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特開2025-61106パターン形成方法、レジスト材料及びパターン形成装置
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  • 特開-パターン形成方法、レジスト材料及びパターン形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025061106
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】パターン形成方法、レジスト材料及びパターン形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/38 20060101AFI20250403BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20250403BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20250403BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
G03F7/38 501
G03F7/039 501
C08F20/28
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025002812
(22)【出願日】2025-01-08
(62)【分割の表示】P 2021530032の分割
【原出願日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2019123880
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】森田 和代
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴美子
(57)【要約】
【課題】本発明は、レジスト膜に高コントラストであり、かつ微細なパターンを形成する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に金属を導入する工程と、露光工程と、現像工程と、を含むパターン形成方法に関する。また、本発明は、レジスト材料及びパターン形成装置に関するものでもある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に金属を導入する工程と、
露光工程と、
現像工程と、を含み、
前記レジスト材料はポリマーを含み、前記ポリマーは、下記一般式(101)で表される構造に由来する単位を含み、
前記ポリマーは、主鎖切断型ポリマーである、パターン形成方法;
【化1】
一般式(101)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるRは同一であっても異なっていてよい;R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
【請求項2】
前記Rがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記レジスト材料はポリマーを含み、前記ポリマーは、下記一般式(102)~(103)で表される構造から選択される少なくとも1種に由来する単位を含む、請求項1に記載のパターン形成方法;
【化2】
【化3】
一般式(102)中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す;
一般式(103)中、Xは、置換基を有していてもよいアリール基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
【請求項4】
前記ポリマーは、前記一般式(101)~(103)で表される構造に由来する単位を含む、請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記R~Rの少なくともいずれかがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記金属を導入する工程は、Mg、Al、Ag、Ge、Cd、W、Ta、Hf、Zr、Mo、In、Sn、Sb及びTeからなる群から選択される少なくとも1種を導入する工程である、請求項1~5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記金属を導入する工程では、金属元素にハロゲン、アルキル基及びアミノアルキル基から選択される少なくとも1種が結合した金属材料が用いられる、請求項1~6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
下記一般式(101)で表される構造に由来する単位を含むポリマーを含有するレジスト材料であって、
前記ポリマーは、主鎖切断型ポリマーであり、金属導入用であるレジスト材料;
【化4】
一般式(101)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるRは同一であっても異なっていてよい;R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
【請求項9】
下記一般式(102)~(103)で表される構造から選択される少なくとも1種に由来する単位を含むポリマーを含有するレジスト材料であって、金属導入用である請求項8に記載のレジスト材料;
【化5】
【化6】
一般式(102)中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す;
一般式(103)中、Xは、置換基を有していてもよいアリール基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
【請求項10】
前記ポリマーは、前記一般式(101)~(103)で表される構造に由来する単位を含む、請求項9に記載のレジスト材料。
【請求項11】
前記R~Rの少なくともいずれかがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である請求項10に記載のレジスト材料。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のパターン形成方法において用いられるパターン形成装置であって、
レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成するユニットと、
前記レジスト膜に金属を導入するユニットと、
露光ユニットと、
現像ユニットと、を含むパターン形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、レジスト材料及びパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子デバイスは微細化による高精細化が要求されている。また、半導体デバイスのパターンについては、形状の多様化も検討されている。このようなパターンの形成方法としては、例えば、フォトレジストを用いたリソグラフィ法が知られている。フォトレジストを用いたリソグラフィ法では、シリコンウエハー等の半導体基板上にレジスト膜を形成し、半導体デバイスのパターンが描かれたフォトマスクを介して紫外線などの電磁波を照射し、現像することで得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板に、上記パターンに対応する微細凹凸を形成することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、α-メチルスチレン・α-クロルアクリル酸エステル共重合体を含む溶液を、基板上にスピンコートし、プリベークした後に、電子線露光を行い、現像処理を行うことで、パターンを形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、放射線でパターン形成可能なコーティングを形成するための方法が開示されている。具体的には、特許文献2には、有機溶媒、第一の有機金属組成物、および加水分解性の配位子-金属結合を有する金属化合物を含むコーティング溶液を基板上に堆積させ、さらに、基板上の前駆体コーティングを水に暴露させる工程を含む、コーティングを形成するための方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、膜形成工程と、パターン形成材料膜を金属元素を含む金属化合物に接触させる接触工程とを含むパターン形成方法が開示されている。ここでは、膜形成工程は、パターン形成材料を含む膜を形成する工程と、膜の第1領域に電磁波を照射する工程と、第1領域を除去する工程とを含み、これらの工程の後に、金属元素を含む金属化合物に接触させる接触工程が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-137227号公報
【特許文献2】特表2019-500490号公報
【特許文献3】特開2019-53228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、フォトレジストを用いたリソグラフィ法においては、微細なパターンを形成するための方法が検討されている。しかしながら、従来のパターン形成方法においては、レジスト材料のパターン形成後のコントラストが低い場合があり、改善が求められていた。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、レジスト膜に高コントラストで微細なパターンを形成する方法を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、露光する工程の間に、レジスト膜に金属を導入する工程を設けることで、レジスト膜のコントラストを高め得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜に金属を導入する工程と、
