(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006220
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】複合部品
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20250109BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20250109BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20250109BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H01F27/00 S
H01F27/06 103
H01F27/29 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106884
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳惠
(72)【発明者】
【氏名】本多 宏之
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AA19
5E070AB03
5E070BA03
5E070DB02
5E070DB08
5E070EB03
5J024AA01
5J024BA03
5J024CA10
5J024DA03
5J024DA26
5J024DA31
5J024DA33
5J024DA35
5J024EA01
5J024EA02
5J024EA09
5J024KA03
5J024KA04
(57)【要約】
【課題】バイアスT回路において、GHz帯域の透過特性を改善する。
【解決手段】バイアスT回路を形成するための巻線インダクタと、チップコンデンサによるバイパスコンデンサとを一体にする。巻線インダクタと、バイパスコンデンサとを一体にすることによって、巻線インダクタと、バイパスコンデンサとを隣接して設け、両者の距離を短くすることができる。任意の容量値および任意の個数のチップコンデンサは、収納部に収納される。チップコンデンサを適切に選定することによって、GHz帯域の透過特性の改善が期待される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の巻芯部と、
前記巻芯部の延びる方向を第1方向としたとき、前記巻芯部の前記第1方向の両端にそれぞれ接続されて、前記第1方向と直交する第2方向において前記巻芯部から突出する第1フランジ部および第2フランジ部と、
を含み、
前記第1フランジ部は、第1底面と前記第1底面から立設される第1側面と前記第1側面に接続される第1天面とを有し、
前記第2フランジ部は、第2底面と前記第2底面から立設される第2側面と前記第2側面に接続される第2天面とを有し、
さらに、
前記第1フランジ部の前記第1底面に形成される第1電極と、
前記第2フランジ部の前記第2底面に形成される第2電極と、
前記巻芯部に巻回されている巻線と、
前記第1フランジ部の前記第1天面と前記第2フランジ部の前記第2天面とを覆う電子部品を収納可能な第1収納部と、
前記第1収納部に収納されるコンデンサと、
を含み、
前記第1収納部は、その両端部に第3電極および第4電極を備えており、
前記巻線の一端は前記第1電極に接続され、前記巻線の他端は前記第2電極に接続され、前記第3電極は前記巻線の前記他端に接続され、
前記第1電極はバイアスT回路の信号線に接続される電極であり、前記第2電極はバイアスT回路の電源線に接続される電極であり、前記第4電極は基準電位に接続される電極である複合部品。
【請求項2】
柱状の巻芯部と、
前記巻芯部の延びる方向を第1方向としたとき、前記巻芯部の前記第1方向の両端にそれぞれ接続されて、前記第1方向と直交する第2方向において前記巻芯部から突出する第1フランジ部および第2フランジ部と、
を含み、
前記第1フランジ部は、第1底面と前記第1底面から立設される第1側面と前記第1側面に接続される第1天面とを有し、
前記第2フランジ部は、第2底面と前記第2底面から立設される第2側面と前記第2側面に接続される第2天面とを有し、
さらに、
前記第1フランジ部の前記第1底面に形成される第1電極と、
前記第2フランジ部の前記第2底面に形成される第2電極と、
前記巻芯部に巻回されている巻線と、
前記第1フランジ部の前記第1側面から第2方向に向けて前記第1フランジ部の前記第1側面と接続された電子部品を収納可能な第1収納部と、
前記第1収納部に収納されるコンデンサと、
を含み、
前記第1収納部は、その両端部に第3電極および第4電極を備えており、
前記巻線の一端は第1電極に接続され、他端は第2電極に接続され、前記第3電極は前記第1電極と接続され、
前記第1電極はバイアスT回路の電源線に接続される電極であり、前記第2電極はバイアスT回路の信号線に接続される電極であり、前記第4電極は基準電位に接続される電極である複合部品。
【請求項3】
柱状の巻芯部と、
前記巻芯部の延びる方向を第1方向としたとき、前記巻芯部の前記第1方向の両端にそれぞれ接続され、前記第1方向と直交する第2方向において前記巻芯部から突出する第1フランジ部および第2フランジ部と、
を含み、
前記第1フランジ部は、第1底面と前記第1底面から立設される第1側面と前記第1側面に接続される第1天面とを有し、
前記第2フランジ部は、第2底面と前記第2底面から立設される第2側面と前記第2側面に接続される第2天面とを有し、
さらに、
前記第1フランジ部の前記第1底面に形成される第1電極と、
前記第2フランジ部の前記第2底面に形成される第2電極と、
前記巻芯部に巻回されている巻線と、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に設けられ、電子部品を収納可能な第1収納部と、
前記第1フランジ部の前記第1天面と前記第2フランジ部の前記第2天面とを覆い、かつ、電子部品を収納可能な第2収納部と、
前記第1収納部に収納されるコンデンサと、
前記第2収納部に収納されるインダクタと、
前記第2収納部の両端部に形成される第3電極および第4電極と、
を含み、
前記第1収納部は、その両端部に第5電極および第6電極を備えており、
前記巻線の一端は前記第1電極に接続され、前記巻線の他端は前記第3電極に接続され、前記第6電極は前記第4電極と接続され、
前記第1電極はバイアスT回路の信号線に接続される電極であり、前記第2電極は基準電位に接続される電極であり、前記第4電極はバイアスT回路の電源線に接続される電極であり、前記第5電極は基準電位に接続される電極である複合部品。
【請求項4】
基板と、
