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特開2025-62168ポリカーボネート樹脂組成物およびそれよりなる成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062168
(43)【公開日】2025-04-14
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物およびそれよりなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20250407BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20250407BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20250407BHJP
   C08K 5/5333 20060101ALI20250407BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20250407BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20250407BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20250407BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L53/02
C08K5/521
C08K5/5333
C08L51/04
C08L25/12
C08L67/00
C08L55/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171053
(22)【出願日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】磯江 晋輔
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC06X
4J002BN12X
4J002BN15X
4J002BP013
4J002CF05X
4J002CF06X
4J002CF07X
4J002CF08X
4J002CG01W
4J002CG02W
4J002EW046
4J002EW126
4J002FD010
4J002FD050
4J002FD066
4J002FD130
4J002FD160
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】熱安定性および耐湿熱性に優れ、かつそれよりなる成形品が制振性を有し、さらに制振性の長期特性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)制振性エラストマー(B成分)を5~50重量部、(C)トリメチルホスフェイトを除くホスフェイト化合物(C-1成分)およびホスホン酸エステル(C-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C成分)を0.001~1重量部含む樹脂組成物であって、B成分が、芳香族ビニル化合物の重合体から誘導されるブロックおよびイソプレンまたはイソブチレンを単量体の一部に有する重合体から誘導されるブロックを含有し、かつガラス転移温度が-30℃~10℃の範囲にあるブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)制振性エラストマー(B成分)を5~50重量部、(C)トリメチルホスフェイトを除くホスフェイト化合物(C-1成分)およびホスホン酸エステル(C-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C成分)を0.001~1重量部含む樹脂組成物であって、B成分が、芳香族ビニル化合物の重合体から誘導されるブロックおよびイソプレンまたはイソブチレンを単量体の一部に有する重合体から誘導されるブロックを含有し、かつガラス転移温度が-30℃~10℃の範囲にあるブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
B成分が、一部または全てが水素添加されており、かつガラス転移温度が-25℃~5℃の範囲にある化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
C-1成分が酸価10~55mgKOH/gであるホスフェイト金属塩、C-2成分が酸価0.01~0.30mgKOH/gであるホスホン酸エステルあることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
C-1成分がステアリルアシッドホスフェイト亜鉛塩、C-2成分がエチルジエチルホスホノアセテートであることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
A成分100重量部に対して、(D)ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物(D-1)、アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物(D-2)、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体(D-3)およびポリエステル樹脂(D-4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を10~200重量部含むことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【請求項7】
請求項6に記載の成形品によって構成される自動車用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱安定性および耐湿熱性に優れ、かつそれよりなる成形品が制振性を有し、さらに制振性の長期特性に優れる、ポリカーボネート樹脂組成物およびそれよりなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のEV化や自動運転化に伴い、車内静粛化のニーズが高まっている。車内静粛化に際しては、制振ゴムシートなどの制振材および吸音フェルトなどの吸音材などが使用されている。しかしそれらの使用により、車両重量の増加、つまり燃費の低下につながるデメリットがあるため、これ以上の使用量増加は難しい現状がある。そこで、自動車の内外装に使用されている部材そのものに制振性、つまり音波を吸収する性能を付与することで自動車の更なる静粛化に貢献できると考えられている。そして、自動車部材の一部に使用されているポリカーボネート樹脂組成物についても同様に考えられている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂組成物へ制振性を付与する技術は過去にも検討されている。それらは、制振性エラストマーとして芳香族ビニル化合物の重合体から誘導されるブロックおよび共役ジエン化合物の重合体から誘導されるブロックからなるブロック共重合体を添加することで、制振性を付与する技術である(特許文献1~5参照)。しかし、制振性が長期間維持できるかどうかは検討されていない。そのため、自動車を長期間使用する場合でも、静粛な車内を保ち続けられるよう制振性の長期特性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-178429号公報
【特許文献2】特開2000-265075号公報
【特許文献3】特開2002-37974号公報
【特許文献4】特開2002-60634号公報
【特許文献5】特開2011-105801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、熱安定性および耐湿熱性に優れ、かつそれよりなる成形品が制振性を有し、さらに制振性の長期特性に優れる、ポリカーボネート樹脂組成物およびそれよりなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、上記課題が下記のポリカーボネート樹脂組成物およびそれよりなる成形品により達成されることを見出した。
1.(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)制振性エラストマー(B成分)を5~50重量部、(C)トリメチルホスフェイトを除くホスフェイト化合物(C-1成分)およびホスホン酸エステル(C-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C成分)を0.001~1重量部含む樹脂組成物であって、B成分が、芳香族ビニル化合物の重合体から誘導されるブロックおよびイソプレンまたはイソブチレンを単量体の一部に有する重合体から誘導されるブロックを含有し、かつガラス転移温度が-30℃~10℃の範囲にあるブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
2.B成分が、一部または全てが水素添加されており、かつガラス転移温度が-25℃~5℃の範囲にある化合物であることを特徴とする前項1に記載の樹脂組成物。
