(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025061427
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】封止剤、封止シート、電子デバイスおよびペロブスカイト型太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20250403BHJP
H10K 30/88 20230101ALI20250403BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250403BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250403BHJP
H10K 30/40 20230101ALN20250403BHJP
C09K 3/10 20060101ALN20250403BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/88
C08K3/013
C08L101/00
H10K30/40
C09K3/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025006688
(22)【出願日】2025-01-17
(62)【分割の表示】P 2019218955の分割
【原出願日】2019-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】細井 麻衣
(57)【要約】
【課題】水分の浸入を抑制でき、且つ、鉛含有部から電子デバイスの外部への鉛の漏出を抑制できる、電子デバイス用の封止剤を提供する。
【解決手段】鉛含有部を備える電子デバイス用の封止剤であって、半焼成ハイドロタルサイト及び焼成ハイドロタルサイトからなる群より選ばれる1種類以上を含む無機フィラーと、樹脂とを含む、封止剤。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛含有部を備える電子デバイス用の封止剤であって、
前記封止剤が、無機フィラー及び樹脂を含み、
前記封止剤の鉛吸着性パラメータが、10μg/m
2以上であり、
前記封止剤の水蒸気侵入バリア性パラメータが、0.025cm/h
0.5未満であり、
前記鉛吸着性パラメータは、鉛吸着能評価試験を行った場合に、封止剤の層1m
2当たりに吸着される鉛の質量を表し、
前記鉛吸着能評価試験では、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された厚さ20μmの前記封止剤の層と、を備える、長さ16cm、幅24cmの第一試験用シートを用意すること;前記第一試験用シートの前記封止剤の層側に、ナイロン製のメッシュ布を貼合すること;メッシュ布を貼合された前記第一試験用シートを、1cm角に切断すること;切断された前記第一試験用シートを、20℃~25℃に調整した鉛イオン濃度20μg/Lの鉛イオン含有水溶液50mlに浸漬し、15分撹拌することを行い、
前記水蒸気浸入バリア性パラメータは、水蒸気バリア性評価試験を行った場合に、下記式(1)から求められる定数Kを表し、
前記水蒸気バリア性評価試験では、厚み30μmのアルミニウム箔及び厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを備える支持フィルムと、前記支持フィルムの前記アルミニウム箔上に形成された前記封止剤の層と、を備える第二試験用シートを、乾燥すること;無アルカリガラスで形成された50mm角のガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分間洗浄し、乾燥すること;前記ガラス板の片面の、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmのエリアを除く部分に、カルシウムを蒸着して、厚さ200nmのカルシウム膜を形成すること;窒素雰囲気内で、前記第二試験用シートの前記封止剤の層と、前記ガラス板の前記カルシウム膜側の面と、を貼り合わせ、評価サンプルを得ること;前記評価サンプルの端部と前記カルシウム膜の端部との間の距離X2[mm]を測定すること;前記評価サンプルを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に収納すること;前記評価サンプルを前記恒温恒湿槽に収納した時点から、前記恒温恒湿槽に収納された前記評価サンプルの端部と前記カルシウム膜の端部との間の距離X1[mm]が「X2+0.1mm」となる時点までの時間t[時間]を測定すること;及び、下記式(1)に基づいて、定数Kを計算すること、を行う、封止剤。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛含有部を備える電子デバイス用の封止剤、並びに、それを用いた封止シート、電子デバイスおよびペロブスカイト型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年注目を集める電子デバイスの一つに、ペロブスカイト型太陽電池がある。ペロブスカイト型太陽電池は、一般に、電極と、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層とを備える。また、電極及び光電変換層を水から保護するために、ペロブスカイト型太陽電池には、封止部が設けられることが通常である。このような封止部について、従来から、様々な検討が行われてきた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペロブスカイト型太陽電池が備える光電変換層には、鉛が含まれることがある。この光電変換層に仮に水分が浸入した場合、光電変換層から鉛が流出し、太陽電池の外部へと漏出する可能性がある。また、このような鉛の漏出は、前記の光電変換層のような鉛含有部を備えるペロブスカイト型太陽電池以外の電子デバイスにおいても、生じうる。鉛の漏出は、環境面及び安全面のいずれの観点からも、抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、水分の浸入を抑制でき、且つ、鉛含有部から電子デバイスの外部への鉛の漏出を抑制できる、電子デバイス用の封止剤;前記封止剤を含む封止シート;並びに、前記封止剤を封止に用いた電子デバイスおよびペロブスカイト型太陽電池;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、無機フィラーと樹脂とを適切に組み合わせて用いた場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
〔1〕 鉛含有部を備える電子デバイス用の封止剤であって、
前記封止剤が、無機フィラー及び樹脂を含み、
前記封止剤の鉛吸着性パラメータが、10μg/m
2以上であり、
前記封止剤の水蒸気侵入バリア性パラメータが、0.025cm/h
0.5未満であり、
前記鉛吸着性パラメータは、鉛吸着能評価試験を行った場合に、封止剤の層1m
2当たりに吸着される鉛の質量を表し、
前記鉛吸着能評価試験では、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された厚さ20μmの前記封止剤の層と、を備える、長さ16cm、幅24cmの第一試験用シートを用意すること;前記第一試験用シートの前記封止剤の層側に、ナイロン製のメッシュ布を貼合すること;メッシュ布を貼合された前記第一試験用シートを、1cm角に切断すること;切断された前記第一試験用シートを、20℃~25℃に調整した鉛イオン濃度20μg/Lの鉛イオン含有水溶液50mlに浸漬し、15分撹拌することを行い、
前記水蒸気浸入バリア性パラメータは、水蒸気バリア性評価試験を行った場合に、下記式(1)から求められる定数Kを表し、
前記水蒸気バリア性評価試験では、厚み30μmのアルミニウム箔及び厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを備える支持フィルムと、前記支持フィルムの前記アルミニウム箔上に形成された前記封止剤の層と、を備える第二試験用シートを、乾燥すること;無アルカリガラスで形成された50mm角のガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分間洗浄し、乾燥すること;前記ガラス板の片面の、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmのエリアを除く部分に、カルシウムを蒸着して、厚さ200nmのカルシウム膜を形成すること;窒素雰囲気内で、前記第二試験用シートの前記封止剤の層と、前記ガラス板の前記カルシウム膜側の面と、を貼り合わせ、評価サンプルを得ること;前記評価サンプルの端部と前記カルシウム膜の端部との間の距離X2[mm]を測定すること;前記評価サンプルを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に収納すること;前記評価サンプルを前記恒温恒湿槽に収納した時点から、前記恒温恒湿槽に収納された前記評価サンプルの端部と前記カルシウム膜の端部との間の距離X1[mm]が「X2+0.1mm」となる時点までの時間t[時間]を測定すること;及び、下記式(1)に基づいて、定数Kを計算すること、を行う、封止剤。
【数1】
〔2〕 前記水蒸気バリア性評価試験における第二試験用シートの乾燥を、130℃60分の条件、及び、100℃5分の条件の、少なくとも一方で行う、〔1〕に記載の封止剤。
〔3〕 前記無機フィラーが、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、及び、ゼオライトからなる群より選ばれる1種類以上を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の封止剤。
〔4〕 鉛含有部を備える電子デバイス用の封止剤であって、
半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種類以上を含む無機フィラーと、樹脂とを含む、封止剤。
〔5〕 前記無機フィラーが、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種類以上を含む無機フィラーを含み、
前記樹脂が、ポリオレフィン系樹脂を含む、〔3〕又は〔4〕に記載の封止剤。
〔6〕 前記無機フィラーが、半焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種類以上を含む無機フィラーを含み、
前記樹脂が、エポキシ樹脂を含む、〔3〕~〔5〕のいずれか一項に記載の封止剤。
〔7〕 前記封止剤の不揮発成分100質量%に対する、前記無機フィラーの量が、5質量%以上80質量%以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の封止剤。
〔8〕 支持体と、前記支持体上に形成された〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の封止剤の層と、を備える、封止シート。
〔9〕 鉛含有部と、前記鉛含有部を封止する封止部とを備え、
前記封止部が、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の封止剤を含む、電子デバイス。
〔10〕 第一電極と、鉛原子を含むペロブスカイト層と、第二電極と、前記ペロブスカイト層を封止する封止部とを備え、
前記封止部が、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の封止剤を含む、ペロブスカイト型太陽電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水分の浸入を抑制でき、且つ、鉛含有部から電子デバイスの外部への鉛の漏出を抑制できる、電子デバイス用の封止剤;前記封止剤を含む封止シート;並びに、前記封止剤を封止に用いた電子デバイスおよびペロブスカイト型太陽電池;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、水蒸気バリア性評価試験で製造される評価サンプルを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、恒温恒湿槽に収納される前の評価サンプルを、ガラス板側から見た様子を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、恒温恒湿槽に収納された後の評価サンプルを、ガラス板側から見た様子を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るペロブスカイト型太陽電池の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
[1.第一実施形態に係る封止剤の概要]
本発明の第一実施形態に係る封止剤は、無機フィラー及び樹脂を含む。前記の樹脂は、通常、無機フィラーを結着して保持する役割を果たすので、適宜「バインダ樹脂」と呼ぶことがある。本実施形態に係る封止剤は、無機フィラー及びバインダ樹脂以外に、更に任意の成分を含んでいてもよい。また、本実施形態に係る封止剤は、特定の範囲の鉛吸着性パラメータを有する。さらに、本実施形態に係る封止剤は、特定の範囲の水蒸気浸入バリア性パラメータを有する。この封止剤は、鉛含有部を備える電子デバイスの封止用途に用いた場合に、鉛含有部への水分の浸入を抑制でき、且つ、鉛含有部から電子デバイスの外部への鉛の漏出を抑制できる。
【0012】
[2.第一実施形態に係る封止剤の鉛吸着性パラメータ]
本発明の第一実施形態に係る封止剤の鉛吸着性パラメータは、通常10μg/m2以上、好ましくは11μg/m2以上、更に好ましくは12μg/m2以上、特に好ましくは13μg/m2以上である。鉛吸着性パラメータの上限は、大きいほど好ましく、例えば、200μg/m2以下、100μg/m2以下、50μg/m2以下などでありうる。
【0013】
鉛吸着性パラメータは、下記の鉛吸着能評価試験を行った場合に、封止剤の層1m2当たりに吸着される鉛の質量を表す。
【0014】
前記の鉛吸着能評価試験では、第一試験用シートを用意すること;第一試験用シートの封止剤の層側に、ナイロン製のメッシュ布を貼合すること;メッシュ布を貼合された前記第一試験用シートを、1cm角に切断すること;切断された第一試験用シートを、20℃~25℃に調整した鉛イオン濃度20μg/Lの鉛イオン含有水溶液50mlに浸漬し、15分撹拌することを行う。第一試験用シートとは、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、このポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された厚さ20μmの封止剤の層と、を備える、長さ16cm、幅24cmのシートを表す。鉛吸着能評価試験において第一試験用シートとメッシュ布との貼合を行う理由は、鉛イオン含有水溶液中で第一試験用シート同士が密着することを抑制するためである。また、封止剤が熱硬化型封止剤の場合、通常は、メッシュ布貼合後に100℃60分の条件で封止剤を熱硬化させ、その後で、第一試験用シートの切断を行う。
【0015】
よって、例えば、封止剤が粘着型封止剤である場合、鉛吸着能評価試験では、第一試験用シートを用意すること;第一試験用シートの封止剤の層側に、ナイロン製のメッシュ布を貼合すること;メッシュ布を貼合された第一試験用シートを、1cm角に切断すること;切断された第一試験用シートを、20℃~25℃に調整した鉛イオン濃度20μg/Lの鉛イオン含有水溶液50mlに浸漬し、15分撹拌することを行いうる。
【0016】
また、例えば、封止剤が熱硬化型封止剤である場合、鉛吸着能評価試験では、第一試験用シートを用意すること;第一試験用シートの封止剤の層側に、ナイロン製のメッシュ布を貼合し、100℃60分の条件で封止剤を熱硬化すること;メッシュ布を貼合された第一試験用シートを、1cm角に切断すること;切断された第一試験用シートを、20℃~25℃に調整した鉛イオン濃度20μg/Lの鉛イオン含有水溶液50mlに浸漬し、15分撹拌することを行いうる。
【0017】
鉛吸着能評価試験を行った場合に封止剤の層に吸着される鉛の質量は、鉛イオン含有水溶液に含まれる鉛イオンの濃度を用いて測定できる。鉛イオンの濃度は、ポータブル走査型鉛測定器(型名HSA-1000、HACH社製)を用いて測定できる。具体的な測定方法は、実施例で後述する方法を採用しうる。
【0018】
鉛吸着性パラメータは、封止剤が鉛を吸着する能力の大きさを表す。具体的には、鉛吸着性パラメータが大きいほど、封止剤が鉛を吸着する能力が大きいことを表す。前記範囲の鉛吸着性パラメータを有する封止剤は、電子デバイスにおいて鉛含有部の封止に用いた場合に、その鉛含有部から流出する鉛を効果的に吸着できる。よって、電子デバイスからの外部への鉛の漏出を抑制できる。前記のように鉛の漏出を抑制できる効果は、電子デバイスの保管時、運搬時、使用時、破損時など、様々な場面において有益である。
【0019】
鉛吸着性パラメータは、例えば、無機フィラーの種類及び量によって調整しうる。
【0020】
[3.第一実施形態に係る封止剤の水蒸気浸入バリア性パラメータ]
本発明の第一実施形態に係る封止剤の水蒸気浸入バリア性パラメータは、通常0.025cm/h0.5未満、好ましくは0.024cm/h0.5未満、より好ましくは0.0230cm/h0.5未満、更に好ましくは0.022cm/h0.5未満、特に好ましくは0.021cm/h0.5未満である。水蒸気浸入バリア性パラメータの下限は、理想的には0.000cm/h0.5以上であるが、0.001cm/h0.5以上であってもよい。
【0021】
水蒸気浸入バリア性パラメータは、下記の水蒸気バリア性評価試験を行った場合に、式(1)から求められる定数Kを表す。
【0022】
前記の水蒸気バリア性評価試験では、第二試験用シートを、乾燥すること;無アルカリガラスで形成された50mm角のガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分間洗浄し、乾燥すること;ガラス板の片面の中央部分に、カルシウムを蒸着して、厚さ200nmのカルシウム膜を形成すること;窒素雰囲気内で、第二試験用シートの封止剤の層と、ガラス板の前記カルシウム膜側の面と、を貼り合わせ、評価サンプルを得ること;評価サンプルの封止距離X2[mm]を測定すること;評価サンプルを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に収納すること;評価サンプルを恒温恒湿槽に収納した時点TP1から、恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの封止距離X1[mm]が「X2+0.1mm」となる時点TP2までの時間t[時間]を測定すること;及び、下記式(1)に基づいて、定数Kを計算すること、を行う。以下の説明では、前記の時間tを、「減少開始時間t」と呼ぶことがある。封止剤が硬化可能である場合には、通常、第二試験用シートの封止剤の層とガラス板のカルシウム膜側の面とを貼り合わせた後、封止剤の層を硬化させて、評価サンプルを得る。前記の硬化の条件は、例えば、実施例で後述する条件を採用しうる。具体的な硬化の条件は、例えば、100℃60分でありうる。また、水蒸気バリア性評価試験で行う第二試験用シートの乾燥は、十分に行うことが好ましい。具体的な乾燥条件は、130℃60分の条件、及び、100℃5分の条件の、少なくとも一方でありうる。130℃60分の条件、及び、100℃5分の条件の、少なくとも一方の条件での乾燥を含む水蒸気バリア性評価試験において、上述した範囲の水蒸気浸入バリア性パラメータが得られる場合、封止剤は、水分の浸入を抑制でき、且つ、鉛含有部から電子デバイスの外部への鉛の漏出を抑制できる。通常は、封止剤が粘着型封止剤である場合、130℃60分の条件で乾燥を行う。また、通常は、封止剤が熱硬化型封止剤の場合、100℃5分の条件で乾燥を行う。
【0023】
よって、例えば、封止剤が粘着型封止剤である場合、水蒸気バリア性評価試験では、第二試験用シートを、130℃60分の条件で乾燥すること;無アルカリガラスで形成された50mm角のガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分間洗浄し、乾燥すること;ガラス板の片面の中央部分に、カルシウムを蒸着して、厚さ200nmのカルシウム膜を形成すること;窒素雰囲気内で、第二試験用シートの封止剤の層と、ガラス板の前記カルシウム膜側の面と、を貼り合わせ、評価サンプルを得ること;評価サンプルの封止距離X2[mm]を測定すること;評価サンプルを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に収納すること;評価サンプルを恒温恒湿槽に収納した時点TP1から、恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの封止距離X1[mm]が「X2+0.1mm」となる時点TP2までの減少開始時間t[時間]を測定すること;及び、下記式(1)に基づいて、定数Kを計算すること、を行いうる。
