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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006131
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】嫌気硬化性接着剤および容器
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20250109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106731
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】宍浦 諒
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾汰
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA131
4J040FA291
4J040HB41
4J040KA12
4J040KA14
4J040KA21
4J040KA27
4J040LA07
4J040MA02
4J040PA43
4J040PB24
(57)【要約】
【課題】
嫌気性接着剤を大容量で保存、輸送する場合においても、保存安定性や嫌気性接着剤の物性に影響を与えることがない包装体を提供する。
【解決手段】
注出口を有し、積層フィルムからなる軟質プラスチック製容器に収納された以下の(A)~(C)を含む接着剤。
(A):一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物
(B):嫌気硬化性触媒
(C):有機過酸化物
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出口を有し、積層フィルムからなる軟質プラスチック製容器に収納された以下の(A)~(C)を含む接着剤。
(A):一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物
(B):嫌気硬化性触媒
(C):有機過酸化物
【請求項2】
前記積層フィルムの23℃における酸素透過度が、ガスクロマトグラフ法で100cm/(m・24h・atm)以上である請求項1に記載の容器に収納された接着剤。
【請求項3】
前記容器に対して、20容積%以上含まれている請求項1または請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記容器がバッグインボックスの内袋容器である請求項1または請求項2に記載の接着剤。
【請求項5】
更に(D)安定剤を含む請求項1または請求項2に記載の接着剤。
【請求項6】
前記(A)成分が多官能(メタ)アクリレートモノマーを含む請求項1または請求項2に記載の接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気硬化性接着剤を大容量で保存、輸送する場合においても、保存安定性や嫌気硬化性接着剤の物性に影響を与えることがない容器に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気硬化性接着剤は、酸素と遮断されることにより硬化が促進される。(特許文献1)そのため、保存安定性の理由から、酸素と接触させるため容器に意図的に空気が封入される等の措置がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公表2018-521155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、嫌気硬化性封着剤の容器を大容量にした場合、空気(酸素)との接触面積が低下し、嫌気硬化性接着剤の内部は空気(酸素)から遮断されてしまうため、嫌気硬化性接着剤内部から硬化が開始してしまうという保存安定性上の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、嫌気硬化性を有する接着剤の容器を大容量化した場合にも、保存安定性が良好であり、物性への影響を抑制できる容器に収納された接着剤を見出すに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
[1]注出口を有し、積層フィルムからなる軟質プラスチック製容器に収納された以下の(A)~(C)を含む接着剤。
(A):一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物
(B):嫌気硬化性触媒
(C):有機過酸化物
【0007】
[2]前記積層フィルムの23℃における酸素透過度が、ガスクロマトグラフ法で100cm/(m・24h・atm)以上である[1]に記載の接着剤。
【0008】
[3]前記容器に対して、20容積%以上含まれている[1]または[2]に記載の接着剤。
【0009】
[4]前記容器がバッグインボックスの内袋容器である[1]または[2]に記載の接着剤。
【0010】
[5]更に(D)安定剤を含む[1]または[2]に記載の接着剤。
【0011】
[6]前記(A)成分が多官能(メタ)アクリレートモノマーを含む[1]または[2]に記載の接着剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明は嫌気硬化性を有する接着剤の容器を大容量化した際にも、保存安定性が良好であり、保管や輸送による嫌気硬化性接着剤の性能の低下を抑制できるため、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の内袋容器の注出口側の側面図
