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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006105
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】排水処理システム及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20250109BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/34 101A
C02F3/34 101C
C02F3/34 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106696
(22)【出願日】2023-06-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】518091048
【氏名又は名称】ルーセントC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4D040
【Fターム(参考)】
4D040BB04
4D040BB05
4D040BB42
4D040BB56
4D040BB57
4D040BB82
4D040BB91
(57)【要約】
【課題】本発明は、より処理効率の高い排水処理システム及び排水処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る排水処理システムSは、原水を貯留する第一の貯留槽11と、硝化剤121を収容する硝化タンク12と、第一の貯留槽から硝化タンクに原水を供給するための第一の配管13と、硝化処理された硝化処理水を第一の貯留槽へ戻す第二の配管16と、第一の配管及び第二の配管のいずれかに設けられる第一のポンプ14と、を有する循環型硝化システム1を備え、また、本発明の他の一観点に係る排水処理システムは、硝化処理水を貯留する第二の貯留槽21と、脱窒剤221を収容する脱窒タンク22と、第二の貯留槽から脱窒タンクに硝化処理水を供給するための第三の配管23と、脱窒された脱窒処理水を第二の貯留槽へ戻すための第四の配管25と、第三の配管及び第四の配管のいずれかに設けられる第二のポンプ24と、を有する循環型脱窒システム2を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を貯留する第一の貯留槽と、
担体に硝化菌を保持させた硝化剤を収容する硝化タンクと、
前記第一の貯留槽から前記硝化タンクに前記原水を供給するための第一の配管と、
前記硝化タンクから前記第一の貯留槽に、硝化処理された硝化処理水を戻す第二の配管と、
前記第一の配管及び前記第二の配管の少なくともいずれかに設けられる第一のポンプと、を有する循環型硝化システムを備える排水処理システム。
【請求項2】
前記原水に酸素を供給する酸素供給手段を有する請求項1記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記循環型硝化システムは、前記原水にpH調整剤を投入するpH調整手段と、を有する請求項1記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記硝化処理水を貯留する第二の貯留槽と、
担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤を収容する脱窒タンクと、
前記第二の貯留槽から前記脱窒タンクに前記硝化処理水を供給するための第三の配管と、
前記脱窒タンクから前記第二の貯留槽に、脱窒された脱窒処理水を戻すための第四の配管と、
前記第三の配管及び前記第四の配管の少なくともいずれかに設けられる第二のポンプと、を有する循環型脱窒システムを備える、請求項1記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記循環型脱窒システムは、嫌気性状態を維持するために低酸素状態となっている請求項4記載の排水処理システム。
【請求項6】
硝化処理水を貯留する第二の貯留槽と、
担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤を収容する脱窒タンクと、
前記第二の貯留槽から脱窒タンクに前記硝化処理水を供給するための第三の配管と、
前記脱窒タンクから前記第二の貯留槽に、脱窒された脱窒処理水を戻すための第四の配管と、
前記第三の配管及び前記第四の配管の少なくともいずれかに設けられる第二のポンプと、を有する循環型脱窒システムを備える排水処理システム。
【請求項7】
原水を、担体に硝化菌を保持させた硝化剤に循環させながら通して硝化させるステップ、
前記硝化された原水を、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤に循環させながら通して脱窒させるステップ、を備える排水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理システム及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造、化学品製造等、生物を飼育した後の排水にはアンモニアが多く含まれており、排水としてその施設外から放出させるためには、アンモニアの濃度を所定の基準以下にしなければならない。
【0003】