3.C-1成分が酸価10~55mgKOH/gであるホスフェイト金属塩、C-2成分が酸価0.01~0.30mgKOH/gであるホスホン酸エステルあることを特徴とする前項1または2に記載の樹脂組成物。
4.C-1成分がステアリルアシッドホスフェイト亜鉛塩、C-2成分がエチルジエチルホスホノアセテートであることを特徴とする前項3に記載の樹脂組成物。
5.A成分100重量部に対して、(D)ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物(D-1)、アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物(D-2)、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体(D-3)およびポリエステル樹脂(D-4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を10~200重量部含むことを特徴とする前項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前項1~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
7.前項6に記載の成形品によって構成される自動車用部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、熱安定性および耐湿熱性に優れ、かつそれよりなる成形品が制振性を有し、さらに制振性の長期特性に優れるため、将来のEV車や電気自動車において、長期使用にわたる自動車内の静粛化に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
本発明においてA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0009】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
【0010】
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA型のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-トをA成分として使用することが可能である。
【0011】
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0012】
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)~(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBCFが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10~95モル%(より好適には50~90モル%、さらに好適には60~85モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBis-TMCが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0013】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0014】
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
【0015】
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記(i)または(ii)の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05~0.15%、好ましくは0.06~0.13%であり、かつTgが120~180℃であるポリカーボネート。
(ii)Tgが160~250℃、好ましくは170~230℃であり、かつ吸水率が0.10~0.30%、好ましくは0.13~0.30%、より好ましくは0.14~0.27%であるポリカーボネート。
【0016】
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62-1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0017】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0018】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0019】
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物に、ドリップ防止性能などを付与できる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0020】
分岐ポリカーボネートにおける多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.01~1モル%、より好ましくは0.05~0.9モル%、さらに好ましくは0.05~0.8モル%である。
【0021】
また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
【0022】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0023】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマー固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。
【0024】
本発明におけるポリカーボネート樹脂のメルトボリュームレート(300℃、1.2kg荷重)は、特に限定されないが、好ましくは1~60cm/10minであり、より好ましくは3~30cm/10min、さらに好ましくは5~20cm/10minである。メルトボリュームレートが1cm/10min未満のポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る場合がある。一方、メルトボリュームレートが60cm/10minを超えるポリカーボネート樹脂では、良好な機械的特性が得られない場合がある。なお、メルトボリュームレートは「MVR」とも呼ばれ、はISO1133に準拠して測定される。
【0025】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は24,000以下であることが好ましく、より好ましくは22,500以下であり、さらに好ましくは20,000以下である.粘度平均分子量が24,000を超えると流動性が悪いため、1~3mm厚みの薄肉成形品を得るために成形条件を高温にする必要があり、樹脂または色剤が熱分解しやすくなる場合がある。また、粘度平均分子量の下限は、特に限定されないが耐衝撃性の観点から14,000以上であることが好ましい。なお、本発明でいう粘度平均分子量(M)は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0026】
本発明のポリカーボネート樹脂としてポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を使用することも出来る。ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂とは下記一般式(1)で表される二価フェノールおよび下記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンを共重合させることにより調製される共重合樹脂であることが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
[上記一般式(1)において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合、それらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。]
【0029】
【化2】
【0030】
[上記一般式(2)においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合、それらは同一でも異なっていても良く、gは1~10の整数、hは4~7の整数である。]
【0031】
【化3】
【0032】
[上記一般式(3)において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは10~300の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。]
【0033】
一般式(1)で表される二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0034】
なかでも、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンとしては、例えば下記に示すような化合物が好適に用いられる。
【0036】
【化4】
【0037】
ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、オレフィン性の不飽和炭素-炭素結合を有するフェノール類、好適にはビニルフェノール、2-アリルフェノール、イソプロペニルフェノール、2-メトキシ-4-アリルフェノールを所定の重合度を有するポリシロキサン鎖の末端に、ハイドロシリレーション反応させることにより容易に製造される。なかでも、(2-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンが好ましく、殊に(2-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサンが好ましい。ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、その分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることが好ましい。さらに優れた高温成形時の低アウトガス性と低温衝撃性を発現させるために、かかる分子量分布(Mw/Mn)はより好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2以下である。かかる好適な範囲の上限を超えると高温成形時のアウトガス発生量が多く、また、低温衝撃性に劣る場合がある。
【0038】
また、高度な耐衝撃性を実現するためにヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のジオルガノシロキサン重合度(p+q)は10~300が適切である。かかるジオルガノシロキサン重合度(p+q)は好ましくは10~200、より好ましくは12~150、更に好ましくは14~100である。かかる好適な範囲の下限未満では、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体の特徴である耐衝撃性が有効に発現せず、かかる好適な範囲の上限を超えると外観不良が現れる。
【0039】
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全重量に占めるポリジオルガノシロキサン含有量は0.1~50重量%が好ましい。かかるポリジオルガノシロキサン成分含有量はより好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。かかる好適な範囲の下限以上では、耐衝撃性や難燃性に優れ、かかる好適な範囲の上限以下では、成形条件の影響を受けにくい安定した外観が得られやすい。かかるポリジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン含有量は、H-NMR測定により算出することが可能である。
【0040】
本発明において、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。
また、本発明の妨げにならない範囲で、上記二価フェノール(I)、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)以外の他のコモノマーを共重合体の全重量に対して10重量%以下の範囲で併用することもできる。
【0041】
本発明においては、あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中における二価フェノール(I)と炭酸エステル形成性化合物の反応により末端クロロホルメート基を有するオリゴマーを含む混合溶液を調製する。
【0042】
二価フェノール(I)のオリゴマーを生成するにあたり、本発明の方法に用いられる二価フェノール(I)の全量を一度にオリゴマーにしてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。
【0043】
このオリゴマー生成反応の方式は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。
【0044】
炭酸エステル形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、ホスゲン等のガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
【0045】
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、オリゴマーの形成に使用する二価フェノール(I)のモル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
【0046】
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレン等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、クロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
【0047】
オリゴマー生成の反応圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2~10時間で行われる。オリゴマー生成反応のpH範囲は、公知の界面反応条件と同様であり、pHは常に10以上に調整される。
【0048】
本発明はこのようにして、末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のオリゴマーを含む混合溶液を得た後、該混合溶液を攪拌しながら分子量分布(Mw/Mn)が3以下まで高度に精製された一般式(3)で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を二価フェノール(I)に加え、該ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該オリゴマーを界面重縮合させることによりポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体を得る。
【0049】
界面重縮合反応を行うにあたり、酸結合剤を反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜追加してもよい。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。具体的には、使用するヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)、又は上記の如く二価フェノール(I)の一部を後添加モノマーとしてこの反応段階に添加する場合には、後添加分の二価フェノール(I)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との合計モル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより過剰量のアルカリを用いることが好ましい。
【0050】
二価フェノール(I)のオリゴマーとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との界面重縮合反応による重縮合は、上記混合液を激しく攪拌することにより行われる。
【0051】
かかる重合反応においては、末端停止剤或いは分子量調節剤が通常使用される。末端停止剤としては一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、通常のフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、トリブロモフェノールなどの他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ヒドロキシフェニルアルキル酸エステル、アルキルエーテルフェノールなどが例示される。その使用量は用いる全ての二価フェノール系化合物100モルに対して、100~0.5モル、好ましくは50~2モルの範囲であり、二種以上の化合物を併用することも当然に可能である。
【0052】
重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などの触媒を添加してもよい。
かかる重合反応の反応時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは50分以上である。所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよい。
【0053】
分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサンとすることができる。かかる分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂中の多官能性化合物の割合は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全量中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%、特に好ましくは0.05~0.4モル%である。なお、かかる分岐構造量についてはH-NMR測定により算出することが可能である。
【0054】
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5~10時間で行われる。
【0055】
場合により、得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として取得することもできる。