前記基板に設けられて、バイアスT回路の信号線に接続される第1電極パッドと、
前記基板に設けられて、バイアスT回路の電源線に接続される第2電極パッドと、
前記基板に設けられて、基準電位に接続される第3電極パッドと、
をさらに含み、
前記第1電極は前記第1電極パッドに接続され、前記第2電極は前記第2電極パッドに接続され、前記第4電極は前記第3電極パッドに接続される
請求項1に記載の複合部品。
【請求項5】
基板と、
前記基板に設けられて、バイアスT回路の信号線に接続される第1電極パッドと、
前記基板に設けられて、バイアスT回路の電源線に接続される第2電極パッドと、
前記基板に設けられて、基準電位に接続される第3電極パッドと、
をさらに含み、
前記第2電極は前記第1電極パッドに接続され、前記第1電極は前記第2電極パッドに接続され、前記第4電極は前記第3電極パッドに接続される
請求項2に記載の複合部品。
【請求項6】
基板と、
前記基板に設けられて、バイアスT回路の信号線に接続される第1電極パッドと、
前記基板に設けられて、バイアスT回路の電源線に接続される第2電極パッドと、
前記基板に設けられて、基準電位に接続される第3電極パッドと、
をさらに含み、
前記第1電極は前記第1電極パッドに接続され、前記第4電極は前記第2電極パッドに接続され、前記第2電極および前記第5電極は前記第3電極パッドに接続される
請求項3に記載の複合部品。
【請求項7】
ショートチップをさらに含み、
前記ショートチップの一端は前記第4電極に電気的に接続され、前記ショートチップの他端は基準電位に接続される
請求項1または請求項4に記載の複合部品。
【請求項8】
前記第1収納部に収納されるコンデンサは、
前記第3電極と前記第4電極との間に並列に接続される
請求項1または請求項4に記載の複合部品。
【請求項9】
前記第1収納部に収納されるコンデンサは、
前記第3電極と前記第4電極との間に並列に接続される
請求項2または請求項5に記載の複合部品。
【請求項10】
前記第1収納部に収納されるコンデンサは、
前記第5電極と前記第6電極との間に並列に接続される
請求項3または請求項6に記載の複合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
信号ケーブルに電源を重畳するPoC(Power over Coax)回路が知られている。PoC回路を実現するために、バイアスT回路が採用されることがある。バイアスT回路は、信号線に直列に接続されたコンデンサとインダクタとを含む。
【0003】
特許文献1には、バイアスT回路のインダクタとバイパスコンデンサとを有する集積化電子構成要素が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PoC回路では、伝送速度の高速化および情報の大容量化が求められ、広帯域かつ高周波帯でより良い特性が求められる。広帯域における良好な特性を実現するために、バイアスT回路のインダクタに、バイパスコンデンサを接続する必要がある。PoC回路においては、基板の設計上、バイアスT回路のインダクタとバイパスコンデンサとを離して実装すると、GHz帯域において透過特性に共振がみられ、規格を満足しないことがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、広帯域かつ高周波帯でより良い特性を実現するための複合部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のある態様による複合部品は、柱状の巻芯部と、前記巻芯部の延びる方向を第1方向としたとき、前記巻芯部の前記第1方向の両端にそれぞれ接続されて、前記第1方向と直交する第2方向において前記巻芯部から突出する第1フランジ部および第2フランジ部と、を含み、前記第1フランジ部は、第1底面と前記第1底面から立設される第1側面と前記第1側面に接続される第1天面とを有し、前記第2フランジ部は、第2底面と前記第2底面から立設される第2側面と前記第2側面に接続される第2天面とを有し、さらに、前記第1フランジ部の前記第1底面に形成される第1電極と、前記第2フランジ部の前記第2底面に形成される第2電極と、前記巻芯部に巻回されている巻線と、前記第1フランジ部の前記第1天面と前記第2フランジ部の前記第2天面とを覆う電子部品を収納可能な第1収納部と、前記第1収納部に収納されるコンデンサと、を含み、前記第1収納部は、その両端部に第3電極および第4電極を備えており、前記巻線の一端は前記第1電極に接続され、前記巻線の他端は前記第2電極に接続され、前記第3電極は前記巻線の前記他端に接続され、前記第1電極はバイアスT回路の信号線に接続される電極であり、前記第2電極はバイアスT回路の電源線に接続される電極であり、前記第4電極は基準電位に接続される電極である。
【0008】
本開示のある態様による複合部品は、柱状の巻芯部と、前記巻芯部の延びる方向を第1方向としたとき、前記巻芯部の前記第1方向の両端にそれぞれ接続されて、前記第1方向と直交する第2方向において前記巻芯部から突出する第1フランジ部および第2フランジ部と、を含み、前記第1フランジ部は、第1底面と前記第1底面から立設される第1側面と前記第1側面に接続される第1天面とを有し、前記第2フランジ部は、第2底面と前記第2底面から立設される第2側面と前記第2側面に接続される第2天面とを有し、さらに、前記第1フランジ部の前記第1底面に形成される第1電極と、前記第2フランジ部の前記第2底面に形成される第2電極と、前記巻芯部に巻回されている巻線と、前記第1フランジ部の前記第1側面から第2方向に向けて前記第1フランジ部の前記第1側面と接続された電子部品を収納可能な第1収納部と、前記第1収納部に収納されるコンデンサと、を含み、前記第1収納部は、その両端部に第3電極および第4電極を備えており、前記巻線の一端は第1電極に接続され、他端は第2電極に接続され、前記第3電極は前記第1電極と接続され、前記第1電極はバイアスT回路の電源線に接続される電極であり、前記第2電極はバイアスT回路の信号線に接続される電極であり、前記第4電極は基準電位に接続される電極である。
【0009】
