(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006146
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】検査装置および選別装置
(51)【国際特許分類】
B07C 5/342 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B07C5/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106769
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜和田 貫児
(72)【発明者】
【氏名】沖本 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
【テーマコード(参考)】
3F079
【Fターム(参考)】
3F079AC13
3F079AC14
3F079AC15
3F079CA18
3F079CA20
3F079CA23
3F079CA26
3F079CA32
3F079CA41
3F079CA44
3F079CB30
3F079CB32
3F079CB33
3F079CB35
3F079CC03
3F079DA06
3F079EA01
(57)【要約】
【課題】 光学センサによって得られる情報を増やし、それによって、検査装置または選別装置の性能を向上する。
【解決手段】 対象物の状態を検査するための検査装置は、対象物を移送するように構成された移送部と、移送部の作用によって移送中の対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、エリアセンサによって取得される画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成された識別部と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の状態を検査するための検査装置であって、
前記対象物を移送するように構成された移送部と、
前記移送部の作用によって移送中の前記対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、
前記エリアセンサによって取得される画像に基づいて前記対象物の前記状態を識別するように構成された識別部と
を備える検査装置。
【請求項2】
対象物の状態を検査するための検査装置であって、
前記対象物を移送するように構成された移送部と、
前記移送部の作用によって移送中の前記対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、
前記エリアセンサによって取得される画像に基づいて前記対象物の前記状態を識別するように構成された識別部と、
前記同一の対象物についての複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて、前記複数回の撮像の間における前記同一の対象物の挙動情報を演算するように構成された演算部と
を備え、
前記挙動情報は、前記同一の対象物の前記複数の画像間上でのサイズの変化に関連するサイズ変化情報と、前記同一の対象物の位置変化および姿勢変化の少なくとも一方を表すベクトル情報と、の少なくとも一方を含む
検査装置。
【請求項3】
選別装置であって、
請求項2に記載の検査装置と、
前記識別部の識別結果に基づいて決定される特定の対象物が選別領域を通過するタイミングに合わせて前記特定の対象物に向けてエアを選択的に噴射して、前記特定の対象物の移送軌道を変更することによって、前記特定の対象物を選別するように構成された選別部と、
前記サイズ変化情報および前記ベクトル情報の少なくとも一方に基づいて、前記エアの噴射モードを決定するように構成された噴射制御部と
を備える選別装置。
【請求項4】
請求項3に記載の選別装置であって、
前記エリアセンサは、前記対象物の移送経路上の、前記選別領域よりも上流側に位置する対象物と、前記選別領域よりも下流側に位置する対象物と、の両方を撮像可能な画角を有しており、前記選別領域よりも上流側に位置する前記対象物が撮像された上流側画像と、前記選別領域よりも下流側に位置する前記対象物が撮像された下流側画像と、を取得するように構成され、
前記識別部は、前記上流側画像に基づいて前記対象物の前記状態を識別するように構成された
選別装置。
【請求項5】
請求項4に記載の選別装置であって、
前記下流側画像に基づいて、前記選別部による前記エアの噴射の動作状況を監視するように構成された監視部を備えた
選別装置。
【請求項6】
対象物を選別するための選別装置であって、
前記対象物を移送するように構成された移送部と、
前記移送部の作用によって移送中の前記対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、
前記エリアセンサによって取得される画像に基づいて前記対象物の前記状態を識別するように構成された識別部と、
前記識別部の識別結果に基づいて決定される特定の対象物が選別領域を通過するタイミングに合わせて前記特定の対象物に向けてエアを選択的に噴射して、前記特定の対象物の移送軌道を変更することによって、前記特定の対象物を選別するように構成された選別部と
を備え、
前記エリアセンサは、前記対象物の移送経路上の、前記選別領域よりも上流側と、前記選別領域よりも下流側と、の両方で前記対象物を撮像可能な画角を有している
選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式検査技術および選別技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移送中の対象物に光源から光を照射した際に光学センサによって得られる光情報を使用して、対象物の状態(例えば、不良品であるか否か)を識別する光学式検査装置(以下、単に検査装置とも呼ぶ)が従来から知られている。例えば、下記の特許文献1は、そのような検査装置を搭載した選別装置を開示している。この選別装置は、シュートから滑り落ちた対象物をラインセンサで撮像して、不良品であると識別された対象物をエア噴射によって除去するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラインセンサによって得られる情報は比較的少ないので、そのことに起因して、従来の検査装置または選別装置は、改良の余地を残している。そのようなことから、光学センサによって得られる情報を増やし、それによって、検査装置または選別装置の性能を向上することが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本発明の第1の形態によれば、対象物の状態を検査するための検査装置が提供される。この検査装置は、対象物を移送するように構成された移送部と、移送部の作用によって移送中の対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、エリアセンサによって取得される画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成された識別部と、を備えている。
【0007】
「移送部の作用によって移送中の対象物」には、例えば、移送部上で移送中の対象物や、移送部によって移送された後に移送部から離間して空中にある対象物(例えば、移送部から落下中の対象物、移送部によって水平方向または斜め上方向に放たれた対象物)が含まれる。また、電磁波照射源は、可視光、近赤外光、X線のうちの少なくとも1つを照射してもよい。
【0008】
この検査装置によれば、同一の対象物について、エリアセンサによって複数の画像を取得できる。したがって、ラインセンサを使用する従来の検査装置と比べて、識別性能の向上に寄与し得る情報の取得量を増やすことができる。例えば、同一の対象物の異なる領域がそれぞれ撮像された複数の画像をエリアセンサによって取得できる場合には、識別精度を向上できる。第1の形態は、不整合が生じない限りにおいて、下記の任意の形態と組み合わせることができる。
【0009】