【0056】
得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。
【0057】
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂成形品中のポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズは、1~40nmの範囲が好ましい。かかる平均サイズはより好ましくは1~30nm、更に好ましくは5~25nmである。かかる好適な範囲の下限未満では、耐衝撃性や難燃性が十分に発揮されず、かかる好適な範囲の上限を超えると耐衝撃性が安定して発揮されない場合がある。これにより耐衝撃性および外観に優れた樹脂組成物が提供される。
【0058】
本発明におけるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂成形品のポリジオルガノシロキサンドメインの平均ドメインサイズ、小角エックス線散乱法(Small Angle X-ray Scattering:SAXS)により評価した。小角エックス線散乱法とは、散乱角(2θ)<10°以内の小角領域で生じる散漫な散乱・回折を測定する方法である。この小角エックス線散乱法では、物質中に1~100nm程度の大きさの電子密度の異なる領域があると、その電子密度差によりエックス線の散漫散乱が計測される。この散乱角と散乱強度に基づいて測定対象物の粒子径を求める。ポリカーボネートポリマーのマトリックス中にポリジオルガノシロキサンドメインが分散した凝集構造となるポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の場合、ポリカーボネートマトリックスとポリジオルガノシロキサンドメインの電子密度差により、エックス線の散漫散乱が生じる。散乱角(2θ)が10°未満の範囲の各散乱角(2θ)における散乱強度I を測定して、小角エックス線散乱プロファイルを測定し、ポリジオルガノシロキサンドメインが球状ドメインであり、粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の粒径と仮の粒径分布モデルから、市販の解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズを求める。小角エックス線散乱法によれば、透過型電子顕微鏡による観察では正確に測定できない、ポリカーボネートポリマーのマトリックス中に分散したポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズを、精度よく、簡便に、再現性良く測定することができる。平均ドメインサイズとは個々のドメインサイズの数平均を意味する。本発明に関連して用いる用語「平均ドメインサイズ」は、かかる小角エックス線散乱法により、実施例記載の方法で作製した3段型プレートの厚み1.0mm部を測定することにより得られる測定値を示す。また、粒子間相互作用(粒子間干渉)を考慮しない孤立粒子モデルにて解析を行う。
【0059】
(B成分:制振性エラストマー)
本発明のB成分は、芳香族ビニル化合物の重合体から誘導されるブロックおよびイソプレンまたはイソブチレンを単量体の一部に有する重合体から誘導されるブロックを含有するブロック共重合体であり、樹脂組成物に制振性を付与する成分である。
【0060】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンおよびtert-ブチルスチレン等が挙げられ、これらの中でもスチレンが好ましい。
【0061】
イソプレンまたはイソブチレンを単量体の一部に有する重合体から誘導されるブロックとしては、例えばイソプレン単独重合体、イソブチレン単独重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソプレンまたはイソブチレンをモノマーの一つに含むランダム共重合体、イソプレンまたはイソブチレンをポリマー分子中のブロックの一つとして含むブロック共重合体およびそれらを水素添加して得られる水素添加物から誘導されるブロックなどが挙げられる。あるいは、他の単量体成分から誘導されるブロックを含んでもよく、例えば、イソプレン-ブタジエン共重合体やその水素添加物から誘導されるブロックも挙げられる。これらの中でも、イソプレンを単量体の一部に含む重合体の水素添加物から誘導されるブロックが好ましく、イソプレン単独重合体の水素添加物から誘導されるブロックがより好ましい。
【0062】
芳香族ビニル化合物の重合体から誘導されるブロックおよびイソプレンまたはイソブチレンを単量体の一部に有する重合体から誘導されるブロックのモル比率としては、50/50~5/95であることが好ましく、40/60~10/90であることがより好ましい。50/50より大きい場合は制振性向上効果が不十分である場合があり、5/95より小さい場合はA成分との相溶性が悪くなる場合がある。
【0063】
また、B成分は、実施例に記載の方法により測定されたガラス転移温度が-30℃~10℃の範囲であり、-25℃~5℃の範囲が好ましく、-20℃~0℃の範囲がより好ましい。ガラス転移温度がこの範囲である場合、自動車で発生する周波数領域、つまり10~10Hz付近の振動や騒音に対する制振性が発揮される。
【0064】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対して、5~50重量部であり、好ましくは7~40重量部、より好ましくは10~30重量部である。B成分の含有量が5重量部未満の場合、制振性向上効果が不十分であり、50重量部を超える場合、自動車用樹脂部材として必要な剛性を有しない。
【0065】
(C成分:トリメチルホスフェイトを除くホスフェイト化合物およびホスホン酸エステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物)
本発明のC成分は、トリメチルホスフェイトを除くホスフェイト化合物(C-1成分)およびホスホン酸エステル化合物(C-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0066】
(C-1成分)
本発明のC-1成分は、トリメチルホスフェイトを除くホスフェイト化合物である。具体的には、トリブチルホスフェイト、トリクレジルホスフェイト、トリフェニルホスフェイト、ジフェニルクレジルホスフェイト、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェイト、トリブトキシエチルホスフェイト、ジイソプロピルホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイトや、それらの金属塩(ホスフェイト金属塩)が例示される。その中でも、ホスフェイト金属塩が好ましく、ステアリルステアリルアシッドホスフェイト金属塩がより好ましく、ステアリルアシッドホスフェイト亜鉛塩がより好ましい。
【0067】
ホスフェイト金属塩の酸価は10~55mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは10~53mgKOH/g、さらに好ましくは30~53mgKOH/gである。酸価が10mgKOH/g未満である場合、ホスフェイト金属塩として製造上現実的ではなく、酸価が55mgKOH/gより大きい場合、成形加工時の変色及び強度の低下が防止できない場合がある。酸価の測定は指示薬滴定法を使用し、ホスフェイト金属塩の2-エチルヘキサノール溶液を60℃の条件下でKOHアルコール溶液にて滴定した。指示薬はフェノールフタレインで色を確認した。
【0068】
(C-2成分)
本発明のC-2成分はホスホン酸エステルである。ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸モノエステル、ホスホン酸ジエステル、およびホスホン酸トリエステルが挙げられるがホスホン酸トリエステルが好ましい。エステルの炭素数は1から22のものまで種々の組合せが使用可能だが、エチルジエチルホスホノアセテートがより好ましい。ホスホン酸エステルの酸価は0.01~0.30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは0.01~0.20mgKOH/g、さらに好ましくは0.05~0.15mgKOH/gである。酸価が0.01mgKOH/g未満のものは製造上現実的ではなく、0.30mgKOH/gより大きい場合、成形加工時の変色及び強度の低下が防止できない場合がある。酸価の測定は電位差滴定装置を使用し、ホスホン酸エステルのアルコール溶液をKOHアルコール溶液にて滴定した。
【0069】
C成分の含有量は、A成分100重量部に対して、0.001~1重量部であり、好ましくは0.005~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.3重量部である。C成分の含有量が0.001重量部未満の場合、1重量部を超える場合共に、制振性の耐湿熱性向上効果が不十分である。
【0070】
(D成分:熱可塑性樹脂)