アンモニアの濃度を基準以下に処理する方法としては、例えば下記特許文献1に、水生生物を飼育する飼育層と、焼土を充填した植物栽培層となる焼土充填層とを備える循環型飼育栽培装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-154383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、水生生物の飼育と植物の栽培を両立させる技術としては有用であるが、アンモニアを多量に含む排水を処理するためにはより処理効率の高いシステムにしなければならないといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、より処理効率の高い排水処理システム及び排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る排水処理システムは、原水を貯留する第一の貯留槽と、担体に硝化菌を保持させた硝化剤を収容する硝化タンクと、第一の貯留槽から硝化タンクに原水を供給するための第一の配管と、硝化タンクから第一の貯留槽に、硝化処理された硝化処理水を戻す第二の配管と、第一の配管及び第二の配管の少なくともいずれかに設けられる第一のポンプと、を有する循環型硝化システムを備えるものである。
【0008】
また、本観点において、限定されるわけではないが、原水に酸素を供給する酸素供給手段を有することが好ましい。
【0009】
また、本観点において、限定されるわけではないが、循環型硝化システムは、原水にpH調整剤を投入するpH調整手段と、を有することが好ましい。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、硝化処理水を貯留する第二の貯留槽と、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤を収容する脱窒タンクと、第二の貯留槽から脱窒タンクに硝化処理水を供給するための第三の配管と、脱窒タンクから第二の貯留槽に、脱窒された脱窒処理水を戻すための第四の配管と、第三の配管及び第四の配管の少なくともいずれかに設けられる第二のポンプと、を有する循環型脱窒システムを備えることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、循環型の脱窒システムは、嫌気性状態を維持するために低酸素状態となっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の一観点に係る排水処理システムは、硝化処理水を貯留する第二の貯留槽と、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤を収容する脱窒タンクと、第二の貯留槽から脱窒タンクに硝化処理水を供給するための第三の配管と、脱窒タンクから第二の貯留槽に、脱窒された脱窒処理水を戻すための第四の配管と、第三の配管及び第四の配管の少なくともいずれかに設けられる第二のポンプと、を有する循環型脱窒システムを備えるものである。
【0013】
また、本発明の他の一観点に係る排水処理方法は、原水を、担体に硝化菌を保持させた硝化剤に循環させながら通して硝化させるステップ、硝化された原水を、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤に循環させながら通して脱窒させるステップ、を備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によって、より処理効率の高い排水処理システム及び排水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る排水処理システムの概略を示す図である。
図2】実施形態に係る排水処理システムの他の例の概略を示す図である。
図3】実施形態に係る排水処理システムの他の例の概略を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る排水処理システム(以下単に「本システム」という。)Sの概略を示す図である。本図で示すように、本システムSは、循環型硝化システム(以下「硝化システム」という。)1と、循環型脱窒システム(以下単に「脱窒システム」という。)2を備えている。本システムSは、それぞれ独自の硝化システム1及び脱窒システム2をそれぞれ備えており、しかもそれぞれが循環型として処理することが可能であるため、非常に効率が良いといった利点がある。
【0018】
また、本システムSにおける硝化システム1は、更に、原水を貯留する第一の貯留槽11と、担体1211に硝化菌を保持させた硝化剤121を収容する硝化タンク12と、第一の貯留槽11から硝化タンク12に原水を供給するための第一の配管13及び第一のポンプ14と、原水に酸素を供給する酸素供給手段15と、硝化タンク12から第一の貯留槽11に、硝化処理された硝化処理水を戻す第二の配管16と、を有する。
【0019】
また、本システムSにおける硝化システム1には、原水にpH調整剤171を投入するpH調整手段17が設けられている。なお、pH調整手段17の具体的な構成については後述する。
【0020】
本システムSの硝化システム1における第一の貯留槽11は、原水を貯留するために用いられるものであるとともに、上述及び後述の記載からも明らかなように、硝化タンク12の硝化剤121に接触することによって硝化処理された水(硝化処理水)を貯留することができるものである。
【0021】
本実施形態において「原水」とは、硝化システム1によって浄化される水であって、食品製造、化学品製造等、生物を飼育した後の排水など、有機物及びこれが分解されたアンモニア等(以下単に「アンモニア等」という。)が多く含まれている水をいう。原水に含まれるアンモニア等の量は適宜対応可能であるが、例えばBOD値で環境基準値の160mg/L以上含まれる水であれば効果を実感することが可能であり、硝化システム1を循環させる時間を調整すればアンモニアの含有量に特に上限なく処理が可能である。
【0022】
第一の貯留槽11の大きさや材質については、処理する排水の量によって適宜調整可能であり限定されるものではないが、10L以上500000L以下の範囲にあることが処理量とそのための処理時間を考慮する観点から現実的な範囲であり好ましい。
【0023】
