(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006150
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池用膜電極接合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1004 20160101AFI20250109BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20250109BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/10 101
H01M4/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106777
(22)【出願日】2023-06-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/共通課題解決型基盤技術開発/導電性ナノファイバーネットワークによる自立MPLの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】倉持 政宏
(72)【発明者】
【氏名】川部 雅章
(72)【発明者】
【氏名】道畑 典子
(72)【発明者】
【氏名】江尻 貴子
(72)【発明者】
【氏名】野口 知之
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB06
5H018BB08
5H018BB12
5H018EE03
5H018EE05
5H126AA02
5H126BB06
5H126FF03
5H126JJ01
5H126JJ09
(57)【要約】
【課題】固体高分子電解質膜とガス拡散層との間に層間剥離が生じるのを防止した、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【解決手段】前記固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、一方のバイポーラプレートからもう一方のバイポーラプレートへ向かって、(1)平均繊維径が3μm以下の繊維を含有する導電性不織布を備えた、自立した水分管理シート、(2)第一触媒層、(3)固体高分子電解質膜、(4)第二触媒層、(5)前記第二触媒層と接している水分管理層、及び(6)ガス拡散層を備え、前記固体高分子電解質膜と前記ガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のバイポーラプレートからもう一方のバイポーラプレートへ向かって、
平均繊維径が3μm以下の繊維を含有する導電性不織布を備えた、自立した水分管理シート、
第一触媒層、
固体高分子電解質膜、
第二触媒層、
前記第二触媒層と接している水分管理層、及び
ガス拡散層、
を備えた、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、
前記固体高分子電解質膜と前記ガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上である、
固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【請求項2】
空気極側バイポーラプレートから燃料極側バイポーラプレートへ向かって、
平均繊維径が3μm以下の繊維を含有する導電性不織布を備えた、自立した水分管理シート、
空気極側触媒層、
固体高分子電解質膜、
燃料極側触媒層、
前記燃料極側触媒層と接している燃料極側水分管理層、及び
燃料極側ガス拡散層、
を備えた、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、
前記固体高分子電解質膜と前記燃料極側ガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上である、
固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【請求項3】
請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
(工程1)分散媒に触媒粒子を分散した触媒粒子分散液を用意する工程、
(工程2)水分管理層における一方の主面に前記触媒粒子分散液を塗布することで、前記水分管理層における一方の主面上に前記触媒粒子が堆積してなる第二触媒層を形成する工程、
を有する、
請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
(工程1)分散媒に触媒粒子を分散した触媒粒子分散液を用意する工程、
(工程2)燃料極側水分管理層における一方の主面に前記触媒粒子分散液を塗布することで、前記燃料極側水分管理層における一方の主面上に前記触媒粒子が堆積してなる燃料極側触媒層を形成する工程、
を有する、
請求項2に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から固体高分子形燃料電池用セルの構成部材として、剛性を有するカーボンペーパーなどで構成されたガス拡散層の主面上に水分管理層(一般的にはガス拡散層の主面上に塗布され形成される撥水性に富む多孔層)と、更にその上に触媒層を備えた構成部材が利用されている。
そして、一対のバイポーラプレートの各々に設けられている溝を通してガス(酸素ガスや水素ガス)が供給されると、当該ガスはガス拡散層から水分管理層を順に通過して触媒層へ供給される。次いで、当該触媒層で反応し、水が生成されると共に発電が成される。なお、生成された水は水分管理層を通過して反応系外へ排出される。
【0003】
本願出願人は、従来技術にかかる「ガス拡散層-水分管理層-触媒層」を備えた固体高分子形燃料電池用セルは、ガス拡散層と水分管理層とが一体化して製造されており、排水性とガス拡散性および取扱い性が悪いという問題を見出した。
そこで、「ガス拡散層-水分管理層-触媒層」の積層態様を、例えば、静電紡糸法を用いて調製した導電性繊維を含有する不織布を備えた、自立した水分管理シート(以降、自立型水分管理シートと略する)と触媒層との積層態様に置き換えることで、問題を解決するに至っている(特許文献1;特開2017-195087号公報)。
なお、特許文献1では、酸素ガスが供給される空気極側バイポーラプレートと、燃料ガスが供給される燃料極側バイポーラプレートの両極側に存在する「ガス拡散層-水分管理層-触媒層」の積層態様を、共に「自立型水分管理シート-触媒層」の積層態様に置き換えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の前記固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における、一方のバイポーラプレートともう一方のバイポーラプレート(多くの場合、空気極側バイポーラプレートと燃料極側バイポーラプレート)に挟まれている部分、つまり、
自立型水分管理シート、
触媒層、
固体高分子電解質膜、
触媒層、
自立型水分管理シート、
の積層態様は、剛性を有するカーボンペーパーなどで構成されたガス拡散層を有していない。そのため、剛性に劣り、製造工程でのハンドリング性に劣るという新たな問題を有するものであった。