【0024】
また、例えば、封止剤が熱硬化型封止剤である場合、水蒸気バリア性評価試験では、第二試験用シートを、100℃5分の条件で乾燥すること;無アルカリガラスで形成された50mm角のガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分間洗浄し、乾燥すること;ガラス板の片面の中央部分に、カルシウムを蒸着して、厚さ200nmのカルシウム膜を形成すること;窒素雰囲気内で、第二試験用シートの封止剤の層と、ガラス板の前記カルシウム膜側の面と、を貼り合わせ、100℃60分の条件で硬化させて、評価サンプルを得ること;評価サンプルの封止距離X2[mm]を測定すること;評価サンプルを、温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に収納すること;評価サンプルを恒温恒湿槽に収納した時点TP1から、恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの封止距離X1[mm]が「X2+0.1mm」となる時点TP2までの減少開始時間t[時間]を測定すること;及び、下記式(1)に基づいて、定数Kを計算すること、を行いうる。
【0025】
第二試験用シートとは、厚み30μmのアルミニウム箔及び厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを備える支持フィルムと、この支持フィルムのアルミニウム箔上に形成された封止剤の層と、を備えるシートを表す。封止剤の層の厚さは、例えば、20μmでありうる。また、ガラス板の片面の中央部分とは、ガラス板の片面の、周縁エリアを除く部分を表す。さらに、ガラス板の片面の周縁エリアとは、ガラス板の片面の、ガラス板の端部からの距離0mm~2mmのエリアを表す。また、評価サンプルの封止距離とは、評価サンプルの端部とカルシウム膜の端部との間の距離を表す。封止距離は、通常、封止剤の層の端部とカルシウム膜の端部との間の距離に一致する。
【0026】
【0027】
(式(1)において、
X1は、恒温恒湿槽への投入後の評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの封止距離[mm]であり、
tは、X1=X2+0.1となる減少開始時間[時間]であり、
X2は、恒温恒湿槽への投入前の評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの封止距離[mm]である。)
【0028】
以下、図面を示して、前記の水蒸気バリア性評価試験の仕組みと、その試験により求められる水蒸気浸入バリア性パラメータとしての定数Kの意義について、説明する。
【0029】
図1は、水蒸気バリア性評価試験で製造される評価サンプル10を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、水蒸気バリア性評価試験で製造される評価サンプル10は、煮沸したイソプロピルアルコールで洗浄された正方形のガラス板100と、このガラス板100の片方の面100Uに形成されたカルシウム膜200と、ガラス板100の面100Uに貼り合わせられた第二試験用シート300と、を備える。ガラス板100の面100Uの、ガラス板100の端部100Eからの距離Lが0mm~2mmの周縁エリア110Uには、カルシウム膜200が形成されていない。他方、ガラス板100の面100Uの、周縁エリア110Uを除く中央部分120Uには、カルシウム膜200が形成されている。カルシウム膜200は、通常、周縁エリア110Uを覆うマスク(図示せず。)を用いた蒸着により形成され、高い純度(例えば、99.8%以上の純度)を有する。さらに、第二試験用シート300は、封止剤の層310と、ポリエチレンテレフタレートフィルム321及びアルミニウム箔322を備える支持フィルム320とを備えており、前記の封止剤の層310が、ガラス板100の面100Uに貼り合わせられている。よって、カルシウム膜200は、封止剤の層310によって封止されている。
【0030】
前記の評価サンプル10が備えるガラス板100及び支持フィルム320は、水分を遮断する能力が十分に高い。よって、評価サンプル10の周囲にある水分は、矢印A1で示すように、封止剤の層310の端部310Eを通り、封止剤の層310内を面内方向(厚み方向に垂直な方向)に移動して、カルシウム膜200に浸入しうる。したがって、恒温恒湿槽に収納された評価サンプル10のカルシウム膜200は、端部200Eから中央部200Cへ向かって次第に酸化されうる。
【0031】
図2は、恒温恒湿槽に収納される前の評価サンプル10を、ガラス板100側から見た様子を模式的に示す平面図である。また、
図3は、恒温恒湿槽に収納された後の評価サンプル10を、ガラス板100側から見た様子を模式的に示す平面図である。
図2に示すように、恒温恒湿槽に収納される前の評価サンプル10では、水分の浸入によるカルシウム膜200の酸化は生じていない。よって、評価サンプル10の端部10Eとカルシウム膜200の端部200Eとの間の封止距離X2は、通常、カルシウム膜200の形成直後の寸法を維持しうる。しかし、評価サンプル10が恒温恒湿槽に収納されると、封止剤の層310(
図1参照。)を通ってカルシウム膜200に水分が浸入し、その水と接触したカルシウムが酸化されて、透明な酸化カルシウムになりうる。よって、
図3に示すように、カルシウム膜200は、端部200Eから中央部200Cへ向かって、水分の浸入による透明な酸化カルシウム膜210への変化が次第に進行しうる。この変化は、カルシウム膜200の縮小として観察される。したがって、評価サンプル10が恒温恒湿槽に収納された後には、評価サンプル10の端部10Eとカルシウム膜200の端部200Eとの間の封止距離X1が、時間の経過により次第に大きくなりうる。
【0032】
封止剤の層310を通る水分の移動は、一般に、フィックの拡散式に従う。そこで、前記の水蒸気バリア性評価試験では、封止剤の層310内を水分が封止距離X1移動するのに要する時間としての減少開始時間t(即ち、評価サンプル10を恒温恒湿槽に収納した時点TP1から、恒温恒湿槽に収納された評価サンプル10の封止距離X1[mm]が「X2+0.1mm」となる時点TP2までの時間)と、その移動した封止距離X1とを、式(1)で表されるフィックの拡散式に当て嵌めて、水蒸気浸入バリア性パラメータとしての定数Kを導出している。
【0033】
よって、前記の評価サンプル10は、電子デバイスのモデルに相当し、カルシウム膜200は、封止剤によって封止されるべき鉛含有部に相当しうる。そして、水蒸気浸入バリア性パラメータは、電子デバイスに設けられた封止剤が面内方向への水分の浸入を抑制する能力の大きさを表す。具体的には、水蒸気浸入バリア性パラメータが小さいほど、封止剤が水分の浸入を抑制する能力に優れることを表す。前記範囲の水蒸気浸入バリア性パラメータを有する封止剤は、電子デバイスにおいて鉛含有部の封止に用いた場合に、鉛含有部への水分の浸入を抑制できる。よって、鉛含有部に含まれる成分の酸化を抑制したり、鉛含有部からの鉛の流出を抑制したりできる。
【0034】
水蒸気浸入バリア性パラメータは、例えば、無機フィラーの種類及び量;バインダ樹脂の種類及び量;によって調整しうる。
【0035】
[4.第一実施形態に係る封止剤が含みうる無機フィラー]
本発明の第一実施形態に係る封止剤は、無機フィラーを含む。無機フィラーの一部又は全部は、当該無機フィラー及びバインダ樹脂を含む樹脂組成物としての封止剤中において、吸湿性及び鉛吸着性を発揮しうる。無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。例えば、封止剤中で吸湿性を発揮できる無機フィラーと、封止剤中で鉛吸着性を発揮できる別の無機フィラーとを、組み合わせて用いてもよい。このようにバインダ樹脂を含む樹脂組成物としての封止剤中において、鉛吸着性の無機フィラーが鉛吸着性を発揮できることは、本発明者が初めて見出した現象である。
【0036】
(4.1.ハイドロタルサイト)
無機フィラーの例としては、ハイドロタルサイトが挙げられる。ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、及び、焼成ハイドロタルサイトに分類しうる。
【0037】
未焼成ハイドロタルサイトは、例えば、天然ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)に代表されるような、層状の結晶構造を有する金属水酸化物である。未焼成ハイドロタルサイトは、例えば、基本骨格となる層[Mg1-XaAlXa(OH)2]Xa+と中間層[(CO3)Xa/2・maH2O]Xa-とからなる。ここで、xaは、0<xa<1を満たす数を表し、maは、正の数を表す。別に断らない限り、未焼成ハイドロタルサイトは、合成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト様化合物を包含する概念である。ハイドロタルサイト様化合物としては、例えば、下記式(I)又は下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
[Mi2+
1-xiMi3+
xi(OH)2]xi+・[(Aini-)xi/ni・miH2O]xi- (I)
(式(I)において、
Mi2+は、Mg2+、Zn2+などの、2価の金属イオンを表し、
Mi3+は、Al3+、Fe3+などの、3価の金属イオンを表し、
Aini-は、CO3
2-、Cl-、NO3
-などの、ni価のアニオンを表し、
xiは、0<xi<1を満たす数を表し、
miは、0≦mi<1を満たす数を表し、
niは、正の数を表す。)
【0039】
式(I)において、Mi2+は、好ましくはMg2+を表す。また、Mi3+は、好ましくはAl3+を表す。さらに、Aini-は、好ましくはCO3
2-を表す。
【0040】
Mii2+
xiiAl2(OH)2xii+6-niizii(Aiinii-)zii・miiH2O (II)
(式(II)において、
Mii2+は、Mg2+、Zn2+などの、2価の金属イオンを表し、
Aiinii-は、CO3
2-、Cl-、NO3-などの、nii価のアニオンを表し、
xiiは、2以上の正の数を表し、
ziiは、2以下の正の数を表し、
miiは、正の数を表し、
niiは、正の数を表す。)
【0041】
式(II)において、Mii2+は、好ましくはMg2+を表す。また、Aiinii-は、好ましくはCO3
2-を表す。
【0042】
未焼成ハイドロタルサイトは、封止剤中において、優れた鉛吸着性を発揮できる。よって、例えば、未焼成ハイドロタルサイトと、封止剤中において吸湿性を発揮できる無機フィラーとを適切に組み合わせて用いる場合、上述した範囲の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを有する封止剤を得ることができる。
【0043】
未焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、通常1質量%未満であり、0.8質量%未満又は0.6質量%未満であってもよい。未焼成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイトの「飽和吸水率」は、ハイドロタルサイトを大気圧下、60℃、90%RH(相対湿度)の環境に200時間静置した場合の、初期質量に対する質量増加率をいう。この飽和吸水率は、下記の方法で測定できる。
【0044】
ハイドロタルサイトを天秤にて1.5g秤取して、初期質量を測定する。秤取したハイドロタルサイトを、大気圧下、60℃、90%RH(相対湿度)に設定した小型環境試験器(エスペック社製SH-222)に200時間静置して吸湿させ、吸湿後の質量を測定する。そして、下記式(i)により、飽和吸水率を計算する。
飽和吸水率(質量%)=100×(吸湿後の質量-初期質量)/初期質量 (i)
【0045】
未焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、通常15質量%以上、好ましくは15.1質量%以上、特に好ましくは15.2質量%以上である。
【0046】
未焼成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイトの熱重量減少率は、熱重量分析によって測定できる。熱重量分析は、熱分析装置(TG/DTA EXSTAR6300、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、アルミニウム製のサンプルパンにハイドロタルサイトを5mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、窒素流量200mL/分の雰囲気下、30℃から550℃まで昇温速度10℃/分の条件で行いうる。熱重量減少率は、前記の熱重量分析の結果を用いて、下記式(ii)により計算できる。
熱重量減少率(質量%)=100×(加熱前の質量-所定温度に達した時の質量)/加熱前の質量 (ii)
【0047】
未焼成ハイドロタルサイトの粉末X線回折を測定した場合、通常、2θが8°~18°付近で一つのピークだけを有するか、又は、低角側回折強度と高角側回折強度との相対強度比(低角側回折強度/高角側回折強度)が0.001~1,000の範囲外である。低角側回折強度とは、低角側(2θが小さい側)に現れるピークまたはショルダーの回折強度を表す。高角側回折強度とは、高角側(2θが大きい側)に現れるピークまたはショルダーの回折強度を表す。
【0048】
未焼成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイトの粉末X線回折の測定は、粉末X線回折装置(Empyrean、PANalytical社製)を用いて行いうる。粉末X線回折の測定は、対陰極CuKα(1.5405Å)、電圧:45V、電流:40mA、サンプリング幅:0.0260°、走査速度:0.0657°/s、測定回折角範囲(2θ):5.0131~79.9711°の条件で行いうる。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度:0.50、最小ピークチップ:0.01°、最大ピークチップ:1.00°、ピークベース幅:2.00°、方法:2次微分の最小値」の条件で行いうる。
【0049】
未焼成ハイドロタルサイトの例としては、「アルマカイザー1」(平均粒子径:620nm)、「マグセラー1」(平均粒子径:470nm)、「DHT-4A」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm)、「STABIACE HT-1」、「STABIACE HT-7」、「STABIACE HT-P」(堺化学工業株式会社)等が挙げられる。未焼成ハイドロタルサイトは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0050】
半焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られる、層間水の量が減少または消失した層状の結晶構造を有する金属水酸化物をいう。「層間水」とは、組成式を用いて説明すれば、上述した未焼成の天然ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様化合物の組成式に記載の「H2O」を指す。
【0051】
半焼成ハイドロタルサイトは、封止剤中において、優れた鉛吸着性及び吸湿性を発揮できる。よって、半焼成ハイドロタルサイトを適切に用いる場合、上述した範囲の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを有する封止剤を得ることができる。半焼成ハイドロタルサイトが鉛吸着性を示すことは、本発明者が初めて見い出したことである。
【0052】
半焼成ハイドロタルサイトは、通常、未焼成ハイドロタルサイトと異なる飽和吸水率を有するので、それらは飽和吸水率により区別できる。半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、通常20質量%未満である。半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、未焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率と同じ方法で測定できる。
【0053】
半焼成ハイドロタルサイトは、通常、未焼成ハイドロタルサイトと異なる熱重量減少率を有するので、それらは熱重量減少率により区別できる。半焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、通常15質量%未満、好ましくは14質量%未満、特に好ましくは13質量%未満である。また、半焼成ハイドロタルサイトの380℃における熱重量減少率は、通常12質量%以上、好ましくは15質量%以上、特に好ましくは16質量%以上である。半焼成ハイドロタルサイトの熱重量減少率は、未焼成ハイドロタルサイトの熱重量減少率と同じ方法で測定できる。
【0054】
半焼成ハイドロタルサイトは、通常、粉末X線回折で測定されるピーク及び相対強度比が、未焼成ハイドロタルサイトと異なるので、それらは粉末X線回折で測定されるピーク及び相対強度比により区別できる。半焼成ハイドロタルサイトの粉末X線回折を測定した場合、通常、2θが8°~18°付近に二つにスプリットしたピーク、または二つのピークの合成によりショルダーを有するピークを示し、低角側回折強度と高角側回折強度との相対強度比(低角側回折強度/高角側回折強度)は0.001~1,000である。半焼成ハイドロタルサイトの粉末X線回折の測定は、未焼成ハイドロタルサイトの粉末X線回折の測定と同じ方法で行いうる。
【0055】
半焼成ハイドロタルサイトの例としては、「DHT-4C」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm);「DHT-4A-2」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm);等が挙げられる。半焼成ハイドロタルサイトは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0056】
焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイト又は半焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られ、層間水だけでなく水酸基も縮合脱水によって消失した、アモルファス構造を有する金属酸化物をいう。
【0057】
焼成ハイドロタルサイトは、封止剤中において、優れた鉛吸着性及び吸湿性を発揮できる。よって、焼成ハイドロタルサイトを適切に用いる場合、上述した範囲の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを有する封止剤を得ることができる。焼成ハイドロタルサイトが鉛吸着性を示すことは、本発明者が初めて見い出したことである。
【0058】
焼成ハイドロタルサイトは、通常、未焼成ハイドロタルサイト及び半焼成ハイドロタルサイトと異なる飽和吸水率を有するので、それらは飽和吸水率により区別できる。焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、未焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率と同じ方法で測定できる。
【0059】
焼成ハイドロタルサイトは、通常、未焼成ハイドロタルサイト及び半焼成ハイドロタルサイトと異なる熱重量減少率を有するので、それらは熱重量減少率により区別できる。焼成ハイドロタルサイトの380℃における熱重量減少率は、通常12質量%未満、好ましくは10質量%未満、特に好ましくは7質量%未満である。焼成ハイドロタルサイトの熱重量減少率は、未焼成ハイドロタルサイトの熱重量減少率と同じ方法で測定できる。
【0060】
焼成ハイドロタルサイトは、通常、粉末X線回折で測定されるピーク及び相対強度比が、未焼成ハイドロタルサイト及び半焼成ハイドロタルサイトと異なるので、それらは粉末X線回折で測定されるピーク及び相対強度比により区別できる。焼成ハイドロタルサイトの粉末X線回折を測定した場合、通常、2θが8°~18°の領域に特徴的ピークを有さず、2θが43°に特徴的なピークを有する。焼成ハイドロタルサイトの粉末X線回折の測定は、未焼成ハイドロタルサイトの粉末X線回折の測定と同じ方法で行いうる。
【0061】
焼成ハイドロタルサイトの例としては、「KW-2200」(協和化学工業社製、平均粒子径:400nm)等が挙げられる。焼成ハイドロタルサイトは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(4.2.酸化カルシウム)
