(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006102
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】密封構造
(51)【国際特許分類】
F16L 23/032 20060101AFI20250109BHJP
F16J 15/08 20060101ALI20250109BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F16L23/032
F16J15/08 J
F16J15/08 L
F16L23/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106691
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岸 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 宇善
【テーマコード(参考)】
3H016
3J040
【Fターム(参考)】
3H016AA06
3H016AB08
3H016AC01
3H016AD01
3H016AD02
3H016AD08
3J040AA01
3J040AA12
3J040BA07
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA42
3J040EA46
3J040FA01
3J040FA05
3J040HA02
(57)【要約】
【課題】低コスト化を図るとともに環境面に優れる密封構造を提供する。
【解決手段】密封構造は、開口が設けられる第1面を有する第1ハウジングと、第2面を有する第2ハウジングと、第1面と第2面との間に当該開口の周囲に沿って配置される複数のガスケットを含むガスケット群と、を備え、複数のガスケットは、第1端面を有する第1ガスケットと、第1端面とは反対の方向を向く第2端面を有し、当該開口の外縁に沿う方向で第1ガスケットに隣り合う第2ガスケットと、を含み、第1ガスケットおよび第2ガスケットのそれぞれは、シート状の金属基材と、金属基材の両面に積層される1対の弾性体層と、を有し、第1面には、第1端面に対向する第1段差面が設けられ、第2面には、第2端面に対向する第2段差面が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられる第1面を有する第1ハウジングと、
第2面を有する第2ハウジングと、
前記第1面と前記第2面との間に前記開口の周囲に沿って配置される複数のガスケットを含むガスケット群と、を備え、
前記複数のガスケットは、
第1端面を有する第1ガスケットと、
前記第1端面とは反対の方向を向く第2端面を有し、前記開口の外縁に沿う方向で前記第1ガスケットに隣り合う第2ガスケットと、を含み、
前記第1ガスケットおよび前記第2ガスケットのそれぞれは、
シート状の金属基材と、
前記金属基材の両面に積層される1対の弾性体層と、を有し、
前記第1面には、前記第1端面に対向する第1段差面が設けられ、
前記第2面には、前記第2端面に対向する第2段差面が設けられる、
密封構造。
【請求項2】
前記ガスケット群の厚さ方向にみて、前記第1端面および前記第2端面のそれぞれは、前記第1段差面と前記第2段差面との間に位置する、
請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記ガスケット群の厚さ方向にみて、前記第1端面が前記第2ガスケットに重なり、かつ、前記第2端面が前記第1ガスケットに重なる、
請求項2に記載の密封構造。
【請求項4】
前記第1段差面および前記第2段差面のうちの一方または両方には、前記開口の周囲に沿って並ぶ複数の凸部が設けられる、
請求項1に記載の密封構造。
【請求項5】
前記第1端面と前記第1段差面との間の隙間と、前記第2端面と前記第2段差面との間の隙間と、のそれぞれには、液体ガスケットが充填される、
請求項1に記載の密封構造。
【請求項6】
前記第1段差面の高さは、前記第1ガスケットの厚さよりも小さく、かつ、前記金属基材の厚さよりも大きく、
前記第2段差面の高さは、前記第2ガスケットの厚さよりも小さく、かつ、前記金属基材の厚さよりも大きい、
請求項1に記載の密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
