IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006198
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】靴底用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20250109BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20250109BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08K3/36
C08L101/00
C08L45/00
C08K5/54
A43B13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106845
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】岩知道 和弘
【テーマコード(参考)】
4F050
4J002
【Fターム(参考)】
4F050HA55
4J002AC01X
4J002AC03W
4J002BA00Y
4J002BA01Y
4J002BK00Y
4J002DJ016
4J002EX037
4J002EX087
4J002FD207
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】従来から靴底にはゴム組成物が広く用いられている。このような靴底には用途に応じた各種特性が求められるが、とくに、冬用の靴底には、氷雪面等での滑りにくさ、並びに耐摩耗性が要求されている。
【解決手段】ゴム成分(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)および熱可塑性樹脂(D)を含み、前記ゴム成分(A)100質量部中、天然ゴムおよびブタジエンゴムを70質量部以上配合し、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記シリカ(B)を30質量部以上配合した靴底用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)および熱可塑性樹脂(D)を含む靴底用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分(A)100質量部中、天然ゴムおよびブタジエンゴムを70質量部以上配合し、
前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記シリカ(B)を30質量部以上配合した
ことを特徴とする靴底用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分(A)100質量部中、前記天然ゴムを5~70質量部および前記ブタジエンゴムを5~70質量部配合したことを特徴とする請求項1に記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分(A)100質量部中、前記天然ゴムを30~50質量部および前記ブタジエンゴムを30~50質量部配合したことを特徴とする請求項1に記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(D)が芳香族変性テルペン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記熱可塑性樹脂(D)を10質量部以上配合したことを特徴とする請求項1に記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項6】
重量平均分子量が500~100,000である液状ブタジエンゴムをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム成分(A)100質量部に対し、熱膨張性マイクロカプセルを0.5質量部以上配合したことを特徴とする請求項1に記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の靴底用ゴム組成物を含む靴底。
【請求項9】
請求項8に記載の靴底を備えた靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底用ゴム組成物に関するものであり、詳しくは、ウェットグリップ性能を維持しつつ、氷上グリップ性能および耐摩耗性に優れた靴底用ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から靴底にはゴム組成物が広く用いられている。このような靴底には用途に応じた各種特性が求められるが、とくに、冬用の靴底には、氷雪面等での滑りにくさ、並びに耐摩耗性が要求されている。
【0003】
靴底用ゴム組成物に関する従来技術として、例えば下記特許文献1には、天然ゴム、合成ゴム、及び/又は熱可塑性エラストマーからなるゴム状成分100重量部に対し、火山噴出物由来の多孔質で且つ非晶質の粒状体を、10ないし100重量部配合することを特徴とする靴底用ゴム組成物が開示されている。
また下記特許文献2には、ブタジエンゴムとシリカとを含む靴形成用ゴム組成物であって、オイルをさらに含有し、該オイルの質量平均分子量が1060以上1800未満であり、前記ブタジエンゴムは、含有する全てのゴムの量を100質量部とした際に85質量部を超える割合で含まれており、且つ、前記ブタジエンゴムは、分子構造の80%以上がシス-1,4単位となっているハイシスタイプのブタジエンゴムである靴形成用ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5565313号公報
【特許文献2】特許第6427596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、氷上グリップ性能、ウェットグリップ性能および耐摩耗性に改善の余地があった。
