(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006221
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】算出方法および管理装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106885
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 勇介
(72)【発明者】
【氏名】大崎 聡士
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC04
5E353DD02
5E353DD17
5E353DD19
5E353EE89
5E353GG01
5E353HH11
5E353JJ21
5E353JJ25
5E353JJ48
5E353KK01
5E353LL02
5E353LL06
5E353QQ22
(57)【要約】
【課題】ユーザが部品実装機の消費エネルギーをより詳細に知り得る技術を提供する。
【解決手段】本明細書では、部品実装機の消費エネルギーの算出方法を開示する。部品実装機は、部品を基板の実装位置まで移動させる第1の装置と、第1の装置とは異なる第2の装置と、を備える。算出方法は、部品の実装において、第1の装置によって消費される第1の消費エネルギーを算出する第1の算出工程と、部品の実装において、第2の装置によって消費される第2の消費エネルギーを算出する第2の算出工程と、算出された第1の消費エネルギーと第2の消費エネルギーとを表示する表示工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装機の消費エネルギーの算出方法であって、
前記部品実装機は、
部品を基板の実装位置まで移動させる第1の装置と、
前記第1の装置とは異なる第2の装置と、
を備え、
前記算出方法は、
前記部品の実装において、前記第1の装置によって消費される第1の消費エネルギーを算出する第1の算出工程と、
前記部品の実装において、前記第2の装置によって消費される第2の消費エネルギーを算出する第2の算出工程と、
算出された前記第1の消費エネルギーと前記第2の消費エネルギーとを表示する表示工程と、
を含む、
算出方法。
【請求項2】
前記算出方法は、
前記部品の実装が実行される前に前記部品実装機の前記消費エネルギーを算出可能な方法であり、
前記部品の実装を実行するための実装プログラムを取得する取得工程をさらに備え、
前記第1の算出工程では、前記取得工程によって取得される前記実装プログラムに含まれる前記第1の装置の出力値を利用して、前記第1の消費エネルギーが算出され、
前記第2の算出工程では、前記取得工程によって取得される前記実装プログラムに含まれる前記部品の実装に要する実装時間を利用して、前記第2の消費エネルギーが算出される、
請求項1に記載の算出方法。
【請求項3】
前記実装プログラムは、第1の実装時間で前記部品の実装を実行する第1のプログラムと、前記第1の実装時間とは異なる第2の実装時間で前記部品の実装を実行する第2のプログラムと、を備え、
前記取得工程では、前記第1のプログラムと前記第2のプログラムとが取得され、
前記第1の算出工程では、
前記第1のプログラムに含まれる前記第1の装置の第1の出力値を利用した第3の消費エネルギーと、
前記第2のプログラムに含まれる前記第1の装置の第2の出力値を利用した第4の消費エネルギーと、
が算出され
前記第2の算出工程では、
前記第1のプログラムに含まれる前記第1の実装時間を利用した第5の消費エネルギーと、
前記第2のプログラムに含まれる前記第2の実装時間を利用した第6の消費エネルギーと、
が算出され、
前記表示工程では、
前記第1のプログラムに従った前記部品の実装において消費される前記第3の消費エネルギーおよび前記第5の消費エネルギーが含まれる前記第1の消費エネルギーと、
前記第2のプログラムに従った前記部品の実装において消費される前記第4の消費エネルギーおよび前記第6の消費エネルギーが含まれる前記第2の消費エネルギーと、
のうち少なくとも一方の消費エネルギーが表示される、
請求項2に記載の算出方法。
【請求項4】
