(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006158
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20250109BHJP
G09F 13/16 20060101ALI20250109BHJP
G09F 9/40 20060101ALI20250109BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B30/56
G09F13/16 F
G09F9/40 302
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106787
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】湯座 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】大島 千広
【テーマコード(参考)】
2H199
5C094
5C096
5G435
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BA62
2H199BB15
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB52
2H199BB67
2H199BB68
5C094DA01
5C096AA06
5C096BA04
5C096BC12
5C096CB05
5C096CC06
5C096CE03
5C096CE07
5C096FA05
5C096FA08
5G435DD11
5G435FF05
5G435GG08
5G435GG09
(57)【要約】
【課題】 広い視野角で空中像を表示することができる表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の空中映像表示装置100は、同一の映像をそれぞれ出力する複数の光源110_1、110_2、110_3と、複数の光源に対向する第1の再帰反射面120_1、第2の再帰反射面120_2、第3の再帰反射面120_3を含む再帰反射シート120と、再帰反射シート120に対向するように配置されたビームスプリッター130とを含む。第1、第2、第3の再帰反射面120_1、120_2、120_3の各々には、光源110の映像を透過または通過させるための複数の切り欠き122が形成され、複数の光源110_1、110_2、110_3に対応する複数の空中像150_1、150_2、150_3が表示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射を利用して空中像を表示可能な表示装置であって、
同一の映像をそれぞれ異なる方向に出力する複数の光源と、
入射した光を一定の割合で反射光と透過光に分離する光学部材と、
前記光学部材の主面に対し概ね180度の範囲で再帰反射面を提供する再帰反射部材とを含み、
前記複数の光源の各々が出力する映像の光が前記光学部材を介して前記再帰反射部材に入射され、前記再帰反射部材で反射された光が前記光学部材を透過し、前記複数の光源の映像に対応する複数の空中像が表示される、表示装置。
【請求項2】
前記複数の光源と前記光学部材との間に前記再帰反射部材が配置され、前記再帰反射部材には、前記複数の光源からの光を透過または通過させるための複数の開口が形成される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
少なくとも3つの光源が前記光学部材の主面に対し異なる角度で配置され、
前記再帰反射部材は、前記複数の光源の位置に整合する複数の再帰反射面を有し、前記複数の再帰反射面には、前記複数の光源によって出力された映像を前記光学部材に向けて透過または通過させるための複数の切り欠きが形成される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記再帰反射部材は、凹形状を有し、凹形状の側面と底面に近接して光源が配置される、請求項3に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射を利用して空中に像を表示する表示装置に関し、広い視野角で空中像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射を用いた空中表示(Aerial Imaging by Retro-Reflection:AIRR)が知られている。例えば、特許文献1は、空中に形成される像をより広い角度から観察可能とするため、2つの再帰反射部材を用いた表示装置を開示している。また、特許文献2は、再帰反射部材で正反射された光が観察範囲に入らないように光源および再帰反射部材が位置決めすることで、コントラストや視認性の低下を抑制した表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-107165号公報