無機フィラーの別の例としては、酸化カルシウムが挙げられる。酸化カルシウムは、封止剤中において、優れた鉛吸着性及び吸湿性を発揮できる。よって、酸化カルシウムを適切に用いる場合、上述した範囲の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを有する封止剤を得ることができる。酸化カルシウムが鉛吸着性を示すことは、本発明者が初めて見い出したことである。酸化カルシウムは、他の無機フィラーとの混合物に含まれる状態で用いてもよい。そのような混合物としては、例えば、焼成ドロマイト(酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを含む混合物)が挙げられる。
【0063】
(4.3.ゼオライト)
無機フィラーの更に別の例としては、ゼオライトが挙げられる。ゼオライトは、封止剤中において優れた鉛吸着性を発揮できる。また、ゼオライトは、例えば組成を適切に調整されることにより、封止剤中において優れた吸湿性を発揮できる。よって、ゼオライトを適切に用いる場合、上述した範囲の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを有する封止剤を得ることができる。
【0064】
ゼオライトの吸湿性を高める観点から、ゼオライトは高い親水性を有することが好ましい。ゼオライトの親水性は、例えば、ゼオライトが含むシリカとアルミナとのモル比によって調整できる。ゼオライトの具体的なシリカとアルミナとのモル比(シリカ/アルミナ)は、好ましくは100未満、より好ましくは50未満、さらに好ましくは25未満である。
【0065】
ゼオライトは、通常、細孔を有する。ゼオライトの細孔径は、高い鉛吸着性及び吸湿性が得られるように調整することが好ましい。ゼオライトの細孔径は、好ましくは6Å以下、より好ましくは5Å以下、さらに好ましくは4Å以下である。「Å」は、1.0×10-10mを表す。ゼオライトの細孔径は、ガス吸着法、水銀圧入法によって測定できる。
【0066】
(4.4.その他の無機フィラーの例)
無機フィラーの更に別の例としては、上述した以外の吸湿性金属酸化物が挙げられる。このような吸湿性金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化バリウムなどが挙げられる。吸湿性金属酸化物は、封止剤中において、優れた吸湿性を発揮できる。よって、例えば、吸湿性金属酸化物と、封止剤中において鉛吸着性を発揮できる無機フィラーとを適切に組み合わせて用いる場合、上述した範囲の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを有する封止剤を得ることができる。
【0067】
(4.5.好ましい無機フィラー)
上述した例の中でも、無機フィラーとしては、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、及び、ゼオライトが好ましい。これらは、封止剤中において優れた鉛吸着性及び吸湿性を発揮できるので、封止剤の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを容易に上述した範囲に調整できる。よって、封止剤は、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、及び、ゼオライトからなる群より選ばれる1種類以上の無機フィラーを含むことが好ましい。
【0068】
(4.6.無機フィラーの表面処理)
無機フィラーは、適切な表面処理剤で表面処理したものを用いてもよい。別に断らない限り、表面処理を施されたものも、用語「無機フィラー」に包含する。表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン化合物、シランカップリング剤が挙げられ、高級脂肪酸及びアルキルシラン化合物が好適である。表面処理剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0069】
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの、炭素数18以上の高級脂肪酸が挙げられる。中でも、ステアリン酸が好ましい。
【0070】
アルキルシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n-オクタデシルジメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0071】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの、エポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどの、メルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどの、アミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどの、ウレイド系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルメチルジエトキシシランなどの、ビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどの、スチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどの、アクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどの、イソシアネート系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどの、スルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン;メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;イミダゾールシラン;トリアジンシラン;等を挙げることができる。
【0072】
表面処理剤の量は、無機フィラー及び表面処理剤の種類によって異なりうる。表面処理を施されていない無機フィラー100質量部に対する表面処理に用いられる表面処理剤の量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1.0質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、特に好ましくは6質量部以下である。前記範囲の量の表面処理剤で表面処理を行った場合、凝集を抑制して無機フィラーの表面積を大きくできるので、無機フィラーの鉛吸着性及び吸湿性を発揮し易くできる。
【0073】
無機フィラーの表面処理方法に制限は無く、例えば、無機フィラーと表面処理剤とを混合して表面処理を行ってもよい。特に、無機フィラーとして半焼成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイトを用いる場合、表面処理は、例えば、未処理のハイドロタルサイトを混合機で攪拌しながら、表面処理剤を噴霧して行うことが好ましい。処理温度は、常温が好ましい。また、撹拌は、5分~60分行うことが好ましい。混合機としては、例えば、Vブレンダー、リボンブレンダー、バブルコーンブレンダー等のブレンダー;ヘンシェルミキサー、コンクリートミキサー等のミキサー;ボールミル、カッターミル等のミル;が挙げられる。また、例えば、ハイドロタルサイトを粉砕すると同時に当該ハイドロタルサイトと表面処理剤とを混合することで、表面処理を行ってもよい。
【0074】
(4.7.無機フィラーの粒子径)
無機フィラーの平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは100nm以上、特に好ましくは200nm以上であり、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm未満、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは800nm以下である。特に、無機フィラーとして半焼成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイトを用いる場合、ハイドロタルサイトの平均粒子径は、1nm以上が好ましく、10nm以上が特に好ましく、また、1,000nm以下が好ましく、800nm以下が特に好ましい。さらに、特に無機フィラーとしてゼオライトを用いる場合、ゼオライトの平均粒子径は、100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、また、10μm未満が好ましく、5μm未満が特に好ましい。このような範囲の平均粒子径を有する無機フィラーを用いる場合、封止剤の加工性が良好となり、封止シートを容易に製造できる。
【0075】
無機フィラーの平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒子径分布を体積基準で測定し、その粒子径分布のメディアン径として求めうる。
【0076】
(4.8.無機フィラーの比表面積)
無機フィラーのBET比表面積は、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは5m2/g以上であり、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。特に、無機フィラーが半焼成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイトを含む場合、そのハイドロタルサイトが前記範囲のBET比表面積を有することが好ましい。このような範囲のBET比表面積を有する無機フィラーを用いる場合、封止剤の加工性が良好となり、封止シートを容易に製造できる。
【0077】
無機フィラーのBET比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(Macsorb HM Model 1210、マウンテック社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出できる。
【0078】
(4.9.無機フィラーの量)
封止剤の不揮発成分100質量%に対して、無機フィラーの量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下であり、例えば65質量%以下、60質量%以下であってもよい。無機フィラーの量が、前記範囲の下限値以上である場合、無機フィラーの鉛吸着性及び吸湿性が大きく発揮されるので、封止剤の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを上述した範囲に調整することが容易になる。また、無機フィラーの量が、前記範囲の上限値以下である場合、封止剤の粘度及び濡れ性を良好にできるので、鉛含有部、電極等の封止対象と封止剤との密着性を向上させることができる。よって、封止対象と封止剤との間の間隙の形成を効果的に抑制でき、よって封止性を向上させられるので、水分の浸入及び鉛の漏出を特に効果的に抑制できる。
【0079】
[5.第一実施形態に係る封止剤が含みうる無機フィラー以外の成分の概要]
本発明の第一実施形態に係る封止剤は、上述した無機フィラーに組み合わせて、バインダ樹脂を含む。バインダ樹脂は、塵等の異物の電子デバイスへの進入を抑制する機能、無機フィラーを封止部から離脱しないように保持する機能、鉛吸着部等の封止対象に封止剤を密着させる機能、水分の浸入を抑制する機能、などの機能の一部又は全てを発揮しうる。
【0080】
また、本発明の第一実施形態に係る封止剤は、無機フィラー及びバインダ樹脂に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。バインダ樹脂及び任意の成分の種類及び比率は、無機フィラーの種類及び量、並びに、封止剤に求められる特性に応じて適切に選択しうる。
【0081】
以下、粘着型封止剤、及び、熱硬化型封止剤に適した成分を例に挙げて、バインダ樹脂及び任意の成分について説明する。粘着型封止剤とは、粘着性を示し、圧着によって封止対象を封止できるタイプの封止剤を表す。粘着型封止剤は、通常、常温で比較的短時間圧力を加えるだけで接着が可能であるので、感圧性接着剤として機能できる。また、熱硬化型封止剤とは、封止対象に接触した状態で熱硬化させることにより封止を達成できるタイプの封止剤を表す。ただし、封止剤が含む成分は、以下に説明する例に限定されない。よって、粘着型封止剤に適した例として示した成分を、それ以外の封止剤(例えば、熱硬化型封止剤)に用いてもよい。また、熱硬化型封止剤に適した例として示した成分を、それ以外の封止剤(例えば、粘着型封止剤)に用いてもよい。
【0082】
[6.第一実施形態に係る粘着型封止剤に適した成分の説明]
(6.1.バインダ樹脂としての熱可塑性樹脂)
封止剤が無機フィラーに組み合わせて含みうる成分の例としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、粘着型封止剤のバインダ樹脂として好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0083】
熱可塑性樹脂としては、特に制限は無く、例えば、熱硬化型封止剤に適したバインダ樹脂として後述する熱可塑性樹脂を用いてもよい。中でも、熱可塑性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種類以上を含む無機フィラーと組み合わせた場合に、透明性に優れる封止剤を得ることができる。
【0084】
ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンモノマー由来の骨格を有する樹脂を用いうる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、国際公開2011/62167号、国際公開2013/108731号に記載のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。中でも、国際公開2011/62167号に記載のイソブチレン変性樹脂、及び、国際公開2013/108731号に記載のスチレン-イソブチレン変性樹脂が好ましい。さらに、好ましいポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。また、共重合体としては、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。
【0085】
共重合体としては、2種類以上のオレフィンの共重合体;オレフィンと、非共役ジエン、スチレン等のオレフィン以外のモノマーとの共重合体;が挙げられる。好ましい共重合体の例としては、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン-非共役ジエン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0086】
ポリオレフィン系樹脂は、酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))を有するポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂を用いる場合、封止剤の接着性及び耐湿熱性を向上させることができる。
【0087】
酸無水物基としては、例えば、無水コハク酸に由来する基、無水マレイン酸に由来する基、無水グルタル酸に由来する基、等が挙げられる。酸無水物基の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂は、例えば、酸無水物基を有する不飽和化合物によって、ポリオレフィン系樹脂を、ラジカル反応条件下にてグラフト変性して製造しうる。また、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂は、例えば、酸無水物基を有する不飽和化合物を、オレフィンとラジカル共重合して製造しうる。
【0088】
酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂中の酸無水物基の濃度は、好ましくは0.05mmol/g以上、より好ましくは0.1mmol/g以上であり、好ましくは10mmol/g以下、より好ましくは5mmol/g以下である。酸無水物基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、樹脂1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0089】
ポリオレフィン系樹脂の全量100質量%に対して、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂の量は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは11質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0090】
ポリオレフィン系樹脂は、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を用いる場合、封止剤の接着性及び耐湿熱性を向上させることができる。
【0091】
エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和化合物によって、ポリオレフィン系樹脂を、ラジカル反応条件下にてグラフト変性して製造しうる。ここで、用語「グリシジル(メタ)アクリレート」は、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートの両方を包含する。また、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂は、例えば、エポキシ基を有する不飽和化合物を、オレフィンとラジカル共重合して製造しうる。
【0092】
エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂中のエポキシ基の濃度は、好ましくは0.05mmol/g以上、より好ましくは0.1mmol/g以上であり、好ましくは10mmol/g以下、より好ましくは5mmol/g以下である。エポキシ基濃度は、JIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0093】
ポリオレフィン系樹脂の全量100質量%に対して、エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂の量は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは11質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0094】
ポリオレフィン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。特に、酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂とエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂とを組み合わせて用いることが好ましい。酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂とエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂とを組み合わせて用いる場合、酸無水物基とエポキシ基との反応による架橋構造を形成できるので、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高めることができる。この場合、エポキシ基と酸無水物基とのモル比(エポキシ基:酸無水物基)は、好ましくは100:10~100:400、より好ましくは100:50~100:200、特に好ましくは100:90~100:150である。
【0095】
以下、ポリオレフィン系樹脂の具体例を説明する。
ポリイソブチレン樹脂の具体例としては、BASF社製「オパノールB100」(粘度平均分子量:1,110,000)、BASF社製「B50SF」(粘度平均分子量:400,000)が挙げられる。
【0096】
ポリブテン系樹脂の具体例としては、JXエネルギー社製「HV-1900」(ポリブテン、数平均分子量:2,900)、東邦化学工業社製「HV-300M」(無水マレイン酸変性液状ポリブテン(「HV-300」(数平均分子量:1,400)の変性品)、数平均分子量:2,100、酸無水物基を構成するカルボキシ基の数:3.2個/1分子、酸価:43.4mgKOH/g、酸無水物基濃度:0.77mmol/g)が挙げられる。
【0097】