この理由として、上述した静電紡糸法を用いて調製される繊維の平均繊維径は3μm以下になることが知られている(特開2020-125556号公報など)。つまり、カーボンペーパーが備える導電性繊維(カーボン繊維)の平均繊維径は太い(8μmなど)のに対し、従来技術に基づき作製された導電性繊維を含有する不織布の平均繊維径は3μm以下と細い。その結果、平均繊維径が3μm以下の導電性繊維を含有する不織布を備えた自立型水分管理シートは、カーボンペーパーよりも、剛性に劣るためだと考えられた。
【0006】
そこで、本願出願人は、上述の新たな問題を解決できるよう、固体高分子形燃料電池用セルにおける一方のバイポーラプレート側の「ガス拡散層-水分管理層-触媒層」のみを、「自立型水分管理シート-触媒層」に置き換えることを検討した。つまり、一方のバイポーラプレート側からもう一方のバイポーラプレートへ向かい、
自立型水分管理シート、
第一触媒層、
固体高分子電解質膜、
第二触媒層、
前記第二触媒層と接している水分管理層、及び
ガス拡散層、
の積層態様を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を検討した。
このような積層態様を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、カーボンペーパーなどで構成されたガス拡散層を有することで剛性が維持されている結果、製造工程でのハンドリング性の意図しない低下が防止されているものであった。
【0007】
しかし、発電試験を行ったところ、発電に伴う固体高分子電解質膜の膨潤収縮によって、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間に層間剥離が生じるという、新たな問題が発生した。
問題が発生した理由として、平均繊維径が細い繊維を含むことで柔軟な“自立型水分管理シート”が一方のバイポーラプレート側のみに存在していることで、固体高分子電解質膜が当該一方のバイポーラプレート側へ向かい膨潤収縮し易くなる。次いで、もう一方のバイポーラプレート側に存在する触媒層(触媒層は多くの場合、固体高分子電解質膜の主面に塗布され形成されている)、または、当該もう一方のバイポーラプレート側に存在する触媒層と水分管理層が、当該固体高分子電解質膜の動きに追従して、当該一方のバイポーラプレート側へ向かい大きく移動する結果、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間(具体的には、触媒層の内部、固体高分子電解質膜と触媒層の層間、水分管理層の内部、触媒層と水分管理層の層間、水分管理層とガス拡散層の層間のいずれか、あるいは複数箇所)に層間剥離が生じたと考えられた。特に、撥水性に富むよう水分管理層の構成素材にフッ素系樹脂を採用した場合には、当該水分管理層は触媒層と剥離し易くなり、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間に層間剥離が発生し易くなった。
そして、このような問題を有する固体高分子形燃料電池用セルを用いる限り、セル内抵抗の上昇とそれに伴う発電電圧の低下が招かれ、発電性能に優れる固体高分子形燃料電池を実現することは困難であった。
【0008】
本発明は、一方のバイポーラプレート側に「自立型水分管理シート-触媒層」、そして、もう一方のバイポーラプレート側に「ガス拡散層-水分管理層-触媒層」を備えている固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を備えている固体高分子形燃料電池用膜電極接合体にかかるものであって、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間に層間剥離が生じるのを防止した、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の提供を課題とする。それにより、発電性能に優れる固体高分子形燃料電池を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記課題は、以下の本発明により解決することができる:
[1]一方のバイポーラプレートからもう一方のバイポーラプレートへ向かって、
平均繊維径が3μm以下の繊維を含有する導電性不織布を備えた、自立した水分管理シート、
第一触媒層、
固体高分子電解質膜、
第二触媒層、
前記第二触媒層と接している水分管理層、及び
ガス拡散層、
を備えた、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、
前記固体高分子電解質膜と前記ガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上である、
固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
[2]空気極側バイポーラプレートから燃料極側バイポーラプレートへ向かって、
平均繊維径が3μm以下の繊維を含有する導電性不織布を備えた、自立した水分管理シート、
空気極側触媒層、
固体高分子電解質膜、
燃料極側触媒層、
前記燃料極側触媒層と接している燃料極側水分管理層、及び
燃料極側ガス拡散層、
を備えた、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、
前記固体高分子電解質膜と前記燃料極側ガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上である、
固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
[3][1]の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
(工程1)分散媒に触媒粒子を分散した触媒粒子分散液を用意する工程、
(工程2)水分管理層における一方の主面に前記触媒粒子分散液を塗布することで、前記水分管理層における一方の主面上に前記触媒粒子が堆積してなる第二触媒層を形成する工程、
を有する、
[1]の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
[4][2]の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
(工程1)分散媒に触媒粒子を分散した触媒粒子分散液を用意する工程、
(工程2)燃料極側水分管理層における一方の主面に前記触媒粒子分散液を塗布することで、前記燃料極側水分管理層における一方の主面上に前記触媒粒子が堆積してなる燃料極側触媒層を形成する工程、
を有する、
[2]の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法では、水分管理層(ガス拡散層の主面上に形成されている水分管理層)の主面へ触媒粒子分散液を塗布することで、水分管理層の主面上に触媒層を形成している。
これにより、触媒層の構成成分が水分管理層へ食い込んだ存在態様となることによって、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上となる。
【0011】
そして、水分管理層の主面上に形成された触媒層と水分管理層の積層体を備えることで、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を実現できる。
