(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006209
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ミキシングバルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F16K11/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106863
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】392033141
【氏名又は名称】株式会社ダイレオ
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【弁理士】
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】中山 健太
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA16
3H067CC07
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD32
3H067FF02
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】出湯温度の調整を自動で行うことができるとともに、メンテナンスおよび温度調整の手間が少ないミキシングバルブ装置を提供する。
【解決手段】温水流入口21、冷水流入口22および混合温水の吐出口23を備えたケーシング4と、シャトル51の位置に応じて、温水流入口21から流入する温水と冷水流入口22から流入する冷水との混合比率を設定し、混合された温水を吐出口23に導入するミキシング機構5と、シャトル51の位置を制御する制御装置3とを備える。制御装置3は、同装置3で設定される設定温度と温度センサ8で検出される出湯温度とに基づいて、ステッピングモータ6を制御してシャトル51を前進後退させることで、出湯温度を調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水流入口、冷水流入口および混合温水の吐出口を備えたケーシングと、
前記温水流入口と前記冷水流入口との間に介在し、シャトルの位置に応じて前記温水流入口から流入する温水と前記冷水流入口から流入する冷水との混合比率を設定して混合温水を前記吐出口に導入するミキシング機構と、
前記シャトルの位置を制御する制御部とを備えてなり、
前記ミキシング機構は、前記シャトルを前進後退させる電動機を有し、
前記制御部は、前記吐出口からの出湯温度を測定する温度センサを備え、設定温度と前記出湯温度とに基づいて前記電動機を制御して前記シャトルの位置を調節する
ことを特徴とするミキシングバルブ装置。
【請求項2】
前記温水流入口と前記冷水流入口とがミキシング空間を挟んで対向配置されるとともに、前記吐出口がこれらと直交する向きで前記ミキシング空間に臨んで配置され、
前記ミキシング機構は、前記温水流入口と連通し、前記温水流入口から流入する温水を前記ミキシング空間の上下方向のいずれか一端側から前記ミキシング空間内に導入する温水導入口を備えた温水流路と、前記冷水流入口と連通して、前記冷水流入口から流入する冷水を前記ミキシング空間の上下方向の他端側から前記ミキシング空間内に導入する冷水導入口を備えた冷水流路とを有する流路セパレータを有し、前記シャトルによって前記温水導入口および前記冷水導入口の開度が調節される構造を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のミキシングバルブ装置。
【請求項3】
前記ケーシング、前記流路セパレータおよび前記シャトルは耐腐食性を備えた樹脂で構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のミキシングバルブ装置。
【請求項4】
前記ミキシング機構と前記吐出口との間に、前記吐出口に導入される混合温水の水流を整える整流部材が介装されている
ことを特徴とする請求項2に記載のミキシングバルブ装置。
【請求項5】
前記電動機は、ステッピングモータで構成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のミキシングバルブ装置。
【請求項6】
前記ステッピングモータは、樹脂製のモータ取付具を介して前記ケーシング上に装着されている
