(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006100
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】無菌成形装置
(51)【国際特許分類】
B65B 55/04 20060101AFI20250109BHJP
B65B 55/08 20060101ALI20250109BHJP
B65B 55/10 20060101ALI20250109BHJP
B29C 49/64 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B65B55/04 C
B65B55/08 A
B65B55/10 A
B29C49/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106689
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 健
(72)【発明者】
【氏名】岡部 良紀
(72)【発明者】
【氏名】原田 天章
(72)【発明者】
【氏名】大頭 貢
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AG07
4F208AH55
4F208AK01
4F208AK03
4F208AK05
4F208LA09
4F208LB01
4F208LG03
4F208LG28
4F208LH01
4F208LH02
4F208LH06
4F208LH23
4F208LH24
4F208LJ14
4F208LJ15
4F208LJ22
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で、高い殺菌処理効果を得ることが可能な無菌成形装置を提供すること。
【解決手段】殺菌処理を施した殺菌済みの容器を無菌成形する無菌成形装置20であって、殺菌処理機構50は、プリフォーム段階での殺菌処理のみで容器の殺菌を完了させるように構成され、オーブンエリアA1内には、昇温エリアA2と、搬送経路上の最後の昇温ヒーター33が設置された昇温エリアA2の下流側に隣接し、プリフォームPに殺菌処理を施すオーブン内殺菌エリアA3とが設けられ、プリフォーム搬送機構40は、同じ保持具41aによって同じプリフォームPを保持した状態を維持しつつ、昇温エリアA2およびオーブン内殺菌エリアA3に亘ってプリフォームPを搬送するように構成されている無菌成形装置20。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌処理を施した殺菌済みの容器を無菌成形する無菌成形装置であって、
ブロー成形ターレットと、前記ブロー成形ターレットの上流側に設定されたオーブンエリアにおいてプリフォームに昇温処理を施すオーブン機構と、プリフォーム搬送機構と、殺菌処理機構とを備え、
前記殺菌処理機構は、無菌ブロー成形によって容器を成形する前のプリフォーム段階での殺菌処理のみで容器の殺菌を完了させるように構成され、
前記オーブンエリア内には、プリフォームを昇温させる昇温ヒーターが設置された昇温エリアと、搬送経路上の最後の前記昇温ヒーターが設置された前記昇温エリアの下流側に隣接し、前記殺菌処理機構によってプリフォームに殺菌処理を施すオーブン内殺菌エリアとが設けられ、
前記プリフォーム搬送機構は、同じ保持具によって同じプリフォームを保持した状態を維持しつつ、前記昇温エリアおよび前記オーブン内殺菌エリアに亘ってプリフォームを搬送するように構成されていることを特徴とする無菌成形装置。
【請求項2】
前記オーブン内殺菌エリアには、前記昇温ヒーターが設置されておらず、
前記殺菌処理機構は、前記昇温エリアに設置された前記昇温ヒーターによって無菌ブロー成形時の成形温度まで昇温させたプリフォームに対して前記オーブン内殺菌エリアにおいて殺菌処理を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無菌成形装置。
【請求項3】
前記オーブン内殺菌エリアには、プリフォームに対して光照射による殺菌処理を施す光照射器が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の無菌成形装置。
【請求項4】
前記オーブン機構は、前記オーブン内殺菌エリアを区画する殺菌チャンバーを備え、
前記殺菌チャンバーは、前記昇温エリアに連通する上流側開口部と、前記オーブンエリアの下流側の移送エリアに連通する下流側開口部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の無菌成形装置。
【請求項5】
前記移送エリア内の気圧は、前記殺菌チャンバー内の気圧よりも高圧に維持されていることを特徴とする請求項4に記載の無菌成形装置。
【請求項6】
前記殺菌チャンバー内の気圧は、前記昇温エリア内の気圧よりも高圧に維持されていることを特徴とする請求項5に記載の無菌成形装置。
【請求項7】
前記オーブン内殺菌エリアには、プリフォームに対して殺菌剤を供給する殺菌剤供給器が設置されていることを特徴とする請求項4に記載の無菌成形装置。
【請求項8】
前記昇温エリアには、無菌化されていないエアーを導入してプリフォーム口部に向けて噴出するエアー噴出器が設置され、
前記オーブン内殺菌エリアには、前記エアー噴出器が設置されていないことを特徴とする請求項4に記載の無菌成形装置。
【請求項9】
前記殺菌処理機構は、前記オーブン内殺菌エリアにおいて、プリフォーム外表面および内表面に対して殺菌処理を施すように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無菌成形装置。
【請求項10】
前記オーブン内殺菌エリアには、保温ヒーターが設置されていることを特徴とする請求項2に記載の無菌成形装置。
【請求項11】
前記殺菌チャンバーの前記上流側開口部の下流側、上流側、真上のいずれかには、空気を排出する排出口が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の無菌成形装置。
【請求項12】