その結果、当該固体高分子形燃料電池用膜電極接合体では、発電時に固体高分子電解質膜が自立型水分管理シートの存在しているバイポーラプレート側へ向かい膨潤収縮するのに併せ、水分管理層の主面上に形成された触媒層または当該触媒層と水分管理層が当該バイポーラプレート側へ向かい大きく移動しようとする場合であっても、当該触媒層と水分管理層とが強固に結合しているため、当該触媒層と水分管理層の間の層間剥離(特に、撥水性に富むよう水分管理層の構成素材にフッ素系樹脂を採用した場合であっても、当該触媒層と水分管理層の間の層間剥離)の発生が抑制されている。その結果、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間に層間剥離が生じるのが抑制されている。
特に、空気極側バイポーラプレートから燃料極側バイポーラプレートへ向かって、
自立型水分管理シート、
空気極側触媒層、
固体高分子電解質膜、
燃料極側触媒層、
燃料極側水分管理層、
燃料極側ガス拡散層、
の積層態様を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体では、燃料ガス(例えば、分子量が小さい水素ガス)よりも分子量が大きいことで拡散性が劣る酸素ガスが、自立型水分管理シートによって拡散され均一的に空気極側触媒層へ供給され易い。
その結果、剛性が維持されていることで製造工程でのハンドリング性の意図しない低下が防止されていると共に、発電性能の高い固体高分子形燃料電池を実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(自立型水分管理シート)
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、単に膜電極接合体と称することがあります)を構成する自立型水分管理シートは、平均繊維径が3μm以下の繊維を含有する導電性不織布を備えている。前記導電性不織布は、構成繊維のうち少なくとも1種類の平均繊維径3μm以下の繊維を含んでおり、且つ、不織布として導電性を有すれば、特に限定されるものではなく、例えば、導電性粒子を含有する有機樹脂製の導電性繊維を含有している導電性不織布、有機樹脂製の導電性繊維同士の間に導電性粒子が存在している導電性不織布、導電性成分で構成された導電性繊維を含有している導電性不織布、導電性成分が有機樹脂繊維の表面にコーティングされた導電性繊維を含有している導電性不織布であることができる。典型的には、導電性粒子を含有する有機樹脂製の導電性繊維を含有している導電性不織布である。以降、導電性不織布の構成繊維を構成繊維と称することがある。
これらの構成繊維を構成可能な有機樹脂は疎水性有機樹脂であっても、親水性有機樹脂であっても良く、特に限定するものではない。前者の疎水性有機樹脂であると、フッ素系樹脂等の疎水性樹脂を自立型水分管理シートの空隙に含浸しなくても優れた水の透過性を示し、優れた排水性を示す。他方で、親水性有機樹脂であると、水分を保持することができるため、固体高分子電解質膜を湿潤に保つことができ、充分な発電性能を発揮できる固体高分子形燃料電池を作製することができる。なお、有機樹脂にダイヤモンド、グラファイト、無定形炭素は含まれない。この「疎水性有機樹脂」は水との接触角が90°以上の有機樹脂であり、その例として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体、などのフッ素系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂;などを挙げることができる。これらの中でもフッ素系樹脂は耐熱性、耐薬品性、疎水性が強いため、好適である。
【0013】
他方、「親水性有機樹脂」は水との接触角が90°未満の有機樹脂であり、その例として、レーヨンなどのセルロース;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂;ポリアクリロニトリル;酸化アクリル;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのアクリル系樹脂;親水性ポリウレタン、ポリビニルピロリドンなどの親水性基(アミド基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基等)を有する樹脂;を挙げることができる。なお、本発明における構成繊維は疎水性有機樹脂1種類以上及び/又は親水性有機樹脂1種類以上とが、混合又は複合した状態にあっても良い。
導電性成分で構成された導電性繊維として、上述した疎水性有機樹脂あるいは親水性有機樹脂の繊維を炭化させた繊維を用いてもよい。このような導電性繊維として、ポリアクリロニトリルを焼成することで炭化させた繊維を採用するのが好ましく、炭化処理後も繊維形状を維持できるように、炭化処理の前に不融化(耐炎化)する工程を実施するのが好ましい。この不融化は、例えば、酸化雰囲気中、温度200~300℃で10~120分間加熱して実施できる。なお、当該加熱は2回以上、温度又は時間の異なる条件で実施することができる。炭化させるための焼成条件は、適宜調整できるが、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性気体雰囲気中、最高温度800~3000℃で加熱することによって実施できる。
【0014】
本発明における自立型水分管理シートは、電子移動性に優れているように、導電性粒子を含有しているのが好ましい。この導電性粒子は電気抵抗率が105Ω・cm以下の粒子であり、導電性に優れているように、103Ω・cm以下であるのが好ましく、101Ω・cm以下であるのがより好ましい。このような導電性粒子は特に限定するものではないが、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、金属粒子、金属酸化物粒子などを挙げることができる。これらの中でもカーボンブラックは耐薬品性、導電性及び分散性の点で好適である。なお、導電性粒子の粒径は特に限定するものではないが、平均一次粒径が5nm~200nmであるのが好ましく、10nm~100nmであるのがより好ましい。この導電性粒子の平均一次粒径は脱落しにくく、また、繊維形態を形成しやすいように、構成繊維の繊維径よりも小さいのが好ましい。また、動的光散乱法による粒度分布計から求められる導電性粒子の平均粒径は特に限定するものではないが、平均一次粒径が5nm~1000nmであるのが好ましく、10nm~500nmであるのがより好ましい。
【0015】
このような導電性粒子は構成繊維において、どのように存在していても良いが、繊維内部においても存在していても、繊維内部および繊維の外側表面に存在していても、繊維の外側表面に存在していてもよい。導電性という観点から、構成繊維表面に、少なくとも一部が露出した導電性粒子と、構成繊維内部に埋没した導電性粒子の両方を含んでいるのが好ましい。なお、構成繊維は、繊維径のばらつきが比較的少なく、自立型水分管理シート表面が平滑性に優れるように、分岐した構造を有しないのが好ましい。このような導電性粒子を含有する構成繊維は、例えば、静電紡糸法を用いて、有機樹脂と導電性粒子とを含む紡糸液を紡糸することによって得ることができる。
【0016】