ことを特徴とする請求項5に記載のミキシングバルブ装置。
【請求項7】
前記制御部は、上位のコンピュータシステムと接続可能なインターフェースを備えている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のミキシングバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミキシングバルブ装置に関し、より詳細には、温水と冷水を混合して所望温度の温水を生成するミキシングバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホテルや旅館などの温浴施設において、浴槽の湯張りや混合水栓への給湯に使用される温水には、給湯ボイラや源泉などから供給される高温の温水と上水道などから供給される非加熱の水(冷水)とをミキシングバルブで混合した温水(混合温水)が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ミキシングバルブは、周知のとおり、温水と冷水とを混合して所望温度の温水を吐出(出湯)させる温度調整弁であって、温水と冷水の混合比率(湯水混合比率)を調節することで出湯温度を調整するように構成されている。ミキシングバルブには、温水と冷水の混合比率を設定する弁体と連動する温度調節レバーが備えられており、温浴施設の作業員は、この温度調節レバーを手動操作することで出湯温度の調整を行っている。
【0004】
また、ミキシングバルブには出湯温度の調整を自動で行うものも存在する。この種のミキシングバルブは、バルブ内部に温度調節用のサーモ機構が備えられている。サーモ機構としては、2種類の金属の線膨張比を利用して弁体を制御するバイメタル式と、蝋の熱膨張を利用して弁体を制御するワックス式とが知られており、これらサーモ機構によって温水と冷水の混合比率が設定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のミキシングバルブには以下のような問題があった。
(1)わが国は地理的要因から年間の寒暖差が大きいため、ミキシングバルブに供給される冷水の温度(水温)が1年を通じて大きく変動する。そのため、たとえば、温浴施設のように1年を通じて出湯温度を略一定に保つことが求められる施設では、水温の変化に応じて、ミキシングバルブの温度調節レバーを操作しなければならない。すなわち、水温が低下する冬場は温水の混合比率を上げる操作を行い、水温が上昇する夏場は温水の混合比率を下げる操作を行わねばならず、出湯温度の調整にかかる作業員の手間が多く、作業負担が大きいという問題があった。
【0007】
(2)一方、出湯温度の調整を自動で行うミキシングバルブの場合、出湯温度の調整にかかる作業負担は軽減される。しかし、この種のミキシングバルブは、バルブ内にサーモ機構が装備されることから内部の構造が複雑になり、バルブ内部にスケールや水あかなどが付着しやすい。そのため、この種のミキシングバルブでは、バルブ内部に付着したスケール等を除去するメンテナンス作業を定期的(たとえば、1回/1か月程度)に行う必要があり、メンテナンスにかかる作業負担が大きくなり、ランニングコストが上昇するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、出湯温度の調整を自動で行うことができるとともに、メンテナンスおよび温度調整の手間が少ないミキシングバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るミキシングバルブ装置は、温水流入口、冷水流入口および混合温水の吐出口を備えたケーシングと、上記温水流入口と上記冷水流入口との間に介在し、シャトルの位置に応じて上記温水流入口から流入する温水と上記冷水流入口から流入する冷水との混合比率を設定して混合温水を上記吐出口に導入するミキシング機構と、上記ミキシング機構の上記シャトルの位置を制御する制御部とを備えてなり、上記ミキシング機構は、上記シャトルを前進後退させる電動機を有し、上記制御部は、上記吐出口からの出湯温度を測定する温度センサを備え、設定温度と上記出湯温度とに基づいて上記電動機を制御して上記シャトルの位置を調節することを特徴とする。
【0010】
この発明では、温水と冷水とを混合するミキシング機構は、制御部によって位置制御されるシャトルの位置に応じて温水と冷水の混合比率を設定するので、出湯温度の調整を自動で行うことができる。また、温度調整の自動化にあたり、従来のミキシングバルブのようなサーモ機構を必要としないので、ミキシングバルブ内部の構造がシンプルになり、スケールや水あかなどが付着しにくい構造のミキシングバルブを提供することができる。
