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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006132
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】水力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/08 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F03B13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106733
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】523248482
【氏名又は名称】三徳航空エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523248493
【氏名又は名称】株式会社EBS GROUP
(71)【出願人】
【識別番号】523248507
【氏名又は名称】有限会社秀和工業
(74)【代理人】
【識別番号】100195383
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】市原 伸郎
(72)【発明者】
【氏名】下田 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】下田 政男
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA08
3H074AA12
3H074BB09
3H074BB11
3H074CC28
3H074CC31
(57)【要約】
【課題】容易に運搬可能で、且つ、効率よく発電を行わせることが可能な水力発電装置を提供する。
【解決手段】河川に設置可能な水力発電装置1において、上流側からの水流を、予め設けた落差を用いて下流側に受け渡すダム部10と、ダム部10の下流側に配置され、ダム部10からの水流によりらせん水車210を回転させることにより電力を発生させる発電部20と、を備え、ダム部10と発電部20とは分離可能に構成され、ダム部10は、伸縮可能な伸縮水路150を当該ダム部10の上流側に設けた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に設置可能な水力発電装置において、
上流側からの水流を、予め設けた落差を用いて下流側に受け渡すダム部と、
前記ダム部の下流側に配置され、前記ダム部からの水流により水車を回転させることにより電力を発生させる発電部と、を備え、
前記ダム部と前記発電部とは分離可能に構成され、
前記ダム部は、
伸縮可能な水路を当該ダム部の上流側に設けた
ことを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記ダム部は、上流側より下流側の方が底部が高い傾斜水路を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記傾斜水路は、ターポリンにより形成された
ことを特徴とする請求項2に記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記発電部は、前記水車の回転に応じて回転する磁石と、前記水車の回転に応じて回転しない前記水車の軸である中空軸及び巻線と、を備え、
前記水車が水流を受けて回転した場合、前記磁石が回転することに基づいて前記巻線において電力を発生させ、当該発生した電力を、前記中空軸の内部を通した導線により外部に出力可能である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記水車は、らせん水車であり、
前記磁石及び前記巻線からなる発電機は、前記らせん水車よりも下流側に配置した筐体の内部に収めている
ことを特徴とする請求項4に記載の水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時において好適に使用可能な水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーとして、河川、農業用水路、上下水道における流水を利用した水力発電が知られている。
例えば、特許文献1には、外周にらせん翼が設けられ水路に設置されたらせん水車と、らせん水車に連結された発電機と、を備えた水力発電装置が開示されている。
また、特許文献2には、誘導ダクトの取水口底部と段差上部の河川底との間に嵩上げチャネルを設け、これにより、河川段差上流部の水位を上げて河川水の位置エネルギーを増加可能な水力発電装置が開示されている。
