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特開2025-6142偏波変動監視装置、通信システム、偏波変動監視方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006142
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】偏波変動監視装置、通信システム、偏波変動監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/077 20130101AFI20250109BHJP
   H04J 14/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H04B10/077 150
H04J14/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106756
(22)【出願日】2023-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2023年3月7日開催「2023年電子情報通信学会総合大会」にて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「Beyond 5G研究開発促進事業 委託研究 令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構 研究開発課題名:Beyond 5G超高速・大容量ネットワークを実現する光ネットワークコントローラ技術の研究開発 研究開発項目1 光ネットワークのコントローラ技術 副題:オンデマンドにEnd-to-End光波長パスの設定・管理を行う光ネットワークコントローラ技術の研究開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄佑
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA42
5K102AD01
5K102AD15
5K102LA22
5K102LA33
5K102LA52
5K102PH13
5K102PH23
5K102PH25
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH48
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】煩雑な計算を必要とせずに、精度よく偏波変動周波数を推定することを可能にする。
【解決手段】光源30は、伝送路13に光信号を出力する。偏光特性測定部21は、伝送路13を伝送された光信号の偏光特性を測定する。フーリエ変換部22は、偏光特性測定部21で測定された偏光特性をフーリエ変換する。変動推定部23は、フーリエ変換部22でフーリエ変換された偏光特性に基づいて、伝送路13で生じる偏波変動周波数を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路を伝送された光信号の偏光特性を測定する偏光特性測定部と、
前記測定された偏光特性をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する変動推定部とを有する偏波変動監視装置。
【請求項2】
前記変動推定部は、前記フーリエ変換された偏光特性においてピークを検索し、該検索されたピークの位置の周波数を、前記偏波変動周波数として推定する、請求項1に記載の偏波変動監視装置。
【請求項3】
前記光信号を増幅し、増幅された光信号を前記偏光特性測定部に出力する増幅器を更に有する、請求項1又は2に記載の偏波変動監視装置。
【請求項4】
前記偏光特性測定部は、ストークスパラメータの1つ以上を、前記偏光特性として測定する、請求項1又は2に記載の偏波変動監視装置。
【請求項5】
前記偏光特性測定部は、ポラリメータである、請求項4に記載の偏波変動監視装置。
【請求項6】
前記偏光特性測定部は、前記光信号うちの所定の偏光方向の成分を透過させる偏光子と、前記偏光子を透過した光信号を検出するフォトディテクタと、前記フォトディテクタを用いて検出された光信号に基づいて前記ストークスパラメータの1つ以上を演算する演算器とを含む、請求項4に記載の偏波変動監視装置。
【請求項7】
前記光信号は、前記伝送路を伝送される、光送信機と光受信機との間で送受信される偏波多重信号の波長とは異なる波長の信号である、請求項1又は2に記載の偏波変動監視装置。
【請求項8】
偏波多重信号を送信する送信機と、
伝送路を介して前記送信機から送信された偏波多重信号を受信する受信機と、
請求項1又は2に記載の偏波変動監視装置と、
前記光信号を前記伝送路に出力する光源とを備える通信システム。
【請求項9】
伝送路を伝送された光信号の偏光特性を測定し、
前記測定された偏光特性をフーリエ変換し、
前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する偏波変動監視方法。
【請求項10】
伝送路を伝送された光信号の偏光特性を取得し、
前記取得された偏光特性をフーリエ変換し、
前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏波変動監視装置、通信システム、偏波変動監視方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信システム大容量化のため、偏波多重デジタルコヒーレント通信が導入されている。偏波多重デジタルコヒーレント通信において、伝送される信号に偏波状態(SOP:state of polarization)変動が生じることがある。SOP変動をもたらす要因は、工事振動、雷、車の通行、地震、及び風などの要因を含む。急速なSOP変動が生じると、等化処理における偏波補償が偏波変動に追従できず、エラーとなることがある。従って、偏波変動を監視し、エラーとなるような偏波変動が発生したときに、これを検知するモニタシステムが重要である。