本開示のある態様による複合部品は、柱状の巻芯部と、前記巻芯部の延びる方向を第1方向としたとき、前記巻芯部の前記第1方向の両端にそれぞれ接続され、前記第1方向と直交する第2方向において前記巻芯部から突出する第1フランジ部および第2フランジ部と、を含み、前記第1フランジ部は、第1底面と前記第1底面から立設される第1側面と前記第1側面に接続される第1天面とを有し、前記第2フランジ部は、第2底面と前記第2底面から立設される第2側面と前記第2側面に接続される第2天面とを有し、さらに、前記第1フランジ部の前記第1底面に形成される第1電極と、前記第2フランジ部の前記第2底面に形成される第2電極と、前記巻芯部に巻回されている巻線と、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に設けられ、電子部品を収納可能な第1収納部と、前記第1フランジ部の前記第1天面と前記第2フランジ部の前記第2天面とを覆い、かつ、電子部品を収納可能な第2収納部と、前記第1収納部に収納されるコンデンサと、前記第2収納部に収納されるインダクタと、前記第2収納部の両端部に形成される第3電極および第4電極と、を含み、前記第1収納部は、その両端部に第5電極および第6電極を備えており、前記巻線の一端は前記第1電極に接続され、前記巻線の他端は前記第3電極に接続され、前記第6電極は前記第4電極と接続され、前記第1電極はバイアスT回路の信号線に接続される電極であり、前記第2電極は基準電位に接続される電極であり、前記第4電極はバイアスT回路の電源線に接続される電極であり、前記第5電極は基準電位に接続される電極である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の複合部品によれば、広帯域かつ高周波帯でより良い特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態による複合部品の外観を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3のコアに導線を巻回した状態を示す図である。
【
図5】
図5は、コアに巻回した巻線の表面に、樹脂を設けた状態を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態による複合部品の組立て手順を説明する図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す複合部品を用いてバイアスT回路を構成した場合の等価回路を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の第2実施形態による複合部品の外観を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態による複合部品の組立て手順を説明する図である。
【
図13】
図13は、
図9に示す複合部品を用いてバイアスT回路を構成した場合の等価回路を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の第3実施形態による複合部品の外観を示す図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態による複合部品の組立て手順を説明する図である。
【
図18】
図18は、
図14に示す複合部品を用いてバイアスT回路を構成した場合の等価回路を示す図である。
【
図19】
図19は、本開示の第4実施形態による複合部品の外観を示す図である。
【
図20】
図20は、収納部とショートチップとを接続した状態を示す図である。
【
図21】
図21は、収納部とショートチップとを接続し、さらにチップコンデンサを収納した状態を示す図である。
【
図22】
図22は、本開示の第5実施形態による複合部品の外観を示す図である。
【
図23】
図23は、本開示の第6実施形態による複合部品の外観を示す図である。
【
図24】
図24は、本開示の複合部品によって得られる効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一または同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、本開示の第1実施形態による複合部品の外観を示す図である。
図1を参照すると、複合部品100は、コア10と、巻線14と、樹脂15と、ショートチップ16と、収納部ST1と、を含む。複合部品100は、コア10の上部に収納部ST1が接続され、ショートチップ16の一端が収納部ST1に接続される構造になっている。ショートチップ16は、第1フランジ部13と第2フランジ部12との間に設けられる。
【0014】
収納部ST1は、本例では、4個のチップコンデンサC1、C2、C3、C4を収納する。チップコンデンサC1、C2、C3、C4は、バイパスコンデンサの容量Cを実現する。チップコンデンサC1、C2、C3、C4は、すべて同じ容量値でもよいし、異なる容量値であってもよい。
【0015】
なお、チップコンデンサC1、C2、C3、C4のサイズは、例えば、2012サイズ(長辺2.0mm、短辺1.25mm)、1608サイズ(長辺1.6mm、短辺0.8mm)、1005サイズ(長辺1.0mm、短辺0.5mm)、である。
【0016】
図2は、
図1に示す複合部品100の側面図である。
図2は、
図1中の矢印Y11の方向から複合部品100を見た図である。
図2に示すように、複合部品100は、矩形状に見える。
【0017】
図3は、
図1中のコアの構成を示す図である。
図4は、
図3のコアに導線を巻回した状態を示す図である。
図5は、巻芯部11に巻回した巻線14の表面に、樹脂を設けた状態を示す図である。
【0018】
図3に示すように、コア10は、巻芯部11と、第1フランジ部13と、第2フランジ部12と、を有する。コア10は、例えば、フェライトによって作成する。
【0019】
巻芯部11は、導線を巻回するための巻芯である。巻芯部11は、図中の左右方向である、矢印Y1方向に延びる柱状である。巻芯部11は、
図3に示すように四角柱状である。巻芯部11は、円柱状であってもよい。
【0020】
巻芯部11の矢印Y11方向(第1方向)の両端には、第1フランジ部13、第2フランジ部12が、それぞれ接続される。つまり、第1フランジ部13は巻芯部11の一端11aに接続され、第2フランジ部12は巻芯部11の他端に接続される。
図3において、矢印Y1方向をX軸方向とすると、第1フランジ部13は、X軸方向と直交するY軸方向およびZ軸方向に延びる。第2フランジ部12は、X軸方向と直交するY軸方向およびZ軸方向に延びる。
【0021】
第1フランジ部13は、底面13B(請求の範囲の第1底面に相当)と、底面13Bから立設される側面13S(請求の範囲の第1側面に相当)と、側面13Sに接続される天面13U(請求の範囲の第1天面に相当)とを有する。底面13Bには、電極21(請求の範囲の第1電極に相当)が設けられる。電極21は、底面13Bの全面に設けられる。第2フランジ部12は、底面12B(請求の範囲の第2底面に相当)と、底面12Bから立設される側面12S(請求の範囲の第2側面に相当)と、側面12Sに接続される天面12U(請求の範囲の第2天面に相当)とを有する。底面12Bには、電極22(請求の範囲の第2電極に相当)が設けられる。電極22は、底面12Bの全面に設けられる。また、電極22は、底面12Bから側面12Sに沿って天面12Uまで、Z軸方向に延びる。