また、特許文献3には、コンパクトかつ軽量に構成され、導水装置の上流部に堰を備えることで、効率よく水のエネルギーを回転力に変えることが可能なた水力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-174196号公報
【特許文献2】特開2015-169204号公報
【特許文献3】特開2011-214452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水力発電には様々な課題があった。
例えば、特許文献1に記載の水力発電装置は、低落差での発電が可能であるものの、落差がなければ効率よく発電できないという問題があった。
また、特許文献2に記載の水力発電装置は、嵩上げチャネルを備えるものの、段差があることを前提とするため、特許文献1と同様の問題があった。
これに対し、特許文献3に記載の水力変換装置は、堰を備えることで効率よく水のエネルギーを回転力に変えることができることから、上述の問題は発生し難い。
しかしながら、特許文献3に記載の水力変換装置は導水路を備えていないため、水力変換装置を河川まで運搬できたとしても、その河川が低水量な小川などの場合には十分に回転しないため効率よく発電できないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、以上のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、軽量・コンパクトであり、伸縮可能な水路を備え、発電効率に優れた水路を備えた水力発電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の水力発電装置は、河川に設置可能な水力発電装置において、上流側からの水流を、予め設けた落差を用いて下流側に受け渡すダム部と、前記ダム部の下流側に配置され、前記ダム部からの水流により水車を回転させることにより電力を発生させる発電部と、を備え、前記ダム部と前記発電部とは分離可能に構成され、前記ダム部は、伸縮可能な水路を当該ダム部の上流側に設けている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水力発電装置によれば、災害時などに運搬を迅速に行え、水量が少ない河川でも、効率よく発電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の水力発電装置の概略模式図である。(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
図2】ダム本体の概略構成図である。(a)は正面図であり、(b)は上流側側面図であり、(c)は下流側側面図であり、(d)は平面図である。
図3】ダム本体に設けられる傾斜水路の外観図である。(a)は正面図であり、(b)は上流側側面図であり、(c)は下流側側面図であり、(d)は平面図である。
図4】伸縮水路の斜視図である。(a)は、縮小時を示す図であり、(b)は伸長時を示す図である。
図5】取水板の説明図である。
図6】防塵部の概略図である。(a)は格子状の防塵部を示す図であり、(b)は横スクリーン状の防塵部を示す図である。
図7】発電部における円筒筐体(らせん水車、発電機)の詳細構成図である。(a)は、A-A矢視断面図であり、(b)は上流側側面図であり、(c)は下流側側面図である。
図8】円盤部の斜視図である。
図9】河川に設置した水力発電装置の説明図である。
図10】電力システムに係る電力系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水力発電装置1について図面を参照しながら説明する。
水力発電装置1は、河川に設置することを想定している。本発明において、「河川」には、農業用水路や上下水道が含まれる。
図1は、水力発電装置1の概略模式図である。図1(a)は、水力発電装置1の平面図であり、図1(b)は水力発電装置1の正面図である。
図1に示すように、水力発電装置1は、ダム部10と発電部20とに大別され、それぞれが分離/結合可能に構成されている。
具体的には、ダム部10と発電部20は、各々独立した筐体により構成され、筐体同士を接合手段により接合できるようにしている。
図示省略するが、接合手段は、例えば、凹部と凸部とをそれぞれ対応する箇所に設け、凹部と凸部とを勘合させたり、勘合させた状態でロックさせることが可能な部材を適用することができる。
例えば、ダム部10の長さは約2m(伸縮水路150の縮小時)であり、発電部20の長さは約1mである。
このため、水力発電装置1は、ダム部10と発電部20とに分けて容易に運搬することができ、また、河川などの運搬先で容易に組み立てて使用することができる。