本発明の第2の形態によれば、対象物の状態を検査するための検査装置が提供される。この検査装置は、対象物を移送するように構成された移送部と、移送部の作用によって移送中の対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、エリアセンサによって取得される画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成された識別部と、同一の対象物についての複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて、複数回の撮像の間における同一の対象物の挙動情報を演算するように構成された演算部と、を備えている。挙動情報は、同一の対象物の複数の画像間上でのサイズの変化に関連するサイズ変化情報と、同一の対象物の位置変化および姿勢変化の少なくとも一方を表すベクトル情報と、の少なくとも一方を含む。
【0010】
この検査装置によれば、同一の対象物についての複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて、挙動情報を取得できる。そのような情報は、検査装置の性能を向上させるために活用できる。例えば、このような情報に基づいて、対象物が意図される通りに移送されているか否か(換言すれば、検査装置が正常に動作しているか否か)を把握できる。検査装置が意図される通りに動作していない場合には、機器の調整などの必要な解決策を講じることによって、検査装置の性能を向上できる。あるいは、対象物の形状や大きさは、対象物の挙動に影響を与えるので、挙動情報に基づいて、対象物の形状や大きさのばらつきの程度を把握できる。ベクトル情報は、対象物の意図される移送方向とは異なる方向における位置変化および姿勢変化の少なくとも一方を表してもよい。
【0011】
本発明の第3の形態によれば、選別装置が提供される。この選別装置は、第2の形態の検査装置と、識別部の識別結果に基づいて決定される特定の対象物が選別領域を通過するタイミングに合わせて特定の対象物に向けてエアを選択的に噴射して、特定の対象物の移送軌道を変更することによって、特定の対象物を選別するように構成された選別部と、サイズ変化情報およびベクトル情報の少なくとも一方に基づいて、エアの噴射モードを決定するように構成された噴射制御部と、を備えている。この形態によれば、移送中の対象物の挙動に応じて適切なエア噴射を行って、選別性能を向上できる。
【0012】
本発明の第4の形態によれば、第3の形態において、エリアセンサは、対象物の移送経路上の、選別領域よりも上流側に位置する対象物と、選別領域よりも下流側に位置する対象物と、の両方を撮像可能な画角を有しており、選別領域よりも上流側に位置する対象物が撮像された上流側画像と、選別領域よりも下流側に位置する対象物が撮像された下流側画像と、を取得するように構成される。識別部は、上流側画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成される。なお、上流側画像および下流側画像の各々は、上流側および下流側の両方が撮像された画像の一部の領域であってもよい。この形態によれば、識別部の処理に使用するための上流側画像を取得するためのエリアセンサを活用して(換言すれば、追加的なエリアセンサを導入することなく)、下流側画像も追加的に取得して、選別領域よりも下流側の状況を把握することができる。選別領域よりも下流側の状況は、選別装置の性能を向上させるために活用できる。
【0013】
本発明の第5の形態によれば、第4の形態において、選別装置は、下流側画像に基づいて、選別部によるエアの噴射の動作状況を監視するように構成された監視部を備えている。この形態によれば、選別部が正常に動作しているか否かを監視できる。したがって、選別部の動作不良が生じているにもかかわらず、選別装置が運転を継続して、選別性能が低下することを抑制できる。
【0014】
本発明の第6の形態によれば、対象物を選別するための選別装置が提供される。この選別装置は、対象物を移送するように構成された移送部と、移送部の作用によって移送中の対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、エリアセンサによって取得される画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成された識別部と、識別部の識別結果に基づいて決定される特定の対象物が選別領域を通過するタイミングに合わせて特定の対象物に向けてエアを選択的に噴射して、特定の対象物の移送軌道を変更することによって、特定の対象物を選別するように構成された選別部と、を備えている。エリアセンサは、対象物の移送経路上の、選別領域よりも上流側に位置する対象物と、選別領域よりも下流側に位置する対象物と、の両方を撮像可能な画角を有している。この選別装置によれば、第4の形態と同様の効果が得られる。
【0015】
本発明の第7の形態によれば、第3ないし第5のいずれかの形態において、選別装置は、サイズ変化情報およびベクトル情報の少なくとも一方に基づいて、特定の対象物が選別領域を通過する際の特定の対象物の姿勢、および、特定の対象物が選別領域を通過する際の、意図される移送方向と交差する方向である交差方向の特定の対象物の位置の少なくとも一方を予測する予測部を備えている。噴射制御部は、予測部の予測結果に基づいて、エアの噴射モードおよび噴射位置の少なくとも一方を決定するように構成される。この形態によれば、特定の対象物が選別領域を通過する際の、特定の対象物の姿勢、および、交差方向の特定の対象物の位置の少なくとも一方についての予測結果に基づいて、エアの噴射による選別を精度良く行うことができる。
【0016】
本発明の第8の形態によれば、第7の形態において、予測部は、サイズ変化情報およびベクトル情報の少なくとも一方に基づいて特定の対象物の回転が検出されるときは、特定の対象物が選別領域を通過する際の特定の対象物の回転角度位置を予測するように構成される。噴射制御部は、予測された回転角度位置に基づいて、エアの噴射モードおよび噴射位置の少なくとも一方を決定するように構成される。この形態によれば、対象物が長手方向と短手方向とを有する形状を備えている場合に、特定の対象物が選別領域を通過する際の特定の対象物の回転角度位置に応じて(換言すれば、どの方向に相対的に長い姿勢で特定の対象物が選別領域を通過するのか)に応じて、エアの噴射モードおよび噴射位置の少なくとも一方を適切に決定できる。
【0017】
本発明の第9の形態によれば、第7または第8の形態において、挙動情報は、ベクトル情報を含む。予測部は、ベクトル情報に基づいて交差方向の特定の対象物の位置変化が検出されるときは、特定の対象物が選別領域を通過する際の交差方向の特定の対象物の位置を予測するように構成される。噴射制御部は、予測された交差方向の特定の対象物の位置に基づいて、エアの噴射モードおよび噴射位置の少なくとも一方を決定するように構成される。この形態によれば、特定の対象物が意図される移送方向以外に移送される場合であっても、特定の対象物が選別領域を通過する際の交差方向の特定の対象物の位置を予測できる。したがって、その予測結果に基づいて、特定の対象物を正確に選別するためのエアの噴射モードおよび噴射位置の少なくとも一方を適切に決定できる。
【0018】
本発明の第10の形態によれば、第7ないし第9のいずれかの形態において、挙動情報は、ベクトル情報を含む。ベクトル情報は、対象物の意図される移送方向を含む。予測部は、ベクトル情報に基づいて算出される特定の対象物の意図される移送方向の移送速度に基づいて、特定の対象物が選別領域を通過する際の特定の対象物の姿勢、および、特定の対象物が選別領域を通過する際の、交差方向の特定の対象物の位置の少なくとも一方を予測するように構成される。この形態によれば、意図される移送方向の対象物の移送速度の実測値に基づいて、対象物が撮像位置から選別領域まで移動する時間を正確に算出できる。したがって、特定の対象物の姿勢、および、交差方向の位置の少なくとも一方の予測精度を高めることができ、ひいては、エアの噴射モードおよび噴射位置の少なくとも一方をいっそう適切に決定できる。
【0019】
本発明の第11の形態によれば、第3の形態において、選別装置は、対象物の移送経路上の選別領域よりも下流側に位置する対象物を撮像するように構成された追加的なエリアセンサを備えている。この形態によれば、選別領域よりも下流側の状況を把握することができる。選別領域よりも下流側の状況は、選別装置の性能を向上させるために活用できる。第11の形態は、第7ないし第10の形態の少なくとも一部と組み合わされてもよい。