本発明の樹脂組成物は、D成分としてジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物(D-1)、アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物(D-2)、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体(D-3)およびポリエステル樹脂(D-4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含有することができる。
【0071】
(D-1成分)
D-1成分は、ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物である。
【0072】
ジエン系ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびスチレン-ブタジエン共重合体等のゴム成分が用いられ、ジエン系ゴム質重合体のD-1成分中の割合は、D-1成分100重量部中、下限は好ましくは13重量部、より好ましくは14重量部、さらに好ましくは15重量部であり、上限は好ましくは45重量部である。
【0073】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0074】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0075】
芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体中における各成分の割合は、全体を100重量部とした場合、芳香族ビニル単量体が好ましくは95~50重量部、より好ましくは85~65重量部、シアン化ビニル単量体が好ましくは5~50重量部、より好ましくは15~35重量部である。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能であり、塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよい。
【0076】
(D-2成分)
D-2成分は、アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体をグラフト重合したグラフト共重合体または該グラフト共重合体および芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体の混合物である。
【0077】
アクリル系ゴム質重合体は、アクリル酸アルキルエステルを主成分としたものであり、さらに必要に応じて他の共重合可能な成分として、スチレン、メチルメタクリレート、ブタジエン、シリコーンを含有してもよい。アクリル酸アルキルエステルとして好ましくは2-エチルヘキシルアクリレート、n―ブチルアクリレートが挙げられ、かかるアクリル酸アルキルエステルはアクリル系ゴム質重合体成分100重量部中50重量部以上含まれるものが好ましい。
【0078】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0079】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0080】
芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体中における各成分の割合は、全体を100重量部とした場合、芳香族ビニル単量体が好ましくは95~50重量部、より好ましくは85~65重量部、シアン化ビニル単量体が好ましくは5~50重量部、より好ましくは15~35重量部である。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能であり、塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよい。
【0081】
(D-3成分)
D-3成分は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の共重合体である。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0082】
(D-4成分)
D-4成分は、ポリエステル樹脂であり、ポリエステルを形成するジカルボン酸成分とジオール成分の内、ジカルボン酸成分100モル%の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸であるポリエステル樹脂が好ましく、より好ましくは90モル%以上、最も好ましくは99モル%以上が芳香族ジカルボン酸であるポリエステル樹脂である。
【0083】
このジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-Naスルホイソフタル酸、エチレン-ビス-p-安息香酸等があげられる。これらのジカルボン酸は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。本発明のポリエステル樹脂には、上記の芳香族ジカルボン酸以外に、30モル%未満の脂肪族ジカルボン酸成分を共重合することができる。その具体例として、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等があげられる。
【0084】
本発明のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、トランス-またはシス-2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p-キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して使用することができる。尚、ジオール成分中の二価フェノールは30モル%以下であることが好ましい。
【0085】
具体的なポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレートなどの他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのような共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0086】
また本発明に使用されるポリエステル樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシ基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0087】
本発明に使用されるポリエステル樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。更にポリエステル樹脂の製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。
【0088】
更に上記ポリエステル樹脂中でも特に好適であるのは、ポリエチレンテレフタレートである。ポリエチレンテレフタレートとは、テレフタル酸あるいはその誘導体と、1,4-エタンジオールあるいはその誘導体とから重縮合反応により得られるポリマーであるが、上述のとおり他のジカルボン酸成分および他のアルキレングリコール成分を共重合したものを含む。
【0089】
ポリエチレンテレフタレートの末端基構造は上記と同様、特に限定されるものではないが、より好ましいのは末端カルボキシ基が末端水酸基に比較して少ないものである。また製造方法についても上記の各種方法を取り得るが、連続重合式のものが好ましい。これはその品質安定性が高く、またコスト的にも有利なためである。更に重合触媒としては有機チタン化合物を用いることが好ましい。これはエステル交換反応などへの影響が少ない傾向にあるからである。かかる有機チタン化合物としては、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物などを挙げることができる。有機チタン化合物の使用量は、そのチタン原子がポリエチレンテレフタレートを構成する酸成分に対し、3~12mg原子%となる割合が好ましい。
【0090】
本発明のポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、o-クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.5~1.5であるのが好ましく、特に好ましくは0.6~1.2である。
【0091】
D成分の含有量は、A成分100重量部に対して、10~200重量部であることが好ましく、より好ましくは15~150重量部、さらに好ましくは20~100重量部である。D成分の含有量が10重量部未満では十分な流動性、耐薬品性が得られない場合があり、200重量部を超えると耐熱性および耐衝撃性が低下する場合がある。
【0092】
<その他の成分について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、離型剤、紫外線吸収剤、コアシェル型グラフトポリマー、難燃剤および充填材等を配合することもできる。
【0093】
(i)離型剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