例えば、軽トラックなどに積載して河川の近くまで運搬し、そこからは一人にダム部10を抱えさせ、他の一人に発電部20を抱えさせるなどして、河川まで運搬させることができる。
このように、本発明の水力発電装置1は、ダム部10と発電部20とが一体として構成可能であるところ、使用態様に応じて分離可能に構成されている。
【0010】
(ダム部)
ダム部10は、発電部20の上流側に配置され、下流側の発電部20に向けた水流を供給する水路として機能する。
ダム部10は、主にダム本体110と伸縮水路150とにより構成される(図1)。
【0011】
(ダム本体)
図2は、ダム本体110の概略構成図である。図2(a)は正面図であり、図2(b)は上流側側面図であり、図2(c)は下流側側面図であり、図2(d)は平面図である。
図2に示すように、ダム本体110は、傾斜水路枠体122と、傾斜水路121とにより構成される。傾斜水路121は、傾斜水路枠体122の内部に設けられる。
傾斜水路枠体122は、FRP(Fiber Reinforced Plastics)などの軽量素材により形成された、断面視コの字状(天井側が開放)の部材である。
傾斜水路枠体122は、並行する2つの直壁部122aを有しつつ、さらに、その内部に下流に進むほど狭くなる2つの斜壁部122bを有している。
傾斜水路121は、2つの斜壁部122bの内部に設けられている。
具体的には、各斜壁部122bの上部内側には複数のピン123が設けられており、各ピン123に、後述するターポリンを吊り下げることで傾斜水路121が構成される。
【0012】
図3は、ダム本体110に設けられる傾斜水路121の外観図である。図3(a)は正面図であり、図3(b)は上流側側面図であり、図3(c)は下流側側面図であり、図3(d)は平面図である。
図3に示すように、傾斜水路121は、下流に進むほど底部が高くなり、路幅が狭まる形状にしてある。
このような形状の傾斜水路121は、ターポリンと称される素材を用いて形成することができる。
ターポリンとは、防水性の高い軽量且つ柔軟なビニール素材からなるシート材である。
ターポリンは、傾斜水路枠体122の内部に設けるにあたり、ピン123に対応する箇所にハトメ穴124を設けている。
これにより、各ピン123を各ハトメ穴124に通すことで、ターポリンを吊り下げることができる。
つまり、図3に示すターポリンを吊り下げることで、下流に進むほど、底部が高くなり、路幅が狭まる傾斜水路121を構成することができる。
このような傾斜水路121によれば、上流の伸縮水路150から流入した水を、高度を上昇させて(落差を設けて)発電部20に渡すことができる。
なお、傾斜水路121は、上述に限らず様々な態様・構成で設置することができる。
例えば、ターポリンは、袋状ではなく、天井側を開放した形状であってもよい。
また、ターポリンは、ピン123に吊り下げるのではなく、傾斜水路枠体122に接着など他の態様で設けることもできる。
また、傾斜水路枠体122の底部に斜行させた板材を設けて傾斜水路121を形成したり、当該板材の上に本実施形態のターポリンを配置してもよい。
また、ターポリン以外のシート材を用いることもできる。
【0013】
(伸縮水路)
図4は、伸縮水路150の概略斜視図である。図4(a)は縮小時の状態を示す図であり、図4(b)は伸長時の状態を示す図である。
図4に示すように、伸縮水路150は筐体が蛇腹状に形成されることで伸縮可能に構成されている。
例えば、伸縮水路150は、押し縮めることで最小約1mの長さまで縮小させることができ、引き伸ばすことで最大約10mの長さまで伸長させることができる。
このため、伸縮水路150を縮小させることで、水力発電装置1の運搬を容易にすることができ、また、収納スペースを小さくすることができる。
また、伸縮水路150を伸長させることで水路を長くすることができる。
これにより、低水量の河川で水力発電装置1を使用する場合でも、水路が短い場合よりも水量を多く確保でき、ダム本体110を経て、発電部20にしか向かわせないようにできる。
つまり、水路を長くすることで、発電部20における発電効率を向上させることができる。
また、伸縮水路150の長さは可変であるため、当該長さに応じて発電部20に供給する水量を調節することができる。つまり、高水位や高水量の河川では伸縮水路150を縮小して使用し、低水位や低水量の河川では伸縮水路150を伸長して使用する、という使い方ができる。
なお、伸縮水路150は、蛇腹に限らず、伸縮可能な水路であれば、伸縮方法・形態は問わない。
また、伸縮サイズも任意に設定できる。例えば、縮小時に0.5m、伸長時に5mという伸縮水路150を適用することもできる。
また、伸縮水路150とダム本体110とを分離・結合可能に構成することもできる。
これにより、一層、可搬性や利便性を向上させることができる。
【0014】
図5は、取水板180の説明図である。なお、図5は、伸縮水路150の上流側を上方から見た平面図である。
