(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062195
(43)【公開日】2025-04-14
(54)【発明の名称】画像処理システム、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 5/92 20240101AFI20250407BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
G06T5/00 740
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171096
(22)【出願日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中本 千佳
(72)【発明者】
【氏名】桑原 洋平
【テーマコード(参考)】
2H052
5B057
【Fターム(参考)】
2H052AA09
2H052AC04
2H052AC34
2H052AF21
2H052AF25
5B057CA02
5B057CA08
5B057CB01
5B057CB08
5B057CH07
5B057DA16
(57)【要約】
【課題】観察条件に応じて必要となるシステムの調整を素早く行えるようにする。
【解決手段】画像処理システム1は、スキャンユニット105と、PPD111と、強度階調値と出力階調値とを対応付けた複数のテーブルであるLUT13-1、13-2、13-3が格納されているメモリ12と、プロセッサ11とを備える。プロセッサ11は、PPD11より出力される光強度信号とスキャンユニット105による走査位置とに基づいて、当該光強度信号により示される強度階調値を構成画素の画素値とした第1画像データを生成し、第1画像データを、メモリ12に複数格納されているテーブルのうちから選択される1つに基づいて変換して、出力階調値を構成画素の画素値とした第2画像データを生成し、第2画像データにより表される画像を表示装置20に表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャナと、
PPD(Pixelated Photon Detector)と、
強度階調値と出力階調値とを対応付けたテーブルが複数格納されているメモリと、
プロセッサであって、
前記PPDより出力される光強度信号と前記スキャナによる走査位置とに基づいて、前記光強度信号により示される前記強度階調値を構成画素の画素値とした第1画像データを生成し、
前記第1画像データを、前記メモリに複数格納されている前記テーブルのうちから選択される1つの前記テーブルに基づいて変換して、前記出力階調値を構成画素の画素値とした第2画像データを生成し、
前記第2画像データにより表される画像を表示部に表示させる、
処理を行うように構成される前記プロセッサと、
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、複数の前記テーブルのうちから1つの前記テーブルを選択する入力を取得する処理を行うように構成され、
前記第2画像データは、前記入力により選択された前記1つの前記テーブルに基づいて前記第1画像データを変換することによって生成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、画素値が所定の上限値を超える前記第1画像データの構成画素に対応する前記第2画像データの構成画素、または、画素値が前記所定の上限値以上である前記第1画像データの構成画素に対応する前記第2画像データの構成画素の色彩を、前記所定の上限値以下の画素、または、前記所定の上限値を超えない画素を表示する色彩とは異なる第1の色彩とした前記画像を前記表示部に表示させる処理を行うように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1画像データにおいて画素値が所定の下限値以下である構成画素に対応する前記第2画像データの構成画素を前記第1の色彩とは異なり、かつ、前記所定の上限値を超えない画素の色彩とも異なる第2の色彩とした前記画像を前記表示部に表示させる処理を行うように構成されることを特徴とする請求項3に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
予め定められている最大値を超える前記強度階調値を示す前記光強度信号が前記PPDより出力されたことを示すフラグを取得し、
前記フラグの取得に応じて、前記第1画像データにおいて画素値が前記最大値を超える前記強度階調値を表している構成画素に対応する前記第2画像データの構成画素を画素値が所定の上限値を超えない画素を表示する色彩とは異なる第3の色彩とした前記画像を前記表示部に表示させる、
処理を行うように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
予め定められている最大値を超える前記強度階調値を示す前記光強度信号が前記PPDより出力されたことを示すフラグを取得し、
前記フラグの取得に応じて、前記第1画像データにおいて画素値が前記最大値を超える前記強度階調値を表している構成画素に対応する前記第2画像データの構成画素を、前記第1の色彩と前記第2の色彩とのどちらとも異なり、かつ、前記所定の上限値を超えない画素の色彩とも異なる第3の色彩とした前記画像を前記表示部に表示させる、
処理を行うように構成されることを特徴とする請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記第2画像データの構成画素を、該構成画素の画素値に対応する色彩とした前記画像を前記表示部に表示させ、
前記画像の構成画素についての前記色彩と前記出力階調値との対応関係を表す表示を前記表示部に表示させる、
処理を行うように構成されることを特徴とする請求項6に記載の画像処理システム。
【請求項8】
PPD(Pixelated Photon Detector)より出力される光強度信号とスキャナによる走査位置とに基づいて、前記光強度信号により示される強度階調値を構成画素の画素値とした第1画像データを生成し、