図2】本発明の内袋容器の側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む範囲を意味し、「X以上Y以下」を意味する。本発明において、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は(メタ)アクリレートのことを指す。(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイル基を(メタ)アクリロイルオキシ基の形態として有していてもよい。また「(メタ)アクリロイル」との語は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリロイル基」との語は、アクリロイル基(HC=CH-C(=O)-)およびメタクリロイル基(HC=C(CH)-C(=O)-)の双方を包含する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との語は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含し、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含し、「(メタ)アクリルアミド」との語は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの双方を包含する。
【0015】
本発明の容器は、注出口を有し、積層フィルムからなるプラスチック製内容器である。前記積層フィルムを構成するプラスチックとは、保存安定性の観点から軟質プラスチックが好ましい。軟質プラスチックとしては、JISK6900で定義された曲げ試験、又はそれが適用できない場合には引張試験における弾性率が70MPaより大きくないプラスチックのことである。プラスチックの種類としては、例えば、アクリル、ポリスチレン、PET、ポリカーボネート、AS、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ABS樹脂、フェノール樹脂、ナイロン等が挙げられるが、嫌気硬化性接着剤に対する耐性と保存安定性の観点からPET、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンを含むことが最も好ましい。本発明でいう低密度ポリエチレンとは密度が0.93未満のポリエチレンのことである。
【0016】
本発明の容器は、嫌気硬化性を抑制する観点から、23℃での酸素透過度が、100cm/(m・24h・atm)以上が好ましく、200cm/(m・24h・atm)以上がより好ましく、300cm/(m・24h・atm)以上が最も好ましい。本発明における酸素透過度は、JIS K 7126-1:2006に基づき、ガスクロマトグラフ法で測定された値である。
【0017】
本発明の容器は、輸送環境に適応する観点から、バッグインボックスの内袋容器として用いられることが好ましい。バッグインボックスとは、内容物の漏れを防止するための内袋容器と、該内袋容器を外部からの衝撃による破袋を防ぐための紙製容器またはプラスチック製容器からなる包装形態である。
【0018】
前記内袋容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンとポリアミドの単層体あるいはこれらの積層体、または、ポリエチレンとエチレンビニルアルコール共重合体の積層体、ナイロンとポリエチレンの積層体、熱可塑性樹脂からなる。これらの中でも、折り畳み性、強度等を考慮すると、特にポリエチレンからなることが好ましい。ポリエチレンは石油由来のポリエチレン、植物性由来のポリエチレン、石油由来ポリエチレンと植物由来ポリエチレンを任意の割合で混合したポリエチレン、または石油由来のポリエチレンと植物由来のポリエチレンを積層したポリエチレンのいずれを用いることもできる。内袋容器は樹脂を真空成形やブロー成形によって得られる成形容器であっても、フィルムを熱溶着して得られる袋であってもよい。フィルムを熱溶着して得られる袋としては、ガゼット袋、平袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。
【0019】
前記容器の形状は特に限定されないが、保存や輸送時に積み重ね易いという観点から、略直方体または略立方体であることが好ましく、略立方体であることが最も好ましい。嫌気性接着剤の保存安定性の観点から積層フィルムの厚みは、50~800μmが好ましく、100~500μmがより好ましい。
【0020】
本発明の容器は接着剤の収納や取り出しのための注出口を有している。注出口の材質は積層フィルムに用いる樹脂に熱溶着できるものや、プラスチック製のリング部材をかしめることによる取り付け手段により固着できるものなどが挙げられる。接着剤の保存安定性と取り出し性の観点から、注出口を構成する部品は金属を含まないものが好ましく、プラスチックであることが好ましく、高密度ポリエチレンで構成されることが最も好ましい。
【0021】
本発明の容器は後述する(A)成分、(B)成分、(C)成分を含む接着剤を内包している。(A)~(C)成分を含む接着剤は、嫌気硬化性に優れているため、容積が大きくなるなるにつれて、空気中の酸素との接触面積が低下し、接着剤内部が嫌気硬化してしまう。本発明でいう、嫌気硬化を引き起こす容積としては、1L以上である。嫌気硬化性を抑制する観点から、嫌気硬化性接着剤の容積は本発明の容器100容積%に対して80容積%以下であることが好ましく、70容積%以下であることがより好ましく、60容積%以下であることが最も好ましい。下限としては、特に限定されないが、20容積%以上の場合に本発明の包装形態による効果が顕著となる。
【0022】
本発明で使用される(A)成分は、一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物であり、本発明の接着剤を構成する主要な成分である。(A)成分としては、一分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ以上有するオリゴマーやモノマーが挙げられる。ここでオリゴマーとは、モノマー単位((メタ)アクリレートモノマー以外のモノマー単位を含む)が2~数十程度繰り返された重合体をいう。本発明における一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有するオリゴマーの種類としては、ウレタン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