露光工程と、
現像工程と、を含むパターン形成方法。
[2] レジスト材料はポリマーを含み、ポリマーは、下記一般式(101)~(103)で表される構造から選択される少なくとも1種に由来する単位を含む、[1]に記載のパターン形成方法;
【化1】
【化2】
【化3】
一般式(101)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるRは同一であっても異なっていてよい;R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す;
一般式(102)中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す;
一般式(103)中、Xは、置換基を有していてもよいアリール基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
[3] ポリマーは、一般式(101)~(103)で表される構造に由来する単位を含む、[2]に記載のパターン形成方法。
[4] R~Rの少なくともいずれかがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である[3]に記載のパターン形成方法。
[5] 金属を導入する工程は、Mg、Al、Ag、Ge、Cd、W、Ta、Hf、Zr、Mo、In、Sn、Sb及びTeからなる群から選択される少なくとも1種を導入する工程である、[1]~[4]のいずれかに記載のパターン形成方法。
[6] 金属を導入する工程では、金属元素にハロゲン、アルキル基及びアミノアルキル基から選択される少なくとも1種が結合した金属材料が用いられる、[1]~[5]のいずれかに記載のパターン形成方法。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のパターン形成方法において用いられる金属ガス材料であって、Mg、Al、Ag、Ge、Cd、W、Ta、Hf、Zr、Mo、In、Sn、Sb及びTeからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属ガス材料。
[8] 金属ガス材料は、金属元素にハロゲン、アルキル基及びアミノアルキル基から選択される少なくとも1種が結合した材料である、[7]に記載の金属ガス材料。
[9] 下記一般式(101)~(103)で表される構造から選択される少なくとも1種に由来する単位を含むポリマーを含有するレジスト材料であって、金属導入用であるレジスト材料;
【化4】
【化5】
【化6】
一般式(101)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるRは同一であっても異なっていてよい;R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す;
一般式(102)中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す;
一般式(103)中、Xは、置換基を有していてもよいアリール基を表す;Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
[10] ポリマーは、一般式(101)~(103)で表される構造に由来する単位を含む、[9]に記載のレジスト材料。
[11] R~Rの少なくともいずれかがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である[10]に記載のレジスト材料。
[12] レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成するユニットと、
レジスト膜に金属を導入するユニットと、
露光ユニットと、
現像ユニットと、を含むパターン形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、レジスト膜に高コントラストであり、かつ微細なパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、基板とレジスト膜の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(パターン形成方法)
本発明は、レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に金属を導入する工程と、露光工程と、現像工程と、を含むパターン形成方法に関する。本発明のパターン形成方法においては、レジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に金属を導入する工程と、露光工程と、現像工程とをこの順に含む。
【0014】
図1(a)には、基板10の上にレジスト材料が塗布され、レジスト膜40が形成された積層体が示されている。なお、図示していないが基板10とレジスト膜40の間には他の層が設けられていてもよい。そして、基板10の上にレジスト膜40が形成された積層体の状態において、レジスト膜40に金属が導入される。その後、図1(b)に示されるように、レジスト膜40の一部は、基板10に形成したいパターン形状となるように少なくとも一部が除去される。例えば、レジスト膜40に対し、露光及び現像処理を行うことで、図1(b)に示されるようなパターン形状が形成される。
【0015】
本発明のパターン形成方法は、レジスト膜を形成する工程と露光工程の間にレジスト膜に金属を導入する工程を含む。本発明は、このようにレジスト膜を形成する工程と露光工程の間にレジスト膜に金属を導入する工程を設けることにより、高コントラストなレジスト膜を形成することができる。レジスト膜のコントラストは、現像前後でのレジストパターン高さの差を測定し、レジスト膜の現像前高さ-レジスト膜の現像後高さの値が小さい場合に、コントラストが高いと評価することができる。すなわち、現像前後でのレジスト高さの変化が少ない場合には、レジスト膜が高コントラストであると評価できる。
【0016】
また、本発明のパターン形成方法によれば、レジスト膜の解像度を高めることもできる。解像度は、レジスト膜を形成して、100nm幅のラインアンドスペースのパターンを形成した場合に、所望のパターン構造が形成されており、かつスペース部にレジスト膜由来の残留物がない場合に良好であると評価できる。
【0017】
さらに、本発明のパターン形成方法によれば、レジスト膜にアスペクト比の高いパターンを形成することができる。レジスト膜のアスペクト比は、レジスト膜に形成されたラインアンドスペースのライン部におけるレジスト膜の高さ/レジスト膜の幅で算出される値である。本願明細書においては、理論的アスペクト値となる状態において、パターン形状を観察し、パターンが直線状である場合に、アスペクト比が高いと評価できる。
【0018】
なお、本発明のパターン形成方法では、レジスト膜の形成に用いるレジスト材料には金属成分は含有されておらず、レジスト膜を形成した後に金属を導入している。これにより、レジスト材料の安定性をより高めることができる。また、本発明のパターン形成方法では、レジスト膜にパターン形状を形成する前の段階において金属を導入している。これにより、レジスト膜のパターニングのコントラストをより効果的に高めることができる。
【0019】
<レジスト膜を形成する工程>
パターン形成方法に用いる基板としては、例えば、ガラス、シリコン、SiN、GaN、AlN等の基板を挙げることができる。また、PET、PE、PEO、PS、シクロオレフィンポリマー、ポリ乳酸、セルロースナノファイバーのような有機材料からなる基板を用いてもよい。
【0020】
基板にレジスト材料を塗布する前には、基板を洗浄する工程を設けることが好ましい。基板表面を洗浄することによりレジスト材料の塗布性が向上する。洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0021】
レジスト材料の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、レジスト材料を基板上にスピンコート法等の公知の方法により塗布することができる。例えば、スピン方式やスプレー方式、ディスペンサーを用いて塗布したい領域を一度にコートする方式、インクジェット方式などを採用することができる。中でも、レジスト材料の塗布方法は、スピン方式であることが好ましい。
【0022】
レジスト材料を塗布した後には、加熱することによりレジスト材料を硬化させてレジスト膜を形成してもよい。特に、レジスト材料をスピンコート方式で塗布した場合、加熱工程を設けることによりレジスト材料中の溶媒を短時間で除去することができる。塗膜を加熱する際の温度は、特に限定されないが、60℃以上550℃以下が好ましい。また、加熱処理は、大気下でかつ比較的低温での加熱処理であることが好ましい。加熱する方法は特に限定されないが、ホットプレートを用いた方法、赤外線を照射する方法などを採用することができる。なかでもホットプレートを用いた方法は簡便で好ましい。また、加熱時の雰囲気は、大気下あるいは窒素などの不活性ガス下、真空下などにすることができる。加熱時間は、特に限定されないが、0.3分以上10分以下が好ましい。
【0023】
基板とレジスト膜は、この順で隣り合う層同士が直接接するように積層されることが好ましいが、各層の間には他の層が設けられていてもよい。例えば、基板とレジスト膜の間にはアンカー層が設けられてもよい。アンカー層は、基板の濡れ性をコントロールする層であり、基板とレジスト膜の密着性を高める層である。また、基板とレジスト膜の間には光反射防止膜が設けられていてもよい。なお、基板とレジスト膜の間には、異なる材料からなる層が複数層挟まれていてもよい。これらの材料としては、特に特定されるものではないが、例えばSiO、SiN,Al、AlN、GaN、GaAs、W、Cr、Ru、Ta、TaN、SOG、アモルファスカーボンなどの無機材料や、市販されているSOC、接着剤のような有機材料を挙げることができる。
【0024】
<金属を導入する工程>