本発明における構成繊維は導電性粒子を含有する繊維である場合、導電性粒子の含有量は特に限定するものではないが、導電性に優れているように、導電性粒子と有機樹脂との質量比は10~90:90~10であるのが好ましく、20~80:80~20であるのがより好ましく、30~40:70~30であるのがより好ましく、40~60:60~40であるのが更に好ましい。導電性粒子が10mass%未満であると、導電性が不足しやすい傾向があり、導電性粒子が90mass%を超えると、繊維形態保持性が低下する傾向があるためである。
【0017】
本発明における自立型水分管理シートを構成することのできる構成繊維の平均繊維径は3μm以下であるならば特に限定するものではないが、10nm~2μmであるのが好ましく、100nm~1.5μmであるのがより好ましく、400nm~1.1μmであるのが更に好ましい。平均繊維径が10μmよりも太いと、構成繊維同士の接触点が少なく、導電性が不足しやすい傾向があり、他方で、10nmよりも細いと、繊維内部に導電性粒子を含有し難い傾向があるためである。なお、構成繊維の平均繊維径は導電性粒子が脱落しにくいように、導電性粒子の一次粒子径の5倍以上であるのが好ましい。
【0018】
本発明における「平均繊維径」は40点における繊維径の算術平均値を意味し、「繊維径」は顕微鏡写真をもとに計測した値である。導電性粒子が繊維表面から露出した構成繊維のみから構成されている場合には、繊維表面から露出した導電性粒子を含めた直径を意味する。そして、導電性粒子が繊維表面から露出した構成繊維を含有していないか、導電性粒子が繊維表面から露出した構成繊維を含有していても、導電性粒子が繊維表面から露出していない部分を有する構成繊維を含んでいる場合には、導電性粒子が繊維表面から露出していない部分における直径を意味する。
【0019】
本発明における構成繊維は電子の移動性に優れているように、連続繊維であるのが好ましい。このような連続繊維は、例えば、静電紡糸法、スパンボンド法により製造することができ、特に、静電紡糸法により形成した連続繊維は電子の移動性に優れているため好適である。本発明における「連続繊維」とは、電子顕微鏡を用いる自立型水分管理シートの写真撮影を、撮影画像の一辺が導電性繊維の平均繊維径の60倍程度の長さとなる倍率で行った場合に、電子顕微鏡写真1枚あたりの構成繊維の端部数が0.3以下であることを意味する。つまり、電子顕微鏡写真20枚における構成繊維の端部の総数を撮影枚数(20枚)で除した、電子顕微鏡写真1枚あたりの構成繊維の端部数が0.3以下であることを意味する。なお、その写真撮影は、自立型水分管理シートの切断部を含まない中央部における、連続的に異なる箇所において行う。例えば、平均繊維径が1μmの導電性繊維が連続繊維であるかどうかを確認する場合、電子顕微鏡を用いる写真撮影を、導電性不織布の切断部を含まない中央部における、連続的に異なる箇所において、撮影画像の一辺が60μm程度となる倍率(2500倍)で20枚行い、電子顕微鏡写真1枚あたりの構成繊維の端部数を算出し、0.3以下であれば、連続繊維と考えることができる。
【0020】
本発明における自立型水分管理シートは上述のような構成繊維を含有することができ、当該構成繊維同士の間に導電性粒子が分布し存在してなる自立型水分管理シートであることができる。
しかし、自立型水分管理シートが本来有する多孔性を利用して、面方向においても、排水性およびガス拡散性に優れ、高加湿条件下においても発電性能の高い燃料電池を作製できるように、フッ素系樹脂及び/又は導電性粒子(例えば、カーボン粒子)など、何も充填されていないものであることができる。つまり、構成繊維のみから構成されているものであることができる。
特に、構成繊維が一種類の導電性繊維のみである自立型水分管理シートを採用することができる。
【0021】
本発明における自立型水分管理シートの形態は特に限定するものではないが、例えば、不織布、織物、編物であることができる。これらの中でも不織布形態であると、孔径が比較的揃っており、排水性およびガス拡散性に優れていることができるため好適である。
【0022】
本発明における自立型水分管理シートが不織布形態からなる場合、構成繊維同士は接着剤によって結合していても良いが、導電性に優れるように、構成繊維を構成する有機樹脂によって結合しているのが好ましい。この好適である有機樹脂の結合として、例えば、構成繊維同士の絡合、溶媒による可塑化結合、熱による融着による結合を挙げることができる。
【0023】
本発明における自立型水分管理シートにおける導電性繊維の含有割合は、電子の移動性に優れるように、10mass%以上であるのが好ましく、50mass%以上であるのがより好ましく、導電性繊維のみ(100mass%)から構成されているのが特に好ましい。なお、導電性繊維以外の繊維として、フッ素繊維、ポリオレフィン繊維などの疎水性有機樹脂繊維、セルロース、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール系繊維などの親水性有機樹脂繊維を含んでいることができる。また、導電性または非導電性を問わず、平均3μmを超える繊維を含むこともできる。
【0024】
本発明における自立型水分管理シートは導電性繊維以外の繊維を含んでいることができるが、導電性に優れているように、電気抵抗が300mΩ・cm2以下であるのが好ましく、150mΩ・cm2以下であるのがより好ましく、50mΩ・cm2以下であるのが更に好ましい。本発明における「電気抵抗」は、φ25mmに切断した自立型水分管理シート(4.9cm2)を両面側から金メッキを施した金属プレートで挟み、金属プレートの積層方向に、2MPaで加圧下、低抵抗測定装置(日置電機社製、型名:RM3545)を用いて、試験片の抵抗値(mΩ)が測定し、更に、測定された抵抗値に試験片の面積(4.9cm2)を乗じることによって得られる値である。
【0025】
なお、自立型水分管理シートは導電性に優れるように、導電性粒子は自立型水分管理シートの10~90mass%を占めているのが好ましく、20~80mass%を占めているのがより好ましい。
【0026】
本発明における自立型水分管理シートの目付は特に限定するものではないが、取り扱い性、生産性の点から0.1~100g/m2であるのが好ましく、0.1~50g/m2であるのがより好ましい。また、厚さも特に限定するものではないが、1~500μmであるのが好ましく、1~250μmであるのが更に好ましく、3~100μmであるのが更に好ましく、4~50μmであるのが更に好ましい。自立型水分管理シートの厚さが薄いと、燃料電池の抵抗を下げることができ、また、燃料電池の体積を小さくすることができる。この「目付」は自立型水分管理シートを10cm角に切断して試料を調製し、その試料の質量から1m2の大きさの質量に換算した値をいい、「厚さ」はシックネスゲージ((株)ミツトヨ製:コードNo.547-321:測定力1.5N以下)を用いて測定した値をいう。
【0027】
本発明における自立型水分管理シートは本来有する多孔性を利用して、面方向においても、排水性およびガス拡散性に優れ、高加湿条件下においても発電性能の高い燃料電池を作製できるように、40%以上の空隙率を有するのが好ましく、50%以上の空隙率を有するのが好ましく、60%以上の空隙率を有するのが好ましく、70%以上の空隙率を有するのがより好ましい。この「空隙率P(単位:%)」は次の式から得られる値をいう。
P=100-(Fr1+Fr2+・・+Frn)
ここで、Frnは自立型水分管理シートを構成する成分nの充填率(単位:%)を示し、次の式から得られる値をいう。