1対のハウジング間の隙間を密封するガスケットの一種として、金属基材の両面にゴム等の弾性層を積層した積層タイプのガスケットがある。この種のガスケットは、一般に、開口を有する平面視形状をなしており、例えば、特許文献1に開示されるように、金属板の両面にゴム等を一様に塗布した積層板を打抜き加工することにより得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のガスケットでは、打ち抜き加工による製造時に開口部分が抜きカスとして廃却されるので、低コスト化および環境面の点で改善の余地がある。ここで、このような抜きカスを少なくするため、開口を有する平面視形状を分割した形状の複数のガスケットを打抜き加工により形成した後、当該複数のガスケットの端面同士を突き合せた状態で溶接または接着等により接合する方法が考えられる。しかし、この方法では、溶接または接着等による接合部分が凸状をなしてしまうので、1対のハウジング間を締め付けても、ガスケットに生じる面圧を均一にすることが難しいという問題がある。仮に、凸状の当該接合部分を避けるように、1対のハウジングに溝を設けると、当該溝の箇所においてガスケットに面圧を生じさせることができず、この結果、十分な密封性能を得ることができない。
【0005】
以上の事情を考慮して、本開示は、低コスト化を図るとともに環境面に優れる密封構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示の一態様に係る密封構造は、開口が設けられる第1面を有する第1ハウジングと、第2面を有する第2ハウジングと、前記第1面と前記第2面との間に前記開口の周囲に沿って配置される複数のガスケットを含むガスケット群と、を備え、前記複数のガスケットは、第1端面を有する第1ガスケットと、前記第1端面とは反対の方向を向く第2端面を有し、前記開口の外縁に沿う方向で前記第1ガスケットに隣り合う第2ガスケットと、を含み、前記第1ガスケットおよび前記第2ガスケットのそれぞれは、シート状の金属基材と、前記金属基材の両面に積層される1対の弾性体層と、を有し、前記第1面には、前記第1端面に対向する第1段差面が設けられ、前記第2面には、前記第2端面に対向する第2段差面が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る密封構造の構成例の断面図である。
【
図2】第1実施形態におけるガスケット群の平面図である。
【
図4】第1実施形態における第1ハウジングおよび第1ガスケットの斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る密封構造の構成例の断面図である。
【
図6】第2実施形態におけるガスケット群の平面図である。
【
図8】第2実施形態における第1ハウジングおよび第1ガスケットの斜視図である。
【
図11】変形例2における第1ハウジングおよび第1ガスケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本開示の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
1.第1実施形態
1-1.密封構造の概略
図1は、第1実施形態に係る密封構造1の構成例の断面図である。密封構造1は、自動車または産業機械等の機械において液密または気密に接続する構造体である。密封構造1は、
図1に示すように、第1ハウジング10と第2ハウジング20と複数の締結具30とガスケット群40とを有する。以下、密封構造1の各部を順に説明する。
【0010】
なお、以下では、説明の便宜上、軸線AXに沿う一方向が「X1方向」と称され、X1方向と反対の方向がX2方向と称される。軸線AXは、ガスケット群40の締め付け方向に平行であり、かつ、後述の開口OP1の中心を通る仮想直線である。また、以下では、軸線AXまわりの方向、すなわち、後述の開口OP1の外縁に沿う方向を「周方向」という場合があり、軸線AXに沿う方向にみることを「平面視」という場合がある。
【0011】
第1ハウジング10は、第1面F1を有する中空の構造体であり、第1面F1には、開口OP1が設けられる。第1ハウジング10は、例えば、EV(Electric Vehicle)またはHEV(hybrid electric vehicle)に用いるバッテリーケース、モーターハウジング、PCU(Power Control Unit)、ECU(Electronic Control Unit)、インバーターのケース本体である。同様に、第2ハウジング20は、第2面F2を有する中空の構造体であり、第2面F2には、開口OP2が設けられる。第2ハウジング20は、例えば、当該ケース本体に接続されるカバーである。第1ハウジング10および第2ハウジングのそれぞれは、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼または鉄等の金属で構成される。
