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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006096
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】流体圧システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20250109BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20250109BHJP
   F04B 23/12 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F15B11/02 C
F15B11/00 F
F04B23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106673
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 寿和
【テーマコード(参考)】
3H071
3H089
【Fターム(参考)】
3H071AA03
3H071BB02
3H071BB12
3H071CC33
3H071DD45
3H089BB27
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA14
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】操作性を損なうことなくシャフトの大径化を抑制できる油圧システムを提供する。
【解決手段】油圧システム1は、電動モータ3と、電動モータ3により回転されるシャフト6と、シャフト6を介して電動モータ3と接続され油圧アクチュエータを作動させる作動油を吐出する所定の複数の可変容量型の油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2の出力を入力指令に応じて制御するコントローラ5と、を備える。コントローラ5は、各油圧ポンプ2の出力を、それらの合計の上限が所定の複数よりも少ない数の油圧ポンプ2の最大出力の合計出力と略等しくなるように入力指令に応じて割り振り制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
この電動モータにより回転されるシャフトと、
このシャフトを介して電動モータと接続され流体圧アクチュエータを作動させる作動流体を吐出する所定の複数の可変容量型の流体圧ポンプと、
これら流体圧ポンプの出力を入力指令に応じて制御するコントローラと、を備え、
コントローラは、各流体圧ポンプの出力を、それらの合計の上限が所定の複数よりも少ない数の流体圧ポンプの最大出力の合計出力と略等しくなるように入力指令に応じて割り振り制御する
ことを特徴とする流体圧システム。
【請求項2】
流体圧ポンプは、3つ以上設定され、
コントローラは、各流体圧ポンプの出力を、それらの合計の上限が2つの流体圧ポンプの最大出力の合計出力と略等しくなるように電動モータの出力を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の流体圧システム。
【請求項3】
シャフトは、電動モータの両側に延出し、
電動モータを基準として一側のシャフトと他側のシャフトとにそれぞれ流体圧ポンプのいずれかが接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の流体圧システム。
【請求項4】
流体圧ポンプのいずれかがシャフトに並列に接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一記載の流体圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流体圧ポンプを電動モータにより駆動する流体圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械等に用いられる油圧システムにおいて、複数の油圧ポンプを共通のエンジンまたは電動モータにより駆動するものが知られている(例えば、特許文献1乃至5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-177778号公報
【特許文献2】特公平7-84866号公報
【特許文献3】特開2002-81370号公報
【特許文献4】特表2002-515567号公報