本発明のパターン形成方法は、レジスト膜を形成する工程と、露光工程の間に金属導入工程をさらに含む。この場合、金属導入工程としては、SIS法(Sequencial Infiltration Synthesis;逐次浸透合成)のような、レジスト膜へ金属を導入する工程を挙げることができる。導入する金属としては、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどが挙げられる。中でも、導入する金属は、Mg、Al、Ag、Ge、Cd、W、Ta、Hf、Zr、Mo、In、Sn、Sb及びTeからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Sn、Sb及びTeからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。このようなプロセスは、例えばJornal of Photopolymer Science and Technology Volume29, Number5(2016)653-657に記載されている方法により行うことができる。
【0025】
金属を導入する工程では、金属ガスをレジスト膜中に浸透させることによって導入する方法、イオンインプラント方式を用いて金属イオンをレジスト膜中に注入することによって導入する方法、金属を含む溶液をレジスト膜上に塗布して材料と反応させることによって導入する方法を採用することが好ましい。中でも、金属ガスをレジスト膜中に浸透させる方法は、レジスト膜内部まで金属が浸透しやすく、かつレジスト膜中の成分と金属が化学反応により結合を形成するため、特に好ましい。
【0026】
金属ガスをレジスト中に浸透させる方法では、レジスト膜を形成した基板を真空チャンバーに入れて真空条件とした後に、金属ガスを真空チャンバー内に充満させることが好ましい。真空チャンバー内では、金属ガスを一定時間充満させておくことが好ましい。反応後には真空チャンバー内を常圧に戻してレジスト膜を形成した基板を取り出す。なお、金属ガスをレジスト膜に導入した後、水蒸気やオゾンなどをレジスト膜に接触させてもよい。また、上記工程を1サイクルとして、金属ガスをレジスト中に浸透させる工程を1~100サイクル行ってもよい。金属ガスをレジスト中に浸透させる工程を1回で行うとプロセス時間を短縮することができるため好ましい。一方、金属ガスをレジスト中に浸透させる工程を複数回行うことにより、さらにレジスト膜内に金属をより導入させることができるため好ましい。
【0027】
金属を導入する工程の後工程には、加熱工程を設けても良い。加熱することにより、金属のレジスト膜内への浸透を促進することができる。加熱方法としては、特に限定しないが、ホットプレートや赤外線などのレーザー照射、キセノンフラッシュランプ照射などを挙げることができる。
【0028】
金属を導入する工程で用いる金属ガスとしては、例えば、金属元素にハロゲン、アルコキシ基、アルキル基やアミノアルキル基が結合した金属ガスを用いることができる。例えば、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化銀、塩化ゲルマニウム、塩化カドミウム、塩化タングステン、塩化タンタル、塩化ハフニウム、塩化インジウム、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化テルル、塩化モリブデン、テトラキスジメチルアミノハフニウム、テトラメトキシハフニウム、トリメチルアルミニウム、ビスジイソプロピルプロピオンアミジネート-コバルト、ジイソプロピルプロピオンーアミジネートー銅、テトラトリジメチルアミノチタン、ジメチルテルル、ジエチルテルル、ジ(イソプロピル)テルル、ジ(イソプロピル)ジテルル、トリ(イソプロピル)アンチモン、テトラメチルスズ、テトラキスジメチルアミノスズ、トリ(イソブチル)インジウム、トリ(イソブチル)ガリウム、ペンタキスジメチルアミノタンタル、ビスアセチルアセトナトマグネシウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラエチルゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム、ジメチルカドミウム、テトライソプロキシジルコニウム、テトラキスジメチルアミドジルコニウム、ビスメチルシクロペンタジエニルメトキシメチルジルコニウム、ビスメチルシクロペンタジエニルジメチルハフニウム、ビス(t-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)モリブデン、ビス(t-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン等を挙げることができる。中でも、金属元素にハロゲン、アルキル基及びアミノアルキル基から選択される少なくとも1種が結合した金属ガスは反応性が高いため好ましい。これら金属ガスは、常温で液体あるいは固体でも、その蒸気を用いることによって適用することが可能となる。蒸気を発生させるために、金属ガス材料を加熱することもできる。
【0029】
なお、本発明は、パターン形成方法の金属を導入する工程において用いられる金属ガス材料であって、Mg、Al、Ag、Ge、Cd、W、Ta、Hf、Zr、Mo、In、Sn、Sb及びTeからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属ガス材料に関する発明であってもよい。このような金属ガス材料は、金属元素にハロゲン、アルキル基及びアミノアルキル基から選択される少なくとも1種が結合した材料であることが特に好ましい。
【0030】
金属を導入する工程で用いる金属溶液としては、特に限定されないが、例えばフェロセン溶液、四塩化テルル溶液、酢酸スズ溶液、アセチルアセトナト銅溶液、ヨウ化インジウム溶液、ヘキサンアミンコバルト塩化物溶液、エチレンジアミン四酢酸ジルコニウム溶液、エチレンジアミン四酢酸銅溶液等を挙げることができる。金属溶液に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、水や有機溶媒などを使用することができる。中でも、溶媒は、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、酢酸エチル等が好ましい。
【0031】
金属を導入する工程において、金属ガスを導入する場合、基板の温度は、0~400℃であることが好ましく、20~300℃であることがより好ましい。また、金属ガスを導入する際のチャンバー内圧力は、ガスが浸透しやすくするために、100kPa以下であることが好ましい。また金属ガスを導入するときにチャンバー内にプラズマを照射することもできる。プラズマを照射することにより、金属ガスを更に活性化することも可能となる。例えば、特開2019-54062号公報で開示されているようにアルゴンガスでプラズマ照射させて金属ガスを導入する方法を用いることもできる。
【0032】
<露光工程>
露光工程は、金属導入後のレジスト膜に、任意のパターンを形成するために、電磁波を照射する工程である。電磁波としては特に限定しないが、半導体レーザー、g線、i線などの高圧水銀灯、ArFやKrFなどのエキシマレーザー、電子線、極端紫外線、X線などを使用することができる。特に電子線や極端紫外線を用いる場合、本発明の方法を用いることによってレジスト膜厚の減少を少なくできる。さらに、金属が導入される効果によって微細パターン構造の検査がしやすくなるという効果も得られる。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3~10分間の条件で行うことが好ましい。
【0033】
露光工程では、露光は、任意のパターンが形成されているフォトマスクを介して行ってもよいし、電子線レーザーなどを用いて直接描画しても良い。例えば、回路パターンが描画されたマスクを通して所定の電磁波を照射することで、光が当たった部分のレジスト膜を変質させてマスクのパターンを転写することができる。この際、光が当たった部分では、レジスト膜に含まれるポリマーの主鎖が切断されることが好ましい。露光部では、ポリマーの主鎖が切断され、後工程の現像工程において、切断されたポリマーが現像液に溶解し、露光された部分のレジスト膜(レジスト材料)が除去されることになる。このように露光部ではレジスト膜に間欠部が形成されることになり、レジスト膜の間欠部では基板10が露出することになる。
【0034】
なお、露光工程においてレジスト膜に電磁波を照射する場合、電磁波の波長は特に限定されるものではないが、15nm以下であることが好ましい。
【0035】
<現像工程>
現像工程は、レジスト膜を露光した後、現像液に接触させてパターンを形成する工程である。現像方法としては特に限定しないが、ディップ方式やスピンコート方式などをとることができる。また、現像の温度は室温でもよく、適宜変更することも可能である。現像工程で用いる現像液としては、特に限定されないが、既知の現像液を使用することができる。例えば、キシレン、トルエン、アニソール等の芳香族系、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、γブチロラクトン等のエステル、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、無水酢酸、酢酸等の有機酸や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。また、現像工程では、これらの現像液を混合して使用することもできる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件は、温度-70~50℃、時間1~300秒から適宜選択される。
【0036】
また、現像工程の後にリンス液を用いたリンス工程を設けてもよい。リンス液としては、特に限定されないが、既知のリンス液を使用することができる。例えば、キシレンや酢酸ブチル、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、純水等を用いることができる。リンス液としては、これらをそれぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、これらリンス液に界面活性剤などを加えて用いてもよい。リンス工程の条件は、温度-70~50℃、時間10~100秒から適宜選択される。