【0020】
本発明の第12の形態によれば、第5の形態において、または、第5の形態を含む第7ないし第10のいずれかの形態において、下流側画像は、同一の対象物について複数回撮像された複数の下流側画像を含む。演算部は、複数の下流側画像に基づいて同一の対象物のベクトル情報を演算するように構成される。監視部は、複数の下流側画像に基づくベクトル情報に基づいて、エアの噴射の動作状況を監視する。特定の対象物は、エアが噴射される前後で移送速度および移送方向(および/または、姿勢)が急激に変わるので、この形態によれば、エアの動作状況(つまり、噴射が正常に行われているか否か)を正確に監視できる。
【0021】
本発明の第13の形態によれば、第4、第5、第6、第11および第12の形態のいずれかにおいて、識別部は、エアの噴射によって移送軌道が変更された対象物と、エアが噴射されず、移送軌道が変更されることなく移送された対象物と、のうちの少なくとも一方の状態を下流側画像に基づいて識別するように構成される。この形態によれば、選別処理前の対象物の状態しか把握できない従来の選別装置とは対照的に、選別装置から排出される対象物の状態を正確に把握できる。換言すれば、移送軌道が変更された対象物について、他の対象物とは区別して、その状態を識別できる。あるいは、移送軌道が変更されることなく移送された対象物について、他の対象物とは区別して、その状態を識別できる。
【0022】
本発明の第14の形態によれば、第4ないし第6、および、第11ないし第13の形態のいずれかにおいて、選別装置は、上流側画像上の対象物と、下流側画像上の対象物と、の同一性を判断するように構成された同定処理部を備えている。この形態によれば、特定の対象物が意図される通りに正確に選別されているか否かを把握できる。
【0023】
本発明の第15の形態によれば、第14の形態において、識別部は、上流側画像と、下流側画像と、同定処理部による判断結果と、に基づいて、エアの噴射によって移送軌道が変更された対象物と、エアが噴射されず、移送軌道が変更されることなく移送された対象物と、のうちの少なくとも一方の状態を識別するように構成される。この形態によれば、第13の形態と同様の効果が得られる。
【0024】
本発明の第16の形態によれば、対象物を選別するための選別装置が提供される。この選別装置は、対象物を移送するように構成された移送部と、移送部の作用によって移送中の対象物を撮像するように構成されたイメージセンサと、イメージによって取得される画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成された識別部と、識別部の識別結果に基づいて決定される特定の対象物が選別領域を通過するタイミングに合わせて特定の対象物に向けてエアを選択的に噴射して、特定の対象物の移送軌道を変更することによって、特定の対象物を選別するように構成された選別部と、対象物の移送経路上の選別領域よりも下流側に位置する対象物を撮像するように構成されたエリアセンサと、を備えている。
【0025】
この選別装置によれば、選別領域よりも下流側の状況(例えば、エアの噴射の動作状況、特定の対象物が意図される通りに正確に選別されているか否か、選別装置から排出される対象物の状態など)を把握することができる。選別領域よりも下流側の状況は、選別装置の性能を向上させるために活用できる。第16の形態は、不整合が生じない限りにおいて、上述の任意の形態と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態による選別装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】シュートと、ノズルと、の位置関係を示す模式図である。
【
図3】サイズ変化情報を算出するための基礎となる、二つの画像における同一の対象物の一例を示す図である。
【
図6】対象物の挙動の予測結果に基づくエアの噴射モードおよび噴射位置の決定方法の一例を示す模式図である。
【
図7】第2実施形態による選別装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、第1実施形態による光学式選別装置(以下、単に選別装置と呼ぶ)10の概略構成を示す模式図である。本実施形態では、選別装置10は、選別対象物(以下、単に対象物と呼ぶ)90の一例としての米粒(より具体的には、玄米または精白米)の状態(換言すれば、品位)を識別し、その結果に基づいて、対象物90を良品と不良品とに選別するために使用される。不良品には、例えば、砕米、未熟粒、着色粒、被害粒、死米、異物(例えば、小石、泥、ガラス片など)などが含まれ得る。ただし、対象物90は、玄米または精白米に限られるものではなく、任意の粒状物であってもよい。例えば、対象物90は、籾、麦粒、豆類(大豆、ひよこ豆、枝豆など)、樹脂(ペレット等)、ゴム片等であってもよい。
【0028】
図1に示すように、選別装置10は、検出ユニット20と、貯留タンク71と、フィーダ72と、シュート73と、良品排出樋74と、不良品排出樋75と、選別部60と、コントローラ80と、を備えている。コントローラ80は、選別装置10の動作全般を制御する。コントローラ80は、識別部81、演算部82、噴射制御部83、監視部84、予測部85および同定処理部86としても機能する。コントローラ80の機能は、所定のプログラムをCPUが実行することによって実現されてもよいし、専用回路(例えば、PLD、ASICなど)によって実現されてもよいし、CPUと専用回路との組み合わせによって実現されてもよい。また、コントローラ80の機能は、一体的な一つのデバイスに割り当てられてもよいし、複数のデバイスに分散的に割り当てられてもよい。コントローラ80のこれらの機能の詳細については後述する。
【0029】
貯留タンク71は、対象物90を一時的に貯留する。フィーダ72は、貯留タンク71に貯留された対象物90を、対象物を移送するための移送部の一例としてのシュート73上に供給する。シュート73上に供給された対象物90は、シュート73上を下方に向けて滑走し、シュート73の下端から落下する。シュート73は、多数の対象物90を同時に落下させることができる所定幅(
図2に示すシュート幅方向D2の幅)を有している。シュート73の下端から空中に放たれた対象物90は、概ねシュート73の傾斜方向に落下する(空中を移送される)。このときの対象物90が落下する方向を対象物90の移送方向D1とも呼ぶ。
【0030】
本実施形態では、対象物90は、回転することなく、かつ、まっすぐに(シュート幅方向D2に直交する方向)に移送されることが意図されている。対象物90がフィーダ72から放たれた時に対象物90に回転力が付与され得るが、シュート73上を滑走することによって、そのような回転力に起因する対象物90の回転が解消または低減される。ただし、対象物90が空中を移送される間、対象物90同士の衝突などに起因して、意図される移送方向である移送方向D1に加えて、意図に反する方向であるシュート幅方向D2にも対象物90の位置変化が生じること(以下、横ずれとも呼ぶ)や、対象物90の回転が生じることがある。また、対象物90がシュート73の底面に衝突して跳ねることによって、シュート73の摺動面に直交する方向の速度成分を有するように対象物90が移送されることがある。
【0031】
代替実施形態では、移送部として、シュート73に代えて、コンベアが使用されてもよい。あるいは、シュート73は省略されてもよい。この場合、フィーダ72が、対象物90を空中へ放出する役割を果たし、移送部として機能する。
【0032】
検出ユニット20は、シュート73から滑り落ちた対象物90(つまり、シュート73から落下中の対象物90)に対して光を照射し、対象物90に関連付けられた光(具体的には、対象物90を透過した透過光、および/または、対象物90によって反射された反射光)を検出する。なお、代替実施形態では、シュート73上を滑走中の対象物90に対して光が照射されてもよい。また、シュート73に代えて、コンベアが使用される場合には、コンベア上で移送中の対象物90、または、コンベアから落下中の対象物90に対して光が照射されてもよい。さらなる代替実施形態では、移送部(例えば、水平方向または斜め上方向に角度付けられた下端部を有するシュート、あるいは、エアによって所望の方向に対象物を吹き出す供給装置など)によって水平方向または斜め上方向に放たれた対象物90に対して光が照射されてもよい。