したがって本発明の目的は、ウェットグリップ性能を維持しつつ、氷上グリップ性能および耐摩耗性に優れた靴底用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有するゴム成分に対し、シリカ、シランカップリング剤および熱可塑性樹脂を配合するとともに、前記シリカの配合量を特定範囲に定めることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、ゴム成分(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)および熱可塑性樹脂(D)を含む靴底用ゴム組成物であって、前記ゴム成分(A)100質量部中、天然ゴムおよびブタジエンゴムを70質量部以上配合し、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記シリカ(B)を30質量部以上配合したことを特徴とする靴底用ゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の靴底用ゴム組成物は、ゴム成分(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)および熱可塑性樹脂(D)を含み、前記ゴム成分(A)100質量部中、天然ゴムおよびブタジエンゴムを70質量部以上配合し、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記シリカ(B)を30質量部以上配合したことを特徴としているので、ウェットグリップ性能を維持しつつ、氷上グリップ性能および耐摩耗性に優れた靴底用ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
(ゴム成分(A))
本発明で使用されるゴム成分(A)は、天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)を必須成分とする。
本発明で使用されるゴム成分(A)は、その全体を100質量部としたときに、NRおよびBRの合計量が70質量部以上である。
また本発明の効果が向上するという観点から、前記ゴム成分(A)100質量部中、NRを5~70質量部およびBRを5~70質量部配合するのが好ましく、NRを30~50質量部およびBRを30~50質量部配合するのがさらに好ましい。なお、本発明でいうNRは、合成イソプレンゴム(IR)を含むものとする。
なお、NRおよびBR以外にも他のゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が使用可能である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。なおSBRを使用する場合、その配合量はゴム成分(A)全体を100質量部としたときに5~30質量部であるのが好ましい。
また、ゴム成分(A)は、ガラス転移温度(Tg)が-65℃以下であることが好ましい。ゴム成分(A)は、各種ゴムを複数種類含むものであるので、本明細書で言うTgは、各ゴムのガラス転移温度に、各ゴムの重量分率を乗じた積の合計、すなわち加重平均に基づき算出される値とする。なお計算時には各成分の重量分率の合計を1.0とする。本発明で言うガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度を指すものとする。
【0011】
(シリカ(B))
本発明で使用されるシリカ(B)としては、具体的には、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカは、本発明の効果が向上するという観点から、窒素吸着比表面積NSAが100~250m/gであるのが好ましく、150~200m/gであることがより好ましい。
なおNSAは、JIS K6217-2に準拠して測定するものとする。
【0012】
(シランカップリング剤(C))
本発明で使用されるシランカップリング剤(C)は、とくに制限されないが、含硫黄シランカップリング剤が好ましく、例えば3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビス-(3-ビストリエトキシシリルプロピル)-テトラスルフィド、ビス-(3-ビストリエトキシシリルプロピル)-ジスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0013】
(熱可塑性樹脂(D))
本発明で使用される熱可塑性樹脂(D)は、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等の天然樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。中でも石油系樹脂およびテルペン系樹脂が好ましい。
石油系樹脂としては、ナフサのクラッキング等の石油精製により得たC9留分をカチオン重合することにより得られるC9系石油樹脂、シクロペンタジエンやジシクロペンタジエン等のC5留分を熱重合して得られたC5系石油樹脂、更にはC5留分~C9留分を重合して得られるC5~C9系石油樹脂等が挙げられる。
テルペン系樹脂としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
本発明においては、本発明の効果がさらに向上するという観点から、熱可塑性樹脂(D)として芳香族変性テルペン樹脂を使用するのが好ましい。芳香族変性テルペン樹脂としては、例えば、前記テルペン系樹脂と、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンなどの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂が挙げられ、当該芳香族化合物の芳香族変性テルペン樹脂中での含有量は、10~50質量%であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂(D)のガラス転移温度(Tg)としては、40~90℃が好ましい。
【0014】
(靴底用ゴム組成物の配合割合)
本発明の靴底用ゴム組成物は、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記シリカ(B)を30質量部以上配合する。前記シリカ(B)の配合量が30質量部未満では、耐摩耗性が悪化する。
前記シリカ(B)の配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、30~70質量部であるのがさらに好ましい。