【0037】
<その他の工程>
本発明のパターン形成方法は、レジスト材料から形成されたレジスト膜にパターンを形成する方法であるが、レジスト膜に形成されたパターンを保護膜として、半導体基板等を加工する工程をさらに含むものであってもよい。このような工程をエッチング工程と呼ぶ。この場合、現像工程の後工程としてエッチング工程が設けられる。
【0038】
エッチング工程において半導体基板を加工する方法としては、例えば、ケミカルウェットエッチング(湿式現像)、ケミカルドライエッチング等の反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、イオンビームエッチング等の物理的エッチング等の公知の方法が挙げられる。半導体基板の加工は、例えば、テトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、塩素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素等のガスを用いたドライエッチングによって行われることが好ましい。
【0039】
(パターン形成装置)
本発明は、レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成するユニットと、レジスト膜に金属を導入するユニットと、露光ユニットと、現像ユニットと、を含むパターン形成装置に関するものであってもよい。本発明のパターン形成装置は、上記ユニットを有するものであるが、それぞれ単機能のものを組み合わせた装置であってもよい。例えばレジスト膜を形成するユニットとレジスト膜に金属を導入するユニットが1つのユニットとなった装置であってもよく、金属を導入する工程と露光工程が1つのユニットとなった装置であってもよい。パターン形成装置は、これらユニットが搬送手段により連結され、一連の工程を行うことができるような装置であることが好ましい。
【0040】
レジスト膜を形成するユニットは、レジスト材料を基板上に供給する供給手段を備える。供給手段としては、例えば、スピンコータ-や、スプレーコータ-、ディスペンサー、インクジェットコーター等を挙げることができる。中でも、供給手段はスピンコーターであることが好ましい。
【0041】
レジスト膜を形成するユニットはさらに、加熱手段を備えていてもよい。加熱手段としては、例えば、ホットプレート、赤外線などのレーザー照射装置等を挙げることができる。なお、レジスト膜を形成するユニットが加熱手段を備える場合には、例えば供給手段の隣に位置するような構成とすることができる。また、供給手段と加熱手段の間には基板が退避できるスペースを設けておき、基板を搬送することにより処理を行ってもよい。
【0042】
レジスト膜に金属を導入するユニットは、チャンバーと、チャンバー内に金属ガスを供給する手段を備える。すなわち、チャンバーには、金属ガス供給配管が接続されていてもよい。チャンバーは真空チャンバーであることが好ましく、真空ポンプを備えていることが特に好ましい。このようなチャンバー内にレジスト膜を設置した後に、チャンバー内に金属ガスを供給し、金属ガスを充満させることでレジスト膜に金属ガスを接触させることができ、これにより、レジスト膜に金属を導入することができる。金属ガスを保管する容器には加熱装置が備えられていてもよく、金属ガス供給配管にも加熱装置が備えられていてもよい。
【0043】
チャンバーはさらに、レジスト膜を加熱する手段を備えていてもよい。例えば、チャンバー内にホットプレートが設置されていてもよい。ホットプレート等の加熱手段は、予め所望の温度に設定されていてもよく、または温度を変化させながら金属を導入するように設定されていてもよい。
【0044】
レジスト膜に金属を導入するユニットには、例えばスピンコーターを用いることができる。レジスト膜に金属を導入するユニットの雰囲気は大気下でもよく、窒素などの不活性ガス雰囲気下や真空下でもよい。特に不活性ガス雰囲気下では、反応性の高い金属溶液を用いることが可能となり好ましい。
【0045】
露光ユニットは、電磁波照射部を備える。電磁波照射部としては、例えば、半導体レーザー、g線、i線などの高圧水銀灯、ArFやKrFなどのエキシマレーザー、電子線、極端紫外線、X線などの電磁波照射装置等を挙げることができる。露光ユニットとしては、例えば、光学部、電磁波照射部、電源部を含むユニットを挙げることができる。露光工程において、フォトマスクを使用する場合、露光ユニットにはフォトマスクを設置する部分が設けられていてもよい。フォトマスクを使用する露光方法をとる場合、例えばステップ露光と呼ばれるプロセスを採用してもよい。ステップ露光では、レジスト膜を有する基板をチャンバー内に搬送し、所望のパターンを加工してあるフォトマスクを介して上部から電磁波を照射し、照射量や時間、フォーカス等を最適にした条件で一定面積を露光する。これを複数回繰り返してウエハ全面を露光することができる。なお、フォトマスクを使用しない露光方法では、例えばレジスト膜表面に電磁波が照射されるようにフォーカスやドーズ量等の調整を行った後、任意の位置に露光を行い、望むパターンを形成する、という方法をとることができる。また、露光する際に、液浸露光という方式をとることもできる。液浸露光は、レジスト膜上に水やオイルなどを載せ、これを介して電磁波を照射することによってより微細なパターンを形成する方法である。
【0046】
現像ユニットは、現像液貯蔵槽とスピンコーター、現像液供給配管を備えることが好ましい。現像ユニットでは、露光後のレジスト膜上に現像液供給配管から現像液を塗布してレジスト膜の現像を行い、その後スピンコーターでレジスト膜を有する基板を回転させて現像液を除去する、という方法をとることができる。また、現像ユニットは更にリンス液貯蔵槽やリンス液配管を備えることもできる。現像液を除去した後にリンス液をレジスト膜上に塗布し、スピンコーターでレジスト膜を有する基板を回転させてリンス液を除去する、という方法をとることもできる。
【0047】
(レジスト材料)
本発明のパターン形成方法で用いるレジスト材料は、ポリマーを含むことが好ましい。中でも、ポリマーは、主鎖切断型のポジ型レジスト材料(ポリマー)であることが好ましい。レジスト材料に含まれるポリマーは電子線の照射により、主鎖が切断され、露光部のみが現像液に溶解することになる。これにより、より高精細なパターンを形成することが可能となる。
【0048】
本発明のパターン形成方法では、レジスト材料から形成されたレジスト膜に金属が導入される。このようにレジスト材料は金属導入用のレジスト材料であることが好ましい。
【0049】
本発明のパターン形成方法で用いるレジスト材料は、ポリマーを含むことが好ましく、ポリマーは、下記一般式(101)~(103)で表される構造から選択される少なくとも1種に由来する単位を含むことがより好ましい。例えば、ポリマーは、下記一般式(101)で表される構造に由来する単位を含むものであってもよく、下記一般式(102)で表される構造に由来する単位を含むものであってもよく、下記一般式(103)で表される構造に由来する単位を含むものであってもよい。また、ポリマーは、下記一般式(101)及び(102)で表される構造に由来する単位を含むものであることが好ましく、下記一般式(101)及び(103)で表される構造に由来する単位を含むものであることが好ましく、下記一般式(102)及び(103)で表される構造に由来する単位を含むものであることが好ましい。中でも、ポリマーは、下記一般式(101)~(103)で表される構造に由来する単位を全て含むことが特に好ましい。なお、本明細書において、「単位」はポリマーの主鎖を構成する繰り返し単位(モノマー単位)である。なお、ポリマーが糖誘導体に由来する単位を含むものである場合、1つの糖誘導体に由来する単位の側鎖にさらに糖誘導体に由来する単位を含む場合もあり、この場合、側鎖のポリマーを構成する繰り返し単位(モノマー単位)も本明細書でいう「単位」に相当する。
【化7】
【化8】
【化9】
【0050】
一般式(101)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるRは同一であっても異なっていてよい。R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
一般式(102)中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
一般式(103)中、Xは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Yは、単結合又は連結基を表す。
【0051】
中でも、レジスト材料に含まれるポリマーは、上記一般式(101)で表される構造に由来する単位を含むことが好ましい。
【0052】
一般式(101)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表す。ここで、置換基を有していてもよいアルキル基には、糖誘導体基が含まれ、Rが直鎖または分岐鎖の糖誘導体に由来する単位であってもよい。直鎖または分岐鎖の糖誘導体に由来する単位は、結合する糖誘導体と同じ構造の糖誘導体であることが好ましい。なお、Rが直鎖または分岐鎖の糖誘導体に由来する単位である場合、糖誘導体基の連結数(糖誘導体の平均重合度)は15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0053】
中でも、Rはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアシル基であることが好ましく、Rはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアシル基であることがより好ましく、置換基を有していてもよいアシル基であることがさらに好ましい。Rが置換基を有していてもよいアシル基である場合、レジスト材料の解像度をより効果的に高めることができ、さらに、レジスト膜のコントラストを高めることもできる。