前記表示工程では、前記第1の消費エネルギーと前記第2の消費エネルギーとのうち、小さい方の消費エネルギーが表示される、
請求項3に記載の算出方法。
【請求項5】
前記算出方法は、前記実装時間の指定を受け付ける時間指定工程を含み、
前記実装プログラムは、前記時間指定工程によって指定される前記実装時間に応じた前記出力値を含み、
前記第1の算出工程では、前記時間指定工程によって指定される前記実装時間に応じた前記出力値を利用して、前記第1の消費エネルギーが算出され、
前記第2の算出工程では、前記時間指定工程によって指定される前記実装時間を利用して、前記第2の消費エネルギーが算出される、
請求項2に記載の算出方法。
【請求項6】
前記第1の装置は、前記部品実装機のヘッド駆動装置を前記基板の表面に沿って移動させるサーボモータを備え、
前記第1の算出工程では、前記サーボモータによって生じる回生エネルギーを加味して、前記第1の消費エネルギーが算出される、
請求項1に記載の算出方法。
【請求項7】
部品実装機を管理する管理装置であって、
前記部品実装機は、
部品を基板の実装位置まで移動させる第1の装置と、
前記第1の装置とは異なる第2の装置と、
を備え、
前記部品の実装において、前記第1の装置によって消費される第1の消費エネルギーを算出する第1の算出部と、
前記部品の実装において、前記第2の装置によって消費される第2の消費エネルギーを算出する第2の算出部と、
算出された前記第1の消費エネルギーと前記第2の消費エネルギーとを表示する表示部と、
を備える、管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、部品実装機の消費エネルギーを算出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、部品実装機における消費エネルギーを低減する装置タクト最適化方法が開示されている。装置タクト最適化方法では、実装ラインを構成する実装処理装置のうちいずれかの装置タクトである参照タクトが取得され、基準となる実装処理条件で実装処理が行われた場合の装置タクトである初期タクトが取得される。さらに、初期タクトが参照タクト未満である場合、参照タクトを超えない範囲の装置タクトで消費エネルギーが減少するように、実装処理条件が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の気候変動問題への対応策の一つとして、例えば、消費エネルギーの低減が求められている。部品実装機において消費エネルギーを低減するためには、ユーザは、部品実装機における消費エネルギーの内訳をより詳細に知る必要がある。本明細書では、ユーザが部品実装機の消費エネルギーの内訳をより詳細に知り得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、部品実装機の消費エネルギーの算出方法を開示する。前記部品実装機は、部品を基板の実装位置まで移動させる第1の装置と、前記第1の装置とは異なる第2の装置と、を備える。前記算出方法は、前記部品の実装において、前記第1の装置によって消費される第1の消費エネルギーを算出する第1の算出工程と、前記部品の実装において、前記第2の装置によって消費される第2の消費エネルギーを算出する第2の算出工程と、算出された前記第1の消費エネルギーと前記第2の消費エネルギーとを表示する表示工程と、を含む。
【0006】
部品を基板の実装位置まで移動させる第1の装置では、例えば、部品を基板の実装位置まで移動させる速度に応じて、消費エネルギーが大きく変化する。具体的には、部品を基板の実装位置まで移動させる速度が速くなれば、消費エネルギーが増加し、当該速度が遅くなれば、消費エネルギーが低減する。一方、部品実装機の第2の装置では、部品を基板の実装位置まで移動させる速度が変化しても、第1の装置と比較すると消費エネルギーは大きく変化はしない。上記の算出方法では、第1の装置によって消費される第1の消費エネルギーと、第2の装置によって消費される第2の消費エネルギーと、を別々に表示する。このため、本明細書が開示する算出方法によれば、ユーザは、部品実装機の消費エネルギーの内訳(例えば、部品を基板の実装位置まで移動させる速度を変化させたときの消費エネルギーの内訳の変化等)をより詳細に知り得る。
【0007】