かかる離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1~20の一価または多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。高級脂肪酸としては、炭素原子数10~30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。かかる離型剤の含有量は、A成分100重量部に対して、0.01~5重量部であることが好ましい。
【0094】
(ii)紫外線吸収剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。ベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジtert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’-ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン) ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン) ビス(3,1- ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
【0095】
シアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0096】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
紫外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対して、好ましくは0.01~2重量部、より好ましくは0.02~1.5重量部、さらに好ましくは0.03~1重量部である。
【0097】
(iii)コアシェル型グラフトポリマー
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はD成分を除くコアシェル型グラフトポリマーを含有することができる。コアシェル型グラフトポリマーはガラス転移温度が10℃以下のゴム成分をコアとして、芳香族ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらと共重合可能なビニル化合物から選択されたモノマーの1種または2種以上をシェルとして共重合されたグラフト共重合体である。
【0098】
コアシェル型グラフトポリマーのゴム成分としては、ブタジエンゴム、ブタジエン-アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル-シリコーン複合ゴム、イソブチレン-シリコーン複合ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-アクリルゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴムおよびこれらの不飽和結合部分に水素が添加されたものを挙げることができるが、燃焼時の有害物質の発生懸念という点から、ハロゲン原子を含まないゴム成分が環境負荷の面において好ましい。ゴム成分のガラス転移温度は好ましくは-10℃以下、より好ましくは-30℃以下であり、ゴム成分としては特にブタジエンゴム、ブタジエン-アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル-シリコーン複合ゴムが好ましい。複合ゴムとは、2種のゴム成分を共重合したゴムまたは分離できないよう相互に絡み合ったIPN構造をとるように重合したゴムをいう。コアシェル型グラフトポリマーにおいて、そのコアの粒径は重量平均粒子径において0.05~0.8μmが好ましく、0.1~0.6μmがより好ましく、0.15~0.5μmがさらに好ましい。0.05~0.8μmの範囲であればより良好な耐衝撃性が達成される。
【0099】
ゴム成分にコアシェル型グラフトポリマーのシェルとして共重合するビニル化合物における芳香族ビニルとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、アルコキシスチレン、ハロゲン化スチレン等を挙げることができる。またアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタクリル酸メチルが特に好ましい。これらの中でも特にメタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステルを必須成分として含有することが好ましい。これは、該コアシェル型グラフトポリマーがポリカーボネート樹脂との親和性に優れることから、該樹脂中により多くのゴム成分が存在するようになり、ポリカーボネート樹脂の有する良好な耐衝撃性がより効果的に発揮され、結果として樹脂組成物の耐衝撃性が良好となるためである。より具体的には、メタクリル酸エステルはグラフト成分100重量部中(コアシェル型重合体の場合にはシェル100重量部中)、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上含有されることが好ましい。ガラス転移温度が10℃以下のゴム成分を含有する弾性重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの重合法で製造したものであってもよく、共重合の方式は一段グラフトであっても多段グラフトであっても差し支えない。また製造の際に副生するグラフト成分のみのコポリマーとの混合物であってもよい。さらに重合法としては一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また懸濁重合法において、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法、および連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数~数十μm径の細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法などを行ってもよい。コアシェル型のグラフト重合体の場合、その反応はコアおよびシェル共に、1段であっても多段であってもよい。
【0100】
かかる重合体は市販されており容易に入手することが可能である。例えばゴム成分として、ブタジエンゴムを主成分とするものは、(株)カネカ製のカネエースMシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするM-711、シェル成分がメチルメタクリレート・スチレンを主成分とするM-701など)、三菱レイヨン(株)製のメタブレンCシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレート・スチレンを主成分とするC-223Aなど)、Eシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレート・スチレンを主成分とするE-870Aなど)、DOWケミカル(株)のパラロイドEXLシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするEXL-2620など)が挙げられアクリルゴムまたはブタジエン-アクリル複合ゴムを主成分とするものとしては、Wシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするW-600Aなど)、DOWケミカル(株)のパラロイドEXLシリーズ(例えばシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするEXL-2390など)が挙げられ、ゴム成分としてアクリル-シリコーン複合ゴムを主成分とするものとしては三菱レイヨン(株)製のシェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするメタブレンS-2501あるいはシェル成分がアクリロニトリル・スチレンを主成分とするSRK200Aという商品名で市販されているものが挙げられる。
【0101】
(iv)難燃剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には従来、熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート樹脂の難燃剤として知られる各種の化合物を含有することができるが、より好適には、(i)ハロゲン系難燃剤(例えば、臭素化ポリカーボネート化合物など)(ii)リン系難燃剤(例えば、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、およびホスファゼン化合物など)、(iii)金属塩系難燃剤(例えば有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、ホウ酸金属塩系難燃剤、および錫酸金属塩系難燃剤など)、(iv)シリコーン化合物からなるシリコーン系難燃剤である。尚、難燃剤として使用される化合物の配合は難燃性の向上のみならず、各化合物の性質に基づき、例えば帯電防止性、流動性、剛性、および熱安定性の向上などがもたらされる。
【0102】
難燃剤の含有量は、A成分100重量部に対して、好ましくは0.01~30重量部であり、より好ましくは0.05~28重量部、さらに好ましくは0.08~25重量部である。難燃剤の含有量が0.01重量部未満の場合、十分な難燃性が得られない場合があり、30重量部を超えた場合、機械特性の低下が大きい場合がある。