【0033】
図1に示すように、検出ユニット20は、電磁波照射源の一例としての第1の光源30および第2の光源31と、エリアセンサ40と、を備えている。第1の光源30およびエリアセンサ40は、対象物90の移送経路(換言すれば、落下軌跡)に対して一方側(フロント側とも呼ぶ)に配置されている。一方、第2の光源31は、対象物90の移送経路に対して他方側(リア側とも呼ぶ)に配置されている。
【0034】
本実施形態では、光源30,31の各々は、移送中の(つまり、落下中の)対象物90に可視光を照射するための光源ユニットである。第1の光源30は、第1の光32を放出する。同様に、第2の光源31は、第2の光33を放出する。光32,33の各々は、赤色に対応する波長と、緑色に対応する波長と、青色に対応する波長と、を有している。本実施形態では、光源30,31の各々は、いわゆるカラーLEDを備えている。光源30,31の各々は、複数のLEDがシュート幅方向D2に配列されたライン光源である。ただし、光源30,31の仕様(例えば、数、発光形式、波長領域など)は、特に限定されない。例えば、光源30,31の各々は、複数のLEDが二次元状に配列されたエリア光源であってもよい。
【0035】
エリアセンサ40は、光学センサであり、赤色光、緑色光および青色光をそれぞれ個別に検出可能である。エリアセンサ40は、二次元状に(本実施形態では、移送方向D1およびシュート幅方向D2に沿って)配列された複数の光検出素子を備えている。エリアセンサ40は、本実施形態ではCCDセンサであるが、CMOSセンサなどの他の形式のセンサであってもよい。
【0036】
エリアセンサ40は、移送中の対象物90に関連付けられた光を検出する。具体的には、フロント側に配置されたエリアセンサ40は、フロント側の第1の光源30から放出され、対象物90で反射された第1の光32(以下、反射光32とも呼ぶ)と、リア側の第2の光源31から放出され、対象物90を透過した第2の光33(以下、透過光33とも呼ぶ)と、を検出可能である。
【0037】
エリアセンサ40によってどのような光が検出されるかは、光源30,31の点灯パターンによって定まる。第1の光源30と第2の光源31とが同時に点灯する第1の点灯パターンでは、エリアセンサ40は、反射光32と透過光33とが合成された光(以下、反射透過光とも呼ぶ)を検出する。第1の光源30が点灯し、第2の光源31が消灯する第2の点灯パターンでは、エリアセンサ40は、反射光32のみを検出する。第1の光源30が消灯し、第2の光源31が点灯する第3の点灯パターンでは、エリアセンサ40は、透過光33のみを検出する。以下では、上述した反射光、透過光および反射透過光の少なくとも一つを対象物90に関連付けられた光とも呼ぶ。
【0038】
第1ないし第3の点灯パターンのいずれを採用するかは、対象物90の種類、性状、除去されるべき不良品の種類に応じて、任意に決定され得る。第1ないし第3の点灯パターンのいずれか一つのみが採用されてもよい。あるいは、第1ないし第3の点灯パターンのうちの二つ以上の点灯パターンが、所定の時間間隔で交互に、または、予め定められた繰り返し規則で出現してもよい。
【0039】
エリアセンサ40の仕様(例えば、数、設置位置、分光感度特性など)は、特に限定されず、光源30,31の仕様に応じて任意に決定され得る。例えば、単一のエリアセンサ40がリア側のみに配置されてもよい。あるいは、二つのエリアセンサ40が、フロント側およびリア側にそれぞれ配置されてもよい。
【0040】
エリアセンサ40からの出力、すなわち、検出された光の強度を表すアナログ信号は、AC/DCコンバータ(図示省略)によってデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、画像データとしてコントローラ80に入力される。コントローラ80は、入力された画像に基づいて対象物90の状態を決定する。そのような決定は、識別部81の処理として、対象物90の各々について行われる。
【0041】
本実施形態では、識別部81によって決定される状態には、色彩的な状態(換言すれば、光学的な状態)と、形状的および/または寸法的な状態と、が含まれる。また、状態には、物理量によって表される特徴量と、特徴量に基づいて判定される品質と、が含まれる。
【0042】
色彩的な状態の特徴量には、対象物90を表す画像の各画素の色階調値が含まれる。形状的および/または寸法的な状態の特徴量には、例えば、対象物90の全体および/または一部分の面積、高さ、幅、外周長さ、および、円形度の少なくとも一つが含まれ得る。
【0043】
本実施形態では、「品質」には、例えば、良品(つまり、品質が相対的に高い米粒)と不良品(つまり、品質が相対的に低い米粒、および/または、異物)との区分が含まれる。ただし、「品質」には、不良の種別(例えば、砕米、未熟粒、着色粒、被害粒、死米、異物のいずれに該当するか)が含まれてもよい。あるいは、「品質」には、選別部60において除去すべき物と、除去すべきではない物と、の区分が含まれてもよい。また、「品質」には、色彩的な状態に基づいて決定される品質と、形状的および/または寸法的な状態に基づいて決定される品質と、が含まれる。色彩的な状態に基づいて決定される不良品には、例えば、未熟粒、着色粒、被害粒、死米、異物が含まれ得る。形状的および/または寸法的な状態に基づいて決定される不良品には、例えば、砕米、虫害粒、異物が含まれ得る。
【0044】
本実施形態では、識別部81は、色彩的な状態の特徴量(換言すれば、画像データの階調値)と、予め定められた閾値と、を比較することによって(換言すれば、色彩的な状態の特徴量が、予め定められた正常範囲にあるか否かに基づいて)、対象物90が良品であるか、それとも、不良品であるかを決定する。そのような決定は、対象物90の画像を構成する複数の画素の階調値の代表値(例えば、平均値、中央値、最大値、最小値など)に基づいて行われてもよい。あるいは、不良品には、所定以上の大きさの部分的不良を有する対象物90が含まれてもよい。そのような部分的不良は、対象物90の画像を構成する複数の画素のうち、階調値が正常範囲にない画素の数が所定数以上である(換言すれば、不良部分の面積が所定値以上である)ことを基準として決定されてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態では、識別部81は、形状的および/または寸法的な状態の特徴量と、予め定められた閾値と、を比較することによって(換言すれば、形状的および/または寸法的な特徴量が、予め定められた正常範囲にあるか否かに基づいて)、対象物90が良品であるか、それとも、不良品であるかを決定する。
【0046】
本実施形態では、エリアセンサ40のフレームレート(単位は、Hzまたはframe/sec)および視野の大きさ(移送方向D1の高さ)は、同一の対象物90を複数回撮像可能に設定される。そして、識別部81は、同一の対象物90についての複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて対象物90の状態を識別する。このため、対象物90が姿勢変化しながら空中を移送される場合には、同一の対象物90について、少なくとも1回撮像される領域が広がる。その結果、識別部81による識別精度が向上する。ただし、識別部81は、単一の画像に基づいて対象物90の状態を識別してもよい。
【0047】
複数の画像間での同一の対象物90の同定は、同定処理部86の処理として、公知の任意の手法によって行われ得る。例えば、テンプレートマッチング、オプティカルフロー推定手法などの公知の手法が使用されてもよい。あるいは、フレームレートが比較的大きいときには、第1の画像の複数の対象物90と、第2の画像の複数の対象物90と、の重なりを検出し、重なり合っている対象物90同士が同一の対象物90であると判断されてもよい。あるいは、第1の画像の複数の対象物90の各々の重心と、第2の画像の複数の対象物90の各々の重心と、が算出されてもよい。この場合、第1の画像の複数の対象物90の各々の重心を、フレームレートに対応する移動距離(予め想定される距離)だけずらしたときに、第1の画像および第2の画像間で、最も離間距離が小さい重心同士が、同一の対象物90についての重心であると判断されてもよい。
【0048】