【0003】
関連技術として、特許文献1は、偏波変動箇所を推定する方法を開示する。特許文献1において、光源は、識別可能に異なる信号光を光ファイバに順次に出力する。取得部は、信号光ごとに、信号光に対する光ファイバでの散乱光から信号光ごとの偏波状態を取得する。取得部は、例えばストークスパラメータS0、S1、S2、及びS3を偏波状態として取得する。推定部は、取得された信号光ごとの時間対応の偏波状態を、光ファイバでの散乱光の反射地点が識別可能な距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点を偏波変動箇所として推定する。
【0004】
別の関連技術として、非特許文献1は、インライン偏波モニタリングスキームを開示する。非特許文献1では、偏波状態の監視にOptical Supervisory Channel(OSC)が用いられる。OSCは、一般に、主信号の帯域外の波長1510nmの光信号で実装される。OSC光信号は、スパンごとに、光ファイバに挿入され、光ファイバから取り出される。OSC光信号は、偏光ビームスプリッタを用いて2つの光信号に分離され、分離された2つの光信号は、2つのフォトディテクタを用いてそれぞれ検出される。処理部は、2つのフォトディテクタの検出信号の差分に基づいて、偏波回転速度を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-134161号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. E. Simsarian and P. J. Winzer, “Shake Before Break: Per Span Fiber Sensing with In Line Polarization Monitoring”, OFC2017, M2E.6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1には、2つのフォトディテクタの検出信号の差分に基づいて計算される偏波回転速度と、ストークパラメータS1-S3から計算される偏波回転速度と、2つのストークパラメータから計算される偏波回転速度とを比較した結果が開示される。非特許文献1に記載されるように、2つのフォトディテクタの検出信号の差分に基づいて計算される偏波回転速度は、ストークパラメータS1-S3から計算される偏波回転速度に比べて、精度が低い。また、2つのストークスパラメータに基づいて計算される偏波回転速度も、ストークパラメータS1-S3から計算される偏波回転速度に比べて、精度が低い。しかしながら、偏波回転速度がストークパラメータS1-S3から計算される場合、偏波回転速度の精度は高いものの、計算が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑み、煩雑な計算を必要とせずに、精度よく偏波変動周波数を推定できる偏波変動監視装置、通信システム、偏波変動監視方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、伝送路を伝送された光信号の偏光特性を測定する偏光特性測定部と、前記測定された偏光特性をフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する変動推定部とを含む偏波変動監視装置を提供する。
【0010】
本開示は、偏波多重信号を送信する送信機と、伝送路を介して前記送信機から送信された偏波多重信号を受信する受信機と、上記偏波変動監視装置と、前記光信号を前記伝送路に出力する光源とを含む通信システムを提供する。
【0011】
本開示は、伝送路を伝送された光信号の偏光特性を測定し、前記測定された偏光特性をフーリエ変換し、前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定することを含む偏波変動監視方法を提供する。
【0012】
本開示は、伝送路を伝送された光信号の偏光特性を取得し、前記取得された偏光特性をフーリエ変換し、前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る偏波変動監視装置、通信システム、偏波変動監視方法、及びプログラムは、煩雑な計算を必要とせずに、精度よく偏波変動周波数を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示に係る通信システムを概略的に示すブロック図。
図2】本開示に係る第1の通信システムの構成例を示すブロック図。
図3】光送信機の構成例を示すブロック図。
図4】光受信機の構成例を示すブロック図。
図5】デジタル信号処理部の構成例を示すブロック図。
図6】偏波変動監視装置の構成例を示すブロック図。
図7】実験に用いられたシステムを示すブロック図。
図8】ストークスパラメータS1のFFT波形を示すグラフ。
図9】ストークスパラメータS2のFFT波形を示すグラフ。
図10】ストークスパラメータS3のFFT波形を示すグラフ。
図11】ストークスパラメータS1のFFT波形を示すグラフ。
図12】ストークスパラメータS1のFFT波形を示すグラフ。
図13】偏波変動監視装置の動作手順を示すフローチャート。
図14】ストークスパラメータ測定装置の構成例を示すブロック図。
図15】本開示の第2の通信システムで用いられる偏波変動監視装置の構成例を示すブロック図。
図16】実験で得られたストークスパラメータS1のFFT波形を示すグラフ。