取水板180は、取水口に設けられる。つまり、水力発電装置1の最上流側に設けられる。
具体的には、取水板180は、伸縮水路150の両側壁の上流側端部と蝶番等の接続手段により接続される(図示省略)。
このため、取水板180は、水平方向に開閉することができる。
取水板180は、閉状態(内側に折り込んだ状態)にすることで装置全体をコンパクトにできるので、運搬時や使用時に有用である。
水力発電装置1の使用時には、取水板180を開く。これにより、河川に流れる水を効率よく伸縮水路150に取り込むことができる。なお、図示省略するが、取水板180は任意の開角度で固定することができる。
例えば、α=45°±10°が基本的な開角度である。取水板180をこの開角度に設定することで効率よく周囲から水量を取り込むことができる。
例えば、高水位や高水量の河川で使用する場合には取水板180の開角度αを小さくし、低水位や低水量の河川で使用する場合には取水板180の開角度αを大きくする、という使い方も可能である。
【0015】
図6は、防塵部190を示す図である。図6(a)は格子状(メッシュ状)の防塵部190であり、図6(b)は横スクリーン状の防塵部190を示す。
防塵部190は取水口に取り付けられている。
これにより、例えば、水流と共にゴミや塵が流れてきても、装置内への流入を防ぐことができる。
つまり、ゴミや塵が装置内に流入して、らせん水車210の回転を妨げたり、排水口を遮蔽して水流が阻害されることを防ぐことができる。
防塵部190は着脱自在に構成することもできる。
これにより、防塵部190に付いたゴミや塵を効率よく取り除くことができる。
【0016】
(発電部)
図1に示すように、発電部20は、矩形枠体201を備え、この矩形枠体201の内部にらせん水車210と発電機260とを収めた円筒枠体202を備えている。
円筒枠体202では、らせん水車210が上流側に設けられ、発電機260が下流側に設けられ、かつ、流入口をダム部10の流出口の高さに合わせて斜めに設置している。
つまり、人為的に設けた落差によりらせん水車210を効率よく回転させるようにしている。
【0017】
図7は、発電部20における円筒枠体202(らせん水車210、発電機260)の詳細構成を示す図である。図7(a)はA-A矢視断面図であり、図7(b)は、上流側側面図であり、図7(c)は下流側側面図である。
図7(a)は、円筒枠体202を水平方向に向けた状態の図である。
円筒枠体202は、塩ビ管などの軽量部材により構成することができる。
なお、円筒枠体202は円筒ではなく角筒でもよく、固定方法は、公知の固定手段など任意の手法を用いることができる。
らせん水車210は、円筒状の水車筐体231の曲面(表面)にらせん状の羽(らせん羽232)を設けた公知の水車である。
らせん水車210は、低落差に適しており、水量変動の影響を受けにくく、ゴミが詰まりにくいといった利点が知られている。
水車筐体231の内部は空洞であるところ、当該内部にはさらに中空軸230(内部が空洞の軸)が設けられ、中空軸230と水車筐体231との間に軸受(ベアリング)240を設けている。
なお、らせん水車210は、直径:200~400mm、中空軸230の直径:50~150mm、長さ:400~800mm程度のものを用いる。また、軸受240は、例えば、内径45~55mmの転がり軸受を用いる。
中空軸230は、十字バー281を介して固定ナット291により円筒枠体202に固定されている。
これにより、上流側から水が流入すると、らせん羽232がこの水流(水圧)を受けることで、らせん水車210が回転する。
【0018】
発電機260は、いわゆるアウターロータ型の発電装置である。
発電機260は、らせん水車210の下流側にらせん水車210と一体に設けられる。
図8に示すように、発電機260は、円盤状の外装260aと、中空軸(第2中空軸262という)を備えている。
外装260aにアルミニウムを用いることで、発電機260を軽量且つ頑強に構成している。
図7に示すように、第2中空軸262は、軸受240に支持されている。
これにより、外装260aは、第2中空軸262を中心に回転する。
【0019】
発電機260は、発電機筐体251の内部に設けられている。
発電機筐体251は、水車筐体231を下流側に延長した筒状の枠体である。
発電機筐体251は、断面直径を比較的大きくすることで、その内部に発電機260を収容できるようにしている。
図8に示すように、発電機260は、外装260aの内部に巻線261と磁石270とを備えている。
巻線261は、外装260aとは接続されておらず、第2中空軸262に固定されている。巻線261は、円周に沿って複数個(例えば40個)配列されている。
磁石270は、円周面にあたる外装260aの内部に配列している。