スチレン-イソブチレン共重合体の具体例としては、カネカ社製「SIBSTAR T102」(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、数平均分子量:100,000、スチレン含量:30質量%)、星光PMC社製「T-YP757B」(無水マレイン酸変性スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:100,000)、星光PMC社製「T-YP766」(グリシジルメタクリレート変性スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:100,000)、星光PMC社製「T-YP8920」(無水マレイン酸変性スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:35,800)、星光PMC社製「T-YP8930」(グリシジルメタクリレート変性スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:48,700)が挙げられる。
【0098】
ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂の具体例としては、三井化学社製「EPT X-3012P」(エチレン-プロピレン-5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、三井化学社製「EPT1070」(エチレン-プロピレン-ジシクロペンタジエン共重合体)、三井化学社製「タフマーA4085」(エチレン-ブテン共重合体)が挙げられる。
【0099】
プロピレン-ブテン系共重合体の具体例としては、星光PMC社製「T-YP341」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)、星光PMC社製「T-YP279」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:36質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:35,000)、星光PMC社製「T-YP276」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:36質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:57,000)、星光PMC社製「T-YP312」(無水マレイン酸変性プロピレン-ブテンランダム共共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、酸無水物基濃度:0.464mmol/g、数平均分子量:60,900)、星光PMC社製「T-YP313」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単位とブテン単位の合計100質量%あたりのブテン単位の量:29質量%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)、星光PMC社製「T-YP429」(無水マレイン酸変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン単位とメチルメタクリレート単位の合計100質量%あたりのメチルメタクリレート単位の量:32質量%、酸無水物基濃度:0.46mmol/g、数平均分子量:2,300)、星光PMC社製「T-YP430」(無水マレイン酸変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン単位とメチルメタクリレート単位の合計100質量%あたりのメチルメタクリレート単位の量:32質量%、酸無水物基濃度:1.18mmol/g、数平均分子量:4,500)、星光PMC社製「T-YP431」(グリシジルメタクリレート変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エポキシ基濃度:0.64mmol/g、数平均分子量:2,400)、星光PMC社製「T-YP432」(グリシジルメタクリレート変性エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エポキシ基濃度:1.63mmol/g、数平均分子量:3,100)が挙げられる。
【0100】
熱可塑性樹脂の数平均分子量は、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましく、10,000以上が更に好ましく、30,000以上が更に好ましく、50,000以上が特に好ましい。このような範囲の数平均分子量を有する熱可塑性樹脂を用いる場合、封止剤のワニスの塗工時のハジキを抑制できるので、水分の浸入を抑制する封止部の能力を効果的に高めたり、封止部の機械的強度を高めたりできる。また、熱可塑性樹脂の数平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましく、700,000以下が更に好ましく、600,000以下が更に好ましく、500,000以下が更に好ましく、450,000以下が更に好ましく400,000、以下が特に好ましい。このような範囲の数平均分子量を有する熱可塑性樹脂を用いる場合、封止剤のワニスの塗工性を向上させたり、熱可塑性樹脂と他の成分との相溶性を向上させたりできる。
【0101】
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算で測定できる。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0102】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、通常は5,000より大きく、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは600,000以下、特に好ましくは500,000以下である。
【0103】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算で測定できる。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0104】
熱可塑性樹脂は、非晶性を有することが好ましい。非晶性とは、樹脂が明確な融点を有しないことを表す。具体的には、非晶性とは、DSC(示差走査熱量測定)で融点を測定した場合に、明確なピークが観察されないことを表す。非晶性を有する熱可塑性樹脂を用いる場合、封止剤のワニスの増粘を抑制できるので、ワニスの流動性を良好にできる。
【0105】
熱可塑性樹脂の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。熱可塑性樹脂の量がこのような範囲にある場合、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高めることができ、また、封止剤の透明性を向上させることができる。さらに、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、熱可塑性樹脂の量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。熱可塑性樹脂の量がこのような範囲にある場合、封止剤のワニスの塗工性及び相溶性が向上するので、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高めたり、封止剤の取り扱い性の向上(例えば、タックの抑制)を達成したりできる。
【0106】
熱可塑性樹脂の量は、無機フィラー100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上であり、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、特に好ましくは150質量部以下である。特に、熱可塑性樹脂が酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂を含む場合、その酸無水物基を有するポリオレフィン系樹脂の量は、無機フィラー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、特に好ましくは23質量部以下である。また、熱可塑性樹脂がエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂を含む場合、そのエポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂の量は、無機フィラー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは28質量部以下、特に好ましくは26質量部以下である。特に、無機フィラーが半焼成ハイドロタルサイトである場合に、その半焼成ハイドロタルサイトと熱可塑性樹脂との質量比が前記の要件を満たすことが望ましい。このような量で熱可塑性樹脂を用いた場合、封止剤が、水分の浸入及び鉛の漏出を特に効果的に抑制できる。
【0107】
(6.2.粘着付与剤)
封止剤が無機フィラーに組み合わせて含みうる成分の例としては、粘着付与剤が挙げられる。粘着付与剤は、可塑性樹脂と組み合わせて用いた場合に封止剤の粘着性を向上させうる化合物であり、「タッキファイヤー」とも呼ばれる。粘着付与剤は、粘着型封止剤に好適であり、よって熱可塑性樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。粘着付与剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0108】
粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等)、クマロン樹脂、インデン樹脂、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、水添炭化水素石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂およびその水素化物等)が挙げられる。
【0109】
前記の例の中でも、封止剤の接着性、水分の浸入を抑制する能力、透明性等の観点から、石油樹脂が好ましい。石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、水添炭化水素石油樹脂等が挙げられる。接着性、水分の浸入を抑制する能力、及び相溶性の観点から、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂、水添炭化水素石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂及びその水素化物がより好ましい。また、透明性の観点から、水添炭化水素石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物が特に好ましい。
【0110】
水添炭化水素石油樹脂としては、芳香族系石油樹脂を水素添加処理したものを用いてもよい。この場合、水添炭化水素石油樹脂の水素化率は、30%~99%が好ましく、40%~97%がより好ましく、50%~90%がさらに好ましい。前記範囲の水素化率を有する水添炭化水素石油樹脂は、着色が小さく、透明性に優れ、且つ、低い生産コストでの製造が可能である。水素化率は、水添前と水素添加後の芳香環の水素の1H-NMRのピーク強度の比から求めることができる。
【0111】
水添炭化水素石油樹脂としては、特に、シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂、ジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂が好ましい。
【0112】
以下、石油樹脂の具体例を説明する。
テルペン樹脂としては、例えば、YSレジンPX1000、YSレジンPX1150,YSレジンPX1150N、YSレジンPX1250、YSレジンTH130、YSレジンTR105(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
芳香族変性テルペン樹脂としては、例えば、YSレジンTO85、YSレジンTO105、YSレジンTO115、YSレジンTO125(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
水素添加テルペン樹脂としては、例えば、クリアロンP、クリアロンM、クリアロンKシリーズ(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
テルペンフェノール共重合樹脂としては、例えば、YSポリスター2000、ポリスターU、ポリスターT、ポリスターS、マイティエースG(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
液状樹脂としては、例えば、YSレジンLP、YSレジンCP(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
炭化水素樹脂としては、例えば、T-REZ RB093、T-REZ RC100、T-REZ RC115、T-REZ RC093,T-REZ RE100(いずれもJXTGエネルギー社製);ペトロタック60、ペトロタック70、ペトロタック 90、ペトロタック90HS、ペトロタック 90V、ペトロタック100V、(いずれも東ソー社製)等が挙げられる。
水添炭化水素石油樹脂としては、例えば、Escorez5300シリーズ、5600シリーズ(いずれもエクソンモービル社製);T-REZ OP501、T-REZ PR801、T-REZ PR803、T-REZ HA085、T-REZ HA103、T-REZ HA105、T-REZ HA125、T-REZ HB103、T-REZ HB125、(いずれも水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂、JXTGエネルギー社製);Quintone1325、Quintone1345(いずれも日本ゼオン社製);アイマーブS-100、アイマーブS-110、アイマーブP-100、アイマーブP-125、アイマーブP-140(いずれも水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂、出光興産社製)等が挙げられる。
芳香族系石油樹脂としては、例えば、ENDEX155(イーストマン社製);ネオポリマー L-90、ネオポリマー120、ネオポリマー130、ネオポリマー140、ネオポリマー150、ネオポリマー170S、ネオポリマー160、ネオポリマー E-100,ネオポリマー E-130,ネオポリマー M-1、ネオポリマー S,ネオポリマー S100、ネオポリマー 120S,ネオポリマー 130S、ネオポリマー EP-140(いずれもJXTGエネルギー社製)、ペトコール LX、ペトコール 120、ペトコール130、ペトコール140(いずれも東ソー社製)等が挙げられる。
脂肪族芳香族共重合系石油樹脂としては、例えば、QuintoneD100(日本ゼオン社製)、T-REZ RD104、T-REZ PR802(JXTGエネルギー社製)等が挙げられる。
シクロヘキサン環含有水素化石油樹脂としては、例えば、アルコン P-90、アルコン P-100、アルコン P-115、アルコンP-125、アルコン P-140、アルコン M-90、アルコン M-100、アルコン M-115、アルコン M-135(いずれも荒川化学社製)等が挙げられる。
シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂としては、例えば、TFS13-030(荒川化学社製)等が挙げられる。
超淡色ロジン樹脂としては、例えば、パインクリスタル ME-H、パインクリスタルME-D、パインクリスタル ME-G、パインクリスタル KR-85、パインクリスタル KE-311、パインクリスタル KE-359、パインクリスタル D-6011、パインクリスタル PE-590、パインクリスタル KE-604、パインクリスタル PR-580(いずれも荒川化学社製)等が挙げられる。
【0113】
粘着付与剤の数平均分子量は、100~2,000が好ましく、700~1,500がより好ましく、500~1,000がさらに好ましい。
【0114】
粘着付与剤の軟化点は、50℃~200℃が好ましく、90℃~180℃がより好ましく、100℃~150℃がさらに好ましい。軟化点は、JIS K2207に従い環球法により測定しうる。このような軟化点を有する粘着付与剤を用いる場合、封止剤による封止シートを用いた封止を容易にでき、また、封止剤の耐熱性を高めることができる。
【0115】
粘着付与剤の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。粘着付与剤の量がこのような範囲にある場合、封止剤の接着性を効果的に高めることができる。また、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、粘着付与剤の量は、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましい。粘着付与剤の量がこのような範囲にある場合、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高くできる。
【0116】
(6.3.架橋剤および架橋促進剤)
封止剤が無機フィラーに組み合わせて含みうる成分の例としては、架橋剤及び架橋促進剤が挙げられる。架橋剤及び架橋促進剤は、他の成分が有する反応性基と反応して、架橋構造を形成しうる。例えば、熱可塑性樹脂が酸無水物基及びエポキシ基等の反応性基を有する場合、架橋剤及び架橋促進剤は、その反応性基と反応して架橋構造を形成しうる。ただし、架橋剤及び架橋促進剤には、上述した熱可塑性樹脂及び粘着付与剤は含めない。架橋剤及び架橋促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0117】
架橋剤及び架橋促進剤としては、例えば、アミン系化合物、グアニジン系化合物、イミダゾール系化合物、ホスホニウム系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。
【0118】
アミン系化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-ギ酸塩、DBU-フェノールノボラック樹脂塩等のジアザビシクロ化合物;ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール等の3級アミンおよびそれらの塩;芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア、芳香族ジメチルウレア等のジメチルウレア化合物;等が挙げられる。
【0119】
グアニジン系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0120】
イミダゾール系化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチルー2-エチル-4-メチル-イミダゾール、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)-イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-イミダゾール、2-ドデシル-イミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチル-イミダゾール等が挙げられる。
【0121】
ホスホニウム系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
【0122】
フェノール系化合物の種類は、例えば、MEH-7700、MEH-7810、MEH-7851(明和化成社製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬社製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成社製)、TD2090(DIC社製)等が挙げられる。特に、トリアジン骨格含有フェノール系化合物の具体例としては、LA3018(DIC社製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノールノボラック化合物の具体例としては、LA7052、LA7054、LA1356(DIC社製)等が挙げられる。
【0123】
架橋剤としては、例えば、酸無水物基と反応し得る官能基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物基と反応し得る官能基としては、例えば、水酸基、1級または2級のアミノ基、チオール基、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられ、エポキシ基が好ましい。酸無水物基と反応し得る官能基を有する樹脂としては、例えば、国際公開第2017/057708号に記載の樹脂を用いうる。
【0124】