また、上記の算出方法を実行する部品実装機の管理装置、さらに、管理装置に算出方法を実行させるためのコンピュータプログラム、管理装置および部品実装機を備える部品実装システムも新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例の管理装置を備える部品実装システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する算出方法は、前記部品の実装が実行される前に前記部品実装機の前記消費エネルギーを算出可能な方法であってもよい。この場合、算出方法は、前記部品の実装を実行するための実装プログラムを取得する取得工程をさらに備えてもよい。前記第1の算出工程では、前記取得工程によって取得される前記実装プログラムに含まれる前記第1の装置の出力値を利用して、前記第1の消費エネルギーが算出されてもよく、前記第2の算出工程では、前記取得工程によって取得される前記実装プログラムに含まれる前記部品の実装に要する実装時間を利用して、前記第2の消費エネルギーが算出されるてもよい。
【0011】
第1の装置によって消費される第1のエネルギーは、主に実装プログラムに含まれる第1の装置の出力値に応じて変化する。一方、第2の装置によって消費される第2のエネルギーは、主に実装プログラムに含まれる実装時間に応じて変化する。このような構成によると、実装プログラムに基づいて、第1のエネルギーと第2のエネルギーとが算出されるため、ユーザは、部品が実装される前に、部品実装機の消費エネルギーの内訳をより詳細に知り得る。
【0012】
本明細書に開示する算出方法では、前記実装プログラムは、第1の実装時間で前記部品の実装を実行する第1のプログラムと、前記第1の実装時間とは異なる第2の実装時間で前記部品の実装を実行する第2のプログラムと、を備えてもよい。前記取得工程では、前記第1のプログラムと前記第2のプログラムとが取得されてもよい。さらに、前記第1の算出工程では、前記第1のプログラムに含まれる前記第1の装置の第1の出力値を利用した第3の消費エネルギーと、前記第2のプログラムに含まれる前記第1の装置の第2の出力値を利用した第4の消費エネルギーと、が算出されてもよい。前記第2の算出工程では、前記第1のプログラムに含まれる前記第1の実装時間を利用した第5の消費エネルギーと、前記第2のプログラムに含まれる前記第2の実装時間を利用した第6の消費エネルギーと、が算出されてもよい。前記表示工程では、前記第1のプログラムに従った前記部品の実装において消費される前記第3の消費エネルギーおよび前記第5の消費エネルギーが含まれる前記第1の消費エネルギーと、前記第2のプログラムに従った前記部品の実装において消費される前記第4の消費エネルギーおよび前記第6の消費エネルギーが含まれる前記第2の消費エネルギーと、のうち少なくとも一方の消費エネルギーが表示されてもよい。
【0013】
このような構成によると、異なる実装プログラム及び実装時間で実装を行ったときの消費エネルギーを比較することができる。
【0014】
本明細書に開示する算出方法では、前記表示工程では、前記第1の消費エネルギーと前記第2の消費エネルギーとのうち、小さい方の消費エネルギーが表示されてもよい。
【0015】
このような構成によると、より小さな消費エネルギーをユーザに知らせることができる。但し、別の実施形態では、表示工程では、第1の消費エネルギーと第2の消費エネルギーとのうち、大きい方の消費エネルギーが表示されてもよい。
【0016】
本明細書に開示する算出方法は、前記実装時間の指定を受け付ける時間指定工程を含んでもよい。この場合、前記実装プログラムは、前記時間指定工程によって指定される前記実装時間に応じた前記出力値を含んでもよい。さらに、前記第1の算出工程では、前記時間指定工程によって指定される前記実装時間に応じた前記出力値を利用して、前記第1の消費エネルギーが算出されてもよく、前記第2の算出工程では、前記時間指定工程によって指定される前記実装時間を利用して、前記第2の消費エネルギーが算出されてもよい。
【0017】
このような構成によると、ユーザが指定した実装時間に基づいて、部品実装機の消費エネルギーが算出される。このため、ユーザは、自身が指定した実装時間に応じた消費エネルギーを知ることができる。
【0018】