【0054】
がアルキル基又はアシル基である場合、その炭素数は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、炭素数は1以上であることが好ましく、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。
【0055】
の具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、クロロベンゾイル基等のアシル基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、アセチル基、プロパノイル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基が好ましく、アセチル基、プロパノイル基が特に好ましい。
【0056】
一般式(101)中、R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R11が置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等を挙げることができる。中でも、R11は、アルキル基はメチル基であることが好ましく、このようなアルキル基はさらに置換基を有することが好ましい。アルキル基が有する置換基としては、例えば、水酸基、アシル基、アリル基、アルコキシ基等を挙げることができ、中でも置換基は水酸基またはアシル基であることが好ましい。より具体的には、R11が置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、R11は、-CHORであることが好ましく、Rとしては上述した基を挙げることができる。但し、一般式(101)において、R11は水素原子であることが特に好ましい。R11を水素原子とすることで、より微細なパターン構造の形成が容易となる。
【0057】
一般式(101)中、Rは水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表す。中でも、Rは水素原子、炭素数が1以上3以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましい。Rに、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を導入することにより、形成されるレジスト膜をより高コントラストにすることができる。
【0058】
一般式(101)中、Yはそれぞれ独立に単結合または連結基を表す。Yが連結基である場合、Yとしては、糖単位を含まない連結基を挙げることができ、例えば、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。Yはこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。中でもYは下記構造式で表される連結基であることが好ましい。
【化10】
【0059】
上記構造式中、※印は主鎖側との結合部位を表し、*印は、側鎖の糖単位との結合部位を表す。
【0060】
なお、上記一般式(101)では、糖誘導体の構造を環状構造として記載しているが、糖誘導体の構造は環状構造だけでなくアルドースやケトースと呼ばれる開環した構造(鎖状構造)であってもよい。
【0061】
レジスト材料に含まれるポリマーは、上記一般式(102)で表される構造に由来する単位を含むことが好ましく、上記一般式(101)で表される構造に由来する単位に加えて、さらに上記一般式(102)で表される構造に由来する単位を含むことが好ましい。
【0062】
一般式(102)中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表し、置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1以上8以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。なお、上記炭素数は置換基を除く炭素数である。置換基を有するアルキル基としては、例えば、-CH-OH、-CH-O-メチル、-CH-O-エチル、-CH-O-n-プロピル、-CH-O-イソプロピル、-CH-O-n-ブチル、-CH-O-イソブチル、-CH-O-t-ブチル、-CH-O-(C=O)-メチル、-CH-O-(C=O)-エチル、-CH-O-(C=O)-プロピル、-CH-O-(C=O)-イソプロピル、-CH-O-(C=O)-n-ブチル、-CH-O-(C=O)-イソブチル、-CH-O-(C=O)-t-ブチル、-C-OH、-C-O-メチル、-C-O-エチル、-C-O-n-プロピル、-C-O-イソプロピル、-C-O-n-ブチル、-C-O-イソブチル、-C-O-t-ブチル、-C-O-(C=O)-メチル、-C-O-(C=O)-エチル、-C-O-(C=O)-n-プロピル、-C-O-(C=O)-イソプロピル、-C-O-(C=O)-n-ブチル、-C-O-(C=O)-イソブチル、-C-O-(C=O)-t-ブチル、-C-O-(C=O)-CH-(C=O)-メチル等を挙げることができる。また、置換基を有するアルキル基はシクロアルキル基であってもよく、橋かけ環式シクロアルキル基であってもよい。
【0063】
一般式(102)中、Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表す。中でも、Rは水素原子、炭素数が1以上3以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましい。Rに、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を導入することにより、形成されるレジスト膜をより高コントラストにすることができる。なお、レジスト材料に含まれるポリマーが上記一般式(101)で表される構造に由来する単位に加えて、さらに上記一般式(102)で表される構造に由来する単位を含む場合、一般式(101)におけるRと一般式(102)におけるRの少なくともいずれかがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。なお、一般式(101)におけるRと一般式(102)におけるRの両方がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であってもよい。
【0064】
一般式(102)中、Yは、単結合又は連結基を表す。Yが連結基である場合、Yとしては、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。Yはこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。中でもYは下記構造式で表される連結基であることが好ましい。
【化11】
【0065】
上記構造式中、※印は主鎖側との結合部位を表し、*印は、Xとの結合部位を表す。
【0066】
レジスト材料に含まれるポリマーは、上記一般式(103)で表される構造に由来する単位を含むことが好ましく、上記一般式(101)で表される構造に由来する単位に加えて、さらに上記一般式(103)で表される構造に由来する単位を含むことが好ましい。中でも、ポリマーは、上記一般式(101)~(103)で表される構造に由来する単位を全て含むものであることが特に好ましい。
【0067】
レジスト材料に含まれるポリマーは、上記一般式(103)で表される構造に由来する単位をさらに含むことが好ましい。ポリマーが一般式(103)で表される構造に由来する単位をさらに含むことにより、有機溶剤への溶解性を向上させることができる。
【0068】
一般式(103)中、Xは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。中でも、Xは、フェニル基であることが好ましい。
【0069】
一般式(103)中、Rは、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表す。中でも、Rは水素原子、炭素数が1以上3以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましい。Rに、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を導入することにより、形成されるレジスト膜をより高コントラストにすることができる。
【0070】
一般式(101)~(103)において、R~Rの少なくともいずれかがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
【0071】
一般式(103)中、Yは、単結合又は連結基を表す。Yが連結基である場合、Yとしては、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。Yはこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。但し、Yは、単結合であることが特に好ましい。
【0072】
一般式(103)で表される構造に由来する単位は、スチレン化合物に由来する単位であることが好ましい。スチレン化合物としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、トリメチルシリルスチレン、ヒドロキシスチレン、3,4,5-メトキシスチレン、ペンタメチルジシリルスチレン、t-ブトキシカルボニルスチレン、テトラヒドロピラニルスチレン、フェノキシエチルスチレン、t-ブトキシカルボニルメチルスチレン等が挙げられる。
【0073】