第一の貯留槽11の材質は特に制限されないが、水を貯留する観点から錆に強く、またアンモニアを多く含ませるため塩基性に耐えられる素材であることが好ましく、腐食しない材質であることが好ましく、例えば金属、樹脂であることが好ましく、金属の場合ステンレス、アルミニウム、チタン等の腐食に強い材質であることが好ましく、樹脂の場合、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンやポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂等であることが好ましい。なお、樹脂の場合、上記材料に、ガラス繊維やカーボン繊維等を配合した繊維強化プラスチック(FRP)としておくことも好ましい一例である。
【0024】
また、本システムSの硝化システム1における硝化タンク12は、担体に硝化菌を保持させた硝化剤121を収容するものである。硝化タンク12の材質は、処理する排水の量によって適宜調整可能であるが、腐食しない材質であることが好ましく、例えば金属、樹脂であることが好ましく、金属の場合ステンレス、アルミニウム、チタン等の腐食に強い材質であることが好ましく、樹脂の場合、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンやポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂等であることが好ましい。硝化タンク12には、硝化剤121が充填されており、硝化タンク12内に原水が供給された場合、この硝化剤121に接触することで硝化処理がなされる。なお、樹脂の場合、上記材料に、ガラス繊維やカーボン繊維等を配合した繊維強化プラスチック(FRP)としておくことも好ましい一例である。
【0025】
また、本システムSの硝化システム1における硝化タンク12の大きさも上記第一の貯留槽11と同様の容量範囲とすることができるが、上記第一の貯留槽11の一部を処理し循環するものであるため、第一の貯留槽11の容量よりも小さくすることが好ましい。
【0026】
また、本システムSにおいては、上記の通り、硝化剤121が充填されている。本実施形態において「硝化剤」とは、原水に含まれるアンモニアを酸化させて亜硝酸塩や硝酸塩に変化させることができるものである。また本実施形態に係る硝化剤121は、担体に硝化菌を保持させたものである。
【0027】
本硝化剤121の担体としては、土を焼き固めたものであることが好ましい。担体に土を用いるのは、本来硝化菌は土中等に広く一般に存在するものであって、その繁殖環境に近い状態とすることが非常に好ましく、また、土の持つ極性によるイオン吸着性によってpHの調整能力(水素イオンの吸着機能)が期待できるためである。また、土を焼き固めることで、水中に溶出しにくくし、さらに、その表面及び内部に細孔を多く形成してその比表面積を大きくし、硝化菌が担体表面に付着しやすい環境を整えやすくすることができる。
【0028】
また、本硝化剤121の担体の材質は、上記の通り土であることが好ましいが、特に限定されず、黒土(黒ぼく土)、赤土、粘土、及びこれらの少なくともいずれかの混合物であることが好ましい。また、上記土に、石や砂を砕いて粉状にして混ぜたものとしてもよい。この粉状の石等を含ませることで、遠赤外の効果による菌の活性化を促すことができる効果もある。
【0029】
また、本硝化剤121の担体の形状は、特に限定されるわけではないが、粒状であることが好ましい。粒状とすることで、表面積を大きく確保することができ、硝化の効率を大幅に向上させることができる。更に、粒状の場合、限定されるわけではないが、その大きさとしては、例えばレーザーアナライザ等の粒径分布を測定してこれに基づき数平均粒径を求めることができる。そして、これにより得られる担体平均粒径としては、上記の機能を発揮することができる限りにおいて限定されるわけではないが、0.1mm以上20mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以上10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下である。0.1mm以上とすることで担体が水に溶け出しフィルタ等を通り抜けてしまうことを防止できる一方、20mm以下とすることで体積に対する比表面積を十分に大きく確保することができ硝化効率を高く維持することができるといった利点がある。
【0030】
また、本硝化剤121の担体は、比表面積が十分に大きいことが重要である。この指標としては限定されるわけではないが、硝化剤の単位重量当たりの表面積を比表面積とし、この比表面積が好ましくは50m/g以上であることが好ましくより好ましくは100m/g以上である。50m/g以上とすることで、硝化菌を十分に付着させるだけの細孔を形成することができ、100m/g以上とすることでこの効果がより顕著となる。上限については限定されるわけではないが、300m/g以下であることが好ましい。
【0031】
また、本硝化剤121の担体は、土である場合、焼き固めることが好ましいが、高温すぎると水分が必要以上に除去されることにより脆くなってしまうため、適度に水分が残る程度の温度であることが好ましい。この程度の温度とすることで、担体の土が水中に溶け出してしまうことを防止できるといった利点がある。具体的には材質が黒土である場合、200℃以上1000℃以下であることが好ましく、より好ましくは400℃以下、更に好ましくは280℃以上320℃以下の範囲である。
【0032】
また、本硝化剤121の硝化菌としては、アンモニアを酸化させて亜硝酸塩や硝酸塩に変化させることができるものであって、この限りにおいて限定されず、例えばNitrosomonas europaeaやNitrobacter winogradskyi等を例示することができる。これら硝化菌は、酸素が存在する環境下において安定的に有機物をアンモニアにし、又は、アンモニアを酸化させることができる。そのため、硝化システム1は開放系、より好ましくは酸素供給手段を設けていることが好ましい。
【0033】