【特許文献5】特開2011-75023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すべてのポンプを100%駆動させるためには、動力源とポンプとを接続するシャフトに加わる大きなトルクに耐え得るように、シャフト径を大きくする必要がある。シャフトの大径化は、システム全体、および、作業機械の大型化を招く。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、操作性を損なうことなくシャフトの大径化を抑制できる流体圧システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、電動モータと、この電動モータにより回転されるシャフトと、このシャフトを介して電動モータと接続され流体圧アクチュエータを作動させる作動流体を吐出する所定の複数の可変容量型の流体圧ポンプと、これら流体圧ポンプの出力を入力指令に応じて制御するコントローラと、を備え、コントローラは、各流体圧ポンプの出力を、それらの合計の上限が所定の複数よりも少ない数の流体圧ポンプの最大出力の合計出力と略等しくなるように入力指令に応じて割り振り制御する流体圧システムである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の流体圧システムにおける流体圧ポンプが、3つ以上設定され、コントローラが、各流体圧ポンプの出力を、それらの合計の上限が2つの流体圧ポンプの最大出力の合計出力と略等しくなるように電動モータの出力を制御するものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の流体圧システムにおけるシャフトが、電動モータの両側に延出し、電動モータを基準として一側のシャフトと他側のシャフトとにそれぞれ流体圧ポンプのいずれかが接続されているものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3いずれか一記載の流体圧システムにおける流体圧ポンプのいずれかがシャフトに並列に接続されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、シャフトに付加されるトルクを軽減でき、所定の複数の流体圧ポンプの用途を独立させて流体圧アクチュエータを制御しやすくし、操作性を確保しながら、シャフトの大径化を抑制できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、3つ以上の流体圧ポンプの用途を独立させて流体圧アクチュエータを制御しやすくし、操作性を確保しながら、シャフトの大径化を抑制できる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、電動モータの一側のみに流体圧ポンプを接続する場合と比較して、小径化したシャフトを使用できる箇所を増やすことができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、電動モータに流体圧ポンプを直列に接続する場合と比較して、小径化したシャフトを使用できる箇所を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る流体圧システムの第1の実施の形態を示す回路図である。
図2】(a)は同上流体圧システムの各流体圧ポンプの出力、トルク、必要最小直径の一例を示す表、(b)は流体圧システムの各流体圧ポンプの出力、トルク、必要最小直径の他の例を示す表、(c)は従来例の流体圧システムの各流体圧ポンプの出力、トルク、必要最小直径の一例を示す表である。
図3】本発明に係る流体圧システムの第2の実施の形態を示す回路図である。
図4】(a)は同上流体圧システムの各流体圧ポンプの出力、トルク、必要最小直径の一例を示す表、(b)は流体圧システムの各流体圧ポンプの出力、トルク、必要最小直径の他の例を示す表である。
図5】本発明に係る流体圧システムの第3の実施の形態を示す回路図である。
図6】(a)は同上流体圧システムの各流体圧ポンプの出力、トルク、必要最小直径の一例を示す表、(b)は流体圧システムの各流体圧ポンプの出力、トルク、必要最小直径の他の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、図1および図2に示された第1の実施の形態、図3および図4に示された第2の実施の形態、および、図5および図6に示された第3の実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0016】
まず、第1の実施の形態について説明する。
【0017】
図1において、1は流体圧システムである油圧システムを示す。油圧システム1は、例えば油圧ショベル等の作業機械に適用される。油圧システム1は、作動流体である作動油を吐出するための所定の複数の流体圧ポンプである油圧ポンプ2を備え、それら油圧ポンプ2が、共通の電動モータ(電動機)3により駆動される。すなわち、油圧システム1は、電油システムである。
【0018】
油圧ポンプ2は、レギュレータ等とも呼ばれる容量可変手段4を有する可変容量型のものである。油圧ポンプ2に接続されたポンプラインは、油圧シリンダや油圧モータ等の流体圧アクチュエータである油圧アクチュエータに対し直接またはコントロールバルブを介して間接的に接続され、吐出された作動油を油圧アクチュエータに供給することで油圧アクチュエータを動作させる。好ましくは、油圧ポンプ2は3つ以上設定される。本実施の形態では、油圧ポンプ2は3つ(油圧ポンプ2a,2b,2c)が設定されている。各油圧ポンプ2は、それぞれ所定の油圧アクチュエータ群に対し、作動油を供給可能となっている。各油圧ポンプ2に対応する油圧アクチュエータ群は、固定されていてもよいし、油圧アクチュエータを操作するためのレバーまたはペダル等の操作装置のオペレータによる操作に応じた弁の切り換え等によって切り換えられてもよい。