【0103】
(v)充填材
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、従来公知の無機充填剤が使用できるが、好適に使用される充填剤とは、針状無機充填剤、繊維状無機充填剤、板状無機充填剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の充填剤である。針状無機充填剤はウイスカー状、柱状等の形状を有する無機充填剤で、ワラストナイト、ベーマイト等から選ばれる。繊維状無機充填剤は細くて長い繊維状の無機充填剤を指し、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維等から選ばれる。板状無機充填剤は、薄片状、鱗片状等の形状を有する無機充填剤で、タルク、マイカ、ガラスフレーク等から選ばれる。上記無機充填剤の中でも特に好適であるのは、ガラス繊維、タルク、マイカおよびワラストナイトである。
【0104】
(ガラス繊維)
ガラス繊維としては、Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成を特に限定するものではなく、場合によりTiO、SO、P等の成分を含有するものであってもよい。但し、Eガラス(無アルカリガラス)がより好ましい。ガラス繊維は溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定の繊維状にしたものである。かかる場合の急冷および延伸条件についても特に限定されるものではない。また断面の形状は真円状の他に、楕円状、マユ型、三つ葉型などの真円以外の形状ものを使用してもよい。更に真円状ガラス繊維と真円以外の形状のガラス繊維が混合したものでもよい。
【0105】
ガラス繊維の繊維径としては1~25μmのものが好ましく、より好ましくは3~17μmである。繊維径が細すぎる場合には繊維が折れやすくなり剛性が低下しやすい。また表面積が大きくなるので、相対的に多くの被覆剤が必要となり難燃性が必要な場合には悪影響を与えやすい。繊維径が大きすぎる場合には、成形品の外観などが低下しやすい。
【0106】
ガラス繊維の繊維長としては、本発明の樹脂組成物からなるペレットまたは成形品中で数平均繊維長として好ましくは50~500μm、より好ましくは100~400μm、さらに好ましくは120~300μmのものである。尚、かかる数平均繊維長は、成形品を溶剤に溶解したり、樹脂を塩基性化合物で分解したりした後に採取されるガラス繊維の残渣から光学顕微鏡観察などから画像解析装置により算出される値である。またかかる値の算出に際しては繊維径10μm以下の長さのものはカウントしない方法による値である。
【0107】
板状ガラス充填剤としては、金属コートガラスフレークおよび金属酸化物コートガラスフレークを含むガラスフレーク等が挙げられる。板状ガラス充填剤の基体となるガラスフレークは、円筒ブロー法やゾル-ゲル法などに方法によって製造される板状のガラスフィラーである。かかるガラスフレークの原料の大きさも粉砕や分級の程度により種々のものを選択可能である。原料に使用するガラスフレークの平均粒径は10~1000μmが好ましく、20~500μmがより好ましく、30~300μmが更に好ましい。上記範囲のものは取り扱い性と成形加工性との両立に優れるためである。通常板状ガラス充填剤は樹脂との溶融混練加工により割れが生じ、その平均粒径は小径化する。樹脂組成物中の板状ガラス充填剤の数平均粒径は10~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましく、20~80μmが更に好ましい。尚、かかる数平均粒径は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、および薬品による分解等の処理で採取される板状ガラス充填剤の残さを光学顕微鏡観察した画像から画像解析装置により算出される値である。また、かかる値の算出に際してはフレーク厚みを目安にそれ以下の長さのものはカウントしない方法による値である。また厚みとしては0.5~10μmが好ましく、1~8μmがより好ましく、1.5~6μmが更に好ましい。上記数平均粒径および厚みを有する板状ガラス充填剤は良好な機械的強度、外観、成形加工性を達成する。
【0108】
ガラス充填剤は、周知の表面処理剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、またはアルミネートカップリング剤等で表面処理が施されたものが機械的強度の向上の点から好ましい。また、ガラスファイバー(金属コートまたは金属酸化物コートされたものを含む)、およびガラスフレーク(金属コートまたは金属酸化物コートされたものを含む)は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂等で集束処理されたものが好ましく使用される。集束処理された充填剤の集束剤付着量は、充填剤100重量部中好ましくは0.5~8重量部、より好ましくは1~4重量部である。
【0109】
更に本発明の繊維状ガラス充填剤および板状ガラス充填剤は、異種材料が表面被覆されたものを含む。かかる異種材料としては金属および金属酸化物が好適に例示される。金属としては、銀、銅、ニッケル、およびアルミニウムなどが例示される。また金属酸化物としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素などが例示される。かかる異種材料の表面被覆の方法としては特に限定されるものではなく、例えば公知の各種メッキ法(例えば、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法(例えば熱CVD、MOCVD、プラズマCVDなど)、PVD法、およびスパッタリング法などを挙げることができる。
【0110】
(タルク)
本発明におけるタルクとは、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO・3MgO・2HOで表され、通常層状構造を持った鱗片状の粒子であり、また組成的にはSiOを56~65重量部、MgOを28~35重量部、HO約5重量部程度から構成されている。その他の少量成分としてFeが0.03~1.2重部、Alが0.05~1.5重量部、CaOが0.05~1.2重量部、KOが0.2重量部以下、NaOが0.2重量部以下などを含有している。タルクの粒子径は、沈降法により測定される平均粒径が0.1~15μm(より好ましくは0.2~12μm、更に好ましくは0.3~10μm、特に好ましくは0.5~5μm)の範囲であることが好ましい。更にかさ密度を0.5(g/cm3)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。タルクの平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
【0111】
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらに粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
【0112】
さらにタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
【0113】
(マイカ)
マイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が10~100μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは平均粒径が20~50μmのものである。マイカの平均粒径が10μm未満では剛性に対する改良効果が十分でなく、100μmを越えても剛性の向上が十分でなく、衝撃特性等の機械的強度の低下も著しい場合があるため好ましくない。マイカは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは厚みが0.03~0.3μmである。アスペクト比としては好ましくは5~200、より好ましくは10~100のものを使用できる。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよい。乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるが、一方湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効であり、その結果樹脂組成物の剛性向上効果はより高くなる。
【0114】
(ワラストナイト)
ワラストナイトの繊維径は0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~3μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で強化フィラーを観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。一方平均繊維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データについて画像解析装置を使用し、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。
【0115】