前記オーブン内殺菌エリアには、前記オーブン内殺菌エリア内に無菌エアーを供給する導入口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無菌成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌処理を施した殺菌済みの容器を無菌成形する無菌成形装置に関し、特に、容器成形から内容物の充填・密封までを一貫して行うインラインブロー式の無菌充填システムに組み込まれる無菌成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同一工場内において、ブロー成形による容器成形から、内容物の充填・密封までを一貫して行うインラインブロー式の充填システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような充填システムでは、無菌環境に維持された充填装置に容器を搬送する前に、容器を充分に殺菌する必要があり、特許文献1に記載される充填システムでは、ブロー成形によって容器を成形する前のプリフォーム段階での殺菌処理に加えて、ブロー成形後における容器段階における殺菌処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、容器段階における殺菌処理を行う場合、殺菌処理機構が大型化するという問題や、プリフォームと比較して容器はその表面積が大きいことから必要とされる殺菌剤の量等が多くなるといった問題や、殺菌時間についても長くなるといった問題があることから、本出願人は、無菌ブロー成形によって容器を成形する前のプリフォーム段階での殺菌処理のみで容器の殺菌を完了させる無菌成形装置を開発しようとしており、そのために、殺菌効率に関する更なる改良が要求されている。
【0006】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、高い殺菌処理効果を得ることが可能な無菌成形装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無菌成形装置は、殺菌処理を施した殺菌済みの容器を無菌成形する無菌成形装置であって、ブロー成形ターレットと、前記ブロー成形ターレットの上流側に設定されたオーブンエリアにおいてプリフォームに昇温処理を施すオーブン機構と、プリフォーム搬送機構と、殺菌処理機構とを備え、前記殺菌処理機構は、無菌ブロー成形によって容器を成形する前のプリフォーム段階での殺菌処理のみで容器の殺菌を完了させるように構成され、前記オーブンエリア内には、プリフォームを昇温させる昇温ヒーターが設置された昇温エリアと、搬送経路上の最後の前記昇温ヒーターが設置された前記昇温エリアの下流側に隣接し、前記殺菌処理機構によってプリフォームに殺菌処理を施すオーブン内殺菌エリアとが設けられ、前記プリフォーム搬送機構は、同じ保持具によって同じプリフォームを保持した状態を維持しつつ、前記昇温エリアおよび前記オーブン内殺菌エリアに亘ってプリフォームを搬送するように構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
上記無菌成形装置は、前記オーブン内殺菌エリアに、前記昇温ヒーターが設置されておらず、前記殺菌処理機構が、前記昇温エリアに設置された前記昇温ヒーターによって無菌ブロー成形時の成形温度まで昇温させたプリフォームに対して前記オーブン内殺菌エリアにおいて殺菌処理を行うように構成されていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記オーブン内殺菌エリアに、プリフォームに対して光照射による殺菌処理を施す光照射器が設置されていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記オーブン機構が、前記オーブン内殺菌エリアを区画する殺菌チャンバーを備え、前記殺菌チャンバーが、前記昇温エリアに連通する上流側開口部と、前記オーブンエリアの下流側の移送エリアに連通する下流側開口部とを有していてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記移送エリア内の気圧が、前記殺菌チャンバー内の気圧よりも高圧に維持されていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記殺菌チャンバー内の気圧が、前記昇温エリア内の気圧よりも高圧に維持されていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記オーブン内殺菌エリアに、プリフォームに対して殺菌剤を供給する殺菌剤供給器が設置されていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記昇温エリアに、無菌化されていないエアーを導入してプリフォーム口部に向けて噴出するエアー噴出器が設置され、前記オーブン内殺菌エリアに、前記エアー噴出器が設置されていなくてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記殺菌処理機構が、前記オーブン内殺菌エリアにおいて、プリフォーム外表面および内表面に対して殺菌処理を施すように構成されていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記オーブン内殺菌エリアに、保温ヒーターが設置されていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記殺菌チャンバーの前記上流側開口部の下流側、上流側、真上のいずれかに、空気を排出する排出口が設けられていてもよい。
上記いずれかの無菌成形装置は、前記オーブン内殺菌エリアに、前記オーブン内殺菌エリア内に無菌エアーを供給する導入口が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構成で、高い殺菌処理効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無菌成形装置を備えた無菌充填システムを示す説明図。
【
図2】オーブンエリア周辺を中心として無菌成形装置の構成を示す説明図。
【
図3】オーブン内殺菌エリアにおける殺菌態様を示す説明図。
【
図4】試験例における試験条件および試験結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態に係る無菌充填システム10について、図面に基づいて説明する。
なお、本明細書で使用する「上流」「下流」の用語は、プリフォームPまたは容器の搬送方向における上流または下流を意味する。
【0011】
まず、無菌充填システム10は、殺菌済みの容器に殺菌された内容物(特に内容液)を無菌充填する所謂インラインブロー式の充填システムとして構成されたものであり、
図1に示すように、容器を無菌成形する無菌成形装置20と、容器内に内容物を無菌充填する充填装置60とを備えている。
