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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006120
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】衛生物品用不織布
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20250109BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20250109BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20250109BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20250109BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20250109BHJP
   D06M 13/342 20060101ALI20250109BHJP
   D06M 13/248 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
D06M13/292
A61F13/511 300
A61F13/51
D04H1/541
D06M13/224
D06M13/342
D06M13/248
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106714
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寒川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】小林 奈都美
【テーマコード(参考)】
3B200
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA02
3B200BB03
3B200BB21
3B200DA21
3B200DC02
4L033AB07
4L033AC10
4L033BA21
4L033BA24
4L033BA39
4L033BA54
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA29
4L047AB02
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA12
4L047CC03
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】親水性を有し、抗菌性が高く、更に、例えば吸収性物品の表面シートとして用いられた場合の液戻りが低減された、ドライ性の高い衛生物品用不織布を提供すること。
【解決手段】下記の(A)成分と、(B)成分、(C)成分及び(D)成分から選択される1種以上とを含有する衛生物品用不織布。
(A)成分:周期表の第11族又は第12族元素のアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩
(B)成分:ノニオン型界面活性剤
(C)成分:アニオン型界面活性剤
(D)成分:ベタイン型界面活性剤
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分と、(B)成分、(C)成分及び(D)成分から選択される1種以上とを含有する衛生物品用不織布。
(A)成分:周期表の第11族又は第12族元素のアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩
(B)成分:ノニオン型界面活性剤
(C)成分:アニオン型界面活性剤
(D)成分:ベタイン型界面活性剤
【請求項2】
前記衛生物品用不織布の構成繊維が短繊維である、請求項1に記載の衛生物品用不織布。
【請求項3】
前記衛生物品用不織布の構成繊維が芯鞘型複合繊維である、請求項1又は2に記載の衛生物品用不織布。
【請求項4】
前記芯鞘型複合繊維の鞘部に酸化亜鉛を含む、請求項3に記載の衛生物品用不織布。
【請求項5】
前記衛生物品用不織布がエアスルー不織布である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の衛生物品用不織布。
【請求項6】
前記衛生物品用不織布の表面が凹凸構造を有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の衛生物品用不織布。
【請求項7】
前記衛生物品用不織布に含まれる(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計に対する(A)成分の割合が65質量%以下である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の衛生物品用不織布。
【請求項8】
前記元素が、亜鉛、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の衛生物品用不織布。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の衛生物品用不織布を備えた衛生物品。
【請求項10】
前記衛生物品が吸収性物品であり、
前記吸収性物品における表面シート又は外装シートにおける内層不織布が前記衛生物品用不織布を備える、請求項9に記載の衛生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生物品用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの衛生物品に用いられる不織布は親水性に加えて抗菌性を有することが望まれる場合が多い。この観点から特許文献1には、ポリオレフィンに対しノニオン性の界面活性剤と酸化亜鉛系の抗菌剤を混合してなる組成物をスパンボンド法又はメルトブローン法で成形してなる不織布をおむつ等に用いることが提案されている。同文献に記載の不織布は長期間にわたって優れた抗菌性を示し、また親水性を有すると、同文献には記載されている。