【0019】
電動モータ3と油圧ポンプ2とは、コントローラ5により動作が制御される。コントローラ5は、パワーコントローラユニットであり、操作装置の操作量に応じて入力された入力指令(信号)に基づき、流量指令用の指令信号を生成して容量可変手段4に出力することで、油圧ポンプ2の出力(馬力)、つまり油圧ポンプ2による作動油の吐出量を制御する。電動モータ3およびコントローラ5は、バッテリからの給電により動作する。
【0020】
また、電動モータ3は、シャフト6を介して油圧ポンプ2と接続されている。図示される例では、シャフト6は、電動モータ3の一側に延出しており、シャフト6aに油圧ポンプ2aが接続され、油圧ポンプ2aに接続されたシャフト6bに油圧ポンプ2bが接続され、油圧ポンプ2bに接続されたシャフト6cに油圧ポンプ2cが接続されている。シャフト6a,6b,6cは、同軸上に配置され、油圧ポンプ2a,2b,2cが直列(タンデム)接続となっている。シャフト6a,6b,6cは、電動モータ3によって同一方向に同速度で回転される。そのため、シャフト6cには油圧ポンプ2cのトルクが付加され、シャフト6bには油圧ポンプ2b,2cのトルクが付加され、シャフト6aには油圧ポンプ2a,2b,2cのトルクが付加される。
【0021】
ここで、シャフト6に加わるトルクをT、せん断応力をτ、極断面係数をZpとしたとき、τ=T/Zpで表され、dをシャフト6の直径としたとき、Zp=πd/16で表されることから、d=(16T/πτ)1/3で表される。すなわち、シャフト6の直径dは、トルクTの3乗根に比例する。また、油圧ポンプ2の出力は、トルクTと回転数との積で表される。したがって、シャフト6の直径dは、油圧ポンプ2の出力の3乗根に比例する。
【0022】
そこで、本実施の形態では、コントローラ5が、油圧ポンプ2の出力を制御することで、シャフト6に加わるトルクTを抑制することにより、シャフト6の直径dを大きくしなくて済むようにしている。
【0023】
具体的に、コントローラ5は、各油圧ポンプ2の出力を、それらの合計の上限が所定の複数よりも少ない数、例えば所定の複数より1つ少ない数の油圧ポンプ2の最大出力Pの合計出力と略等しくなるように、入力指令の大小関係に応じて割り振り制御する。本実施の形態では、コントローラ5は、3つの油圧ポンプ2の出力Pの合計の上限が2つの油圧ポンプ2の最大出力Pの合計出力(=2P)と略等しくなるように、油圧ポンプ2の出力を制御する。なお、「略等しい」とは、「等しい」を含むものとする。
【0024】
各油圧ポンプ2の出力は、油圧アクチュエータへの操作要求に基づく油圧ポンプ2毎の入力指令に応じて設定される。
【0025】
つまり、コントローラ5は、各油圧ポンプ2の出力を、それらの合計が略2P以下であれば、入力指令通りの出力に設定し、それらの合計が2Pを超えていれば、入力指令をその合計と2Pとの比率に応じて入力指令を変換した出力に設定する。
【0026】
例えば、油圧ポンプ2a,2b,2cの入力指令(%)をI1,I2,I3、P・(I1+I2+I3)/100=Sとすると、油圧ポンプ2a,2b,2cの出力P1,P2,P3は、Pi=(P・Ii/100)・{2P/max(2P,S)}=Ii・4P/100(2P+S+|2P-S|)、i=1,2,3で設定される。
【0027】
例えばすべての油圧ポンプ2a,2b,2cに100%の入力指令があった場合、コントローラ5による出力の割り振り制御をしない図2(c)に示される従来例の場合には、油圧ポンプ2aの出力、油圧ポンプ2bの出力、および、油圧ポンプ2cの出力は、それぞれPに設定され、シャフト6cに付加されるトルク(最大出力で動作する油圧ポンプ2単独により付加される最大トルク)をTとして、シャフト6aに付加されるトルクは3T、シャフト6bに付加されるトルクは2Tとなる。そのため、シャフト6cの直径(最大トルクTに耐え得る直径)をdとして、シャフト6aに必要最小直径は1.44d、シャフト6bに必要最小直径は1.26dとなる。
【0028】
それに対し、図2(a)に示される本実施の形態の例の場合には、油圧ポンプ2aの出力、油圧ポンプ2bの出力、および、油圧ポンプ2cの出力は、それぞれ0.67Pに設定され、シャフト6aに付加されるトルクは2T、シャフト6bに付加されるトルクは1.33T、シャフト6cに付加されるトルクは0.67Tとなる。そのため、シャフト6aに必要最小直径は1.26d、シャフト6bに必要最小直径は1.1d、シャフト6cに必要最小直径は0.87dとなる。
【0029】
また、例えば油圧ポンプ2b,2cに100%の入力指令があった場合、図2(b)に示されるように、油圧ポンプ2aの出力は0、油圧ポンプ2bの出力および油圧ポンプ2cの出力はそれぞれPに設定され、シャフト6a,6bに付加されるトルクはそれぞれ2T、シャフト6cに付加されるトルクはTとなる。そのため、シャフト6a,6bに必要最小直径はそれぞれ1.26d、シャフト6cに必要最小直径はdとなる。なお、この例では説明を明確にするために、油圧ポンプ2aの出力を0としているが、実際には油圧ポンプ2aが焼き付かない程度に動作をさせる必要があるため、多少の出力は生じている。
【0030】