【0012】
図1に示す例では、第1ハウジング10が第2ハウジング20に対してX2方向の位置に配置される。また、第1ハウジング10および第2ハウジング20のそれぞれは、軸線AXを中心軸とする管体である。ここで、第1ハウジング10のX1方向の端には、フランジ11が設けられる。フランジ11のX1方向を向く面は、第1面F1を構成する。一方、第2ハウジング20のX1方向とは反対のX2方向の端には、フランジ21が設けられる。フランジ11のX2方向を向く面は、第2面F2を構成する。
【0013】
なお、第1ハウジング10および第2ハウジング20の形状は、
図1に示す例に限定されず、任意であり、例えば、フランジを有しない形状であってもよい。ここで、第1ハウジング10は、開口OP1が設けられる第1面F1を有する構成であればよく、
図1に示す例に限定されない。第2ハウジング20は、第2面F2を有する構成であれば、開口OP2を省略した構成でもよく、
図1に示す例に限定されない。また、第2ハウジング20は、中空でなくともよく、中実の構造体であってもよい。
【0014】
第1ハウジング10の第1面F1は、面F1aと面F1bと1対の第1段差面F1cとを有する。面F1aおよび面F1bのそれぞれは、X1方向を向く面である。ただし、面F1aおよび面F1bの高さが互いに異なる。具体的には、面F1aは、面F1bに対してX1方向に位置する。ここで、面F1aおよび面F1bは、軸線AXに沿う方向にみて、開口OP1の外縁に沿う方向で互いに隣り合う。
【0015】
第1段差面F1cは、面F1aおよび面F1bのそれぞれに直交し、かつ、周方向を向く面である。本実施形態では、1対の第1段差面F1cのうち、一方の第1段差面F1cは、面F1aおよび面F1bの周方向での一端同士の間を接続し、他方の第1段差面F1cは、面F1aおよび面F1bの周方向での他端同士の間を接続する。したがって、第1面F1は、軸線AXに沿う方向にみて1対の第1段差面F1cにより面F1aと面F1bとに区分される。
【0016】
一方、第2ハウジング20の第2面F2は、面F2aと面F2bと1対の第2段差面F2cとを有する。面F2aおよび面F2bのそれぞれは、X2方向を向く面である。ただし、面F2aおよび面F2bの高さが互いに異なる。具体的には、面F2aは、面F2bに対してX2方向に位置する。ここで、面F2aおよび面F2bは、軸線AXに沿う方向にみて、開口OP1の外縁に沿う方向で互いに隣り合う。また、軸線AXに沿う方向にみて、第2面F2の面F2aが第1面F1の面F1bに重なるとともに、第2面F2の面F2bが第1面F1の面F1aに重なる。
【0017】
第2段差面F2cは、面F2aおよび面F2bのそれぞれに直交し、かつ、周方向を向く面である。本実施形態では、1対の第2段差面F2cのうち、一方の第2段差面F2cは、面F2aおよび面F2bの周方向での一端同士の間を接続し、他方の第2段差面F2cは、面F2aおよび面F2bの周方向での他端同士の間を接続する。したがって、第2面F2は、軸線AXに沿う方向にみて1対の第2段差面F2cにより面F2aと面F2bとに区分される。
【0018】
ここで、1対の第2段差面F2cは、前述の1対の第1段差面F1cに対応しており、対応する第1段差面F1cとは反対の方向を向く。本実施形態では、軸線AXに沿う方向にみて、1対の第1段差面F1cと1対の第2段差面F2cとが互いに重なるように配置される。すなわち、開口OP1の外縁に沿う方向において1対の第1段差面F1cの位置と1対の第2段差面F2cの位置とが互いに一致する。ここで、「一致」とは、厳密に一致する態様のほか、製造誤差程度の差異を有する態様を含む。
【0019】
第1ハウジング10および第2ハウジング20は、ガスケット群40を介して、複数の締結具30により互いに固定される。
図1に示す例では、複数の締結具30のそれぞれがボルトである。ここで、第1ハウジング10のフランジ11には、締結具30に嵌め合う雌ネジ12が設けられる。一方、第2ハウジング20のフランジ21には、締結具30を挿入するための複数の孔22が設けられる。
【0020】
なお、フランジ11には、雌ネジ12に代えて、締結具30を挿入するための複数の孔が設けられてもよい。この場合、例えば、複数の締結具30と締結具30に嵌め合う複数のナットとにより、第1ハウジング10および第2ハウジング20が互いに固定される。
【0021】