【0022】
第1フランジ部13の天面13U、および、第2フランジ部12の天面12Uは、平面状になっている。これらの天面12Uおよび13Uには、後述するように、収納部が接続される。
【0023】
図4に示すように、巻芯部11には、導線が巻付けられる。すなわち、巻芯部11には、巻線14が巻回される。巻線14の一端14aは、電極21に電気的に接続される。巻線14の他端14bは、第2フランジ部12の天面12Uにおいて、電極22に電気的に接続される。
【0024】
図5に示すように、巻線14の表面を覆うように、樹脂15が設けられる。樹脂15は、巻線14を他の部分から絶縁するために設けられる。
【0025】
図1に戻り、長さD1は、コア10のX軸方向の長さである。長さD1は、例えば、3.2mmである。また、
図2において、長さD2は、複合部品100のZ軸方向の長さである。長さD2は、例えば、2.3mmである。長さD3は、複合部品100のY軸方向の長さである。長さD3は、例えば、2.5mmである。長さD4は、収納部ST1の電極間の距離である。長さD4は、例えば、0.3mmである。
【0026】
図1において、収納部ST1は、電極23(請求の範囲の第3電極に相当)および電極24(請求の範囲の第4電極に相当)を有する。ここで、
図6を参照して、収納部ST1について説明する。
図6は、
図1中の収納部ST1を説明する図である。
図6に示すように、電極23と電極24との間に空間がある。この空間に、チップコンデンサが収納される。例えば、矢印Y14で示す方向に移動させることによって、チップコンデンサC1を収納部ST1の空間に収納することができる。電極23の内側表面、および、電極24の内側表面にはんだペーストを塗布しておけば、収納したチップコンデンサC1を仮固定することができる。仮固定されたチップコンデンサC1については、リフロー処理によって、はんだペーストを溶融させることで収納部ST1に固定することができる。
図6には、チップコンデンサC1が1つだけ描かれている。本例では、収納部ST1に、最大4個のチップコンデンサを収納できる。収納部ST1に、4個のチップコンデンサC1、C2、C3、C4が収納されている場合、電極23と電極24との間に、チップコンデンサC1、C2、C3、C4が並列に接続される。
【0027】
図7は、第1実施形態による複合部品100の組立て手順を説明する図である。最初に、
図3から
図5を参照して説明したコア10を用意する。矢印Y12で示すように、コア10の上部に、収納部ST1を接続する。次に、矢印Y13で示すように、収納部ST1の下部に、ショートチップ16を設ける。ショートチップ16は、第1フランジ部13と第2フランジ部12との間に設けられる。このとき、ショートチップ16の一端を収納部ST1の底面に接続する。
【0028】
収納部ST1に関して、本例では、
図7に示すように、4個のチップコンデンサC1、C2、C3、C4を収納して固定された収納部ST1を用意する。そして、それをコア10の上部に接続する。このとき、第2フランジ部12の天面12Uにおいて、収納部ST1の電極23と巻線14の他端14bとが接続される。他の例では、4個より少ない数のチップコンデンサを収納して固定された収納部ST1を用意し、それをコア10の上部に接続してもよい。
【0029】
さらに他の例では、
図6に示す、チップコンデンサを収納していない収納部ST1を用意し、それをコア10の上部に接続してもよい。このとき、収納部ST1の電極23の内側表面、および、電極24の内側表面にはんだペーストを塗布しておくことが好ましい。このようにすれば、必要な特性を得るためのチップコンデンサおよび個数(4個まで)を選定し、収納部ST1に収納することができる。収納部ST1に収納した後、上述したように、リフロー処理によって、はんだペーストを溶融させることで収納部ST1に固定することができる。
【0030】
図1に示すように、予め選定したチップコンデンサが収納部ST1に収納された状態の複合部品100を製品として提供してもよいし、チップコンデンサが収納部ST1に収納されていない状態の複合部品を製品として提供してもよい。後者の場合、収納部ST1に収納するチップコンデンサを、提供先において選定することになり、周波数特性を微調整することもできる。
【0031】
(効果)
図8は、
図1に示す複合部品100を用いてバイアスT回路を構成した場合の等価回路を示す図である。
図8において、ポートP1とポートP2との間は、バイアスT回路の信号線である。ポートP1とポートP2との間の信号ケーブルには、電源が重畳されている。ポートP1とポートP2との間にコンデンサC0が直列に接続されている。コンデンサC0の容量は、例えば、0.1μFである。
図8においては、チップコンデンサと回路上のコンデンサとに同じ符号C1、C2、C3、C4を付加している。
【0032】
コンデンサC0の一端とポートP2との間のノードNSに、一点鎖線で示すように複合部品100が接続される。複合部品100を接続することにより、GHz帯域の透過特性を改善できる。
【0033】
ノードNSは、
図1中の電極21に相当する。ノードNSには、コイルL1の一端が接続される。コイルL1は、
図1中の巻線14に相当する。コイルL1の他端は、ノードNCに接続される。ノードNCは、
図1中の電極23に相当する。
【0034】
ノードNCには、コンデンサC1、C2、C3、C4のそれぞれの一端が接続される。コンデンサC1、C2、C3、C4のそれぞれの他端(電極24に相当)は、基準電位に接続される。したがって、本例では、ノードNCと基準電位との間に、4個のコンデンサC1、C2、C3、C4が並列に接続される。4個のコンデンサC1、C2、C3、C4は、バイパスコンデンサとして作用する。基準電位は、例えば、接地電位である。以降の説明においても同様である。
【0035】
ノードNCは、ポートDCPに接続される。ポートDCPは、バイアスT回路の電源線に接続される。ポートDCPからは、所定の直流電圧が出力される。ポートDCPは、
図1中の電極22に相当する。
【0036】
以上の構成によれば、コイルL1と、バイパスコンデンサとを一体にすることができる。このため、コイルL1とバイパスコンデンサとを接近させ、両者の距離を近づけることができる。これにより、GHz帯域の透過特性の改善が期待される。また、一体化部品とすることで、省スペース化を実現できる。
【0037】
(第2実施形態)
(構成)
図9は、本開示の第2実施形態による複合部品の外観を示す図である。
図9を参照すると、第2実施形態による複合部品100aは、チップコンデンサの配置が、第1実施形態の複合部品100とは異なる。また、複合部品100aは、ショートチップを有していない。
【0038】