本明細書に開示する算出方法では、前記第1の装置は、前記部品実装機のヘッド駆動装置を前記基板の表面に沿って移動させるサーボモータを備えてもよい。この場合、前記第1の算出工程では、前記サーボモータによって生じる回生エネルギーを加味して、前記第1の消費エネルギーが算出されてもよい。
【0019】
このような構成によると、回生エネルギーを加味したより正確な第1のエネルギーを算出することができる。
【0020】
(第1実施例)
図1は、本実施例の管理装置50を備える部品実装システム100の概略図を示す。部品実装システム100は、管理装置50に加え、5つの部品実装機10を備える。管理装置50は、各部品実装機10と通信可能である。管理装置50は、各部品実装機10を管理するコンピュータである。管理装置50は、後述する実装プログラムを各部品実装機10に送信して、各部品実装機10に部品を実装させる。
【0021】
図2を参照して、部品実装機10の詳細構造について説明する。部品実装機10は、基板2の実装位置に部品4を実装する装置である。部品4は、電子部品であり、基板2は、回路基板である。
図2に示すように、部品実装機10は、ファン11と、部品フィーダユニット12と、フィーダ保持部14と、装着ヘッド16及びヘッド移動装置18から構成されるヘッドユニット15と、タッチパネル24と、真空ポンプ26と、撮像装置30と、基板コンベア20と、制御装置22と、バッテリV1と、を備える。ファン11は、部品実装機10内を換気する。部品フィーダユニット12は、+X方向(すなわち、
図1の紙面奥方向)に配列された複数のフィーダを有しており、各フィーダは、複数の部品4を収容している。部品フィーダユニット12の各フィーダは、フィーダ保持部14に着脱可能に取り付けられ、装着ヘッド16へ部品4を供給する。
【0022】
装着ヘッド16は、ノズル6とZ軸モータ17とを備える。ノズル6は、真空ポンプ26と接続されている。真空ポンプ26がノズル6の内部を負圧にすることによって、ノズル6が部品4を吸着する。Z軸モータ17は、ノズル6をZ軸に沿って(すなわち、
図2の紙面上下方向)に移動させる。Z軸モータ17は、部品フィーダユニット12の各フィーダ、あるいは基板2の表面に対して、ノズル6を接近及び離反させる。Z軸モータ17は、いわゆるサーボモータであり、図示は省略したが、サーボコントローラと、サーボアンプと、モータと、を有する。装着ヘッド16は、ノズル6によってフィーダから部品4を吸着すると共に、ノズル6に吸着された部品4を基板2上の実装位置に装着することができる。なお、装着ヘッド16は、単一のノズル6を有するものに限られず、複数のノズル6を有するものであってもよい。
【0023】
ヘッド移動装置18は、移動ベース18aと、XY軸モータ19と、撮像装置30と、を備える。XY軸モータ19は、移動ベース18aをXY平面に沿って移動させる。その結果、移動ベース18aに固定される装着ヘッド16及び撮像装置30がXY平面に沿って移動する。XY軸モータ19も、Z軸モータ17と同様に、サーボモータである。また、XY軸モータ19は、移動ベース18aを移動させるモータとしての機能に加えて、発電機としても機能する。例えば、XY軸モータ19は、移動ベース18aの移動速度を低減させる際に生じる回生電力を利用して発電する。回生電力によって発電された電力は、バッテリV1に蓄電される。
【0024】
タッチパネル24は、部品実装機10に関する様々な情報を表示する。また、タッチパネル24は、ユーザから、様々な指示を受け付ける操作部としても機能する。
【0025】
撮像装置30は、カメラ32と、照明用光源(図示省略)と、プリズム(図示省略)を備える。カメラ32は、ノズル6に吸着された部品4の側面を側方(すなわち、
図1の紙面右方向)から撮像する。カメラ32には、例えばCCDカメラが用いられる。照明用光源は、LEDにより構成されており、部品4の撮像面を照らす。
【0026】
基板コンベア20は、基板2の搬入、位置決め、及び搬出を行う装置である。一例ではあるが、本実施例の基板コンベア20は、一対のベルトコンベアと、基板2を下方から支持する支持装置(図示省略)とを有する。部品実装機10での部品4の実装が完了すると、基板コンベア20は、基板2を隣接する部品実装機10に搬出する。
【0027】