ガスケット群40は、第1ハウジング10の第1面F1と第2ハウジング20の第2面F2との間に開口OP1の周囲に沿って配置される複数のガスケットとして第1ガスケット41および第2ガスケット42を含んでおり、開口OP3を有する枠状をなす。ここで、ガスケット群40の一方の面が第1面F1に密着するとともに、ガスケット群40の他方の面が第2面F2に密着する。これにより、第1ハウジング10の開口OP1と第2ハウジング20の開口OP2とがガスケット群40の開口OP3を介して互いに連通するとともに、第1ハウジング10および第2ハウジング20がガスケット群40を介して液密または気密に接続される。
【0022】
図1に示す例では、ガスケット群40が第1ガスケット41および第2ガスケット42で構成される。このように、第1ガスケット41および第2ガスケット42は、枠状のガスケットを2分割したように構成される。
【0023】
第1ガスケット41および第2ガスケット42のそれぞれは、第1ハウジング10の第1面F1と第2ハウジング20の第2面F2との間に配置されるシート状のシール部材である。
【0024】
第1ガスケット41は、シート状の金属基材41aと、金属基材41aの両面に積層される弾性体層41b、41cとを有する。これらは、X1方向に向けて弾性体層41b、金属基材41a、弾性体層41cの順に積層される。同様に、第2ガスケット42は、シート状の金属基材42aと、金属基材42aの両面に積層される弾性体層42b、42cとを有する。これらは、X1方向に向けて弾性体層42b、金属基材42a、弾性体層42cの順に積層される。
【0025】
金属基材41a、42aのそれぞれは、金属板であり、例えば、ステンレス鋼板、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板およびアルミニウム合板等の金属板で構成される。弾性体層41b、41c、42b、42cのそれぞれは、弾性を有するシート状の部材であり、例えば、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴムまたはシリコンゴム等のゴムで構成される。
【0026】
第1ガスケット41は、前述の第1面F1の面F1bと第2面F2の面F2aとの間に配置される。ここで、第1ガスケット41のX2方向を向く面が面F1bに密着するとともに、第1ガスケット41のX1方向を向く面が面F2aに密着する。また、第1ガスケット41は、面F1bの周方向での全域にわたり配置される。これにより、第1ガスケット41は、1対の第1段差面F1cに接触または近接する。
【0027】
一方、第2ガスケット42は、前述の第1面F1の面F1aと第2面F2の面F2bとの間に配置される。これにより、第2ガスケット42は、軸線AXに沿う方向にみて、開口OP1の外縁に沿う方向で第1ガスケット41に隣り合う。ここで、第2ガスケット42のX1方向を向く面が面F2bに密着するとともに、第2ガスケット42のX2方向を向く面が面F1aに密着する。また、第2ガスケット42は、面F2bの周方向での全域にわたり配置される。これにより、第2ガスケット42は、1対の第2段差面F2cに接触または近接する。
【0028】
図2は、第1実施形態におけるガスケット群40の平面図である。
図2に示すように、第1ガスケット41は、1対の第1端面E1を有する。1対の第1端面E1は、前述の第1面F1の1対の第1段差面F1cに対向する面である。
図2に示す例では、第1ガスケット41が開口OP1の外縁に沿って延びる形状をなしており、1対の第1端面E1が第1ガスケット41の延びる方向での両端に設けられる。
【0029】
一方、第2ガスケット42は、1対の第2端面E2を有する。1対の第2端面E2は、前述の第2面F2の1対の第2段差面F2cに対向する面である。ここで、1対の第2端面E2は、前述の1対の第1端面E1に対応しており、対応する第1端面E1とは反対の方向を向く。
図2に示す例では、第2ガスケット42が開口OP1の外縁に沿って延びる形状をなしており、1対の第2端面E2が第2ガスケット42の延びる方向での両端に設けられる。
【0030】
本実施形態では、1対の第1端面E1が平面視で1対の第2端面E2に一致する。ここで、「一致」とは、厳密に一致する態様のほか、製造誤差程度の差異を有する態様を含む。
【0031】
図2に示す例では、第1ガスケット41が2つの孔41dを有するとともに、第2ガスケット42が2つの孔42dを有する。各孔41dおよび各孔42dのそれぞれは、前述の締結具を挿入するための孔である。なお、孔41d、42dは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0032】
