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▶ フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェラインの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025060981
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20250403BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20250403BHJP
   A61M 5/165 20060101ALI20250403BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20250403BHJP
   A61M 5/36 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/168 520
A61M5/165 500R
A61M5/142 522
A61M5/28
A61M5/36
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025000007
(22)【出願日】2025-01-03
(62)【分割の表示】P 2022572502の分割
【原出願日】2020-05-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100134119
【弁理士】
【氏名又は名称】奥町 哲行
(72)【発明者】
【氏名】リヒター・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】タルホーファー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グリューナーベル・ローレンツ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インスリンまたは一般的な流体のような薬物を、有用性、送達される流体の精度、およびコスト効率に関して改善されたトレードオフを有する方法で投与することを可能にする薬物送達システムを提供する。
【解決手段】薬物送達システム10は、蛇行形状または螺旋形状を有するリザーバ16であって、入口16iおよびフィルタを備えるリザーバと、リザーバのパラメータを決定するように構成された静電容量測定装置14と、リザーバから出口に流体を送達するように構成されたマイクロポンプ12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達システム(10、10’、10’’)であって、
蛇行(16m)形状または螺旋形状を有する少なくとも1つのリザーバ(16)であって、入口(16i)およびフィルタ(16f)を備えるリザーバ(16)と、
前記少なくとも1つのリザーバ(16)のパラメータを決定するように構成された測定装置(14)と、
前記リザーバ(16)から出口に流体を送達するように構成された少なくとも1つのマイクロポンプ(12)と、を備え、
前記フィルタ(16f)が、前記入口(16i)に配置され、前記流体が前記リザーバ(16)から送達されるときに前記リザーバ(16)に空気が流入することを可能にするように構成される、薬物送達システム。
【請求項2】
前記リザーバ(16)が、流体または薬物によって予め充填されている、請求項1に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項3】
前記フィルタ(16f)が、直列に配置された疎水性フィルタ(16f)もしくは活性炭フィルタ(16f)もしくは疎水性フィルタ(16f)および活性炭フィルタ(16f)、またはウイルスおよび/もしくは細菌を濾過するように構成された別のフィルタもしくはフィルタの組み合わせを備える、請求項1または2に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項4】
前記入口(16i)がシール(16s)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項5】
前記リザーバ(16)のハウジングが、ガラスもしくはポリマーによって形成され、および/または
前記蛇行(16m)形状もしくは螺旋形状が、前記入口(16i)から前記マイクロポンプ(12)のための開口部まで延在するトラックを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項6】
前記測定装置(14)が、静電容量測定装置(14として実装され、ならびに/または、前記リザーバ(16)および/もしくは前記リザーバ(16)内の流体が誘電体として作用する前記リザーバ(16)の側面に配置された1つの電極、もしくは前記リザーバ(16)および/もしくは前記リザーバ(16)内の流体が誘電体として作用する前記リザーバ(16)を間に挟んで配置された2つの電極(14a、14b)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項7】
前記2つの電極(14a、14b)のそれぞれが、2つ以上の部分に分離される、または、前記2つの電極(14a、14b)のそれぞれが、流体レベルを検出するためもしくは外乱を決定するための分解能を高めるために、2つ以上の部分に分離される、請求項6に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項8】
前記静電容量測定装置(14)が、誘電率および/または静電容量を決定するように構成され、前記誘電率および/または前記静電容量が、前記リザーバ(16)の流体レベルに依存する、請求項6または7に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項9】
前記静電容量測定装置(14)によって決定された静電容量信号に基づいて前記流体レベルを決定するように構成された制御装置をさらに備える、請求項6から8のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項10】
前記静電容量測定装置(14)によって決定された静電容量信号または前記静電容量信号の変化に基づいて、前記マイクロポンプ(12)の動作中のストローク容積を決定するように構成された制御装置をさらに備える、または、
単一のストロークもしくは複数のストロークの使用によって流体を送達するマイクロポンプの動作中に前記静電容量測定装置(14)によって決定された静電容量信号または静電容量信号の変化に基づいてストローク容積を決定するように構成された制御装置をさらに備える、請求項6から9のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項11】
前記リザーバ(16)内の外乱もしくは前記マイクロポンプ(12)の外乱もしくは前記薬物送達システム(10、10’、10’’)の外乱を決定するか、または開放入口(16i)を検出するか、またはニードル(12n)もしくはチューブの部分的な閉鎖もしくは閉鎖を決定し、前記リザーバ(16)内の空気もしくは粒子を決定するか、または前記リザーバ(16)の漏れもしくは前記リザーバからの蒸発を決定するか、または逆流を決定するように構成された制御装置をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項12】
前記静電容量測定装置(14)が、前記薬物送達システム(10、10’、10’’)が前記皮膚に正しく取り付けられているかどうかを認識するために、前記皮膚に取り付け可能な第3の電極(14a、14b)を備える、ならびに/または、
前記静電容量測定装置(14)の前記電極が、薬物と気泡とを区別するために、前記マイクロポンプ(12)の前および/もしくは後に配置された少なくとも2つの部分を備える、請求項6から11のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項13】
別の流体を第2のリザーバ(16)から出口に送達するために、前記第2のリザーバ(16)または第2のマイクロポンプ(12)と組み合わせた前記第2のリザーバ(16)を備え、
別の流体を第2のリザーバ(16)から出口に送達するために、蛇行螺旋とともにまたは前記蛇行螺旋に隣接してさらなる蛇行または螺旋として形成する前記第2のリザーバ(16)を備える、薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項14】
ニードル(12n)、カテーテルまたはチューブが前記出口に取り付けられている、請求項1から13のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。
【請求項15】
それ自体のカテーテルを介して、もしくは前記薬物送達システム(10、10’、10’’)のニードル(12n)、カテーテルもしくはチューブを介して体液に接触するセンサもしくはグルコースセンサをさらに備える、または、
制御装置と組み合わせて、それ自体のカテーテルを介して、もしくは前記薬物送達システム(10、10’、10’’)のニードル(12n)、カテーテル、もしくはチューブを介して体液に接触するセンサもしくはグルコースセンサをさらに備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の薬物送達システム(10、10’、10’’)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬物送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の少量の薬物または薬剤が体内に送達されることを必要とする多くの医療用途があり、例えば、