ポリマーが一般式(101)で表される構造に由来する単位を含むものである場合、一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)は、ポリマーの全質量に対して、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、3質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましく、12質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率を上記範囲内とすることにより、レジスト材料から形成されるレジスト膜のコントラストをより効果的に高めることができる。
【0074】
一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率は、例えばH-NMRとポリマーの重量平均分子量から求めることができる。具体的には、下記式を用いて算出することができる。
一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)=一般式(101)で表される構造に由来する単位の質量×一般式(101)で表される構造に由来する単位(モノマー)数/ポリマーの重量平均分子量
【0075】
ポリマーが一般式(102)で表される構造に由来する単位を含むものである場合、一般式(102)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)は、ポリマーの全質量に対して、1質量%以上99質量%以下であることが好ましく、3質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上97質量%以下であることが特に好ましい。なお、一般式(102)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)は、上述した一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率の算出と同様の方法で算出することができる。
【0076】
ポリマーが一般式(103)で表される構造に由来する単位を含むものである場合、一般式(103)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)は、ポリマーの全質量に対して、1質量%以上99質量%以下であることが好ましく、3質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上97質量%以下であることが特に好ましい。なお、一般式(103)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)は、上述した一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率の算出と同様の方法で算出することができる。
【0077】
レジスト材料に含まれるポリマーは、上述した一般式(101)で表される構造に由来する単位を含むものであり、さらに、一般式(102)及び/又は(103)で表される構造に由来する単位を含むものであることが好ましい。ポリマーが一般式(102)及び/又は(103)で表される構造に由来する単位を含む場合は、ポリマーはコポリマーとなる。ポリマーがコポリマーである場合、コポリマーは、ブロックコポリマーであっても、ランダムコポリマーであってもよい。また、コポリマーは、一部がランダムコポリマー、一部がブロックコポリマーである構造であってもよい。このように、用途や要求物性により適宜適切な構造を選択することができる。
【0078】
ポリマーは、上記一般式(101)~(103)で表される構造に由来する単位以外に他の単位を含むものであってもよい。他の単位としては、例えば、上記一般式(101)~(103)で表される構造と重合可能な単位であれば特に限定されるものではない。
【0079】
ポリマーの含有量は、レジスト材料の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、ポリマーの含有量は、レジスト材料の全量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることがさらに好ましい。また、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、200万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、100万以下であることがさらに好ましく、70万以下であることが一層好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPCによるポリスチレン換算で測定された値である。
【0081】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1以上であることが好ましい。また、Mw/Mnは、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、15以下であることが一層好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0082】
PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトンおよびDMFから選択される少なくとも1種へのポリマーの溶解度は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。上記有機溶剤へのポリマーの溶解度の上限値は特に制限されるものではないが、例えば40質量%とすることができる。なお、上記溶解度は、PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン及びDMFから選択される少なくともいずれかへの溶解度である。
【0083】
ポリマーの溶解度の測定方法は、所定量のポリマーにPGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン又はDMFを徐々に加えながら撹拌し、溶解したときの添加した有機溶剤量を記録する。撹拌には、マグネチックスターラーなどを使用してもよい。そして、下記式から溶解度を算出する。
溶解度(質量%)=ポリマーの質量/(ポリマーの質量+有機溶剤の質量)×100
【0084】
<ポリマーの合成方法>
ポリマーの合成は、リビングラジカル重合やリビングアニオン重合、原子移動ラジカル重合といった公知の重合法で行うことができる。例えばリビングラジカル重合の場合、AIBN(α、α’-アゾビスイソブチロニトリル)といった重合開始剤を用い、モノマーと反応させることによってコポリマーを得ることができる。リビングアニオン重合の場合、塩化リチウムの存在下でブチルリチウムとモノマーを反応させることによってポリマーを得ることができる。なお、本実施例において、ポリマーの合成例を示しているが、本実施形態はそれに限られるものではなく、上記各合成法や公知の合成法によって適宜合成することができる。例えば国際公開WO99/062964等に記載されている方法を利用することができる。
【0085】
また、ポリマーが上述した一般式(101)で表される構造に由来する単位を含む場合、ポリマーを合成する際には、木本性植物、あるいは草本性植物由来のリグノセルロース等から抽出する工程を組み合わせて行ってもよい。例えば、木本性植物、あるいは草本性植物由来のリグノセルロース等から抽出する方法を採用する場合は、特開2012-100546号公報等に記載の抽出方法を利用することができる。
【0086】
キシランについては、例えば特開2012-180424号公報に開示されている方法で抽出することができる。
セルロースについては、例えば特開2014-148629号公報に開示されている方法で抽出することができる。
【0087】
そして、一般式(101)で表される構造に由来する単位を含むポリマーを合成する際には、上記抽出方法で得た糖部のOH基をアセチル化やハロゲン化などして修飾して用いることが好ましい。例えばアセチル基を導入する場合、無水酢酸と反応させることによりアセチル化した糖誘導体部を得ることができる。
【0088】
コポリマーを合成する際は、Macromolecules Vol.36,No.6, 2003を参考にして合成をすることもできる。具体的には、DMF、水、アセトニトリル等を含む溶媒に各化合物を入れ、還元剤を添加する。還元剤としては、NaCNBH等を挙げることができる。その後、30℃以上100℃以下で1日以上20日以下撹拌し、必要に応じて還元剤を適宜追加する。水を添加することで沈殿物を得て、固形分を真空乾燥することでコポリマーを得ることができる。
【0089】
コポリマーの合成方法としては、上記の方法の他に、ラジカル重合、RAFT重合、ATRP重合、クリック反応、NMP重合を用いた合成方法を挙げることができる。
ラジカル重合は開始剤を添加して熱反応や光反応で2個のフリーラジカルを生じさせることで起こる重合反応である。モノマー(例えばスチレンモノマーとキシロオリゴ糖の末端のβ-1位にメタクリル酸を付加した糖メタクリレート化合物)と開始剤(例えばアゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物)を150℃で加熱することでポリスチレン-ポリ糖メタクリレートランダムコポリマーを合成することができる。
RAFT重合は、チオカルボニルチオ基を利用した交換連鎖反応を伴う、ラジカル開始重合反応である。例えばキシロオリゴ糖の末端1位についたOH基をチオカルボニルチオ基に変換し、その後スチレンモノマーを30℃以上100℃以下で反応させてコポリマーを合成する、という手法を取ることができる(Material Matters vol.5, No.1 最新高分子合成 シグマアルドリッチジャパン株式会社)。
ATRP重合は、糖の末端OH基をハロゲン化し、金属錯体[(CuCl、CuCl、CuBr、CuBrもしくはCuI等)+TPMA(tris(2-pyridylmethyl)amine)]、MeTREN(tris[2-(dimethylamino)ethyl]amine)など)、モノマー(例えばスチレンモノマー)、及び、重合開始剤(2,2,5-トリメチル-3-(1-フェニルエトキシ)-4-フェニル-3-アザヘキサン)を反応させることにより、糖コポリマー(例えば糖-スチレンブロックコポリマー)を合成することができる。