図17】コンピュータ装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施の形態の説明に先立って、本開示の概要を説明する。図1は、本開示に係る通信システムを概略的に示す。通信システム10は、送信機11、受信機15、偏波変動監視装置20、及び光源30を有する。送信機11と受信機15とは、伝送路13を介して相互に接続されている。送信機11は、伝送路13に偏波多重信号を出力する。受信機15は、送信機11から送信された偏波多重信号を、伝送路13を介して受信する。
【0016】
光源30は、伝送路に、偏波状態の監視に使用される光信号を出力する。光源30から出力される光信号は、例えば、合波器を用いて伝送路13に挿入され、フィルタを用いて伝送路13から分岐される。光源30から出力された光信号は、伝送路の少なくとも一部を伝送され、偏波変動監視装置20に入力される。
【0017】
偏波変動監視装置20は、偏光特性測定部21、フーリエ変換部22、及び変動推定部23を有する。偏光特性測定部21は、光源30から出力され、伝送路を伝送された光信号の偏光特性を測定する。フーリエ変換部22は、測定された偏光特性をフーリエ変換する。変動推定部23は、フーリエ変換された偏光特性に基づいて、伝送路13で生じる偏波変動周波数を推定する。
【0018】
本開示では、フーリエ変換部22は、偏光特性測定部21で測定された偏光特性をフーリエ変換する。変動推定部23は、フーリエ変換された偏光特性に基づいて、偏波変動周波数を推定する。本開示では、偏波変動周波数の推定にフーリエ変換が使用されており、本開示に係る偏波変動監視装置20は、ストークスパラメータの全てを計算しなくても、フーリエ変換された偏光特性の波形から、偏波変動周波数を推定できる。従って、偏波変動監視装置20は、煩雑な計算を必要とせずに、精度よく偏波変動周波数を推定できる。
【0019】
以下、本開示の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素、及び同様な要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0020】
本開示の第1実施形態を説明する。図2は、本開示に係る第1の通信システムの構成例を示す。本実施形態において、通信システムは、偏波多重多値変調方式が採用され、コヒーレント受信を行う光ファイバ通信システムであることを想定する。また、通信システムは、Wavelength Division Multiplexing(WDM)方式で、複数の波長の光信号が多重化される通信システムであることを想定する。多重化の方式はWDM方式には限定されず、複数の光信号は、空間多重方式により多重化されてもよい。
【0021】
光ファイバ通信システム100は、複数の光送信機110、マルチプレクサ120、伝送路130、デマルチプレクサ140、及び複数の光受信機150を有する。光ファイバ通信システム100は、例えば陸上メトロ用通信システム、或いは光海底ケーブルシステムを構成する。光ファイバ通信システム100は、図1に示される通信システム10に対応する。
【0022】
光送信機110は、複数の送信データを、偏波多重信号に変換する。マルチプレクサ120は、複数の光送信機110から出力される複数の偏波多重信号を多重化する。伝送路130は、マルチプレクサ120から出力される光信号を光受信機150に伝送する。光送信機110は、Txとも呼ばれる。光送信機110は、図1に示される送信機11に対応する。
【0023】
伝送路130は、光ファイバ132、及び光増幅器133を有する。光ファイバ132は、光送信機110から送信された光信号を導波する。光増幅器133は、光信号を増幅し、光ファイバ132における伝搬損失を補償する。光増幅器は133、例えば、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA:erbium doped fiber amplifier)として構成される。伝送路130は、図1に示される伝送路13に対応する。
【0024】
デマルチプレクサ140は、WDMで多重化された偏波多重信号を逆多重化し、WDMで多重化された偏波多重信号を、複数の偏波多重信号に変換する。デマルチプレクサ140は、複数の偏波多重信号を複数の光受信機150に出力する。各光受信機150は、対応する光送信機110から送信された偏波多重信号を受信する。光受信機150は、Rxとも呼ばれる。光受信機150は、図1に示される受信機15に対応する。
【0025】
なお、図2には、光ファイバ通信システム100が、光送信機110及び光受信機150を3つずつ有する例が示されているが、光送信機110及び光受信機150の数は3つには限定されない。また、図2には、伝送路130が3つの光増幅器133を有する例が示されているが、伝送路130における光増幅器133の数は3つには限定されない。
【0026】
図3は、光送信機110の構成例を示す。光送信機110は、符号化部111、予等化部112、デジタルアナログコンバータ(DAC:Digital analog converter)113、光変調器114、及びレーザダイオード(LD:Laser diode)115を有する。符号化部111は、データを符号化する。符号化部111は、例えば、X偏波及びY偏波の同相(I:in-phase)成分、及び直交(Q:quadrature)成分の4系列の信号を出力する。
【0027】
予等化部112は、符号化された4系列の信号に対し、光送信機内のデバイスの歪みなどをあらかじめ補償する予等化を実施する。予等化部112は、例えば、I成分及びQ成分を入出力とするmultiple-input and multiple-output(MIMO)フィルタを偏波ごとに有する。MIMOフィルタは、各偏波においてI成分及びQ成分に生じる歪み、及びIQ間に生じるクロストークなど、光送信機110内で生じる歪みを補償する。
【0028】