前記第1画像データを、前記強度階調値と出力階調値とを対応付けたテーブルであってメモリに複数格納されている前記テーブルのうちから選択される1つに基づいて変換して、前記出力階調値を構成画素の画素値とした第2画像データを生成し、
前記第2画像データにより表される画像を表示部に表示させる、
ことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、画像処理システムに関し、特に、Pixelated Photon Detector(以降、PPDと記す)を備える画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ走査型顕微鏡システム等のPPDを備える画像処理システムにおいて、画像のコントラスト調整を容易に行えるようにするという技術が知られている。この技術は、例えば、PPDで検出された光の強度信号とスキャナの走査位置とに基づいて生成した画像のコントラストを、ルックアップテーブル(LookUp Table、以降、LUTと記す)を用いて調整し、調整後の当該画像を表示するというものである。また、調整前の画像において識別すべき階調の範囲(識別範囲)の設定に応じてLUTを更新して、調整後の画像を表示する表示装置の表示階調範囲の全域に当該識別範囲が収まる関係となるようにするという技術も知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光の強度の検出に用いられる検出素子として、最近は、PMT(Photomultiplier Tube、光電子増倍管)からPPDなどに変遷しつつある。レーザ走査型顕微鏡において検出素子としてPPDを採用すると、PMTには必要であった印加高電圧HV(High Voltage)が不要となる。しかしながら、このために、取得画像の輝度を調整する手法として、検出素子の感度調整により検出素子からの出力レベルを変化させる手法は行えなくなり、サンプルに照射するレーザ光の照射強度(レーザパワー)の調整による手法のみとなる。
【0005】
ところで、レーザ走査型顕微鏡を使用してサンプルの撮像を行う際には、撮像条件合わせの作業やピント合わせなどの像探し(サンプル探し)の作業が事前に行われる。レーザ走査型顕微鏡によるレーザ光の照射はサンプルに退色を生じさせることがあるため、上述の作業時にはレーザパワーを通常の撮像時よりもなるべく弱くすることが望ましく、また、作業時間が短いことが望ましい。
【0006】
一方で、サンプルの正式な画像を得るための撮像では、コントラストが高く階調数が多い良好な画像を得るために、サンプルの退色の可能性は承知の上でレーザ光の照射強度を通常の撮像時よりも更に強めることがある。このような照射強度の下での撮像は短時間で済ませることが望ましいことは明らかである。
【0007】
このように、レーザ走査型顕微鏡を用いた画像の取得では、取得される画像の観察の目的に応じて、レーザ光の照射強度が変更される。照射強度を変更すると、レーザ走査型顕微鏡の受光素子がサンプルから受ける光の強度が変化する。前述した技術では、照射強度を変更する度に識別範囲の設定を変更してLUTの更新を行う必要があり、このような設定変更のために時間が費やされていた。
【0008】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、観察条件に応じて必要となるシステムの調整を素早く行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る画像処理システムは、スキャナと、PPDと、強度階調値と出力階調値とを対応付けたテーブルが複数格納されているメモリと、プロセッサであって、前記PPDより出力される光強度信号と前記スキャナによる走査位置とに基づいて、前記光強度信号により示される前記強度階調値を構成画素の画素値とした第1画像データを生成し、前記第1画像データを、前記メモリに複数格納されている前記テーブルのうちから選択される1つの前記テーブルに基づいて変換して、前記出力階調値を構成画素の画素値とした第2画像データを生成し、前記第2画像データにより表される画像を表示部に表示させる、処理を行うように構成される前記プロセッサと、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る画像処理方法は、PPDより出力される光強度信号とスキャナによる走査位置とに基づいて、前記光強度信号により示される強度階調値を構成画素の画素値とした第1画像データを生成し、前記第1画像データを、前記強度階調値と出力階調値とを対応付けたテーブルであってメモリに複数格納されている前記テーブルのうちから選択される1つに基づいて変換して、前記出力階調値を構成画素の画素値とした第2画像データを生成し、前記第2画像データにより表される画像を表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、観察条件に応じて必要となるシステムの調整を素早く行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る画像処理システムの構成例を示した図である。
【
図2】各LUTの強度階調値と出力階調値との関係の一例を示したグラフである。
【
図3】プロセッサが行う処理の処理内容を示したフローチャートである。
【
図4A】表示装置での表示画面の第1の例(その1)である。
【
図4B】表示装置での表示画面の第1の例(その2)である。
【
図4C】表示装置での表示画面の第1の例(その3)である。
【
図6A】表示装置での表示画面の第3の例(その1)である。
【
図6B】表示装置での表示画面の第3の例(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る画像処理システム1の構成例を示した図である。
【0015】
画像処理システム1は、
図1に示すように、光学機器100と、光学機器100に接続されたコンピュータ10と、コンピュータ10に接続された表示装置20及び入力装置30とを備えている。光学機器100は例えばレーザ走査型顕微鏡の本体であり、画像処理システム1は例えばレーザ走査型顕微鏡システムである。
【0016】