図9に示すように、第2実施形態による複合部品100aにおいては、第1実施形態のコア10の代わりに、コア10aを用いる。コア10aの電極21および電極22の位置は、コア10とは異なる。巻線14の一端14aは、コア10aの電極22(請求の範囲の第1電極に相当)に接続される。巻線14の他端14bは、コア10aの電極21(請求の範囲の第2電極に相当)に接続される。コア10aは、コア10と同様に、例えば、フェライトによって作成する。
【0039】
コア10aの側面に、収納部ST2が設けられる。具体的には、コア10aの第1フランジ部13の側面13SからY軸方向に向けて第1フランジ部13の側面13Sと収納部ST2とが接続される。そして、コア10aの電極22に、収納部ST2の電極23(請求の範囲の第3電極に相当)が接続される。また、複合部品100aにおいては、収納部ST2の構造が、第1実施形態の複合部品100とは異なる。収納部ST2は、本例では、3個のチップコンデンサC1、C2、C3を収納する。チップコンデンサC1、C2、C3は、バイパスコンデンサの容量Cを実現する。チップコンデンサC1、C2、C3は、すべて同じ容量値でもよいし、異なる容量値であってもよい。
【0040】
なお、チップコンデンサC1、C2、C3のサイズは、例えば、2012サイズ(長辺2.0mm、短辺1.25mm)、1608サイズ(長辺1.6mm、短辺0.8mm)、1005サイズ(長辺1.0mm、短辺0.5mm)、である。
【0041】
また、複合部品100aは、コア10aの上に、蓋部50が接続された構成になっている。第1フランジ部13の天面13Uおよび第2フランジ部12の天面12Uに、蓋部50が接続されることにより、コア10aの強度を維持することができる。コア10aの強度を維持できる場合は、蓋部50を省略してもよい。なお、蓋部50は、コア10aと同様に、例えば、フェライトによって作成する。
【0042】
図10は、
図9に示す複合部品100aの側面図である。
図10は、
図9中の矢印Y15の方向から複合部品100aを見た図である。
図10に示すように、複合部品100aは、矩形の第1フランジ部13に、収納部ST2が接続されている。
【0043】
図9に戻り、長さD1は、コア10のX軸方向の長さである。長さD1は、例えば、3.2mmである。長さD4は、収納部ST2の電極間の距離である。長さD4は、例えば、0.3mmである。長さD5は、収納部ST2のY軸方向の長さである。長さD5は、例えば、2.2mmである。また、
図10において、長さD2は、複合部品100aのZ軸方向の長さである。長さD2は、例えば、2.3mmである。長さD3は、複合部品100aのY軸方向の長さである。長さD3は、収納部ST2を除いた、複合部品100aのY軸方向の長さである。長さD3は、例えば、2.5mmである。
【0044】
図11は、
図9中の収納部ST2を説明する図である。
図11に示すように、収納部ST2は、電極23と、電極24(請求の範囲の第4電極に相当)と、を有する。電極23と電極24との間に空間がある。この空間に、チップコンデンサが収納される。例えば、矢印Y16で示す方向に移動させることによって、チップコンデンサC1などを収納部ST2の空間に積み重ねて収納できる。電極23の内側表面、および、電極24の内側表面にはんだペーストを塗布しておけば、収納したチップコンデンサを仮固定することができる。仮固定されたチップコンデンサについては、リフロー処理によって、はんだペーストを溶融させることで収納部ST2に固定することができる。本例では、収納部ST2に、最大3個のチップコンデンサを収納できる。収納部ST1に、3個のチップコンデンサC1、C2、C3が収納されている場合、電極23と電極24との間に、チップコンデンサC1、C2、C3が並列に接続される。
【0045】
図12は、第2実施形態による複合部品100aの組立て手順を説明する図である。最初に、
図9を参照して説明したコア10aを用意する。矢印Y17で示すように、コア10aの上部に、蓋部50を接続する。次に、矢印Y18で示すように、第1フランジ部13の電極22に、収納部ST2の電極23を接続する。
【0046】
収納部ST2に関して、本例では、
図12に示すように、3個のチップコンデンサC1、C2、C3を収納して固定された収納部ST2を用意し、収納部ST2の電極23を第1フランジ部13の電極22に接続する。他の例では、3個より少ない数のチップコンデンサを収納して固定された収納部ST2を用意し、その収納部ST2の電極23を第1フランジ部13の電極22に接続してもよい。
【0047】
さらに他の例では、
図11に示す、チップコンデンサを収納していない収納部ST2を用意し、その収納部ST2の電極23を第1フランジ部13の電極22に接続してもよい。このとき、収納部ST2の電極23の内側表面、および、電極24の内側表面にはんだペーストを塗布しておくことが好ましい。このようにすれば、必要な特性を得るためのチップコンデンサおよび個数(3個まで)を選定し、収納部ST2に収納することができる。収納部ST2に収納した後、上述したように、リフロー処理によって、はんだペーストを溶融させることで収納部ST2に固定することができる。
【0048】
図9に示すように、予め選定したチップコンデンサが収納部ST2に収納された状態の複合部品100aを製品として提供してもよいし、チップコンデンサが収納部ST1に収納されていない状態の複合部品を製品として提供してもよい。後者の場合、収納部ST2に収納するチップコンデンサを、提供先において選定することになり、周波数特性を微調整することもできる。
【0049】
なお、第2実施形態の複合部品100aにおいて、第1実施形態の複合部品100と同様に、巻線14の表面に、樹脂を設けてもよい。
【0050】
(効果)
図13は、
図9に示す複合部品100aを用いてバイアスT回路を構成した場合の等価回路を示す図である。
図13において、ポートP1とポートP2との間は、バイアスT回路の信号線である。ポートP1とポートP2との間の信号ケーブルには、電源が重畳されている。ポートP1とポートP2との間にコンデンサC0が直列に接続されている。コンデンサC0の容量は、例えば、0.1μFである。
図13においては、チップコンデンサと回路上のコンデンサとに同じ符号C1、C2、C3を付加している。
【0051】
コンデンサC0の一端とポートP2との間のノードNSに、一点鎖線で示すように複合部品100aが接続される。複合部品100aを接続することにより、GHz帯域の透過特性を改善できる。
【0052】
ノードNSは、
図9中の電極21に相当する。ノードNSには、コイルL1の一端が接続される。コイルL1は、
図9中の巻線14に相当する。コイルL1の他端は、ノードNCに接続される。ノードNCは、
図9中の電極23に相当する。