【0012】
以下に、無菌充填システム10の各構成要素について、図面に基づいて説明する。
【0013】
まず、無菌成形装置20は、殺菌処理を施した殺菌済みの容器を無菌成形するものであり、
図1や
図2に示すように、プリフォームPを投入する入口部21と、ブロー成形ターレット22と、入口部21の下流側に設定されたオーブンエリアA1においてプリフォームPに昇温処理を施すオーブン機構30と、プリフォームPを搬送するプリフォーム搬送機構40と、プリフォームPに殺菌処理を施す殺菌処理機構50とを備えている。
【0014】
入口部21は、
図1に示すように、無菌成形装置20(無菌充填システム10)に対してプリフォームPを投入するための部位である。
【0015】
ブロー成形ターレット22は、
図1に示すように、オーブンエリアA1の下流側に配置され、プリフォームPに無菌ブロー成形を施すものである。
具体的には、ブロー成形ターレット22は、無菌ブロー成形時の成形温度にまで昇温されたプリフォームP内に無菌エアーを吹き込むことでPETボトル等の容器を二軸延伸ブロー成形するブロー機(図示しない)を備えたターレットとして構成されている。
【0016】
ブロー成形ターレット22が設置される成形エリアA5は、チャンバーによって覆われ、HEPAフィルタを通した無菌エアーをFFU(Fan Filter Unit)により上部から吹き込むことで無菌雰囲気かつ陽圧に保たれている。
また、成形エリアA5に設置されるブロー成形ターレット22やブロー機等の各設備は、ブロー配管末端まで滅菌されている。
成形エリアA5に、プリフォーム段階での殺菌処理のみで容器の殺菌を完了したプリフォームPが搬送され、無菌ブロー成形される。
これにより、成形エリアA5では、無菌状態でブロー成形を行う無菌ブロー成形が行われる。よって、成形エリアA5内でのプリフォームPやブロー成形後のボトルの搬送において搬送経路近傍を局所的に無菌エアーや殺菌ガス雰囲気化することが不要となり、また、ブロー成形後のボトルに対しての殺菌は不要となる。
【0017】
オーブン機構30は、ブロー成形ターレット22における無菌ブロー成形時の成形温度にまでプリフォームPの温度を昇温させる昇温処理を施すものであり、
図1や
図2に示すように、オーブンエリアA1をその内側に有したオーブンチャンバー31と、オーブンチャンバー31内に設けられた殺菌チャンバー32と、オーブンエリアA1内の昇温エリアA2に設置される複数の昇温ヒーター33と、オーブンエリアA1内のオーブン内殺菌エリアA3に設置される保温ヒーター34と、昇温エリアA2に設置される複数のエアー噴出器(図示しない)とを備えている。
なお、オーブン機構30は、オーブンチャンバー31の代わりにオーブンの周囲を囲う簡易的なカバーを設けてもよく、また、オーブンチャンバー31を設けなくともよい。
【0018】
オーブンチャンバー31は、
図1や
図2に示すように、オーブンエリアA1を覆いオーブンエリアA1を外部から隔てるものであり、プリフォームPを搬入するための搬入開口部とプリフォームPを搬出するための搬出開口部とを有している。
【0019】
オーブンチャンバー31(オーブンエリアA1)内には、
図1や
図2に示すように、プリフォームPを昇温させる昇温ヒーター33が設置された昇温エリアA2と、昇温エリアA2の下流側に隣接し、殺菌処理機構50によってプリフォームPに殺菌処理を施すオーブン内殺菌エリアA3とが設けられている。
【0020】
殺菌チャンバー32は、
図1や
図2に示すように、オーブンエリアA1内(本実施形態では、オーブンチャンバー31内)に設けられ、オーブン内殺菌エリアA3を区画するものである。
この殺菌チャンバー32の設置によって、オーブンエリアA1がオーブン内殺菌エリアA3と昇温エリアA2とに区画され、昇温エリアA2内の空気がオーブン内殺菌エリアA3に侵入することが抑制される。
殺菌チャンバー32は、昇温エリアA2に連通する上流側開口部と、オーブンエリアA1の下流側の移送エリアA4に連通する下流側開口部とを有している。
なお、殺菌チャンバー32の上流側開口部および下流側開口部は、オーブン内殺菌エリアA3と昇温エリアA2との間の空気の流動、および、オーブン内殺菌エリアA3と移送エリアA4との間の空気の流動を抑制するために、プリフォームPや後述する保持具41a等を通過させるだけの最小限の大きさで設計される。
【0021】
昇温ヒーター33は、赤外線ヒーターとして構成され、
図2に示すように、昇温エリアA2内においてプリフォームPの搬送ルートRの側方(具体的には後述する搬送機41による搬送ルートRの外周側)に設置され、プリフォームPの主に胴部P1を加熱して、胴部P1の温度を無菌ブロー成形時の成形温度(約120℃)まで昇温させるものである。
【0022】
なお、プリフォームPの胴部P1は、無菌ブロー成形時に金型内に配置され金型内で膨張させる部位であり、プリフォームPの口部P2は、無菌ブロー成形時に金型外に配置され膨張させない部位である。
【0023】
プリフォームPの搬送経路上(すなわち、搬送ルートR付近)に配置される最後の昇温ヒーター33は、
図2に示すように、昇温エリアA2内に設置され、言い換えると、昇温エリアA2よりも下流側(オーブン内殺菌エリアA3や移送エリアA4)には、プリフォームPを昇温させるように構成された昇温ヒーターは設置されていない。
これにより、プリフォームPは成形温度に昇温完了後の高温状態でオーブン内殺菌エリアA3にて殺菌されるため、プリフォームPの胴部P1の表面における菌を良好に殺菌することが可能である。特に光照射により殺菌を行う場合は、熱に弱くUV光に強いカビに対しては昇温により予め大部分が殺菌されるため、カビおよび芽胞菌の付着数を一定値以下に抑えるにあたって必要とされる光照射器51の出力を低く抑えることができる。
【0024】
保温ヒーター34は、赤外線ヒーターとして構成され、殺菌処理中にプリフォームPの胴部P1の温度が下がることを抑制するために、
図2に示すように、オーブン内殺菌エリアA3に設置されるものである。
保温ヒーター34は、
図2に示すように、プリフォームPの搬送ルートRの側方に設置され、具体的には、プリフォームPの搬送ルートRを挟んで、各種殺菌処理器(後述する光照射器51、殺菌剤供給器52)の反対側(具体的には、搬送機41による搬送ルートRの外周側)に設置されている。
これにより、本実施形態では、プリフォームPに保温ヒーター34による保温処理を施しつつ、プリフォームPに各種殺菌処理器(光照射器51、殺菌剤供給器52)による殺菌処理を施すようになっている。