図3を参照して管理装置50の構成について説明する。本実施例では、管理装置50は、例えば、ノートパソコン等の端末装置であり、操作部52と、ディスプレイ54と、メモリ55と、CPU58と、を備える。なお、管理装置50は、デスクトップパソコンであってもよいし、スマートフォン、PDA等の端末装置であってもよい。操作部52は、ユーザから様々な指示を受け付ける。ディスプレイ54は、各部品実装機10に関する様々な情報を表示する。
【0028】
メモリ55は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリによって構成されている。メモリ55は、プログラム56と、消費電力情報57と、を記憶する。プログラム56は、
図5を参照して後述する部品実装処理等を実行するためのプログラムである。消費電力情報57は、部品実装機10の消費電力に関する情報を含む。プログラム56及び消費電力情報57は、管理装置50の出荷時に予め記憶されている。なお、変形例では、プログラム56及び消費電力情報57は、管理装置50の出荷後メモリ55に記憶されてもよい。
【0029】
消費電力情報57は、例えば、部品実装機10のファン11とタッチパネル24と制御装置22とカメラ32のそれぞれの単位時間当たりの消費電力を含む。また、消費電力情報57は、例えば、部品実装機10の各装置17、19、26における消費電力の算出式を含む。当該算出式は、例えば、必要トルクと実装時間とに基づいて、各モータ17、19における消費電力を算出するための数式である。当該算出式は、例えば、必要排気量と実装時間とに基づいて、真空ポンプ26の消費電力を算出するための数式である。
【0030】
CPU58は、プログラム56に従って、様々な処理を実行する。CPU58は、例えば、各装置17、19、26における消費電力を算出する第1の算出部59Fと、各装置11、24、22、32の消費電力を算出する第2の算出部59S、算出された消費電力をディスプレイ54に表示する表示部59Dとして機能する。
【0031】
管理装置50は、各部品実装機10の制御装置22と接続されている。管理装置50は、各部品実装機10に対して様々な情報を送信し、また、各部品実装機10から様々な情報を受信する。
【0032】
ここで、
図4を参照して、部品実装機10における消費電力について説明する。
図4は、部品実装機10における消費電力の内訳を示すグラフである。
図4では、縦軸が消費電力の値を示し、横軸が実装時間を示している。
図4では、異なる2つのパターンP1、P2の消費電力が示されている。パターンP1、P2では、ともに同数の部品4が同じ実装位置に実装されているが、実装時間が互いに異なる。パターンP1は、実装時間T1で部品4を実装した場合の消費電力である。パターンP2は、実装時間T1よりも短い実装時間T2で部品4を実装した場合の消費電力である。
【0033】
パターンP1の消費電力は、消費電力E1、E11、E21、E31を含む。パターンP2の消費電力は、消費電力E2、E12、E22、E32を含む。消費電力E1、E2は、部品実装機10のファン11とタッチパネル24と制御装置22とカメラ32とによって消費される電力を示す。消費電力E11、E12は、部品実装機10のXY軸モータ19によって消費される電力を示す。消費電力E21、E22は、Z軸モータ17によって消費される電力を示す。消費電力E31、E31は、真空ポンプ26によって消費される電力を示す。
【0034】
近年、部品実装機10における消費電力の低減が求められている。一方で、部品実装機10では、実装速度を向上させることによって、生産性を向上させることが求められる。本発明者らは、部品実装機10における消費電力と実装時間との関係を詳細に比較した。その結果、部品実装機10では、実装時間が短くなっても、消費電力が増加するケースが存在することが発見された。
【0035】
部品実装機10のファン11は、部品4の実装中、略一定の速度で回転している。また、タッチパネル24も、部品4の実装中、継続して画像を表示する。さらに、制御装置22は、部品4の実装中、継続して処理を実行する。また、カメラ32も、部品4の実装中、部品4の側面の撮像を繰り返す。これらの装置11、24、22、32では、部品4の実装中に消費電力が大きく変化しない。このため、これらの装置11、24、22、32では、消費電力は、実装時間に応じて変化する。別言すれば、これらの装置11、24、22、32では、消費電力は、実装時間に略比例する。