Frn=[M×Prn/(T×SGn)]×100
ここで、Mは自立型水分管理シートの目付(単位:g/cm2)、Tは自立型水分管理シートの厚さ(単位:cm)、Prnは自立型水分管理シートにおける成分n(例えば、有機樹脂、導電性粒子)の存在質量比率、SGnは成分nの真密度(単位:g/cm3)を、それぞれ意味する。
【0028】
本発明における自立型水分管理シートは液水が押し出されやすいように、自立型水分管理シートを構成する構成繊維表面はフッ素系樹脂で被覆されていても良い。このフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体、などを挙げることができる。
【0029】
また、自立型水分管理シートは更に導電性に優れるように、自立型水分管理シートの空隙に、導電性粒子、例えば、カーボン粒子を含有していることができる。また、導電性不織布が導電性繊維を含まない場合であっても、構成繊維の空隙に導電性粒子、例えば、カーボン粒子を含有することにより、シート全体として導電性を有することができる。このカーボン粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどを挙げることができる。
また、樹脂にカーボンブラック粒子が分散している導電性粒子を、空隙に含んだ自立型水分管理シートであることができる。このような導電性粒子は、特に限定しないが、例えば、実施例において使用した静電スプレー法によって調製できる。
【0030】
本発明における自立型水分管理シートは常法により製造することができる。例えば、好適である不織布形態の自立型水分管理シートを構成する構成繊維は、有機樹脂と導電性粒子とを混合した紡糸液を用いて紡糸して得ることができ、この紡糸した導電性繊維を直接捕集し、集積すれば、繊維ウエブを形成することができる。この繊維ウエブが適度に絡合していることによって、ある程度の強度があれば自立型水分管理シートとして使用できるし、強度を付与又は向上させるために、溶媒による可塑化、熱による融着、接着剤による接着等により結合して、導電性多孔シ-トとすることもできる。なお、導電性繊維を直接捕集し、集積して形成した繊維ウエブを構成する導電性繊維は連続繊維であるのが好ましい。連続繊維であることによって、導電性及び強度の点で優れているためである。
【0031】
なお、繊維ウエブの形成方法としては、例えば、静電紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、或いは特開2009-287138号公報に開示されているような、液吐出部から吐出された紡糸液に対してガスを平行に吐出し、紡糸液に1本の直線状に剪断力を作用させて繊維化する方法、などを挙げることができる。これらの中でも静電紡糸法又は特開2009-287138号公報に開示の方法によれば、繊維径の小さい導電性繊維を紡糸できることから、薄い自立型水分管理シートを製造することができ、結果として燃料電池の抵抗を下げることができ、また、燃料電池の体積を小さくすることができる膜電極接合体を製造できる。
【0032】
なお、静電紡糸法又は特開2009-287138号公報に開示の方法のように、溶媒に有機樹脂を溶解させた溶液に導電性粒子を混合した紡糸液を使用する場合、溶媒として、紡糸時に揮散しにくいものを使用し、繊維ウエブを形成した後に、溶媒置換により紡糸溶媒を除去すると、導電性繊維同士が可塑化結合した状態になりやすく、結果として導電性の優れる自立型水分管理シートを製造することができ、また、導電性繊維同士が密着して接触抵抗が低くなるため、好適である。
【0033】
また、紡糸した導電性繊維を連続繊維として巻き取り、次いで導電性繊維を所望繊維長に切断して短繊維とした後、公知の乾式法又は湿式法により繊維ウエブを形成し、溶媒による可塑化、熱による融着、接着剤による接着等により結合し、自立型水分管理シートとすることもできる。
【0034】
更に、自立型水分管理シートが液水を押し出しやすいように、構成繊維表面をフッ素系樹脂で被覆する場合には、フッ素系樹脂を含む溶液又はペーストを自立型水分管理シートに塗布、散布、又は含浸するなどの方法により付与した後、乾燥及び焼成する。自立型水分管理シートの空隙にカーボンを含有させる場合も同様に、カーボンとフッ素系樹脂とを含む溶液又はペーストを自立型水分管理シートに塗布、散布、又は含浸するなどの方法により付与した後、乾燥及び焼成する。
【0035】
自立型水分管理シートが導電性繊維を含まない場合には、有機樹脂と導電性粒子とを混合した紡糸液の代わりに、有機樹脂を含む(導電性粒子を含まない)紡糸液を用いること以外は、これまで述べた方法に準じて、非導電性不織布を調製することができる。
非導電性不織布の空隙に導電性粒子を含有する導電性不織布は、非導電性不織布へ導電性粒子を含有した分散液を付与し加熱するなどして分散媒を除去して調製できる。
【0036】
(固体高分子電解質膜)
本発明の膜電極接合体を構成する固体高分子電解質膜は、従来から公知のものであることができ、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂膜、スルホン化芳香族炭化水素系樹脂膜、アルキルスルホン化芳香族炭化水素系樹脂膜、無機-有機複合系樹脂膜などであることができる。なお、固体高分子電解質膜は不織布等の補強材で補強されていても良い。
【0037】
(触媒層)
本発明の膜電極接合体の触媒層は触媒活性を有する粒子(以降、触媒粒子と称する)とイオン交換樹脂とを含む層であることができる。この触媒粒子としては、特に限定するものではないが、例えば、白金、白金合金[ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、スズから選ばれる1種以上の金属と、白金との合金]、或いは白金又は白金合金が、活性炭、カーボンブラック等のカーボンに触媒活性が担持された触媒粒子であることができる。なお、触媒粒子は1種類、又は2種類以上を含むことができる。なお、一方のバイポーラプレート側に設けられる触媒層に含まれる触媒粒子と、もう一方のバイポーラプレート側に設けられる触媒層に含まれる触媒粒子とは同じであっても異なっていても良い。
また、触媒粒子の平均粒子径は適宜調整できるが、1~20nmであるのが好ましい。なお、平均粒子径は透過型電子顕微鏡によって測定できる。
【0038】
一方、イオン交換樹脂は前述の固体高分子電解質膜と同様であることができる。つまり、パーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂、スルホン化芳香族炭化水素系樹脂、アルキルスルホン化芳香族炭化水素系樹脂、無機-有機複合系樹脂などであることができる。特に、固体高分子電解質膜と同じであると、固体高分子電解質膜との親和性に優れるため好適である。なお、一方のバイポーラプレート側に設けられる第一触媒層のイオン交換樹脂と、もう一方のバイポーラプレート側に設けられる第二触媒層のイオン交換樹脂とは同じであっても異なっていても良い。また、いずれの触媒層のイオン交換樹脂も1種類から構成されていても、2種類以上から構成されていても良い。
【0039】
(水分管理層およびガス拡散層)