また、本硝化剤121の硝化菌を担体に付着させる工程としては様々な方法があり限定されるわけではないが、例えば硝化タンク12に特に菌を付着させる処理を行っていない担体を充填して、空気に触れている状態の原水を長時間循環させることで、水中に存在する硝化菌を担体表面に付着・培養させることで硝化剤として完成させることができる。空気中には上記硝化菌が微量であるが浮遊しており、空気に触れる状態とすることで上記硝化菌が原水に溶け込み、硝化タンク12内の担体と接触することで捕捉され、自然発生的に硝化剤となっていくことになる。もちろん、所望の硝化菌を重点的に付着させたい場合は、担体を上記硝化菌を十分に含んだ水などに浸漬させておくことでも形成可能であり、原水又は通常の水に上記所望の硝化菌を添加しつつ硝化システム1で循環処理していくこで担体に硝化菌を付着させることもできる。
【0034】
また、本システムSの硝化システム1における第一の配管13は、第一の貯留槽11から硝化タンク12に原水を供給するためのものである。第一の配管13は管状である限りにおいてその材質は限定されるわけではないが、例えば金属であっても、樹脂であってもよい。金属の場合、ステンレス、チタン、アルミニウム等を用いることができ、樹脂の場合、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンやポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂等を用いることができるがこれに限定されない。なお、樹脂の場合、上記材料に、ガラス繊維やカーボン繊維等を配合した繊維強化プラスチック(FRP)としておくことも好ましい一例である。また、第一の配管13には、配管内の水の流れを制御する(開閉する)ための弁131を設けておくことも好ましい。
【0035】
第一の配管13の配置は、上記機能を有する限りにおいてどのような形態であってもよく、硝化剤121の上側から原水を供給できるように硝化タンク12の上部に接続されていてもよく、また、硝化タンク12の下部から原水を供給できるようにしておくこととしてもよい。硝化タンク12の下部から原水を供給できるようにしておくことで、十分に硝化剤121に接触した水を硝化タンク12から排出することができるといった利点があり、硝化タンク12の上部から原水を供給できるようにすることで、重力を利用して水を攪拌し、接触効率を上げることができるようになるといった利点があるが適宜調整可能である。
【0036】
また、本システムSの硝化システム1における第一のポンプ14は、第一の貯留槽11から硝化タンク12に原水を供給するために用いられる動力であり、当該効果を発揮できる限りにおいて限定されるわけではないが、第一の配管13の経路の入口近傍又は途中に設けられていることが好ましい。ただし、第一のポンプ14は、上記の通り硝化システム1における水の循環を形成するものであるため、第二の配管16に設ける構成とすることも可能である。なお、第一のポンプ14は、第一の配管13に接続されるがそのポンプ構成によっては第一の貯留槽11内に配置されることがあるが、この状態は第一の配管13に接続されている状態に含まれる。また同様に、第二の配管16に接続される場合には、
そのポンプ構成によっては硝化タンク12内に設けられている場合も第二の配管16に接続されている状態に含まれる。
【0037】
また、本システムSの硝化システム1における酸素供給手段15は、原水に酸素を供給するものであり、酸素供給を行うことでアンモニアを効果的に酸化させやすくなる。酸素供給手段15としては限定されるわけではないが、エアポンプと、このエアポンプに接続されるチューブ配管とを有するものであることが好ましい。これにより簡便に水中に空気を供給することができるようになる。また、この酸素供給手段15は、単に原水表面近傍を攪拌して空気を攪拌して溶け込ませるだけの攪拌装置であってもよい。また、第一の貯留槽11を開放系にしておくことで十分な酸素を原水中に溶け込ませることができる場合は、酸素供給手段15は省略可能である。
【0038】
本システムSの硝化システム1における第二の配管16は、硝化タンク12から第一の貯留槽11に、硝化処理された硝化処理水を戻すためのものであり、上記第一の配管13と同様の材質のものを用いることができる。また、この第二の配管16においても、水の流れを調整する(開閉する)ための弁161を設けておくことが好ましい。特に、後述の記載のように、脱窒を行うための第二の貯留槽21にこの硝化処理水を貯留させようとする場合はこの弁161が重要な機能を果たす。
【0039】
ここで、「硝化処理水」とは、上記の通り、原水が硝化処理された水をいい、より具体的には硝化タンク12の硝化剤121に接触し、アンモニアが酸化された水である。ただし、水中に含まれるほぼ全てのアンモニアが一度の硝化剤121への接触により完全に硝化処理されることは難しく、何周も第一の貯留槽11及び硝化タンク12の間を循環することで十分な割合に硝化処理されるものであるため、原水との区別は明瞭でない場合があることに留意しつつ、本明細書では、一度でも硝化剤121に接触する処理を行った水を硝化処理水と呼ぶことがある。
【0040】
また、第二の配管16の接続関係についても、特に限定はされない。なお、第一の配管13が硝化タンク12の下部側において接続されている場合は、その上側に接続されていることが効率的な循環経路形成のために好ましく、第一の配管13が硝化タンク12の上部側において接続されている場合は、その下部に接続されていることが好ましい。さらには、硝化タンク12を横向きの筒状とし、一方の端に第一の配管13を接続し、他方に第二の配管16を接続するという構成としてももちろん良い。
【0041】