・血糖値を健康なレベルに保つためにインスリンを必要とする糖尿病患者
・ホルモン療法
・疼痛治療
・パーキンソン病の治療
・未熟児に対する注入
・核医学(核マーカーの投与)
・しかしながら、異なる癌疾患、関節炎、リウマチ、多発性硬化症、アルツハイマー、メグリムなどの治療のためのモノクローナル抗体の投与のような新たな治療法もある。
【0003】
これらの用途のほとんどは皮下薬物送達であり、それらの一部は静脈内注入である。
薬物送達システムの文脈で言及されているいくつかの特許/特許出願がある:これらは、静電容量測定による流体レベルの測定を伴う流体リザーバを説明する欧州特許第1320727号明細書、安全弁を説明する米国特許第8,382,452号明細書、および曲げトランスデューサを説明する国際公開第2011/107162号パンフレットである。
【0004】
以下、例えば糖尿病の治療の状況における一般的な先行技術を考察する。インスリンを皮下で行ういくつかの可能性がある:
1.シリンジまたはペン:患者は1日に数回皮膚を損傷しなければならない
2.テザリングポンプ:90年初期から市販されている可搬式ポンプ。ポンプは体内のバッグ内にあり、インスリンはカテーテルによって体内に送達される。インスリンガラスリザーバは空であれば交換されることができ、ポンプの残りは再使用可能である。市場のリーダーは、Metronicである。
【0005】
3.パッチポンプ:約10年間市販されており、ポンプシステム全体は3日間の使用のために使い捨てであり、パッチのように身体に取り付けられることができる。市場のリーダーは、Omnipodポンプによるインスリンである。
ポンプシステムの使用は、ペン技術と比較していくつかの利点を有する:
・皮膚へのピンホールがはるかに少なく、患者への痛みが少ない
・インスリンの送達を制御し、患者の特定のニーズに適合させることができる
・ポンプシステムは、グルコースレベルを連続的に監視しているグルコースセンサシステムに接続されることができる。これにより、グルコースレベルの閉ループ制御が達成されることができる。
・インスリン以外にも、グルコースレベルを増加させるための他の薬剤がポンプシステムによって送達されることができる。
多くの利点があるが、欠点もある:
・ポンプの使用は、特に夏場には、他人から隠蔽されることができない。
これは、患者を汚す可能性があり、何らかの社会的影響を及ぼすことがある。
・パッチポンプの使用には利点があるが、ペンの使用は、欧州において患者を治療するための最新技術であり、糖尿病患者の標準的な治療法である。その理由は、主に、パッチポンプのコストがペン技術と比較してはるかに高いためである。
【0006】
一方では小型化され、正確で安全であり、他方では大量生産においてコスト効率が高い可能性を有するパッチポンプが利用可能であれば、それは糖尿病の標準的な治療法である可能性が高い。しかしながら、その目標を達成するにはいくつかの課題がある。
【0007】
糖尿病のためのシリコンMEMSポンプの使用は、有望なアプローチと考えることができる。しかしながら、Debiotech(CH)は、このアプローチ(インスリン送達のためにシリコンMEMSポンプを使用する)に約25年以来継続的に注目しており、これまで市場のブレークスルーはなかった。
【0008】
現在のパッチポンプでは、サイズの制限は、一方ではポンプシステム(ピストンポンプ技術)によって、他方ではリザーバの容積によって与えられる。したがって、改善された手法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1320727号明細書
【特許文献2】米国特許第8,382,452号明細書
【特許文献3】国際公開第2011/107162号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、インスリンまたは一般的な流体のような薬物を、有用性、送達される流体の精度、およびコスト効率に関して改善されたトレードオフを有する方法で投与することを可能にする薬物送達システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。
【0012】
実施形態は、入口およびフィルタを有するリザーバを備える薬物送達システムを提供する。リザーバは、例えば、薬物/流体によって予め充填されることができる。システムは、測定装置、例えば、静電容量測定装置、およびマイクロポンプをさらに備える。リザーバは、蛇行形状または螺旋形状を有することが好ましい。マイクロポンプは、リザーバから出口に薬物などの流体を送達するように構成される。フィルタは、入口に配置され、流体がリザーバから送達されるときに空気がリザーバに流入することを可能にするように構成される。
【0013】
本発明の実施形態は、リザーバ、例えば蛇行形状を有するリザーバを、その改善された制御を可能にする静電容量測定装置に結合することができるという知見に基づいている。マイクロポンプに完全に適合し、十分な分解能で1回のポンプストロークを検出することを可能にする容量性投与監視方法の組み合わせは、薬物を有意に送達することによって精度を改善する。換言すれば、これは、先行技術と比較した場合に、2つの主な革新、すなわち投与監視およびマイクロポンプ設計が違いをもたらすことを意味する。
【0014】
実施形態によれば、新規のマイクロポンプ技術と新規で正確且つコスト効率の高い投薬監視技術との組み合わせが提供される。投与監視技術は、例えば、25nlの単一のポンプストロークごとに解決することができるだけでなく、カテーテル閉塞、気泡認識、ポンプ故障、リザーバ破損、リザーバの流体レベル検出などの安全性および信頼性のトピックに対処することもできる。
【0015】
実施形態によれば、優れたマイクロポンプ設計は、より高い圧縮比、より小さいストローク容積、より小さいチップサイズ、より良好な気泡耐性、より小さい毛細管付着、より小さいファンデルワールス付着、および統合された自由流動停止を可能にする。
【0016】
マイクロアクチュエータのストローク容積は通常小さく、ポンプチャンバの死容積は大きいため、圧電駆動のマイクロポンプの圧縮比(ストローク容積と死容積との比に相当)も小さい。1つのハードルは、負の電圧ストロークがピエゾの脱分極によって制限されるため、ストロークの80%が正の電圧によって「下向きに」実行されるというピエゾ物理学の性質である。そのため、「従来の」圧電駆動マイクロポンプでは、大きな死容積とそれに伴う小さな圧縮比が残っている。マイクロポンプ性能の大きなステップは、Fraunhoferマイクロポンプチームによって達成されており、ここではピエゾ効果がシリコンチップへの接着ステップ中に使用され、配置後、硬化中に高電圧がピエゾに印加され、接着剤が硬くなった後に解放され、その結果、電圧が解放される場合、ピエゾには、定義された方法で「上向き」に予張力がかけられる。その結果、ポンプチャンバ高さは非常に小さい値に減少し、死容積の大幅な減少は、非常に大きい圧縮比、または非常に小さいチップサイズへの小型化のいずれかを有するマイクロポンプを可能にする。
【0017】
非常に正確で小さなストローク容積のために、薬物送達システムは、別の利点から利益を得る:市販されている標準インスリンは、U100(すなわち、1ミリリットル中100ユニットを意味する)であり、これはほとんどのパッチポンプでも使用されている。3mlのU100インスリンは約3日間のために十分である。U100の濃度が低いと、パッチポンプのサイズも制限される。現在、例えば、U400、U500、またはU1000のような、有効または開発中のより高濃度のインスリンも存在する。U100と比較して10倍高い濃度を有するU1000インスリン(1ml中1000ユニット)の場合、薬物容積が10倍減少されることができる。U1000の0.3mlリザーバ容積は、3日間のために十分であり、1mlリザーバは、患者に10日間送達することができる。
【0018】
例えば、例えば25ナノリットルの各ポンプストロークが検出または監視されることができる。リザーバ技術と高濃度の薬物、例えば高濃度のインスリンからのマイクロポンプとの組み合わせにより、リザーバの容積が減少されることができるように使用されることができる。その背景は、マイクロポンプシステムの導入が、(U1000の1インスリンユニットの約1/40未満である)典型的な20または25ナノリットルよりも小さい容積を送達することを可能にするということである。さらにまた、マイクロポンプシステムは非常に小さいため、サイズ(特にパッチポンプの厚さ)に大きく寄与しない。したがって、薬物送達システム全体は、非常に小さく超平坦に設計されることができる。薬物送達システムは、入口を有するリザーバ、静電容量測定装置、およびマイクロポンプから構成されることができるため、僅かな部品から構成され、その結果、複雑さおよび予想される製造コストが低い。
【0019】
実施形態によれば、薬物送達システムは、マイクロポンプに取り付けられたニードルを備えることができる。パッチポンプシステムに対するニードルの組み合わせの利点は、ニードルがマイクロポンプに非常に近いことであり、これは弾性要素を有さず、したがって、小さな投与量でチューブに生じる問題を回避する。実施形態によれば、マイクロポンプは、蛇行形状のリザーバの端部または螺旋形状のリザーバの中央に配置されることができ、薬物送達システム全体の非常にコンパクトな設計を可能にする。
【0020】