図4の消費電力E1、E2を比較すると理解できるように、部品実装機10のファン11とタッチパネル24と制御装置22とカメラ32とによって消費される電力は、実装時間が短くなると低減する。以下では、このような実装時間と消費電力とが略比例する装置11、24、22、32を、「消費電力不動装置」と記載することがある。
【0036】
一方、例えば、XY軸モータ19は、実装時間が短くなると、大きなトルクで移動ベース18aを高速で移動させる。その結果、XY軸モータ19の消費電力は、増加する。さらに、移動ベース18aが高速で移動すると、移動ベース18aが方向を変える際に生じるエネルギー損失(例えば、熱損失)が大きくなる。このため、
図4の消費電力E11、E12に示されるように、XY軸モータ19では、実装時間を短くするために大きなトルクを出力した結果、消費電力が増加するケースが存在する。すなわち、XY軸モータ19の消費電力は、実装時間と比例しないことがある。同様に、Z軸モータ17、真空ポンプ26においても、実装時間が短くなる場合に増加し得る。以下では、このような実装時間と消費電力とが比例しない可能性がある装置19、17、26を、「消費電力変動装置」と記載することがある。
【0037】
さらに、
図4に示されるように、部品実装機10における消費電力では、XY軸モータ19、Z軸モータ17、真空ポンプ26(すなわち、消費電力変動装置)の消費電力が占める割合は、各装置11、24、22、32(すなわち、消費電力不動装置)の消費電力が占める割合よりも大きい。このため、パターンP1の消費電力とパターンP2の消費電力とを比較すると理解できるように、部品実装機10では、実装時間を短くすることによって、消費電力が増加するケースが存在する。
【0038】
図5を参照して、管理装置50のCPU58が実行する部品実装処理について説明する。部品実装処理は、部品実装機10に部品4を実装させる前に実行される処理である。部品実装処理は、管理装置50の操作部52に対して部品実装処理を開始する操作を受け付けることに応じて、開始される。部品実装処理が部品4を実装させる前に実行されるため、ユーザは、部品実装処理を実行する前に、消費電力の詳細を知ることができる。
【0039】
S10において、CPU58は、操作部52を介して、ユーザから実装情報の入力を受け付ける。実装情報は、例えば、実装する部品4の種類と、実装する部品4の個数と、部品4を実装する実装位置と、を含む。
【0040】
S12において、CPU58は、プログラム56に従って、第1のプログラムを生成する。第1のプログラムは、S10で入力された実装情報に含まれる種類及び個数の部品4を、実装情報に含まれる実装位置に最短の実装時間で実装するためのプログラムである。具体的には、第1のプログラムは、例えば、最短となる実装時間、当該実装時間を実現するためのXY軸モータ19のトルクとZ軸モータ17のトルクと真空ポンプ26の排気量とを含む。
【0041】
S20において、CPU58は、S12で生成された第1のプログラムに含まれるXY軸モータ19のトルクとZ軸モータ17のトルクと真空ポンプ26の排気量とを利用して、消費電力変動装置の消費電力を算出する。ここで、CPU58は、XY軸モータ19の消費電力を算出する際、上述した回生電力も加味して消費電力を算出する。これにより、回生電力が加味されたより正確なXY軸モータ19の消費電力を算出することができる。
【0042】
次いで、S22において、CPU58は、S12で生成された第1のプログラムに含まれる実装時間と、メモリ55内の消費電力情報に含まれる消費電力不動装置の単位時間当たりの消費電力と、を乗算することによって、消費電力不動装置の消費電力を算出する。
【0043】
S24において、CPU58は、消費電力画面SC1をディスプレイ54に表示する。
図5に示されるように、消費電力画面SC1は、最短実装時間T2と、消費電力変動装置の消費電力「1.6KW」と、消費電力不動装置の消費電力「0.08KW」と、両消費電力の合計値「1.68KW」と、実装時間変更ボタンと、OKボタンと、を含む。最短実装時間T2は、S12で生成された第1のプログラムに含まれる最短の実装時間である。実装時間変更ボタンは、ユーザから実装時間の変更指示を受け付けるためのボタンである。