【0003】
特許文献2には、構成繊維に酸化亜鉛が含まれ、且つ、アルキレンオキシド付加型非イオン系界面活性剤及び多価アルコール型非イオン系界面活性剤から選ばれる界面活性剤を含む繊維処理剤が付着している不織布を、おむつやナプキンに用いることが提案されている。同文献に記載の不織布は抗菌性を有し、また親水性を有すると、同文献には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-249615号公報
【特許文献2】特開2007-107144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の不織布はいずれも抗菌性及び親水性を有するが、より高い抗菌性を有する不織布に対する要求がある。また抗菌性及び親水性に加えて、例えば吸収性物品の表面シートとして用いられた場合の液戻りが低減された、ドライ性の高い不織布が望まれている。
【0006】
したがって本発明の課題は、親水性を有し、抗菌性が高く、更に、例えば吸収性物品の表面シートとして用いられた場合の液戻りが低減された、ドライ性の高い衛生物品用不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の(A)成分と、(B)成分、(C)成分及び(D)成分から選択される1種以上とを含有する衛生物品用不織布に関する。
(A)成分:周期表の第11族又は第12族元素のアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩
(B)成分:ノニオン型界面活性剤
(C)成分:アニオン型界面活性剤
(D)成分:ベタイン型界面活性剤
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抗菌性及び親水性が高い衛生物品用不織布が提供される。また本発明の不織布を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合には、液戻りが少なく、ドライ性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の不織布の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の不織布の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、本発明の不織布の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、本発明の不織布の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、本発明の不織布の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、本発明の不織布の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、本発明の更に別の実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の不織布は下記の(A)成分と、(B)成分、(C)成分及び(D)成分から選択される1種以上とを含有するものである。
(A)成分:周期表の第11族又は第12族元素のアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩
(B)成分:ノニオン型界面活性剤
(C)成分:アニオン型界面活性剤
(D)成分:ベタイン型界面活性剤
かかる成分を不織布が含有することによって、本発明の不織布は親水性及び高い抗菌性を有する。
このような性質を有する不織布は、衛生物品の構成材料として好適なものである。特に、衛生物品における抗菌性及び親水性が求められる部位、例えば吸収性物品における表面シートや外層不織布及び内層不織布から構成される外装シートにおける該内層不織布に本発明の不織布を適用することが、該不織布が有する特徴を最大限に活用できる観点から好ましい。特に、発明の不織布を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合には、液戻りが少なく、ドライ性に優れる。
なお本明細書では、前記(A)成分と、前記(B)~(D)成分から選択される1種以上とを含む組成物のことを「繊維処理剤」ともいう。
【0011】
本発明で用いられる(A)成分のアルキルリン酸エステル塩は一般式RPO で表され、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩は一般式RO(AO)-PO で表される。式中、Rは直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。AOはオキシアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。Mは金属元素を表す。Xは金属元素Mの価数に応じた数を表す。
(A)成分のアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩は、周期表の第11族又は第12族元素の金属塩である。つまり金属元素Mは、周期表の第11族又は第12族元素であることが好ましい。金属元素Mは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
抗菌性の観点から、上述した金属元素Mは、周期表の第11族又は第12族であって、且つ、第4周期又は第5周期の元素であることが更に好ましい。特に金属元素Mは、亜鉛、銀及び銅からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、亜鉛であることが一層好ましい。
【0013】