【0025】
ここで、保温ヒーター34によるプリフォームPの加熱度合いは、成形温度に加熱されたプリフォームP(特にプリフォームPの胴部P1)の温度が成形温度の範囲内に維持されるように(更に好ましくは、プリフォームPの温度が上がることの無いように)設定され、好ましくは、加熱されるプリフォームPの胴部P1の温度が100℃以上(かつ130℃以下)を維持するように設定される。
なお、このように、保温ヒーター34による加熱によってプリフォームPの胴部P1の温度を100℃以上に維持することにより、搬送による温度低下を防止できる。よって、光照射により殺菌を行う場合は、成形温度を維持したままUV光を照射でき、表面温度が常温に近い状態でのUV殺菌より高い殺菌効果を得られる。また、殺菌剤で殺菌を行う場合は、殺菌剤の噴出による温度低下を防止できる。
【0026】
エアー噴出器(図示しない)は、昇温ヒーター33による加熱によってプリフォームPの口部P2の温度が上昇し過ぎることを抑制し、プリフォームPの口部P2に熱による変形が生じることを防止するように、無菌化されていないエアーを導入してプリフォームPの口部P2に向けて噴出するものであり、昇温エリアA2においてプリフォームPの搬送経路に沿って複数設置されている。エアー噴出器に代わり、昇温ヒーター33の熱を遮蔽して口部P2の加熱を防ぐ遮蔽板を設置しても良い。
ここで、エアー噴出器(図示しない)は、無菌化されていないエアーを導入して昇温エリアA2内において噴出するものであることから、昇温エリアA2は、エアー噴出器(図示しない)によって導入される菌等によってその雰囲気が汚染されるエリアになる。エアー噴出器が設置されていない場合であっても、生産前の環境殺菌行われないため、昇温エリアA2は汚染されたエリアとなる。
【0027】
なお、オーブン内殺菌エリアA3には、上記のエアー噴出器が設置されていないため、オーブン内殺菌エリアA3内の雰囲気は、昇温エリアA2内の雰囲気と比較して汚染度合いが低い。
また、オーブン内殺菌エリアA3は、昇温エリアA2に直接的に連通して設けられているため、オーブン内殺菌エリアA3内の雰囲気は、オーブン内殺菌エリアA3の下流側の移送エリアA4内の雰囲気と比較して汚染度合いが高い、言い換えると、移送エリアA4内はオーブン内殺菌エリアA3内よりも清浄な状態になっている。
【0028】
ここで、移送エリアA4は、
図1や
図2に示すように、オーブン内殺菌エリアA3の下流側のエリアであり、チャンバーによって覆われ、HEPAフィルタを通した無菌エアーをFFUにより上部から吹き込むことで無菌雰囲気かつ陽圧に保たれる。
【0029】
また、オーブン内殺菌エリアA3には、
図2に示すように、HEPAフィルタを通した無菌エアーを送り出すFFUから殺菌チャンバー32(オーブン内殺菌エリアA3)内に無菌エアーを供給するための導入口35が設けられている。
また、殺菌チャンバー32の上流側開口部の下流側、上流側、真上のいずれか1箇所または複数箇所に、空気を排出する排出口36を設けてもよい。
具体的には、オーブン内殺菌エリアA3において、
図2に示すように、殺菌チャンバー32の上流側開口部の近傍位置であって、導入口35よりも上流側であり殺菌チャンバー32の上流側開口部の下流側の位置に、オーブン内殺菌エリアA3内の空気を殺菌チャンバー32(オーブンチャンバー31)外に排出するための排出口36を設けてもよい。
また、排出口36を、殺菌チャンバー32の上流側開口部の近傍位置であって、昇温エリアA2内における下流側の位置であり殺菌チャンバー32の上流側開口部の上流側の位置、または、殺菌チャンバー32の上流側開口部の真上の位置に設け、オーブン内殺菌エリアA3内から昇温エリアA2に流出した(または流出しようとする)空気を昇温エリアA2外に排出するようにしてもよい。
これにより、オーブン内殺菌エリアA3(殺菌チャンバー32)の気圧を制御し、オーブン内殺菌エリアA3(殺菌チャンバー32)内に、下流側から上流側に向けた空気の流れを形成し、オーブン内殺菌エリアA3の汚染された空気が移送エリアA4に侵入することが抑制される。また、排出口36によりオーブン内殺菌エリアA3内の殺菌剤ガスが昇温エリアA2に広がることが抑制される。また、さらにオーブン内殺菌エリアA3と昇温エリアA2の間に殺菌剤ガスを回収するためのエリアを設置してもよい。
【0030】
また、オーブン内殺菌エリアA3(殺菌チャンバー32)内の気圧は、移送エリアA4内の気圧よりも低圧に維持されている。これにより、オーブン内殺菌エリアA3内の空気が移送エリアA4に侵入することが抑制され、また、移送エリアA4側からオーブン内殺菌エリアA3側に向けた空気の流れを形成することで、昇温エリアA2の汚染された空気がオーブン内殺菌エリアA3に侵入することが抑制される。
【0031】
また、オーブン内殺菌エリアA3(殺菌チャンバー32)内の気圧は、昇温エリアA2内の気圧よりも高圧に維持されており、これにより、昇温エリアA2の汚染された空気がオーブン内殺菌エリアA3に侵入することが抑制される。
【0032】
また、本実施形態では、
図1や
図2に示すように、移送エリアA4が、オーブン内殺菌エリアA3の下流側に隣接する第1エリアA4-1と、第1エリアA4-1の下流側に隣接する第2エリア4-2とを有しており、第2エリア4-2内の気圧は、第1エリアA4-1内の気圧よりも高圧に維持されている。これにより、移送エリアA4内に下流側から上流側に向けた空気の流れを形成し、オーブン内殺菌エリアA3の汚染された空気が移送エリアA4に侵入することがより確実に抑制される。移送エリアA4は第1エリアA4-1と第2エリア4-2に分けずに1つのエリアとしてもよい。
【0033】
また、移送エリアA4には、
図2に示すように、FFUから移送エリアA4内に無菌エアーを供給するための導入口23が設けられている。
また、移送エリアA4には、
図2に示すように、導入口23の上流側に、移送エリアA4内の空気を外部(チャンバー外)に排出するための排出口24が設けられている。
これにより、移送エリアA4内の気圧を制御し、移送エリアA4内に、下流側から上流側に向けた空気の流れを形成し、オーブン内殺菌エリアA3の汚染された空気が移送エリアA4に侵入することが抑制される。
導入口23及び排出口24は、第1エリアA4-1及び/または第2エリア4-2に設け、各エリアを個別に気圧制御できるようにしてもよい。
また、第2エリアA4-2で殺菌剤による殺菌を行う場合は、第1エリアA4-1と第2エリア4-2との間の開口部の上流側、下流側、真上のいずれかに排出口24を設け、殺菌剤ガスが第1エリアA4-1に広がるのを抑制してもよい。