また、本システムSにおける硝化システム1には、上記の通り、原水にpH調整剤171を投入するpH調整手段17が設けられていることが好ましい。pH調整手段17は、循環するシステム中に存在すればよく、第一の貯留槽11、第一の配管13、硝化タンク12、第二の配管16など、各要素のいずれに設けてよい。pH調整手段の例としては、pH調整剤171と、このpH調整剤171を収容するタンク172、pH調整剤171を投入するための投入手段173を有するものであることが好ましく、更には、原水中(又は硝化処理水中)のpHを測定するpHセンサ174を備えており、このpHセンサ174の値に応じて投入手段を調整させることで、原水中のpHに応じて適切な量のpH調整剤171を投入し、pHを調整することが可能となるため好ましい。
【0042】
ここで、pHは、弱アルカリ性に偏らせておくことが重要である。中性から弱アルカリ性に偏らせることで、硝化菌の働きにより水中のアンモニアを効率的に亜硝酸や硝酸に変化させることが可能となる。好ましいpHについては、適宜調整可能であるが、6より大きく10以下であることが好ましい。なお、pH調整剤171としては、原水に添加した際アルカリに寄せることができるものである限り限定されない一方で、環境中に一般的に存在しうるイオンを含むものであることが好ましく、例えば水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム等を例示することができるがこれに限定されない。
【0043】
また、硝化システムにおいては、原水に浮遊する葉などのゴミを集めるためのごみトラップを設けておくことが好ましい。特に硝化タンクにゴミが入り込んでしまうと目詰まりを起こし循環に支障をきたす。そのため、第一の配管の入口側、出口側、及び、その中間位置にごみトラップを設けておくことで、目詰まりを防ぐことができるといった利点がある。なおこれは脱窒システムにおいてもよいが、すでに硝化システムにおいてゴミが取れていると考えられるため、省略してもよい。
【0044】
以上、硝化システム1により水中のアンモニアを効率的に亜硝酸や硝酸に変化させることが可能となる。アンモニアを亜硝酸や硝酸に変化させることで、後述の脱窒システム2により、窒素として空気中に戻すことが可能となる。特に、硝化システム1は、硝化菌を用いるとともに循環型となっているため、非常に効率が良いといった特徴がある。
【0045】
次に、本システムSにおける脱窒システム2は、硝化処理水を貯留する第二の貯留槽21と、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤221を収容する脱窒タンク22と、第二の貯留槽21から脱窒タンク22に硝化された原水を供給するための第三の配管23及び第二のポンプ24と、脱窒タンク22から第二の貯留槽21に、脱窒された脱窒処理水を戻すための第四の配管25と、を有するものである。この脱窒システム2によると、上記の硝化システム1によってアンモニアから変化した亜硝酸塩や硝酸塩を窒素に還元することが可能となる。
【0046】
本システムSの脱窒システム2において、第二の貯留槽21は、上記の通り、硝化処理水を貯留することができるものである。硝化処理水は、上記硝化システム1の第二の配管16から分岐した取水配管18に接続することで入手可能である。ただし、後述の通り、硝化処理水については、入手できる限りにおいて、上記の硝化システム1とは別の独立したシステムとしてもよい。また、取水配管18については、上記のように第二の配管16から分岐して設ける場合のほか、第二の配管16とは別に第一の貯留槽11に直接設けることとしてもよく、また、第二の配管16とは別に硝化タンク12に直接設けることとしてもよい。なおこの取水配管18にも、水の流通経路を制御する(開閉する)ための弁181を設けておくことが好ましい。
【0047】
また、本システムSの脱窒システム2は、密封状態、酸素濃度が低い状態(低酸素状態)で硝化処理水を循環させることで、脱窒菌の働きを効率的に行わせることができるため、第二の貯留槽21は、密封状態、低酸素状態を維持できるよう密封可能な容器としておくことが好ましい。なお、具体的には、第二の貯留槽21に密閉可能な蓋部材211を設けておくことで、外部から空気が入ってこないようにすることが可能となる。また、この場合において、残存酸素が可能な限りなくなるよう、弁を備えた蓋部材211を閉めたうえで、脱気するための脱気ポンプ212を接続し、脱気しておくことも好ましい。
【0048】
第二の貯留槽21の大きさや材質については、処理する排水の量によって適宜調整可能であり限定されるものではないが、上記第一の貯留槽11と同様の容量とすることが可能である。
【0049】
第二の貯留槽21の材質は特に制限されないが、水を貯留する観点から錆に強く、またアンモニアを多く含ませるため塩基性に耐えられる素材であることが好ましく、腐食しない材質であることが好ましく、上記の第一の貯留槽11と同様の材質の物を用いることができる。
【0050】
本システムSの脱窒システム2において、脱窒タンク22は、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤221を収容するものである。脱窒タンク22の材質は、処理する排水の量によって適宜調整可能であり、上記第一の貯留槽11、硝化タンク12、第二の貯留槽21と同様の材質の物を用いることができる。脱窒タンク22には、脱窒剤221が充填されており、脱窒タンク22内に硝化処理水が供給された場合、この脱窒剤221に接触することで脱窒処理がなされる。
【0051】
また、脱窒タンク22も、上記第二の貯留槽21と同様密封状態、低酸素状態で脱窒処理を行うことが好ましいため、密封可能な容器となっていることが好ましい。また、この場合において、脱窒剤221の取り換えなどの作業を行うために開口を設けている場合は、蓋部材を設けておくことが好ましい。
【0052】
また、本システムSの脱窒システム2における脱窒タンク22の大きさも上記第二の貯留槽21と同様であり、適宜調整可能であり限定されるものではないが、上記第二の貯留槽21の一部を処理し循環させるものであるため、第二の貯留槽21の容量よりも小さくすることが可能である。
【0053】
また、本システムSにおいては、上記の通り、脱窒剤221が充填されている。本実施形態において「脱窒剤」とは、硝化処理水に含まれる亜硝酸塩や硝酸塩を窒素に還元させることができるものである。また本実施形態に係る脱窒剤221は、上記の通り、担体に脱窒菌を保持させたものである。