前記シランカップリング剤(C)の配合量は、前記シリカ(B)の質量に対し、1~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であるのがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂(D)の配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、10質量部以上であるのが好ましく、10~20質量部であるのがさらに好ましい。
【0015】
本発明の靴底用ゴム組成物は、本発明の効果向上の観点から、前記各成分以外に下記のような成分をさらに配合することができる。
【0016】
(液状ブタジエンゴム)
本発明の靴底用ゴム組成物は、その効果をさらに向上させるため、液状ブタジエンゴムを配合することができる。
液状ブタジエンゴムは、重量平均分子量が500~100,000であり、好ましくは30,000~80,000のものを使用することができる。本発明で言う重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。なお、本発明で使用される液状ブタジエンゴムは、23℃で液体である。したがって、この温度では固体である前記ゴム成分(A)中のBRとは区別される。
液状ブタジエンゴムの配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、1~25質量部であるのが好ましく、5~20質量であることがさらに好ましい。
液状ブタジエンゴムは、前記ゴム成分(A)中のBRにプリブレンドされていてもよい。例えば、下記実施例で使用した日本ゼオン株式会社製BRX5000は、重量平均分子量が600,000であるBR71質量%と重量平均分子量が50,000である液状ブタジエンゴム29質量%を溶媒シクロヘキサン中で混合したプリブレンド品である。
【0017】
(熱膨張性マイクロカプセル)
本発明の靴底用ゴム組成物には、氷上グリップ性能を高めるという観点から、熱膨張性マイクロカプセルを配合することが好ましい。
本発明において、熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなる。熱膨張性マイクロカプセルの殻材はニトリル系重合体により形成することができる。
またマイクロカプセルの殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化または膨張する特性をもち、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n-ブタン、n-プロパン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。熱膨張性物質の好ましい形態としては、常温で液体の炭化水素に、常温で気体の炭化水素を溶解させたものがよい。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU-80」または「EXPANCEL 092DU-120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー F-85D」、「マツモトマイクロスフェアー F-100」または「マツモトマイクロスフェアー F-100D」等を使用することができる。
なお、熱膨張性マイクロカプセルを配合する場合、その配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0018】
(オイルおよび老化防止剤)
本発明の靴底用ゴム組成物は、効果向上の観点から、オイルおよび老化防止剤を配合するのが好ましく、その配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、オイルは5~30質量部が好ましく、老化防止剤は1~10質量部が好ましい。
なおオイルおよび老化防止剤の種類としては、靴底の変色を抑制するという観点から、非汚染性のオイルおよび非汚染性の老化防止剤が好ましい。非汚染性のオイルとしては例えばパラフィン系オイル等が挙げられる。非汚染性の老化防止剤としては例えばフェノール系老化防止剤等が挙げられる。
【0019】
(カーボンブラック)
本発明の靴底用ゴム組成物は、着色剤としてカーボンブラックを含有することができる。上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF等の各種グレードのものを使用することができる。カーボンブラックの配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、1~10質量部が好ましい。
【0020】
(その他成分)
本発明における靴底用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;スルフェンアミド系・グアニジン系・チウラム系・チアゾール系から選択される加硫又は架橋促進剤;クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;可塑剤;酸化亜鉛などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0021】
本発明の靴底用ゴム組成物は、ウェットグリップ性能を維持しつつ、氷上グリップ性能および耐摩耗性に優れることから、靴底、並びに該靴底を備えた靴に有用である。また、靴底および靴の製造方法は、とくに制限されず、靴底用ゴム組成物を用いた従来公知の製造方法にしたがい実施することができる。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0023】
実施例1~7および比較例1~4
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0024】
氷上グリップ性能:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、0℃における貯蔵弾性率(E’(0℃))を求めた。結果は、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、E’(0℃)が小さく、靴底に用いたときに氷上グリップ性能が良好であることを示す。