光学機器100は、サンプルを光で走査するスキャナとPPD111とを含んでいる。コンピュータ10は、PPD111で検出された光の強度信号とスキャナの走査位置とに基づいて生成した画像のコントラストを調整して、当該調整後の画像を表示装置20に表示する。また、コンピュータ10は、入力装置30を用いて利用者が入力した情報に基づいて光学機器100を制御してもよい。
【0017】
光学機器100では、スキャンユニット105が、レーザ107から出射したレーザ光でステージ101上のサンプルを走査し、PPD111が、共焦点絞り109を含む共焦点光学系を経由して入射したサンプルからの光を検出する。そして、光学機器100は、PPD111で検出したサンプルからの光の強度信号と、スキャンユニット105による走査位置とをコンピュータ10へ出力する。
【0018】
光学機器100は、ステージ101、対物レンズ102、焦準装置103、リレー光学系104、スキャンユニット105、ビームスプリッタ106、光源であるレーザ107、結像レンズ108、共焦点絞り109、及び、レンズ110を備えている。光学機器100は、更に、PPD111、アナログ増幅器112、AD変換器113、及び、デジタル増幅器114を備えている。
【0019】
レーザ107から出射し、ビームスプリッタ106で反射したレーザ光は、スキャンユニット105及びリレー光学系104を経由して、対物レンズ102に入射する。ビームスプリッタ106は、例えば、レーザ光を反射するダイクロイックミラーである。対物レンズ102は、レーザ光をステージ101上に配置されたサンプルに集光し、サンプルに光スポットを形成する。
【0020】
レーザ光が照射されたサンプルでは、蛍光物質が励起され、レーザ光とは異なる波長の蛍光が放射される。この蛍光は、対物レンズ102、リレー光学系104、及び、スキャンユニット105を経由して入射するビームスプリッタ106を透過し、結像レンズ108によって共焦点絞り109に集光する。共焦点絞り109には、対物レンズ102の前側(サンプル側)の焦点位置と光学的に共役な位置に共焦点ピンホールが形成されている。従って、光スポットが形成された位置以外で生じた蛍光は共焦点絞り109で遮断され、光スポットが形成された位置で生じた蛍光だけが共焦点絞り109を通過し、レンズ110を経由してPPD111で検出される。
【0021】
サンプルからの光を検出したPPD111は、入射フォトン数に応じた光強度信号、すなわち、当該光の強度を示す強度信号を出力する。PPD111から出力された光強度信号は、AD変換器113でのサンプリング前後に、アナログ増幅器112とデジタル増幅器114によって増幅される。光学機器100は、アナログ増幅器112及びデジタル増幅器114で増幅された強度信号と、強度信号に対応する走査位置と、をコンピュータ10へ出力する。
【0022】
なお、本実施形態では、光学機器100がコンピュータ10へ出力する強度信号は16ビット長とする。すなわち、この強度信号により示される強度階調値の階調数は65536階調であるとする。もちろん、強度階調値のビット長を16ビット長以外としてもよい。
【0023】
スキャンユニット105は、互いに直交する方向にサンプルを走査する、少なくとも1組のスキャナを含んでいる。スキャンユニット105は、例えば、2つのガルバノスキャナを含んでもよく、ガルバノスキャナとレゾナントスキャナを含んでもよい。なお、スキャンユニット105に含まれるスキャナは、ガルバノスキャナ、レゾナントスキャナに限らない。光を偏向してサンプルを走査する構成であればよく、例えば、音響光学偏向器(AOD)など、その他の光偏向器がスキャナに採用されてもよい。スキャナの振り角度を変更し、それによって、レーザ光を偏向する方向を変更することで、対物レンズ102の瞳面における光軸に対するレーザ光の角度を変更することが可能である。これにより、光スポットの位置を対物レンズ102の光軸と直交する方向に移動させることができる。光学機器100は、コンピュータ10からの命令に応じてスキャンユニット105を制御することで、レーザ光でサンプルを二次元に走査することが可能であり、サンプルの二次元画像の構築に必要な情報を取得することができる。
【0024】
コンピュータ10は、プロセッサ11を少なくとも1つ備えており、また、メモリ12を少なくとも1つ備えている。
【0025】
プロセッサ11は、光学機器100から出力された強度信号と当該強度信号に対応する走査位置とに基づいて画像データを生成する生成処理を行うように構成される。より詳細には、この生成処理は、当該強度信号で示されるサンプルからの光の強度を表す強度階調値を当該走査位置に対応する構成画素の画素値とした画像を表す画像データを生成する処理である。
【0026】
なお、以下の説明では、この生成処理により生成される画像データを「第1画像データ」と称することとする。
【0027】
プロセッサ11は、画像の調整に用いられるLUT13-1、13-2、及び13-3のうちから1つを選択する指示を取得する選択指示処理を更に行うように構成される。LUT13-1、13-2、及び13-3は、光の強度を表す強度階調値と出力階調値とをそれぞれ対応付けたテーブルであり、メモリ12に予め格納されている。
【0028】
プロセッサ11は、更に、当該指示によりLUT13-1、13-2、及び13-3のうちから選択された1つを用いて第1画像データを変換して、出力階調値を構成画素の画素値とした画像データを生成する変換処理を行うように構成される。より詳細には、この変換処理は、第1画像データにおける各構成画素の画素値である光の強度階調値を、LUT13-1、13-2、及び13-3のうちから選択された1つにおいて対応付けられている出力階調値に変換する。
【0029】
なお、以下の説明では、この変換処理によって第1画像データから生成された画像データを「第2画像データ」と称することとする。
【0030】
プロセッサ11は、生成した第2画像データにより表される画像を表示装置20に表示する表示処理を更に行うように構成される。
【0031】