前記ウレタン変性(メタ)アクリレートとは、イソシアネート基とヒドロキシル基を反応させることにより形成される、ウレタン結合を主鎖に有し(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。硬化性の観点から(メタ)アクリロイル基は分子鎖末端にあることが好ましい。ウレタン変性(メタ)アクリレートの製造方法としては、水酸基を有するポリオール化合物とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応させる方法や、水酸基を有するポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させる方法などが挙げられる。
【0024】
前記水酸基を有するポリオール化合物としては、特に制限されないが、例えば、ポリエス
テルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0025】
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリラートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネートなどの直鎖または分岐の脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0028】
前記エポキシ変性(メタ)アクリレートとは、グリシジルエーテル化合物のグリシジル基にアクリル酸等を開環重合させて合成できる化合物であるが、この方法に限定されるものではない。グリシジルエーテルの主鎖としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型など様々な骨格のものが使用できる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0029】
前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、一分子中に1つ(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーや一分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0030】
前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘプタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシデカエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシペンタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘキサプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘプタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシオクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシデカプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシペンタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘキサブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘプタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシヘクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシオクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシデカブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシテトラブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシペンタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘキサブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘプタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシヘクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシオクタブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシノナブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシデカブチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いられる接着剤は多官能(メタ)アクリレートモノマーを含んでいるが、本形態に限定されるものではない。接着剤中に多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことで硬化性(反応性)が向上する一方で、保存安定性が低下する。しかしながら、本発明の容器を用いることで、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含んでいても、安定して保存することができる。硬化性と保存安定性の観点から多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、(A)成分100質量%中、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%が好ましく2~7質量%が最も好ましい。
【0033】
本発明で使用される前記(B)成分は嫌気硬化性触媒である。接着剤の嫌気硬化性を発現するための主要な成分である。(B)成分は、酸素と触れていない嫌気状態において、後述する(C)成分を分解してフリーラジカルを発生させ硬化を促進させる。(B)成分としては、例えば、サッカリン、アミン化合物、アゾール化合物、メルカプタン化合物、ヒドラジン化合物、およびこれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独あるいは複数組み合わせて用いることができる。中でも、嫌気硬化性が優れる観点から、サッカリン、アゾール化合物、メルカプタン化合物、ヒドラジン化合物からなる群から1以上選択される化合物を含むことが好ましく、サッカリンを含むことがより好ましく、サッカリン、アゾール化合物およびメルカプタン化合物を組み合わせることが最も好ましい。複数組み合わせることで、単独での使用に比べて嫌気硬化性が一層向上されるが、本発明の容器を用いることで安定して保存することができる。