架橋剤としては、例えば、エポキシ基と反応し得る官能基を有する樹脂が挙げられる。エポキシ基と反応し得る官能基としては、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基および酸無水物基等が挙げられ、酸無水物基が好ましい。酸無水物基としては、例えば、無水コハク酸に由来する基、無水マレイン酸に由来する基、無水グルタル酸に由来する基等が挙げられる。エポキシ基と反応し得る官能基を有する樹脂としては、例えば、国際公開第2017/057708号に記載の樹脂を用いうる。
【0125】
また、後述する硬化剤の中に、封止剤が含む成分が有する反応性基と反応できるものがあれば、その硬化剤を架橋剤又は架橋促進剤として用いてもよい。
【0126】
架橋剤及び架橋促進剤の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が特に好ましい。架橋剤及び架橋促進剤の量がこのような範囲にある場合、封止剤の取り扱い性の向上(例えば、タックの抑制)ができる。また、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、架橋剤及び架橋促進剤の量は、5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましい。架橋剤及び架橋促進剤の量がこのような範囲にある場合、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高めることができる。
【0127】
(6.4.粘着型封止剤に適したその他の成分)
封止剤が含みうる成分のうち、粘着型封止剤に適した成分の例としては、可塑剤が挙げられる。可塑剤により、封止剤の柔軟性及び成形性を向上させることができる。可塑剤としては、室温(25℃)で液状の材料が好ましい。可塑剤の例としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ワセリン等の鉱物油、ヒマシ油、綿実油、菜種油、大豆油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油等の植物油、液状ポリブテン、水添液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン等の液状ポリαオレフィン化合物等が挙げられる。可塑剤の重量平均分子量は、接着性の観点から、好ましくは500~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000である。可塑剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。可塑剤の量は、封止剤中の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以下が好ましい。
【0128】
封止剤が含みうる成分のうち、粘着型封止剤に適した成分の例としては、上述した以外の樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等);ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填剤;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコン系、フッ素系、高分子系の消泡剤またはレベリング剤;トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤;酸化防止剤;等を挙げることができる。さらに、熱硬化型封止剤が含みうる成分として後述する成分を、粘着型封止剤が含んでいてもよい。
【0129】
[7.第一実施形態に係る熱硬化型封止剤に適した成分の説明]
(7.1.バインダ樹脂としての熱硬化性樹脂)
封止剤が無機フィラーに組み合わせて含みうる成分の例としては、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、熱硬化型封止剤のバインダ樹脂として好ましい。熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0130】
熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等が挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、半焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種類以上を含む無機フィラーと組み合わせた場合に、透明性に優れる封止剤を得ることができる。
【0131】
エポキシ樹脂は、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂の例としては、水素添加エポキシ樹脂(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、およびアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体等が挙げられる。
【0132】
エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂を用いてもよく、固体状エポキシ樹脂を用いてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いてもよい。「液状エポキシ樹脂」とは、常温(25℃)および常圧(1atm)で液状のエポキシ樹脂を表す。また、「固体状エポキシ樹脂」とは、常温(25℃)および常圧(1atm)で固体状のエポキシ樹脂を表す。塗工性、加工性及び接着性の観点から、エポキシ樹脂全体の10質量%以上が液状エポキシ樹脂であることが好ましい。また、無機フィラーとの混練性およびワニス粘度の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることが特に好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、1:2~1:0が好ましく、1:1.5~1:0がより好ましい。
【0133】
エポキシ樹脂としては、水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、及び、アルキルフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。中でも、水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、及び、環状脂肪族型エポキシ樹脂がより好ましい。これらのエポキシ樹脂を用いる場合、封止剤の透明性を高めることができる。
【0134】
「水素添加エポキシ樹脂」とは、芳香環含有エポキシ樹脂を水素添加して得られるエポキシ樹脂を意味する。水素添加エポキシ樹脂の水添化率は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。水素添加エポキシ樹脂としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、液状水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8000」(三菱ケミカル社製、エポキシ当量:約205)、「デナコールEX-252」(ナガセケムテックス社製、エポキシ当量:約213))、固体状水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8040」(三菱ケミカル社製、エポキシ当量:約1000))が挙げられる。
【0135】
フッ素含有エポキシ樹脂としては、例えば、国際公開第2011/089947号に記載のフッ素含有エポキシ樹脂が挙げられる。
【0136】
「鎖状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、直鎖状または分岐状のアルキル鎖、またはアルキルエーテル鎖を持つエポキシ樹脂を意味する。鎖状脂肪族型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-512」、「デナコールEX-521」、ナガセケムテックス社製)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-411」、ナガセケムテックス社製)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-421」、ナガセケムテックス社製)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-313」、「デナコールEX-314」、ナガセケムテックス社製)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-321」、ナガセケムテックス社製)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-211」、ナガセケムテックス社製)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-212」、ナガセケムテックス社製)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-810」、「デナコールEX-811」、ナガセケムテックス社製)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-850」、「デナコールEX-851」、ナガセケムテックス社製)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-821」、「デナコールEX-830」、「デナコールEX-832」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-861」、ナガセケムテックス社製)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-911」、ナガセケムテックス社製)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-941」、「デナコールルEX-920」、「デナコールEX-931」、ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0137】
「環状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、分子内に環状脂肪族骨格(例えばシクロアルカン骨格)を有するエポキシ樹脂を意味する。環状脂肪族型エポキシ樹脂としては、例えば、ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」、日鉄ケミカル&マテリアル社製「TOPR-300」、等が挙げられる。
【0138】
「アルキルフェノール型エポキシ樹脂」とは、置換基として1以上のアルキル基および1以上のヒドロキシ基を有するベンゼン環骨格を有し、前記ヒドロキシ基がグリシジルエーテル基に変換されているエポキシ樹脂を意味する。アルキルフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製「HP-820」;新日鉄住金化学工業社製「YDC-1312」;ナガセケムテックス社製「EX-146」等が挙げられる。
【0139】
一態様において、熱硬化性樹脂は、芳香環含有エポキシ樹脂を含むことが好ましい。芳香環含有エポキシ樹脂とは、分子内に芳香環を含有するエポキシ樹脂を表す。芳香環含有エポキシ樹脂を用いると、封止剤の反応性、硬化後の封止剤のガラス転移温度、密着性のいずれかまたは全てが向上する傾向がある。芳香環含有エポキシ樹脂としては、例えば、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0140】
芳香環含有エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂が挙げられる。中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びフッ素含有芳香族型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が更に好ましい。
【0141】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「828EL」、「1001」および「1004AF」;DIC社製「840」および「850-S」;新日鉄住金化学工業社製「YD-128」等が挙げられる。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物としては、例えば、新日鐵化学工業社製「ZX-1059」(エポキシ当量:約165)が挙げられる。
【0142】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「807」;DIC社製「830」;新日鉄住金化学工業社製「YDF-170」等が挙げられる。
【0143】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製「N-730A」、「N-740」、「N-770」および「N-775」;三菱ケミカル社製「152」および「154」等が挙げられる。
【0144】
「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」とは、ノボラック構造および2価のビフェニル構造が結合した主鎖を持つエポキシ樹脂を意味する。ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬社製「NC-3000」、「NC-3000L」および「NC-3100」等が挙げられる。
【0145】
「フルオレン型エポキシ樹脂」とは、フルオレン骨格を持つエポキシ樹脂を意味する。フルオレン型エポキシ樹としては、例えば、大阪ガスケミカル社製「OGSOL PG-100」、「CG-500EG-200」および「EG-280」等が挙げられる。
【0146】
「フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂」とは、芳香環を有するフッ素含有エポキシ樹脂を意味する。フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂としては、例えば、国際公開第2011/089947号に記載のフッ素含有芳香族型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0147】
芳香環含有エポキシ樹脂は、一般に、高い屈折率を有する。よって、樹脂と無機フィラーとの屈折率を近づけて封止剤の透明性を高める観点から、芳香環含有エポキシ樹脂と芳香環構造を含まないエポキシ樹脂とを組み合わせて、エポキシ樹脂全体の屈折率を調整してもよい。芳香環構造を含まないエポキシ樹脂のうち、芳香環含有エポキシ樹脂と組み合わせるのに適した例としては、水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、及び、環状脂肪族型エポキシ樹脂が挙げられる。中でも、水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、及び、環状脂肪族型エポキシ樹脂が好ましい。さらには、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、フッ素含有エポキシ樹脂が好ましく、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂が更に好ましく、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。この際、芳香環含有エポキシ樹脂と芳香環構造を含まないエポキシ樹脂との合計100質量%に対して、芳香環含有エポキシ樹脂の量は、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%~35質量%がより好ましく、2質量%~30質量%が特に好ましい。
【0148】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、反応性の観点から、好ましくは50~5,000、より好ましくは50~3,000、さらに好ましくは80~2,000、特に好ましくは100~1,500である。「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定されうる。
【0149】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0150】
熱硬化性樹脂の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。
【0151】
熱硬化性樹脂の量は、無機フィラー100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、特に好ましくは160質量部以上であり、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、特に好ましくは200質量部以下である。
【0152】
(7.2.バインダ樹脂としての熱可塑性樹脂)
熱硬化型封止剤は、バインダ樹脂として、熱硬化性樹脂に組み合わせて熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。バインダ樹脂が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを組み合わせて含む場合、封止剤の可撓性の向上、封止剤のワニスの塗工性(はじき抑制)の向上が可能である。熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0153】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等を挙げることができる。ここで、用語「(メタ)アクリル系樹脂」は、アクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂の両方を包含する。熱硬化性樹脂に組み合わせる熱可塑性樹脂として、粘着型封止剤に適したバインダ樹脂として上述した熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0154】
熱硬化性樹脂に組み合わせる熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂は、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性が良い。また、フェノキシ樹脂を用いる場合、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高めることができる。フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、およびノルボルネン骨格から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。
【0155】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、YX7200B35(三菱ケミカル社製:ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂)、1256(三菱ケミカル社製:ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、YX6954BH35(三菱ケミカル社製:ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)等が挙げられる。
【0156】
熱硬化性樹脂に組み合わせる熱可塑性樹脂の重量平均分子量の範囲は、粘着型封止剤に適したバインダ樹脂として上述した熱可塑性樹脂の重量平均分子量と同じ範囲でありうる。このような範囲の重量平均分子量を有する熱可塑性樹脂は、封止剤の可撓性、封止剤のワニスの塗工性(はじき抑制)、及び、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との相溶性を、いずれも向上させることができる。中でも、特にフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000である。重量平均分子量の測定方法は、上述した通りである。
【0157】
熱硬化性樹脂に組み合わせる熱可塑性樹脂の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0158】
熱硬化性樹脂に組み合わせる熱可塑性樹脂の量は、無機フィラー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上であり、好ましくは90質量部以下、より好ましくは70質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。
【0159】
熱硬化性樹脂に組み合わせる熱可塑性樹脂の量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上であり、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。