なお、プロセッサ11は、メモリ12に格納されているソフトウェアを実行することで上述した処理を行ってもよく、ハードウェア処理によって上述した処理を行ってもよい。あるいは、プロセッサ11は、ソフトウェア処理とハードウェア処理の組み合わせによって上述した処理を行ってもよい。プロセッサ11が実行するソフトウェアは、コンピュータ可読媒体に格納されている。プロセッサ11は、任意の電気回路を含み、デジタル信号を処理する回路とアナログ信号を処理する回路の少なくとも1つを含むことができる。プロセッサ11は、例えば、回路基板上の1つ又は複数の集積回路(IC:Integrated Circuit)を含み、さらに、1つ又は複数の電子部品を含むことができる。集積回路は、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。集積回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)などであってもよい。
【0032】
メモリ12は、プロセッサ11が実行するソフトウェアを格納したコンピュータ可読媒体を含んでいる。なお、本明細書において、コンピュータ可読媒体は、非一時的なコンピュータ可読媒体である。メモリ12は、例えば、1つ又は複数の任意の半導体メモリ、1つ又は複数のその他の記憶装置、を含むことができる。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)、プログラマブルROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含んでいる。RAMには、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが含まれてもよい。その他の記憶装置には、例えば、コンピュータ可読媒体として例えば磁気ディスクを含む磁気記憶装置、コンピュータ可読媒体として例えば光ディスクを含む光学記憶装置などが含まれてもよい。
【0033】
表示装置20は、画像処理システム1の表示部の一例である。表示装置20は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどである。表示装置20には、例えば、設定画面が表示される。
【0034】
入力装置30は、画像処理システム1の入力部の一例である。入力装置30は、利用者の操作に応じた操作信号をコンピュータ10へ出力する。入力装置30は、例えば、キーボードであるが、マウス、ジョイスティック、タッチパネル、スタイラスなどを含んでもよい。
【0035】
図1に示した画像処理システム1は以上の各構成要素を備えている。
【0036】
次に、LUT13-1、13-2、及び13-3について、さらに詳細に説明する。
【0037】
強弱のある色素を組み合わせての観察や、深さ(Z方向位置)やXY方向位置などの観察位置による輝度の違いが大きい観察などといった特定のアプリケーションでは、例えば65536階調(16ビット長)もの階調が取得画像に望まれる場合がある。例えば、上述したものを含む様々なアプリケーションを総合的に勘案すると、取得画像に求められる階調数は、PPD111への入射フォトン数に換算すると2000(≒2048(211))フォトン程度であると想定される。このような階調数の極めて高い画像を得るのに十分なダイナミックレンジをPPD111は有している。
【0038】
一方、前述した像探しの作業の際には、たとえ画像が飽和したとしてもサンプルの像の有無を当該画像から視認できればよいので、取得画像に対して望まれる階調数は256階調(8ビット長、8フォトン相当)の低さでも問題ない。但し、この作業の際に、サンプルの退色の抑制のためにレーザ光のサンプルへの照射強度を弱くすると、取得画像は暗い画像になる。
【0039】
なお、65536階調の強度諧調値のうちの小さい方の範囲(階調値0から255までの範囲)を、強度諧調値に対して出力階調値が線形に変化する範囲として使用するようにしてもよい。このようにすると、サンプルからの光が弱いために強度諧調値が低い領域に分布していても、像探し時の退色を抑制しつつ、サンプルの画像を容易に視認することができる。
【0040】
また、上述したような特定の場合を除いた一般的なアプリケーションでは、画像解析処理が後に行われる場合があることを考慮しても、取得画像に対して望まれる階調数は4096階調(12ビット長、128フォトン相当)で十分である。
【0041】
このように、像探しの作業や一般的なアプリケーションなどでは、取得画像の階調数を調整する必要がある。例えば、取得画像が65536階調もの階調数を有している場合、前述した像探しの作業では、1/256の階調数の画像で十分であり、また、前述した一般的なアプリケーションでは、1/16の階調数の画像で十分である。
【0042】
本実施形態におけるLUT13-1、13-2、及び13-3は、このような、サンプルからの光の強度が弱い場合に得られる画像の階調数の調整に用いられる。
【0043】
ここで、
図2について説明する。
図2は、LUT13-1、13-2、及び13-3のそれぞれについての強度階調値と出力階調値との関係の一例を示したグラフである。
【0044】
図2において、グラフG1、G2、及びG3は、それぞれ、LUT13-1、13-2、及び13-3についての、光の強度を示す強度階調値と当該強度階調値に対応付けた出力階調値との関係を表している。なお、
図2において、横軸は、強度階調値(光学機器100から出力された強度信号で示されている強度を表す階調値)を表しており、縦軸は出力階調値を表している。
【0045】
グラフG1の関係を有しているLUT13-1は、最も階調数の少ない画像を得るために使用されるテーブルである。
【0046】
グラフG1は、強度階調値が所定の上限値I1のときの出力階調値をVとしており、強度階調値がI1以下の範囲では強度階調値と出力階調値とが比例関係にある。また、このグラフG1は、I1を超える範囲の強度階調値の全てには、強度階調値がI1のときの出力階調値Vを対応付けた関係を有している。このような関係により、例えばI1の値を255とした場合には、16ビット(65536階調)の階調数を有する強度階調値が256階調(8ビット)の出力階調値に変換されることになる。
【0047】
このようなLUT13-1を用いて画像変換を行うことで、サンプルへのレーザ光の照射強度を弱くしても、表示装置20で表示可能な階調範囲の上限を上回ることなく、ある程度の高さのコントラストを有するサンプルの画像の表示が可能になる。