【0034】
前記アミン化合物としては、例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロキナルジン等の複素環第2級アミン、キノリン、メチルキノリン、キナルジン、キノキサリンフェナジン等の複素環第3級アミン、N,N-ジメチル-アニシジン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミンなどが挙げられる。
【0035】
前記アゾール化合物としては、例えば、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、ジアゾール、トリアゾール等が挙げられる。より具体的には、サッカリン、ベンゾチアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、3-メルカプトベンゾトリゾール等が挙げられる。
【0036】
前記メルカプタン化合物としてはn-ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等の直鎖型メルカプタン等が挙げられるがこれに限定されない。
【0037】
前記ヒドラジン化合物としては、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2(p-トリル)ヒドラジン、1-ベンゾイル-2-フェニルヒドラジン、1-(1’,1’,1’-トリフルオロ)アセチル-2-フェニルヒドラジン、1,5-ジフェニル-カルボヒドラジン、1-フォーミル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ブロモフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ニトロフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(2’-フェニルエチルヒドラジン)、エチルカルバゼート、p-ニトロフェニルヒドラジン、p-トリスルホニルヒドラジド等が挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
前記(B)成分の含有量は、嫌気硬化性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、1~5質量部が最も好ましい。
【0039】
本発明で使用される(C)成分は有機過酸化物である。(C)成分は嫌気性接着剤を硬化させるための主要な成分である。(C)成分としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メタンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、その他、ケトンパーオキサイド類、ジアリルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等が挙げられる。中でも、嫌気硬化性に優れ、接着剤の保存安定性の観点からハイドロパーオキサイドが好ましく、クメンハイドロパーオキサイドがより好ましく用いられる。
【0040】
硬化性の観点から、前記(C)成分の含有量は(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部含むことが好ましく、0.3~3質量部含むことがより好ましく、0.5~2質量部含むことが最も好ましい。(B)成分の含有量は(C)成分1質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましく、0.5~2質量部が最も好ましい。0.01~5質量部であることで、嫌気硬化性と保存安定性を両立することができる。
【0041】
さらに本発明の接着剤には(D)成分として安定剤を含むことが好ましい。(D)成分としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-t-ブチルカテコールなどが挙げられるが、接着剤の保存安定性の観点から、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールが好ましい。
【0042】
前記(D)成分の含有量は組成物全体に対して、0.01~0.5質量%が好ましく、0.02~0.3質量%がより好ましく、0.05~0.15質量%が最も好ましい。
【0043】
さらに、本発明の接着剤には特性を損なわない範囲で、無機充填剤、有機充填剤、シランカップリング剤、光安定剤、光増感剤、重合禁止剤、キレート剤等の添加剤をさらに適量含んでいてもよい。
【0044】
無機充填材としては、ガラス、シリカ、タルク、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーン粒子、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0045】
有機充填剤としては、ゴム、エラストマー、プラスチック、重合体(または共重合体)などから構成される有機物の粉体であればよい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、コアシェル型などの多層構造を有する有機フィラーでもよい。有機フィラーの平均粒径としては、0.05~50μmの範囲が好ましい。耐久試験における特性を向上させるという観点から、アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸エステルの重合体もしくは共重合体からなるフィラー、またはスチレン化合物の重合体もしくは共重合体からなるフィラーを含むことが好ましい。
【0046】
前記シランカップリング剤としては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル含有シランカップリング剤は本発明の(A)成分には含まない。
【0047】