不織布に十分な抗菌性を付与し、また本発明の不織布を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合の液戻りを抑制する観点から、前記アルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩におけるアルキル基の鎖長は8以上であることが好ましく、10以上であることが更に好ましく、12以上であることが一層好ましい。また、前記アルキル基の鎖長は、不織布の親水性を過度に低下させないようにする観点から22以下であることが好ましく、20以下であることが更に好ましく、18以下であることが一層好ましい。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩におけるオキシアルキレン基AOは、不織布に十分な抗菌性及び疎水性を付与する観点からオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、オキシエチレン基であることがより好ましい。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数nは、不織布に十分な抗菌性及び疎水性を付与する観点から1以上であることが好ましい。また、前記平均付加モル数nは、不織布の疎水性を担保する観点から30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることが更に好ましく、10以下であることが一層好ましく、5以下であることが更に一層好ましい。
【0014】
本発明の不織布は、RPO (Mは、周期表の第11族又は第12族元素を表す。)で表される前記アルキルリン酸エステル塩又はRO-(AO)-PO (Mは、周期表の第11族又は第12族元素を表す。)で表される前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩(A)成分を1種又は2種以上含むことができる。また本発明の不織布は、(A)成分に加えて、RPO 又はRO-(AO)-PO (Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。Yは金属元素Mの価数に応じた数を表す。)で表されるアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を付加的に含んでいてもよい。例えばRPO(アルキルリン酸カリウム塩)又はRO-(AO)-PO(ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルカリウム)を含んでいてもよい。
【0015】
不織布に十分な抗菌性を付与し、また本発明の不織布を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合の液戻りを抑制する観点から、本発明の不織布に含まれる繊維処理剤(A)成分の割合は、繊維処理剤が付着した不織布の質量に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、0.2質量%以上であることが一層好ましい。また撥水化することで、通液性を損なうことを防ぐ観点から、不織布に含まれる(A)成分の割合は、繊維処理剤が付着した不織布の質量に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが一層好ましい。
なお、不織布に含まれる前記アルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩の割合は、固体核磁気共鳴(NMR)若しくはX線光電子分光法(XPS)を用いた分析、又は溶媒等に浸潤し、超音波等で物理的刺激を与えて溶けだしたアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩を、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて解析することで確認できる。
なお、測定によってリファレンスとなるアルキルリン酸エステル塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩が付着していない不織布を準備する必要がある場合は、赤外分光光度計(FT-IR)等を用いて、不織布の樹脂を同定し、リファレンスとなる不織布を準備して用いる。
【0016】
本発明で用いられる(B)成分のノニオン型界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2~10)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8~60)、前記多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物(好ましくは付加モル数2~60モル)、ポリオキシアルキレン(付加モル数2~60)アルキル(炭素数8~22)アミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数2~60)アルキル(炭素数8~22)エーテル、ポリオキシアルキレン(付加モル数2~60)アルキル(炭素数8~22)フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。これらのうち、親水性と不織布加工性を両立する観点から、ポリオキシアルキレン(付加モル数2~60)アルキル(炭素数8~22)エーテルや、ポリオキシアルキレン(付加モル数2~60)アルキル(炭素数8~22)フェニルエーテル、及び多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物などを用いることが好ましい。
【0017】
本発明で用いられる(C)成分のアニオン型界面活性剤の例としては、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸エステル塩(周期表の第11族又は第12族元素の塩を除く。)、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩が挙げられる。これらのうち、帯電防止効果によるカード性の安定化と初期親水性を両立する観点から、アルキルリン酸エステル塩(周期表の第11族又は第12族元素の塩を除く。)又はアルキルスルホコハク酸塩などを用いることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる(D)成分のベタイン型界面活性剤の例としては、炭素数8~24のアルキル基、アルケニル基又はアシル基を有するカルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系、イミダゾリニウム系の界面活性剤が挙げられる。これらのうち、耐久親水性を高める観点から、カルボベタイン系の両性界面活性剤などを用いることが好ましい。