【0011】
そして、本発明は好適な実施態様として以下の構成を備えている。
(1)上記温水流入口と上記冷水流入口とがミキシング空間を挟んで対向配置されるとともに、上記吐出口がこれらと直交する向きで上記ミキシング空間に臨んで配置され、上記ミキシング機構は、上記温水流入口と連通し、上記温水流入口から流入する温水を上記ミキシング空間の上下方向のいずれか一端側から上記ミキシング空間内に導入する温水導入口を備えた温水流路と、上記冷水流入口と連通して、上記冷水流入口から流入する冷水を上記ミキシング空間の上下方向の他端側から上記ミキシング空間内に導入する冷水導入口を備えた冷水流路とを有する流路セパレータを有し、上記シャトルによって上記温水導入口および上記冷水導入口の開度が調節される構造を備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明では、温水と冷水とが混合されるミキシング空間内に温水を導入する温水導入口とミキシング空間内に冷水を導入する冷水導入口とが上下方向の一端側、他端側に分かれて配置され、シャトルの前進後退によって、これら温水導入口および冷水導入口の開度が調節される。そのため、シャトルの位置によって、温水と冷水の混合割合を0対10から10対0まで任意に調節することができる。
【0013】
(2)上記ケーシング、上記流路セパレータおよび上記シャトルは耐腐食性を備えた樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明では、ケーシング、流路セパレータおよびシャトルが耐腐食性を備えた樹脂で構成されるので、源泉を温水源とする温泉施設などでの使用に適したミキシングバルブを提供することができる。
【0015】
(3)上記ミキシング機構と上記吐出口との間に、前記吐出口に導入される混合温水の水流を整える整流部材が介装されていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、ミキシング空間と吐出口との間に水流を整える整流部材が配置されるので、ミキシング空間で混合された混合温水はこの整流部材を通過して吐出口に導入される。そのため、温度ムラの少ない混合温水を吐出することができる。
【0017】
(4)上記電動機は、ステッピングモータで構成されていることを特徴とする。そして、好適な実施態様として、上記ステッピングモータは、樹脂製のモータ取付具を介して上記ケーシング上に装着されていることを特徴とする。
【0018】
この発明では、シャトルを前進後退させる電動機として、正確な位置決め制御を行うことができるステッピングモータが用いられるので、出湯温度の調整を正確に行うことができ、安定した出湯を得ることができる。また、ステッピングモータがケーシング上に取り付けられるので、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0019】
(5)上記制御部は、上位のコンピュータシステムと接続可能なインターフェースを備えていることを特徴とする。
【0020】
この発明では、制御部に上位のコンピュータシステムとのインターフェースが備えられているので、たとえば、インターフェースを介して制御部とミキシングバルブ装置を管理するコンピュータシステムと接続することにより、ミキシングバルブ装置の設定温度を遠隔地から入力したり、あるいは、ミキシングバルブ装置の異常を管理用のコンピュータシステムに報知したりすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御部によるシャトルの位置制御を通じて出湯温度が自動で調整されるので、手動操作による出湯温度の調整が不要であり、温度調節に関する手間の少ないミキシングバルブ装置を提供することができる。
【0022】
また、従来のミキシングバルブのようなサーモ機構は備えていないので、ミキシングバルブ内部の構造がシンプルになり、スケールや水あかなどが付着しにくく、メンテナンスの負担が少ないミキシングバルブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るミキシングバルブ装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】同ミキシングバルブ装置における装置本体の分解斜視図である。
【
図3】同ミキシングバルブ装置における装置本体の断面図である。