DAC113は、予等化が実施された4系列の信号を、それぞれアナログ電気信号に変換する。DAC113は、光変調器114に、変換したアナログ電気信号を入力する。DAC113と光変調器114との間には電気増幅器が配置されており、光変調器114には、電気増幅器によって振幅が増幅されたアナログ電気信号が入力される。
【0029】
LD115は、Continuous wave(CW)光を出力する。光変調器114は、LD115から出力されたCW光を、DAC113から入力される4系列のアナログ電気信号に応じて変調し、偏波多重quadrature-amplitude modulation(QAM)信号などの偏波多重光号を生成する変調器である。光変調器114は、例えばマッハツェンダ(MZ:Mach-Zehnder)変調器を含む。光変調器114は、生成した偏波多重信号をマルチプレクサ120に出力する。
【0030】
図4は、光受信機150の構成例を示す。光受信機150は、LD151、コヒーレント受信機152、アナログデジタル変換器(ADC:Analog digital converter)153、デジタル信号処理部154、及び復号部155を有する。LD151は、ローカルオシレータ光となるCW光を出力する。コヒーレント受信機152は、偏波ダイバーシティ型コヒーレント受信機として構成される。コヒーレント受信機152は、LD151から出力されるCW光を用いて、光ファイバ132を伝送された光信号に対してコヒーレント検波を実施する。コヒーレント受信機152は、コヒーレント検波されたX偏波及びY偏波のI成分及びQ成分に相当する4系列の受信信号(電気信号)を出力する。
【0031】
ADC153には、電気増幅器を介して、コヒーレント受信機152から出力される受信信号が入力される。ADC153は、コヒーレント受信機152から出力される受信信号をサンプリングし、受信信号をデジタル信号に変換する。ADC153は、変換したデジタル信号を、デジタル信号処理部154に出力する。デジタル信号処理部154は、ADC153でサンプリングされた4系列の受信信号に対してデジタル信号処理を行い、受信信号を復調する。デジタル信号処理部154は等化フィルタを含み、等化フィルタはデジタル信号に含まれる各種歪みを補償する。
【0032】
図5は、デジタル信号処理部154の構成例を示す。デジタル信号処理部154は、X偏波及びY偏波のそれぞれに対して配置される波長分散補償フィルタ161X及び161Y、及びキャリア位相補償フィルタ163X及び163Yを有する。また、デジタル信号処理部154は、偏波変動補償フィルタ162を有する。
【0033】
デジタル信号処理部154には、ADC153から出力される、X偏波のIQ成分及びY偏波のIQ成分がそれぞれ複素数信号に変換されたX偏波の複素数データ及びY偏波の複素数データが入力される。デジタル信号処理部154において、波長分散補償フィルタ161X及び161Yと、偏波変動補償フィルタ162と、キャリア位相補償フィルタ163X及び163Yとは、入力信号に対して縦列に接続される。これらフィルタは、適応多層フィルタを構成する。
【0034】
波長分散補償フィルタ161X及び161Yは、偏波ごとに、光ファイバ伝送中に波長分散に起因して生じる信号歪みを補償する。波長分散補償フィルタ161X及び161Yは、Chromatic Dispersion Compensation(CDC)フィルタとも呼ばれる。波長分散補償フィルタ161X及び161Yの係数は、波長分散に起因する歪みの物理モデルなどに基づいて設定される。波長分散に起因する歪みは固定的であり、波長分散補償フィルタ161X及び161Yは、静的なフィルタとして取り扱われる。
【0035】
偏波変動補償フィルタ162は、複素数信号2入力2出力の複素数係数MIMOフィルタとして構成される。偏波変動補償フィルタ162は、光ファイバ伝送中に、偏波状態変動及び偏波モードの分散に起因して生じる信号歪みを補償する。キャリア位相補償フィルタ163X及び163Yは、送信光信号のキャリアと受信側のローカルオシレータ光との間の周波数オフセット及び位相オフセットに起因して生じる信号歪みを補償する。キャリア位相補償フィルタ163X及び163Yには、例えばSL 1×1 1タップFinite Impulse Response(FIR)フィルタが使用される。キャリア位相補償フィルタ163X及び163Yは、Carrier phase recovery(CPR)フィルタとも呼ばれる。
【0036】
デジタル信号処理部154は、各種歪みを補償した信号を復号部155に出力する。復号部155は、入力された信号に対して復号を行い、送信されたデータを復元する。復号部155は、復号器とも呼ばれる。光受信機150において、デジタル信号処理部154、及び復号部155などの回路は、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP:digital signal processor)などのデバイスを用いて構成され得る。
【0037】
図2に戻り、光ファイバ通信システム100は、上記した構成要素に加えて、光源171、偏波変動監視装置172、及び監視光解析装置173を有する。光ファイバ通信システム100は、複数の組の光源171、偏波変動監視装置172、及び監視光解析装置173を有していてもよい。光ファイバ通信システム100は、例えば、伝送路130において、所定のスパンごとに、光源171、偏波変動監視装置172、及び監視光解析装置173の組を有する。図2の例では、光ファイバ通信システム100は、隣接する2つの光増幅器131で区画されるスパンごとに、光源171、偏波変動監視装置172、及び監視光解析装置173の組を1つずつ有する。
【0038】