実施形態によれば、リザーバは、例えば高濃度インスリンによって予め充填されることができる。交換可能なリザーバまたは完全に交換可能な薬物投与システムは、非常にコスト効率よく設計されることができる。流体容積を開始するために螺旋形状または蛇行形状を使用することは、蛇行トラックまたは螺旋トラックの一端からリザーバ全体を充填することを可能にする。流体の送達中にリザーバが空になり、流体が空気と交換されることを考慮すると、蛇行/螺旋形状は、入口のごく一部が空気と接触することを可能にし、その結果、流体は空気接触によって汚染されない。入口を使用することにより、負圧が発生しないことが有利に可能である。さらにまた、リザーバ/薬物送達システムが交換されることを保証するとき、例えば液体の90%が送達されるとき、空気と接触していた非常に小さな部分は患者に送達されない。静電容量測定装置は、有益には、リザーバ内の流体レベルを監視することを可能にする。実施形態によれば、リザーバは、静電容量測定装置によって流体レベルを監視することを可能にするガラスまたはポリマーから作製されてもよいことに留意されたい。
【0021】
実施形態によれば、フィルタは、入口に配置され、流体がリザーバから送達されるときに空気がリザーバに流入することを可能にするように構成される。実施形態によれば、フィルタは、疎水性フィルタ(液体の侵入を回避する液体フィルタ(例えば、シャワー中)または活性炭フィルタ(ガスフィルタ+最近フィルタ)または直列に配置された疎水性フィルタおよび活性炭フィルタを備える。また、他のフィルタタイプまたは他のフィルタタイプの組み合わせ(例えば、2つまたは3つ以上の障壁を有する)も可能である。例えば、フィルタとして、理想的には非常に小さい(0.2μm)孔径を有する受動膜またはメッシュが使用されて、到来空気の滅菌濾過を確実にすることができる。さらに、フィルタは、流入ガス中の不純物をさらに除去するために活性炭などの材料を含むことができる。フィルタは、リザーバに収容された薬物と接触していてもよく、したがって、少なくとも最も内側のフィルタについて、この薬物と適合性でなければならない。また、3つのフィルタ、例えば、外側の疎水性フィルタ、内側の細菌フィルタおよび中央のガスフィルタの組み合わせも可能である。内側フィルタは、流体と接触していてもよく、流体と他のフィルタとの接触を回避してもよい。フィルタの使用は、リザーバの入口を通って侵入する汚染空気からリザーバ内の流体を保護することを可能にするため、有利である。入口を有するリザーバを有する記載されたシステムは一般的ではないことに留意されたい。実施形態によれば、入口は、ポンプが身体に取り付けられて初めて使用される前に、入口を閉じることを可能にするシールを備えることができる。1つ以上のフィルタは、例えば流体からの細菌またはウイルスによる汚染を回避することを可能にする。任意のシールは、手動で(例えば、最初の使用のために)開かれることができる別の変形形態を提供することができる。実施形態によれば、静電容量測定装置は、入口の状態(開または閉)を決定することを可能にする。なお、フィルタは、外圧(例えば、潜水中)を維持するように設計されていてもよい。
【0022】
実施形態によれば、測定装置は、誘電率および/または容量を決定するように構成された容量測定装置とすることができる。誘電率および/または容量は、例えば、リザーバの流体レベルに依存する。実施形態によれば、システムは、静電容量測定装置によって決定された静電容量信号(静電容量信号の変化)に基づいて流体レベルを決定するように構成された制御装置を備える。
【0023】
蛇行形状のリザーバ内のメニスカスレベルを検出する別の可能性は、光学センサまたは抵抗または磁気測定とすることができる。したがって、測定装置は、光学的手段の使用によって埋め込まれてもよい。しかしながら、静電容量測定は、最も正確でコスト効率の高い方法である。
【0024】
実施形態によれば、システムは、静電容量測定装置によって決定された静電容量信号に基づいて、またはリザーバの流体レベルの変化に基づいて、マイクロポンプの動作(1回または複数回のストロークを使用した圧送)中のストローク容積を決定するように構成された制御装置を備え、前記流体レベルは、静電容量信号を使用して監視可能である。
【0025】
実施形態によれば、システムは、リザーバ内の障害、例えば、侵入の検出、またはマイクロポンプの障害もしくは薬物送達システムの障害、例えば、ニードルの転位、カテーテル閉塞を決定するか、または開いた入口を検出するように構成された制御装置を備える。
【0026】
実施形態によれば、静電容量測定装置は、薬物送達システムが(皮膚に)正しく取り付けられているかどうかを認識するために、例えば、皮膚に取り付け可能な第3の電極を備える。あるいは、静電容量測定装置は、薬物と気泡/空気/粒子と流体または空のリザーバとを区別するために、マイクロポンプの前および/または後ろに配置されることができる2つ以上の部分を有する電極をさらに備える。したがって、実施形態によれば、2つの電極のそれぞれは、2つ以上の部分に分離される。
【0027】
実施形態によれば、ストローク容積は、ポンプの動作中(1つ以上のポンプストローク中)の流体変化を決定することによって検出される。ポンプを動作させずに容積が変化/減少する場合、リザーバ(16)の漏れまたはリザーバからの蒸発があると結論付けることができる。容積が増加する場合、(身体からリザーバへの)逆流(reflow)があると結論付けることができる。
【0028】
したがって、流体レベル、ストローク容積または外乱を監視することを可能にする静電容量測定装置を使用することが有益である。換言すれば、これは、静電容量測定装置が薬物送達システムのための多機能測定装置を提供し、コスト効率の高い方法で製造されることができることを意味する。
【0029】
本発明の任意の詳細は、従属請求項によって提供される。
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】基本的な実施形態にかかる薬物送達システムの概略ブロック図を示している。
図2】拡張された実施形態にかかる薬物送達システムの概略断面図を示している。
図3】実施形態にかかる静電容量信号と流体レベルとの間の依存性を説明するための概略図を示している。
図4a】実施形態にかかる静電容量測定装置の原理をより詳細に説明するための薬物送達システムの概略断面図を示している。
図4b】実施形態にかかる静電容量測定装置の原理をより詳細に説明するための薬物送達システムの概略断面図を示している。
図5a】さらなる拡張された実施形態にかかる薬物送達システムの概略図を示している。
図5b】さらなる拡張された実施形態にかかる薬物送達システムの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を以下に説明するが、同一または類似の機能を有するオブジェクトには同一の参照符号が付されており、そのため、その説明は交換可能であり、相互に適用可能である。
【0032】
本発明の実施形態を論じる前に、多量の低濃度薬物の代わりに少量の高濃度薬物を使用する可能性を提供する、直接濃度に対する追記が与えられる。追記は、インスリンに関連して論じられているが、他の薬物/流体にも有効である。低減したリザーバの容積は、薬物送達システムのサイズを小さくすることができるため、この追記が与えられる。しかしながら、高濃縮容積の使用はまた、流体/薬物を非常に小さいおよび/または正確な容積で送達するための基本的な必要性に流体/薬物を低下させるときに容積ストロークを正確に監視する必要性をもたらす。
【0033】
現在のパッチポンプでは、サイズ制限は、一方ではポンプシステム(ピストンポンプ技術)によって与えられ、他方ではリザーバの容積によって与えられる。
インスリンの標準濃度はU100である。すなわち、100ユニットは1ミリリットル以内である。約3日間のパッチポンプの治療には、3ミリリットルのU100インスリンのリザーバが必要である。さらにまた、利用可能または開発中の高濃度インスリンタイプがある(U500またはU1000まで)。U1000の3mlリザーバは、30日間の治療に十分であり、U1000の1mlリザーバは、10日間の治療に十分である。
【0034】
それにより、高濃度インスリンおよび極めて小型化されたポンプを有するパッチポンプは、患者にとって非常に有利であるが、いくつかの課題がある。
U1000インスリンは、1インスリンユニットに対して1μl(1/1000mlにしたがって、1mmにしたがって)の容積を有する。しかしながら、U1000インスリンの使用は、25ナノリットルの容積分解能を意味する、1ユニットの約1/40の例示的な分解能を有するポンプシステムを必要とする。使い捨てパッチポンプに組み込まれるのに十分にコスト効率的である現在のピストンポンプは、25ナノリットル(1mmの1/40)の容積分解能を有することがほとんどできない。
【0035】
次に、ポンプシステムが25ナノリットルの容積を投与することができる場合、この容積が投与されることを制御するために利用可能な投与監視技術はない。
次に、チューブの弱い構成要素の流体静電容量またはポンプと患者との間の小さな気泡の存在が、そのような小さな容積がポンプによって投与される場合、大きな投与誤差を生成する可能性があるため、テザリングポンプとニードルとの間の数センチメートルの長いチューブの長さは、追加の投与誤差を発生させる。
【0036】
結論は、流体/薬物を小容量で送達し、それを正確に監視することが可能な場合、高濃度の薬物/容量が使用されてリザーバの容積を減少させることが可能であるということである。図1に関して説明するように、薬物送達システム10のマイクロポンプ12および薬物送達ステム10の静電容量測定装置14は、それぞれの基礎を提供する。
【0037】