【0044】
S30において、CPU58は、実装時間の変更指示を受け付けることを監視する。CPU58は、実装時間変更ボタンの選択を受け付ける場合、S30でYESと判断して、S40に進む。CPU58は、OKボタンの選択を受け付ける場合、S30でNOと判断して、S60に進む。
【0045】
S40において、CPU58は、実装時間変更画面SC2を表示する。実装時間変更画面SC2は、実装時間を指定する指定領域SA1と、OKボタンと、を含む。CPU58は、ユーザから、実装時間の指定を受け付けた後、OKボタンの選択を受け付けると、S42に進む。
【0046】
S42において、CPU58は、S40で指定された実装時間に基づいて、第2のプログラムを生成する。
【0047】
さらに、S50において、CPU58は、S20と同様に、第2のプログラムに含まれるXY軸モータ19のトルクとZ軸モータ17のトルクと真空ポンプ26の排気量とを利用して、消費電力変動装置の消費電力を算出する。
【0048】
次いで、S52において、CPU58は、S40で指定された実装時間と、メモリ55内の消費電力情報に含まれる消費電力不動装置の単位時間当たりの消費電力と、を乗算することによって、消費電力不動装置の消費電力を算出する。このように、CPU58は、最短実装時間T2で部品4の実装を実行する第1のプログラムと、ユーザから指定された指定実装時間T1で部品4を実装する第2のプログラムと、のそれぞれについて、消費電力を算出する。これにより、異なる実装時間における消費電力を比較することができる。
【0049】
S54において、CPU58は、消費電力画面SC3をディスプレイ54に表示する。
図5に示されるように、消費電力画面SC3は、上述した消費電力画面SC1の内容に加え、S40で指定された指定実装時間T1と、指定実装時間T1で部品4を実装した場合の消費電力変動装置の消費電力1.2KWと、消費電力不動装置の消費電力0.1KWと、合計消費電力1.3KWと、OKボタンと、を含む。消費電力画面SC3に最短実装時間T2に対応する消費電力と指定実装時間T1に対応する消費電力とが表示されるため、ユーザは、異なる実装時間における消費電力を比較することができる。また、ユーザは、自身が指定した指定実装時間T1に対応する消費電力を知ることができる。CPU58は、ユーザから、最短実装時間T2と指定実装時間T1とのいずれか一方の選択を受け付けた後に、OKボタンの選択を受け付けると、S60に進む。
【0050】
S60において、CPU58は、S54で選択された実装時間に対応するプログラム(すなわち、第1のプログラムと第2のプログラムとのいずれか一方)を、実装プログラムとして、5つの部品実装機10のうちの特定の部品実装機10に送信する。これにより、特定の部品実装機10は、受信したプログラムに基づいて、部品4を基板2に実装する。
【0051】
(本実施例の効果)
このように、本実施例の管理装置50は、消費電力画面SC1、SC3において、消費電力変動装置の消費電力と、消費電力不動装置の消費電力と、を別々に表示する。このため、ユーザは、部品実装機10の消費電力をより詳細に知ることができる。さらに、こられが別々に表示されるため、ユーザは、消費電力不動装置の消費電力に比べて消費電力変動装置の消費電力が大きい場合に、実装時間を変更(例えば、実装時間を長く)することによって、消費電力が低減し得ることを知ることができる。
【0052】
また、上述した部品実装処理によって、ユーザは、部品4の実装前に消費電力をシミュレーションすることができる。これにより、他の生産ライン等の生産速度等の条件から許容できる実装時間と消費電力とを踏まえて適正な実装時間を含む実装プログラムを選択することができる。これにより、部品実装機10における消費電力を低減することができる。
【0053】
(対応関係)
消費電力変動装置(すなわち、装置17、19、26)、消費電力不動装置(すなわち、装置11、24、22、32)が、それぞれ、「第1の装置」、「第2の装置」の一例である。消費電力E11、E12、E21、E22、E31、E32が、「第1の消費エネルギー」の一例である。消費電力E1、E2が、「第2の消費エネルギー」の一例である。トルク、排気量が、「出力値」の一例である。