光源171は、所定波長の光信号を出力する。光源171は、主信号、すなわち複数の光送信機110が出力する偏波多重信号の波長とは異なる波長の光信号を出力する。本実施形態において、光源171は、波長1510nmの光信号を出力するものとする。光源171が出力する光信号は、伝送路における運用設定、及び伝送路の状態監視に用いられるOSC信号又は監視光信号とも呼ばれる。本実施形態において、光源171が出力する光信号は、偏波状態の監視にも使用される。光源171が出力する光信号は、光カプラなどの合波器134を介して、光ファイバ132に挿入される。光源171から光ファイバ132に挿入された光信号には、光ファイバ132の伝送中に、偏波変動が生じ得る。光源171は、図1に示される光源30に対応する。
【0039】
光源171から光ファイバ132に挿入された光信号は、波長デマルチプレクサや波長選択スイッチなどの分波器135を用いて、光ファイバ132から選択的に偏波変動監視装置172及び監視光解析装置173に分岐される。偏波変動監視装置172及び監視光解析装置173には、光源171から出力される例えば波長1510nmの光信号が入力される。監視光解析装置173は、伝送路の損失に変化がないかを監視する。また、監視光解析装置173は、EDFAなどの光増幅器133を操作する。偏波変動監視装置172は、入力される光信号を用いて、光ファイバ132における偏波変動を監視する。
【0040】
図6は、偏波変動監視装置172の構成例を示す。偏波変動監視装置172は、ポラリメータ181、ADC182、Fast Fourier Transformation(FFT)183、及び変動推定部184を有する。偏波変動監視装置172は、物理的には1以上のプロセッサと1以上のメモリとを有する装置として構成され得る。偏波変動監視装置172の各部の機能の少なくとも一部は、1以上のプロセッサが1以上のメモリから読み出したプログラムに従って動作することで実現され得る。偏波変動監視装置172は、図1に示される偏波変動監視装置20に対応する。
【0041】
ポラリメータ181は、入力される光信号の偏光特性を測定する。本実施形態において、ポラリメータ181は、ストークスパラメータS0-S3を計算する。ストークスパラメータS0-S3は、X偏波及びY偏波の電界情報E0x及びE0yをとして、下記式で表される。
ストークスパラメータS0は、全体強度に対応する。ストークスパラメータS1は、直線偏光の水平成分と垂直成分との差に対応する。ストークスパラメータS2は、45度直線偏光成分に対応する。ストークスパラメータS3は、円偏光成分に対応する。
【0042】
ポラリメータ181は、上記ストークスパラメータS1-S3のうちの1つ以上をADC182に出力する。ポラリメータ181は、例えばストークスパラメータS1をADC182に出力する。なお、ポラリメータ181は、必ずしも上記ストークスパラメータS0-S3を全て計算する必要はない。例えば、ポラリメータ181は、ストークスパラメータS1-S3のうちの1つのみを計算してもよい。ポラリメータ181は、図1に示される偏光特性測定部21に対応する。
【0043】
ADC182は、ポラリメータ181から出力されるストークスパラメータをデジタル信号に変換する。ADC182は、時系列で出力されるストークスパラメータをデジタル信号に変換し、デジタル信号をFFT183に時系列で出力する。FFT183は、デジタル信号に変換されたストークスパラメータの1つに対してFFTを実施し、ストークスパラメータの1つを周波数領域の信号に変換する。FFT183は、図1に示されるフーリエ変換部22に対応する。
【0044】
変動推定部184は、FFT183で周波数領域の信号に変換されたストークスパラメータの1つに基づいて、偏波状態の特性を推定する。本実施形態において、変動推定部184は、偏波変動周波数、すなわち偏波変動速度を、偏波状態の特性として推定する。変動推定部184は、例えば周波数領域の信号に変換されたストークスパラメータの1つ、すなわちストークスパラメータの1つのFFT波形において、ピークを検索する。変動推定部184は、ピークが検索された場合、そのピークの位置の周波数を、偏波変動速度として推定する。変動推定部184は、図1に示される変動推定部23に対応する。
【0045】
本発明者は、ストークスパラメータのFFT波形から偏波変動速度が推定できることを確かめるために、実験を実施した。図7は、実験に用いられたシステムを示す。LD510は、波長1510nmのレーザ光を出射する。アッテネータ520は、ポラリメータ550での受光パワーを調整するために、LD510から出射されるレーザ光を減衰させる。変調器530は、156MHzのオンオフNon Return to Zero(NRZ)変調でLD510から出力されるレーザ光を変調する。
【0046】
変調器530で変調されたレーザ光、すなわち光信号は、シングルモード光ファイバ(SMF: Single Mode Fiber)を介して、スクランブラ540に入力される。スクランブラ540は、任意の周波数で光信号に偏波変動を与える。スクランブラ540で偏波変動が与えられた光信号は、SMFを介してポラリメータ550に入力される。
【0047】
ポラリメータ550は、入力される光信号に対して、ストークスパラメータS1-S3を計算する。ADC560は、ストークスパラメータS1-S3を、それぞれアナログ信号からデジタル信号に変換する。FFT570は、ストークスパラメータS1-S3のうちの1つに対して高速フーリエ変換を実施する。
【0048】
図8は、ストークスパラメータS1のFFT波形を示す。図9は、ストークスパラメータS2のFFT波形を示す。図10は、ストークスパラメータS3のFFT波形を示す。図8-10に示されるグラフにおいて、横軸は周波数[kHz]を表し、縦軸は強度[dBm]を表す。実験において、スクランブラ540は、100kHzの偏波変動を光信号に与えた。
【0049】