【0053】
ノードNCには、コンデンサC1、C2、C3のそれぞれの一端が接続される。コンデンサC1、C2、C3のそれぞれの他端(電極24に相当)は、基準電位に接続される。したがって、本例では、ノードNCと基準電位との間に、3個のコンデンサC1、C2、C3が並列に接続される。3個のコンデンサC1、C2、C3は、バイパスコンデンサとして作用する。
【0054】
ノードNCは、ポートDCPに接続される。ポートDCPは、バイアスT回路の電源線に接続される。ポートDCPからは、所定の直流電圧が出力される。ポートDCPは、
図9中の電極22に相当する。
【0055】
以上の構成によれば、コイルL1と、バイパスコンデンサとを一体にすることができる。このため、コイルL1とバイパスコンデンサとを接近させ、両者の距離を近づけることができる。これにより、GHz帯域の透過特性の改善が期待される。
【0056】
(第3実施形態)
(構成)
図14は、本開示の第3実施形態による複合部品の外観を示す図である。
図14を参照すると、第3実施形態による複合部品100bは、第1実施形態の複合部品100、第2実施形態の複合部品100aとは異なり、2つの収納部ST3、ST4を有する。
【0057】
複合部品100bのコア10bは、第1フランジ部13と、第2フランジ部12aと、を有する。第1フランジ部13は、電極21(請求の範囲の第1電極に相当)を有する。第2フランジ部12aは、ギャップGAを有する。第2フランジ部12aは、ギャップGAを挟んで電極22(請求の範囲の第2電極に相当)と電極25とを有する。ギャップGAにより、電極22と電極25とは互いに独立した電極になっている。
【0058】
収納部ST3は、第1フランジ部13と第2フランジ部12aとの間に設けられる。収納部ST3は、本例では、3個のチップコンデンサC1、C2、C3を収納する。チップコンデンサC1、C2、C3は、バイパスコンデンサの容量Cを実現する。チップコンデンサC1、C2、C3は、すべて同じ容量値でもよいし、異なる容量値であってもよい。
【0059】
なお、チップコンデンサC1、C2、C3のサイズは、例えば、2012サイズ(長辺2.0mm、短辺1.25mm)、1608サイズ(長辺1.6mm、短辺0.8mm)、1005サイズ(長辺1.0mm、短辺0.5mm)、である。
【0060】
また、収納部ST4は、コア10bの上部に接続される。収納部ST4は、電極26(請求の範囲の第4電極に相当)、電極27(請求の範囲の第3電極に相当)を有する。収納部ST4は、本例では、1個の1140を収納する。チップコイル140のサイズは、例えば、3225サイズ(長辺3.2mm、短辺2.5mm)、2012サイズ(長辺2.0mm、短辺1.25mm)、である。
【0061】
巻線14の一端14aは、電極21に接続される。巻線14の他端は、第2フランジ部12aの天面において、電極27に接続される。
【0062】
図15は、
図14に示す複合部品100bの側面図である。
図15は、
図14中の矢印Y19の方向から複合部品100bを見た図である。
図15に示すように、複合部品100bは、矩形状に見える。
図14および
図15に示すように、第2フランジ部12aの底部の電極25は、配線31を介して、収納部ST4の電極26に接続される。
【0063】
図14において、長さD1は、コア10bのX軸方向の長さである。長さD1は、例えば、3.2mmである。長さD6は、収納部ST3の電極29のX軸方向の長さである。長さD6は、例えば、1.8mmである。また、
図15において、長さD2は、複合部品100bのZ軸方向の長さである。長さD2は、例えば、2.3mmである。長さD3は、複合部品100bのY軸方向の長さである。長さD3は、例えば、2.5mmである。長さD4は、収納部ST4の電極間の距離である。長さD4は、例えば、0.3mmである。
【0064】
ここで、
図16を参照して、収納部ST3について説明する。
図16は、
図14中の収納部ST3を説明する図である。
図16に示すように、収納部ST3は、電極28(請求の範囲の第6電極に相当)と、電極29(請求の範囲の第5電極に相当)と、を有する。電極28と電極29との間に空間がある。この空間に、チップコンデンサC1が収納される。例えば、矢印Y20で示す方向に移動させることによって、チップコンデンサC1を収納部ST3の空間に収納することができる。電極28の内側表面、および、電極29の内側表面にはんだペーストを塗布しておけば、収納したチップコンデンサC1を仮固定することができる。仮固定されたチップコンデンサC1については、リフロー処理によって、はんだペーストを溶融させることで収納部ST3に固定することができる。
図16には、チップコンデンサC1が1つだけ描かれている。本例では、収納部ST3に、最大3個のチップコンデンサを収納できる。収納部ST3に、3個のチップコンデンサC1、C2、C3が収納されている場合、電極28と電極29との間に、チップコンデンサC1、C2、C3が並列に接続される。
【0065】
図17は、第3実施形態による複合部品100bの組立て手順を説明する図である。最初に、
図14を参照して説明したコア10bを用意する。矢印Y21で示すように、コア10aの上部に、収納部ST4を接続する。これにより、第2フランジ12aの天面において、巻線14の他端14bが電極27に接続される。次に、矢印Y22で示すように、収納部ST4の下部に、収納部ST3を設ける。このとき、第2フランジ部12aの電極22に収納部ST3の電極29を接続し、収納部ST4の電極26に収納部ST3の電極28を接続する。
【0066】
収納部ST3に関して、本例では、
図14に示すように、3個のチップコンデンサC1、C2、C3を収納して固定された収納部ST3を用意する。そして、収納部ST3の電極28を収納部ST4の電極26に接続し、かつ、収納部ST3の電極29を第2フランジ部12aの電極22に接続する。他の例では、3個より少ない数のチップコンデンサを収納して固定された収納部ST3を用意し、その収納部ST3の電極28を収納部ST4の電極26に接続し、かつ、収納部ST3の電極29を第2フランジ部12aの電極22に接続してもよい。
【0067】
さらに他の例では、
図16に示す、チップコンデンサを収納していない収納部ST3を用意し、その収納部ST3の電極28を収納部ST4の電極26に接続し、かつ、収納部ST3の電極29を第2フランジ部12aの電極22に接続してもよい。このとき、収納部ST3の電極28の内側表面、および、電極29の内側表面にはんだペーストを塗布しておくことが好ましい。このようにすれば、必要な特性を得るためのチップコンデンサおよび個数(3個まで)を選定し、収納部ST3に収納することができる。収納部ST3に収納した後、上述したように、リフロー処理によって、はんだペーストを溶融させることで収納部ST3に固定することができる。