このように、所定の複数の可変容量型の油圧ポンプ2のそれぞれの出力を、それらの合計の上限が所定の複数よりも少ない数の油圧ポンプ2の最大出力の合計出力と略等しくなるように入力指令に応じて割り振り制御することで、シャフト6に付加されるトルクを軽減でき、複数の油圧ポンプ2の用途を独立させて油圧アクチュエータを制御しやすくし、操作性を確保しながら、シャフト6の大径化を抑制できる。
【0031】
具体的に、本実施の形態によれば、3つ以上、例えば3つの油圧ポンプ2を入力指令に応じて駆動しつつ、シャフト6に付加されるトルクを2つの油圧ポンプ2の最大トルクTの合計(2T)以下に抑えられることで、シャフト6の直径を抑えることができる。したがって、3つ以上の油圧ポンプ2の用途を独立させて油圧アクチュエータを制御しやすくし、操作性を確保しながら、シャフト6の大径化を抑制できる。例えば、本実施の形態では、シャフト6cについては、付加されるトルクを最大トルクT以下とすることができ、直径をd以下とすることができ、シャフト6a,6bについても、それぞれ付加されるトルクを2T以下とすることができ、直径を1.26d以下とすることができる。
【0032】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図3に示される油圧システム1は、シャフト6が電動モータ3の両側に延出され、電動モータ3を基準として一側のシャフト6と他側のシャフト6とにそれぞれ油圧ポンプ2のいずれかが接続されている。
【0034】
図示される例では、電動モータ3の一側のシャフト6aに油圧ポンプ2aが接続され、油圧ポンプ2aに接続された一側のシャフト6bに油圧ポンプ2bが接続され、電動モータ3の他側のシャフト6cに油圧ポンプ2cが接続されている。シャフト6a,6b,6cは、同軸上に配置されている。シャフト6a,6b,6cは、電動モータ3によって同一方向に同速度で回転される。そのため、シャフト6bには油圧ポンプ2bのトルクが付加され、シャフト6aには油圧ポンプ2a,2bのトルクが付加され、シャフト6cには油圧ポンプ2cのトルクが付加される。
【0035】
そして、例えば油圧ポンプ2a,2bに100%の入力指令があった場合、図4(a)に示されるように、油圧ポンプ2aの出力、および、油圧ポンプ2bの出力はそれぞれPに設定され、油圧ポンプ2cの出力は0に設定される。シャフト2aに付加されるトルクは2T、シャフト6bに付加されるトルクはT、シャフト6cに付加されるトルクは0となる。そのため、シャフト6aに必要最小直径は1.26d、シャフト6bに必要最小直径はdとなる。なお、この例では説明を明確にするために、油圧ポンプ2cの出力を0としているが、実際には油圧ポンプ2cが焼き付かない程度に動作をさせる必要があるため、多少の出力は生じている。
【0036】
また、例えば油圧ポンプ2b,2cに100%の入力指令があった場合、図4(b)に示されるように、油圧ポンプ2aの出力は0、油圧ポンプ2bの出力および油圧ポンプ2cの出力はそれぞれPに設定され、シャフト6a,6b,6cに付加されるトルクはそれぞれTとなる。そのため、シャフト6a,6b,6cに必要最小直径はそれぞれdとなる。なお、この例では説明を明確にするために、油圧ポンプ2aの出力を0としているが、実際には油圧ポンプ2aが焼き付かない程度に動作をさせる必要があるため、多少の出力は生じている。
【0037】
このように、第2の実施の形態によれば、所定の複数の可変容量型の油圧ポンプ2のそれぞれの出力を、それらの合計の上限が所定の複数よりも少ない数の油圧ポンプ2の最大出力の合計出力と略等しくなるように入力指令に応じて割り振り制御する等、第1の実施の形態と同様に制御することで、操作性を損なうことなくシャフト6の大径化を抑制できる等、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0038】
また、電動モータ3の両側に突出するシャフト6において、電動モータ3を基準として一側のシャフト6と他側のシャフト6とにそれぞれ油圧ポンプ2のいずれかを接続することにより、電動モータ3の一側のみに油圧ポンプ2を接続する場合と比較して、一つのシャフト6当たりに付加されるトルクを軽減でき、小径化したシャフト6を使用できる箇所を増やすことができる。例えば、本実施の形態では、シャフト6b,6cについては、直列接続される油圧ポンプ2が1つであることで、それぞれ付加されるトルクを最大トルクT以下とすることができ、直径をd以下とすることができ、シャフト6a,6bについても、付加されるトルクを2T以下とすることができ、直径を1.26d以下とすることができる。
【0039】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図5に示される油圧システム1は、油圧ポンプ2のいずれかがシャフト6に対し軸継手8を介して並列に接続されている。本実施の形態では、シャフト6が電動モータ3の両側に延出され、電動モータ3を基準として一側のシャフト6と他側のシャフト6とにそれぞれ油圧ポンプ2のいずれかが接続され、少なくとも一側のシャフト6に対し、油圧ポンプ2が並列に接続されている。
【0041】