図1は、リザーバ16およびマイクロポンプ12を備える薬物送達システム10を示している。リザーバ16内には、マイクロポンプ12の使用によって分配されることができる流体、例えばインスリン(図示せず)が貯蔵されることができる。このために、マイクロポンプ12は、その出口に任意のニードル12nを備えることができる。リザーバ16内で、流体は、蛇行部16m内に貯蔵される。この蛇行部16mは、リザーバ16の入口16iからマイクロポンプ12まで延在する。
【0038】
薬物送達システム10は、静電容量測定装置14をさらに備える。ここで、この装置14は、2つの電極14a、14bによって形成される。電極14aは、(平坦な)リザーバ16の上側(第1の主面)に配置され、電極14bは、リザーバ16の下側(第1の主面の反対側の第2の主面)に配置される。この配置により、リザーバ16は、静電容量14a+14bの誘電体を形成する。誘電定数、したがってコンデンサ14a+14bの静電容量は、リザーバ16内の流体または蛇行部16mに依存する。したがって、この原理は、蛇行部16m内の流体レベルを決定することを可能にする。別の可能性は、流体レベルの変化、したがって薬物を送達するマイクロポンプ12のストロークが、静電容量測定装置14を使用することによって監視されることができるということである。蛇行部16mによる細長いリザーバ容積は、リザーバ16の主面に沿って延在する大きな領域を形成する。この領域(電極14aと電極14bとの間)の面積、特に材料特性は、コンデンサの誘電率、したがって電極14aと電極14bによって形成される静電容量に大きな影響を及ぼす。比誘電率および静電容量は、それぞれ、蛇行部16m内の流体の存在/量に依存する。この構成は、流体レベル変化による静電容量変化を極めて良好に解消することを可能にする。例えば、この構成は、例えば1マイクロリットル以下のストロークによる容積変化を決定することを可能にする。さらにまた、実施形態によれば、例えば、侵入およびニードルの転位を検出するために、追加の外乱検出機構が使用されることができる。例えば、ニードルの接続解除は、より少ないバッグ圧力、したがってより少ないストロークをもたらすことができ、これは上述した静電容量システム14によって監視されることができる。
【0039】
上述したように、蛇行部16mは、入口16iからマイクロポンプ12まで延在する。入口16iは、流体がその中に貯蔵される蛇行部に流入することを可能にする目的を有する。さらにまた、流体を送達する際に、例えばマイクロポンプ12の使用によってリザーバ16から流体が取り出されると、空気が蛇行部16m内に増加することを可能にする。細菌またはウイルスの侵入を回避するために、入口16iにフィルタが配置されることができる。フィルタは、小さい孔径を有することができる。実施形態によれば、フィルタは、疎水性フィルタまたは活性炭フィルタとすることができる。さらなる実施形態によれば、例えば疎水性フィルタと活性炭フィルタとの2つのフィルタの組み合わせが使用されることができる。これら2つのフィルタは、直列に配置されることができる。もちろん、さらなる実施形態によれば、細菌またはウイルスを濾過するように構成された他のフィルタタイプが使用されることができることが可能である。フィルタへの付加として、入口にシールが設けられることができる。このようなシールは、細菌またはウイルスの侵入を防止する。しかしながら、それはまた、例えばリザーバ16からの流体がマイクロポンプ12の使用によって分配されるべきときに空気の吸入を防止する。
【0040】
さらなる実施形態によれば、静電容量測定装置は、リザーバに取り付けられたただ1つの電極を備えてもよく、例えば、誘電率(変化)を決定するために皮膚が対向電極として使用される。
【0041】
以下、図2を参照して、実施形態にかかる任意の特徴について説明する。
図2は、例えば糖尿病用パッチポンプとして使用される薬物送達システム10’を示している。システムは、リザーバ16、マイクロポンプ12、ならびに電極部分14a1、14a2および14a3、ならびに14b1、14b2および14b3を備える。これらの電極部分14a1から14b3は、静電容量測定装置14を形成する。
入口16iには、シール16sおよびフィルタ16fが配置されている。ここでは、例えば、孔径0.1μmの疎水性フィルタが実装される。
【0042】
ポンプ12の出口には、薬物出口を可能にするニードル12nが配置されている。このニードル12nは、パッチ16+12に取り付けられるように向けられている。以下、マイクロポンプの機能について説明する。マイクロポンプは、30kPaよりも大きいエアバッグ圧力を発生させるシリコーンマイクロポンプ(3.5×3.5mm2)とすることができる。このために、ポンプ12は、圧電アクチュエータ12pを使用して作動されるポンプチャンバ12cを備える。出口には、いわゆる安全弁12vが配置されることができる。もちろん、例えば入口および出口にさらなる弁が配置されることが可能である。ポンプ12全体は、シリコーンガスケット12gによって隠されたクランプカバー12ccによって覆われている。このポンプ要素12は、リザーバ16の上面に配置されてもよい。
【0043】
リザーバ16は、ガラスから製造されてもよく、すなわち、底部ガラス16bgおよび上部ガラス16tgを含む。側面において、リザーバ16は、ガラス要素16sgによって閉じられることができる。ガラスの使用は、静電容量測定装置14に大きな影響を与えないために好ましい。あるいは、プラスチックまたは別の非導電性材料が使用されてもよい。上部ガラス16tg上に、ポンプ12が配置されることができ、シリコーンガスケット12gは、2つの要素16および12を接続する。ニードル12nは、ガラス側面要素16sgを使用することによって固定されることができる。
【0044】
実施形態によれば、要素16sおよび16fを有する入口16iは、リザーバ16の一方に配置されてもよく、一方でポンプおよびニードル12nが他方に配置されてもよいことに留意されたい。これは、リザーバ16内で長いトレックを有することを可能にし、例えばこのトレックは蛇行した形状を有し、特に、リザーバ16内の流体レベルは、静電容量測定装置14を使用することによって監視されることができる。ここで、この実施形態では、静電容量測定装置は、シールチェックのために3周期の電極の第1の対14a1および14b1を備える。主電極14a1および14b2は、流体レベル監視用であり、第3の対14a3および14b3は、流体レベル検出用である。
【0045】
薬物送達システム10’の構造が論じられており、システム10’の機能原理および構成要素が論じられる。
マイクロポンプ12が作動されて(例えば20ナノリットルの)単一のストローク容積を形成する場合、メニスカスは前方に移動しており、最後にインスリンは、空気によって置き換えられる(入口16iを参照)。インスリンの誘電率が空気よりもはるかに大きいため、静電容量は減少する。この静電容量の減少は、電子機器(図示せず)によって正確に検出されることができる。この依存性が図3に示されている。
【0046】
図3は、蛇行位置xにプロットした静電容量c(x)を示す図を示している。ここでは、2つの位置xfullyおよびxemtyがcfullyおよびcemptyとともに示されている。拡大図によって分かるように、小さな図では実質的に線形の依存関係を有する曲線は、階段を含む。これらの階段は、単一のポンプステップから生じる。図4a、図4bを参照すると、補正位置の検出の背景が示されている。
【0047】
図4aは、身体20に取り付けられたシステム10’を示している。見て分かるように、ニードル12nは、身体20内に延在する。図4aは、ストローク前のリザーバ16内の流体レベル(およびシールレベル15)を示し、図4bは、ストローク後の流体レベル15’を示している。
【0048】
ストローク容積dvは、身体20内に送達されるインスリンにしたがう。図4bによって分かるように、ストローク容積dvは、2つの位置、すなわち身体20に送達されるインスリンとしてのニードル12n、およびリザーバ16内の欠落インスリンレベルとしての入口16iの隣にマークされる。リザーバ16内のストローク容積dvとしてマークされたこの部分、ならびに流体15’を有する部分は、電極14および14b2を使用して監視されている。上述したように、インスリンは、空気と比較した場合、異なる誘電率を有する。リザーバ16内のストローク容積dvによって示される部分において空気がインスリンを置き換えるという事実のために、静電容量は変化している。この静電容量変化dcがマーキングされる。この静電容量変化により、静電容量測定装置14を使用して蛇行位置が決定されることができる。
【0049】
空気入口16iは、後述するように薬物15/15’を保護する。
メニスカスは、入口におけるこの移動によって負圧が発生しない場合にのみ、外乱なしで移動することができる。その原理は、蛇行の入口において周囲空気に接続する必要がある。蛇行の端部において、薬物は周囲空気と接触する。薬物は、細菌、ウイルス、毒分子などのような種類の望ましくない物質によって汚染される可能性がある。その汚染を回避するために、以下の戦略が選択される:
・小さな孔径(例えば、0、2μm)を有する疎水性フィルタ16fが入口を保護する。これらの種類のフィルタは、小さな孔径のために、フィルタを通して液体を加圧するために10バールを超える圧力が必要とされる高い気泡ポイントを有する。そのために、細菌またはウイルスではない液体は、いずれも入口に入ることができない。
・さらに、活性炭フィルタ16fが疎水性フィルタと直列に配置され、炭化水素のような望ましくないガス状分子が入口に入り、蛇行の端部において薬物と接触することを回避する。