【0019】
本発明の不織布に含まれる(B)~(D)成分の合計の割合は、不織布に十分な親水性を付与する観点から、繊維処理剤(A)~(D)成分の合計に対して30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが一層好ましい。また本発明の不織布を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合の液戻りを抑制する観点から、不織布に含まれる(B)~(D)成分の合計の割合は、繊維処理剤(A)~(D)成分の合計に対して90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが更に好ましく、75質量%以下であることが一層好ましい。
【0020】
抗菌性及び親水性を不織布にバランスよく付与する観点から、本発明の不織布に含まれる(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計に対する(A)成分の割合は15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが一層好ましい。また、該(A)成分の割合は65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、55質量%以下であることが一層好ましい。
【0021】
本発明の不織布は、界面活性剤として(B)~(D)成分のうち1種のみを含有してもよいし、2種を含有してもよい。また、3種全てを含有してもよい。不織布加工性、初期親水性、及び耐久親水性を両立する観点から、(B)~(D)成分の全てを含有することが好ましい。(B)成分の割合は、親水性と不織布加工性を付与する観点から、(A)~(D)成分の合計に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質漏%以下であることがより好ましい。(C)成分の割合は、初期親水性と帯電防止性によるカード性安定化の観点から、(A)~(D)成分の合計に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質漏%以下であることがより好ましい。(D)成分の割合は、耐久親水性の付与の観点から、(A)~(D)成分の合計に対して、10質量%以上50量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
また繊維処理剤を不織布に付与する方法に制限はなく、例えば(A)~(D)成分のうちいずれか又は全部を予め混合した上で不織布に付与してもよいし、(A)~(D)成分を混合せずに順不同で順次不織布に付与してもよい。
【0022】
繊維処理剤の各成分は、それぞれ独立して、不織布を構成する繊維の表面に存在していてもよく、繊維中に存在していてもよく、あるいは繊維の表面及び繊維中の双方に存在していてもよい。繊維処理剤の各成分は、それぞれ独立して、不織布の全域に存在していてもよく、あるいは部分的に存在していてもよい。
繊維処理剤を、不織布を構成する繊維の表面に存在させるためには、例えば前記繊維処理剤を含む水分散液を、原料である不織布に付与し、然る後に水を除去すればよい。
前記繊維処理剤を、不織布を構成する繊維中に存在させるためには、例えば前記繊維処理剤と、繊維を構成する樹脂とを溶融混練し、混練物を溶融紡糸すればよい。
【0023】
本発明の不織布に(B)~(D)成分から選択される1種以上の界面活性剤が含まれることによって該不織布はその親水性が高まる。親水性の程度は例えば親水率で表すことができる。親水率の測定方法は以下のとおりである。
<親水率の測定方法>
不織布から、6cm×6cmの大きさの不織布片を切り出す。次にその不織布片の襞や皺を伸ばした状態の不織布片を準備する。その後、2022年6月に市販されていた花王株式会社製の使い捨ておむつであるメリーズ(登録商標)ファーストプレミアムテープ(Sサイズ)にコールドスプレーを噴霧して、接着剤を固化させて表面シートを取り除き、取り除いた表面シートに代えて、前記不織布片を貼り付ける。その不織布片に対してイオン交換水0.1gを、8mm間隔で5行×6列で表面に液を配置し、合計30個の液滴を配置する。その後60秒間静置する。そして、イオン交換水が吸収されておむつ側又は不織布片内に移行した液滴の数を60秒間に吸収された液滴数(W1)とする。W1の測定値は、n=3の平均値である。そして、下記式に基づいて液滴吸収率(W2)を算出し、それを親水率とする。なお、60秒間に吸収された液滴数(W1)は、目視により不織布上に液滴が存在するか否かによって判断する。
親水率=液滴吸収率(W2)=(60秒間に吸収された液滴数(W1)/30(最初に配置した液滴数))×100
【0024】
本発明の不織布は、これに十分な親水性を発現させる観点から、前記の方法で測定された親水率が40%以上であることが好ましく、60%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが一層好ましく、80%以上であることがより一層好ましく、90%以上であることが更に一層好ましい。また本発明の不織布は、液吸収後の液戻りを抑制させる観点から、前記の方法で測定された親水率が100%以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の不織布は、該不織布の抗菌性を一層高める観点から抗菌剤を含んでいても良い。抗菌剤としては、有機系抗菌剤、金属酸化物、天然エキスが挙げられる。有機系抗菌剤としては、四級アンモニウム塩等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化銀、酸化銅、酸化亜鉛等が挙げられる。天然エキスとしては、ペパーミントやティートゥリー、タイムチモール、オレガノ、ローズマリー、ユーカリ、アルガンオイル、アスナロ、ショウキョウ、ヒバマタ、マロニエ等が挙げられる。これらの中でも、抗菌性の観点から金属酸化物が好ましく、酸化亜鉛がより好ましい。