【0160】
(7.3.硬化剤及び硬化促進剤)
封止剤が無機フィラーに組み合わせて含みうる成分の例としては、硬化剤が挙げられる。硬化剤は、熱硬化性樹脂と組み合わせて用いた場合に、熱硬化性樹脂と反応して封止剤を硬化させる機能を有する。封止剤の硬化時における電子デバイスの熱劣化を抑制する観点から、硬化剤としては、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度で熱硬化性樹脂と反応しうるものが好ましい。硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0161】
硬化剤の種類は、熱硬化性樹脂の種類に応じて選択しうる。以下、好ましい熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂に対応した硬化剤について説明する。エポキシ樹脂に対応した硬化剤としては、例えば、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、アミンアダクト化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、有機ホスフィン化合物、ジシアンジアミド化合物、1級・2級アミン系化合物等が挙げられる。中でも、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物及びアミンアダクト化合物が好ましい。さらには、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、及びジメチルウレア化合物がより好ましい。
【0162】
封止剤は、硬化剤に組み合わせて、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤は、1種のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。硬化促進剤の種類は、熱硬化性樹脂の種類に応じて選択しうる。以下、好ましい熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂に対応した硬化促進剤について説明する。エポキシ樹脂に対応した硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、およびアミンアダクト化合物等が挙げられる。中でも、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、およびジメチルウレア化合物が好ましい。
【0163】
硬化剤としてのイオン液体は、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下で熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)を硬化し得るイオン液体が好ましい。すなわち、イオン液体は、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度領域で融解しうる塩であって、熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)の硬化作用を有する塩が好ましい。イオン液体は、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)に均一に溶解している状態で使用されることが好ましい。イオン液体は、通常、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高めることができる。
【0164】
硬化剤としてのイオン液体を構成するカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキシルホスホニウムイオン等)等のホスホニウム系カチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウム系カチオン等が挙げられる。
【0165】
硬化剤としてのイオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン;メタンスルホン酸イオン等のアルキル硫酸系アニオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン;フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン;アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン;グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン;N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオン等の下記式(A)で示されるN-アシルアミノ酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0166】
【0167】
式(A)において、RAは、炭素数1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基、或いは、置換または無置換のフェニル基を表し、XAは、アミノ酸の側鎖を表す。式(A)におけるアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、フェニルアラニン等が挙げられ、中でも、グリシンが好ましい。
【0168】
上述した中でも、カチオンは、アンモニウム系カチオン及びホスホニウム系カチオンが好ましく、イミダゾリウムイオン及びホスホニウムイオンがより好ましい。イミダゾリウムイオンとしては、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
【0169】
また、アニオンは、フェノール系アニオン、式(A)で示されるN-アシルアミノ酸イオン、及び、カルボン酸系アニオンが好ましく、N-アシルアミノ酸イオン及びカルボン酸系アニオンがより好ましい。
【0170】
フェノール系アニオンの具体例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオンが挙げられる。
カルボン酸系アニオンの具体例としては、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン等が挙げられ、中でも、酢酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオンが好ましく、酢酸イオン、デカン酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、ギ酸イオンが更に好ましい。
式(A)で示されるN-アシルアミノ酸イオンの具体例としては、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、アスパラギン酸イオン、グリシンイオン、N-アセチルグリシンイオン等が挙げられ、中でも、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオンが好ましく、N-アセチルグリシンイオンが更に好ましい。
【0171】
イオン液体としては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム-2-ピロリドン-5-カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα-リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N-メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル-DL-アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L-アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)塩、N-アセチルグリシン1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が好ましく、テトラブチルホスホニウムデカノエート、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が更に好ましい。
【0172】
イオン液体の合成法としては、例えば、アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルアンモニウム及びアルキルスルホニウムイオン等のカチオン部位と、ハロゲンを含むアニオン部位とから構成される前駆体に、NaBF4、NaPF6、CF3SO3Na、LiN(SO2CF3)2等を反応させるアニオン交換法が挙げられる。また、イオン液体の別の合成法としては、例えば、アミン系物質と酸エステルとを反応させてアルキル基を導入しつつ、有機酸残基が対アニオンになるような酸エステル法が挙げられる。さらに、イオン液体の別の合成法としては、例えば、アミン類を有機酸で中和して塩を得る中和法が挙げられる。アニオンとカチオンと溶媒による中和法では、アニオンとカチオンとを等量使用し、得られた反応液中の溶媒を留去して、そのまま用いてもよい。又は、得られた反応液と有機溶媒(メタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等)とを混合した後で、濃縮して用いてもよい。
【0173】
硬化剤としての酸無水物化合物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。酸無水物化合物の具体例としては、リカシッドTH、TH-1A、HH、MH、MH-700、MH-700G(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0174】
硬化剤又は硬化促進剤としてのイミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチル-イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)-イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-イミダゾール、2-ドデシル-イミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0175】
硬化剤又は硬化促進剤としての3級アミン系化合物の具体例としては、DBN(1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene)、DBU(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)、DBUの2-エチルヘキサン酸塩、DBUのフェノール塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、U-CAT SA 102(サンアプロ社製:DBUのオクチル酸塩)、DBUのギ酸塩等のDBU-有機酸塩、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)などが挙げられる。
【0176】
硬化剤又は硬化促進剤としてのジメチルウレア化合物の具体例としては、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア;U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましい。
【0177】
硬化剤又は硬化促進剤としてのアミンアダクト化合物としては、例えば、エポキシ樹脂への3級アミンの付加反応を途中で止めることによって得られるエポキシアダクト化合物等が挙げられる。アミンアダクト系化合物の具体例としては、アミキュアPN-23、アミキュアMY-24、アミキュアPN-D、アミキュアMY-D、アミキュアPN-H、アミキュアMY-H、アミキュアPN-31、アミキュアPN-40、アミキュアPN-40J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0178】
硬化剤としての有機酸ジヒドラジド化合物の具体例としては、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアLDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0179】
硬化剤又は硬化促進剤としての有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0180】
硬化剤としてのジシアンジアミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。ジシアンジアミド化合物の具体例としては、ジシアンジアミド微粉砕品であるDICY7、DICY15(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0181】
硬化剤としての1級・2級アミン系化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジプロプレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族アミン;N-アミノエチルピベラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等の脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン等の芳香族アミン;が挙げられる。1級・2級アミン系化合物の具体例としては、カヤハードA-A(日本化薬社製:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン)等が挙げられる。
【0182】
また、前述した架橋剤及び架橋促進剤の中に、熱硬化性樹脂と反応して封止剤を硬化させうるものがあれば、その架橋剤及び架橋促進剤を硬化剤として用いてもよい。
【0183】
硬化剤と硬化促進剤とは組み合わせて使用することが好ましい。硬化剤及び硬化促進剤の好ましい組み合わせとして、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、およびアミンアダクト化合物から選ばれる2種類以上が挙げられる。
【0184】
硬化剤の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、0.1質量%~40質量%が好ましく、0.5質量%~38質量部がより好ましく、1質量%~35質量部がさらに好ましい。硬化剤の量が前記範囲の下限値以上である場合、封止剤の硬化を充分に進行させることができる。また、硬化剤の量が前記範囲の上限値以下である場合、封止剤の保存安定性を高めることができる。特に、硬化剤としてのイオン液体の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。イオン液体の量が前記範囲にある場合、水分の浸入を抑制する封止剤の能力を効果的に高めることができる。
【0185】
硬化促進剤の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、0.05質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~8質量%がより好ましく、0.5質量%~5質量%がさらに好ましい。硬化促進剤の量が前記範囲の下限値以上である場合、封止剤の硬化を速やかに進行させることができる。また、硬化促進剤の量が前記範囲の上限値以下である場合、封止剤の保存安定性を高めることができる。
【0186】
(7.4.熱硬化型封止剤に適したその他の成分)
封止剤が含みうる成分のうち、熱硬化型封止剤に適した成分の例としては、カップリング剤が挙げられる。封止剤がカップリング剤を含む場合、無機フィラーの凝集が抑制されて無機フィラーの表面積を大きくできるので、無機フィラーの鉛吸着性及び吸湿性を発揮し易くできる。カップリング剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0187】
カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤が挙げられる。
【0188】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらの中でも、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく、エポキシ系シランカップリング剤が特に好ましい。
【0189】
アルミネートカップリング剤としては、例えば、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(例えば、「プレンアクトAL-M」味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
【0190】
チタネート系カップリング剤の具体例としては、プレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0191】
カップリング剤の量は、封止剤の不揮発成分100質量%に対して、0質量%~15質量%が好ましく、0.5質量%~10質量%がより好ましい。
【0192】
カップリング剤の量は、無機フィラー100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0193】
封止剤が含みうる成分のうち、熱硬化型封止剤に適した成分の例としては、ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填材;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤またはレベリング剤;トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤;等を挙げることができる。さらに、粘着型封止剤が含みうる成分として上述した成分を、熱硬化型封止剤が含んでいてもよい。
【0194】
[8.第一実施形態に係る封止剤の透明性]
本発明の第一実施形態に係る封止剤は、高い透明性を有することが好ましい。封止剤の透明性は、D65光に対する平行線透過率で表しうる。具体的には、厚さ20μmの封止剤の層の平行線透過率は、好ましくは80%~100%であり、より好ましくは85%~100%である。封止剤の平行線透過率は、ガラス板上に封止剤を積層した積層体を形成し、空気をリファレンスとすることによって算出される。平行線透過率は、具体的には、下記の方法によって測定できる。
【0195】
厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを用意する。この封止シートを、長さ70mm及び幅25mmにカットし、その封止用シートをガラス板(長さ76mm、幅26mmおよび厚さ1.2mmのマイクロスライドガラス、松浪ガラス工業社製白スライドグラスS1112 縁磨No.2)にバッチ式真空ラミネーター(ニチゴー・モートン社製、V-160)を用いてラミネートして、積層体を得る。ラミネート条件は、温度80℃、減圧時間30秒の後、圧力0.3MPaにて30秒加圧とする。熱硬化型封止剤の場合は、この積層体を、熱循環式オーブンで100℃60分間加熱し、サンプルを得る。スガ試験機社製ヘーズメーター HZ-V3(ハロゲンランプ)を用いて、空気をリファレンスとして、D65光にて、サンプルの平行線透過率(%)を測定する。
【0196】
[9.第二実施形態に係る封止剤]
本発明の第二実施形態に係る封止剤は、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種類以上を含む無機フィラーと、バインダ樹脂とを含む。半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムが、封止剤中において、優れた鉛吸着性及び吸湿性を発揮できるので、その封止剤は、鉛含有部を備える電子デバイスの封止用途に用いた場合に、鉛含有部への水分の浸入を抑制でき、且つ、鉛含有部から電子デバイスの外部への鉛の漏出を抑制できる。
【0197】
本発明の第二実施形態に係る封止剤は、上述した範囲の鉛吸着性パラメータ及び水蒸気浸入バリア性パラメータを、有してもよく、有さなくてもよい。また、本発明の第二実施形態に係る封止剤は、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種類以上の無機フィラーを含む。以上の事項以外は、本発明の第二実施形態に係る封止剤は、第一実施形態に係る封止剤と同じ組成及び物性を有しうるので、第一実施形態に係る封止剤と同じ利点を得ることができる。
【0198】
[10.封止剤の製造方法]
封止剤の製造方法は、特に制限されない。封止剤は、配合成分を、混練ローラー及び回転ミキサー等の混合装置を用いて混合する方法により、製造できる。また、前記の混合の際、配合成分に組み合わせて、溶媒を混合してもよい。