【0068】
図14に示すように、予め選定したチップコンデンサが収納部ST3に収納された状態の複合部品100bを製品として提供してもよいし、チップコンデンサが収納部ST3に収納されていない状態の複合部品を製品として提供してもよい。後者の場合、収納部ST3に収納するチップコンデンサを、提供先において選定することになり、周波数特性を微調整することもできる。
【0069】
さらに、
図14に示すように、予め選定したチップコイル140が収納部ST4に収納された状態の複合部品100bを製品として提供してもよいし、チップコイル140が収納部ST4に収納されていない状態の複合部品を製品として提供してもよい。後者の場合、収納部ST4に収納するチップコイルを、提供先において選定することになり、周波数特性を微調整することもできる。
【0070】
なお、チップコイル140のサイズによっては、収納部ST4に、他のチップ部品を収納するための空きスペースが生じる。この空きスペースに、例えば、チップ抵抗を収納することもできる。これにより、チップコイルに対して、チップ抵抗を並列に接続することができる。チップコイルにチップ抵抗を並列に接続することによって、共振特性を変更し、周波数特性を改善できる。
【0071】
(効果)
図18は、
図14に示す複合部品100bを用いてバイアスT回路を構成した場合の等価回路を示す図である。
図18において、ポートP1とポートP2との間は、バイアスT回路の信号線である。ポートP1とポートP2との間の信号ケーブルには、電源が重畳されている。ポートP1とポートP2との間にコンデンサC0が直列に接続されている。コンデンサC0の容量は、例えば、0.1μFである。
図18においては、チップコンデンサと回路上のコンデンサとに同じ符号C1、C2、C3を付加している。
【0072】
コンデンサC0の一端とポートP2との間のノードNSに、一点鎖線で示すように複合部品100bが接続される。複合部品100bを接続することにより、GHz帯域の透過特性を改善できる。
【0073】
ノードNSは、
図14中の電極21に相当する。ノードNSには、コイルL1の一端が接続される。コイルL1は、
図14中の巻線14に相当する。コイルL1の他端は、コイルL2の一端に接続される。
【0074】
コイルL1の他端とコイルL2の一端との接続点は、ノードNLである。ノードNLは、
図14中の電極27に相当する。コイルL2の他端は、ノードNCに接続される。ノードNCは、
図14中の電極28に相当する。
【0075】
ノードNCには、コンデンサC1、C2、C3のそれぞれの一端が接続される。コンデンサC1、C2、C3のそれぞれの他端(電極29に相当)は、基準電位に接続される。したがって、本例では、ノードNCと基準電位との間に、3個のコンデンサC1、C2、C3が並列に接続される。3個のコンデンサC1、C2、C3は、バイパスコンデンサとして作用する。3個未満のコンデンサを収納してもよい。透過特性の改善に必要な容量値および個数を選定すればよい。
【0076】
ノードNCは、ポートDCPに接続される。ポートDCPは、バイアスT回路の電源線に接続される。ポートDCPからは、所定の直流電圧が出力される。ポートDCPは、
図14中の電極22に相当する。
【0077】
以上の構成によれば、コイルL1と、コイルL2と、バイパスコンデンサとを一体にすることができる。このため、コイルL1と、コイルL2と、バイパスコンデンサとを接近させ、両者の距離を近づけることができる。複数のコイルL1およびL2を使用することができるため、広帯域に、高いインピーダンスを維持することができる。また、コイルL2については、チップコイルを変更することにより、任意のインダクタンス値を実現できる。これにより、GHz帯域の透過特性の改善が期待される。
【0078】
ところで、コイルL1は巻線形のコイルであるのに対し、コイルL2は積層形のチップコイルである。ポートP1とポートP2との間の信号線に近い方から、巻線によるコイルL1、積層形チップのコイルL2、の順序で実装する。すなわち、
図18に示すように、コイルL2ではなく、コイルL1をノードNSの近くに接続することにより、透過特性の改善効果を高めることができる。
【0079】
積層形のチップコイルに比べて、巻線形のコイルは、巻数の調整によりインダクタンス値の設定が容易である。例えば、巻数を多くすれば、比較的大きなインダクタンス値が得られる。巻線のコイルは、積層形のチップコイルに比べて、インピーダンスが高い。インピーダンスの高い方を、信号線の近くに設置した方が、広帯域において特性を改善できる。また、積層形チップのコイルL2を用いることによって、低周波帯の特性の改善が期待される。また、一体化部品とすることで、省スペース化を実現できる。
【0080】
(第4実施形態)
(構成)
図19は、本開示の第4実施形態による複合部品の外観を示す図である。第4実施形態では、第1実施形態による複合部品100を、基板K1上において実現する。
【0081】
基板K1は、複数の電極E1、電極E2、電極E3、を有する。これらの電極E1から電極E3は、基板K1の表面に設けられる。電極E1は、バイアスT回路の電源線に接続される電極パッドである。電極E2は、バイアスT回路の信号線に接続される電極パッドである。電極E3は、基準電位に接続される電極パッドである。
【0082】
電極E1は、本開示の第2電極パッドに相当する。電極E2は、本開示の第1電極パッドに相当する。電極E3は、本開示の第3電極パッドに相当する。
【0083】
複合部品100のコア10の電極21は、第1電極パッドである電極E2に接続される。複合部品100のコア10の電極22は、第2電極パッドである電極E1に接続される。矢印Y13で示すように、複合部品100のショートチップ16の電極162は、第3電極パッドである電極E3に接続される。ショートチップ16は、第1フランジ部13と第2フランジ部12との間に設けられる。
【0084】
矢印Y12で示すように、コア10の上部に収納部ST1が接続され、ショートチップ16の一端が収納部ST1に接続される。収納部ST1は、本例では、4個のチップコンデンサC1、C2、C3、C4を収納する。チップコンデンサC1、C2、C3、C4は、バイパスコンデンサの容量Cを実現する。
【0085】
以上のように、複合部品100は、基板K1上に実現することができる。複合部品100は、巻線14を含むコア10と、ショートチップ16と、収納部ST1と、を備える。
【0086】
ところで、収納部ST1とショートチップ16とを先に接続しておいてもよい。
図20は、収納部ST1とショートチップ16とを接続した状態を示す図である。収納部ST1の電極24に、ショートチップ16の一端が接続されている。この状態において、収納部ST1に、チップコンデンサC1、C2、C3、C4を収納する。