図3は、
図2中のA-A線断面図である。
図4は、第1実施形態における第1ハウジング10および第1ガスケット41の斜視図である。
図3に示すように、第1ガスケット41の第1端面E1は、第1ハウジング10の第1段差面F1cに対向する。一方、第2ガスケット42の第2端面E2は、第2ハウジング20の第2段差面F2cに対向する。
【0033】
本実施形態では、第1段差面F1cが平滑面である。ここで、第1端面E1は、打ち抜き加工により形成される。このため、第1端面E1の寸法精度を高めることが難しい。これに対し、第1段差面F1cは、切削加工等の機械加工により形成される。このため、第1段差面F1cの寸法精度が第1端面E1に比べて高い。これにより、第1端面E1と第2端面E2とを突き合せた場合の隙間に比べて、第1端面E1と第1段差面F1cとの間の隙間を小さくすることができる。なお、図示しないが、第1段差面F1cと同様、第2段差面F2cも平滑面である。
【0034】
ここで、ガスケット群40の厚さ方向にみて、第1端面E1および第2端面E2のそれぞれは、第1段差面F1cと第2段差面F2cとの間に位置することが好ましい。この場合、第1面F1および第2面F2の互いに接触が防止される。
【0035】
また、第1段差面F1cの高さは、第1ガスケット41の厚さよりも小さく、かつ、金属基材41aの厚さよりも大きいことが好ましい。この場合、第1ガスケット41に面圧を好適に生じさせることができる。同様に、第2段差面F2cの高さは、第2ガスケット42の厚さよりも小さく、かつ、金属基材42aの厚さよりも大きい。この場合、第2ガスケット42に面圧を好適に生じさせることができる。
【0036】
以上の密封構造1では、第1面F1の開口OP1の周囲に沿って配置される複数のガスケットとして第1ガスケット41および第2ガスケット42を含むガスケット群40を用いることにより、打ち抜き加工による第1ガスケット41および第2ガスケット42の製造時に生じる抜きカスを少なくすることができる。また、第1ガスケット41の第1端面E1に対向する第1段差面F1cが第1ハウジング10の第1面F1に設けられるとともに、第2ガスケット42の第2端面E2に対向する第2段差面F2cが第2ハウジング20の第2面F2に設けられることにより、第1端面E1と第2端面E2との間の隙間を無くすとともに、第1ガスケット41および第2ガスケット42のそれぞれに加わる面圧の均一化を図ることができる。以上から、低コスト化を図りつつ環境面に優れる密封構造1を提供することができる。
【0037】
ここで、第1段差面F1cが第1ハウジング10に対する第1ガスケット41の位置決めの役割を担うとともに、第2段差面F2cが第2ハウジング20に対する第2ガスケット42の位置決めの役割を担う。このため、第1ガスケット41および第2ガスケット42の互いの位置ずれを低減することができる。また、切削加工等により第1段差面F1cおよび第2段差面F2cのそれぞれを高精度に形成することができる。このため、打ち抜き加工による第1端面E1および第2端面E2を互いに突き合せることによる隙間に比べて、第1端面E1と第1段差面F1cとの間の隙間と、第2端面E2と第2段差面F2cとの間の隙間と、のそれぞれを小さくすることができる。
【0038】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0039】
図5は、第2実施形態に係る密封構造1Aの構成例の断面図である。密封構造1Aは、
図5に示すように、第1ハウジング10Aと第2ハウジング20Aと複数の締結具30とガスケット群40Aとを有する。
【0040】
第1ハウジング10Aは、第1実施形態の第1面F1に代えて第1面F1Aを有すること以外は、第1実施形態の第1ハウジング10と同様に構成される。
【0041】
第1ハウジング10Aの第1面F1Aは、面F1dと面F1eと1対の第1段差面F1fとを有する。面F1dは、周方向での範囲が異なること以外は、第1実施形態の面F1aと同様に構成される。面F1eは、周方向での範囲が異なること以外は、第1実施形態の面F1bと同様に構成される。第1段差面F1fは、周方向での位置が異なること以外は、第1実施形態の第1段差面F1cと同様に構成される。本実施形態では、1対の第1段差面F1fのうち、一方の第1段差面F1fは、面F1dおよび面F1eの周方向での一端同士の間を接続し、他方の第1段差面F1fは、面F1dおよび面F1eの周方向での他端同士の間を接続する。
【0042】