【0054】
本脱窒剤221の担体としては、上記硝化剤121と同様の物を用いることができる。具体的には、土を焼き固めたものであることが好ましい。担体に土を用いるのは、本来脱窒菌は土中等に広く一般に存在するものであるため、その環境としては非常に好ましいものである。また、土を焼き固めることで、その表面及び内部に細孔を多く形成してその比表面積を大きくし、脱窒菌が担体表面に付着しやすい環境を整えやすくすることができる。
【0055】
また、本脱窒剤221の担体の材質は、限定されるわけではなく、上記硝化剤121と同様の担体を用いることができる。また、本脱窒剤221の担体の形状、粒径においても、限定されるわけではなく、上記硝化剤121と同様の担体の形状、粒径を採用することができる。さらに、脱窒剤221の比表面積においても、上記硝化剤121の担体と同様の比表面積を採用することができる。
【0056】
また、本硝化剤121の担体は、土である場合、焼き固めることが好ましいが、高温すぎると水分が必要以上に除去され脆くなってしまうため、適度に水分が残る程度の温度であることが好ましい。この程度の温度とすることで、担体の土が水中に溶け出してしまうことを防止できるといった利点がある。この温度範囲においても、上記硝化剤121における担体と同様の焼結温度範囲を採用することが好ましい。
【0057】
また、本脱窒剤221の脱窒菌としては、亜硝酸塩や硝酸塩等の窒素化合物を窒素分子として大気中に放出させることができる菌であり、脱窒菌としては、Pseudomonas denitrificans、Paracoccus d.、Thiobacillus d.等を例示することができるがこれらに限定されるものではない。
【0058】
また、本脱窒剤221の脱窒菌を担体に付着させる工程としては様々な方法があり限定されるわけではないが、例えば脱窒タンク22に特に菌を付着させる処理を行っていない担体を充填して、具体的には低酸素状態で原水を又は硝化処理水を比較的長時間循環させることで、水中に存在する脱窒菌を担体表面に付着・培養させることによって脱窒剤221として完成させることができる。
【0059】
本システムSの脱窒システム2における脱窒システム2において、第三の配管23は、第二の貯留槽21から脱窒タンク22に硝化処理水を供給するためのものである。第三の配管23は管状である限りにおいてその材質は限定されるわけではないが、例えば金属であっても、樹脂であってもよい。金属の場合、ステンレス、アルミニウム、チタン等を例示することができ、樹脂の場合、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンやポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂等を用いることができるがこれに限定されない。なお、樹脂の場合、上記材料に、ガラス繊維やカーボン繊維等を配合した繊維強化プラスチック(FRP)としておくことも好ましい一例である。また、第三の配管23には、配管内の水の流れを制御するための弁231を設けておくことも好ましい。
【0060】
第三の配管23の配置は、上記機能を有する限りにおいてどのような形態であってもよく、脱窒剤221の上側から硝化処理水を供給できるように脱窒タンク22の上部に接続されていてもよく、また、脱窒タンク22の下部から硝化処理水を供給できるようにしてもよい。脱窒タンク22の下部から硝化処理水を供給できるようにしておくことで、十分に脱窒剤221に接触した水を脱窒タンク22から排出することができるといった利点があり、脱窒タンク22の上部から硝化処理水を供給できるようにすることで、重力を利用して水を攪拌し、接触効率を上げることができるようになるといった利点があるが適宜調整可能である。さらには、脱窒タンク22を横向きの筒状とし、一方の端に第三の配管23を接続し、他方に第四の配管25を接続するという構成としてももちろん良い。
【0061】
また、本システムSの脱窒システム2における第二のポンプ24は、第二の貯留槽21から脱窒タンク22に原水を供給するために用いられる動力であり、当該効果を発揮できる限りにおいて限定されるわけではないが、第三の配管23の経路の入口近傍又は途中に設けられていることが好ましい。ただし、第二のポンプ24は、上記の通り脱窒システム2における水の循環を形成するものであるため、第四の配管25に設ける構成とすることも可能である。なお、第二のポンプ24は、第三の配管23に接続されるがそのポンプ構成によっては第二の貯留槽21内に配置されることがあるが、この状態は第三の配管23に接続されている状態に含まれる。すなわち、同様に、第四の配管25に接続される場合には、そのポンプ構成によっては脱窒タンク22内に設けられている場合も第四の配管25に接続されている状態に含まれるものとする。
【0062】
本システムSの硝化システム1における脱窒システム2において、第四の配管25は、脱窒タンク22から第二の貯留槽21に、脱窒された硝化処理水(以下「脱窒処理水」という。)を戻すためのものであり、上記第三の配管23と同様の材質のものを用いることができる。また、この第四の配管25においても、水の流れを調整するための弁251を設けておくことが好ましい。
【0063】
ここで、「脱窒処理水」とは、上記の通り、硝化処理水が脱窒処理された水をいい、より具体的には脱窒タンク22の脱窒剤221に接触し、亜硝酸塩や硝酸塩の窒素原子が窒素分子となり、脱窒されたものである。ただし、水中に含まれる亜硝酸塩や硝酸塩が一度の脱窒剤221への接触により十分に脱窒処理されることは難しく、何回も第二の貯留槽21及び脱窒タンクの間を循環することで十分な割合に脱窒処理されるものであるため、硝化処理水との区別は明瞭でない場合があることに留意しつつ、本明細書では、一度でも脱窒剤221に接触する処理を行った水を脱窒処理水と呼ぶことがある。一方で、一度脱窒タンクに加えられた後再び第二の貯留槽21に戻ってきた水を硝化処理水と呼ぶこともある。なお、脱窒処理水のうち十分に窒素除去が行われ、環境放出基準値を満たした場合、これを本システム外に放出することが可能となる。