【0034】
プリフォーム搬送機構40は、入口部21から投入されたプリフォームPをブロー成形ターレット22に搬送するものであり、
図1や
図2に示すように、主にオーブンエリアA1においてプリフォームPを搬送する搬送機41と、オーブンエリアA1から搬出されたプリフォームPをブロー成形ターレット22に向けて搬送する複数のターレット42とを備えている。
【0035】
搬送機41は、
図2や
図3に示すように、同じ保持具41a(本実施形態では、プリフォームP内に挿入されるマンドレル)によって同じプリフォームPを保持した状態を維持しつつ、昇温エリアA2およびオーブン内殺菌エリアA3に亘ってプリフォームPを搬送するように構成され、本実施形態では、保持具41aをターレットによって環状に周回走行させるように構成されている。
【0036】
搬送機41は、正立状態(
図3に示すように、プリフォームPの口部P2側を上方に向けた上向き状態)のプリフォームPを保持した状態で、プリフォームPをその軸線Xを中心として回転させながら搬送するように構成されている。
これにより、
図2や
図3に示すように、搬送ルートRの側方に設置された昇温ヒーター33および保温ヒーター34や後述する各種殺菌処理器(光照射器51、殺菌剤供給器52)によって、回転するプリフォームPに対して外周側から加熱処理や殺菌処理を施すことが可能であり、これにより、プリフォームPの外表面に満遍なく加熱処理や殺菌処理を施すことができる。
【0037】
なお、
図1や
図2から分かるように、搬送機41を設置する関係上、オーブンチャンバー31には、昇温エリアA2と移送エリアA4とを連通させることになる開口部が設けられることになるが、当該開口部については、昇温エリアA2と移送エリアA4との間における空気の流動を低く抑えるために極力小さく設けるのが好ましい。
【0038】
ターレット42は、移送エリアA4や成形エリアA5においてプリフォームPを搬送するものであり、これらターレット42は、プリフォームPを外周側から把持する複数のグリッパー(図示しない)を有している。前記グリッパーは、UV照射あるいは殺菌剤にて把持部を殺菌しておくことが望ましい。
【0039】
なお、プリフォーム搬送機構40によるプリフォームPの搬送姿勢については、正立状態や、倒立状態(すなわち、プリフォームPの口部P2側を下方に向けた下向き状態)や、横向き状態(すなわち、プリフォームPの口部P2側を側方に向けた横向き状態)等、如何なるものでもよい。
【0040】
殺菌処理機構50は、充填装置60における内容物の充填時において、容器が商業的無菌状態(すなわち、通常の非冷蔵貯蔵・流通条件下で当該飲料に発育しうる公衆衛生上有害なすべての微生物を死滅させた状態)となるように、殺菌処理を施すものである。
【0041】
本実施形態では、殺菌処理機構50は、無菌ブロー成形後における容器段階での殺菌処理を施すことなく(容器段階での殺菌処理を必要とすることなく)、無菌ブロー成形によって容器を成形する前のプリフォーム段階での殺菌処理のみで容器の殺菌を完了させる(更に具体的には、本実施形態では、移送エリアA4までに殺菌を完了させ、殺菌が完了したプリフォームPを成形エリアA5に搬入する)ように構成され、言い換えると、プリフォーム段階での殺菌処理のみで容器が商業的無菌状態になるように構成され、更に言い換えると、プリフォーム段階での殺菌処理のみで、(プリフォームPの内表面および外表面を含む全外面について、)殺菌対象となる菌(容器内に充填する内容物内で増殖し得る菌であり、カビ、芽胞菌、等)について、殺菌効果5D以上を得るように構成されている。
なお、殺菌効果(D)は、殺菌効果(D)=LOG((初発菌数)/(生残菌数))の式で表されるものであり、例えば、100個の菌数が10個に減少した場合、LOG(100/10)=1Dとなる。
また、充填する内容物が低酸性飲料である場合には、カビ、芽胞菌に対して5~6D以上の殺菌効果が必要であり、充填する内容物がミネラルウォーターや緑茶等である場合には、カビに対して5~6D以上の殺菌効果が必要となる。
【0042】
殺菌処理機構50は、
図2や
図3に示すように、オーブン内殺菌エリアA3に設置された、光照射器51および殺菌剤供給器52を備えている。
【0043】
光照射器51は、その光源としてUV光を照射するUVランプ(UV-LED含む)やキセノンランプ(キセノンアークランプ)を備え、プリフォームPに対して光照射による殺菌処理を施すものであり、本実施形態では、
図3に示すように、プリフォームPの(少なくとも)胴部P1の外表面に光照射を施すように設置されている。
【0044】
このように、殺菌処理機構50を構成する殺菌処理器として光照射器51を採用した場合、光照射によって芽胞菌を殺菌することが可能であるため、無菌成形装置20の使用範囲を緑茶や水以外の内容物にも広げることができるばかりでなく、光照射によって、カビや酵母菌についても殺菌することが可能であるため、これらカビや酵母菌の付着数を一定値以下に抑えるための殺菌剤の量等を低減することができ、その結果、成形される容器に殺菌剤が残留してしまうリスクを低減できる。加えて、殺菌光の積算光量を低減することができ、その結果、生産時のエネルギーコストを削減できる。
なお、光照射器51を、光照射器以外の様態、例えば過酸化水素や過酢酸等の殺菌剤を噴出して供給する供給器として構成してもよい。
【0045】
殺菌剤供給器52は、
図3に示すように、プリフォームPの(少なくとも)口部P2の外表面に殺菌処理を施すものであり、本実施形態では、プリフォームPの口部P2の外表面に、過酸化水素や過酢酸等の殺菌剤を噴出して供給する(塗布する)殺菌剤供給器として構成されている。
なお、殺菌剤供給器52を、殺菌剤供給器以外の態様、例えば、UV光やキセノン光の照射によって殺菌処理を施す光照射器や、電子線(EB)を照射する照射器として構成してもよい。
【0046】
このように、光照射器51および殺菌剤供給器52は、昇温エリアA2の下流側に隣接して配置されたオーブン内殺菌エリアA3に設置され、殺菌処理機構50は、昇温エリアA2に設置された昇温ヒーター33によって無菌ブロー成形時の成形温度(約120℃)まで昇温させたプリフォームPに対して、オーブン内殺菌エリアA3において殺菌処理を行うように構成されている。
【0047】
殺菌処理機構50は、上述した光照射器51や殺菌剤供給器52以外に、
図2に示すように、オーブン内殺菌エリアA3の下流側(かつブロー成形ターレット22の上流側、本実施形態では、移送エリアA4)に設置される殺菌処理器53を備えている。