一方、第2ハウジング20の第2面F2Aは、面F2dと面F2eと1対の第2段差面F2fとを有する。面F2dは、周方向での範囲が異なること以外は、第1実施形態の面F2aと同様に構成される。面F2eは、周方向での範囲が異なること以外は、第1実施形態の面F2bと同様に構成される。第2段差面F2fは、周方向での位置が異なること以外は、第1実施形態の第2段差面F2cと同様に構成される。本実施形態では、1対の第2段差面F2fのうち、一方の第2段差面F2fは、面F2dおよび面F2eの周方向での一端同士の間を接続し、他方の第2段差面F2fは、面F2dおよび面F2eの周方向での他端同士の間を接続する。また、軸線AXに沿う方向にみて、第2面F2Aの面F2dが第1面F1Aの面F1eに重なるとともに、第2面F2Aの面F2eが第1面F1Aの面F1dに重なる。
【0043】
本実施形態では、軸線AXに沿う方向にみて、1対の第1段差面F1fと1対の第2段差面F2fとが周方向で互いにずれた位置に配置される。すなわち、開口OP1の外縁に沿う方向において1対の第1段差面F1cの位置と1対の第2段差面F2cの位置とが互いに異なる。
【0044】
第1ハウジング10Aおよび第2ハウジング20Aは、ガスケット群40Aを介して、複数の締結具30により互いに固定される。ガスケット群40Aは、第1実施形態の第1ガスケット41および第2ガスケット42に代えて第1ガスケット41Aおよび第2ガスケット42Aを含むこと以外は、第1実施形態のガスケット群40と同様に構成される。
【0045】
第1ガスケット41Aは、前述の第1面F1Aの面F1eと第2面F2Aの面F2dとの間に配置される。ここで、第1ガスケット41AのX2方向を向く面が面F1eに密着するとともに、第1ガスケット41AのX1方向を向く面が面F2dに密着する。また、第1ガスケット41Aは、面F1eの周方向での全域にわたり配置される。これにより、第1ガスケット41Aは、1対の第1段差面F1fに接触または近接する。
【0046】
一方、第2ガスケット42Aは、前述の第1面F1Aの面F1dと第2面F2Aの面F2eとの間に配置される。これにより、第2ガスケット42Aは、軸線AXに沿う方向にみて、開口OP1の外縁に沿う方向で第1ガスケット41Aに隣り合う。ここで、第2ガスケット42AのX1方向を向く面が面F2eに密着するとともに、第2ガスケット42AのX2方向を向く面が面F1dに密着する。また、第2ガスケット42Aは、面F2eの周方向での全域にわたり配置される。これにより、第2ガスケット42Aは、1対の第2段差面F2fに接触または近接する。
【0047】
図6は、第2実施形態におけるガスケット群40Aの平面図である。
図6に示すように、第1ガスケット41Aは、1対の第1端面E1Aを有する。1対の第1端面E1Aは、前述の第1面F1Aの1対の第1段差面F1fに対向する面である。
図6に示す例では、第1ガスケット41Aが開口OP1の外縁に沿って延びる形状をなしており、1対の第1端面E1Aが第1ガスケット41Aの延びる方向での両端に設けられる。
【0048】
一方、第2ガスケット42Aは、1対の第2端面E2Aを有する。1対の第2端面E2Aは、前述の第2面F2Aの1対の第2段差面F2fに対向する面である。ここで、1対の第2端面E2Aは、前述の1対の第1端面E1Aに対応しており、対応する第1端面E1Aとは反対の方向を向く。
図6に示す例では、第2ガスケット42Aが開口OP1の外縁に沿って延びる形状をなしており、1対の第2端面E2Aが第2ガスケット42Aの延びる方向での両端に設けられる。
【0049】
本実施形態では、ガスケット群40の厚さ方向にみて、第1端面E1Aが第2ガスケット42Aに重なり、かつ、第2端面E2Aが第1ガスケット41Aに重なる。このため、第1端面E1Aおよび第2端面E2Aのそれぞれに対応する箇所においても、第1面F1Aが第1ハウジング10Aに対して面圧を生じさせるとともに、第2面F2Aが第2ハウジング20Aに面圧を生じさせることができる。この結果、第1ガスケット41Aおよび第2ガスケット42Aの面圧の均一化が好適に図られる。
【0050】
図7は、
図6中のB-B線断面図である。
図8は、第2実施形態における第1ハウジング10Aおよび第1ガスケット41Aの斜視図である。
図7に示すように、第1ガスケット41Aの第1端面E1Aは、第1ハウジング10Aの第1段差面F1fに対向する。一方、第2ガスケット42Aの第2端面E2Aは、第2ハウジング20Aの第2段差面F2fに対向する。
【0051】