【
図4】同ミキシングバルブ装置における制御装置の機能構成を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の要素については同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
本発明に係るミキシングバルブ装置1は、温水と水(冷水)を混合して所望の温度の温水(混合温水)を生成するバルブ装置であって、たとえば、温浴施設における浴槽への湯張りや混合水栓への給湯、あるいは、温水プールへの湯張りなどに供される温水の生成に好適に用いられる。つまり、本発明にかかるミキシングバルブ装置1は、主として、大量の温水を生成する業務用の用途で使用される。
【0026】
このミキシングバルブ装置1は、
図1乃至
図4に示すように、温水調整弁としての機能を有する装置本体2と、装置本体2の制御する制御装置3とを主要部として備えている。
【0027】
装置本体2は、
図2に示すように、ケーシング4と、ケーシング4内に収容されるミキシング機構5と、ミキシング機構5を駆動する電動機6とを備えている。
【0028】
ケーシング4は、装置本体2の筐体であって、ケース本体41と、ケース本体41の蓋体42とで構成される。
【0029】
ケース本体41は、上部が開口した略円筒状を呈しており、内部には温水と冷水とが混合されるミキシング空間A(
図3参照)が形成され、ミキシング空間A内にミキシング機構5が収容されている。
【0030】
ケース本体41には、給湯ボイラや源泉などの温水源からの温水が供給される温水配管(図示せず)を接続するための温水流入口21と、上水道などの水源からの冷水が供給される冷水配管(図示せず)を接続するための冷水流入口22と、先端側に混合水栓などの出湯栓(図示せず)が備えられた出湯配管10を接続するための吐出口23とが備えられている。本実施形態では、温水流入口21と冷水流入口22は、ケース本体41の側壁にミキシング空間Aを挟んで対向して配置されている。一方、吐出口23は、温水流入口21と冷水流入口22とを結ぶ軸線と直交する向きでミキシング空間Aに臨んでケース本体41の底部に設けられている。
【0031】
蓋体42は、ケース本体41の上部の開口を閉塞する部材であって、複数の取付ネジ43,43,…によってケース本体41の上端に着脱可能にネジ止め固定されている。蓋体42とケース本体41との間には水密を確保するためのOリング44が介装されており、ケース本体41の開口部はこの蓋体42によって密閉されている。
【0032】
ミキシング機構5は、温水と冷水を混合するための機構部分であって、シャトル51と、連結シャフト52と、流路セパレータ53とを主要部として構成されている。これらの部材からなるミキシング機構5は、温水流入口21と冷水流入口22との間に介在し、シャトル51の位置に応じて、温水流入口21から流入する温水と冷水流入口22から流入する冷水の混合比率を調節・設定するように構成されている。
【0033】
シャトル51は、
図2および
図3に示すように、流路セパレータ53に篏合可能な環状の外周面51aを有する略筒状の部材で構成されている。シャトル51の内部にはネジ孔51bが上下方向に貫通して設けられており、このネジ孔51bに連結シャフト52の先端が螺合される。
【0034】
連結シャフト52は、シャトル51と電動機6とを連結する略棒状を呈する部材であって、先端側がシャトル51のネジ孔51bに螺合される一方、基端側が蓋体42を貫通してモータ軸61の先端に係合されている。後述するように、モータ軸61は、回転に伴って軸方向(
図3において上下方向)に前進後退するようになっている。そのため、連結シャフト52は、モータ軸61の軸方向の動きに連動して軸方向に前進後退する。
【0035】
また、これに関連して、蓋体42には連結シャフト52を挿通するための貫通孔42aが形成されている。一方、連結シャフト52には、貫通孔42aの内周面との接触するOリング54,54が備えられており、このOリング54,54によって、連結シャフト52が前進後退する際の水密が確保されている。
【0036】
流路セパレータ53は、温水流入口21からケーシング4内に導入される温水と冷水流入口22からケーシング4内に導入される冷水とについて、それぞれ専用の流路を設定してミキシング空間Aに導入するための部材である。具体的には、流路セパレータ53は、温水流入口21と連通し、温水流入口21から流入する温水をミキシング空間Aの上下方向のいずれか一端(図示例では上端)側からミキシング空間A内に導入する温水導入口55を備えた温水流路Hと、冷水流入口22と連通して、冷水流入口22から流入する冷水をミキシング空間Aの上下方向の他端(図示例では下端)側からミキシング空間A内に導入する冷水導入口56を備えた冷水流路Cとを備えている。