【特許文献2】特開2022-150245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
我々が日常的に目にするものは、それ自体が発光しているか外光に照らされ、これにより見ているものを視覚的に認識することができる。その多くは、物理的に存在していることから、空間にデザイン性をあしらう際には、それが必要なものであっても空間のデザイン性を損ねる恐れがある。このことを解決する手段の一つとして、空中像の利用が挙げられる。
【0005】
図1は、空中像を表示する表示装置の一例を示す図である。同図に示すように、エレベータドア10の近傍には、エレベータの動作状態(例えば、停止する階など)を表す空中像20が表示される。空中像20は、あたかも壁面に取り付けられたランタン(照明器具)のように空間デザイン性をもって表示される。ユーザーU1は、方向Y1から空中像20を視認し、エレベータの動作状態を確認する。
【0006】
図2は、このような空中像を表示する表示装置の概略構成を示す上面図である。表示装置30は、光源(例えば、映像を出力するディスプレイ)40、入射光を所定の割合で反射光と透過光に分離するビームスプリッター50、ビームスプリッター50の表面に形成された装飾や意匠が施された加飾シート60、再帰反射シート70を含んで構成される。
【0007】
光源40に映像が表示されると、その映像を表す光の一部がビームスプリッター50で反射され、その反射光が再帰反射シート70に進む。再帰反射シート70は、入射した光と同じ方向に光を反射する光学部材であり、再帰反射シート70で反射された光は、再びビームスプリッター50に進み、ビームスプリッター50および加飾シート60を透過した光が、収束後再度拡散し、
図1に示すような空中像20(図の例では「A」)が表示される。
【0008】
空中像20の光学的特性として、空中像20は、ビームスプリッター50の面に関し、光源40と対称の位置に形成される。また、ユーザーが観察できる空中像20は、ユーザーの視点からビームスプリッター50を介して再帰反射シート70を見ることができる範囲に限られる。つまり、視野角に制限がある。このため、
図1、
図2において、空中像20の正面側のユーザーU1、U2、U3は、その視点方向に空中像20を視認することができるが、背面側のユーザーU4は、その視点方向Y2に空中像20を視認することができず、その結果、エレベータの動作状態を確認することができない。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決し、広い視野角で空中像を表示することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置は、再帰反射を利用して空中像を表示可能なものであって、同一の映像をそれぞれ異なる方向に出力する複数の光源と、入射した光を一定の割合で反射光と透過光に分離する光学部材と、前記光学部材の主面に対し概ね180度の範囲で再帰反射面を提供する再帰反射部材とを含み、前記複数の光源の各々が出力する映像の光が前記光学部材を介して前記再帰反射部材に入射され、前記再帰反射部材で反射された光が前記光学部材を透過し、前記複数の光源の映像に対応する複数の空中像が表示される。
【0011】
ある態様では、前記複数の光源と前記光学部材との間に前記再帰反射部材が配置され、前記再帰反射部材には、前記複数の光源からの光を透過または通過させるための複数の開口が形成される。ある態様では、少なくとも3つの光源が前記光学部材の主面に対し異なる角度で配置され、前記再帰反射部材は、前記複数の光源の位置に整合する複数の再帰反射面を有し、前記複数の再帰反射面には、前記複数の光源によって出力された映像を前記光学部材に向けて透過または通過させるための複数の切り欠きが形成される。ある態様では、前記再帰反射部材は、凹形状を有し、凹形状の側面と底面に近接して光源が配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の光源が出力する同一映像に対応する複数の空中像を表示するようにしたので、単一の空中像を表示する場合と比較して空中像の視野角を広げることができる。これにより、空中像の視認性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】従来の表示装置の概略構成を示す上面図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の実施例に係る表示装置の概略構成を示す上面図、