ここで、第2中空軸262は、上流側が中空軸230の下流側と接続シャフト255を介して接続され、下流側が固定ナット292及び十字バー282を介して円筒枠体202に固定されている。
また、外装260aは、接続部材251aにより発電機筐体251に接続されている。
これにより、上流側から水が流入すると、らせん水車210が回転すると共に発電機筐体251が回転するところ、当該発電機筐体251に接続された外装260aも回転する。
また、外装260aの回転に応じ、当該外装260aの内部に配列された磁石270は回転するも、巻線261は回転しない。つまり、磁石270は回転子として機能し、巻線261は固定子として機能する。
【0020】
磁石270にはN極の磁性を帯びたN極磁石270NとS極の磁性を帯びたS極磁石270Sとがあり、これらを、円周に沿って交互に配置している。
巻線261は、外装260aの回転に応じ、N極磁石270NとS極磁石270Sとの間に生じている磁束を通過する位置に設けられている。
このため、水流によりらせん水車210が回転すると、外装260aが回転し、当該回転に応じて巻線261を磁束に対し通過させることができるため、当該巻線261において電力を発生させることができる(発電機260の機能)。
【0021】
上流側から円筒枠体202の内部に流入した水は、枠体内部を流通し、らせん羽232に水圧を与えながら、放水穴295等から流出して下流側に流すようにしている。
これにより、水流を滞留しにくくして、らせん水車210を効率よく回転させるようにしている。
【0022】
発電機260(巻線261)は導線30を介して発電電力を外部に出力することができる。
具体的には、導線30は、第2中空軸262、接続シャフト255、及び中空軸230の内部を通し、円筒枠体202の上流側端部から外部に取り出している。
例えば、十字バー281に設けたダクトの内部を通じて導線30を外部に取り出したり、固定ナット291に設けた穴を介して導線30を外部に取り出すことができる。また、中空軸230、接続シャフト255、第2中空軸262は、それぞれ内部が中空であることから密閉された空間であり、さらに接続部や端部は密閉して防水処理を施している。
これにより、水力発電装置1により発電された電力を安全に外部の電力システム40に供給することができる。
【0023】
図9は、河川に設置した水力発電装置1を示す説明図である。
図9に示すように、水力発電装置1を河川に設置すると、上流側から流れてくる水が装置内部を通過する(矢印参照)。
このとき、取水板180及び伸縮水路150では効率よく水を取り込み、傾斜水路121を通過させることで落差を設け、これにより増加した水圧によってらせん水車210を効率よく回転させる。
らせん水車210の回転に応じ、発電機260では、回転子(磁石270)の回転に応じ固定子(巻線261)において発電が行われる。
【0024】
図10は、外部電力システム40の電力系統図である。
外部電力システム40は、発電機260から出力された電力を導線30を介して入力する。
図10に示すように、外部電力システム40は、DC変換器41、充電コントローラ42、バッテリー43、インバータ44、交流電力45、及び、負荷46などを備えている。
DC変換器41は、整流機能やDC/DCコンバータを備えており、導線30を通じて入力された不定波の直流電力を一定の直流電力に安定化して出力する。
充電コントローラ42は、DC変換器41から出力された直流電力をバッテリー43に出力させつつ(充電しつつ)、インバータ44に対し出力する。
インバータ44は、入力した直流電力を交流電力45に変換し負荷46に供給する。
これにより、数十W~数kWの出力電力(好ましくは500W~3kW程度)の出力電力が可能になる。
つまり、少なくともスマートフォンなどへの充電が可能になり、連絡手段の確保その他の災害対応に寄与することができる。
【0025】
以上のように、本発明の水力発電装置1においては、上流側からの水流を予め設けた落差を用いて下流側に受け渡すダム部10と、ダム部10の下流側に配置され、ダム部10からの水流によりらせん水車210を回転させることにより電力を発生させる発電部20と、を備え、ダム部10と発電部20とは分離可能に構成され、ダム部10は、伸縮可能な伸縮水路150をダム部10の上流側に設けている。
つまり、装置全体を分割・結合可能に構成することで、可搬性や利便性を向上させている。
例えば、分割することで、災害時に容易に河川まで運搬することができ、河川に到着したら容易に組み立てて使用することができる。
また、伸縮水路150を備えることで、運搬時に縮小させ、河川に到着したら伸長して使用することができる。
【0026】
また、ダム部10は、上流側より下流側が高くなるように傾斜水路121を備えている。
つまり、人為的に設けた落差によりらせん水車210に対する水圧(水量)をより高め、効率よく発電できるようにしている。