選別部60は、識別部81によって決定された状態に基づいて、対象物90の選別を行う。この選別は、特定の対象物90の軌道を変更するための軌道変更動作によって行われる。具体的には、選別部60は、
図1に示すように、複数のノズル61と、複数のバルブ63と、を備えている。
図1では、図示を簡略化するために、ノズル61の数とバルブ63の数とが同じであるように示しているが、ノズル61の数とバルブ63の数との対応関係は、実際には、ノズル61が有する開口の数に依存する。
【0049】
図2は、シュート73とノズル61との位置関係を示す模式図である。図示するように、複数のノズル61は、シュート幅方向D2に配列される。本実施形態では、ノズル61の各々は、シュート幅方向D2に配列された複数の開口62を備えている。複数の開口62の各々について、上述のバルブ63(
図2では図示省略)が一つずつ配置される。開口62の各々のシュート幅方向D2の位置は、エリアセンサ40によって取得される画像の、シュート幅方向D2に対応する方向の位置と予め対応付けられている。ノズル61の各々の開口62の各々は、対応するバルブ63を介して、コンプレッサ(図示せず)に接続されている。
【0050】
ここで説明を
図1に戻す。選別部60は、選別領域65を通過するタイミングに合わせて特定の対象物90に向けてノズル61の開口62からエア64を選択的に噴射することによって、軌道変更動作を行う。具体的には、コントローラ80からの制御信号に応じて、一つまたは複数のバルブ63が選択的に開かれ、開かれたバルブ63に対応する一つまたは複数の開口62から、特定の対象物90に向けてエア64が噴射される。選別領域65とは、対象物90の移送経路(落下軌跡)上の、ノズル61から噴射されたエア64が通る領域である。本実施形態では、エア64が噴射されるべき特定の対象物90は、予め定められた不良を有する対象物90(より具体的には、特定の対象物90は、色彩不良および形状寸法不良の少なくとも一方を有する対象物90)である。ただし、エア64が噴射されるべき特定の対象物90は、任意に設定され得る。例えば、色彩不良を有し、かつ、形状寸法不良を有する対象物90のみにエア64が噴射されてもよい。あるいは、良品であると決定された対象物90に対してエア64が噴射されてもよい(いわゆる逆打ち)。
【0051】
対象物90が選別領域65を通過するタイミングは、噴射遅れ時間によって定まる。噴射遅れ時間とは、特定の対象物90がエリアセンサ40によって撮像されてから、特定の対象物90に向けてエア64が噴射されるまでに要する時間(換言すれば、対象物90が撮像位置から選別領域65まで移送されるのに要する時間)である。噴射遅れ時間は、予め定められていてもよい。あるいは、噴射遅れ時間は、エリアセンサ40によって取得された複数の画像に基づいて演算された対象物90の移送方向D1の移送速度に基づいて決定されてもよい。移送速度の演算方法については後述する。
【0052】
特定の対象物90は、エア64によって吹き飛ばされ、移送方向D1に沿った落下軌道から逸脱して不良品排出樋75に導かれる(
図1に対象物91として示す)。一方、良品であると決定された対象物90には、エア64は噴射されない。このため、良品であると決定された対象物90は、落下軌道を変えることなく、良品排出樋74に導かれる(
図1に対象物92として示す)。
【0053】
本実施形態では、選別装置10は、エリアセンサ40によって取得される画像に基づいて、移送中の対象物90の挙動を把握し、それに基づいて、エア64の噴射モードを決定するように構成される。具体的には、コントローラ80は、まず、演算部82の処理として、同一の対象物90についての複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて、複数回の撮像の間における同一の対象物90の挙動情報を演算する。本実施形態では、この挙動情報には、サイズ変化情報が含まれる。サイズ変化情報とは、複数の画像間での同一の対象物90のサイズの変化に関連する情報である。そのようなサイズの変化は、対象物90の姿勢変化および/または跳ねによって生じ得る。
【0054】
同一の対象物90のサイズが、複数の画像間で所定の程度以上に異なっているということは、対象物90の特異な挙動を表し得る。例えば、対象物90が米のような扁平な形状を有している場合には、対象物90の姿勢変化(エリアセンサ40の視野に直交する方向以外の方向に延在する回転軸線を中心とする回転)に起因して、同一の対象物90のサイズが、複数の画像間で大きく異なることがあり得る。あるいは、対象物90が、シュート73上で意図される通りに摺動せずに、シュート73の底面に衝突して跳ねた場合には、エリアセンサ40から見て対象物90の姿勢に変化が生じていなくても、当該対象物90のサイズが、複数の画像間で大きく異なることがあり得る。
【0055】
図3は、そのような跳ねが生じた場合の対象物90の画像の一例を示している。
図3では、エリアセンサ40によってN回目(Nは自然数)のスキャンで取得された画像上の対象物90を対象物93として示すとともに、N+1回目のスキャンで取得された画像上の対象物90(対象物93と同一の対象物90)を対象物94として示している。対象物90を表す画素は、例えば、RGB各色の画像のいずれかを二値化することによって容易に把握できる。この例では、対象物90の跳ねに起因して、対象物90が、N回目のスキャンとN+1回目のスキャンとの間で、意図される移送経路に対して徐々にフロント側に逸脱しながら移送される場合を示している。
図3から分かるように、対象物94は、対象物90の跳ねに起因して、換言すれば、意図される移送経路から、エリアセンサ40の視野に交差する方向に逸脱する対象物90の挙動に起因して、対象物93よりもX方向およびY方向のサイズが大きくなっている。X方向とは、画像上におけるシュート幅方向D2に対応する方向であり、Y方向とは、画像上における移送方向D1に対応する方向である。
【0056】
上述したような対象物90の挙動を表し得るサイズ変化情報は、典型的には、複数の画像間における同一の対象物90の面積比率である。ただし、サイズ変化情報は、対象物90のサイズの変化の程度を表し得る任意の指標とすることができる。例えば、面積比率に代えて、または、加えて、外周長さの比率が採用されてもよい。あるいは、比率に代えて、または、加えて、差分が採用されてもよい。
【0057】
サイズ変化情報を演算すると、コントローラ80は、噴射制御部83の処理として、サイズ変化情報に基づいて、選別部60によるエア64の噴射モード(換言すれば、特定の対象物90に対してどのようにエア64を噴射するか)を決定する。この噴射モードは、噴射されたエア64の対象物90に対する影響範囲(対象物90の軌道を変えることができる程度に、エア64による力を対象物90に対して作用できる範囲)がその設定次第で変動する任意のパラメータとすることができる。例えば、噴射モードは、シュート幅方向D2におけるエア64の噴射範囲、噴射期間(換言すれば、噴射が継続される時間)、噴射圧力のうちの一つ、または、二つ以上の組合せであってもよい。
【0058】
シュート幅方向D2におけるエア64の噴射範囲は、隣り合う複数の開口62のうちの連続する何個の開口62から同時にエア64を噴射するかによって定まる。エア64を同時に噴射する開口62の数は、一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。そのようなシュート幅方向D2におけるエア64の噴射範囲の制御には、例えば、特開2022-115568号公報に記載された技術が使用されてもよい。この技術によれば、複数の開口62にそれぞれ割り当てられた、画像上の噴射担当範囲のオーバラップの有無、または、オーバラップの程度を可変に設定することで、噴射範囲の大きさが制御される。特開2022-115568号公報は、参照によって、その内容の全体が本願に組み入れられる。
【0059】
噴射期間は、移送中の対象物90とともに移動する座標系における対象物90の噴射範囲に影響を与える。具体的には、噴射期間が長く設定されるほど、移送方向D1におけるエア64の対象物90に対する影響範囲が大きくなる。噴射期間は、バルブ63を開状態に維持する時間を制御することによって制御される。
【0060】
噴射圧力は、エア64の影響範囲と相関のあるパラメータの一つである。具体的には、エア64の噴射圧力が高いほど、噴射されたエア64が移送方向D1およびシュート幅方向D2によって規定される平面上で広範囲に広がるので、エア64の影響範囲も大きくなる。噴射圧力は、例えば、バルブ63の開度を制御することによって、制御されてもよい。