【0037】
本実施形態では、流路セパレータ53は略円筒状を呈する部材で構成されており、その外周面に温水流路Hを形成するリブ57と冷水流路Cを形成するリブ58とが設けられるとともに、各流路H,Cの先端側(ミキシング空間Aに連通する側)にあたる流路セパレータ53の周壁の一部をそれぞれ軸方向に切り欠いて温水導入口55と冷水導入口56とが形成されている。なお、リブ57とリブ58の外周側端面には凹状溝57a,58aが形成されており、この凹状溝57a,58aにシール材(図示せず)が配設され、このシール材によって、ケース本体41と流路セパレータ53との接触部分の水密がとられている。
【0038】
また、流路セパレータ53の内側には環状の内周面53aが形成されており、この内周面53aに上述したシャトル51が篏合されている。そして、流路セパレータ53の内周面53aにはOリング59,59が備えられており、このOリング59,59によって、シャトル51が前進後退する際におけるシャトル51と流路セパレータ53との間の水密が確保されている。
【0039】
また、本実施形態に示すミキシングバルブ装置1では、ケーシング4内にミキシング機構5を装置するにあたり、ミキシング機構5と吐出口23との間には、吐出口23に導入される混合温水の水流を整える整流部材7が介装されている。図示例では、整流部材7として、第1から第3の3枚の整流板71~73が積層されている。具体的には、第1および第2の整流板71,72として中央開口部の口径が異なる整流板が採用され、下流側に口径の大きい整流板72が配置されている。また、第3の整流板73には複数のスリット状の開口が放射状に配置された整流板が採用されている。このように複数の整流板71~73を配置することで、ミキシング機構5から吐出口23に導入される混合温水の水流が整えられ、これによって、吐出口23から吐出される混合温水の温度ムラを少なくすることができる。
【0040】
なお、この整流部材7は適宜変更可能である。たとえば、整流板71~73の枚数や開口部の形状などは、ミキシング空間Aと吐出口23との間に形成される空間の形状に応じて変更可能であり、さらには、整流部材7は省略することも可能である。
【0041】
しかして、このように構成されたミキシング機構5では、連結シャフト52の前進後退(
図3における上下方向の移動)に連動してシャトル51が前進後退する。そして、シャトル51が前進すると、それに伴って温水導入口55の開度が大きくなる一方で、冷水導入口56の開度が小さくなり(温水の混合比率が上昇する)、シャトル51が下端に到達すると(整流部材7に当接する下限位置に到達すると)、温水導入口55が全開、冷水導入口56が全閉となる(つまり、温水の混合比率が10割となる)。
【0042】
反対に、シャトル51が後退すると、それに伴って冷水導入口56の開度が大きくなる一方で、温水導入口55の開度が小さくなり(冷水の混合比率が上昇する)、シャトル51が上端に到達すると(蓋体42に当接する上限位置に到達すると)、冷水導入口56が全開、温水導入口55が全閉となる(つまり、冷水の混合比率が10割となる)。このように、本実施形態に示すミキシングバルブ装置1では、シャトル51の位置に応じて、温水導入口55と冷水導入口56の開度が連動して調節され、温水と冷水の混合比率を0対10から10対0までの間で任意に調整することができるようになっている。
【0043】
なお、本実施形態に示すミキシングバルブ装置1では、少なくとも、ケーシング4、流路セパレータ53およびシャトル51(好ましくは、連結シャフト52を含む)は、耐熱性に加え、耐腐食性を備えた樹脂(たとえば、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylenesulfide:PPS)、ポリプロピレン(polypropylene:PP)などの合成樹脂)で構成される。これにより、たとえば、温水源として源泉を用いるような設備においても腐食によるバルブの劣化を抑制でき、温泉施設などでの使用に適したミキシングバルブ装置1を提供することができる。
【0044】