・蛇行形状の薬物リザーバ16は、薬物によって予め充填されている。入口16iは、小さな孔径を有するフィルタおよび活性炭16fによって保護されるだけでなく、入口の気密閉鎖であるシールによっても保護される。したがって、フィルタは、通常、充填後に取り付けられる。
【0050】
〇そのために、患者がパッチポンプを使用する前に、薬物は、周囲から、さらには空気からシールされる。患者がパッチポンプを使用している場合、患者はシールを取り外す。その(シール取り外し)時間から開始して、蛇行の端部は、環境との圧力接触を有し、マイクロポンプが圧送されている場合、移動することができる。
〇安全上の理由から、システム制御は、シールが取り外されたかどうかを検出することができる(例えば、静電容量センサによっても、静電容量が変化した場合、シールが取り外されるとき)。
【0051】
望ましくないガス状分子が全てのフィルタ16fを通過して薬物15と接触することができたとしても、(チャネルの断面およびリザーバ内の所望の全薬物容積に応じて)約100ミリメートルの長さを有する蛇行の端部において解決されることを述べなければならない。その分子の拡散時間は、パッチポンプの使用時間(約7日間)と比較して非常に長い。次に、このリスクをさらに低減するために、パッチポンプは、薬物の80...90%のみを使用すべきであり、何らかの汚染の可能性がある蛇行の端部は決して患者に投与されない。
【0052】
実施形態によれば、トラックの断面は、0、5mmから3mmの範囲、好ましくは1または2mmである。選択される値は、流体の特性に依存し、タックの断面が小さいほど、流体レベルのより正確な決定を可能にする。背景は、流体変化が蛇行トラックに沿って大きなストロークをもたらすということである。流体とトラックとの間の摩擦は、チャネル断面に依存することに留意されたい。
【0053】
リザーバ16内の蛇行部16mに関して、その形状は重要ではないことに留意されたい。トラックは、実質的に正方形または円形を有することができ、または入口16iから出口12mまで先細になることもできる。また、蛇行の代わりに、螺旋形状が使用されることもできる。ここで、いわゆる「LifeCoin」パッチポンプが見出されることができる。蛇行の代わりに螺旋を使用し、ポンプ12を螺旋の中央に配置するように少し変更するだけで、LifeCoinが形成されることができる。
【0054】
LifeCoinは、インスリンによって予め充填されており、蛇行螺旋は、クラスまたはプラスチックから作られる。空気入口およびニードル出口は、コインを身体に取り付ける前に患者によって取り外される気密シールによって覆われている。
【0055】
LifeCoinならびに蛇行形状の薬物送達システム10’は、好ましくは、特別な電極設計、ここでは例えば、システムの制御および監視を可能にする3つの電極部分の前に静電容量測定装置を備える。例えば、図4aおよび図4bに関して説明したように、信号ストロークの分解能を可能にするように設計が形成されることができる。さらにまた、実施形態によれば、追加のシステム制御要素、例えば、ポンプ12/12pの作動、投与制御および/または調整のためのコントローラが統合されることができる。さらにまた、好ましくは、パッチポンプは、上記の実施形態には示されていないバッテリを備える。グルコースセンサのような追加のセンサは、任意に、ニードル12aにまたはニードル12a内にまたはニードル12aの後ろに一体化されてもよい。これは、閉ループ人工膵臓とグルコースセンサとの接続を可能にする。
【0056】
その場合(グルコースセンサがニードル12aにおいて調整される場合、マイクロポンプによるインスリン投与速度を調整することによってグルコースレベルを制御するために、配線のないデータ伝送(例えば、Bluetooth)は必要とされない。システム制御は、インスリンの圧送速度を監視し、ポンプの障害を検出するだけでなく、適切な制御アルゴリズムによって血液血糖値を調整することもできる。
【0057】
システム全体は、非常にコンパクトで、平坦で、小さく、血糖値を制御するために独立して動作している。その場合、作動中の薬物送達システムの状態を患者に知らせて示すための小さなディスプレイおよび/またはアラーム信号の可能性(音響、光学)のみが存在する。したがって、独立した動作は、(多くのエネルギーを必要とし、装着時間を短縮し、または大きなバッテリを必要とする)配線のないデータ送信ユニットなしで構成されることができる。
【0058】
システムは、少量のエネルギーによって動作できることに留意されたい。ここで、マイクロポンプのエネルギー要件についての短い考慮事項は以下である:20nlストローク容積のシリコンマイクロポンプを有する3.5×3.5mmの静電容量は、約C=1.5nFであり、電圧レベル(ピークは100Vである)である。1mlのリザーバを送達するために、1000000nlにしたがって、リザーバを空にするためにN=50000ポンプストロークが必要である。電圧を生成するための電子機器の効率は、ちょうどη=30%(提案されている平坦バッテリの電圧が小さいため、効率が低い)であると仮定される。
【0059】
以下では、エネルギー量が例示的に計算される:例えば、マイクロポンプが必要とする全体的なエネルギーは、E=N/η*1/2C Uとすることができる。したがって、ポンプに必要なこの総エネルギーは、E=2.5ジュールになる。
【0060】
比較のために、市販のボタン電池は、約1.5Vから2Vの典型的な寿命末期電圧および約5mAhから始まる静電容量を有する。ボタン電池のエネルギー発生器750は、D5.7mm×1mmのサイズであり、最大36Jのエネルギーを蓄積することができる。(これらのバッテリの低い連続放電電流(通常、約1mA)がコンデンサに貯蔵されることができ、コンデンサは、ポンプ/センサ作動中にのみ電子機器に電力を供給するために使用される)。また、平坦なリチウム電池、例えば、1×12×12mmのサイズ、3.6Vの電圧定格および10mAh(=130mJ)の静電容量を有するGEB201212Cバッテリが使用されることができる。
【0061】
薬物送達システムは、はほぼ全時間にわたって「スリープモード」であるべきであり、所望の量のインスリンが圧送されなければならない間にウェイクアップされるだけであることに留意されたい。これは、バッテリの長寿命化を可能にする。
さらなる実施形態によれば、インスリンの代わりに他の薬物、例えばホルモン、モノクローナル抗体または鎮痛薬が送達されることができる。
さらなる実施形態によれば、リザーバ16とともにポンプ12の設計は、自由流停止としての流れ制限または自由流停止を有してもよい。このために、安全弁12vが重要であり得る。さらに、シールは、貯蔵中に装置を保護する。
【0062】
以下、パッチポンプ10’の追加の特徴および特に利点について説明する。実施形態によれば、このパッチポンプは、一方では従来技術と比較してはるかに小さい。それは非常に小さく、他の誰からも認識されることなくシャツの向こうに配置されることができる。パッチポンプは、投与が非常に正確であることに留意されたい。全てのポンプストローク(例えば20ナノリットルの3.5×3.5×0.6mmシリコンマイクロポンプ)は、電子機器によって解決されることができる。そのため、正確なシングルストローク監視さえも可能である。例えば、パッチポンプは、患者に必要な任意のボーラスを実行することができ、完全にプログラム可能である。
【0063】
実施形態によれば、パッチポンプは、インスリンの充填状態を正確に知っており、次の交換までの残りのインスリンについて正確にユーザに伝えることができる。サイズが小さいため、患者が1つの薬物だけを必要としないことが必要な場合には、いくつかのパッチポンプシステムであっても、互いにまたは同じ平面において積層されることができ、各パッチポンプは、別個のマイクロポンプを有することに留意されたい。糖尿病患者の場合、インスリンを用いて血糖レベルを低下させること、または別の薬物を用いて血糖レベルを上昇させることが必要なときがある。さらなる実施形態は、薬物の蒸発を可能にし、薬物の蒸気圧に応じて、入口およびフィルタを通るメニスカスの端部に僅かな蒸発がある。この蒸発は、小さな断面(薬物が存在する蛇行チャネルの断面と比較してはるかに小さい)を有する長い空気チャネル(拡散停止部)が薬物の入口と開始部との間に配置される場合に減少させることができる。これにより、メニスカスに薬物分子を有する飽和雰囲気が存在し、蒸発は非常に小さくなる。長いチャネルのために、薬物分子は、入口に向かって長い距離を有し、チャネルは、拡散障壁として機能する。利点は、このパッチポンプが非常に安全であるということである。カテーテルの閉塞、ポンプの故障、ニードルの転位、気泡の侵入、ガラスの破損、これらの故障モードは、全て、電子機器によって容易且つ迅速に検出されることができる。故障検出のためのさらなる実施形態は、
・ポンプ故障(作動):ポンプが1ポンプストロークを行うべきであり、メニスカスが移動しない場合、静電容量は変化しない=>故障
・ポンプ故障(弁):ポンプが1ポンプストロークを行うべきであり、メニスカスが移動しない場合、静電容量は変化しない=>故障
・カテーテルの閉塞:カテーテルが閉塞している場合、ポンプは薬物を前方に押すことができず、メニスカスは移動することができない=>故障
・ハウジングの底面に別個の電極を有することにより、システムは、パッチポンプが皮膚に取り付けられているかどうかを認識することができる。パッチポンプが取り付けられ、取り付けられたままである場合にのみ、システムは機能し始める。
・1つの別個の安全電極(例えば、マイクロポンプの直前または直後に配置される)では、電極が薬物と気泡とを区別することができるため、容易に検出されることができる。通常の場合、この電極では、気泡は決して存在すべきではない。安全電極が気泡を検出した場合=>故障