本発明の不織布が金属酸化物を含有する場合、抗菌性、繊維としての紡糸性や繊維からの脱落性、および肌に触れた時の手ざわりの観点から、金属酸化物はその平均粒子径が0.2μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上1.5μm以下であることが更に好ましく、0.4μm以上1.2μm以下であることが一層好ましい。金属酸化物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)等で断面写真を5か所からとり、WINROOF2018(三谷商事)等の画像処理ソフトウェアを用いて、断面の形状を円形近似して、平均することによって測定することができる。
【0026】
本発明の不織布が金属酸化物を含む場合、金属酸化物は、該不織布を構成する繊維中に練り込まれていることが、長期間にわたる抗菌性の持続の観点から好ましい。不織布を構成する繊維が例えば芯鞘型複合繊維である場合には、金属酸化物は該複合繊維における鞘部に存在することが、抗菌性の効果的な発現の観点から好ましい。
【0027】
本発明の不織布に含まれる金属酸化物の割合は、不織布に十分な抗菌性を付与する観点から、前記繊維処理剤及び金属酸化物を含む不織布の質量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることが更に好ましく、0.3質量%以上であることが一層好ましい。また、酸化亜鉛の割合は、不織布の加工性や設備汚染を防止する観点から、前記繊維処理剤及び金属酸化物を含む不織布の質量に対して3.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以下であることが一層好ましい。
【0028】
本発明においては、不織布の種類に特に制限はなく、これまでに知られている不織布を用いることができる。
不織布を構成する繊維の長さは、不織布の製造方法に応じて長繊維(連続フィラメント)でもよく、あるいは短繊維(ステープルファイバ)であってもよい。長繊維及び短繊維のうち、短繊維からなる不織布は風合いが良好であることから、衛生物品の構成材料として特に好適に用いられる。
不織布を構成する繊維が長繊維及び短繊維のいずれの場合であっても、繊維の繊度は、不織布の風合い高める観点から、1.0dtex以上5.0dtex以下であることが好ましく、1.3dtex以上3.8dtex以下であることが更に好ましく、2.0dtex以上3.3dtex以下であることが一層好ましい。
【0029】
不織布を構成する繊維の種類に特に制限はなく、繊維形成能を有する各種の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-α-オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂からなる繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂からなる繊維、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのポリアクリル系樹脂からなる繊維などを用いることができる。
不織布の構成繊維として、上述の樹脂を含む芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維などの多成分系繊維を用いることもできる。
以上の繊維は1種を単独で用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。特に芯鞘型複合繊維を含む不織布は風合いが良好であることから、衛生物品の構成材料として特に好適に用いられる。
不織布の構成繊維として芯鞘型複合繊維を用いる場合、不織布の風合いを一層向上させる観点から、鞘部がポリエチレンからなり、芯部がポリエチレンテレフタレートからなることが好ましい。同様の観点から、芯鞘型複合繊維はその鞘部がポリエチレンからなり、芯部がポリプロピレンからなることも好ましい。
【0030】
不織布の一例として、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、ケミカルボンド不織布などが挙げられる。本発明においては、これらの不織布を2層以上積層して用いてもよい。
以上の各種の不織布のうち、短繊維を原料として製造される不織布であるエアスルー不織布は、その製造方法に起因して風合いが良好であることから、衛生物品の構成材料として特に好適に用いられる。
【0031】
不織布が上述したいずれの場合であっても、不織布の坪量は、不織布の風合い高める観点から、10g/m以上80g/m以下であることが好ましく、13g/m以上50g/m以下であることが更に好ましく、15g/m以上30g/m以下であることが一層好ましい。
【0032】
不織布は単層構造のものであってもよく、あるいは2層以上の積層構造のものであってもよい。また、不織布の表面は平坦であってもよく、凹凸形状を有していてもよく、あるいは起毛していてもよい。図1ないし図7には、表面の少なくとも一面が凹凸形状を有する不織布が模式的に示されている。
【0033】
図1に示す不織布10は、第1面10A及びそれと反対側に位置する第2面10Bを有し、少なくとも第1面10Aが、該第1面10A側に突出する複数の凸部13と該凸部13間に位置する凹部14とを有する凹凸構造を有している。第2面10Bは実質的に平坦である。
不織布10は、第1面10A側の上層11Aと第2面10B側の下層11Bの2層からなる。上層11Aと下層11Bとは、厚み方向にエンボス加工が施されて接合されている。エンボス加工が施された部分が凹部14に相当する。下層11Bは、熱収縮性繊維の熱収縮が発現した層である。上層11Aは、非熱収縮性繊維を含む層である。熱の付与による不織布化を首尾良く行う観点から、非熱収縮性繊維は非熱収縮性熱融着繊維であることが好ましい。
不織布10は、例えば特開2002-187228号公報に記載の素材と方法とによって製造できる。この製造方法において、例えば上層11Aと下層11Bの積層体に対し、上層11A側からエンボス加工等した後、熱を付与して下層11Bに含まれる熱収縮性繊維を熱収縮させる。その繊維の収縮によって、隣接するエンボス部どうしが引っ張られ互いの間隔が縮まる変形が生じる。この変形によって、上層11Aに含まれる繊維は、エンボス部を基点として第1面10A側に隆起し、凸部13を形成する。