図示される例では、電動モータ3の一側のシャフト6aに油圧ポンプ2aが接続され、シャフト6aに軸継手8を介してシャフト6bが並列に接続され、シャフト6bに油圧ポンプ2bが接続され、電動モータ3の他側のシャフト6cに油圧ポンプ2cが接続されている。シャフト6a,6cは、同軸上に配置されている。シャフト6a,6b,6cは、電動モータ3によって同一方向に同速度で回転される。そのため、シャフト6bには油圧ポンプ2bのトルクが付加され、シャフト6aには油圧ポンプ2aのトルクが付加され、シャフト6cには油圧ポンプ2cのトルクが付加される。
【0042】
そして、例えば油圧ポンプ2a,2bに100%の入力指令があった場合、図6(a)に示されるように、油圧ポンプ2aの出力はP、油圧ポンプ2bの出力はP’、油圧ポンプ2cの出力は0に設定される。なお、P’は、Pから軸継手8による損失分を差し引いた出力であり、Pより小さい値である。シャフト2aに付加されるトルクはT、シャフト6bに付加されるトルクはT’(<T)、シャフト6cに付加されるトルクは0となる。そのため、シャフト6aに必要最小直径はd、シャフト6bに必要最小直径はd’(<d)となる。なお、この例では説明を明確にするために、油圧ポンプ2cの出力を0としているが、実際には油圧ポンプ2cが焼き付かない程度に動作をさせる必要があるため、多少の出力は生じている。
【0043】
また、例えば油圧ポンプ2b,2cに100%の入力指令があった場合、図6(b)に示されるように、油圧ポンプ2aの出力は0、油圧ポンプ2bの出力はP’、油圧ポンプ2cの出力はPに設定され、シャフト6bに付加されるトルクはT’、シャフト6cに付加されるトルクはTとなる。そのため、シャフト6bに必要最小直径はd’(<d)、シャフト6cに必要最小直径はdとなる。なお、この例では説明を明確にするために、油圧ポンプ2aの出力を0としているが、実際には油圧ポンプ2aが焼き付かない程度に動作をさせる必要があるため、多少の出力は生じている。
【0044】
このように、第3の実施の形態によれば、所定の複数の可変容量型の油圧ポンプ2のそれぞれの出力を、それらの合計の上限が所定の複数よりも少ない数の油圧ポンプ2の最大出力の合計出力と略等しくなるように入力指令に応じて割り振り制御する等、第1の実施の形態と同様に制御することで、操作性を損なうことなくシャフト6の大径化を抑制できる等、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
また、油圧ポンプ2をシャフト6に並列に接続することで、電動モータ3に油圧ポンプ2を直列に接続する場合と比較して、並列接続用の軸継手8による損失は多少生じるものの、一つのシャフト6当たりに付加されるトルクを軽減でき、小径化したシャフト6を使用できる箇所を増やすことができる。
【0046】
特に、電動モータ3の両側にシャフト6を延出しつつ、シャフト6に複数の油圧ポンプ2を並列に接続しているので、電動モータ3の一側のみに油圧ポンプ2を接続する場合と比較して、また、同数の油圧ポンプ2を直列に接続する場合と比較して、一つのシャフト6当たりに付加されるトルクをより軽減でき、小径化したシャフト6を使用できる箇所を増やすことができる。3つの油圧ポンプ2については、電動モータ3の一側に並列に2つ、電動モータ3の他側に1つに割り振ることで、すべてのシャフト6a,6b,6cについて、それぞれ付加されるトルクを最大トルクT以下とすることができ、直径をd以下とすることができる。
【0047】
なお、第3の実施の形態では、軸継手8により並列接続した油圧ポンプ2の減速比が1の例について説明したが、これに限らず、並列接続した油圧ポンプ2により大きなトルクが必要な場合には減速比を上げ、より高い回転数が必要な場合は減速比を下げた仕様としてもよい。つまり、並列接続する油圧ポンプ2の減速比は、トルクや回転数の必要に応じて任意に設定してよい。
【0048】
さらに、油圧ポンプ2は、電動モータ3に対して両側に延出するシャフト6に対してそれぞれ並列に接続されてもよい。
【0049】
また、シャフト6は、電動モータ3の両側に延出されるものに限らず、電動モータ3の一側に延出するものでもよい。つまり、第1の実施の形態のシャフト6aまたはシャフト6bに対し、軸継手8を介して油圧ポンプ2が並列に接続されていてもよい。
【0050】
このように、各実施の形態によれば、油圧ポンプ2のレイアウトの自由度が高く、バリエーションの追加が容易であって、軽量化および伝達効率の改善による電油システムの効率改善を図ることができるとともに、電動化による油圧システム1の様々な形態の変化に対応できる。
【0051】
なお、各実施の形態において、油圧ポンプ2は3つに限らず、4つ以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、複数の油圧ポンプを電動モータにより駆動する油圧システムおよびそれを搭載した電動ショベル等の作業機械を製造、販売する産業にとって、利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 流体圧システムである油圧システム
2 流体圧ポンプである油圧ポンプ
3 電動モータ
5 コントローラ
6 シャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6