本発明で用いるガス拡散層は、従来から公知のものであることができ、例えば、カーボンペーパー、カーボン不織布、ガラス繊維不織布に導電剤とフッ素系樹脂を充填したもの;耐酸性のある有機繊維(例えば、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリフッ化ビニリデン繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリトリメチレンテレフタレート繊維を代表とするポリエステル系繊維を単独で、又は2種類以上を含む)からなる有機繊維不織布などであることができる。
また、本発明で用いる水分管理層は、前述したガス拡散層の主面上に形成される撥水性に富む多孔層などの、従来から公知の層であることができる。当該水分管理層は、一例として、カーボン粉末などの導電剤とポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂との混合物を採用し、ガス拡散層へ塗布あるいは含浸させることによって、その主面上に形成される通気性を有する層であることができる。
【0040】
(固体高分子形燃料電池用膜電極接合体)
本発明の膜電極接合体は、前述のような自立型水分管理シート、固体高分子電解質膜、触媒層、水分管理層、及びガス拡散層を有するものであり、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上である。
本発明の製造方法では、水分管理層(ガス拡散層の主面上に形成されている水分管理層)の主面へ触媒粒子分散液を塗布することで、水分管理層の主面上に触媒層を形成している。これにより、触媒層の構成成分が水分管理層へ食い込んだ存在態様となることによって、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間の層間剥離強度が0.001N以上となる。
【0041】
(固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法)
本発明による膜電極接合体の製造方法では、水分管理層における一方の主面上に触媒粒子分散液を塗布することで、水分管理層の前記主面上に前記触媒粒子が堆積してなる触媒層を形成する工程を含む限り、各種従来法を組み合わせることにより、本発明による膜電極接合体を調製することができる。
【0042】
触媒粒子分散液の調製に用いる触媒粒子としては、先述した(触媒層)に例示した触媒粒子を用いることができる。
触媒粒子分散液の調製に用いる分散媒としては、例えば、水、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルを用いることができる。
触媒粒子分散液中の触媒粒子濃度、触媒粒子分散液の塗布量は、形成される触媒層中に充分量の触媒粒子が含有されるように適宜決定することができる。触媒層中の触媒粒子の含有量は、触媒量として(すなわち、触媒粒子が担体を含む場合には、前記担体を除いた量として)、0.01~1.0mg/cm2であることができる。
触媒層は、水分管理層における一方の主面上に触媒粒子分散液を塗布した後、所望により乾燥させることにより、形成することができる。なお、水分管理層における一方の主面上に触媒粒子分散液を塗布する方法は適宜選択できるが、スプレーやスピンコート、グラビアコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、ロールコーティング、リップコート、フロートコート、コンマロールコート、キスコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷、などを用いることができる。
【0043】
本発明の製造方法の一態様としては、以下の製造方法を挙げることができる。
本実施態様では、自立型水分管理シート(例えば、後述する実施例におけるA1-1等)と、「第一触媒層-固体高分子電解質膜-第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」とからなる積層体(例えば、後述する実施例における積層体B2)とを、予め別々に調製しておき、前記自立型水分管理シートを、前記積層体における第一触媒層側の主面に接するようにして積層し、ホットプレス処理により一体化することにより膜電極接合体を得ることができる。
【0044】
より詳細には、前記自立型水分管理シートは、先述した(自立型水分管理シート)で説明した調製方法により調製することができる。
【0045】
前記積層体は、「第一触媒層-固体高分子電解質膜」積層体と、「第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」積層体とを、予め別々に調製しておき、それらを一体化することにより、前記積層体を調製することができる。
前記「第一触媒層-固体高分子電解質膜」積層体は、仮の支持体上に触媒層を形成したものを準備し、別に準備した固体高分子電解質膜の一方の主面に、間に前記触媒層を介し当該触媒層が形成された支持体を積層し、ホットプレス処理を実施した後、仮の支持体を剥がすことにより、調製することができる。
前記「第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」積層体は、予め用意した「水分管理層-ガス拡散層」積層体の水分管理層側の主面に、触媒粒子分散液を塗布して第二触媒層を形成することにより、調製することができる。
得られた両積層体を、固体高分子電解質膜の第一触媒層を有しない主面と、第二触媒層とが面するように重ね、ホットプレス処理を実施することにより、「第一触媒層-固体高分子電解質膜-第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」とからなる積層体を調製することができる。
【0046】
最後に、前記自立型水分管理シートを、前記積層体における第一触媒層側の主面に接するようにして積層し、ホットプレス処理により一体化することにより、本発明の膜電極接合体を得ることができる。
【実施例0047】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0048】
(層間剥離強度の測定方法)
後述する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における層間剥離強度は以下の手順で測定した。
(1)固体高分子形燃料電池用膜電極接合体から、短冊状切片(幅10mm、長さ50mm)を切り出し、試験片を調製する。
(2)試験片に露出するガス拡散層(1cm角)の主面全体に両面テープの片面を貼付し、前記両面テープの他面を、縦型電動計測スタンドに組み込んだ剥離試験用アタッチメント[(株)イマダ製]の試験台に張り付け固定する。
(3)試験片における固体高分子電解質膜部分をピンセットで一部剥がしてつかみ部分とし、クリップでデジタルフォースゲージ[型番:ZTA5N、(株)イマダ製、測定下限値:0.001N]に固定する。
(4)前記つかみ部分を、速度60mm/min.で引張り、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体が有する四辺のうち一辺と平行を成す方向へ向かい、固体高分子電解質膜を剥がす。このとき、前記方向へ剥がされた長さが4~8mmとなる間に測定された荷重(N)の最大値を測定する。
(5)前記荷重を試験片の幅(1cm)で除して、90°剥離強度を算出する。
(6)この90°剥離強度の測定を5枚の試験片について行い、その算術平均値を算出し、平均値を固体高分子電解質膜とガス拡散層との間の層間剥離強度(単位:N/cm)とする。