【0061】
本実施形態では、サイズ変化情報が表すサイズの変化の程度が第1の閾値以上であれば、コントローラ80は、噴射制御部83の処理として、サイズの変化の程度が第1の閾値未満であるときよりも、エア64の影響範囲が大きくなるように、エア64の噴射モードを決定する。換言すれば、コントローラ80は、サイズ変化情報が表すサイズの変化の程度が第1の閾値以上であれば、シュート幅方向D2におけるエア64の噴射範囲が広くなること、噴射期間が長くなること、および、噴射圧力が高くなることの少なくとも一つを満たすように、噴射範囲、噴射期間および噴射圧力の少なくとも一つを決定する。
【0062】
この構成によれば、移送中の対象物90の挙動に応じて適切なエア噴射を行って、選別性能を向上できる。具体的には、サイズ変化情報が表すサイズの変化の程度が第1の閾値以上であるということは、上述したように、対象物90の回転および/または跳ねが生じているということである。対象物90のこのような挙動は、特定の対象物90が選別領域65に到達するタイミング、および、特定の対象物90が選別領域65に到達した際のシュート幅方向D2の位置の少なくとも一方に関して、想定(設計値)と実際値とのずれが大きくなる(つまり、意図される選別が失敗する)要因となり得る。しかしながら、上述の構成によれば、対象物90のそのような挙動が検知されたときには、エア64の影響範囲が大きくなる制御が行われるので、特定の対象物90を確実に選別することができる。また、特定の対象物90がどのような挙動を示すときにでも特定の対象物90を確実に選別することができるようにエア64の噴射モードを常に安全サイドで設定する必要が無いので、歩留りの向上と選別精度の向上とを両立させることができる。
【0063】
代替実施形態では、演算部82によって演算される挙動情報には、サイズ変化情報に代えて、または、加えて、ベクトル情報が含まれる。ベクトル情報とは、同一の対象物90の所定の方向における位置変化および姿勢変化の少なくとも一方を表す情報であり、ベクトルとして表すことができる情報である。所定の方向には、本実施形態では、対象物90の意図される移送方向(つまり、移送方向D1)と、移送方向D1とは異なる方向と、が含まれる。また、そのような移送方向D1とは異なる方向には、シュート幅方向D2と、回転方向と、が含まれる。この回転方向とは、対象物90が回転しながら移送される場合において、エリアセンサ40から見たときのエリアセンサ40の視野平面上での回転の方向と定義付けられる。ただし、所定の方向は任意に設定することができ、例えば、所定の方向には、移送方向D1とは異なる方向のみが含まれてもよい。また、移送方向D1とは異なる方向は、シュート幅方向D2および回転方向の一方のみであってもよい。
【0064】
図4および
図5は、演算部82によって演算されるベクトル情報の例を示している。
図4および
図5では、
図3と同様に、N回目のスキャンで取得された画像上の対象物90を対象物93として示すとともに、N+1回目のスキャンで取得された画像上の対象物90(対象物93と同一の対象物90)を対象物94として示している。
図4の例では、1回のスキャンに要する時間の間に同一の対象物90が移動した方向および距離がベクトル情報95として示されている。この例では、ベクトル情報95は、対象物93の重心93aと、対象物94の重心94aと、を直線的に結ぶことによって得られる。重心93a,94aの座標値は、画素単位の分解能で表されてもよいし、あるいは、それよりも高い分解能で表されてもよい。重心93aの座標値は、例えば、X座標(これは、シュート幅方向D2に対応するX方向の座標である)およびY座標(これは、移送方向D1に対応するY方向の座標である)の各々について、対象物93に対応する座標点ごとの座標値の総和を、座標点の数で除算することによって算出できる。重心94aの座標値についても同様の手法で算出できる。
【0065】
図4のベクトル情報95のX方向成分およびY方向成分に基づけば、同一の対象物90は、二つの画像間で、移送方向D1に距離L1だけ移動するとともに、シュート幅方向D2にも距離L2だけ位置変化(横ずれ)が生じていることが分かる。距離L1およびL2を、それぞれエリアセンサ40の1回のスキャンに要する時間で除算すれば、対象物90の移送方向D1およびシュート幅方向D2の移送速度を算出できる。こうして算出された移送方向D1の移送速度は、上述したように、噴射遅れ時間の決定に使用されてもよい。
【0066】
図5に示す例では、1回のスキャンに要する時間の間に同一の対象物90が移動した方向および距離がベクトル情報96として示されている。ベクトル情報96は、対象物93の重心93aと、対象物94の重心94aと、を直線的に結ぶことによって得られる。この例では、対象物90に横ずれは生じていない。
【0067】
ただし、
図5の例では、1回のスキャンに要する時間の間に対象物90の姿勢変化が生じている。この姿勢の変化は、ベクトル情報97によって表される。ベクトル情報97は、対象物90の回転に関するベクトル情報であるとも言える。ベクトル情報97は、本実施形態では、同一の対象物90の長軸の角度変化に基づいて算出される。具体的には、まず、対象物93,94の長軸93b,94bがそれぞれ検出される。長軸93bは、例えば、対象物93の外郭(外周)を構成する各画素(または、画素単位よりも分解能が高い座標値)から任意に選択される2画素(または、二つの座標値)の組合せのうち、最も離間距離が大きい2画素(または、二つの座標値)を直線的に結ぶことによって得られる。長軸94bについても、同様の手法で得られる。そして、長軸93bと長軸94bとがなす角度θ3(=θ1-θ2)が算出される。これによって、回転方向(エリアセンサ40の視野に直交する方向に延在する回転軸線を中心とする回転の方向)に、長軸93bと長軸94bとがなす角度θ3を大きさとして持つベクトル情報97が得られる。ただし、姿勢の変化を表すベクトル情報97は、任意の方法で算出され得る。例えば、ベクトル情報97は、同一の対象物90の短軸の角度変化に基づいて算出されてもよい。あるいは、長軸の角度変化と短軸の角度変化との平均値が、ベクトル情報97の大きさとして扱われてもよい。
【0068】
図4および
図5の例では、連続する二つのスキャンによって得られる二つの画像に基づいてベクトル情報が演算されたが、連続しない二つのスキャン(例えば、N回目のスキャンとN+2回目のスキャン)によって得られる二つの画像に基づいてベクトル情報が演算されてもよい。あるいは、三つ以上の画像に基づいてベクトル情報が演算されてもよい。こうすれば、ベクトル情報の精度を向上できる。この場合、三つ以上の画像から順次抽出される、連続して取得された二つの画像ごとに、ベクトル情報が演算され、得られた複数のベクトル情報を平均化して得られるベクトル情報を採用してもよい。
【0069】
上述したようなベクトル情報を演算すると、コントローラ80は、予測部85の処理として、ベクトル情報に基づいて、特定の対象物90が選別領域65を通過する際の当該特定の対象物90の姿勢を予測する。また、コントローラ80は、予測部85の処理として、ベクトル情報に基づいて、特定の対象物90が選別領域65を通過する際の、意図される移送方向(つまり、移送方向D1)と交差する方向(本実施形態では、シュート幅方向D2であり、以下、交差方向とも呼ぶ)の当該特定の対象物90の位置を予測する。代替実施形態では、予測部85は、選別領域65を通過する際の特定の対象物90の姿勢、および、交差方向の特定の対象物90の位置のうちの一方のみを予測してもよい。
【0070】
選別領域65を通過する際の特定の対象物90の姿勢については、
図5に例示したベクトル情報97(つまり、回転に関するベクトル情報)に基づいて予測される。具体的には、まず、ベクトル情報97と、エリアセンサ40のスキャンレートと、から、特定の対象物90の角速度が算出される。
図5の例であれば、角度θ3を1回のスキャンに要する時間で除した値が角速度として算出される。そして、この角速度と、エリアセンサ40による撮像位置から選別領域65までに要する時間と、に基づいて、選別領域65を通過する際の特定の対象物90の姿勢(回転角度位置)が予測される。エリアセンサ40による撮像位置から選別領域65までの距離は既知であるから、エリアセンサ40による撮像位置から選別領域65までに要する時間は、当該距離を対象物90の移送方向D1の移送速度で除算することによって得られる。移送方向D1の移送速度は、予め定められた設計値であってもよいし、上述した手法によって演算された実測値であってもよい。実測値を使用すれば、予測精度を向上できる。