NMP重合は、アルコキシアミン誘導体を開始剤として加熱することで、モノマー分子とカップリングと反応を起こしニトロキシドを生じさせる。その後、熱解離によりラジカルが生じることでポリマー化反応が進む。このようなNMP重合は、リビングラジカル重合反応の一種である。モノマー(例えばスチレンモノマーとキシロオリゴ糖の末端のβ-1位にメタクリル酸を付加した糖メタクリレート化合物)とを混合し、2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl(TEMPO)を開始剤とし、140℃で加熱することでポリスチレン-ポリ糖メタクリレートランダムコポリマーを合成することができる。
クリック反応は、プロパルギル基をもつ糖とCu触媒を用いた1,3-双極アジド/アルキン環化付加反応である。
【0090】
<有機溶剤>
レジスト材料は、さらに有機溶剤を含むものであってもよい。但し、レジスト材料は、有機溶剤に加えて、さらに水や各種水溶液などの水系溶媒を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、含硫黄系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1H,1H-トリフルオロエタノール、1H,1H-ペンタフルオロプロパノール、6-(パーフルオロエチル)ヘキサノール等;を挙げることができる。
【0092】
また、多価アルコール部分エーテル系溶媒として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0093】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0094】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、メチル-i-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フルフラール等が挙げられる。
【0095】
含硫黄系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0096】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0097】
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、3-メトキシプロピオン酸メチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0098】
炭化水素系溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒として、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素系溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、i-プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンゼン、n-アミルナフタレン、アニソール等が挙げられる。
【0099】
これらの中でも、有機溶剤は、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アニソール、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1H,1H-トリフルオロエタノール、1H,1H-ペンタフルオロプロパノール、6-(パーフルオロエチル)ヘキサノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、フルフラール、N-メチルピロリドン又はγ-ブチロラクトンであることがより好ましく、PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン又はDMFであることがさらに好ましく、PGMEA、PGME又はアニソールであることが一層好ましい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
有機溶剤の含有量は、レジスト材料の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の含有量は、99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましい。有機溶剤の含有量を上記範囲内とすることにより、レジスト材料の塗布性を向上させることができる。
【0101】
<任意成分>
レジスト材料は、後述するような任意成分を含むものであってもよい。
【0102】
<<モノマー成分>>
レジスト材料は、ポリマーに加えてさらにポリマーを構成するモノマー成分を含んでいてもよい。モノマー成分としては、例えば、上述した、一般式(101)で表される化合物、一般式(102)及び/又は(103)で表される化合物が挙げられる。
【0103】
<<架橋性化合物>>
レジスト材料はさらに架橋性化合物を含んでもよい。この架橋反応により、形成されたレジスト膜は強固になり、エッチング耐性を高めることができる。
【0104】
架橋性化合物としては、特に制限はないが、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋性化合物が好ましく用いられる。イソシアネート基、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミノ基、及びアルコキシメチルアミノ基から選択される少なくとも1種の架橋形成置換基を2つ以上、例えば2~6個有する化合物を架橋性化合物として使用することができる架橋性化合物は、一種の化合物のみを使用することができ、また、二種以上の化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0105】
これら架橋性化合物は自己縮合による架橋反応を起こすことができる。また、ポリマーに含まれる構成単位と架橋反応を起こすこともできる。
【0106】
<<触媒>>
レジスト材料には架橋反応を促進するための触媒として、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ヒドロキシ安息香酸等の酸化合物を添加することができる。酸化合物としては、p-トルエンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、ピリジニウム-1-ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸化合物を挙げることができる。また、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2-ニトロベンジルトシラート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ベンゾイントシレート、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等の酸発生剤を添加することができる。
【0107】
<<光反射防止剤>>
レジスト材料はさらに光反射防止剤を含んでもよい。光反射防止剤としては、例えば、吸光性を有する化合物を挙げることができる。吸光性を有する化合物としては、光反射防止膜の上に設けられるフォトレジスト中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有するものを挙げることができ、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。ポリマーとしては、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ノボラック樹脂、ポリアセタール、アクリルポリマー等を挙げることができる。化学結合により連結した吸光性基を有するポリマーとしては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環といった吸光性芳香環構造を有するポリマー等を挙げることができる。
【0108】
<<他の成分>>
レジスト材料は、イオン液体や界面活性剤等をさらに含んでもよい。レジスト材料にイオン液体を含有させることで、ポリマーと有機溶剤との相溶性を高めることができる。
レジスト材料に界面活性剤を含有させることで、レジスト材料の基板への塗布性を向上させることができる。好ましい界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤が挙げられる。
その他、既知のレオロジー調整剤や、接着補助剤、酸発生剤や、増感剤、消光剤など任意の材料をレジスト材料に含めてもよい。
【0109】
なお、上述したような任意成分の含有量は、レジスト材料の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0110】
(レジスト膜)
上述したようなレジスト材料を基板上に塗布することでレジスト膜が形成される。レジスト膜は、例えば、シリコンウエハー等の基板にパターンを形成するために、基板上に設けられる膜(保護膜)である。レジスト膜は、基板上に直接接するように設けられる膜であってもよく、基板上に他の層を介して積層される膜であってもよい。レジスト膜は、基板に形成したいパターン形状に加工され、パターン形状として残された部分がその後のエッチング工程における保護膜となる。なお、基板にパターンが形成された後は、レジスト膜(保護膜)は基板上から除去されてもよい。このように、レジスト膜は、例えば、基板にパターンを形成する工程において用いられるものである。なお、レジスト膜には、パターンを形成する前の層状の膜も、パターン形成後の間欠膜も含まれる。
【0111】
レジスト膜の膜厚は用途によって適宜調整することができるが、例えば、1nm以上20000nm以下であることが好ましく、1nm以上10000nm以下であることがより好ましく、1nm以上5000nm以下であることがさらに好ましく、1nm以上3000nm以下であることが特に好ましい。