【0049】
(自立型水分管理シートA1-1の調製)
フッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物、導電性粒子としてカーボンブラック粒子(平均粒径280nm)、分散媒としてジメチルホルムアミドを混合し、フッ素系樹脂及びカーボンブラック粒子を合わせた固形分質量12質量%で、フッ素系樹脂とカーボンブラック粒子との固形分質量比は20:80に設定された紡糸液を調整した。
調製した紡糸液を用いて静電紡糸法によって、フッ素系樹脂にカーボンブラック粒子が分散している導電性繊維のみで構成された静電紡糸不織布1-1(平均繊維径:0.8μm)を調製した。このようにして調製した静電紡糸不織布を、自立型水分管理シートA1-1とした。
【0050】
(自立型水分管理シートA1-2の調製)
静電紡糸不織布1-1をプレス装置(30℃、2MPa)へ供し、静電紡糸不織布1-2を調製した。このようにして調製した静電紡糸不織布を、自立型水分管理シートA1-2とした。
【0051】
(自立型水分管理シートA1-3の調製)
静電紡糸不織布1-1をプレス装置(150℃、2MPa)へ供し、静電紡糸不織布1-3を調製した。このようにして調製した静電紡糸不織布を、自立型水分管理シートA1-3とした。
【0052】
(自立型水分管理シートA2の調製)
フッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物、導電性粒子としてカーボンブラック粒子(平均粒径280nm)、分散媒としてジメチルホルムアミドを混合し、フッ素系樹脂及びカーボンブラック粒子を合わせた固形分質量12質量%で、フッ素系樹脂とカーボンブラック粒子との固形分質量比は40:60に設定された紡糸液を調整した。
また、フッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物、導電性粒子としてカーボンブラック粒子(平均粒径280nm)、分散媒としてジメチルホルムアミドを混合し、フッ素系樹脂及びカーボンブラック粒子を合わせた固形分質量8質量%で、フッ素系樹脂とカーボンブラック粒子との固形分質量比は20:80に設定された静電スプレー液を調整した。
調製した紡糸液を用いて静電紡糸法によって、フッ素系樹脂にカーボンブラック粒子が分散している導電性繊維のみで構成された静電紡糸不織布(平均繊維径1.1μm)を調製した。当該紡糸と同時に、調製した静電スプレー液を用いて静電スプレー法によって、フッ素系樹脂にカーボンブラック粒子が分散している導電性粒子(平均粒子径4.4μm)を噴霧した。
これにより、構成繊維が導電性繊維であって、当該構成繊維同士の間に導電性粒子が分布し存在してなる、静電紡糸不織布を調製した。このようにして調製した静電紡糸不織布を、自立型水分管理シートA2とした。
【0053】
(自立型水分管理シートA3の調製)
ポリアクリロニトリル15gをジメチルホルムアミド85gに溶解させ紡糸液を調製した。調製した紡糸液を用いて静電紡糸法によって、ポリアクリロニトリル不織布(平均繊維径:0.4μm)を調製した。次いで、ポリアクリロニトリル不織布を、空気中、温度220℃で30分間、及び温度260℃で1時間の酸化処理を行い、さらに、加熱温度800℃に調整したヒーターへ供し炭化させることで、炭素繊維のみで構成された静電紡糸不織布(平均繊維径:0.4μm)を調製した。このようにして調製した静電紡糸不織布を、自立型水分管理シートA3とした。
【0054】
(自立型水分管理シートの各種物性の測定)
調製した自立型水分管理シートA1-1~A1-3、A2、A3の各種物性を、表1にまとめた。なお、電気抵抗値(単位:mΩ・cm2)は、以下の方法で測定した。
【0055】
(電気抵抗値の測定方法)
自立型水分管理シートから、直径25mmの円形の試料を採取した。そして、得られた試料を金メッキ処理が施された金属プレートで挟み込み、金属プレートの積層方向に2MPaの圧力を加えた。この状態のまま、低抵抗測定装置(日置電機社製、型名:RM3545)を用いて、両金属プレート間の抵抗値(mΩ)を測定し、測定値に試料の面積(4.9cm2)を乗じることで、自立型水分管理シートの電気抵抗値(mΩ・cm2)を算出した。
【0056】
【0057】
(従来技術にかかる「第一触媒層-固体高分子電解質膜-第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」(積層体B1)の調製)
・「第一触媒層-固体高分子電解質膜-第二触媒層」の調製
エチレングリコールジメチルエーテル10.4gに対して、白金担持炭素粒子(田中貴金属(株)製、TEC10V40E、炭素に対する白金担持量40質量%)0.8gを加え、超音波処理によって分散させた後、電解質樹脂溶液として市販の5質量%ナフィオン溶液(米国シグマ・アルドリッチ社製)4.0gを加え、超音波処理により分散させ、更に攪拌機で攪拌して、触媒粒子分散液を調製した。次いで、この触媒粒子分散液を支持体[ナフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン製テープ、ニチアス(株)製、厚さ:0.1mm]に塗布し、熱風乾燥機によって60℃で乾燥し、支持体の主面上に白金担持量が0.4mg/cm2の触媒層を形成した。
他方、固体高分子電解質膜として、Nafion(登録商標)NR211(米国デュポン社製、融点:200℃以上)を用意した。この固体高分子電解質膜の両面に、間に触媒層を介し当該触媒層が形成された支持体を積層した。その後、露出する両主面間へ温度140℃、圧力2MPa、時間10分間の条件でホットプレスを施した後、支持体を剥がすことで、固体高分子電解質膜の両主面に触媒層(一方の主面に第一触媒層、もう一方の主面に第二触媒層)を転写し形成した。
【0058】
・「水分管理層-ガス拡散層」の調製
一方の主面上にフッ素系樹脂とカーボン粒子からなるマイクロポーラス層(水分管理層)を有するカーボンペーパー(SGL社製 SIGRACET(登録商標)GDL22BB)を用意した。
【0059】
・積層体B1の調製
最後に、マイクロポーラス層付カーボンペーパーのマイクロポーラス層と、両主面に触媒層を備える固体高分子電解質膜における一方の触媒層(第二触媒層)とが面するようにして重ね、温度140℃、圧力2MPa、時間10分間の条件でホットプレスを施した。
これにより、従来技術にかかる「第一触媒層-固体高分子電解質膜-第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」の積層体B1を調製した。
【0060】
(本発明にかかる「第一触媒層-固体高分子電解質膜-第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」(積層体B2)の調製)
・「第一触媒層-固体高分子電解質膜」の調製
エチレングリコールジメチルエーテル10.4gに対して、白金担持炭素粒子(田中貴金属(株)製、TEC10V40E、炭素に対する白金担持量40質量%)0.8gを加え、超音波処理によって分散させた後、電解質樹脂溶液として市販の5質量%ナフィオン溶液(米国シグマ・アルドリッチ社製)4.0gを加え、超音波処理により分散させ、更に攪拌機で攪拌して、触媒粒子分散液を調製した。次いで、この触媒粒子分散液を支持体[ナフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン製テープ、ニチアス(株)製、厚さ:0.1mm]に塗布し、熱風乾燥機によって60℃で乾燥し、支持体の主面上に白金担持量が0.4mg/cm2の触媒層を形成した。