【0048】
グラフG2の関係を有しているLUT13-2は、LUT13-1よりも階調数の多い画像を得るために使用されるテーブルである。
【0049】
グラフG2は、強度階調値が所定の上限値I2(>I1)のときの出力階調値をVとしており、強度階調値がI2以下の範囲では強度階調値と出力階調値とが比例関係にある。また、このグラフG2は、I2を超える範囲の強度階調値の全てには、強度階調値がI2のときの出力階調値Vを対応付けた関係を有している。このような関係により、例えばI2の値を4095とした場合には、16ビット(65536階調)の階調数を有する強度階調値が4096階調(12ビット)の出力階調値に変換される。この出力階調値の階調数は、例えば、標準的なディスプレイ装置における光の三原色(RGB)各色を8ビットで表現可能な階調を損なわない程度の階調数である。なお、4096という階調数は、PMTを使用したレーザ走査型顕微鏡システムと同様の階調であり、このシステムのユーザにも馴染み易いものである。また、この階調数はPPD111への入射フォトン数に換算すると128フォトンに相当し、PPDを用いたレーザ走査型顕微鏡システムとして現実的な値である。
【0050】
グラフG3の関係を有しているLUT13-3は、LUT13-2よりも更に階調数の多い画像を得るために使用されるテーブルである。
【0051】
グラフG3は、強度階調値がI3(>I2)のときの出力階調値をVとしており、強度階調値がI3以下の範囲では強度階調値と出力階調値とが比例関係にある。また、このグラフG3は、I3を超える範囲の強度階調値の全てには、強度階調値がI3のときの出力階調値Vを対応付けた関係を有している。このような関係により、例えばI3の値を16383とした場合には、16ビット(65536階調)の階調数を有する強度階調値が16384階調(14ビット)の出力階調値に変換される。なお、16384という階調数は、超解像画像やHDR(High Dynamic Range)画像である画像データを後加工する際に階調落ちが無視し得る程度の階調数である。
【0052】
なお、グラフG3において、例えばI3の値を65535として、16ビットの階調数を有する強度階調値を、そのまま65536階調(16ビット)の出力階調値に変換されるようにしてもよい。
【0053】
また、LUT13-1、13-2、及び13-3についての、強度階調値と出力階調値との関係は、
図2のグラフG1、G2、及びG3で示される関係に限定されるものではない。例えば、グラフG1で強度階調値の上限値I1に対応している出力階調値と、グラフG2で強度階調値の上限値I2に対応している出力階調値と、グラフG3で強度階調値の上限値I3に対応している出力階調値とは、互いに異なる値であってもよい。また、例えば、グラフG1、G2、及びG3における強度階調値が所定の上限値以下の範囲において、出力階調値が強度階調値の増加に応じて単調に増加する関係でもよい。また、例えば、強度階調値がゼロのときの出力階調値をゼロよりも大きな値に対応付けるようにしてもよい。
【0054】
また、例えば、強度階調値が0近傍の値(例えば階調値10)に対応付ける出力階調値を0としてもよい。このようにする場合には、
図2のグラフG1、G2、及びG3のそれぞれの上限値I1、I2、及びI3を変更して大きくし(例えば10階調分大きくし)、下限値と上限値との間では強度階調値に対して出力階調値が単調増加する関係とする。このようにすると、出力階調値の階調数(ビット数)を維持できるとともに、PPD111から出力される強度信号にオフセット成分が乗っている場合に、当該オフセット成分を効果的に低減させることを可能にする。
【0055】
なお、以下の説明では、グラフG1の関係を有しているLUT13-1を用いてプロセッサ11が行う変換処理を「輝度レンジAによる変換処理」と称することとする。同様に、グラフG2の関係を有しているLUT13-2を用いてプロセッサ11が行う変換処理を「輝度レンジBによる変換処理」と称することとする。また、グラフG3の関係を有しているLUT13-3を用いてプロセッサ11が行う変換処理を「輝度レンジCによる変換処理」と称することとする。
【0056】
次に、上述した画像処理システム1を用いた処理の具体例について説明する。
【0057】
図3は、コンピュータ10が備えるプロセッサ11が行う処理の処理内容を示したフローチャートである。また、
図4A、
図4B、及び
図4Cは、いずれも、表示装置20での表示画面の第1の例を表している。
【0058】
画像処理システム1を起動させることによって
図3の処理が開始されると、まず、S101において、アイコンボタン群40を表示装置20の画面上に表示させる処理が行われる。
【0059】
コンピュータ10はウィンドウシステムを用いたGUI(Graphical User Interface)を採用しており、S101の処理では、画像処理システム1のためのウィンドウ内にアイコンボタン群40が表示される。
【0060】
アイコンボタン群40には輝度レンジ選択ボタン41が含まれている。輝度レンジ選択ボタン41は3つのアイコンボタンを有しており、各アイコンボタンは、それぞれ、輝度レンジA、B、及びCに対応付けられている。
【0061】
次に、S102において、3つの輝度レンジのうちの輝度レンジAを、初期設定の輝度レンジとして選択する処理が行われる。なお、この処理において、3つの輝度レンジのうちの輝度レンジB若しくは輝度レンジCを、初期設定の輝度レンジとして選択するようにしてもよい。
【0062】
図4Aは、輝度レンジ選択ボタン41のうちの輝度レンジAに対応付けられているアイコンボタンが選択されている場合の表示例である。なお、
図4B及び
図4Cは、それぞれ、輝度レンジ選択ボタン41のうちの輝度レンジB及びCに対応付けられているアイコンボタンが選択されている場合の表示例である。このように、輝度レンジ選択ボタン41は、3つのアイコンボタンのうちのいずれか1つが選択される。
【0063】
S103では、この処理時点においての輝度レンジの選択状況に応じた表示内容で、輝度レンジ表示部50を表示装置20の画面上に表示させる処理が行われる。
【0064】