実験の結果、図8-10に示されるように、ストークスパラメータS1-S3の何れにおいても、FFT波形において100kHzの位置にピークが観測されることが確かめられた。従って、ストークスパラメータS1-S3のうちの1つを高速フーリエ変換すれば、偏波状態の変動周波数、すなわち偏波変動速度が推定できることが確かめられた。
【0050】
ここで、図2に示される光ファイバ通信システム100において、光源171から光ファイバ132に挿入される光信号と主信号との干渉を抑制するために、光ファイバ132に挿入される光信号のパワーは、低い方が好ましい。本発明者は、図7に示されるシステムにおいて、アッテネータ520の減衰量を調整し、ポラリメータ550において、どの程度の受光パワーであれば偏波変動速度の推定が可能かを調べた。
【0051】
図11は、ポラリメータ550での受光パワーが-5dBmの場合のストークスパラメータS1のFFT波形を示す。図12は、ポラリメータ550での受光パワーが-40dBmの場合のストークスパラメータS1のFFT波形を示す。図11及び図12に示されるグラフにおいて、横軸は周波数[kHz]を表し、縦軸は強度[dBm]を表す。実験において、スクランブラ540は、500kHzの偏波変動を光信号に与えた。
【0052】
図11に示されるように、ストークスパラメータS1のFFT波形において、500KHzの位置にピークが観察された。また、図12に示されるように、受光パワーが-40dBmの場合も、ストークスパラメータS1のFFT波形において、500KHzの位置にピークが観察された。従って、図3に示される光ファイバ通信システム100において、ポラリメータ181での受光パワーが-40dBm以上であれば、偏波変動速度の推定が可能であると考えられる。受光パワーが低く設定される場合、光源171から光ファイバ132に挿入される光信号に起因する主信号の受信品質劣化を抑制することができる。
【0053】
続いて、動作手順を説明する。図13は、偏波変動監視装置172の動作手順を示す。偏波変動監視装置172の動作手順は、偏波変動監視方法に対応する。光源171は、光ファイバ132に例えば波長1510nmの光信号を挿入する。ポラリメータ181は、光ファイバ132を伝送された波長1510nmの光信号の偏光特性を測定する(ステップS1)。ポラリメータ181は、ステップS1では、ストークスパラメータS1-S3のうちの1つを測定する。
【0054】
ADC182は、ステップS1で測定された偏光特性を示す信号を、デジタル信号に変換する。ADC182は、例えばポラリメータ181から出力されるストークスパラメータの1つをデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をFFT183に出力する。FFT183は、ADC182から入力される、測定された偏光特性を示すデジタル信号を、フーリエ変換する(ステップS2)。FFT183は、ステップS2では、例えばストークスパラメータS1に対して高速フーリエ変換を実施する。
【0055】
変動推定部184は、フーリエ変換された偏光特性に基づいて、偏波変動周波数、すなわち偏波変動速度を推定する(ステップS3)。変動推定部184は、ステップS3では、例えばストークスパラメータS1のFFT波形においてピークを示す周波数を、偏波変動周波数として推定する。変動推定部184は、FFT波形におけるピーク周波数の強度を時間方向に積分し、推定された偏波変動周波数における偏光特性の変動量を推定してもよい。
【0056】
本実施形態では、FFT183は、ポラリメータ181で測定されたストークスパラメータの1つをFFTする。変動推定部184は、ストークスパラメータの1つのFFT波形から、偏波変動周波数を推定する。変動推定部184は、例えば、FFT波形におけるピークの位置の周波数を、偏波変動周波数として推定する。本実施形態において、偏波変動監視装置172は、ストークスパラメータS1-S3の全てを使用しなくても、ストークスパラメータS1-S3の1つのFFT波形から、偏波変動周波数を推定できる。
【0057】
非特許文献1との比較では、非特許文献1では、2つのフォトディテクタの検出信号の差分に基づいて偏波変動周波数が計算される。この場合、計算は簡素化できるものの、計算された偏波変動周波数の精度が低い。非特許文献1において、2つのストークパラメータから偏波変動周波数が計算される場合も、同様に、計算は簡素化できるものの、計算された偏波変動周波数の精度が低い。これに対して、本実施形態に係る偏波変動監視装置172は、偏波変動周波数の推定に、ストークスパラメータの1つのFFT波形を使用する。本実施形態に係る偏波変動監視装置172は、偏波変動周波数の推定に使用されるストークスパラメータの数を減らして計算を簡素化しつつ、高い精度で偏波変動周波数を推定できる。
【0058】
本実施形態において、光ファイバ通信システム100は、伝送路130における所定の区間ごとに、光源171と偏波変動監視装置172との組を有する。その場合、区間ごとに、偏波変動の有無、及び偏波変動周波数を監視することができる。このため、偏波変動監視装置172のユーザは、どの区間において、どのような周波数の偏波変動があったかを知ることができる。
【0059】
本実施形態において、偏波変動監視装置172は、推定した偏波変動周波数に基づいて、光受信機150のデジタル信号処理部154に含まれる偏波変動補償フィルタ162(図5を参照)の係数を制御してもよい。その場合、デジタル信号処理部154において、伝送路130において生じる偏波変動を、精度よく補償できると考えられる。
【0060】
なお、上記説明では、ストークスパラメータの測定にポラリメータ181が使用される例が説明された。しかしながら、本実施形態は、これには限定されない。ストークスパラメータの測定は、偏光子、フォトディテクタ、及び演算器を有する装置を用いて実施されてもよい。
【0061】