殺菌処理器53は、本実施形態では、プリフォームPの内表面(胴部P1および口部P2の内表面)に、過酸化水素や過酢酸等の殺菌剤を噴出して供給する(塗布する)殺菌剤供給器として構成されている。
なお、殺菌処理器53を、殺菌剤供給器以外の態様、例えば、UV光やキセノン光の照射によって殺菌処理を施す光照射器や電子線(EB)を照射する照射器として構成してもよい。
【0048】
本実施形態では、オーブン内殺菌エリアA3の下流側において、殺菌処理器53によってプリフォームPの内表面に殺菌処理を施しているが、オーブン内殺菌エリアA3の下流側においてプリフォームPの口部P2の外表面にも殺菌処理を施すようにしてもよい。
また、オーブン内殺菌エリアA3の下流側においてプリフォームPの口部P2の外表面に殺菌処理を施す場合、当該オーブン内殺菌エリアA3の下流側における口部P2の外表面への殺菌処理を、オーブン内殺菌エリアA3における口部P2の外表面への殺菌処理の代わりに実施してもよく、または、オーブン内殺菌エリアA3における口部P2の外表面への殺菌処理に加えて実施してもよい。
オーブン内殺菌エリアA3における口部P2の外表面への殺菌処理に加えてオーブン内殺菌エリアA3の下流側における口部P2の外表面への殺菌処理を実施する場合、プリフォームPの他の箇所(胴部P1の外表面および内表面、口部P2の内表面)と比較して殺菌し難い口部P2の外表面への殺菌処理について、各工程毎の負荷を低減することが可能であるため、オーブン内殺菌エリアA3の殺菌剤供給器52の構成を簡素化することができ、オーブン内殺菌エリアA3のスペースを広く確保する必要が無くなる。また、オーブン内殺菌エリアA3における口部P2の外表面への殺菌処理とオーブン内殺菌エリアA3の下流側における口部P2の外表面への殺菌処理とで異なる殺菌手段(殺菌剤塗布、光照射、等)を採用することも可能であるため、殺菌効果をより高めることもできる。
【0049】
充填装置60は、無菌成形装置20の下流側に設置され、
図1に示すように、容器内に内容物を無菌充填する充填部61と、充填部61の下流側に配置され容器の口部に殺菌済みのキャップを装着するキャッピング部62とを備えている。
【0050】
充填装置60における各工程は、その内部が無菌状態に維持されたチャンバー内で行われる。
また、無菌成形装置20と充填装置60との間で容器を搬送する区間においても、容器の無菌状態が維持され、言い換えると、ブロー成形ターレット22によって容器を無菌ブロー成形した後から充填部61において容器内に内容物を無菌充填するまでの全区間において容器の無菌状態が維持され、本実施形態では、上記全区間をチャンバーによって覆うことによって、当該区間において容器の無菌状態を維持している。
【0051】
次に、プリフォームPの表面温度と光照射による殺菌効果とを確認するために行った試験について、
図4に基づいて説明する。
【0052】
本試験では、まず、プリフォームPの胴部P1の外表面上における10カ所の測定ポイントTのそれぞれに、芽胞菌(B.atrophaeus胞子)を5.8×102cfu、カビ菌(A.niger胞子)を3.7×102cfu付着させた後、クリーンルーム内で乾燥させることで、植菌したプリフォームPを用意した。なお、本試験では、高さ92mm、胴部P1の外径22mm、重量19gのプリフォームPを用いた。
【0053】
次に、実験例1として、30本の上記条件の植菌したプリフォームPについて、プリフォームPの胴部P1の外表面の表面温度が127℃程度になるように、赤外線ヒーターによってプリフォームPの胴部P1に昇温処理を施した直後に、プリフォームPの胴部P1における積算照度が200mJ/cm2程度となるように、UV-LEDによってUV光をプリフォームPに5秒間照射し、その後、無菌環境でプリフォームPを冷却させ、測定ポイントTにおける生残菌数を以下の定法で計測した。
すなわち、殺菌処理後の計測ポイントTの表面をスワブ法にて全量ふき取り回収し、滅菌希釈液に懸濁し、希釈倍率毎に標準寒天培地上でメンブランフィルター法にて菌数計測した。培地培養条件は30℃で1週間保管し、希釈倍率に応じて出現したコロニー数を計測することで生残菌数とした。
UV光の照射装置としては下記を用いた。
照射装置:、紫外線LED9個配置(日機装製,波長265nm標準(最小260nm、最大270nm、半値全幅13nm)
【0054】
また、比較例1として、30本の上記条件の植菌したプリフォームPについて、プリフォームPの胴部P1の外表面の表面温度が127℃程度になるように、赤外線ヒーターによってプリフォームPの胴部P1に昇温処理を施した後、15秒待ち、その後、プリフォームPの胴部P1における積算照度が200mJ/cm2程度となるように、UV-LEDによってUV光をプリフォームPに5秒間照射し、その後、無菌環境でプリフォームPを冷却させ、測定ポイントTにおける生残菌数を上記条件の定法で計測した。
【0055】
また、比較例2として、30本の上記条件の植菌したプリフォームPについて、(上記条件の赤外線ヒーターによる昇温処理を施すことなく)プリフォームPの胴部P1における積算照度(積算光量)が400mJ/cm2程度となるように、UV-LEDによってUV光をプリフォームPに5秒間照射し、その後、無菌環境でプリフォームPを冷却させ、測定ポイントTにおける生残菌数を上記条件の定法で計測した。
【0056】
また、比較例3として、30本の上記条件の植菌したプリフォームPについて、(上記条件の赤外線ヒーターによる昇温処理を施すことなく)プリフォームPの胴部P1における積算照度が200mJ/cm2程度となるように、UV-LEDによってUV光をプリフォームPに5秒間照射し、その後、無菌環境でプリフォームPを冷却させ、測定ポイントTにおける生残菌数を上記条件の定法で計測した。
【0057】
また、比較例4として、30本の上記条件の植菌したプリフォームPについて、(上記条件のUV-LEDによるUV光の照射を施すことなく)上記条件の赤外線ヒーターによる昇温処理(および上記条件の無菌環境での冷却)のみを施した後、測定ポイントTにおける生残菌数を上記条件の定法で計測した。
【0058】
なお、上記の積算照度(積算光量)については、UVスケール(富士フィルム製)を用いて調整した。
UVスケールを用いた紫外線光の光量の算出方法は、以下の通りである。
(使用したUVスケール)
フィルムメーカー:富士フィルム
フィルムタイプ:UVスケールL
適用ランプ種:低圧水銀ランプ モードで測定
測定光量範囲:20-3000mJ/cm2
対応波長:200nm-420nm