図3(B)は、その正面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る表示装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る表示装置は、AIRR方式により広い視野角で空中像を表示する機能を備える。また、本発明に係る表示装置は、空間デザイン性を兼ね備えた広い視野角の空中像を表示することが可能である。さらに本発明に係る表示装置は、空中像を利用したユーザー入力インターフェースにも適用することができる。以下の実施例の説明で参照する図面は、発明の理解を容易にするために誇大した表示を含んでおり、実際の製品の形状やスケールをそのまま表したものではないことに留意すべきである。
【実施例0015】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図3(A)は、本発明の実施例に係る表示装置の概略構成を示す上面図、同図(B)は正面図であり、当該表示装置は、例えば、
図1に示すようなエレベータドア10の近傍に設置され、空中像を表示する。
【0016】
本実施例の表示装置100は、異なる方向に映像を出力するように異なる位置に配された少なくとも3つの光源110_1、110_2、110_3(これらの光源を総称するときは光源110)、光源110に近接して配された再帰反射シート120、再帰反射シート120に対向するように配されたビームスプリッター130、ビームスプリッター130の表面に形成された装飾や意匠が施された加飾シート140を含んで構成される。
【0017】
光源110は、空中像の原映像を出力するものであり、例えば、液晶等のディスプレイやプロジェクタなどが用いられる。光源110_1、110_2、110_3は、広い視野角での空中像の表示を可能にするため、少なくとも3つの方向に向けて映像を出力する。例えば、光源110_1は、その光軸(ディスプレイの表示面と法線方向)がビームスプリッター130の主面に対し角度θ1(=30度)、光源110_2は、角度θ2(=90度)、光源110_3は、角度θ3(=150度)となるように配置される。
【0018】
光源110_1、110_2、110_3のサイズ(例えば、ディスプレイのサイズ)は、異なるものであってもよいが、光源110_1、110_2、110_3は、同一の映像を表示する。例えば、図示しない表示コントローラは、光源110_1、110_2、110_3に同一映像を表示させるように光源110を制御する。例えば、
図1に示す例では、光源110_1、110_2、110_3は、エレベータが停止している階の映像を出力する。また、光源110は、偏光制御された光を出射するものであってもよく、例えば、偏光制御された光を出射するようにディスプレイ表面に偏光板を取り付けるものであってもよい。
【0019】
再帰反射シート120は、入射した光と同じ方向に光を反射する光学部材であり、例えば、コーナーキューブ型再帰反射素子、三角錐型再帰反射素子、ビーズ型再帰反射素子などによって構成される。再帰反射シート120は、広い視野角の空中像の表示を可能にするため、ビームスプリッター130の主面に対して概ね180度の再帰反射面を提供する。具体的には、再帰反射シート120は、光源110_1、110_2、110_3の位置に整合するような凹部形状を有し、光源110_1の主面と概ね平行である第1の再帰反射面120_1、光源110_2の主面と概ね平行である第2の再帰反射面120_2、光源110_3の主面と概ね平行である第3の再帰反射面110_3とを含んで構成される。この例では、第2の再帰反射面120_2の平面形状が第1および第3の再帰反射面120_1、120_3よりも大きく、第1の再帰反射面120_1と第3の再帰反射面120_3の平面形状が概ね等しいが、これは一例である。第1、第2および第3の再帰反射面120_1、120_2、120_3は、1つの再帰反射部材を折り曲げ加工することによって構成されてもよいし、3つの再帰反射部材を接着剤等により結合することによって構成されてもよい。
【0020】
さらに、再帰反射シート110の第1の再帰反射面120_1、第2の再帰反射面120_2、第3の再帰反射面120_3には、裏面側に配置された光源110からの映像の光を透過または通過させるための複数の切り欠き122が形成される。切り欠き122の数、ピッチ、形状、大きさ等は、光源110のサイズ、光源110によって出力される映像の明るさや解像度等に応じて適宜選択される。ここでは、
図3(B)に示すように、切り欠き122は、細長い矩形状の開口(貫通孔)であるが、切り欠き122は、他の形状、例えば、グリッド状の開口であってもよい。また、貫通孔以外にも、光を透過する透明な部材による透過窓であってもよい。
【0021】
ビームスプリッター130は、入射光を一定の割合で透過光と反射光に分離する光学部材である(ビームスプリッター130は、ハーフミラーであってもよい)。ビームスプリッター130の表面には、加飾シート140が貼り付けられる。加飾シート140には、装飾や意匠が施され、これにより、空中像を表示する空間に適したデザインが提供される。
