと鉛直方向において対向する位置に設けられている。図16の例では、基板Wの第1主面Waは上面に相当するので、遮断板6は基板Wよりも鉛直上方に設けられている。遮断板6は例えば板状の形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。遮断板6の下面は、基板Wの第1主面Waと対向する対向面である。遮断板6は平面視において、例えば円形状を有する。遮断板6の直径(つまり、対向面の直径)は例えば基板Wの直径の8割以上であってもよく、9割以上であってもよく、基板Wの直径以上であってもよい。
【0154】
図16の例では、遮断板6の上面には、中空軸61が設けられている。中空軸61は中空部を有しており、遮断板6の中央部には、自身を鉛直方向に貫通する貫通穴が形成されている。当該中空部が遮断板6の貫通穴と鉛直方向においてつながっている。ノズル30iaは中空軸61の中空部および遮断板6の貫通穴に設けられている。ノズル30iの外周面の直径は、中空軸61および遮断板6の内周面の直径よりも小さい。ノズル30iの外周面と、中空軸61および遮断板6の内周面との間の空間は、ガス流路30gとして機能する。
【0155】
図16の例では、ノズル30cおよびノズル30wは対向部材60の外部に設けられている。また、図16の例では、移動駆動部35として移動駆動部35cおよび移動駆動部35wが設けられている。移動駆動部35cはノズル30cを処理位置と待機位置との間で移動させ、移動駆動部35wはノズル30wを処理位置と待機位置との間で移動させる。
【0156】
図16の例では、移動駆動部35として移動駆動部35iが設けられている。移動駆動部35iはノズル30iaおよび対向部材60を一体に移動させる。移動駆動部35iはノズル30iaおよび対向部材60を例えば鉛直方向に沿って一体に移動させる。この場合、移動駆動部35iは昇降駆動部であるともいえる。移動駆動部35iは、モータ等の駆動源と、駆動源からの動力をノズル30iaおよび遮断板6に伝達する動力伝達部とを含む。動力伝達部は、例えば、カム機構またはボールねじ機構を含む。
【0157】
第2例にかかる処理ユニット1の動作も図4のフローチャートと同様である。ただし、移動駆動部35iは、乾燥液供給工程および乾燥工程において、ノズル30iaおよび対向部材60を基板Wにより近い処理位置に下降させ、それ以外において、当該処理位置よりも高い待機位置に上昇させる。
【0158】
第6実施の形態の第2例においても、第1実施形態から第4実施形態における乾燥液供給工程(ステップS5)が実行される。このため、基板Wの周縁部におけるパターンの倒壊率を低減させることができる。
【0159】
以上のように、基板処理装置100および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0160】
上述の例では、各流体に専用のノズルが設けられているものの、一つのノズルが、互いに異なる種類の流体で共用されてもよい。
【0161】
また上述の例では、基板加熱部4は、基板Wの第2主面Wbに熱媒体を供給しているものの、必ずしもこれに限らない。基板加熱部4は、例えば、基板Wの第2主面Wbと鉛直方向において向かい合う位置に設けられたヒータを含んでいてもよい。ヒータは例えば、電熱線を含む電気抵抗式のヒータであってもよく、加熱用の光を出力する光学式のヒータであってもよい。
【符号の説明】
【0162】
2 基板保持部
3 吐出部
3ia 第1吐出口(吐出口)
3ib 第2吐出口(吐出口)
4 基板加熱部
bp 沸点
Fa 中央流量
Fb 周縁流量
S1 保持工程(ステップ)
S4,S16,S23 液処理工程(ステップ)
S5,S17,S24 乾燥液供給工程(ステップ)
S6,S18,S25 乾燥工程(ステップ)
T 乾燥液供給時間
T1,T11 前時間
T2,T12 後時間
W 基板
Wa 第1主面
Wa2 ミドル領域
Wb 第2主面
図1
図2
図3
図4
図5
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図16