(紫外線光の光量の算出方法)
上記のUVスケール(フィルム)を貼り付けたPET片に対して、本試験で使用したUVランプによって紫外線光を照射し、当該紫外線光を照射されたUVスケールの発色を基に、紫外線光の光量を測定した。なお、計測ポイントでの測定光量は、計測ポイントを中心にUVスケール10mm四方内の平均積算光量値(単位面積に対して0.125mm四方に区分して計測した光量の平均値)を算出して割り出した。
【0059】
上記試験の結果については、以下の通りである。
【0060】
まず、実施例1では、測定ポイントTにおいて芽胞菌およびカビ菌のいずれも検出されず、(生残菌数測定法によって算出したところ)芽胞菌およびカビ菌のいずれについても、5.0D以上の殺菌効果が得られることが確認された。
【0061】
また、比較例1では、カビ菌については、5.0D以上の殺菌効果が得られることが確認されたものの、芽胞菌については、3.3D程度の殺菌効果しか得られないことが確認された。
【0062】
また、比較例2では、芽胞菌については、5.0D以上の殺菌効果が得られることが確認されたものの、カビ菌については、2.3D程度の殺菌効果しか得られないことが確認された。
【0063】
また、比較例3では、芽胞菌およびカビ菌のいずれについても、低い殺菌効果(2.6D、0.8D)しか得られないことが確認された。
【0064】
また、比較例4では、カビ菌については、5.0D以上の殺菌効果が得られることが確認されたものの、芽胞菌については、0.6D程度の殺菌効果しか得られないことが確認された。
【0065】
上記の実施例1および比較例1~4の結果から、赤外線ヒーターによってプリフォームPの胴部P1に昇温処理を施した直後に、言い換えると、プリフォームPの表面温度が高い状態で、光照射による殺菌処理を施した場合に、光照射による殺菌効果がより向上し、芽胞菌およびカビ菌のいずれについても、(5.0D以上の)高い殺菌効果を得られることが確認された。
【0066】
このようにして得られた本実施形態の無菌充填システム10では、昇温エリアA2の下流側に隣接してオーブン内殺菌エリアA3を設けることにより、昇温エリアA2で昇温させたプリフォームPの温度を高く維持した状態で殺菌処理を施すことが可能であるため、高い殺菌効果を得ることができる。
【0067】
また、複数の保持具間でのプリフォームPの受け渡し等を行うことなく、同じ保持具41aによって同じプリフォームPを保持した状態で、昇温エリアA2およびオーブン内殺菌エリアA3に亘ってプリフォームPを搬送するように構成されていることにより、昇温エリアA2で昇温されたプリフォームPの温度を高く維持した状態でプリフォームPをオーブン内殺菌エリアA3に素早く移動させて、昇温エリアA2において昇温処理を施されたプリフォームPの被加熱部に対してオーブン内殺菌エリアA3においてそのまま殺菌処理を施すことが可能であるため、オーブン内殺菌エリアA3における殺菌処理によって高い殺菌効果を得ることができる。
【0068】
また、複数の保持具間でのプリフォームPの受け渡しのための設備やスペースをオーブンエリアA1内に準備する必要がないため、オーブンエリアA1内の設備環境を簡素に維持することができ、特にオーブン内殺菌エリアA3の雰囲気の汚染レベルを低く抑えることができる。
【0069】
また、オーブン内殺菌エリアA3をオーブンエリアA1内に設けることにより、オーブンエリアA1の下流側の移送エリアA4に殺菌処理の設備を設置しなくて済む、または、移送エリアA4に設置される殺菌処理器53の設備構成を簡素化することが可能であるため、移送エリアA4の衛生性を確保し易くなる。
【0070】
また、昇温エリアA2に設置された昇温ヒーター33によって無菌ブロー成形時の成形温度まで昇温させた直後のプリフォームPに対して殺菌を行うことで、高い殺菌効果を得ることができる。
【0071】
また、オーブン内殺菌エリアA3に、プリフォームPに対して光照射による殺菌処理を施す光照射器51が設置されていることにより、昇温エリアA2で昇温されたプリフォームPの温度を高く維持した状態で殺菌処理を施すことが可能であるため、被殺菌箇所の表面温度が高い場合に光照射による殺菌効果がより向上することを利用して、高い殺菌効果を得ることができる。
【0072】
また、殺菌チャンバー32を設けることにより、オーブンエリアA1内における空気の流動を制御して、昇温エリアA2内の空気のオーブン内殺菌エリアA3への侵入を抑制することが可能であるため、昇温エリアA2の空気によってオーブン内殺菌エリアA3が汚染されることを抑制できる。
【0073】
また、移送エリアA4と昇温エリアA2との間に、殺菌チャンバー32で区画されたオーブン内殺菌エリアA3を設けることにより、当該オーブン内殺菌エリアA3を、昇温エリアA2内の空気が移送エリアA4にそのまま持ち込まれることを抑制する緩衝領域として機能させることも可能であるため、昇温エリアA2内の空気によって移送エリアA4の雰囲気が汚染されることを抑制できる。
【0074】
また、オーブン内殺菌エリアA3に、プリフォームPに対して殺菌剤を供給する殺菌剤供給器として構成された殺菌剤供給器52が設置されていることにより、昇温エリアA2で昇温されたプリフォームPの温度を高く維持した状態で殺菌剤による殺菌処理を施すことで高い殺菌効果を得ることができるばかりでなく、オーブン内殺菌エリアA3内の雰囲気を殺菌剤雰囲気とすることで、オーブン内殺菌エリアA3内の雰囲気の汚染レベルを下げることが可能であるため、オーブン内殺菌エリアA3を雰囲気の汚染レベルの緩衝領域として良好に機能させて、昇温エリアA2内の空気によって移送エリアA4の雰囲気が汚染されることを抑制できる。
【0075】
また、プリフォームPの口部P2に向けてエアーを噴出するエアー噴出器(図示しない)を昇温エリアA2に設置することにより、昇温ヒーター33による加熱によってプリフォームPの口部P2の温度が上昇することを抑えつつ、エアー噴出器をオーブン内殺菌エリアA3に設置しないことにより、エアー噴出器から噴出されるエアーに起因してオーブン内殺菌エリアA3内が汚染されることを回避できる。
【0076】
また、オーブン内殺菌エリアA3に保温ヒーター34を設置することにより、オーブン内殺菌エリアA3において殺菌処理によるプリフォームPの温度低下を防ぎ、プリフォームPの温度を高く維持できるばかりでなく、オーブン内殺菌エリアA3および昇温エリアA2の室温を高く維持することができる。
【0077】