S104では前述した生成処理が行われて、光学機器100から受け取った強度信号と当該強度信号に対応する走査位置とに基づいて第1画像データが生成される。生成された第1画像データは、必要に応じてメモリ12に保存しておくようにしてもよい。
【0065】
S105では前述した変換処理が行われて、LUT13-1、13-2、及び13-3のうち、この処理時点において選択されている輝度レンジに対応する1つを用いて、直近のS104の処理で生成された第1画像データから第2画像データが生成される。例えば、前述したS102の処理の直後にS105の処理が行われる場合には、輝度レンジAに対応付けられているLUT13-1を用いて変換処理が行われる。
【0066】
図4Aの表示例には、輝度レンジAが選択されている場合の輝度レンジ表示部50がウィンドウ内に表されている。なお、
図4B及び
図4Cは、それぞれ、輝度レンジB及びCが選択されている場合の輝度レンジ表示部50がウィンドウ内に表されている。
【0067】
輝度レンジ表示部50は、輝度レンジバー51と、上限値インジケータ52と、下限値インジケータ53とを有している。
【0068】
輝度レンジバー51は、第2画像データの各構成画素の画素値と、後述するS106の処理によってウィンドウ内に表示されるサンプル画像60を構成する画素の色彩との対応関係を示している。
【0069】
前述したように、第2画像データは、LUT13-1、13-2、及び13-3の出力階調値を構成画素の画素値とした画像データである。輝度レンジバー51の上下方向は、この出力階調値の大小関係を表している。なお、上限値インジケータ52は出力階調値の最大値に対応する輝度レンジバー51の上下方向の位置を表しており、下限値インジケータ53は出力階調値の最小値に対応する輝度レンジバー51の上下方向の位置を表している。
【0070】
一例として、輝度レンジAが選択されている
図4Aの例では、上限値インジケータ52は出力階調値「255」に相当する輝度レンジバー51の位置を表しており、下限値インジケータ53は出力階調値「0」に相当する輝度レンジバー51の位置を表している。これらの値は、輝度レンジAに対応するLUT13-1についての強度階調値と出力階調値との関係を表している
図2のグラフG1における出力階調値の上限値(V=255とした場合)及び下限値にそれぞれ対応している。
【0071】
図4A、
図4B、及び
図4Cの表示例では、輝度レンジバー51は、上限値インジケータ52で示されている位置より上の領域は単一の色彩(例えば明青色)で表示される。また、上限値インジケータ52で示される位置から下限値インジケータ53で示される位置までの領域は、当該単一の色彩から徐々に黒色へと連続的に変化していくグラデーションとして表示される。なお、各図では、このグラデーションを、網掛けの密度の段階的な変化で便宜的に表現している。このように、輝度レンジバー51の上下方向の位置で表されている色彩によって、出力階調値が表現される。
【0072】
S106では、前述した表示処理が行われて、S105の変換処理により生成された第2画像データにより表されるサンプル画像60が表示装置20の画面上に表示される。この表示処理によって、ウィンドウ内のサンプル画像60の各構成要素が、画素値である出力階調値に対応する輝度レンジバー51の色彩で表示される。つまり、輝度レンジバー51は、サンプル画像60の各構成画素の色彩と出力階調値との対応関係を表している。
【0073】
S107では、入力装置30に対する操作によって輝度レンジ選択ボタン41に対するクリック操作が行われたことにより、輝度レンジを選択する指示を新たに取得したか否かを判定する処理が行われる。この判定処理において、輝度レンジの選択指示を新たに取得したと判定されたとき(判定結果がYESのとき)にはS108に処理を進める。一方、この判定処理において、新たな選択指示を取得してはいないと判定されたとき(判定結果がNOのとき)には、S103に処理を戻し、前述したS103以降の処理が改めて行われる。このときに行われるS105の変換処理では、LUT13-1、13-2、及び13-3のうち、直近に実行された変換処理で用いられたものと同一のものが用いられる。
【0074】
S108では、表示装置20の画面上で表示されている輝度レンジ選択ボタン41の各アイコンボタンを、S107の判定処理によって取得したと判定された輝度レンジ選択指示に応じた表示態様に変更する処理が行われる。その後はS103に処理を戻し、前述したS103以降の処理が改めて行われる。このときに行われるS105の変換処理では、LUT13-1、13-2、及び13-3のうち、S107の判定処理によって取得したと判定された輝度レンジ選択指示で指示された輝度レンジに対応するものが用いられる。
【0075】
以上の処理をプロセッサ11が行うことによって、
図4A、
図4B、及び
図4Cに例示するような画面が表示装置20で表示される。画像処理システム1の使用者が入力装置30を操作して輝度レンジ選択ボタン41に対するクリック操作を行うと輝度レンジが切り替わりLUT13-1、13-2、及び13-3の選択が変更されて当該画面でのサンプル画像60の表示に直ちに反映される。従って、サンプル画像60の素早い調整が可能になる。
【0076】
なお、プロセッサ11が第2画像データに基づいて表示装置20に表示させる画像の表示態様を、
図4A、
図4B、及び
図4Cで例示した表示態様とは異なるものとすることも可能である。このような異なる表示態様の例として、
図5は表示装置20での表示画面の第2の例を表しており、
図6A及び
図6Bは、どちらも、表示装置20での表示画面の第3の例を表している。
【0077】
まず、表示画面の第2の例について説明する。
図5の画面例は、
図4Aの表示画面が表示されているときに、入力装置30に対する操作によってアイコンボタン群40に含まれているHi-Loボタン42に対するクリック操作が行われてアイコンボタンが押下状態にされると表示される画面である。
【0078】
この
図5の画面例では、輝度レンジバー51の表示態様が
図4Aにおけるものと異なっている。より詳細には、輝度レンジバー51における上限値インジケータ52で示されている位置より上の領域(