ここで、ガスケット群40Aの厚さ方向にみて、第1端面E1Aおよび第2端面E2Aのそれぞれは、第1段差面F1fと第2段差面F2fとの間に位置する。このため、第1面F1Aおよび第2面F2Aの互いに接触が防止される。
【0052】
また、
図8に示すように、第1段差面F1fには、開口OP1の周囲に沿って並ぶ複数の凸部13が設けられる。このため、第1端面E1Aと第1段差面F1fとの間の隙間を低減することができる。また、当該隙間によりラビリンス効果を生じさせることにより、密封性を高めることもできる。なお、図示しないが、第1段差面F1fと同様、開口OP1の周囲に沿って並ぶ複数の凸部が第2段差面F2fに設けられてもよい。この場合、第2端面E2Aと第2段差面F2fとの間の隙間を低減することができる。また、当該隙間によりラビリンス効果を生じさせることにより、密封性を高めることもできる。
【0053】
図8に示す例では、複数の凸部13のそれぞれの先端と第1端面E1Aとの間の隙間が均一となるように、各凸部13が第1ガスケット41Aの厚さ方向での全域にわたって設けられる。このため、第1端面E1Aと第1段差面F1fとの間の隙間を好適に低減することができる。なお、凸部13の形状は、
図8に示す例に限定されず、任意である。ただし、凸部13の寸法または形状等の態様は、前述のようにラビリンス効果を生じ得る態様であることが好ましい。また、凸部13の先端は、第1端面E1Aに接触してもよい。この場合、凸部13の先端を第1端面E1Aに食い込ませることにより、シール性能を高めることもできる。
【0054】
以上の第2実施形態によっても、低コスト化を図りつつ環境面に優れる密封構造1Aを提供することができる。
【0055】
3.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0056】
3-1.変形例1
図9は、変形例1に係る密封構造1Bの断面図である。密封構造1Bは、液体ガスケットLGを追加したこと以外は、第1実施形態の密封構造1と同様に構成される。
【0057】
密封構造1Bでは、第1端面E1と第1段差面F1cとの間の隙間と、第2端面E2と第2段差面F2cとの間の隙間と、のそれぞれに、液体ガスケットLGが充填される。このため、密封性を高めることができる。
【0058】
以上の変形例1によっても、低コスト化を図りつつ環境面に優れる密封構造1Bを提供することができる。なお、液体ガスケットLGは、第1ガスケット41および第2ガスケット42のそれぞれの両面にも塗布されてもよい。
【0059】
3-2.変形例2
図10は、変形例2に係る密封構造1Cの断面図である。
図11は、変形例2における第1ハウジング10Aおよび第1ガスケット41Aの斜視図である。密封構造1Cは、液体ガスケットLG1、LG2を追加したこと以外は、第2実施形態の密封構造1Aと同様に構成される。
【0060】
密封構造1Cでは、第1端面E1Aと第1段差面F1fとの間の隙間に液体ガスケットLG1が充填されるとともに、第2端面E2Aと第2段差面F2fとの間の隙間に液体ガスケットLG2が充填される。このため、密封性を高めることができる。
【0061】
以上の変形例2によっても、低コスト化を図りつつ環境面に優れる密封構造1Cを提供することができる。なお、液体ガスケットLG1、LG2は、一体であてもよいし、第1ガスケット41および第2ガスケット42のそれぞれの両面にも塗布されてもよい。
【0062】
3-3.変形例3
前述の実施形態では、ガスケット群が2つのガスケットで構成される態様が例示されるが、この態様に限定されず、ガスケット群が3つ以上のガスケットで構成されてもよい。
【0063】
3-4.変形例4
前述の実施形態では、ガスケット群が周方向に並ぶ複数のガスケットのみで構成される態様が例示されるが、この態様に限定されず、ガスケット群は、ガスケット群の開口の内外を横断する方向に並ぶガスケットを含んでもよい。
【0064】
4.付記
以上の実施形態または変形例から、例えば以下の態様が把握される。
【0065】
本開示の好適例である第1態様に係る密封構造は、開口が設けられる第1面を有する第1ハウジングと、第2面を有する第2ハウジングと、前記第1面と前記第2面との間に前記開口の周囲に沿って配置される複数のガスケットを含むガスケット群と、を備え、前記複数のガスケットは、第1端面を有する第1ガスケットと、前記第1端面とは反対の方向を向く第2端面を有し、前記開口の外縁に沿う方向で前記第1ガスケットに隣り合う第2ガスケットと、を含み、前記第1ガスケットおよび前記第2ガスケットのそれぞれは、シート状の金属基材と、前記金属基材の両面に積層される1対の弾性体層と、を有し、前記第1面には、前記第1端面に対向する第1段差面が設けられ、前記第2面には、前記第2端面に対向する第2段差面が設けられる。