また、傾斜水路121は、ターポリンを吊り下げることで構成される。
つまり、軽量・頑強な部材を用いて容易に落差を設けることができる。
本発明の水力発電装置1は、ターポリンや他の軽量かつコンパクトな構成要素(例えば、枠体など)により構成していることからも可搬性に優れている。
【0027】
また、発電部20には、らせん水車210の回転に応じて回転する磁石270と、らせん水車210の回転に応じて回転しないらせん水車210の軸である中空軸230及び巻線261と、を備え、らせん水車210が水流を受けて回転した場合、磁石270が回転することに基づいて巻線261において電力を発生させ、当該発生した電力を、中空軸230の内部を通した導線30により外部に出力可能にしている。
つまり、導線30を、水が流入し難い中空軸230の内部空間を通して外部に取り出しているため、特段の防水措置を施さなくても発電電力を外部に出力させることができる。
発電機260(磁石270及び巻線261)は、らせん水車210よりも下流側に配置した発電機筐体251や外装260aの内部に収納している。
このように、発電機260をらせん水車210よりも下流側に配置することで、らせん水車210に対する水流を阻害することなく供給することができる。
つまり、発電機260をらせん水車210よりも上流側に配置した場合には、らせん水車210に対する水流は阻害される。
発電機260を小さくすれば阻害の影響を減らすことができるが、仮にそのようにした場合、発電機260の径を小さくする必要があり、発電力を弱めてしまう。
これに対し、本発明の水力発電装置1は、比較的大きな径の発電機260をらせん水車210の下流側に設けることで、らせん水車210に対する水流を阻害することなく、低水量の河川でも十分な電力を発電できるようにしている。
【0028】
以上、本発明の水力発電装置1について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、各構成部の大きさ(サイズ)は上述に限らず任意の大きさで構成することができる。
また、一部の構成(例えば、取水板180や防塵部190など)は必須の構成要素ではない。
伸縮水路150と傾斜水路121とを一体にすることもできる。例えば、傾斜水路121を伸縮可能にすればよい。具体的には、傾斜水路121の枠体を蛇腹かつテーパ形状の部材にすればよい。これにより部品点数(構成要素の数)を減らすことができる。
導線30は、中空軸230の上流側端部から外部に引き出しているが、下流側端部から外部に引き出すこともできる。
また、らせん水車210以外の水車(例えば、軸流プロペラ型水車など)を採用することもできる。
傾斜水路121の底部角度は変動できるようにもできる。
例えば、無線接続されたスマートフォンの操作に基づき底部角度を調整するようなアプリ(プログラム)をスマートフォンにインストールできるようにすればよい。
また、スマートフォン(アプリ)を用いて、伸縮水路150の長さを調整するようにもできる。
さらに、水力発電装置1にコンピュータや可動機構を備え、コンピュータ制御により、最適な底部角度や伸縮水路を表示(出力)したり、自動調整することもできる。
例えば、傾斜水路121の底部角度や伸縮水路150の長さ及び河川の水位、水量、水圧と、らせん水車210の回転速度(教師データ)と、の相関関係を深層学習(教師有り学習)させたプログラム(学習済みモデル)を実装し、未知の河川に水力発電装置1を設置したときに、その河川の水位、水量、水圧などのセンシングデータを学習済みモデルに入力して最適な底部角度や伸縮水路を表示(出力)したり、自動調整するようにできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、災害時や低水量河川の発電装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1:水力発電装置、10:ダム部、110:ダム本体、121:傾斜水路、122:傾斜水路枠体、122a:直壁部、122b:斜壁部、123:ピン、124:ハトメ穴、150:伸縮水路、180:取水板、190:防塵部、20:発電部、201:矩形枠体、202:円筒枠体、210:らせん水車、230:中空軸、231:水車筐体、232:らせん羽、240:軸受、251:発電機筐体、251a:接続部材、255:接続シャフト、260:発電機、261:巻線、262:第2中空軸、270:磁石、270N:N極磁石:270S:S極磁石、281,282:十字バー、291,292:固定ナット、295:放水穴、40:電力システム、41:DC変換器、42:充電コントローラ、43:バッテリ、44:インバータ、45:交流電力、46:負荷
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