【0071】
選別領域65を通過する際のシュート幅方向D2の特定の対象物90の位置については、
図4の例に基づけば、ベクトル情報95(つまり、位置変化に関するベクトル情報)に基づいて予測される。具体的には、ベクトル情報95のX方向成分(シュート幅方向D2の成分)と、エリアセンサ40のスキャンレートと、から、特定の対象物90のシュート幅方向D2の移送速度が算出される。具体的には、上述した通り、距離L2を1回のスキャンに要する時間で除した値がシュート幅方向D2の移送速度として算出される。そして、このシュート幅方向D2の移送速度と、エリアセンサ40による撮像位置から選別領域65までに要する時間と、に基づいて、選別領域65を通過する際のシュート幅方向D2の特定の対象物90の位置が予測される。
【0072】
次いで、コントローラ80は、噴射制御部83の処理として、予測部85の予測結果に基づいてエア64の噴射モードを決定する。
図6は、予測結果に基づくエア64の噴射モードの決定方法の一例を示す模式図である。図中の対象物90a~90c、90d~90f、90g~90iは、それぞれ、同一の特定の対象物90の移送軌跡である。対象物90aの位置から対象物90bの位置まで移動した同一の対象物90の挙動に基づいて演算されたベクトル情報95aは、移送方向D1の成分のみを有している。このため、対象物90は、そのまま、選別領域65上の対象物90cの位置まで、まっすぐに移送されることが予測される。したがって、コントローラ80は、ノズル61の開口62a~62iのうち、対象物90cの位置に対応する開口62bからエア64を噴射する。
【0073】
対象物90dの位置から対象物90eの位置まで移動した同一の対象物90の挙動に基づいて演算されたベクトル情報95dは、シュート幅方向D2の成分を有している。このため、対象物90は、選別領域65上の対象物90fの位置まで、斜めに移送されることが予測される。したがって、コントローラ80は、対象物90fの位置に対応する開口62dからエア64を噴射する。本実施形態では、この場合の開口62dからのエア64の噴射は、ベクトル情報95aに対応する対象物90に対するエア64の噴射と同様に行われる。ただし、代替実施形態では、シュート幅方向D2の成分を有するベクトル情報95dに対応する対象物90に対しては、エア64の対象物90に対する影響範囲が大きくなるように、噴射モードが決定されてもよい。つまり、噴射時間が、より長くなるように決定されてもよいし、噴射圧力が、より高くなるように決定されてもよいし、開口62dを含む連続する二つ以上の開口62からエア64が噴射されてもよい。
【0074】
対象物90gの位置から対象物90hの位置まで移動した同一の対象物90の挙動に基づいて演算されたベクトル情報95g(位置変化に関するベクトル情報)は、移送方向D1の成分のみを有している。このため、対象物90は、そのまま、選別領域65上の対象物90iの位置まで、まっすぐに移送されることが予測される。さらに、対象物90gの位置から対象物90hの位置まで移動した同一の対象物90の挙動に基づいて、ベクトル情報97g(回転に関するベクトル情報)も検出されている。この例では、このベクトル情報97に基づいて、対象物90は、選別領域65上に位置するとき、シュート幅方向D2に延在する長軸を有する姿勢をとると予測される。したがって、コントローラ80は、このような姿勢の、対象物90iの位置の対象物90に対応する開口62g,62hからエア64を噴射する。つまり、この例では、ベクトル情報97gに基づいて予測される対象物90の姿勢に応じて、エア64を噴射する開口62の数を増やしている。代替実施形態では、エア64を噴射する開口62の数を増やすことに代えて、または、加えて、噴射時間が、より長くなるように決定されてもよいし、および/または、噴射圧力が、より高くなるように決定されてもよい。
【0075】
上述した種々の制御によれば、選別領域65を通過する際の、特定の対象物90の姿勢、および、シュート幅方向D2の特定の対象物90の位置が、ベクトル情報に基づいて予測される。そして、その予測結果に基づいて、エア64の噴射モード、および、シュート幅方向D2の噴射位置が決定される。したがって、特定の対象物90の姿勢および位置に応じた適切なエア64の噴射を行うことができ、選別精度を向上できる。
【0076】
代替実施形態では、噴射制御部83は、演算部82によって演算されたベクトル情報に基づいて、予測部85による予測を行うことなく、エア64の噴射モードを決定してもよい。例えば、噴射制御部83は、回転に関するベクトル情報が検出された場合に、検出されない場合に比べて、エア64の対象物90に対する影響範囲が大きくなるように、噴射モードを決定してもよい。あるいは、噴射制御部83は、横ずれを表すベクトル情報が検出された場合に、検出されない場合に比べて、エア64の対象物90に対する影響範囲が大きくなるように、噴射モードを決定してもよい。
【0077】
さらなる代替実施形態では、回転に関するベクトル情報に基づいて、対象物90が縦長になる姿勢が予測されたときは、噴射制御部83は、噴射期間を、相対的に長くなるように決定してもよい。あるいは、対象物90が横長になる姿勢が予測されたときは、噴射制御部83は、噴射期間を、相対的に短くなるように決定してもよい。この構成によれば、噴射期間を、特定の対象物90の姿勢に応じて必要な程度に適切に設定できるので、選別精度と歩留りとを両立できる。
【0078】
ここで、説明を
図1に戻す。
図1に示すように、本実施形態では、エリアセンサ40は、対象物90の移送経路上の選別領域65よりも上流側に位置する対象物90と、選別領域65よりも下流側に位置する対象物90と、の両方を撮像可能な画角41を有している。以下の説明では、エリアセンサ40によって取得される画像のうち、選別領域65よりも上流側が撮像された画像領域を上流側画像と呼び、選別領域65よりも下流側が撮像された画像領域を下流側画像と呼ぶ。識別部81による上述した識別処理(選別部60による選別のための対象物90の状態を識別する処理)は、上流側画像を用いて行われる。下流側画像は、以下に説明するように、上流側画像とは別の目的で使用される。
【0079】
具体的には、コントローラ80は、監視部84の処理として、下流側画像に基づいて、選別部60によるエア64の噴射の動作状況を監視する。本実施形態では、コントローラ80は、同一の対象物90について複数回撮像された複数の下流側画像に基づいてベクトル情報を演算し、演算されたベクトル情報に基づいて、エア64の噴射の動作状況を監視する。ベクトル情報の算出方法は、上述の通りである。特定の対象物90のベクトル情報(換言すれば、移送速度および移送方向、および/または、姿勢変化)は、エア64が噴射される前後で急激に変わるので、この構成によれば、選別部60によるエア64の噴射が正常に行われているか否か(換言すれば、選別部60のエア流路の詰まりなどの異常が生じてないか)を監視できる。
【0080】
エア64が正常に噴射されたか否かの判断は、例えば、ベクトル情報が表す移送速度が所定の数値範囲内にあるか否か、および/または、ベクトル情報が表す移送方向が所定の方向範囲内にあるか否か、に基づいて行われてもよい。あるいは、エア64が正常に噴射されたか否かの判断は、人工知能を用いて公知の任意の手法で行われてもよい。例えば、この判断は、ベクトル情報を、機械学習によって生成された推論モデルに適用することによって行われてもよい。
【0081】
代替実施形態では、ベクトル情報を用いることなく、単一の下流側画像に基づいて、エア64が正常に噴射されたか否かの判断が行われてもよい。この場合、その判断は、人工知能を用いて公知の任意の手法で行われてもよい。
【0082】