他方、固体高分子電解質膜として、Nafion(登録商標)NR211(米国デュポン社製、融点:200℃以上)を用意した。この固体高分子電解質膜の一方の主面に、間に触媒層を介し当該触媒層が形成された支持体を積層した。その後、露出する両主面間へ温度140℃、圧力2MPa、時間10分間の条件でホットプレスを施した後、支持体を剥がすことで、固体高分子電解質膜の一方の主面に触媒層(第一触媒層)を転写し形成した。
【0061】
・「第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」の調製
一方の主面上にフッ素系樹脂とカーボン粒子からなるマイクロポーラス層(水分管理層)を有するカーボンペーパー(SGL社製 SIGRACET(登録商標)GDL22BB)を用意した。
このマイクロポーラス層(水分管理層)を有するカーボンペーパーにおける、マイクロポーラス層(水分管理層)の主面に、前記触媒粒子分散液を塗布した。その後、熱風乾燥機によって60℃で乾燥し、マイクロポーラス層(水分管理層)を有するカーボンペーパーにおける、マイクロポーラス層(水分管理層)の主面に、白金担持量が0.4mg/cm2の触媒層(第二触媒層)を形成した。
【0062】
・積層体B2の調製
最後に、固体高分子電解質膜の触媒層を有していない主面と、触媒層(第二触媒層)を備えたマイクロポーラス層(水分管理層)を有するカーボンペーパーにおける当該触媒層とが面するようにして重ね、温度140℃、圧力2MPa、時間10分間の条件でホットプレスを施した。
これにより、本発明にかかる「第一触媒層-固体高分子電解質膜-第二触媒層-水分管理層-ガス拡散層」の積層体B2を調製した。
【0063】
(比較例1~3)
自立型水分管理シートA1-1、A2、A3各々を、積層体B1における第一触媒層側の主面に接するようにして積層し、露出する両主面間へ温度140℃、圧力2MPa、時間10分間の条件でホットプレス処理を施すことで、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を各々調製した。
なお、このようにして調製した固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間における層間剥離強度は、全て、上述したデジタルフォースゲージでは測定できないほど弱かったことから、その層間剥離強度はいずれも0.001N未満であった。
【0064】
(実施例1~3)
積層体B1の替わりに積層体B2を用いたこと以外は、比較例1~3と同様にして、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を各々調製した。
なお、このようにして調製した固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間における層間剥離強度は、いずれも0.05Nであった。
【0065】
(実施例4~5)
自立型水分管理シートA1-1の替わりに自立型水分管理シートA1-2、A1-3を各々用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を調製した。
なお、このようにして調製した固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間における層間剥離強度は、いずれも0.05Nであった。
【0066】
(固体高分子形燃料電池の発電性能の評価方法)
固体高分子形燃料電池の発電性能は、以下の方法で評価した。
技術研究組合FC-Cubic公開の小型燃料電池セルを用意した。そして、空気極側バイポーラプレートと燃料極側バイポーラプレート間の面圧が1MPa程度になるよう、両バイポーラプレート間に固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を挟み込み、固体高分子形燃料電池を組み立てた。このとき、空気極側バイポーラプレートと自立型水分管理シートが、また、燃料極側バイポーラプレートとガス拡散層とが接するようにして、バイポーラプレート間に固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を挟み込んで、固体高分子形燃料電池を組み立てた。
そして、当該固体高分子形燃料電池を用いて発電を行った。なお、固体高分子形燃料電池の発電は、燃料極側に水素ガス500cc/min、空気極側に空気ガス2000cc/minを供給し、セル温度は80℃、バブラー温度80℃のフル加湿条件で行った。そして、発電中における電位-電流曲線を測定することで、発電中の1.0A/cm2と2.0A/cm2電流密度時におけるセル電圧(単位:V)、ならびに、発電中の1.0A/cm2と2.0A/cm2電流密度時における両バイポーラプレート間のセル抵抗(単位:mΩ・cm2)を測定した。
【0067】
(発電性能の評価後における、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間における、層間剥離の確認方法)
発電性能を評価した後の固体高分子形燃料電池から、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を取り出した。そして、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間に層間剥離が発生しているか否か、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を厚さ方向へ切断し、切断により形成された断面を光学顕微鏡を用いて観察することで確認した。
層間剥離が発生している場合には表中に「×」を記載し、層間剥離が発生していない場合には表中に「〇」を記載した。
【0068】
表2に記載の、積層体A1-1~A1-3、A2、A3と積層体B1、B2とを組み合わせ調製した、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を用いた、固体高分子形燃料電池の発電性能(発電中の1.0A/cm2電流密度時におけるセル電圧(単位:V)とセル抵抗(単位:mΩ・cm2))、そして、発電性能を評価した後の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における層間剥離の発生有無を、表2にまとめた。
【0069】
【0070】
実施例1~5で調製した固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を用いた、固体高分子形燃料電池の発電性能(発電中の2.0A/cm2電流密度時におけるセル電圧(単位:V)とセル抵抗(単位:mΩ・cm2))、そして、発電性能を評価した後の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における層間剥離の発生有無を、表3にまとめた。
【0071】
【0072】
以上の結果から、本発明にかかる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間に層間剥離が生じるのが防止されており、発電性能に優れる固体高分子形燃料電池を実現できるものであった。