電動機6は、ミキシング機構5のシャトル51を前進後退させる動力源であって、本実施形態では、この電動機6としてステッピングモータが使用されている。図示の電動機6は、制御装置3から与えられるパルス信号に応じてモータ軸61が回転するとともに、モータ軸61の正逆回転方向に応じてモータ軸61が前進後退するように構成されている。そのため、制御装置3は、ステッピングモータの制御を通じてモータ軸61と連結されたシャトル51の位置制御ができるようになっている。
【0045】
この電動機6は、樹脂製のモータマウント(モータ取付具)62上に取付ネジ63,63,…を用いて着脱可能にネジ止め固定されるとともに、モータマウント62がケーシング4の蓋体42上に取付ネジ64,64,…を用いて着脱可能に装着されている。
【0046】
ここで、
図3において、符号8は温度センサを示している。温度センサ8は、ミキシングバルブ装置1の吐出口23からの出湯温度を検出するセンサであって、本実施形態では、ミキシングバルブ装置1の吐出口23の近傍(図示例では、出湯配管10の上流端部)に設けられている。この温度センサ8の検出信号は、信号線L2を介して制御装置3に入力される。制御装置3は、信号線L2を介して入力される検出信号から出湯温度を演算する。なお、本実施形態では、温度センサ8をケース本体41の外部に設けた場合を示したが、温度センサ8はケース本体41内に設けられていてもよい。
【0047】
また、符号9は出湯配管10の流路を遮断可能に構成された開閉弁である。本実施形態では、開閉弁9として制御装置3から遠隔制御が可能な電磁式の開閉弁が用いられている。L3は開閉弁9と制御装置3とを接続する制御線であり、この制御線L3を介して開閉弁9を開閉させる制御装置3が開閉弁9に与えられるようになっている。
【0048】
制御装置3は、装置本体2を制御するための装置である。本実施形態では、この制御装置3は、ミキシングバルブ装置1の操作装置としても機能するようになっており、そのため、装置本体2とは別体の筐体(図示せず)に収容されている。作業員は、この制御装置3を用いて、ミキシングバルブ装置1から出湯される混合温水の温度(出湯温度)の設定などの各種操作を行う(詳細は後述する)。
【0049】
制御装置3には、
図4に示すように、表示部31、操作部32、制御部33、電動機6のドライバ回路部34が備えられている。また、本実施形態では、これらに加えて、開閉弁9の駆動回路部35およびインターフェース部36が備えられている。
【0050】
表示部31は、設定温度や出湯温度などの各種情報を表示する表示手段であって、たとえば、文字や図形などの表示ができる液晶パネルなどが用いられる。また、操作部32は、ミキシングバルブ装置1の運転/停止の切り替え操作や設定温度の入力操作などを行う操作手段であって、たとえば、所定の機能が割り当てられた押しボタンスイッチなどで構成される。なお、操作部32としては、表示部31と兼用のタッチスクリーンを用いてもよい。
【0051】
制御部33は、ミキシングバルブ装置1の制御手段であって、制御用のマイコンを備えている。マイコンには、設定温度と出湯温度とに基づいて電動機6を制御する制御プログラムや表示部31の表示制御用のプログラムなどの各種プログラムが格納されており、これらのプラグラムに基づいて、たとえば、シャトル51の位置制御など、後述する各種処理が実行されるようになっている。
【0052】
ドライバ回路部34は、電動機6を構成するステッピングモータの駆動回路であって、制御部33から与えられる制御信号に基づいてステッピングモータの駆動信号(パルス信号)を生成する。ドライバ回路部34で生成されたステッピングモータの駆動信号は、制御線L1を通じてステッピングモータに入力されるようになっている。
【0053】
開閉弁9の駆動回路部35は、開閉弁9を作動させるための回路であって、制御部33から与えられる制御信号に基づいて開閉弁9の駆動信号を生成する。駆動回路部35で生成された開閉弁9の駆動信号は、制御線L3を通じて開閉弁9に入力されるようになっている。
【0054】
インターフェース部36は、制御部33を図示しない上位のコンピュータシステム(たとえば、ミキシングバルブ装置1の管理用コンピュータシステム)に接続するためのインタフェースであって、本実施形態では、RS-485に準拠したインターフェースが用いられており、このインターフェースを介して制御部33が上位のコンピュータシステムに接続可能とされている。これにより、本実施形態では、上位のコンピュータシステムから設定温度の入力を行ったり、制御部33で検出されたエラー情報を上位のコンピュータシステムに送信し、上位のコンピュータシステムでエラー情報の管理を行うことができるようになっている。