・ガラス破損またはリザーバ破損:その場合、静電容量は急速に変化している:=>故障
【0064】
コストに関して、現在の最小のシリコンマイクロポンプは、3.5×3.5mm2のチップサイズを有し、20ナノリットルのストローク容積を有することに留意されたい。週に200枚のウェハを製造する場合、試験されたポンプチップの製造コストは、長期的には40セント未満が実現可能であると思われる。全ての電子部品が1つまたは2つの特定のASICに配置されることができると仮定する。2...3ユーロの適切な平坦バッテリ製造コスト(インスリンなし)とともに、非常に大量に長期的に達成されることができ、これはその市場のゲームチェンジャーとなり得る。
【0065】
図5aおよび図5bを参照して、上述したlifecoinについて説明する。図5aは、lifeCoin10’’の側面図/断面図を示し、5bは、lifecoin10’’の平面図を示している。LifeCoinは、実質的に丸い形状を有し、領域の大部分(図5bを参照)がリザーバ16’’によって使用される。
この実施形態では、リザーバ6’’は、流体を貯蔵することができるトラックを備え、トラックは、例えば外側から中央に延在する螺旋形状を有する。螺旋の開始は、入口を表す16i’’によってマークされ、螺旋は、螺旋の中央に配置されたマイクロポンプ12において終了する。図から分かるように、ニードル12nがユニット10’’の底部側に取り付けられている。
【0066】
構成要素は、図1および図2の文脈で説明した実施形態と実質的に同等とすることができ、いくつかの任意の特徴を備えることができる。
この実施形態では、リザーバ16’’は、固体金属またはプラスチックカバーを備え、このプラスチックカバー/リザーバ16’’の上面に、マイクロポンプ、および無線通信(Bluetooth)要素22、バッテリ24またはコントローラ26(ここでは、マイクロポンプ、センサ読み取り、および/または投与監視用のASIC)のようなさらなる要素が配置されてもよい。リザーバ16’’のボタン側のニードル12nは、シールを含むことができる。
【0067】
サイズに関して、システム10’’全体は、30mmまたは40mm(20mmから60mmの範囲)の直径および4から5mmの厚さを有することができ、リザーバ10’’に1mlのインスリンを貯蔵することを可能にすることに留意されたい。
入口16i’’に関して、これは2つのフィルタ16f1’’(活性化電流フィルタ)および16f2’’(0.2μm疎水性フィルタ)と組み合わされ、空気入口16s’’のためのシールは、例えば、ユニット10’’の上面に取り付けられてもよいことが言及される。
【0068】
以下では、このlifecoin10’’の例示的な設計について説明し、静電容量測定装置に特別な焦点が設定される。1つの単一のポンプステップの静電容量の変化は、以下のようになる:
以下のパラメータを用いる:
・ΔV:ポンプのストローク容積:20nl(3.5×3.5×0.6mmのシリコンマイクロポンプ)

誘電界定数:8.85e-12

インスリンの比誘電率:約35(インスリンに依存)

カバー(ガラス)の比誘電率:7(ガラスの種類に依存)
・Hchannel:インスリンチャネルの高さ:1.5mm
・Hcover:両カバー(ガラス)の高さ:0.6mm
・Wchannel:インスリンチャネルの幅:1.5mm
・Wwall:ガラス壁の幅:0.3mm
・リザーバ容積:1ml
【0069】
なお、これらのパラメータは、単に例示的に仮定される。これにより、以下が得られる:
・1ポンプストロークあたりの静電容量変化(20nl):843aF
・1ポンプストローク(20nl)に対するデジタル変換器への(従来の)静電容量のデジタルステップ:14ステップ:それにより、単一ポンプストロークが容易に解決されることができる。
・リザーバ全体のポンプストローク数:50000ポンプストローク
・全静電容量変化:42pF
・Ichannel:螺旋の長さ:44.4mm
・このデータでは、3.2cmのコインの直径を有する。
【0070】
1ポンプストロークの静電容量変化は、薬物(例えば、インスリンおよび/またはグルカゴン)チャネルの高さに依存することが分かる。高さの減少は、その静電容量変化の増加につながる(他の全てのパラメータが一定である場合)。例えば、高さが1.5mmから0.75mmに減少すると、20ナノリットルの1ポンプストロークの静電容量変化は843aFから1920aFに増加し(典型的な市販のCDCコンバータ/ポンプストロークの約31デジタルステップによる)、高さが0.5mmに減少すると、2940aFの静電容量変化になる(48デジタルステップ/ポンプストロークによる)。すなわち、チャネル高さの低減は、ストローク容積測定の感度を高める方法である。
【0071】
チャネル高さは、ストローク容積測定の感度を調整するための適切なパラメータである。次に、チャネル高さが減少すると、メニスカスを安定した位置に(主に重力から独立して)保持する毛細管力が増加している。
【0072】
他方では、チャネル高さをより小さくする欠点もあり、特に、特定の薬物リザーバ容積(例えば、U1000については1ml)を実現するためにチャネルの長さが増加されなければならない。チャネル長のこの増加は、以下の欠点を有する:
1)1mlのリザーバ(およびチャネル間の1mmの壁厚)の場合、リザーバの横方向空間は、螺旋状リザーバのコイン直径を3.8cm(1.5mmチャネル高さ)から5.3cm(0.75mmチャネル高さ)から6.5cm(0.5mmチャネル高さ)に増加させる必要がある。
2)チャネルの高さが減少すると、ポンプが作動している場合、メニスカスを移動させるための摩擦は、層流摩擦の法則にしたがって急速に増加する。
【0073】
これは、チャネルの幅が例えば1.5mmから2mmまたは3mmに増加される場合、部分的に改善されることができる。しかしながら、ポンプが作動される場合、メニスカスの規定された動きを保証するには、幅が大きすぎてはならない。
そのため、U1000インスリンの1mlリザーバサイズを見ると、1mmまたは1.5mmのチャネル高さは、静電容量安定性の分解能、メニスカスの安定性、リザーバの横方向サイズ、およびチャネル内の移動する液体の層流摩擦の間の良好な妥協点となり得る。
【0074】
他のリザーバサイズ(例えば、0.3mlリザーバ)の場合、より小さいチャネル高さまたは他の幾何学的形状は、他の幾何学的形状に適合する方がよいかもしれない。
将来、新たな高濃度薬物が開発される可能性がある場合、例えば0.1mlまたはそれ以下のさらに小さいリザーバサイズが使用される可能性がある。その場合、チャネル高さが0.5mmまたは0.1mmの値までさらに減少されることができ、静電容量信号はさらに高くなり、20ナノリットルよりも小さいストローク容積を有する将来のマイクロポンプによる非常に少量(例えば、10ナノリットルまたは1ナノリットル以下)の正確な投与を可能にする。
【0075】
実施形態によれば、少なくとも1つの寸法の断面は、2.8mmまたは3mm以下、例えば3mm×3mmまたは2.8×2.8または4mm×2mmまたは好ましくは1.5mm×1.5mmまたは2mm×1.5mmまたは1.5mm×1mmなどになる。ここで、リザーバ内のメニスカスを維持するために、少なくとも1つの寸法は、3または2.8mm未満でなければならない。以下の式に基づいて背景を考察する:
【0076】
ここで、界面表面エネルギーσがσ=dE/dA=dF/dsと定義される。σWasser-Luftは、水と空気との間の界面表面エネルギーである。2.8mmは、空気によって囲まれた水に有効である。この計算に基づいて、小さな構造(少なくとも1つの寸法において2.8mm未満)の場合、界面表面力は重力よりも大きいため、メニスカスが維持されると結論付けることができる。例えば振盪の場合の予備を有するために、少なくとも1つの寸法は、2.0mmまたは1.5mmよりも小さくすることができる。
【0077】
実施形態によれば、lifecoin’’は、閉ループシステム、例えば、lifecoin内の人工膵臓として実装されてもよい:
・最新のリアルタイムのグルコースセンサ(例えば、Dexcom G6)の使用により、lifecoinは、閉ループシステムになり、糖尿病患者がグルコース測定を常に気にすることなく通常の生活を送ることを可能にする。
・検知要素は、(1つの装置のみであるが、インスリン投与領域への投与)直接Lifecoinに統合されてもよいし、無線通信を介して接続されてもよい
・調整された制御アルゴリズム(例えば、AI)を用いて、糖尿病患者のための安全で快適な解決策が提供することができる
・同じ原理は、センサが利用可能な他の慢性疾患にも有効である
【0078】
以下では、電極設計および機能について説明するが、ここでは、この静電容量測定装置の任意の要素が言及されるべきである。静電容量測定装置は、リザーバ16’’の上面および底面に配置された電極として配置されてもよいが、図5aおよび図5bの図には示されていない。
静電容量測定のために、異なる電極配置が可能である。標準的な手法は、リザーバ16rの上部および底部にある2つの平行な電極からなる(共通の平行平板コンデンサ設計)。
【0079】
別の例示的な可能性は、リザーバ16’’の片側のみの2つの同一平面上の電極である。この設計は、製造するのに潜在的により安価であるが、電子場計算および外乱回避のためにより複雑な方法が必要である(例えば、設計を遮蔽するGND電極)。
選択された電極配置とは無関係に、複数の電極を使用してリザーバを複数のサブエリアに分割すること、または2つの電極を並列に使用してリザーバレベルの二重制御測定値を得ることが可能である。
【0080】