【0034】
図2に示す形態の不織布20は、中空部21を有する2層構造である。不織布20を構成する2つの層はいずれも熱可塑性繊維を含む。不織布20においては、第1不織布20Aと第2不織布20Bとが部分的に熱融着された接合部22を有する。複数(図2では4個)の接合部22に囲まれた非接合部において、第1不織布20Aが、第2不織布20Bから離れる方向に突出して、内部に中空部21を有する凸部23が形成されている。接合部22は、隣り合う凸部23,23間に位置する凹部であり、凸部23とともに第1不織布20A側に凹凸構造を形成している。
不織布20は、例えば特開2004-174234号公報に記載の素材と方法とによって製造できる。この方法においては、一対の凹凸ロールの噛み合わせによって第1不織布20Aを凹凸賦形した後、第1不織布20Aと第2不織布20Bとを貼り合わせる。一対の凹凸ロールの噛み合わせによって第1不織布20Aを賦形する観点から、第1不織布20A及び第2不織布20Bはいずれも、非熱伸長性で非熱収縮性の熱融着繊維を含むことが好ましい。
【0035】
図3に示す形態の不織布30はその各面に凹凸構造を有する単層構造のものである。不織布30は、第1面30A側に突出する第1突出部31と第2面30B側に突出する第2突出部32とが、不織布30を平面視したときに交差する異なる2方向において交互に連続して配されている。
第1突出部31及び第2突出部32は、それぞれの反対面側に解放された内部空間を有しており、この部分がその面における凹部33,34をなす。これにより、第1面30Aは、第1突出部31と凹部34とを有する凹凸構造となっている。第2面30Bは、第2突出部32と凹部33とを有する凹凸構造となっている。
不織布30は、第1突出部31と第2突出部32とを繋ぐ壁部35を有する。壁部35は、第1突出部31及び第2突出部32それぞれの内部空間の壁面を形成しており、平面方向に環状構造を有する。
不織布30は、例えば特開2012-136790号公報に記載の素材と方法とによって製造できる。この方法においては、繊維ウエブを支持体に支持させた状態下に該繊維ウエブに対して、熱風温度及び風速を制御しながら多段階の熱風処理を行うエアスルー加工を行い、該繊維ウエブを凹凸賦形する。繊維ウエブを凹凸賦形させる支持体としては、中実の突起部と開口部とを有するものを用いることが好ましい。例えば、特開2012-149370号公報に記載の支持体を用いることができる。
【0036】
図4(a)に示す形態の不織布40は、熱可塑性繊維を含む単層構造からなる。不織布40は、第1面40A側において、半円筒状の凸部41と該凸部41の側縁に沿って配された凹部42とが複数交互に配置された形状を有する。凹部42の下側には、不織布の繊維からなる凹部底部43が配されている。凹部底部43は、凸部41よりも繊維密度が低くなっている。不織布40においては、図4(b)に示すとおり、凸部41上に別の繊維層45を部分的に積層してもよい。
不織布40は、繊維ウエブに対して、凹部42とする部分に熱風等の流体を吹き付けて繊維を移動させることにより形成することができる。これにより凹部底部43の繊維密度をその周辺よりも低くすることができる。
【0037】
図5に示す形態の不織布50は単層構造のものである。不織布50には、一方向に延びる筋状の凸条部51と凹条部52とが交互に配されている。不織布50は、その両面に凹凸構造を有する。一方の面の凹凸構造と、他方の面の凹凸構造とは、互いに相補形状になっている。
不織布50は、これを単独で用いてもよく、平坦な繊維層と接合されて積層不織布としてもよく、あるいは凹凸構造を有する繊維層と積層し、該凹凸構造に沿って一体化した積層不織布としてもよい。
【0038】
図6に示す形態の不織布60は単層構造のものである。不織布60は熱伸長性繊維を原料とするものであり、伸長した後の熱伸長性繊維を含んでいる。不織布60の第1面60Aは凹凸構造になっている。第1面60Aと反対側に位置する第2面60Bは実質的に平坦面になっているか、又は第1面60Aよりも凹凸の程度が小さくなっている。
不織布60の第1面60Aは、複数の凸部61とこれを囲む線状の凹部62とを有する。凹部62は、不織布60の構成繊維が圧着又は接着された圧接着部を有する。この状態において、不織布に含まれる熱伸長性繊維は伸長された状態になっている。凸部61は、熱伸長性繊維が熱伸長して第1面60A側に隆起した部分である。したがって、凸部61は、凹部62よりも繊維密度が疎であり嵩高い部分となっている。
線状の凹部62は格子状に配置されており、格子で区画される一つの領域内に一つの凸部61が配置されている。なお、不織布60は、上述のとおり単層構造であってもよいが、2層以上の複数の積層構造であってもよい。
不織布60は例えば特開2010-168715号公報に記載の素材と方法とによって製造できる。この方法においては、まず、繊維ウエブに対して、ヒートエンボス加工によって線状の凹部62を形成する。このとき、凹部62では、熱伸長性繊維は圧着又は融着されて熱伸長されない状態で固定される。次いで、エアスルー加工により熱風を吹き付けて、凹部62以外の部分に存する熱伸長性繊維を伸長させて凸部61を形成する。
【0039】
図7に示す形態の不織布70は、平面視において、一方向(X方向)に沿って延びる第1凸部列71を複数有している。また、不織布70は、第1凸部列71に加え、第1凸部列71に隣接して位置する第2凸部列72と、第1凸部列71に隣接して位置する第3凸部列73とを有している。これら第1凸部列71、第2凸部列72及び第3凸部列73は、共通する一方向(X方向)に沿って延びている。斯かる不織布70は、これら第1凸部列71、第2凸部列72及び第3凸部列73の延在方向に一致する縦方向Xと、該縦方向Xに直交する横方向Yとを有している。
第1凸部列71、第2凸部列72及び第3凸部列73は何れも、不織布70の構成繊維を融着又は圧密化させてシート厚さ方向に圧縮した圧搾部からなる凹部(固着部)74によって画定されており、凹部74よりも厚みが大きい部位である。第1凸部列71、第2凸部列72及び第3凸部列73を形成する凸部の高さは何れも、凹部74の高さよりも高いものである。