図5では左下から右上がりの方向の斜線が付されている領域)は一様に第1の色彩(例えば赤色)で表示される。なお、上限値インジケータ52で示されている位置を第1の色彩で表示される領域に含めてもよい。また、下限値インジケータ53で示されている位置に対応する領域は、第1の色彩とは異なる第2の色彩(例えば暗青色)で表示される。そして、上限値インジケータ52で示される位置から下限値インジケータ53で示される第2の色彩の位置までの領域は、例えば白色といった、第1及び第2の色彩のどちらとも異なる色彩から徐々に黒色へと連続的に変化していくグラデーションとして表示される。なお、
図5では、このグラデーションは一様の網掛けで便宜的に表現されている。
【0079】
なお、前述したような、強度階調値が0近傍の値に対応付ける出力階調値を0とする関係が設定されているLUTを用いる場合には、下限値インジケータ53で示される位置より下の領域も第2の色彩で表示される。
【0080】
プロセッサ11は、前述した
図3の処理におけるS103の処理において、Hi-Loボタン42が押下状態とされているかどうかを判断する。ここで、Hi-Loボタン42が押下状態とされていないと判断した場合には、プロセッサ11は、
図4Aに例示した輝度レンジ表示部50を表示装置20の画面上に表示させる処理を行う。一方、Hi-Loボタン42が押下状態とされていると判断した場合には、プロセッサ11は、
図5に例示した輝度レンジ表示部50を表示装置20の画面上に表示させる処理を行う。
【0081】
上述した処理の後に行われるS106の処理では、前述したようにして表示処理が行われて、S105の変換処理により生成された第2画像データにより表されるサンプル画像60が表示装置20の画面上に表示される。この表示処理によって、ウィンドウ内のサンプル画像60の各構成要素が、画素値である出力階調値に対応する輝度レンジバー51の色彩で表示される。従って、輝度レンジバー51が
図5に示した表示態様である場合には、サンプル画像60において、画素値が上限値インジケータ52で示されている出力階調値を超える構成画素からなる領域(
図5における飽和領域61)は、前述した第1の色彩で一様に表される。また、サンプル画像60において、画素値が下限値インジケータ53で示されている出力階調値である領域(
図5における背景領域62)は、前述した第2の色彩で一様に表される。
【0082】
このように、Hi-Loボタン42がクリック操作により押下状態とされると、このクリック操作を取得したプロセッサ11は、画素値が所定の上限値を超える第1画像データの構成画素に対応する第2画像データの構成画素を一律に第1の色彩とする処理を行う。また、このとき、プロセッサ11は、第1画像データにおいて画素値が最小である構成画素に対応する第2画像データの構成画素を、一律に、第1の色彩とは異なる第2の色彩とする処理を行う。
【0083】
更に、このとき、プロセッサ11は、第2画像データの残余の構成画素については、画素値である出力階調値に対応する色彩、すなわち、構成画素の色彩と出力階調値との対応関係を表している輝度レンジバー51により示されている色彩とする処理を行う。そして、プロセッサ11は、このようにして各構成画素に設定された色彩でのサンプル画像60の表示を表示装置20に行わせる処理を行う。
【0084】
以上のようにして得られる表示画面の第2の例の表示を行うことで、出力階調値に対して設定された上限値を上回る領域あるいは下限値である領域がサンプル画像60に存在するかどうかを瞬時に把握することができる。従って、例えば、前述した像探し(サンプル探し)の作業において、過剰な照射強度のレーザ光をサンプルに与えた可能性の有無を瞬時に判別することが可能になる。
【0085】
なお、
図4Bや
図4Cの表示画面でHi-Loボタン42に対するクリック操作が行われてアイコンボタンが押下状態とされた場合も同様の表示処理が行われて、
図5と同様の表示態様の輝度レンジバー51及びサンプル画像60が画面上に表示される。
【0086】
次に、表示画面の第3の例について説明する。
図6A及び
図6Bの画面例は、
図4Bの表示画面が表示されているときに、入力装置30への操作によってアイコンボタン群40に含まれているHi-Loボタン42に対するクリック操作が行われてアイコンボタンが押下状態とされたときに表示される画面である。
【0087】
この
図6A及び
図6Bの画面例では、輝度レンジバー51の表示態様が
図4Bにおけるものと異なっている。より詳細には、輝度レンジバー51における上限値インジケータ52で示されている位置より上の領域(
図6A及び
図6Bでは左上から右下がりの方向の斜線が付されている領域)は一様に第1の色彩(例えば橙色)で表示される。なお、上限値インジケータ52で示されている位置を第1の色彩で表示される領域に含めてもよい。また、下限値インジケータ53で示されている位置に対応する領域は、第1の色彩とは異なる第2の色彩(例えば暗青色)で表示される。
【0088】
なお、前述したような、強度階調値が0近傍の値に対応付ける出力階調値を0とする関係が設定されているLUTを用いる場合には、下限値インジケータ53で示される位置より下の領域も第2の色彩で表示される。
【0089】
更に、
図6A及び
図6Bの画面例では、上限値インジケータ52で示される位置から下限値インジケータ53で示される第2の色彩の位置までの領域は、例えば白色といった、第1及び第2の色彩のどちらとも異なる色彩から徐々に黒色へと連続的に変化していくグラデーションとして表示される。なお、
図6A及び
図6Bでは、このグラデーションは一様の網掛けで便宜的に表現されている。更に、輝度レンジバー51における上端を画定する領域、すなわち、第1の色彩で表示される領域の上端の領域(左下から右上がりの方向の斜線が付されている領域)は、上述したグラデーションで用いられる色彩、第1の色彩、及び第2の色彩のいずれとも異なる第3の色彩(例えば赤色)で表示される。
【0090】
プロセッサ11は、前述した
図3の処理におけるS103の処理において、Hi-Loボタン42が押下状態とされているかどうかを判断する。ここで、Hi-Loボタン42が押下状態とされてないと判断した場合には、プロセッサ11は、