静電容量測定は、lifecoin設計10’’の重要な構成要素である。理論的には、単一のポンプストロークであっても静電容量の変化を検出することが可能である。実際には、正確な静電容量測定を妨げる可能性がある多くの外部および内部の外乱がある:温度または外部のE界による静電容量の変化、「患者のグラウンド/患者のノイズ」との干渉、およびセンサドリフト。これらの影響を補償するために、予防措置をとることができる:
・上/下の被覆シールドを使用することによって測定電極を外部の外乱から遮蔽する;
・外乱測定および推定手段、例えばドリフト補正に使用される専用「静的」電極を提供する;および
・ドリフト効果を除去するためにポンプ作動の直前に静電容量が0に設定される「作動前のゼロ化」戦略を使用する
一般的なCDCチップは、複数の静電容量測定チャネルを有する。ほとんどのチャネルは液体レベル検出に使用される可能性が最も高いが、いくつかは追加の機能を得るために利用されることができる。専用電極は、例えば、以下のために使用されることができる:
・気泡検出
・ドリフトの検出および補償
・流体誘電率検出(正確に定義された面積および距離を有する電極)、これは、使用されたインスリンが損なわれているか否かをチェックすることさえ可能にすることができる(予め充填されたユニットがより長い時間保管されるか、または放射線などにさらされた場合)
・ポンプ後のメニスカス運動の検出(患者がシステムを開封したときに自動充填を可能にするため)
・シール/外装カバーが取り外されたときを検出
【0081】
実施形態によれば、改善された持続可能性のためのモジュール設計が使用されることができる。モジュール式システム設計を使用することにより、より持続可能でおそらくより安価なlifecoinを構築することが可能である。この手法では、電子機器(ポンプドライバ回路26、バッテリ24、CDC IC36)は、流体(電極、ポンプおよびニードルを有する蛇行部)から分離されている。ポンプ自体は、使い捨て部品の一部であり、そのため、これらの2つのサブシステム間の複雑な流体/機械的インターフェースは必要ない。電子機器と流体部品との間に使用される唯一の接続は、CDCチップ26と流体リザーバ16r上の電極とを接続するいくつかのさらなる電気トラックと、マイクロポンプ12とポンプドライバ26との間の(2つの)電気接続である。
【0082】
これは、「シリンジ/プランジャ型」投与システムに対する大きな違い(および可能な利点)であり、リザーバの変更は、プランジャを新たなリザーバと接触させるための初期充填ステップを常に伴い、このステップの間、システムは、いくらかの薬物を失うか、または患者に過剰投与する可能性がある。
【0083】
モジュール設計は、高価な電子部品を削減することができるため、廃棄物を削減し、場合によってはシステム全体のコストを削減する。
モジュール設計を使用すると、追加の機能が実現されることができ、例えば、電子部品が取り付けられたときにニードルが自動的に機械的に前進されることができる。
システム全体は、モジュール設計であってもその非常に平坦な形状を維持することができる。
【0084】
さらにまた、チャネル製造については、以下の公差計算が考慮されることができることに留意されたい:
他のパラメータ(例えばチャネル高さ)の変動からの(計算された)ポンプ容積の変化にどのように依存するか:
定性的な考察:hchannelは、式中に二乗形式で存在するため、hchannelの変動は、ストローク容積の誤差を2倍にする。
【0085】
10%の再現性(LifeCoinの個々の較正なし)を仮定すると、チャネル高さの公差は、2~3%を超えるべきではない。これは、ガラスカバーに関する変形例と同様に当てはまる。誘電率および静電容量は線形形態でのみ存在し、その結果、約4~6%の公差がこれらのパラメータに許容される。(全ての寄与は二乗され、平方根に関連して加算される。)
(前述の例のように)チャネル高さが1mmであり、カバーの厚さが0.3mmである場合、チャネル高さは、20μm~30μmを超えて変動するべきではなく、蓋の厚さは、6μm~9μmを超えて変動するべきではない。
【0086】
誘電率の変動の強さは、インスリンの製造方法に依存する。ここで、このパラメータが各バッチで測定され、システムコントローラに転送されることが考えられる。
上記の考察から、高度に規定された厚さを有するガラス板を使用し、次いで蛇行螺旋を完全に成形することは明らかであると思われる。これは、高度に規定された厚さを有する2つのカバーを使用することを伴う。螺旋は、これらの2つの(パターン化された)カバーを使用して接着によってキャップされる。次いで、カバーは、入口および出口におけるインスリンのための貫通路を備える。
【0087】
実施形態によれば、安全性および自由流動保護のために、ガラスのような「レンガ」リザーバを使用することが有利であることに留意されたい。
ガラス構造の利点は、ユーザがリザーバに力を加えることによって過剰投与を発生させにくいということである。一方、可撓性バッグの場合、それは変形する可能性があり、過圧は過剰投与の危険性を伴い、ガラスリザーバは破損するため、過圧は形成されることができない。
【0088】
必要とされる唯一の危険は、患者が平面内の地面に近付いているときの状況である。人体は、圧力を補償するために数回の呼吸を必要とし、その結果、圧力の僅かな差が生じる。この圧力差は、僅かな過剰投与を引き起こす可能性がある。
危険は、例えば、以下のようになる:
・例えば、患者が高圧チャンバに突然入り、酸素ボンベを使用して人工呼吸を受けた場合、
・または、例えば、LifeCoin上にガラス鐘を置き、それを圧送することによって、LifeCoinを使用して意図的に過圧が発生した場合。結果は自由流になる。
【0089】
自由流保護に関して、変形例1にかかる実施形態:この潜在的な誤動作は、安全弁12v(例えば、2007年の既知のFhG特許を使用し、図2に示すように)を使用して回避されることができる。この安全弁は、シリコンポンプチップに一体化されていることが好ましい。それは、(想定される)誤った過圧の期間中の最大自由流漏れ速度が、用途のボーラス速度以下であるように構成される。
【0090】
変形例2にかかる実施形態:最悪の場合の過圧(飛行機内または意図的に過圧を加える場合)でさえ有害な用量を投与しないように構成された流れ制限(ポンプシリコン内またはリザーバ蛇行(ガラスまたはプラスチック)内)で十分であり得る。この制限は、薬物の経路における狭い断面とすることができる。
実施形態によれば、流れ制限は、ポンプをインスリン結晶または他の汚染から保護するために、ポンプの直前にフィルタとして実装されてもよい。
リスク評価に応じて、安全弁が有益であり得ることに留意されたい。
【0091】
実施形態によれば、外乱パラメータ検出は、以下のように実行されることができる:
・おおよそ32°の一定の皮膚温度は、媒体の同様の粘度特性を常にもたらす。ポンプが短い適用期間にわたって劣化しない(または劣化が定義可能である)場合、同じ送達量に対してより多くのポンプストロークが使用されるため、媒体粘度の変化(->インスリンの劣化)が検出されることができ、または流体ラインの詰まり(->閉塞または血管外漏れ)が検出されることができる。
・(誤ってU100インスリンの代わりにU1000インスリンが使用されたことを認識するのと同様に)異なる誘電率、結果としてそれに適合した静電容量および送達速度を使用した異なる種類のインスリンの検出
【0092】
電極設計に関して、さらなる実施形態によれば、以下の原理のうちの1つ以上が使用されることができることに留意されたい:
・全静電容量およびチャネル壁によって引き起こされる「外乱静電容量」を低減するための蛇行部に続く指状電極
・製造を容易にするために対向電極のない平面「片面」電極の使用
〇ここでは、新たな静電容量計算が使用されることができる:互いに反対ではなく互いに隣接するプレートなど...または...、そうでなければ、より困難なコンスタレーション(特に異なるE)の場合にシミュレーションが使用される。
・外乱の影響を低く保つために、患者の下側/底部におけるグラウンド(患者の皮膚)からの遮蔽
〇ドリフトをより良好に減算することができるように、常に流体によって充填された領域内の専用のドリフト検出電極(および完全な自由領域内の別のドリフト検出電極)であってもよい
・測定ICのいくつかのチャネルを使用することができるように、いくつかの電極への細分化
〇いずれかが部分的に電極を提供する(チャネル長の20%あたり1つの電極=5つの電極のように->全静電容量を分割する)
〇またはそれ自体または充填レベルを相互に監視する2つ(またはそれ以上)の平行電極
・他の電極などが使用されて、シールのリッピングを認識することができる
・追加の電極はポンプの背後にある(および/またはニードルの近くにある)
〇ポンプがいつ充填されるかの決定(リザーバを予め充填するときに患者または工場のいずれかで)
〇逆流が発生した場合、体液の検出(体液はインスリンと比較して別の誘電率を有する)
〇この電極から開始して、メニスカスが患者に到達する前に(シリンジの)正確に画定された容積が存在する
【0093】
モジュール設計に関して、実施形態によれば、電子機器(ポンプドライバ、バッテリ、および場合によっては静電容量IC)を分離可能に設計するときに、さらなるコスト削減が可能であることに留意されたい。これらは、患者/インスリンと接触せず、再使用されることができる。不利なことに、僅かにより多くの空間を消費するが、より持続可能である。
【0094】
流路の流体含有部分に追加の流れ制限部を設置することに留意されたい:
・リザーバ内の過圧が何らかの理由(より低い流量)で発生する場合の追加の安全性
・低周波効果のためにポンプ動作をほとんど妨害しない:同時に、ポンプをインスリン中の結晶/粒子から保護し、フェイルセーフである:空気が吸い込まれた場合、それはフィルタに捕捉される。