【0087】
図21は、収納部ST1とショートチップ16とを接続し、さらにチップコンデンサC1、C2、C3、C4を収納した状態を示す図である。すなわち、
図20のようにショートチップ16が接続されている収納部ST1に、チップコンデンサC1、C2、C3、C4を収納することによって、
図21に示す状態になる。
【0088】
(効果)
図19に示す複合部品100を用いてバイアスT回路を構成すると、
図8を参照して説明した等価回路の状態になる。複合部品100を接続することにより、GHz帯域の透過特性を改善することができる。
【0089】
(第5実施形態)
(構成)
図22は、本開示の第5実施形態による複合部品の外観を示す図である。第5実施形態では、第2実施形態による複合部品100aを、基板K2上において実現する。
【0090】
基板K2は、複数の電極E4と、電極E5と、電極E6と、を有する。これらの電極E4から電極E6は、基板K2の表面に設けられる。電極E4は、バイアスT回路の信号線に接続される電極パッドである。電極E5は、バイアスT回路の電源線に接続される電極パッドである。電極E6は、基準電位に接続される電極パッドである。
【0091】
電極E5は、本開示の第2電極パッドに相当する。電極E4は、本開示の第1電極パッドに相当する。電極E6は、本開示の第3電極パッドに相当する。
【0092】
複合部品100aのコア10aの電極21は、第1電極パッドである電極E4に接続される。複合部品100のコア10aの電極22は、第2電極パッドである電極E5に接続される。矢印Y18で示すように、収納部ST2の電極24は、第3電極パッドである電極E6に接続される。収納部ST2の電極23は、電極E5に接続される。収納部ST2の電極23は、コア10aの電極22に接続される。収納部ST2は、本例では、3個のチップコンデンサC1、C2、C3を収納する。チップコンデンサC1、C2、C3は、バイパスコンデンサの容量Cを実現する。矢印Y17で示すように、コア10aの上部に蓋部50が接続される。
【0093】
(効果)
図22に示す複合部品100aを用いてバイアスT回路を構成すると、
図13を参照して説明した等価回路の状態になる。複合部品100aを接続することにより、GHz帯域の透過特性を改善することができる。
【0094】
(第6実施形態)
(構成)
図23は、本開示の第6実施形態による複合部品の外観を示す図である。第6実施形態では、第3実施形態による複合部品100bを、基板K3上において実現する。
【0095】
基板K3は、電極E7と、電極E8と、電極E9と、を有する。これらの電極E7から電極E9は、基板K3の表面に設けられる。電極E7は、バイアスT回路の信号線に接続される電極パッドである。電極E8は、基準電位に接続される電極パッドである。電極E9は、バイアスT回路の電源線に接続される電極パッドである。
【0096】
電極E7は、本開示の第1電極パッドに相当する。電極E8は、本開示の第3電極パッドに相当する。電極E9は、本開示の第2電極パッドに相当する。
【0097】
複合部品100bのコア10bの電極21は、第1電極パッドである電極E7に接続される。複合部品100bのコア10bの電極22は、第3電極パッドである電極E8に接続される。複合部品100bのコア10bの電極25は、第2電極パッドである電極E9に接続される。
【0098】
矢印Y22で示すように、収納部ST3の電極29は、第3電極パッドである電極E8に接続される。収納部ST3は、第1フランジ部13と第2フランジ部12aとの間に設けられる。収納部ST3は、本例では、3個のチップコンデンサC1、C2、C3を収納する。チップコンデンサC1、C2、C3は、バイパスコンデンサの容量Cを実現する。
【0099】
矢印Y21で示すように、コア10bの上部に収納部ST4が接続される。このとき、収納部ST4の電極26は、収納部ST2の電極28に接続される。収納部ST4は、チップコイル140を収納しており、チップコイル140と巻線14によるコイルとが直列に接続される。
【0100】
(効果)
図23に示す複合部品100bを用いてバイアスT回路を構成すると、
図18を参照して説明した等価回路の状態になる。複合部品100bを接続することにより、GHz帯域の透過特性を改善することができる。
【0101】
(複合部品による効果)
以上説明したように、本開示の複合部品は、バイアスT回路を形成するための巻線インダクタと、チップコンデンサによるバイパスコンデンサとを一体にする。一体にすることによって、巻線インダクタと、バイパスコンデンサとを隣接して設け、両者の距離を短くすることができる。任意の容量値および任意の個数のチップコンデンサは、収納部に収納される。チップコンデンサを適切に選定することによって、GHz帯域の透過特性の改善が期待される。
【0102】
発明者は、コイルとバイパスコンデンサとの距離による効果の違いについて検証した。
図24は、本開示の複合部品によって得られる効果を説明する図である。
図24において、横軸は周波数(GHz)、縦軸はSパラメータのS21(dB)を示す。S21は入力端子から出力端子への透過特性を示す指標である。
図24中の特性m0は、GHz帯域での規格を示す。S21の値が特性m0以上である場合に規格を満足する。
【0103】
特性m1および特性m2は、同じコイルL1と同じバイパスコンデンサとを用い、両者の距離が異なる場合における、S21の値を示す。特性m1は、コイルL1とバイパスコンデンサとの距離が3mmである場合のS21の値を示す。特性m1は、5GHz付近において、特性m0の値より低い値になり、規格を満足しない。
【0104】
特性m2は、本開示の複合部品を採用した場合のS21の値を示す。本開示の複合部品を採用した場合、コイルL1とバイパスコンデンサとが隣接するため、コイルL1とバイパスコンデンサとの距離が0mmになる。このため、特性m2の全体が特性m0を超える値であり、規格を満足する。したがって、本開示のようにコイルとバイパスコンデンサとを1つにまとめて、両者の距離を0mmにした複合部品を用いることにより、広帯域かつ高周波において、良好な特性が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0105】
10、10a、10b コア
11 巻芯部
12、12a 第2フランジ部
13 第1フランジ部
14 巻線
15 樹脂
16 ショートチップ
21~29 電極
50 蓋部
100、100a、100b 複合部品
140 チップコイル
C0 コンデンサ
C1~C4 チップコンデンサ
E1~E9 電極
K1、K2、K3 基板
L1、L2 コイル
ST1、ST2、ST3、ST4 収納部