【0199】
[11.封止剤の用途]
封止剤は、封止用途に用いた場合に、水分の浸入を抑制でき、且つ、鉛の漏出を抑制できる。よって、鉛含有部を備える電子デバイスの封止に用いることが好ましい。このような電子デバイスの種類に制限は無い。電子デバイスとしては、例えば、ペロブスカイト型太陽電池等の太陽電池;鉛蓄電池等の二次電池;有鉛ハンダを含む電子部品;などが挙げられる。
【0200】
[12.封止シート]
(12.1.封止シートの構成)
本発明の一実施形態に係る封止シートは、支持体と、この支持体上に形成され前記封止剤の層とを備える。封止剤の層は、封止剤で形成された層であるので、上述した封止剤を含む。このような封止シートは、封止剤の層が封止対象に接するようにラミネートされることにより、前記封止剤による封止対象の封止を達成することができる。通常、ラミネートは、封止対象と封止剤の層とが直接に接するように行われる。2つの部材が「直接」に接するとは、それらの部材の間に他の部材が無いことをいう。
【0201】
封止剤の層の厚みは、封止対象に応じて設定しうる。封止剤の層の具体的な厚さは、通常3μm~200μm、好ましくは5μm~175μm、さらに好ましくは5μm~150μmの範囲である。封止剤の層の厚さが、前記範囲の下限値以上である場合、封止シートとのラミネートによる封止対象へのダメージを抑制したり、ラミネート後に封止剤の層として得られる封止部の厚さの均一性を高くできる。また、封止剤の層の厚さが、前記範囲の上限値以下である場合、電子デバイスへの水分の浸入を効果的に抑制できる。例えば、第一基材及び第二基材を備えるペロブスカイト型太陽電池では、封止剤の層としての封止部が薄いほど、外気と封止部とが接する側部の面積を小さくできるので、水分の浸入を効果的に抑制できる(後述する
図4参照)。
【0202】
支持体としては、通常、適切な材料で形成されたフィルムを用いる。支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルム;アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔;などが挙げられる。また、金属箔とプラスチックフィルムとをラミネートした複合フィルムを支持体として用いてもよい。
【0203】
支持体は、耐透湿性を高める観点から、バリア層を備えていてもよい。特に、支持体がプラスチックフィルムを備える場合、そのプラスチックフィルムに組み合わせて適切なバリア層を備える支持体を用いることが好ましい。バリア層の材料としては、例えば、無機物が挙げられる。このような無機物としては、例えば、窒化ケイ素、SiCN等の窒化物;酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の酸化物;アモルファスシリコン;ステンレス、アルミニウムの金属;などが挙げられる。バリア層は、例えば、前記の材料を蒸着することによって形成できる。
【0204】
支持体には、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、マット処理、コロナ処理、離型処理等が挙げられる。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。
【0205】
支持体の具体例としては、アルミニウム箔付きポリエチレンテレフタレートフィルムの市販品として、東海東洋アルミ販売社製「PETツキAL1N30」、福田金属社製「PETツキAL3025」、パナック社製「アルペット」等が挙げられる。支持体の別の具体例としては、テックバリアHX、AX、LX、Lシリーズ(三菱樹脂社製);該テックバリアHX、AX、LX、Lシリーズよりもさらに防湿効果を高めたX-BARRIER(三菱樹脂社製);等が挙げられる。
【0206】
支持体の厚さは、特に限定されないが、取扱い性等の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは125μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0207】
封止シートは、必要に応じて、保護フィルムを備えていてもよい。例えば、封止シートは、支持体、封止剤の層、及び、保護フィルムをこの順で備えることにより、保護フィルムによって封止剤の層を保護してもよい。保護フィルムで保護することにより、封止剤の層の表面へのゴミの付着及び傷付きを抑制できる。
【0208】
保護フィルムとしては、例えば、支持体と同様のプラスチックフィルムを用いうる。保護フィルムには、支持体と同じく、表面処理が施されていてもよい。保護フィルムの厚さは、特に制限されず、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常150μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下でありうる。
【0209】
(12.2.封止シートの製造方法)
前記の封止シートは、支持体上に封止剤の層を形成することを含む製造方法によって、製造できる。封止剤の層は、例えば、封止剤及び溶媒を含むワニスを用意することと、このワニスを支持体上に塗布することと、塗布されたワニスを乾燥させることと、を含む方法によって形成しうる。
【0210】
溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒;ソルベントナフサ等の芳香族系混合溶媒;が挙げられる。芳香族系混合溶媒としては、例えば、「スワゾール」(丸善石油社製、商品名)、「イプゾール」(出光興産社製、商品名)が挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0211】
ワニスの乾燥は、例えば、加熱法、熱風吹き付け法などを用いうる。乾燥条件は、特に制限はなく、温度は、例えば50℃~100℃でありうる。また、乾燥時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは15分以下である。支持体上にワニスを塗布後、その塗布されたワニスを乾燥することにより、溶媒が除去されて封止剤の層が支持体上に得られる。
【0212】
封止シートの製造方法は、必要に応じて、封止剤の層を加熱することを含んでいてもよい。加熱により、封止剤に含まれる反応性基の反応を進行させることができるので、架橋反応及び重合反応等の反応を適切な程度に進行させて、封止剤の層の硬度を高めることができる。この加熱は、粘着型封止剤を用いる場合に好適である。特に、酸無水物基及びエポキシ基等の反応性基を有するポリオレフィン系樹脂を含む粘着型封止剤を用いる場合に、前記の加熱を行うことが好ましい。このような封止前の加熱によっては、封止対象に含まれる成分の熱劣化を避けることができる。加熱条件は、特に制限はない。加熱温度は、50℃~200℃が好ましく、100℃~180℃がより好ましく、120℃~160℃がさらに好ましい。加熱時間は、15分~120分が好ましく、30分~100分がより好ましい。
【0213】
封止シートの製造方法は、必要に応じて、保護フィルムを設けることを含んでいてもよい。保護フィルムは、例えば、保護フィルムと、封止剤の層とを貼り合わせることによって設けうる。封止剤の層の加熱を行う場合、保護フィルムは、封止剤の層の加熱前に設けてもよく、封止剤の層の加熱後に設けてもよい。
【0214】
(12.3.封止シートの使い方)
前記の封止シートは、鉛含有部、電極等の封止対象の封止のために用いることができる。封止シートを用いた封止方法は、通常、封止シートの封止剤の層を封止対象にラミネートすることを含む。封止シートが保護フィルムを備える場合、通常は、保護フィルムを剥離した後で、前記のラミネートが行われる。ラミネートの方法は、バッチ式であってもよく、ロールを用いた連続式であってもよい。
【0215】
通常、前記のラミネートによれば、封止対象上に封止剤の層及び支持体がこの順に設けられる。よって、ラミネート後の封止対象は、封止剤の層及び支持体によって被覆されうる。封止シートを用いた封止方法においては、支持体の剥離を行わずに、封止剤の層及び支持体で封止対象を被覆した状態を得てもよい。この状態においては、封止対象は、封止剤の層だけでなく支持体によっても封止されるので、水分の浸入を効果的に抑制することができる。例えば、バリア層を備える支持体、金属箔を備える支持体などのように、耐透湿性の高い支持体を備える封止シートを用いる場合、前記のように封止剤の層及び支持体による封止を行うことが好ましい。
【0216】
封止シートを用いた封止方法は、例えば、前記のラミネートの後で支持体を剥離して、封止剤の層で封止対象を被覆した状態を得てもよい。この状態においても、封止対象を封止する封止剤の層によって、水分の浸入を効果的に抑制することができる。例えば、バリア層を備えない支持体、金属箔を備えない支持体などのように、高い耐透湿性を有さない支持体を備える封止シートを用いる場合、前記のように封止剤の層による封止を行うことが好ましい。
【0217】
封止シートを用いた封止方法は、例えば、更に封止基材を設けることを含んでいてもよい。特に、前記のように支持体の剥離を行う場合、支持体の剥離によって露出した封止剤の層の面に、適切な封止基材を設けることが好ましい。このような封止基材としては、例えば、上述した支持体と同じフィルムを用いてもよく、ガラス板、金属板、鋼板等の剛直な板材を用いてもよい。封止基材を設けることにより、水分の浸入を更に効果的に抑制できる。
【0218】
封止シートを用いた封止方法は、例えば、ラミネート後に、封止剤の層を硬化させることを含んでいてもよい。通常は、封止剤の層に熱を加えることにより、封止剤に含まれる反応性基の架橋反応及び重合反応等の反応を進行させて、封止剤の層を熱硬化させる。これにより、封止対象と封止剤との密着性を向上させたり、封止剤の層の機械的強度を向上させたりできるので、封止剤による封止能力が高められる。よって、水分の浸入及び鉛の漏出を特に効果的に抑制できる。このようなラミネート後の熱硬化は、熱硬化型封止剤を用いる場合に好適である。
【0219】
前記の熱硬化の際、通常は、適切な熱処理装置によって封止剤の層を加熱する。熱処理装置としては、例えば、熱風循環式オーブン、赤外線ヒーター、ヒートガン、高周波誘導加熱装置などが挙げられる。また、例えば、ヒートツールを封止剤の層に圧着することにより、封止剤の層を加熱してもよい。封止対象と封止剤の層との密着性を高める観点から、硬化温度は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が特に好ましい。また、封止対象に含まれる成分の熱劣化を抑制する観点から、硬化温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。硬化時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましい。
【0220】
上述したいずれの封止方法でも、封止剤の層による封止が達成される。よって、封止対象に鉛含有部が含まれる場合、鉛含有部への水分の浸入だけでなく、鉛含有部からの鉛の漏出も抑制することができる。
【0221】
[13.電子デバイス]
本発明の一実施形態に係る電子デバイスは、鉛含有部と、この鉛含有部を封止する封止部とを備える。封止部は、上述した封止剤を含む。この際、封止部に含まれる封止剤は、硬化していてもよい。このように硬化した封止剤を含む封止部は、「封止剤を含む封止部」に包含される。このような電子デバイスでは、鉛含有部への水分の浸入を、封止部によって抑制できる。また、鉛含有部から電子デバイスの外部への鉛の漏出を、封止部によって抑制できる。
【0222】
鉛含有部は、鉛原子を含む部分であり、電子デバイスの種類に応じて広範な範囲のものが包含されうる。以下、この鉛含有部としてペロブスカイト層を含むペロブスカイト型太陽電池を例に挙げて、電子デバイスについて具体的に説明する。
【0223】
図4は、本発明の一実施形態に係るペロブスカイト型太陽電池400の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、一例としてのペロブスカイト型太陽電池400は、第一電極410と、鉛原子を含むペロブスカイト層420と、第二電極430と、硬化していてもよい封止剤を含む封止部440とを備える。この太陽電池400では、光電変換層としてのペロブスカイト層420で発生した電荷を第一電極410及び第二電極430を通して取り出せるように、第一電極410と第二電極430との間にペロブスカイト層420が設けられている。
【0224】
第一電極410及び第二電極430は、導電性材料で形成されている。導電性材料の種類に制限はないが、第一電極410及び第二電極430の一方又は両方が、透明な導電性材料で形成されていることが好ましい。そのような材料としては、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム亜鉛酸化物)等の導電性酸化物;導電性ポリマー;などが挙げられる。
【0225】
ペロブスカイト層420は、ペロブスカイト化合物を含み、このペロブスカイト層420が光の照射を受けて電荷を発生しうる。ペロブスカイト化合物としては、例えば、下記式(P)で表される化合物が挙げられる。
AP
kMPXP
(k+2) (P)
【0226】
式(P)において、kは、1又は2の整数を表わす。
【0227】
式(P)において、Apは、1価の有機分子又はそのイオンを表す。1価の有機分子は、特段の制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミンジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、カルバゾール等が挙げられる。また、1価の有機分子のイオンとしては、メチルアンモニウム(CH3NH3)、フェネチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン及びこれらのイオン、並びにフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びこれらのイオンがより好ましい。
【0228】
式(P)において、Mpは、2価の金属原子を表す。Mpは、2価の金属原子として鉛を含むことが好ましい。また、Mpは、鉛に組み合わせて鉛以外の金属原子を含んでもよい。鉛以外の金属原子としては、例えば、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、ユーロピウム等が挙げられる。これらの金属原子は、1種類が単独で用いられてもよく、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0229】
式(P)において、Xpは、ハロゲン原子又はカルコゲン原子を表す。ハロゲン原子は、特段の制限はないが、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄が挙げられる。また、カルコゲン原子は、特段の制限はないが、セレンが挙げられる。これらは、1種類が単独で用いられてもよく、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0230】
前記のペロブスカイト化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2014/045021号、日本国特開2014-49596号公報、日本国特開2016-82003号公報等に記載のペロブスカイト化合物が挙げられる。
【0231】
上述したものの中でも、ペロブスカイト化合物としては、CH3NH3PbI3等の鉛原子を含む化合物が好ましい。ペロブスカイト化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、ペロブスカイト層420は、ペロブスカイト化合物に組み合わせて、酸化物半導体等の任意の成分を含んでいてもよい。
【0232】
封止部440は、ペロブスカイト層420を封止するように設けられている。したがって、ペロブスカイト層420の表面の一部又は全部は、封止部440に被覆されており、ペロブスカイト層420の表面は露出していない。
図4に示す例では、ペロブスカイト層420の表面のうち、第一電極410又は第二電極430と接触していない部分が、封止部440に被覆されている例を示して説明する。このようなペロブスカイト層は、外気とペロブスカイト層420との間が封止部440によって封止されている。よって、外気中の水分がペロブスカイト層420へ浸入することを抑制できる。また、ペロブスカイト層420に含まれる鉛が、太陽電池400の外部への漏出することを、抑制できる。通常は、ペロブスカイト層420だけでなく第一電極410及び第二電極430も封止部440によって封止され、水からの保護が達成される。
【0233】
太陽電池400は、更に、第一基材450及び第二基材460を備えることが好ましい。通常は、第一基材450及び第二基材460の一方は、製造時及び使用時に太陽電池400又はその製造中間体を支持するための支持基材として用いられる。また、第一基材450及び第二基材460の他方は、通常、太陽電池400の主面を広範囲に封止するための封止基材として用いられる。第一電極410、ペロブスカイト層420及び第二電極430は、一般に、第一基材450及び第二基材460の間の空間に設けられる。したがって、
図4に示すように、封止部440は、第一基材450及び第二基材460の間の空間を充填するように設けられうるので、第一基材450及び第二基材460の間に設けられた第一電極410、ペロブスカイト層420及び第二電極430等の部材は、いずれも封止部440によって封止されることができる。
【0234】
一般に、第一基材450及び第二基材460は、水分を透過させにくい材料で形成されたり、大きな厚みを有したりするので、水分の浸入を高度に抑制できる。よって、前記の例に係る太陽電池400では、ペロブスカイト層420への水分の浸入経路は、封止部440の側部440Sを通った面内方向の浸入経路A4に限定されうる。上述した封止剤は、このような浸入経路A4における水分の浸入を、特に効果的に抑制できる。よって、第一基材450及び第二基材460の間に設けられたペロブスカイト層420の封止に用いた場合に、上述した封止剤は、水分の浸入の抑制及び鉛の漏出の抑制という効果を、特に顕著に発揮することが可能である。
【0235】
ペロブスカイト型太陽電池400は、更に変更して実施してもよい。例えば、ペロブスカイト型太陽電池400は、第一電極410とペロブスカイト層420との間に、任意の層を備えていてもよい。また、例えば、ペロブスカイト型太陽電池400は、ペロブスカイト層420と第二電極430との間に、任意の層を備えていてもよい。任意の層としては、電子輸送層、正孔輸送層などが挙げられる。
【0236】
電子デバイスの製造方法に制限は無い。例えば、鉛含有層を形成することと、その鉛含有層を封止する封止部を形成することとを含む方法によって、製造できる。封止部は、例えば、封止シートを用いた封止剤の層のラミネートにより、鉛含有部を被覆する封止剤の層として形成できる。具体例を挙げると、第一基材450上に第一電極410、ペロブスカイト層420及び第二電極430を形成した後で、それら第一電極410、ペロブスカイト層420及び第二電極430の一部又は全体を被覆するように封止シート(図示せず)の封止剤の層をラミネートすることを含む方法により、封止剤の層としての封止部440を備えるペロブスカイト型太陽電池400を製造できる。この際、封止シートの支持体を、第二基材460として用いてもよい。また、封止シートの支持体を剥離した後で、別の第二基材460を封止部440上に設けてもよい。
【実施例0237】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によって制限を受けるものではない。以下の説明において、量を示す「部」及び「%」は、別に断らない限り、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0238】
[評価方法]
[封止剤の鉛吸着能力の評価方法]
水500mLに、鉛標準溶液10μL加え、精製して、水温20℃~25℃の鉛イオン濃度20μg/Lの鉛イオン含有水溶液を調整した。
【0239】
実施例及び比較例で製造した封止シートを、長さ16cm及び幅24cmmにカットして、第一試験用シートを得た。この第一試験用シートの封止剤の層側にメッシュ布(ボルティングクロス(ナイロン)メッシュ40 NB-40、アズワン社製)を貼合したのち、1cm角に細かく刻んで、鉛イオン含有水溶液50mlに入れ、高速回転ミキサー(練太郎ARE-310、回転数2000rpm)で15分攪拌した(鉛吸着能評価試験)。このとき、熱硬化型封止剤に係る実施例5~6及び比較例4では、メッシュ布の貼合後に、100℃60分の条件で封止剤を熱硬化した後で、第一試験用シートを細かく刻んだ。撹拌後の鉛イオン含有水溶液の鉛イオン濃度M1を測定した。
【0240】