ウェットグリップ性能:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、tanδ(0℃)を測定した。結果は、比較例1の値を100として指数で示した。指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、靴底に用いたときにウェットグリップ性能に優れることを意味する。
耐摩耗性:ランボーン摩耗試験機(岩本製作所株式会社製)を使用して、JIS K6264-2:2005に準じて、付加力4.0kg/cm(=39N)、スリップ率30%、摩耗試験時間4分、試験温度室温の条件で摩耗試験を行い、摩耗質量を測定した。指数を測定した。結果は、比較例1の値を90として指数表示した。この指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0025】
結果を表1に併せて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
*1:NR(STR20)
*2:E-SBR(日本ゼオン株式会社製NIPOL 1749、油展量=SBR100質量部に対し50質量部、スチレン量=40%。表1には実際のSBR量を示した。)
*3:BR1(日本ゼオン株式会社製NIPOL BR1220)
*4:BR2(日本ゼオン株式会社製NIPOL BRX5000。重量平均分子量が600,000であるブタジエンゴム71質量%と重量平均分子量が50,000である液状ブタジエンゴム29質量%を溶媒シクロヘキサン中で混合したプリブレンド品。表1の56質量部中、前記重量平均分子量が600,000であるブタジエンゴムが40質量部、前記液状ブタジエンゴムが16質量部である。)
*5:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シースト9、N2SA=142m2/g)
*6:シリカ(EVONIK社製ULTRASIL 7000GR、N2SA=176m2/g)
*7:オイル(シェルルブリカンツジャパン株式会社製 シェルカテネックスオイルS523)
*8:熱可塑性樹脂1(エクソンモービル社製Escorez 2101、C5/C9石油樹脂)
*9:熱可塑性樹脂2(ヤスハラケミカル株式会社製YSレジンTO-125、軟化点=125℃、芳香族変性テルペン樹脂)
*10:熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製マツモトマイクロスフェアー F-100)
*11:老化防止剤(精工化学株式会社製 オゾノンEX)
*12:ワックス(大内新興化学工業株式会社製パラフィンワックス)
*13:シランカップリング剤(エボニックデグッサ社製Si69、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*14:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*15:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*16:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
*17:加硫促進剤1(三新化学工業株式会社製サンセラーCM-G)
*18:加硫促進剤2(三新化学工業株式会社製サンセラーTBZTD)
【0028】
表1の結果から、実施例1~7の靴底用ゴム組成物は、ゴム成分(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)および熱可塑性樹脂(D)を含み、前記ゴム成分(A)100質量部中、天然ゴムおよびブタジエンゴムを70質量部以上配合し、前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記シリカ(B)を30質量部以上配合したものであるので、比較例1に比べてウェットグリップ性能を維持しつつ、氷上グリップ性能および耐摩耗性に優れることが分かった。
これに対し、比較例2は、熱可塑性樹脂(D)を配合していないので、ウェットグリップ性能および耐摩耗性が悪化した。
比較例3は、天然ゴムを配合していないので、氷上グリップ性能および耐摩耗性が悪化した。
比較例4は、ブタジエンゴムを配合していないので、氷上グリップ性能および耐摩耗性が悪化した。
【0029】
本発明は、下記形態を包含する。
実施形態1:
ゴム成分(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)および熱可塑性樹脂(D)を含む靴底用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分(A)100質量部中、天然ゴムおよびブタジエンゴムを70質量部以上配合し、
前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記シリカ(B)を30質量部以上配合した
ことを特徴とする靴底用ゴム組成物。
実施形態2:
前記ゴム成分(A)100質量部中、前記天然ゴムを5~70質量部および前記ブタジエンゴムを5~70質量部配合したことを特徴とする実施形態1に記載の靴底用ゴム組成物。
実施形態3:
前記ゴム成分(A)100質量部中、前記天然ゴムを30~50質量部および前記ブタジエンゴムを30~50質量部配合したことを特徴とする実施形態1または2に記載の靴底用ゴム組成物。
実施形態4
前記熱可塑性樹脂(D)が芳香族変性テルペン樹脂であることを特徴とする実施形態1~3のいずれかに記載の靴底用ゴム組成物。
実施形態5
前記ゴム成分(A)100質量部に対し、前記熱可塑性樹脂(D)を10質量部以上配合したことを特徴とする実施形態1~4のいずれかに記載の靴底用ゴム組成物。
実施形態6:
重量平均分子量が500~100,000である液状ブタジエンゴムをさらに含む実施形態1~5のいずれかに記載の靴底用ゴム組成物。
実施形態7:
前記ゴム成分(A)100質量部に対し、熱膨張性マイクロカプセルを0.5質量部以上配合したことを特徴とする実施形態1~6のいずれかに記載の靴底用ゴム組成物。
実施形態8:
実施形態1~7のいずれかに記載の靴底用ゴム組成物を含む靴底。
実施形態9:
実施形態8の靴底を備えた靴。