本発明のワラストナイトは、その元来有する白色度を十分に樹脂組成物に反映させるため、原料鉱石中に混入する鉄分並びに原料鉱石を粉砕する際に機器の摩耗により混入する鉄分を磁選機によって極力取り除くことが好ましい。かかる磁選機処理によりワラストナイト中の鉄の含有量はFeに換算して、0.5重量部以下であることが好ましい。
【0116】
充填材の含有量は、A成分100重量部に対して、1~100重量部であることが好ましく、より好ましくは5~90重量部、さらに好ましくは10~80重量部である。含有量が1重量部未満では、曲げ弾性率が劣り、かつ十分な持続的帯電防止性が得られない場合があり、100重量部を超えた場合、熱安定性が悪化し、押出や成形時の分子量低下が大きくなる場合がある。
【0117】
(vi)その他の添加剤
その他、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、帯電防止剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
【0118】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
【0119】
<成形品について>
上記の如く得られた本発明のポリカーボネート樹脂組成物は通常前記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品および射出成形品にすることも可能である。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また本発明の樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シートを成形することも可能である。
【0120】
本願発明の樹脂組成物からなる成形品は、-10℃~10℃(10Hz)におけるtanδの値が重要である。tanδは貯蔵剪断弾性率(G’)と損失剪断弾性率(G’’)の比を表し、値が大きいほど音波によって材料が振動した際のエネルギー吸収が大きく、制振性が高い。B成分を添加しない一般的な樹脂が0.015付近のtanδを示すのに対し、本発明の樹脂組成物のtanδは0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.035以上であることがさらに好ましい。温度範囲が-10℃~10℃(10Hz)である根拠としては、自動車の主要ノイズ(モーター音、風切り音、ロードノイズ)が100~10000Hz付近の範囲であり、それを温度周波数換算(WLF換算)すると、10Hzにて-10℃~10℃の範囲に相当するためである。
【0121】
また、自動車に樹脂部材として適用するため、成形品の剛性は1000MPaを超えることが好ましく、より好ましくは1400MPa以上、さらに好ましくは1600MPa以上である。剛性が1000MPa未満の場合、自動車に掛かる様々な力学的入力によって変形しやすくなるなどの不具合が発生する場合がある。
【実施例0122】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に制限されるものではない。尚、「部」は断りの無い限り、重量部である。なお、評価は下記の方法によって実施した。
【0123】
<樹脂組成物の評価>
1.制振性エラストマー(B成分)のガラス転移温度
DSC装置(Netzsch社DSC214Polyma)を用い、下記a~cのプロセス及び条件にて昇温と降温を実施した。プロセスcにおけるDSC(mW/mg)と温度(℃)のプロットから、傾きが変化する温度、つまりTgを読み取った。なお、本条件で有効測定下限温度は-40℃であり、-40℃よりもTgが低く検出不可であった場合にはTg<-40℃と記載した。
a:25℃→250℃ … 20℃/min昇温かつ5min保持
b:250℃→-60℃ … 100℃/min降温かつ7min保持
c:-60℃→40℃ … 20℃/min昇温
【0124】
2.樹脂組成物(成形品)の制振性
(1)湿熱未処理品のtanδ
下記方法にて作製したISO試験用ダンベル試験片について、DMA装置(Netzsch社DMA242E_Artemis)を用い、周波数10Hz、昇温2℃/minの条件で、tanδを測定した。得られたグラフの-10℃、0℃、10℃でのtanδの値を読み取り、それらの平均値を算出した。tanδの平均値が0.035以上のものを◎、0.02以上0.035未満のものを○、0.02未満のものを×とした。
(2)湿熱処理品のtanδ
「(1)湿熱未処理品のtanδ」と同様の方法で、下記の方法で湿熱処理を実施した湿熱処理品のtanδの平均値を算出した。(1)で得られた湿熱未処理品のtanδに対する湿熱処理後のtanδの保持率が85%以上のものを◎、80%以上85%未満のものを○、80%未満のものを×とした。
【0125】
3.樹脂組成物(成形品)の剛性
下記方法にて作製したISO試験用ダンベル試験片について、ISO178に従い、2mm/minの条件にて、曲げ弾性率を測定した。
【0126】
<実施例1~28、比較例1~10>
[樹脂ペレットの作製]
表1および表2に示す成分、含有量に基づき、タンブラーを用いて各種配合成分を混合し二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α)を用いてシリンダー温度270℃にて溶融混練し、各種ペレットを得た。
【0127】
[射出成形によるISO試験用ダンベル試験片の作製]
上記方法にて得られたペレットを、110℃で5時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(FANUC(株)製ROBOSHOTα-S100iA)を使用し、実施例1はシリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、実施例1以外はシリンダー温度260℃、金型温度60℃の条件で、厚さ4mm、幅10mm、長さ170mmのISO試験用ダンベル試験片を成形した。
【0128】
[ISO試験用ダンベル試験片の湿熱処理]
上記方法にて得られたISO試験用ダンベル試験片を、高度加速寿命試験装置(エスペック(株)製EHS-412MD)を用い、温度100℃、湿度FULLの条件にて96時間の促進的湿熱処理を実施した。
【0129】
[原材料]
(A成分)
A-1:ポリカーボネート樹脂(帝人(株)製パンライトL-1225WP、粘度平均分子量:22,400)
【0130】
(B成分)
B-1:Vinyl-SEPS((株)クラレ製HYBRAR7125F、Tg=-9℃)
B-2:Vinyl-SEEPS((株)クラレ製HYBRAR7311F、Tg=-19℃)
B-3:Vinyl-SIS((株)クラレ製HYBRAR5127、Tg=9℃)
B-4:SIBS((株)カネカ製SIBSTAR102T、Tg=-25℃)
B-5(比較例):SEBS((株)クラレ製SEPTON8006、Tg<-40℃)
B-6(比較例):SEPS((株)クラレ製SEPTON2104、Tg<-40℃)
B-7(比較例):SEEPS((株)クラレ製SEPTON4033、Tg<-40℃)
【0131】
(C成分)
C-1:ステアリルアシッドホスフェイト亜鉛塩(堺化学(株)製LBP-1830精製、酸価49.9mgKOH/g)
C-2:ステアリルアシッドホスフェイト亜鉛塩(城北化学工業(株)製JP-518Zn、酸価54.5mgKOH/g)
C-3:ステアリルアシッドホスフェイト亜鉛塩(堺化学(株)製LBP-1830、酸価56.6mgKOH/g)
C-4:トリエチルホスホノアセテート(城北化学工業(株)製JC-224、酸価0.08mgKOH/g)
C-5:トリエチルホスホノアセテート(Solvay社製、酸価0.39mgKOH/g)
C-6(比較例):トリメチルホスフェイト(大八化学(株)製)
C-7(比較例):トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト((株)ADEKA製アデカスタブ2112)
C-8(比較例):n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート((株)ADEKA製フェノール系熱安定剤AO-50)
【0132】
(D成分)
D-1:ABS樹脂(Trinseo社製MAGNUM A371)
D-2:ASA樹脂(INEOS Styrolution社製777K)
D-3:AS樹脂(日本エイアンドエル(株)製ライタックA BS-207)
D-4-1:PET樹脂(帝人(株)製TRN-8550FF)
D-4-2:PBT樹脂(長春化工社製1100-211MD)
【0133】
(その他成分)
E-1:アクリル-シリコーン複合ゴム系コアシェル型グラフトポリマー(三菱ケミカル(株)製メタブレンS-2030)
E-2:ブタジエンゴム系コアシェル型グラフトポリマー((株)カネカ製カネエースM711)
E-3:ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル(日油(株)製ユニスターH476S)
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
表1および表2に記載の実施例は、いずれも湿熱未処理品が良好な制振性を有し、湿熱処理後においても制振性の低下が少なく、さらに樹脂として必要な剛性を有しており、自動車内の静粛化へ貢献しうる樹脂材料として適用可能である。