【0064】
また、第四の配管25の接続関係についても、特に限定はされない。なお、第三の配管23が脱窒タンク22の下部側において接続されている場合は、その上側に接続されていることが効率的な循環経路形成のために好ましい。また、第三の配管23が脱窒タンク22の上側部において接続されている場合は、その下側に接続されていることが好ましい。
【0065】
また、本システムSにおける脱窒システム2は、嫌気性状態を維持するために低酸素状態となっていることが好ましい。具体的には、上記第二の貯留槽21、脱窒タンク22、第三の配管23、第四の配管25それぞれが密封された容器、又は、上記第二の貯留槽21及び脱窒タンク22、好ましくは第三の配管23及び第四の配管25全体を覆う密封筐体により密封することが好ましい。なおここで「密封」は、完全に外気が入らない状態であることが好ましい状態であるが、そこまでの密封性は求めず、外気と上記構成内の空間がある程度区切られた状態となり、酸素が欠乏している状態になっている程度でもよい。一般に脱窒菌は嫌気性雰囲気において活発に活動するため、低酸素状態にして嫌気性とすることで脱窒菌の活動を活性化し、亜硝酸塩や硝酸塩等の窒素を窒素ガスとして変換し、原水から除去することができるようになる。
【0066】
以上、脱窒システム2により水中の亜硝酸塩や硝酸塩等を効率的に窒素ガスに変化させることが可能となる。特に、脱窒システム2は、脱窒菌を用いるとともに循環型となっているため、非常に効率が良いといった特徴がある。
【0067】
(排水処理方法)
上記の構成から効果については明らかとなるが、ここで、本システムにより実現される排水処理方法(以下「本方法」という。)について説明する。
【0068】
本方法は、(S1)原水を、担体に硝化菌を保持させた硝化剤に循環させながら通して硝化させるステップ、(S2)硝化された原水を、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤に循環させながら通して脱窒させるステップ、を備える。
【0069】
本方法において、(S1)原水を、担体に硝化菌を保持させた硝化剤に循環させながら通して硝化させるステップは、上記硝化システムを用いるステップである。すなわち、第一の貯留槽から第一の配管を通して硝化タンクに原水を供給し、硝化タンクの硝化剤に通された硝化処理水を第二の配管を通して再び第一の貯留槽に戻す処理を繰り返す。これにより、原水中に存在するアンモニアを亜硝酸塩や硝酸塩に変換し、次のステップの処理が行えるようにする。この循環の回数や時間は、処理する原水中のアンモニアの量に応じて適宜調整可能であるが、時間の目安として、概ね1時間以上3日以下循環させておくことが好ましく、より好ましくは半日以上2日以下である。この範囲とすることで、外部排出基準にすることができるとともに、毎日排出される排水を安定的に浄化することができる。
【0070】
また、本方法において、(S2)硝化された原水を、担体に脱窒菌を保持させた脱窒剤に循環させながら通して脱窒させるステップは、上記脱窒システムを用いるステップである。すなわち、第二の貯留槽から第三の配管を通して脱窒タンクに硝化処理水を供給し、脱窒タンクの脱窒剤に通された脱窒処理水を第四の配管を通して再び第二の貯留槽に戻す処理を繰り返す。これにより、硝化処理水中に存在する亜硝酸塩や硝酸塩を窒素ガスに変換し、外部への排水処理基準を満たすようにできる。この循環の回数や時間は、処理する原水中のアンモニアの量に応じて適宜調整可能であるが、時間の目安として、概ね1時間以上3日以下循環させておくことが好ましく、より好ましくは半日以上2日以下である。この範囲とすることで、外部排出基準にすることができるとともに、毎日排出される排水を安定的に浄化することができる。
【0071】
ここで、外部排出基準としては、BOD、CODであれば160mg/L以下となっていることが好ましく、SS(Suspended Solids)であれば200mg/L以下、T-N(全窒素:Total Nitrogen)であれば120mg/L以下、NHそのものの量であれば100mg/L以下、NOそのものの量であれば100mg/L以下、NO3そのものの量であれば100mg/L以下、全燐であれば16mg/L以下であることが好ましい。
【0072】
ところで、上記(S1)のステップから上記(S2)のステップに移行するタイミングは、十分な硝化処理が行われたタイミングで行われるものであり、具体的には、第二の配管に分岐され、又は別途設けられた取り出し配管のバルブを開くことで硝化システムから脱窒システムに処理対象の水を移すことができる。
【0073】
また、上記した通り、(S1)のステップに先立ち、本方法では、その前に、(S0-1)硝化タンクにおいて硝化剤を形成するステップ、を備えてもよい。具体的には、硝化タンクに担体を充填させ、この担体に硝化菌を付着させて硝化剤とするステップ、を備えていることが好ましい。更にこの具体的な方法としては、原水を第一の貯留槽から第一の配管を介して硝化タンクに供給し、更に、第二の配管を介して第一の貯留槽に戻すという循環処理を繰り返すことがあげられる。この場合、(S1)のステップに非常に似ているが、担体だけでは硝化処理を行うことができない一方、原水内に存在する硝化菌を繰り返し担体と接触させることで、担体の周囲に硝化菌が付着し、硝化剤となる。
【0074】
また、上記した通り、(S1)のステップ又は(S2)のステップに先立ち、本方法では、その前に、(S0-2)脱窒タンクにおいて脱窒剤を形成するステップ、を備えてもよい。具体的には、脱窒タンクに担体を充填させ、この担体に脱窒菌を付着させて脱窒剤とするステップ、を備えていることが好ましい。更にこの具体的な方法としては、原水又は硝化処理水を第二の貯留槽から第三の配管を介して硝化タンクに供給し、更に、第四の配管を介して第二の貯留槽に戻すという循環処理を繰り返すことがあげられる。この場合、(S2)のステップに非常に似ているが、担体だけでは脱窒処理を行うことができない一方、原水内、硝化処理水内に存在する脱窒菌を繰り返し担体と接触させることで、担体の周囲に脱窒菌が付着し、脱窒剤となる。