【0095】
表面特性に関して、実施形態によれば、インスリンとチャネルとの間の90度(一般に75°~105°または60°から120°または45°から135°の範囲)の(アイドル)ネット角度が最良のメニスカス形成のために使用されることができることに留意されたい。その背景は、蒸発/凝縮の影響が、特に数日から数週間にわたってセンサ分解能に影響を及ぼし得るということである。上述した濡れ角度90度または時には約90度、75~105度が使用されることができる。センサドリフトに関して、実施形態によれば、「作動前のゼロ化」の既知の概念が適用されてドリフト効果を最小限に抑えることができることに留意されたい。
【0096】
蛇行/螺旋/トラックの断面の形状に関して:断面の形状は、インスリンが隅に残るかどうかに影響を及ぼす。円形または楕円形が最良であるが、製造が困難である可能性がある。したがって、実施形態によれば、丸いエッジが好ましい。しかしながら、インスリンが断面の鋭い角に残っている場合(例えば矩形断面)であっても、これは対処されることができる:鋭い角に残っているインスリンが一定である場合、これは一定のオフセットと考えることができる。
【0097】
さらにまた、実施形態によれば、蛇行チャネルの内面は滑らかであってもよい。粗さが大きすぎる場合、メニスカスは、前進することによって濡れ角度に応じてこの微細な粗さで形状を変化させなければならない。この形状の変化は、(小さい)毛細管圧に類似しており、単一のポンプストロークの測定の精度および再現性に影響を及ぼす可能性がある。粗さが十分に小さい場合(例えば、1μm未満)、メニスカスは、大きな障害物を有することなく前進することができる。
【0098】
しかしながら、より大きい粗さであっても、容量性投与監視は機能し、単一ポンプストローク測定値の変動のみが発生する。U1000の1ユニット(1μlによる)を達成するための20ナノリットルのシリコンマイクロポンプの50ポンプストロークの量にわたって、表面粗さに対する誤差duは有意であるべきではない。
【0099】
薬物送達システムを患者に接続するためのプロセスは、追加の装置によってサポートされることができる。接続を高い信頼性で確実にするために、ある種のニードルが使用されて、外皮膚を通ってより深い領域に入り、そこに留まることができる。剛性のニードルからの応力を低減するために、ニードルは、通常、貫通のためにのみ使用され、その後、身体の内部に剛性でない投与端部のみを残して拒否される。この手順のために、特定の装置が好ましい。連続血糖センサは、患者が皮膚上に置き、ボタンを押し、ニードルがパッチを皮膚上に接着しながら薬物送達チューブを挿入する手持ち式装置を使用する。その後、センサ電子機器がパッチ上にクリックされ、センサが動作する準備が整う。
【0100】
同様のシステムが、ここで上述した薬物送達システムについて推測されることができる:流体部分は、薬物送達チューブを注射しながら皮膚に接着される。全ての流体部品は既に配置されており(汚染が発生する可能性のある開放領域はない)、(再利用可能な)電気部品(バッテリ、ポンプドライバ、送信機、およびロジック)はその後に挿入される。引っ張られたばねは、ボタンを押した後にニードルを解放し、マイクロポンプ出口(および最初はニードル)に接続されたマイクロチューブの皮膚を開く。ニードルが直ちに後退する間、マイクロチューブは、その接続を失い、皮膚の下に留まる。
【0101】
実施形態によれば、薬物送達システムは、2つの異なる薬物のための2つのリザーバ(隣り合わせに、層ごとに、または組み合わせて)を備えることができる。例えば、薬物送達システムは、1つがインスリンによって充填され、1つがグルカゴン(インスリンと反対のホルモン)によって充填される2つのlifecoinからなる。第1の方法は、血糖を低く保つことを確実にし、一方、後者の方法は、血糖が危険なほど低い範囲に到達する場合、インスリンの作用を止める。これは、患者がスポーツをしたり食事を抜いたりすることによって起こり得る。ポンプおよびグルコースセンサの双方を使用して、実際の人工膵臓が作成されることができる(これは他のポンプによって既に行われている)。グルカゴンは、安価な小型カートリッジでも入手可能であり、インスリンと同様に取り扱われることができる。どの薬物が送達されるかを制御することは、グリコースセンサに接続されたコントローラによって行うことができる。
【0102】
2つのlifecoinの代わりに、1つの層に2つの別個の蛇行形状のリザーバ(1つはインスリンによって充填され、1つはグルカゴンによって充填される)を有するシステムが実現されることができ、各リザーバは、インスリンまたはグルカゴンのいずれかを独立して送達するための1つのマイクロポンプを有する。双方のポンプがコインの中央に配置されることができる。この実施形態では、インスリンまたはグルカゴンのいずれかを送達するために2つの異なるニードルまたはカテーテルのいずれかが取り付けられることができ、またはlifecoinチャネルシステム内では、2つのポンプの出口とニードルへの出口との間にY接合があり、そこで薬物(インスリンまたはグルカゴンのいずれか)が送達される。
【0103】
製造コストおよび/またはパッケージングコストを節約するために、2つのマイクロポンプ(例えば、Fraunhofer EMFTによって開発された3.5mmのシリコンマイクロポンプは、双方のポンプが一体型安全弁を有する)をウェハから一体にダイシングされ(サイズ3.5×7mm)、チャネルシステムに取り付ける(例えば、接着される)ことができる(インスリンおよびグルカゴン用の2つの蛇行部を有する)。
【0104】
いくつかの態様が装置の文脈で説明されたが、これらの態様は、対応する方法の説明も表すことは明らかであり、ブロックまたは装置は、方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法ステップの文脈で説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または機能の説明も表す。方法ステップの一部または全ては、例えば、マイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータ、または電子回路などのハードウェア装置によって(または使用して)実行されることができる。いくつかの実施形態では、いくつかの1つ以上の最も重要な方法ステップが、そのような装置によって実行されることができる。
【0105】
特定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装されることができる。実装は、電子的に読み取り可能な制御信号が記憶され、それぞれの方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協働する(または協働することができる)、例えば、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリなどのデジタル記憶媒体を使用して行うことができる。したがって、デジタル記憶媒体は、コンピュータ可読とすることができる。
【0106】
本発明にかかるいくつかの実施形態は、本明細書に記載の方法の1つが実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムと協調することができる電子的に読み取り可能な制御信号を有するデータキャリアを備える。
【0107】
一般に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品として実装されることができ、プログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときに方法の1つを実行するために動作する。プログラムコードは、例えば、機械可読キャリアに記憶されてもよい。
【0108】
他の実施形態は、機械可読キャリアに記憶された、本明細書に記載の方法(外乱を決定し、例えばセンサ信号または外部コマンドに応じてポンプを制御すること)のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを備える。
換言すれば、本発明の方法の実施形態は、したがって、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、本明細書に記載の方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0109】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジック装置(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)が使用されて、本明細書に記載の方法の機能のいくつかまたは全てを実行することができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明細書に記載の方法の1つを実行するためにマイクロプロセッサと協調することができる。一般に、方法は、好ましくは、任意のハードウェア装置によって実行される。
【0110】
上述した実施形態は、本発明の原理を単に例示するものである。本明細書に記載された構成および詳細の変更および変形は、当業者にとって明らかであろうことが理解される。したがって、本明細書の実施形態の説明および説明として提示された特定の詳細によってではなく、差し迫った特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている。

図1
図2
図3
図4a-4b】
図5a
図5b
【外国語明細書】