図5のS20で算出される消費電力変動装置の消費電力、S50で算出される消費電力変動装置の消費電力が、それぞれ、「第3の消費エネルギー」、「第5の消費エネルギー」の一例である。
図5のS22で算出される消費電力不動装置の消費電力、S52で算出される消費電力不動装置の消費電力が、それぞれ、「第4の消費エネルギー」、「第6の消費エネルギー」の一例である。
【0054】
S20、S22の処理によって実行される工程が、それぞれ、「第1の算出工程」、「第2の算出工程」の一例である。S24の処理によって実行される工程が、「表示工程」の一例である。S12の処理によって実行される工程が、「取得工程」の一例である。S40の処理によって実行される工程が、「時間指定工程」の一例である。
【0055】
(第2実施例)
続いて、
図5を参照して第2実施例の管理装置50が実行する部品実装処理について説明する。本実施例の部品実装処理と第1実施例の部品実装処理とを比較すると、本実施例の部品実装処理では、S54において、第1実施例の消費電力画面SC3に代えて、消費電力画面SC4が表示されるが、それ以外の処理については同様である。本実施例の消費電力画面SC4では、第1のプログラムに対応する消費電力と第2のプログラムに対応する消費電力とのうち、小さい方の消費電力(すなわち、指定実装時間T1に対応する消費電力)のみが表示される。これにより、ユーザは、より小さな消費電力を知ることができる。
【0056】
本実施例の留意点を以下に述べる。上述した部品実装処理は、部品実装機10の制御装置22によって実行されてもよい。その場合、
図5のS60において、実装プログラムを送信することに代えて、実装処理が実行される。
【0057】
上述した実施例では、部品実装処理は、部品4を基板2に実装する前に実行される。しかしながら、変形例では、部品実装処理は、部品4を基板2に実行した後に実行されてもよい。この場合、CPU58は、実際に部品4の実装に利用されたプログラムに基づいて、消費電力変動装置及び消費電力不動装置の消費電力を算出し、それらを別々に表示してもよい。本変形例によれば、ユーザは、実際に部品4を実装した実装プログラムにおいて、消費電力変動装置の消費電力と、消費電力不動装置の消費電力と、を詳細に知ることができる。また、別の変形例では、プログラムに基づくことなく、例えば、各装置に印加される電力量に基づいて、消費電力変動装置及び消費電力不動装置の消費電力を算出してもよい。
【0058】
消費電力画面SC1は、実装時間変更ボタンを含まなくてもよい。この場合、CPU58は、S30~S54の処理を実行しなくてもよい。すなわち、算出方法は、時間指定工程を含まなくてもよい。また、さらなる変形例では、CPU58は、S10において、実装情報の入力の際、実装時間の指定を受け付けてもよい。この場合、消費電力画面SC1では、指定された実装時間に対応する消費電力のみが表示されてもよい。
【0059】
XY軸モータ19は、サーボモータに限定されない。この場合、S20において、CPU58は、回生電力を加味してXY軸モータ19の消費電力を算出しなくてもよい。
【0060】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0061】
本明細書では、請求項5において「請求項2に記載の算出方法」を「請求項2から4のいずれか一項に記載の算出方法」に変更した技術思想や、請求項6において「請求項1に記載の算出方法」を「請求項1から5のいずれか一項に記載の算出方法」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0062】
2 :基板
4 :部品
6 :ノズル
10 :部品実装機
11 :ファン
12 :部品フィーダユニット
14 :フィーダ保持部
15 :ヘッドユニット
16 :装着ヘッド
17 :Z軸モータ
18 :ヘッド移動装置
18a :移動ベース
19 :XY軸モータ
20 :基板コンベア
22 :制御装置
24 :モニタ
26 :真空ポンプ
30 :撮像装置
32 :カメラ
50 :管理装置
52 :操作部
54 :ディスプレイ
55 :メモリ
56 :プログラム
57 :消費電力情報
58 :CPU
59D :表示部
59F :第1の算出部
59S :第2の算出部
100 :部品実装システム