コントローラ80は、エア64の噴射動作に異常が生じていると判断されるときは、公知の任意の手法によって、ユーザに異常報知を行ってもよい。この構成によれば、エア64の噴射動作に異常が生じているにも関わらず、選別装置10が継続して使用されることを防止できる。さらに、コントローラ80は、エア64の噴射動作についての判断結果、または、その統計データを任意のデバイス(例えば、ディスプレイ、通信インタフェース、記憶媒体、印刷装置など)に出力してもよい。この構成によれば、この出力結果を、選別部60の調整作業(異常解消のための調整作業)のための情報として利用できる。エア64の噴射動作についての判断結果は、下流側画像のX方向座標値と対応付けられて出力されてもよい。
【0083】
さらに、本実施形態では、コントローラ80は、同定処理部86の処理として、上流側画像の対象物90と下流側画像の対象物90との同一性を判断する同定処理を行う。より具体的には、コントローラ80は、上流側画像に基づいて特定の対象物90であると識別部81によって判断された対象物90(つまり、エア64を噴射すべきと判断された対象物90)と、下流側画像に基づいて、エア64が噴射されて移送軌道が変更されたと監視部84によって判断された対象物90と、の同一性を判断する。同定処理の手法については、上述の通りである。そして、コントローラ80は、同定処理の結果(同一性の判断結果)に基づいて、エア噴射によって軌道が変更されたと監視部84によって判断された対象物90が、特定の対象物90(つまり、エア64を噴射すべきと識別部81によって判断された対象物90)であるか否かを判断し、その結果、または、その統計データを任意のデバイスに出力する。この構成によれば、特定の対象物90が意図される通りに正確に選別されているか否かを把握できる。そのような情報は、例えば、選別部60の調整作業に利用できる。
【0084】
また、本実施形態では、コントローラ80は、上流側画像に基づく対象物90の状態の識別結果と、下流側画像に基づく軌道変更の有無の判断結果(換言すれば、各対象物90が不良品排出樋75に導かれたのか、それとも、良品排出樋74に導かれたのかの判断結果)と、を関連付けて集計して、その集計結果を任意のデバイスに出力する。例えば、コントローラ80は、良品排出樋74に導かれた対象物90のみを母数とする対象物90の状態の統計データ(以下、良品状態データと呼ぶ)と、不良品排出樋75に導かれた対象物90のみを母数とする対象物90の状態の統計データ(以下、不良品状態データと呼ぶ)と、を出力する。この構成によれば、従来のユーザによる目視確認に頼った手法とは対照的に、選別装置の新規な機能が提供され、ユーザは、良品排出樋74に導かれた対象物90の状態と、不良品排出樋75に導かれた対象物90の状態と、を区別して、正確に把握できる。代替実施形態では、良品状態データおよび不良品状態データの一方のみが出力されてもよい。
【0085】
代替実施形態では、コントローラ80は、上流側画像の対象物90と下流側画像の対象物90との同一性を判断することなく、良品状態データおよび不良品状態データの少なくとも一方を出力してもよい。例えば、コントローラ80は、識別部81の処理として、下流側画像に基づいて、対象物90の各々の状態を識別してもよい。そして、コントローラ80は、そのような識別結果と、下流側画像に基づく軌道変更の有無の判断結果と、を関連付けて集計して、その集計結果を任意のデバイスに出力してもよい。
【0086】
上述した選別装置10によれば、対象物90の特異な挙動(意図されない挙動)を検出することができる。そして、そのような特異な挙動に起因する識別精度および/または選別精度の低下を抑制するための種々の制御を行うことができる。特異な挙動には、例えば、対象物90同士の衝突、選別装置10の構成部品(上述の実施形態では、シュート73)への衝突などに起因して、対象物90が想定される移送軌道から外れること、対象物90の姿勢、形状、重量などに起因して、特定の対象物90の移送速度が他の対象物90の移送速度と大きく異なること、対象物90の形状、対象物90同士の衝突などに起因して、対象物90が回転しながら移送されることなどが含まれ得る。
【0087】
図7は、第2実施形態による選別装置110の概略構成を示す模式図である。以下、選別装置110について、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。選別装置110は、エリアセンサ40に代えて、第1のエリアセンサ140と、第2のエリアセンサ145(換言すれば、追加的なエリアセンサ)と、を備えている。第1のエリアセンサ140は、選別領域65よりも上流側に位置する対象物90のみを撮像可能な(選別領域65よりも下流側に位置する対象物90は撮像できない)画角141を有している。第2のエリアセンサ145は、選別領域65よりも下流側に位置する対象物90のみを撮像可能な(選別領域65よりも上流側に位置する対象物90は撮像できない)画角146を有している。これにより、第1のエリアセンサ140は、選別領域65よりも上流側に位置する視野が撮像された上流側画像を取得し、第2のエリアセンサ145は、選別領域65よりも下流側に位置する視野が撮像された下流側画像を取得する。このように構成された選別装置110によっても、選別装置10の上述した種々の処理(エリアセンサ40によって取得される画像を利用して行われる各種処理)を同様に実行することができる。
【0088】
本実施形態では、第1のエリアセンサ140と第2のエリアセンサ145とでは、撮像方向(視野に直交する方向)が異なっている。このため、エア64の噴射の動作状況(つまり、エア64の噴射に起因する対象物90の軌道変更の有無)の判断がより行いやすくなるように画角146を設定することが可能になる。
【0089】
代替実施形態では、選別装置110は、第1のエリアセンサ140に代えて、上流側画像を取得するためのラインセンサを備えていてもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上記した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0091】
例えば、選別装置10,110は、可視光光源(上述の例では、光源30,31)に代えて、または、加えて、任意の波長を有する電磁波を対象物90に照射する電磁波照射源を備えていてもよい。そのような電磁波は、例えば、X線および近赤外線の少なくとも一方であってもよい。この場合、選別装置10,110は、エリアセンサ40,140,145に代えて、または、加えて、電磁波照射源によって照射される電磁波の波長に対応する複数の電磁波検出素子を有するエリアセンサを備えていてもよい。
【0092】
本発明は、選別装置に限られず、種々の形態で実現可能である。例えば、本発明は、対象物の状態を検査するための検査装置として実現されてもよい。そのような検査装置は、例えば、上述した選別装置10から選別部60および不良品排出樋75が取り除かれた構成を備えていてもよい。この場合、コントローラ80は、識別部81によって識別された対象物90の状態に加えて、演算部82によって演算された挙動情報(あるいは、その統計データ)を、任意のデバイス(例えば、ディスプレイ、通信インタフェース、記憶媒体、印刷装置など)に出力してもよい。
【0093】
そのような検査装置によれば、対象物90が意図される通りに移送されるように検査装置が正常に動作しているかを挙動情報に基づいて確認できる。また、対象物の特徴(形状および/または大きさ)の均一度が低いと、対象物が移送される際の特異な挙動の発生確率が高くなるので、この検査装置によれば、挙動情報に基づいて、対象物の特徴の均一度を判定できる。
【符号の説明】
【0094】
10...光学式選別装置
20...検出ユニット
30...第1の光源
31...第2の光源
32...第1の光
33...第2の光
40...エリアセンサ
41...画角
60...選別部
61...ノズル
62,62a~62i...開口
63...バルブ
64...エア
65...選別領域
71...貯留タンク
72...フィーダ
73...シュート
74...良品排出樋
75...不良品排出樋
80...コントローラ
81...識別部
82...演算部
83...噴射制御部
84...監視部
85...予測部
86...同定処理部
90...対象物
90,90a~90i,91,92,93,94...対象物
93a,94a...重心
93b,94b...長軸
95,95a,95d,95g,96,97,97g...ベクトル情報
110...選別装置
140...第1のエリアセンサ
141...画角
145...第2のエリアセンサ
146...画角
D1...移送方向
D2...シュート幅方向