図14は、ストークスパラメータの測定に用いられる装置の構成例を示す。ストークスパラメータ測定装置181aは、スプリッタ301、偏光子302-304、1/4波長板305、フォトディテクタ311-314、ADC320、及び演算器330を有する。スプリッタ301は、光ファイバ132から分岐された、光源171から出力された光信号を、4つの光信号に分岐する。フォトディテクタ311は、スプリッタ301から入力される光信号を検出し、検出した光信号を電気信号V0に変換する。
【0062】
偏光子302は、スプリッタ301から入力される光信号のうち、主軸に対して直交する方向の成分をフォトディテクタ312に通過させる。フォトディテクタ312は、偏光子302を通過した光信号を検出し、検出した光信号を電気信号V1に変換する。偏光子303は、スプリッタ301から入力される光信号のうち、主軸に対して45度傾いた方向の成分をフォトディテクタ313に通過させる。フォトディテクタ313は、偏光子303を通過した光信号を検出し、検出した光信号を電気信号V2に変換する。
【0063】
1/4波長板305は、スプリッタ301から入力される光信号の直交する2つの偏光成分に90度(λ/4)の位相差を与える。偏光子304は、1/4波長板305を介して入力される光信号のうち、主軸に対して45度傾いた方向の成分をフォトディテクタ314に通過させる。フォトディテクタ314は、偏光子304を通過した光信号を検出し、検出した光信号を電気信号V3に変換する。
【0064】
ADC320は、フォトディテクタ311-314から出力される電気信号V0-V3を、デジタル信号に変換する。演算器330は、ADC320でデジタル信号に変換されたV0-V3を用いて、ストークスパラメータS1-S3の1つを計算する。演算器330は、S1=2×V1-V0によりストークスパラメータS1を計算する。演算器330は、S2=2×V2-V0によりストークスパラメータS2を計算する。演算器330は、S3=2×V4-V0によりストークスパラメータS3を計算する。
【0065】
続いて、本開示の第2実施形態を説明する。図15は、本開示の第2の通信システムで用いられる偏波変動監視装置の構成例を示す。偏波変動監視装置172aは、図6に示される偏波変動監視装置172の構成に加えて、アンプ185を有する。偏波変動監視装置172aにおけるポラリメータ181、ADC182、FFT183、及び変動推定部184の動作は、第1実施形態において説明したそれらの動作と同様でよい。
【0066】
アンプ185は、光増幅器であり、光ファイバ132を伝送された、光源171から出力された光信号を増幅する。ポラリメータ181は、アンプ185で増幅された光信号の偏光特性を測定する。本実施形態では、アンプ185で光信号が増幅される。このため、光源171から光ファイバ132に挿入される光信号のパワーを、第1実施形態に比べて低下させることができる。
【0067】
本発明者は、図7に示されるシステムにおいて、スクランブラ540とポラリメータ550との間にアンプを有するシステムを用いて実験を行った。アンプの利得は20dBとした。図16は、実験で得られたストークスパラメータS1のFFT波形を示す。図16に示されるグラフにおいて、横軸は周波数[kHz]を表し、縦軸は強度[dBm]を表す。
【0068】
実験において、スクランブラ540は、500kHzの偏波変動を光信号に与えた。アッテネータ520の減衰量を調整することで、ポラリメータ550での受光パワーは-60dBmに調整された。その場合、図16に示されるように、ストークスパラメータS1のFFT波形において、500KHzの位置にピークが観察された。実験の結果、光ファイバ132に挿入される光信号のパワーを第1実施形態に比べて低下させた場合でも、偏波変動速度の推定が可能であることが確認された。このため、本実施形態は、光源171から光ファイバ132に挿入される光信号に起因する主信号の受信品質劣化をより抑制することができる。
【0069】
図17は、偏波変動監視装置172として用いられ得るコンピュータ装置の構成例を示す。コンピュータ装置400は、中央処理部(CPU:Central Processing Unit)410、記憶部420、Read Only Memory(ROM)430、Random Access Memory(RAM)440、通信インタフェース(IF:Interface)450、及びユーザインタフェース460を有する。
【0070】
通信インタフェース450は、外部装置との通信に使用されるインタフェースである。通信インタフェース450は、ADC153が出力する4系統の受信信号を取得するために使用され得る。ユーザインタフェース460は、例えばディスプレイなどの表示部を含む。また、ユーザインタフェース460は、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどの入力部を含む。
【0071】
記憶部420は、各種のデータを保持できる補助記憶装置である。記憶部420は、必ずしもコンピュータ装置400の一部である必要はなく、外部記憶装置であってもよいし、ネットワークを介してコンピュータ装置400に接続されたクラウドストレージであってもよい。
【0072】
ROM430は、不揮発性の記憶装置である。ROM430には、例えば比較的容量が少ないフラッシュメモリなどの半導体記憶装置が用いられる。CPU410が実行するプログラムは、記憶部420又はROM430に格納され得る。記憶部420又はROM430は、CPU410に歪み補償及び検出を行う処理を実施させるための各種プログラムを記憶する。
【0073】
上記プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群、又はソフトウェアコードを含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、Compact Disc (CD)、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0074】