第一試験用シートを浸漬する前の鉛イオン含有水溶液の鉛イオン濃度20μg/Lから、第一試験用シートを浸漬した後の鉛イオン含有水溶液の鉛イオン濃度M1を差し引いて、鉛イオン濃度の変化量を得た。この変化量に、鉛イオン含有水溶液の体積50mLを掛け算して、鉛吸着量を算出した。算出した鉛吸着量を、使用した第一試験用シートが備える封止剤の層の面積384cm2で割り算して、封止剤の層1m2当たりに吸着された鉛の質量X(μg/m2)を算出した。この吸着された鉛の質量Xは、鉛吸着性パラメータに相当する。吸着された鉛の質量Xに基づいて、下記の基準により、封止剤の鉛吸着能力を評価した。
【0241】
(鉛吸着能力の基準)
「良」:吸着された鉛の質量Xが、10μg/m2以上。
「不良」:吸着された鉛の質量Xが、10μg/m2未満。
【0242】
鉛イオン含有水溶液の鉛イオン濃度は、下記の方法で測定した。
鉛イオン含有水溶液5mlを鉛センサーパック(HACH社製)中のテストチューブに入れ、試薬タブレット(前記鉛センサーパックに付属する測定用試薬)を溶解させた。その後、鉛イオン含有水溶液に試験電極を浸し、ポータブル走査型鉛測定器(型名HSA-1000、HACH社製)を用いて、鉛イオン濃度を測定した。
【0243】
[封止剤の水蒸気浸入バリア性の評価方法]
支持フィルムとして、アルミニウム箔及びポリエチレンテレフタレートフィルムを備える複合フィルム「PETツキAL1N30」(アルミニウム箔の厚さ30μm、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さ25μm、東海東洋アルミ販売社製)を用意した。この支持フィルムを支持体の代わりに用いたこと以外は、各実施例及び比較例における封止シートの製造方法と同様にして、支持フィルムのアルミニウム箔側の面に、封止剤の層を形成した。これにより、支持フィルム及び封止剤の層を備える第二試験用シートを得た。得られた第二試験用シートは、封止剤の層に含まれる吸着水を除去するため、窒素雰囲気下で乾燥した。乾燥は、粘着型封止剤を用いた実施例1~4及び比較例1~3では、130℃で60分行った。また、乾燥は、熱硬化型封止剤を用いた実施例5~6及び比較例4では、100℃で5分行った。
【0244】
無アルカリガラスで形成された50mm×50mm角のガラス板を用意した。このガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分間洗浄し、150℃において30分以上乾燥した。
【0245】
このガラス板の片面に、当該ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを覆うマスクを用いて、カルシウムを蒸着した。これにより、ガラス板の片面の、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを除く中央部分に、厚さ200nmのカルシウム膜(純度99.8%)が形成された。
【0246】
窒素雰囲気内で、上述した第二試験用シートの封止剤の層と、前記ガラス板のカルシウム膜側の面とを、熱ラミネーター(フジプラ社製 ラミパッカーDAiSY A4(LPD2325))を用いて貼り合わせて、積層体を得た。粘着型封止剤に係る実施例1~4及び比較例1~3では、得られた積層体を、評価サンプルとして得た。また、熱硬化型封止剤に係る実施例5~6及び比較例4では、得られた積層体を、温度100℃で60分間加熱し、封止剤の層を硬化して、評価サンプルを得た。
【0247】
一般に、カルシウムが水と接触して酸化カルシウムになると、透明になる。また、前記の評価サンプルでは、ガラス板及びアルミニウム箔が充分に高い水蒸気浸入バリア性を有するので、水分は、通常、封止剤の層の端部を通って面内方向(厚み方向に垂直な方向)に移動して、カルシウム膜に到達しうる。よって、評価サンプルに水分が浸入すると、カルシウム膜は端部から次第に酸化されて透明になるので、カルシウム膜の縮小が観察される。したがって、評価サンプルへの水分侵入は、評価サンプルの端部からカルシウム膜までの封止距離[mm]を測定することによって、評価できる。そのため、カルシウム膜を含む評価サンプルを、鉛を含む電子デバイスのモデルとして使用できる。
【0248】
まず、評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの封止距離X2[mm]を、顕微鏡(Measuring Microscope MF-U、ミツトヨ社製)により測定した。以下、この封止距離X2を、当初封止距離X2ということがある。
【0249】
次いで、温度85℃湿度85%RHに設定した恒温恒湿槽に、評価サンプルを収納した。恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの間の封止距離X1(mm)が、当初封止距離X2よりも0.1mm増加した時点で、評価サンプルを恒温恒湿槽から取り出した。評価サンプルを恒温恒湿槽へ収納した時点から、評価サンプルを恒温恒湿槽から取り出した時点までの時間を、減少開始時間t[時間]として求めた。この減少開始時間tは、評価サンプルを恒温恒湿槽に収納した時点TP1から、恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの端部とカルシウム膜の端部との間の封止距離X1[mm]が「X2+0.1mm」となる時点TP2までの時間に相当する。
【0250】
前記の封止距離X1及び減少開始時間tを、式(1)のフィックの拡散式に当て嵌めて、水蒸気浸入バリア性パラメータとしての定数Kを算出した。
【0251】
【0252】
得られた定数Kを用いて、封止剤が水分の浸入を抑制する能力としての水蒸気浸入バリア性を、下記の基準で評価した。定数Kの値が小さいほど、水蒸気浸入バリア性が高いことを意味する。「h」は、「時間」を意味する。
【0253】
(水蒸気浸入バリア性の基準)
「良」:定数Kが、0.025cm/h0.5未満。
「不良」:定数Kが、0.025cm/h0.5以上。
【0254】
[合成例1:イオン液体硬化剤の合成]
イオン液体硬化剤であるN-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩を、以下の手順にて合成した。
41.4%のテトラブチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液(北興化学工業社製)20.0gに対し、0℃にて、N-アセチルグリシン(東京化成工業社製)3.54gを加え、10分間攪拌した。撹拌後に、エバポレーターを用いて40mmHg~50mmHgの圧力で、60℃~80℃にて2時間、90℃にて5時間、反応溶液を濃縮した。得られた濃縮物を、室温にて酢酸エチル(純正化学社製)14.2mlに溶解して溶液を調製した。得られた溶液を、エバポレーターを用いて40mmHg~50mmHgの圧力で、70℃~90℃にて3時間濃縮して、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩11.7g(純度:96.9%)をオイル状化合物として得た。
【0255】
[I.粘着型封止剤に係る実施例及び比較例]
[実施例1]
(ワニスの製造)
粘着付与剤としてのジシクロペンタジエン系石油樹脂(T-REZ HA105、JXTGエネルギー社製、軟化点105℃)のスワゾール溶液(不揮発成分60%)を、不揮発成分の量で77.5部用意した後、酸化防止剤(Irganox1010 BASF社製)を2.3部加え、溶解した。この溶液に、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(HV-300M、東邦化学工業社製、酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)21部、ポリブテン(HV-1900、JXエネルギー社製、数平均分子量:2,900)94部、及び、無機フィラーとしての市販の半焼成ハイドロタルサイトA(半焼成ハイドロタルサイト、BET比表面積:13m2/g、平均粒子径:400nm)100部を、3本ロールミルで分散させて、混合物を得た。
【0256】
得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(T-YP341、星光PMC社製、プロピレン単位/ブテン単位:71%/29%、エポキシ基濃度:0.638mmol/g、数平均分子量:155,000)のスワゾール溶液(不揮発成分20%)を不揮発成分の量で20部、アミン系化合物(2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール、以下「TAP」と略記することがある。化薬アクゾ社製)0.1部、及びトルエン210部を配合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、封止剤を含むワニスを得た。
【0257】
(封止シートの製造)
支持体として、シリコーン系離型剤で処理された表面(離型処理面)を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(PETの厚み50μm;SP3000、東洋クロス社製)を用意した。この支持体の離型処理面上に、前記のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、140℃で30分間加熱することにより、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを得た。
【0258】
[実施例2]
無機フィラーの種類を、半焼成ハイドロタルサイトAから、市販の焼成ハイドロタルサイトC(焼成ハイドロタルサイト、BET比表面積:190m2/g、平均粒子径:400nm)に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0259】
[実施例3]
無機フィラーの種類を、半焼成ハイドロタルサイトAから、市販の酸化カルシウム(BET比表面積:5m2/g、平均粒子径:4000nm)に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0260】
[実施例4]
無機フィラーの種類を、半焼成ハイドロタルサイトAから、ナノゼオライト(Zeoal 4A、中村超硬社製、平均粒子径300nm、細孔径4Å)に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0261】
[比較例1]
無機フィラーとしての半焼成ハイドロタルサイトAを使用しなかった。以上の事項以外は、実施例1と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0262】
[比較例2]
無機フィラーの種類を、半焼成ハイドロタルサイトAから、市販の未焼成ハイドロタルサイトD(BET比表面積:10m2/g、平均粒子径:400nm)に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0263】
[比較例3]
無機フィラーの種類を、半焼成ハイドロタルサイトAから、合成マイカ(PDM-5B、トピー工業社製、平均粒子径:6.0μm)に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0264】
[評価]
各実施例及び比較例で得たワニス及び封止シートを用いて、上述した評価方法によって、封止剤の鉛吸着能力及び水蒸気浸入バリア性の評価を行った。評価結果を、下記の表1に示す。
【0265】
【0266】
[II.熱硬化型封止剤に係る実施例及び比較例]
[実施例5]
(ワニスの製造)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との混合品(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」)162部と、無機フィラーとしての市販の半焼成ハイドロタルサイトA(半焼成ハイドロタルサイト、BET比表面積:13m2/g、平均粒子径:400nm)150部と、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KMB403」、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン)7.5部とを混練後、3本ロールミルにて分散させて、混合物を得た。
【0267】
硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」)7.5部を、フェノキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製「YX7200B35」、溶媒:メチルエチルケトン、不揮発成分:35%)163部(樹脂57部)に溶解させた溶液に、脂環骨格含有エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「TOPR-300」)108部と、先に調製した混合物と、合成例1にて合成したイオン液体硬化剤(N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩)9部とを配合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、封止剤を含むワニスを得た。
【0268】
(封止シートの製造)
支持体として、アルキッド系離型剤で処理された表面(離型処理面)を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、以下「離型PETフィルム」ということがある。)を用意した。この支持体の離型処理面上に、前記のワニスを、乾燥後の封止剤の層の厚さが20μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80℃で5分間乾燥させて、封止剤の層を形成した。その後、封止剤の層の表面に、保護フィルムとして離型PETフィルムを載せ、支持体、封止剤の層及び離型PETフィルムをこの順で備える封止シートを得た。
【0269】
[実施例6]
無機フィラーの種類を、半焼成ハイドロタルサイトAから、市販の酸化カルシウム(BET比表面積:5m2/g、平均粒子径:4000nm)に変更した。以上の事項以外は、実施例5と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0270】
[比較例4]
無機フィラーの種類を、半焼成ハイドロタルサイトAから、市販の未焼成ハイドロタルサイトD(BET比表面積:10m2/g、平均粒子径:400nm)に変更した。以上の事項以外は、実施例5と同様の方法にて、封止剤を含むワニス、及び、厚さ20μmの封止剤の層を備える封止シートを製造した。
【0271】
[評価]
各実施例及び比較例で得たワニス及び封止シートを用いて、上述した評価方法によって、封止剤の鉛吸着能力及び水蒸気浸入バリア性の評価を行った。
ただし、鉛吸着能力の評価方法においては、封止フィルムをカット後、保護フィルムとしての離型PETフィルムを剥離して、第一試験用シートを得た。よって、鉛吸着能力の評価方法は、一方の面が露出した封止剤の層を備える第一試験用シートを用いて行われた。
また、水蒸気浸入バリア性の評価方法では、第二試験用シートから保護フィルムとしての離型PETフィルムを剥離した後で、その第二試験用シートを乾燥した。
評価結果を、下記の表2に示す。
【0272】
【0273】
[III.水蒸気透過率試験法(WVTR測定法)による水蒸気透過率の測定]
[参考例1:実施例1の封止シートについての評価]
実施例1で製造した封止シートの封止剤の層と、水蒸気透過率P2が判明している基準フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー38 R80」、厚み35μm、東レ販売社製)とを、バッチ式真空ラミネーター(V-160、ニチゴー・モートン社製)を用いてラミネートした。ラミネート条件は、温度80℃、減圧時間30秒の後、圧力0.3MPaにて30秒加圧であった。その後、支持体を剥離して、封止剤の層及び基準フィルムを備える樹脂シートを得た。
【0274】
得られた樹脂シートの水蒸気透過率P0を、JIS K7129Bに準じた赤外線センサ法により求めた。水蒸気透過率(g/m2・24時間)は、水蒸気透過率測定装置(モコン(MOCON)社製、PERMATRAN-W 3/34)を使用して、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下で測定した。
【0275】
樹脂シートの水蒸気透過率P0と、基準フィルムの水蒸気透過率P2とを、下記の式(2)に当て嵌めて、封止剤の層の水蒸気透過率P1を算出した。ここで、基準フィルムの水蒸気透過率P2は、15g/m2・24時間とした。
1/P0=1/P1+1/P2 (2)
【0276】
[参考例2:比較例1の封止シートについての評価]
実施例1で製造した封止シートの代わりに、比較例1で製造した封止シートを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、封止剤の層の水蒸気透過率P1を測定した。
【0277】
[参考例3:比較例3の封止シートについての評価]
実施例1で製造した封止シートの代わりに、比較例3で製造した封止シートを用いたこと以外は、参考例1と同様にして、封止剤の層の水蒸気透過率P1を測定した。
【0278】
[結果]
参考例1~3の結果を、下記の表3に示す。また、表3には、参考例1~3に対応する実施例1並びに比較例1及び3での水蒸気浸入バリア性の評価も、併せて示す。
【0279】
【0280】
参考例1~3で採用したWVTR測定法では、封止剤の層を厚み方向に透過する水蒸気の透過率が測定される。参考例1~3の結果から分かるように、厚み方向において水分の浸入を抑制する能力については、参考例1は参考例2よりも優れるが、参考例3の方が更に優れている。しかし、実施例1並びに比較例1及び3の水蒸気浸入バリア性の結果から分かるように、厚み方向に垂直な面内方向において水分の浸入を抑制する能力については、参考例1に対応する実施例1は、参考例2及び3に対応する比較例1及び3よりも優れている。したがって、封止剤が水分の浸入を抑制する能力は、当該水蒸気の浸入方向に応じて異なりうることが分かる。また、実施例にかかる封止剤が、面内方向において特異的に高い水蒸気浸入バリア性を発揮していることが分かる。
【0281】
[IV.ハイドロタルサイトの物性の評価]
[参考例4~6]
(ハイドロタルサイトの吸水率の測定)
上述した実施例及び比較例で用いた各ハイドロタルサイトを天秤にて1.5g秤取して、初期質量を測定した。秤取した各ハイドロタルサイトを、大気圧下、60℃、90%RH(相対湿度)に設定した小型環境試験器(エスペック社製 SH-222)に200時間静置して吸湿させた後、吸湿後の質量を測定した。測定された質量から、下記式(i)により、飽和吸水率を計算した。
飽和吸水率[質量%]=100×(吸湿後の質量-初期質量)/初期質量 (i)
【0282】
(ハイドロタルサイトの熱重量減少率の測定)
熱分析装置(TG/DTA EXSTAR6300、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、上述した実施例及び比較例で用いた各ハイドロタルサイトの熱重量分析を行った。アルミニウム製のサンプルパンにハイドロタルサイトを10mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、窒素流量200mL/分の雰囲気下で、30℃から550℃まで10℃/分で昇温した。下記式(ii)を用いて、280℃および380℃における熱重量減少率を求めた。
熱重量減少率[質量%]=100×(加熱前の質量-所定温度に達した時の質量)/加熱前の質量 (ii)
【0283】
(ハイドロタルサイトの粉末X線回折の測定)
上述した実施例及び比較例で用いた各ハイドロタルサイトの粉末X線回折の測定を行った。粉末X線回折の測定は、粉末X線回折装置(Empyrean、PANalytical社製)により、対陰極CuKα(1.5405Å)、電圧:45V、電流:40mA、サンプリング幅:0.0260°、走査速度:0.0657°/s、測定回折角範囲(2θ):5.0131~79.9711°の条件で行った。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度:0.50、最小ピークチップ:0.01°、最大ピークチップ:1.00°、ピークベース幅:2.00°、方法:2次微分の最小値」の条件で行った。2θが8°~18°の範囲内で現れたスプリットした二つのピーク、または二つのピークの合成によりショルダーを有するピークを検出し、低角側に現れたピークまたはショルダーの回折強度(=低角側回折強度)と、高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=高角側回折強度)を測定し、相対強度比(=低角側回折強度/高角側回折強度)を算出した。
【0284】
(結果)
各ハイドロタルサイトの評価結果を、下記の表4に示す。
【0285】
【0286】
前記の飽和吸水率、熱重量減少率及び粉末X線回折の結果より、ハイドロタルサイトAは「半焼成ハイドロタルサイト」であり、ハイドロタルサイトCは「焼成ハイドロタルサイト」であり、ハイドロタルサイトDは「未焼成ハイドロタルサイト」である。