また、本実施形態のように、オーブン内殺菌エリアA3内に保温ヒーター34および光照射器51を設置した場合、保温ヒーター34の熱によってプリフォームPの外表面のカビを殺菌しつつ、光照射器51による光照射によってプリフォームPの外表面の芽胞菌を殺菌することができる。
【0078】
また、本実施形態のように、オーブン内殺菌エリアA3内に保温ヒーター34および殺菌剤供給器として構成された殺菌剤供給器52を設置した場合、殺菌剤塗布によるプリフォームPの温度低下を抑制することが可能であるため、殺菌剤による殺菌効果を良好に得ることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。また、上述した実施形態や後述する変形例の各構成を、任意に組み合わせて無菌充填システム10(無菌成形装置20)を構成しても何ら構わない。
【0080】
例えば、上述した実施形態では、オーブン内殺菌エリアA3が、オーブンエリアA1内で最下流に設定されたエリアであるものとして説明したが、オーブンエリアA1内のオーブン内殺菌エリアA3よりも下流側に他のエリアを設けてもよい。
【0081】
また、殺菌処理機構50の具体的態様については、上記に限定されず、少なくともオーブン内殺菌エリアA3において殺菌処理を行うものであれば、如何なるものでもよい。
例えば、上述した実施形態では、オーブン内殺菌エリアA3に、光照射器51および殺菌剤供給器52が設置されているものとして説明したが、光照射器51または殺菌剤供給器52のいずれか一方のみをオーブン内殺菌エリアA3に設置してもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、オーブン内殺菌エリアA3においてプリフォームPの胴部P1の外表面を殺菌する殺菌処理器として、光照射器51が設置されているものとして説明したが、オーブン内殺菌エリアA3にプリフォームPの胴部P1の外表面を殺菌する殺菌処理器として、プリフォームPの胴部P1の外表面に殺菌剤を供給する殺菌剤供給器を設置してもよい。
【0083】
また、上述した実施形態では、オーブン内殺菌エリアA3の下流側においてプリフォームPの内表面の殺菌処理を施すものとして説明したが、オーブン内殺菌エリアA3においてプリフォームPの内表面に殺菌処理を施すようにしてもよい。この場合、オーブン内殺菌エリアA3においてプリフォームPの内表面に殺菌処理を施す殺菌処理器の具体的態様は、如何なるものでもよいが、一例として、上述した保持具(マンドレル)41aに殺菌剤を通すための流路を形成し、保持具41aによって保持された状態のプリフォームPの内表面に、上記流路を通じて殺菌剤を供給するようにしてもよい。また、一例として上述した保持具(マンドレル)41aの先端に光照射器を設置し、保持具41aによって保持された状態のプリフォームPの内表面を、光照射によって殺菌するようにしてもよい。
なお、移送エリアA4ではなく、オーブン内殺菌エリアA3においてプリフォームPの内表面に殺菌処理を施すようにした場合、無菌状態で維持された移送エリアA4においてプリフォームPのアニーリングが行われることになる。
【0084】
また、オーブン内殺菌エリアA3以外のエリア(オーブンエリアA1よりも下流側のエリアやオーブンエリアA1よりも上流側のエリア)については、例えば、オーブンエリアA1よりも上流側のエリアにプリフォームPの内表面に殺菌処理を施す殺菌処理器を設置する等、任意の殺菌処理器を設置してもよく、また、殺菌処理器を設置しなくてもよい。
なお、オーブン内殺菌エリアA3以外のエリアに設置する殺菌処理器の具体的態様については、光照射を利用して殺菌処理を施すものや、殺菌剤を供給することで殺菌処理を施すもの等、如何なるものでもよく、また、当該殺菌処理器によるプリフォームPの殺菌箇所についても任意に設定すればよい。
【0085】
また、上述した以外の各種処理器を殺菌処理機構50の構成要素として設置してもよく、例えば、プリフォームPに温水を供給する温水供給器や、プリフォームPに付着した塵埃を除去する除塵器や、プリフォームPに電子線(EB)を照射する照射器や、プリフォームPに水蒸気(または過熱水蒸気)を吹き付ける蒸気噴出器等を設置してもよい。
【0086】
また、各種処理器(上述した光照射器、殺菌処理器、殺菌剤供給器)によるプリフォームPにおける殺菌箇所は、実施形態に応じて任意に決定すればよく、例えば、上述した実施形態では、光照射器51によってプリフォームPの胴部P1の外表面に殺菌処理を施すものとして説明したが、当該光照射器51によって胴部P1の外表面以外の箇所に殺菌処理を施すように設定してもよい。
【0087】
また、殺菌処理機構50を、オーブン内殺菌エリアA3において、プリフォームPの外表面および内表面に対して殺菌処理を施すように構成してもよく、この場合、オーブンエリアA1の下流側の移送エリアA4に殺菌処理の設備を設置しなくて済む、または、移送エリアA4に設置される殺菌処理の設備構成を簡素化することが可能であるため、移送エリアA4の衛生性を確保し易くなる。
【0088】
また、上述した実施形態では、オーブン内殺菌エリアA3に保温ヒーター34が設置されるものとして説明したが、保温ヒーター34をオーブン内殺菌エリアA3に設けなくてもよく、また、(オーブン内殺菌エリアA3の保温ヒーター34の代わりに、または、オーブン内殺菌エリアA3の保温ヒーター34に加えて、)保温ヒーター34を、オーブン内殺菌エリアA3よりも下流側のエリア(移送エリアA4等)に設けてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 ・・・ 無菌充填システム
20 ・・・ 無菌成形装置
21 ・・・ 入口部
22 ・・・ ブロー成形ターレット
23 ・・・ 導入口
24 ・・・ 排出口
30 ・・・ オーブン機構
31 ・・・ オーブンチャンバー
32 ・・・ 殺菌チャンバー
33 ・・・ 昇温ヒーター
34 ・・・ 保温ヒーター
35 ・・・ 導入口
36 ・・・ 排出口
40 ・・・ プリフォーム搬送機構
41 ・・・ 搬送機
41a ・・・ 保持具
42 ・・・ ターレット
50 ・・・ 殺菌処理機構
51 ・・・ 光照射器
52 ・・・ 殺菌剤供給器
53 ・・・ 殺菌処理器
60 ・・・ 充填装置
61 ・・・ 充填部
62 ・・・ キャッピング部
P ・・・ プリフォーム
P1 ・・・ プリフォームの胴部
P2 ・・・ プリフォームの口部
A1 ・・・ オーブンエリア
A2 ・・・ 昇温エリア
A3 ・・・ オーブン内殺菌エリア
A4 ・・・ 移送エリア
A4-1 ・・・ 第1エリア
A4-2 ・・・ 第2エリア
A5 ・・・ 成形エリア
R ・・・ プリフォームの搬送ルート