【0112】
金属が導入された後のレジスト膜の金属含有率は、1at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましく、10at%以上であることが特に好ましい。金属含有率は、例えば、以下の方法で算出できる。金属導入後のレジスト膜について、電子顕微鏡JSM7800F(日本電子製)を用いてEDX分析(エネルギー分散型X線分析)を行い、金属成分の比率(金属含有率)を算出し、これを金属含有率とする。
【実施例0113】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0114】
[コポリマー1の合成]
(アセチル糖メタクリレート1-クロロアクリル酸メチル-α-メチルスチレンランダムコポリマーの合成)
アセチル糖メタクリレート1 12.2g、2-クロロアクリル酸メチル(東京化成社製)4.2g及びα-メチルスチレン(東京化成社製)3.6gに、溶媒としてTHF100g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.8gをフラスコ中で混合した後、フラスコを密閉し、窒素置換した。窒素雰囲気下、78℃に昇温し6.0時間撹拌した。その後、室温に戻し、フラスコ内を大気下とし、得られた溶液にメタノール300gを滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液を吸引ろ過し、白色のコポリマ-1 11gを得た。得られたコポリマ-1の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化12】
n=91、m=91、l=78
【0115】
[レジスト評価用サンプルの作製]
合成したコポリマー1を秤量し、23℃のアニソール(東京化成社製)に3.0質量%になるように溶解させた。
【0116】
(実施例1:Te)
レジスト溶液として、α-クロロメチルアクリレートとメチルスチレンの共重合体が主成分であるZEP520A(日本ゼオン社製)を準備した。スピンコーターでレジスト溶液をシリコンウエハー上に塗布し、100nm厚となるようにレジスト膜を形成した。次いで、レジスト膜を180℃で1分間ベークした。150℃に加熱したホットプレートを有するチャンバー内にシリコンウエハーを搬送し、10Paに減圧した。このチャンバー中に金属ガス(ジエチルテルル、abcr社製)を100Paとなるように導入し、300秒静置して金属ガスをレジスト膜内に浸透させた。次いで、チャンバー内を10Paに減圧して金属ガスを除去し、続いて水蒸気を200Paとなるように導入し、300秒静置した後に、チャンバー内を10Paに減圧して水蒸気を除去した。チャンバー内を大気圧に戻した後、シリコンウエハーを取り出した。次いで、露光ユニットとして電子ビーム描画装置ELS-F125(エリオニクス社製)を用い、シリコンウエハー上のレジスト膜に加速電圧50kV、電流500pA(波長0.0053nm)の条件で電子線を照射し、ドーズ量を60μC/cm、160μC/cm、260μC/cmとそれぞれ設定した際の100nm溝、100nmスペースの繰り返しパターンと、ドーズ量を60μC/cm、160μC/cm、260μC/cmとそれぞれ設定した際の30nm溝、30nmスペースの繰り返しパターンを各10本ずつ作製した。電子線を照射した後のレジスト膜はスピンコーター上に搬送され、100rpmの速さで回転させ、23℃の酢酸ペンチル(東京化成製)を10秒間かけ流し、現像した。その後、2000rpmの速さでレジスト膜を回転させて乾燥させた。
【0117】
(実施例2:Sn)
実施例1において金属ガスをジエチルテルルからテトラメチルスズ(メルク社製)に代えた以外は実施例1と同様にして、レジスト膜にパターンを形成した。
【0118】
(実施例3:Te、糖材料)
実施例1においてレジスト溶液としてZEP520Aの代わりにコポリマー1の3%アニソール溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、レジスト膜にパターンを形成した。
【0119】
(比較例1)
実施例1において金属ガスを注入しなかった以外は実施例1と同様にして、レジスト膜にパターンを形成した。
【0120】
(比較例2)
実施例1において金属ガスをレジスト膜塗布後ではなく、電子線照射後(露光工程後)に注入した以外は実施例1と同様にして、レジスト膜にパターンを形成した。
【0121】
(比較例3)
実施例1において金属ガスをレジスト膜塗布後ではなく、現像後に注入した以外は実施例1と同様にして、レジスト膜にパターンを形成した。
【0122】
(評価)
解像度、コントラスト、アスペクト比評価用サンプルを作成し、以下のように解像度、コントラスト、アスペクト比の評価を行った。なお、ドーズ量を変化させているが、それぞれ最も良い評価結果が得られるドーズ量の結果を評価結果とした。
【0123】
評価1(解像度)
100nm幅のラインアンドスペース部の表面及び断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)JSM7800F(日本電子製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流86.0μA、倍率100,000倍で観察し、解像度を確認した。状態については、下記の評価基準で評価を行った。なお、スペース部のレジスト膜由来の残留物がない状態を、高解像度であると評価した。
〇:パターンが形成されており、スペース部にレジスト膜由来の残留物が見られない
×:現像できない、または現像できていても、スペース部にレジスト膜由来の残留物が見られる
【0124】
評価2(コントラスト)
露光前のレジスト膜と、現像後の100nm幅のラインアンドスペース部の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)JSM7800F(日本電子製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流86.0μA、倍率100,000倍で観察し、現像前後でのレジストパターン高さの差を測定した。なお、レジスト高さ変化が小さい状態を、コントラストがあると評価した。
〇:(現像前のレジスト膜の高さ)ー(現像後のレジスト膜の高さ)が10nm以内
×:(現像前のレジスト膜の高さ)ー(現像後のレジスト膜の高さ)が10nm以上
【0125】
評価3(アスペクト比)
30nm幅のラインアンドスペース部の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)JSM7800F(日本電子製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流86.0μA、倍率100,000倍で観察し、アスペクト比が理論的に3.3となるところでのパターンの状態を確認した。状態については、下記の評価基準で評価を行った。なお、アスペクト比が低い場合ではパターン倒れやパターンが直線状でなくなり、逆にアスペクト比が高い場合ではパターンが倒れることなく直線状となることが知られており、アスペクト理論値においてパターンが直線状である状態をアスペクト比が高いと評価した。
〇:パターンが形成されており、パターンが直線状である
×:現像できない、または現像できていても、パターンが直線状でなく蛇行している、あるいは倒れて隣のパターンとくっついている
【0126】
評価4(加工性)
100nm幅のラインアンドスペース部のスペース部に、ICPプラズマエッチング装置(東京エレクトロン社製)を用いてトリフルオロメタンガスによるプラズマ処理(100sccm、1Pa、100W、30秒間)を施すことによりシリコン基板へのエッチングを行い、加工性の評価をした。
現像後及びエッチング処理したシリコン基板のパターン形成部分について、ラインアンドスペースの延伸方向に対して直角な切断面を形成し、この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)JSM7800F(日本電子製)で、加速電圧1.5kV、エミッション電流37.0μA、倍率100,000倍で観察し、レジストの高さとシリコン基板の加工深さを測定した。そして、シリコン基板の加工深さ/(加工前のレジストの高さ-加工後のレジストの高さ)の値を算出し、該値が1.1以上である場合に加工性が良好であると判定した。
〇:シリコン基板の加工深さ/(加工前のレジストの高さ-加工後のレジストの高さ)≧1.1
×:シリコン基板の加工深さ/(加工前のレジストの高さ-加工後のレジストの高さ)<1.1
【0127】
【表1】

【0128】
実施例では、レジスト膜の解像度が高く、かつ高コントラストで高アスペクト比であるパターンが形成されていた。また、実施例では加工性も良好であった。
【0129】
なお、実施例1及び実施例3で、レジスト膜の厚みを40nmに変更し、露光ユニットをASML社製EUVスキャナーNXE3300に変え、20nmのラインアンドスペースパターンが露光できるようにパターン形成されたフォトマスクを介して波長13.5nmのEUV光をレジスト膜に照射してパターンを形成した。ラインアンドスペース部を走査型電子顕微鏡(SEM)JSM7800F(日本電子製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流86.0μA、倍率100,000倍で観察したところ、どちらもスペース部にレジスト残りがなく、現像後にもレジスト高さ変化が小さく、直線状であるパターンが形成されていた。
【0130】
また、比較例2ではパターンが全く形成されておらず、比較例3では解像度が低く低コントラストで低アスペクト比であった。但し、パターンが形成されている部分を選んで加工性評価を行ったところ、加工性は良好な傾向が見られた。これらの結果から、良好なパターンを形成するためには、金属導入工程を露光工程前に行うことが最適であることが分かった。
【符号の説明】
【0131】
10 基板
40 レジスト膜
図1