【0055】
次に、このように構成されたミキシングバルブ装置1を用いた出湯温度の調整について説明する。
【0056】
ミキシングバルブ装置1の使用にあたっては、まず、制御装置3において「運転」を開始させるスイッチ操作を行う。
【0057】
これにより、制御装置3の制御部33は運転待機状態から運転モードに移行する。
運転モードに移行した制御部33は、温度センサ8の検出信号から出湯温度を演算するとともに、演算された出湯温度と設定温度とを比較し、設定温度>出湯温度の場合には、電動機6の制御を通じてシャトル51の位置を下げる(温水の混合比率を上げる)制御を行って出湯温度を上昇させる。一方、設定温度<出湯温度の場合には、上記とは反対に、電動機6の制御を通じてシャトル51の位置を上げる(冷水の混合比率を上げる)制御を行って出湯温度を下降させる。すなわち、制御部33は、設定温度と出湯温度とに基づいて、出湯温度が設定温度となるように、電動機6を制御してシャトル51の位置を調節する。
【0058】
このように、本発明にかかるミキシングバルブ装置1では、設定温度と出湯温度の比較結果に応じて、制御部33がシャトル51の位置制御を通じて湯水と冷水の混合比率を変更しながら出湯が行われる、すなわち、出湯温度の調整が制御装置3により自動で行われる。そのため、手動操作による出湯温度の調整が不要になり、温度調節に関する作業員の手間が大幅に軽減される。
【0059】
また、本発明にかかるミキシングバルブ装置1では、従来のミキシングバルブのようなサーモ機構を用いていないので、装置内部の構造がシンプルになり、スケールや水あかなどが付着しにくい。そのため、たとえば、分解清掃のようなメンテナンス作業の作業周期を従来より長く設定することができ、メンテナンス負担が少なく、ランニングコストが安いミキシングバルブ装置を提供することができる。
【0060】
なお、本実施形態に示したミキシングバルブ装置1は、シャトル51を駆動する電動機6としてサーボモータを使用していることから、たとえば、制御部33が運転モードに移行した当初などに、制御部33は、シャトル51が移動可能な上限位置と下限位置を確認するためにシャトル51を前後に最大限動かす。そのため、本実施形態に示すミキシングバルブ装置1によれば、このようなシャトル51の動作によってシャトル51や連結シャフト52などに付着したスケールや水あかが除去されるので、この点でもスケールや水あかの付着を抑制することができる。
【0061】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0062】
たとえば、上述した実施形態では、ミキシング空間Aに温水と冷水を導入するための温水流路Hおよび冷水流路Cが、流路セパレータ53の外周に設けられたリブ57,58によって形成される場合を示したが、温水流路Hと冷水流路Cは、温水と冷水を異なる流路でミキシング空間Aに案内する構造であれば、上述した実施形態の構造に限定されることなく他の構造を採用することも可能である。
【0063】
また、上述した実施形態では、インターフェース部36として、RS-485に準拠したインターフェースが用いた場合を示したが、インターフェース部36としては、たとえば、LAN(Local area network)やインターネットのようなWAN(Wide Area Network)に接続可能なネットワークインターフェースを用いることも可能である。このように、インターフェース部36としてコンピュータネットワークに対応したインターフェースを用いることにより、たとえば、ミキシングバルブ装置1が設置された施設外部にあるコンピュータシステム(たとえば、ミキシングバルブ装置1の保守サービスを行うコンピュータシステムなど)と制御部33とを通信接続することが可能となり、施設外部からの遠隔操作や施設外部でのエラー情報の管理などを行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0064】
1 ミキシングバルブ装置
2 装置本体
3 制御装置
4 ケーシング
5 ミキシング機構
6 電動機
7 整流部材
21 温水流入口
22 冷水流入口
23 混合温水の吐出口
31 表示部
32 操作部
33 制御部
34 電動機のドライバ回路部
36 インターフェース部
41 ケース本体
42 蓋体
51 シャトル
52 連結シャフト
53 流路セパレータ
55 温水導入口
56 冷水導入口
57,58 リブ
61 モータ軸
71~73 整流板
A ミキシング空間
H 温水流路
C 冷水流路