図4Bに例示した輝度レンジ表示部50を表示装置20の画面上に表示させる処理を行う。一方、Hi-Loボタン42が押下状態とされていると判断した場合には、プロセッサ11は、
図6A及び
図6Bに例示した輝度レンジ表示部50を表示装置20の画面上に表示させる処理を行う。
【0091】
上述した処理の後に行われるS106の処理では、前述したようにして表示処理が行われて、S105の変換処理により生成された第2画像データにより表されるサンプル画像60が表示装置20の画面上に表示される。この表示処理によって、ウィンドウ内のサンプル画像60の各構成要素が、画素値である出力階調値に対応する輝度レンジバー51の色彩で表示される。従って、輝度レンジバー51が
図6Aに示した表示態様である場合には、サンプル画像60において、画素値が上限値インジケータ52で示されている出力階調値よりも大きい構成画素からなる領域(
図6Aの第1飽和領域61-1)は第1の色彩で一様に表される。また、サンプル画像60において、画素値が下限値インジケータ53で示されている出力階調値である領域(
図6Aにおける背景領域62)は、前述した第2の色彩で一様に表される。
【0092】
加えて、プロセッサ11は、S106の処理において、強度階調値である画素値が16ビット長では表現しきれずにオーバーフローした第1画像データの構成画素に対応するサンプル画像60の構成画素を、前述した第3の色彩で表示する処理を更に行う。このために、コンピュータ10は、PPD111から出力された強度信号をサンプリングするAD変換器113から出力されるオーバーフロー検出信号を光学機器100から更に取得する。プロセッサ11は、このオーバーフロー検出信号と、当該検出信号に対応するスキャナの走査位置とに基づいてサンプル画像60における対象の構成画素を特定し、特定した構成画素を第3の色彩として表示する処理を行う。
【0093】
図6Bは、
図6Aのサンプル画像60が得られている状態において、レーザ107の出力を上げてレーザ光のサンプルへの照射強度を高めたときの画面例を表している。
【0094】
図6Bでは、
図6Aの画面例では輝度レンジバー51における白色から黒色へのグラデーションの範囲内の色彩で表される出力階調値であった構成画素からなるサンプル画像60の領域が、第1飽和領域61-1として表されている。これは、レーザ光のサンプルへの照射強度を高めたことで、当該領域が、上限値インジケータ52で示されている出力階調値よりも大きい構成画素からなる領域となったことを表している。また、
図6Bでは、構成画素が第3の色彩で表されている第2飽和領域61-2が出現している。この第2飽和領域61-2は、
図6Aでは第1飽和領域61-1として表されていた構成画素の領域であり、レーザ光のサンプルへの照射強度を高めたことで、当該領域の構成画素の強度階調値がオーバーフローしたことを表している。
【0095】
このように、Hi-Loボタン42がクリック操作により押下状態とされると、このクリック操作を取得したプロセッサ11は、画素値が所定の上限値を超える第1画像データの構成画素に対応する第2画像データの構成画素を一律に第1の色彩とする処理を行う。また、このとき、プロセッサ11は、第1画像データにおいて画素値が最小である構成画素に対応する第2画像データの構成画素を、一律に、第1の色彩とは異なる第2の色彩とする処理を行う。
【0096】
更に、このとき、プロセッサ11は、予め定められている最大値を超える光の強度を示す強度信号がPPD11より出力されたことを示すフラグを光学機器100から取得する処理を行う。このフラグは、例えば、光学機器100が備えるAD変換器113から出力される、AD変換におけるオーバーフローの発生を示すフラグである。プロセッサ11は、更に、このフラグの取得に応じて、第1画像データにおいて画素値が当該最大値を超える光の強度を表している構成画素に対応する第2画像データの構成画素を、一律に、第1及び第2の色彩のどちらとも異なる第3の色彩とする処理を行う。
【0097】
更に、このとき、プロセッサ11は、第2画像データの残余の構成画素については、画素値である出力階調値に対応する色彩(例えば、第1、第2、及び、第3の色彩のいずれとも異なる色彩のグラデーション)、すなわち、構成画素についての色彩と出力階調値との対応関係を表す輝度レンジバー51により示されている色彩とする処理を行う。そして、プロセッサ11は、このようにして各構成画素に設定された色彩でのサンプル画像60の表示を表示装置20に行わせる処理を行う。
【0098】
以上のようにして得られる表示画面の第3の例の表示を行うことで、通常観察時におけるレーザ光のサンプルへの照射強度を適正な範囲内とするための調整作業を素早く円滑に進められるようになる。
【0099】
なお、
図4Aや
図4Cの表示画面でHi-Loボタン42に対するクリック操作が行われてアイコンボタンが押下状態とされた場合も同様の表示処理が行われて、
図6A及び
図6Bと同様の表示態様の輝度レンジバー51及びサンプル画像60が画面上に表示される。
【0100】
なお、上述した実施形態は、発明の理解を容易にするための具体例を示したものであり、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。画像処理システム1は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0101】
例えば、上述した実施形態は、3つのLUT13-1、13-2、及び13-3をメモリ12に格納されている例を示したが、その個数は複数であれば幾つでもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 画像処理システム
10 コンピュータ
11 プロセッサ
12 メモリ
13-1、13-2、13-3 LUT
20 表示装置
30 入力装置
40 アイコンボタン群
41 輝度レンジ選択ボタン
42 Hi-Loボタン
50 輝度レンジ表示部
51 輝度レンジバー
52 上限値インジケータ
53 下限値インジケータ
60 サンプル画像
61 飽和領域
61-1 第1飽和領域
61-2 第2飽和領域
62 背景領域
100 光学機器
105 スキャンユニット
107 レーザ
109 共焦点絞り
111 PPD