第1凸部列71は、複数の第1凸部71aが縦方向Xに沿って列状に配置されることにより形成されている。第1凸部列71は、第1凸部71aとして、大凸部71ab及び小凸部71asを含んでいる。小凸部71asは、大凸部71abよりも厚み及び/又は面積が小さい。本実施形態の小凸部71asは、大凸部71abよりも厚み及び面積の双方が小さい。
第1凸部列71では、大凸部71abと小凸部71asとが、縦方向Xに沿って、交互に且つ列状に複数配置されている。この第1凸部列71において、縦方向Xに隣接する第1凸部71a(大凸部71ab,小凸部71as)どうしは凹部74で分断されずに連接している。
不織布70は、不織布60の製造方法において、エンボス加工のパターンを変更することによって製造することができる。
【0040】
図1ないし図7に示すような凹凸構造を有する不織布において、繊維処理剤の各成分は、それぞれ独立して、該不織布の全域に存在していてもよく、あるいは不織布における一部にのみ存在していてもよい。不織布における一部にのみ前記繊維処理剤が存在する場合、例えば凹凸構造における凸部にのみ、特に凸部の頂部にのみ繊維処理剤を存在させることができる。このようにすることで、繊維処理剤の使用量を抑制しつつ、抗菌効果を効率的に発現させることができる。
【0041】
本発明の不織布は、親水性及び高い抗菌性を有し、また本発明の不織布を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合に液戻りを起こしにくくドライ性が高いものであるため、様々な衛生物品の構成材料として用いられる。本発明の不織布を備えた衛生物品としては、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、おりものシートなどの吸収性物品、母乳パッド、創傷被覆シート、サージカルガウンなどが挙げられる。また親水性を持つことで汗を吸収しやすくなることから、温熱シートやマスクなども挙げられる。
【0042】
前記の吸収性物品は一般に、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有する縦長の形状をしている。そして吸収性物品は、着用者の股間部に配される股下部並びにその前後に延在する腹側部及び背側部を有する。股下部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、吸収性物品の縦方向の中央部又はその近傍に位置している。
【0043】
吸収性物品は一般に、着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収体とを備える。表面シートとしては、液透過性を有するシート、例えば不織布や孔が形成された開孔不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シートは、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シートの肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シートの肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シートを形成することもできる。
【0044】
一方、裏面シートとしては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シートの外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0045】
吸収体は、吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
【0046】
上述の表面シート、裏面シート及び吸収体に加え、吸収性物品の具体的な用途に応じ、肌対向面側の縦方向に沿う両側部に、縦方向に沿って延びる防漏カフが配される場合がある。防漏カフは一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。防漏カフの自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材を伸長状態で配してもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝い吸収性物品の横方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
【0047】
吸収性物品は更に、非肌対向面の表面に粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層は、吸収性物品の着用状態において、該吸収性物品を、下着や別の吸収性物品に固定するために用いられる。
【0048】
本発明の不織布を吸収性物品に適用する場合、該不織布は、吸収性物品において液吸収性が必要とされる部位に用いられることが好ましい。そのような部位としては、例えば、吸収性物品の前記表面シートが挙げられる。あるいは、吸収性物品の外面をなす外装シートが外層不織布及び内層不織布からなる2層構造となっている場合において、該2層のうち着用者の肌に近い側に位置する内層不織布が挙げられる。
【0049】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば本発明の不織布がその表面に凹凸構造を有する場合、該凹凸構造の形態は上述した図1ないし図7に示すものに限られない。
また本発明の効果が損なわれない程度において、不織布は(A)~(D)成分及び酸化亜鉛以外の添加剤を含んでもよい。
【実施例0050】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0051】
〔実施例1ないし5〕