【0022】
図4は、本実施例の表示装置による空中像の表示を説明する図である。光源110_1、110_2、110_3に同一の映像がそれぞれ表示されると、当該映像の光は、再帰反射シート120の切り欠き122を介してビームスプリッター130の方向に進み、ビームスプリッター130で反射された光が再帰反射シート120に入射し、再帰反射シート120で反射された光がビームスプリッター130および加飾シート140を透過し、これにより、光源110_1、110_2、110_3に表示された映像に対応する空中像150_1、150_2、150_5が表示される。
【0023】
例えば、光源110_1に表示された映像の光は、第1の再帰反射面120_1の切り欠き122を通過し、その光の一部がビームスプリッター130で反射され、反射した光が、例えば、第2の再帰反射面120_2、第3の再帰反射面120_3に入射する。これらの入射した光は、入射したときと同じ方向に反射され、その反射した光がビームスプリッター130を透過し、空中像150_1が表示される。第3の再帰反射面120_3に入射した光も同様に、入射したときと同じ方向に反射され、その反射した光がビームスプリッター130および加飾シート140を透過し、空中像150_1が表示される。こうして、光源110_1の映像に対応する空中像150_1が表示される。
【0024】
光源110_2に表示された映像の光は、第2の再帰反射面120_2の切り欠き122を通過し、その光の一部がビームスプリッター130で反射され、反射した光が、例えば、第1の再帰反射面120_1、第2の再帰反射面120_2、第3の再帰反射面120_3に射する。これらの入射した光は、入射したときと同じ方向に反射され、その反射した光がビームスプリッター130および加飾シート140を透過し、空中像150_2が表示される。こうして、光源110_2の映像に対応する空中像150_2が表示される。
【0025】
同様に、光源110_3に表示された映像の光は、第3の再帰反射面120_2の切り欠き122を通過し、その光の一部がビームスプリッター130で反射され、その反射した光が再帰反射シート120で反射され、これにより、光源110_3の映像に対応する空中像150_3が表示される。
【0026】
空中像150_1、150_2、150_3と光源110_1、110_2、130_3の映像は、ビームスプリッター130に対して線対称である。光源110_1の正面側のユーザーU5は、その視点方向に空中像150_1を視認することができ、光源110_2の正面側のユーザーU6は、その視点方向に空中像150_2を視認することができ、光源110_3の正面側のユーザーU7は、その視点方向において、空中像150_3を視認することができる。
【0027】
このように本実施例によれば、複数の方向に映像を出力する複数の光源を用い、複数の光源の映像に対応する複数の空中像を表示するようにしたので、空中像の視野角を大きくし、空中像の視認性を向上させることができる。単一の空中像の視野角を広くしても、正面以外から見る人にその表示内容を伝えづらいが、本実施例では、複数の空中像についての複数の正面が生まれるため、空中像を視認し易い方向を増やすことができる。
【0028】
上記実施例では、3つの光源を例示したが、光源の数は、4つ以上であってもよい。その場合、複数の光源は、各光軸がビームスプリッターの主面に対し異なる角度になるように配置される。光源の数の増加に応じて空中像の数が増加するため、より空中像を正面から見易くなり、空中像の視認性を向上させることができる。また、上記実施例では、3つの光源を3つのディスプレイから構成する例を示したが、例えば、1つの光源がディスプレイから構成され、他の光源が、ディスプレイに表示された映像をミラー等によって複製する光学機器から構成するようにしてもよい。
【0029】
上記実施例では、複数の再帰反射面を有する凹形状の再帰反射シートを例示したが、再帰反射シートは、ビームスプリッターの主面に対し概ね180度の範囲で再帰反射面を提供できる形状であれば、上記以外の構成であってもよい。また、上記実施例は、単一構造の再帰反射シートを例示したが、再帰反射シートは、複数の再帰反射シートから構成されるようにしてもよい。さらに再帰反射シートの表面に、λ/4板のような位相差フィルムを設け、ビームスプリッターが偏光制御された光を透過または反射するようにしてもよい。
【0030】
上記実施例では、表示装置をエレベータホール等の空間に適用する例を示したが、これは一例であり、他の空間に適用することも可能である。さらに、本実施例の表示装置は、ユーザーインターフェースにも適用することができ、例えば、空中映像は、コンピュータ装置、車載用電子機器、銀行等のATM、駅等のチケットの購入機、エレベータの入力ボタンなどに適用することができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。