RAM440は、揮発性の記憶装置である。RAM440には、Dynamic Random Access Memory(DRAM)又はStatic Random Access Memory(SRAM)などの各種半導体メモリデバイスが用いられる。RAM440は、データなどを一時的に格納する内部バッファとして用いられ得る。CPU410は、記憶部420又はROM430に格納されたプログラムをRAM440に展開し、実行する。CPU410は、データなどを一時的に格納できる内部バッファを有してもよい。
【0075】
なお、上記各実施形態において、偏波変動監視装置172は、必ずしも単一の装置として構成されている必要はない。偏波変動監視装置172は、物理的に分離された複数の装置を用いて構成されていてもよい。例えば、FFT183及び変動推定部184の機能は、単独のコンピュータ装置においてソフトウェア処理で実現されていてもよい。その場合、コンピュータ装置は、ADC182を介して、ポラリメータ181からストークスパラメータを取得してもよい。
【0076】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に対して変更や修正を加えたものも、本開示に含まれる。
【0077】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0078】
[付記1]
伝送路を伝送された光信号の偏光特性を測定する偏光特性測定部と、
前記測定された偏光特性をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する変動推定部とを有する偏波変動監視装置。
【0079】
[付記2]
前記変動推定部は、前記フーリエ変換された偏光特性においてピークを検索し、該検索されたピークの位置の周波数を、前記偏波変動周波数として推定する、付記1に記載の偏波変動監視装置。
【0080】
[付記3]
前記光信号を増幅し、増幅された光信号を前記偏光特性測定部に出力する増幅器を更に有する、付記1又は2に記載の偏波変動監視装置。
【0081】
[付記4]
前記偏光特性測定部は、ストークスパラメータの1つを、前記偏光特性として測定する、付記1から3の何れか1項に記載の偏波変動監視装置。
【0082】
[付記5]
前記偏光特性測定部は、ポラリメータである、付記4に記載の偏波変動監視装置。
【0083】
[付記6]
前記偏光特性測定部は、前記光信号うちの所定の偏光方向の成分を透過させる偏光子と、前記偏光子を透過した光信号を検出するフォトディテクタと、前記フォトディテクタを用いて検出された光信号に基づいて前記ストークスパラメータの1つを演算する演算器とを含む、付記4に記載の偏波変動監視装置。
【0084】
[付記7]
前記光信号は、前記伝送路を伝送される、光送信機と光受信機との間で送受信される偏波多重信号の波長とは異なる波長の信号である、付記1から6の何れか1項に記載の偏波変動監視装置。
【0085】
[付記8]
前記光信号は、合波器を用いて前記伝送路に挿入され、分波器を用いて前記伝送路から分岐される、付記1から7の何れか1項に記載の偏波変動監視装置。
【0086】
[付記9]
前記光信号は、前記伝送路に挿入され、前記伝送路の所定のスパンを伝送された後、前記伝送路から分岐される、付記8に記載の偏波変動監視装置。
【0087】
[付記10]
偏波多重信号を送信する送信機と、
伝送路を介して前記送信機から送信された偏波多重信号を受信する受信機と、
付記1から9の何れか1項に記載の偏波変動監視装置と、
前記光信号を前記伝送路に出力する光源とを備える通信システム。
【0088】
[付記11]
前記偏波変動監視装置と前記光源との組を、前記伝送路における所定のスパンごとに有する、付記10に記載の通信システム。
【0089】
[付記12]
前記受信機は、前記伝送路における偏波変動を補償する偏波変動補償フィルタを有し、
前記偏波変動監視装置は、前記推定した偏波変動周波数に基づいて、前記偏波変動補償フィルタの係数を制御する、付記10又は11に記載の通信システム。
【0090】
[付記13]
伝送路を伝送された光信号の偏光特性を測定し、
前記測定された偏光特性をフーリエ変換し、
前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する偏波変動監視方法。
【0091】
[付記14]
伝送路を伝送された光信号の偏光特性を取得し、
前記取得された偏光特性をフーリエ変換し、
前記フーリエ変換された偏光特性に基づいて、前記伝送路で生じる偏波変動周波数を推定する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0092】
10:通信システム
11:送信機
15:受信機
13:伝送路
20:偏波変動監視装置
21:偏光特性測定部
22:フーリエ変換部
23:変動推定部
30:光源
100:光ファイバ通信システム
110:光送信機
111:符号化部
112:予等化部
113:DAC
114:光変調器
115:LD
120:マルチプレクサ
130:伝送路
132:光ファイバ
133:光増幅器
134:合波器
135:分波器
140:デマルチプレクサ
150:光受信機
151:LD
152:コヒーレント受信機
153:ADC
154:デジタル信号処理部
155:復号部
161X、161Y:波長分散補償フィルタ
162:偏波変動補償フィルタ
163X、163Y:キャリア位相補償フィルタ
171:光源
172:偏波変動監視装置
173:監視光解析装置
181:ポラリメータ
182:ADC
183:FFT
184:変動推定部
185:アンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17