保存安定性の観点から、本発明における接着剤は湿気硬化性を有さないことが好ましく、成分として金属を含有しないことがより好ましい。
【0048】
[接着剤の硬化条件]
本発明で使用できる接着剤の好ましい硬化温度としては、10~50℃であり、20~40℃がより好ましい。硬化時間としては特に限定されないが、1時間~48時間が好ましく、6時間~24時間がより好ましい。嫌気硬化性の観点から硬化時に金属と接触して使用されることが好ましい。金属としては特に限定されないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル等が挙げられるが、嫌気硬化性を活性化する観点から鉄が好ましい。
【0049】
[輸送方法]
本発明の容器に収納された接着剤は、保管時や輸送時の安定性に非常に優れているため、様々な輸送方法で運搬することができる。例えば、船舶、貨物車、鉄道車両、航空機等が挙げられる。
【実施例0050】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
[実施例1、比較例1~3]
各容器に収納される嫌気硬化性を有する接着剤を調製するために下記成分を準備した。
【0052】
(A-1):ウレタン変性(メタ)アクリレート 45質量部
(A-2):エポキシ変性(メタ)アクリレート 20質量部
(A-3):2-ヒドロキシエチルメタアクリレート 35質量部
(B-1):サッカリン 1.5質量部
(B-2):ベンゾチアゾール 0.4質量部
(B-3):n-ドデシルメルカプタン 0.3質量部
(C):クメンハイドロパーオキサイド 1質量部
(D):2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール 0.1質量部
【0053】
前記(A)成分と(D)成分を撹拌容器に秤量し、(B)成分を添加して、30分間ミキサーで撹拌した。さらに(C)成分を添加し、10分撹拌した。いずれの試験も25℃で行った。得られた接着剤の25℃での比重を比重カップ法で測定したところ、1.1であった。
【0054】
(参考例1)
低密度ポリエチレンからなる370mLのポリボトルに前記接着剤を227mL封入した。
(実施例1)
酸素透過度が450cm/(m・24h・atm)である低密度ポリエチレンの積層フィルムからなる18Lの容積の2つの軟質プラスチック容器を用意し、前記接着剤を5.5Lまたは9.1Lそれぞれ封入した。封入した容器を紙製容器に収納し、バッグインボックス包装体とした。
(比較例1)
ポリプロピレンからなる18Lの容積の2つの蓋付きプラスチックペール缶を用意し、前記接着剤を5.5Lまたは9.1Lそれぞれ封入した。
(比較例2)
高密度ポリエチレンからなる18Lの容積の2つの蓋付きプラスチックペール缶を用意し、前記接着剤を5.5Lまたは9.1Lそれぞれ封入した。
(比較例3)
高密度ポリエチレンからなる18Lの容積の2つの注出口を有するポリタンクを用意し、前記接着剤を5.5Lまたは9.1Lそれぞれ封入した。
【0055】
[保存試験]
参考例1、実施例1、比較例1~3の接着剤を封入した各容量の容器を40℃の恒温槽に1ヶ月間静置し、常温に戻した後、後述する接着剤の物性の評価を実施した。
【0056】
[セットタイム]
ピンに接着剤を塗布しカラーに挿入した。これが、手で動かなくなるまでの時間(セットタイム)を測定した。挿入時のクリアランスは0.01mmである。その結果を表1にまとめた。なお、セットタイムとしては、100秒未満であることが好ましい。前記ピンとは、外径6φ×40mmの鉄製ピンである。また、前記カラーとは、予め硬化促進剤を塗布・乾燥させた内径6φ×15mmの鉄製カラーである。また、前記硬化促進剤とは、アセトン100質量部に0.5質量部の2-エチルヘキサン酸銅を溶解させたものである。本発明の接着剤を用いた場合において、セットタイムは7秒以下が好ましく、5秒以下が最も好ましい。
【0057】
[引張剪断接着強度]
幅25mm×長さ100mm×厚さ0.3mmのSPCC-SDのテストピースに対して、アセトン100質量部、2-エチルヘキサン酸銅0.5質量部を含むプライマー組成物を0.1g塗布し、25℃で3時間放置し乾燥する。次にプライマー処理したテストピースに対して、接着剤を0.1g塗布し、もう一方のプライマー処理したテストピースの長辺末端が長さ10mmとなるよう重ね合わせ、貼合せ面に100gのおもりをのせて25℃で24時間固定し接着試験片を得る。次に接着試験片の端を万能引張試験機で引っ張り速度50mm/minで引っ張り、引張せん断接着強さ(MPa)をJIS K6850(1999)に従い測定する。本発明の接着剤を用いた場合において、引張剪断接着強度は10MPa以上が好ましく、12MPa以上が好ましく14MPa以上が最も好ましい。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示すように本発明の包装体を用いた実施例1は参考例1の容器と比較して物性が低下していないことがわかる。一方で、比較例1の容器は5.5Lkgではセットタイムの低下は見られなかったが、9.1Lではセットタイムが大幅に低下してしまった。また剪断接着強度はいずれも低下が見られた。比較例2や比較例3の容器を使用して保存した接着剤ははセットタイムが大幅に遅くなり、剪断接着強度も著しく低下するという結果を得た。更に、保存容器と酸素透過度の関係性を確認したところ、実施例1の容器では、酸素透過度が450cm/(m・24h・atm)であった。一方で、比較例1の容器では酸素透過度が88.8cm/(m・24h・atm)であり、比較例3の容器では酸素透過度が16.3cm/(m・24h・atm)であった。なお本発明における酸素透過度の測定はJIS K7126-1:2006に基づき、ガスクロマトグラフ法で23℃の条件下で測定を行った。以上のことから実施例1の容器を使用することで、大容量で保存した場合にも接着剤の物性に影響を及ぼすことがなく、安定して保存できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の容器に収納された接着剤は、嫌気硬化性を有しているにも関わらず、大容量で保存、輸送する際にも接着剤の物性に影響を与えずに安定して保存、輸送ができるため、非常に有用である。
【符号の説明】
【0061】
1バッグインボックス内袋容器
2注出口
図1
図2