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルカリウム(商品名:アンホレックスMP-2K、ミヨシ油脂株式会社製、アルキル基の炭素数12、オキシアルキレン基の平均付加モル数n=2)をイオン交換水に溶解させた水溶液を作成した後に0.1mol/Lの硫酸亜鉛液(関東化学株式会社製)を前記水溶液に添加し、(A)成分であるポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル亜鉛の分散液を得た。その後、下記の(B)~(D)成分の所定量を追加で、前記分散液に添加して、浸漬用分散液を調製した。(B)~(D)成分の添加量は、(A)~(D)成分の割合が表1に記載の割合になる量とした。次いで、不織布を該浸漬用分散液中に浸漬塗工することによって、(A)~(D)成分が付着した不織布を得た。(A)~(D)成分を含有する繊維処理剤の付着量は、分散液中の(A)~(D)成分の濃度を調整することによって、該繊維処理剤が付着したエアスルー不織布の質量に対して0.3±0.2質量%の範囲になるようにした。具体的な繊維処理剤の付着量は、表1に記載のとおりである。エアスルー不織布は、2.4dtexのPET/PE芯鞘型複合繊維(繊維長51mmの短繊維)からなり、坪量は18g/mであった。
(B)成分:ポリオキシエチレン変性多価アルコール脂肪酸エステル(花王株式会社製、エマノーンCH-60K)
(C)成分:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王株式会社製、ペレックスOT-P)
(D)成分:ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(花王株式会社製、アンヒトール86B)
【0052】
〔実施例6〕
不織布を構成するPET/PE芯鞘型複合繊維の鞘部に、繊維処理剤及び酸化亜鉛を含むエアスルー不織布の質量に対して1.0質量%の酸化亜鉛を練り込んだ。これ以外は実施例1と同様にして不織布を得た。
【0053】
〔比較例1〕
(A)成分を使用しなった以外は実施例1と同様にして不織布を得た。
【0054】
〔比較例2〕
(B)~(D)成分を使用しなった以外は実施例1と同様にして不織布を得た。
【0055】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた不織布について、衛生物品としての用途を考慮して、親水率、抗菌活性及び液戻り量を以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
〔親水率〕
不織布から、6cm×6cmの大きさの不織布片を切り出した。次にその不織布の襞や皺を伸ばした状態の不織布片を準備した。その後、2022年6月に市販されていた花王株式会社製の使い捨ておむつであるメリーズ(登録商標)ファーストプレミアムテープ(Sサイズ)にコールドスプレーを噴霧して、接着剤を固化させて表面シートを取り除き、取り除いた表面シートに代えて、前期不織布片を貼り付けた。その不織布片に対してイオン交換水0.1gを、8mm間隔で5行×6列で表面に液を配置し、合計30個の液滴を配置した。その後60秒間静置した。そして、イオン交換水が吸収されておむつ側又は不織布内に移行した液滴の数を60秒間に吸収された液滴数(W1)とした。W1の測定値は、n=3の平均値である。そして、下記式に基づいて液滴吸収率(W2)を算出し、それを親水率とした。なお、60秒間に吸収された液滴数(W1)は、目視により不織布上に液滴が存在するか否かによって判断した。
親水率=液滴吸収率(W2)=(60秒間に吸収された液滴数(W1)/30(最初に配置した液滴数))×100
【0057】
〔抗菌活性〕
JIS L 1902:2015繊維製品の抗菌性試験方法に準じて評価を実施した。表1には、抗菌効果で定める菌液吸収法で算出される抗菌活性値を記載した。この抗菌活性値が2以上の場合、対象物は抗菌性を有するとされる。
【0058】
〔液戻り量〕
2022年6月に市販されていた花王株式会社製の使い捨ておむつであるメリーズ(登録商標)ファーストプレミアムテープ(Sサイズ)にコールドスプレーを噴霧して、接着剤を固化させて表面シートを取り除いた。取り除いた表面シートに代えて、実施例及び比較例で得られた不織布を貼り直し、測定対象の吸収性物品を作製した。測定対象の吸収性物品を平面状に広げて肌対向面側(表面シート側)が上を向くように水平に載置した。この状態下に、30gの人工尿を流速5g/秒で3回注入した(合計90g注入)。1回目の注入から10分経過後に、1回目の注入と同量の人工尿について、2回目の注入を行った。人工尿の注入箇所は、吸収体の縦方向(長手方向)における腹側部側の端部から縦方向内方に135mm離間した位置の横方向中央部とした。吸収性物品に2回目の人工尿を注入した後これを10分間放置し、然る後、コラーゲンフィルムを7cm四方に切断して4枚重ねたものを、吸収性物品における人工尿の注入箇所に載せ、該コラーゲンフィルムの上から7kPaの加圧を1分間行った。これによって吸収性物品に吸収保持されていた人工尿を該コラーゲンフィルムに吸収させた。その後、人工尿を吸収したコラーゲンフィルムの質量を測定した。この質量から吸収前のコラーゲンフィルムの質量を差し引き、コラーゲンフィルムに吸収された人工尿の質量を算出した。この値を液戻り量とした。
なお、比較例2の不織布は人工尿を吸収しなかったため、表1に「測定不可」と記載した。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示す結果から明らかなとおり、(A)成分並びに(B)成分、(C)成分及び(D)成分から選択される1種以上を含有する実施例の不織布は、(A)成分を含まない比較例1の不織布及び(B)成分、(C)成分及び(D)成分のいずれも含まない比較例2の不織布に比べて抗菌活性及び親水性が高く、更に液戻り量が少ないためドライ性が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0061】
10、20、30、40、50、60、70 不織布
13、23、41、61 凸部
14、33、34、42、62、74 凹部
31 第1突出部
32 第2突出部
51 凸条部
52 凹条部
71 第1凸部列
71a 第1凸部
72 第2凸部列
73 第3凸部列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7