【0066】
以上の第1態様では、第1面の開口の周囲に沿って配置される複数のガスケットを含むガスケット群を用いることにより、打ち抜き加工による各ガスケットの製造時に生じる抜きカスを少なくすることができる。また、第1ガスケットの第1端面に対向する第1段差面が第1ハウジングの第1面に設けられるとともに、第2ガスケットの第2端面に対向する第2段差面が第2ハウジングの第2面に設けられることにより、第1端面と第2端面との間の隙間を無くすとともに、第1ガスケットおよび第2ガスケットのそれぞれに加わる面圧の均一化を図ることができる。以上から、低コスト化を図りつつ環境面に優れる密封構造を提供することができる。
【0067】
ここで、第1段差面が第1ハウジングに対する第1ガスケットの位置決めの役割を担うとともに、第2段差面が第2ハウジングに対する第2ガスケットの位置決めの役割を担う。このため、第1ガスケットおよび第2ガスケットの互いの位置ずれを低減することができる。また、切削加工等により第1段差面および第2段差面のそれぞれを高精度に形成することができる。このため、打ち抜き加工による第1端面および第2端面を互いに突き合せることによる隙間に比べて、第1端面と第1段差面との間の隙間と、第2端面と第2段差面との間の隙間と、のそれぞれを小さくすることができる。
【0068】
第1態様の好適例である第2態様において、前記ガスケット群の厚さ方向にみて、前記第1端面および前記第2端面のそれぞれは、前記第1段差面と前記第2段差面との間に位置する。以上の第2態様では、第1面および第2面の互いに接触が防止される。
【0069】
第2態様の好適例である第3態様において、前記ガスケット群の厚さ方向にみて、前記第1端面が前記第2ガスケットに重なり、かつ、前記第2端面が前記第1ガスケットに重なる。以上の第3態様では、第1端面および第2端面のそれぞれに対応する箇所においても、第1面が第1ハウジングに対して面圧を生じさせるとともに、第2面が第2ハウジングに対して面圧を生じさせることができる。この結果、第1ガスケットおよび第2ガスケットの面圧の均一化が好適に図られる。
【0070】
第1態様から第3態様のいずれかの好適例である第4態様において、前記第1段差面および前記第2段差面のうちの一方または両方には、前記開口の周囲に沿って並ぶ複数の凸部が設けられる。以上の第4態様では、第1端面と第1段差面との間の隙間を低減したり、第2端面と第2段差面との間の隙間を低減したりすることができる。また、これらの隙間によりラビリンス効果を生じさせることにより、密封性を高めることもできる。
【0071】
第1態様から第4態様のいずれかの好適例である第5態様において、前記第1端面と前記第1段差面との間の隙間と、前記第2端面と前記第2段差面との間の隙間と、のそれぞれには、液体ガスケットが充填される。以上の第5態様では、密封性を高めることができる。
【0072】
第1態様から第5態様のいずれかの好適例である第6態様において、前記第1段差面の高さは、前記第1ガスケットの厚さよりも小さく、かつ、前記金属基材の厚さよりも大きく、前記第2段差面の高さは、前記第2ガスケットの厚さよりも小さく、かつ、前記金属基材の厚さよりも大きい。以上の第6態様では、第1ガスケットおよび第2ガスケットのそれぞれに面圧を好適に生じさせることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…密封構造、1A…密封構造、1B…密封構造、1C…密封構造、10…第1ハウジング、10A…第1ハウジング、11…フランジ、12…雌ネジ、13…凸部、20…第2ハウジング、20A…第2ハウジング、21…フランジ、22…孔、30…締結具、40…ガスケット群、40A…ガスケット群、41…第1ガスケット、41A…第1ガスケット、41a…金属基材、41b…弾性体層、41c…弾性体層、41d…孔、42…第2ガスケット、42A…第2ガスケット、42a…金属基材、42b…弾性体層、42c…弾性体層、42d…孔、AX…軸線、E1…第1端面、E1A…第1端面、E2…第2端面、E2A…第2端面、F1…第1面、F1A…第1面、F1a…面、F1b…面、F1c…第1段差面、F1d…面、F1e…面、F1f…第1段差面、F2…第2面、F2A…第2面、F2a…面、F2b…面、F2c…第2段差面、F2d…面、F2e…面、F2f…第2段差面、LG…液体ガスケット、LG1…液体ガスケット、LG2…液体ガスケット、OP1…開口、OP2…開口、OP3…開口。