【0075】
以上、本実施形態によって、より処理効率の高い排水処理システム及び排水処理方法を提供することができる。特に、本実施形態によると、それぞれの循環型処理はバッチ処理であるが循環させており、硝化処理と脱窒処理それぞれを順次かつ同時に行うことが可能である。例えば、まず循環型硝化システムを用いて原水を硝化処理水に代え、その後この硝化処理水を循環型脱窒システムに移す。一方、この硝化システムはその分原水を処理することができるため、硝化処理と脱窒処理を同時に行うことができる。更に、本システムでは、単に原水を順次循環させるだけで環境基準以下に浄化することができるため、希釈するための水道代、消毒槽、薬剤代を大幅に削減できる。特に、活性汚泥法などに比べ、ブロアポンプ等の設備も必要がないため、様々なランニングコストの削減を図ることができる。また、各循環システムにおいては、生物学的硝化脱窒を行っているため、排水された消化液を利用して培養を行う必要が無く、特別なメンテナンス処理を求められることもない。そのため、非常に安価なシステムともなる。
【0076】
(他の例1)
本システム1は、上記のとおりであるが、別の形態を採用することも可能である。例えば、図2で示すように、硝化システム1と脱窒システム2を完全に分離したシステムとすることができる。これにより、一方のみのシステムで充分である場合、例えば硝化処理だけでよい場合や、硝化処理水は既に存在しているため脱窒だけを行いたい場合にも対応することができる。
【0077】
(他の例2)
また、本システム1では、菌の種類によって、硝化処理と脱窒処理とを一つの菌で行うことができるようになる。この場合のイメージを図3に示す。例えば、高酸素濃度状態においては硝化処理を、低酸素濃度状態においては脱窒を行うことができるような菌である場合、開放系や酸素供給手段15を備えさせて駆動させるような状態で原水に対して硝化処理を行い、十分に硝化処理されたら次は蓋211等を閉め、必要に応じて脱気して低酸素濃度状態にして脱窒処理を行わせることが可能である。このようにすれば一つのタンクと一つの処理槽で実現可能である。この場合、硝化タンク12と脱窒タンク22が同一となり、第一の貯留槽11が第二の貯留槽21でもあり、第一の配管13が第三の配管23と同一であり、第二の配管16が第四の配管25と同一となる。
【実施例0078】
上記した本システム1を用いて、実際に原水を処理する実験を行った。下記に具体的に示す。
【0079】
まず、BOD価400mg/L以上の原水を十分な量準備し、これを収容可能な第一の貯留槽に貯留した。
【0080】
(硝化タンク準備)
平均粒径約1mmの焼土(赤土と黒土の混合土)50kg充填したタンクを準備し、第一の貯留槽とこのタンクを第一の配管及び第二の配管でそれぞれ接続し、循環路を形成した。
【0081】
次に、第一のポンプを用いて、上記原水を第一の貯留槽とタンクの間を、原水にエアポンプによって酸素を供給しつつ3日間循環させ、十分に硝化菌を焼土に付着させ、硝化剤として整えた。この結果、このタンクは硝化タンクとなった。
【0082】
(脱窒タンク準備)
また一方、上記とは別に、平均粒径約1mmの焼土(赤土と黒土の混合土)50kg充填したタンクを準備し、第一の貯留槽とこのタンクを第三の配管及び第四の配管でそれぞれ接続し、循環路を形成した。
【0083】
次に、第二のポンプを用いて、上記原水を第一の貯留槽とタンクの間を、蓋をして脱気した後密封して3日間循環させ、十分に脱窒菌を焼土に付着させ、脱窒剤として整えた。この結果、このタンクは脱窒タンクとなった。
【0084】
さらに今度、処理対象となる原水として、BOD値476mg/Lの原水を100L準備し、これを第一の貯留槽に貯留し、第一の配管、硝化タンク、第二の配管によって1日間循環させた。この結果については下記のとおりである。具体的には、当初476mg/LあったBODが1日経過した後は13.3mg/Lとなっており、環境基準を十分に下回っていることとなった。一方、COD値としては当初1290mg/Lあった値が1日経過後には85.3mg/Lまで下がっていることを確認した。なお、処理前においてアンモニアは400mg/Lあったが、1日処理した後は50mLとなり、一方で亜硝酸態窒素は当初0.1mg/L未満であったものが8.4mg/Lとなり、硝酸態窒素は35mg/Lであったものが580mg/Lとなっており、十分に硝化されていることが確認できた。
【表1】
【0085】
そして、次に、上記第一の貯留槽に貯留されていた硝化処理水を第二の貯留槽に移し、脱窒タンクに第三の配管、第四の配管を接続して循環路を形成し、上記循環と同様に1日硝化処理水を処理させた。この結果を下記表2に示す。
【表2】
【0086】
具体的に本結果によると、当初存在した580mg/Lあった硝酸態窒素、8.4mg/Lあった亜硝酸態窒素はいずれも0.1mg/L未満になっていたことを確認した。
【0087】
以上、本実施例により、化学的薬品を用いることなく、より処理効率の高い排水処理システム及び排水処理方法を提供することができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、排水処理システム及び排水処理方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0089】
S…排水処理システム
1…循環型硝化システム
11…第一の貯留槽
12…硝化タンク
13…第一の配管
14…第一のポンプ
15…酸素供給手段
16…第二の配管
17…pH調整手段
18…取水配管
2 循環型脱窒システム
21…第二の貯留槽
22…脱窒タンク
23…第三の配管
24…第二のポンプ
25…第四の配管
図1
図2
図3