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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062210
(43)【公開日】2025-04-14
(54)【発明の名称】無線通信装置、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20250407BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20250407BHJP
   H04W 74/04 20090101ALI20250407BHJP
【FI】
H04W28/04 110
H04W84/12
H04W74/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171119
(22)【出願日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 茂
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠介
(72)【発明者】
【氏名】相尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】平田 龍一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067DD17
5K067DD24
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH28
(57)【要約】
【課題】伝送路の利用効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】他の無線通信装置から送信されてくるデータを受信し、受信したデータを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングを調整し、出力タイミングに応じて、送信されたデータの中で未達となったデータである未達データの再送を要求する再送要求情報を生成し、生成した再送要求情報を他の無線通信装置に送信する制御を行う制御部を備える無線通信装置が提供される。本開示は、例えば、無線LANシステムを構成する無線通信装置に適用することができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線通信装置から送信されてくるデータを受信し、
受信した前記データを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングを調整し、
前記出力タイミングに応じて、送信された前記データの中で未達となった前記データである未達データの再送を要求する再送要求情報を生成し、
生成した前記再送要求情報を前記他の無線通信装置に送信する
制御を行う制御部を備える
無線通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記他の無線通信装置との間で予め決定された送信機会の第1の期間に、前記他の無線通信装置から送信されてくる前記データを受信し、
前記第1の期間と異なる第2の期間に、前記再送要求情報を受信した前記他の無線通信装置から送信されてくる前記未達データを受信する
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記データを前記アプリケーション機器に出力する時間的な猶予がある場合、前記未達データを識別する前記再送要求情報を含む応答フレームを生成し、
生成した前記応答フレームを前記他の無線通信装置に送信する
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記データを前記アプリケーション機器に出力する時間的な猶予がない場合、前記再送要求情報を含まない前記応答フレームを生成する
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施するトラフィック識別子を含んだフレームを受信した場合、前記応答フレームを前記他の無線通信装置に送信する
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施する場合、前記応答フレームを前記他の無線通信装置に送信する
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の期間が到来したとき、前記データの送信に関する第1のトリガフレームを前記他の無線通信装置に送信する
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施する場合、前記未達データの再送に関する第2のトリガフレームを前記他の無線通信装置に送信する
請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記データに対し前記未達データが発生したときに遅延が生じない程度の遅延量を設定して、前記アプリケーション機器に前記出力タイミングを調整して出力する
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項10】
無線通信装置が、
他の無線通信装置から送信されてくるデータを受信し、
受信した前記データを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングを調整し、
前記出力タイミングに応じて、送信された前記データの中で未達となった前記データである未達データの再送を要求する再送要求情報を生成し、
生成した前記再送要求情報を前記他の無線通信装置に送信する
無線通信方法。
【請求項11】
データを他の無線通信装置に送信し、
前記他の無線通信装置から送信されてくる再送要求情報を受信し、
前記他の無線通信装置において接続されるアプリケーション機器に前記データを出力する出力タイミングに応じて、受信した前記再送要求情報により特定された未達データであって送信した前記データの中で未達となった前記データを、前記他の無線通信装置に再送する
制御を行う制御部を備える
無線通信装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記他の無線通信装置との間で予め決められた送信機会の第1の期間に、前記データを前記他の無線通信装置に送信し、
前記第1の期間と異なる第2の期間に、前記未達データを前記他の無線通信装置に再送する
請求項11に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記他の無線通信装置から送信されてくる応答フレームを受信し、
受信した前記応答フレームに含まれる前記再送要求情報に応じて、前記第1の期間内に未達となった前記データを特定する
請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記出力タイミングに応じて、所定の遅延が許容される時間内となる前記第2の期間に、前記未達データを前記他の無線通信装置に再送する
請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記第1の期間として、前記データに対して必要最低限の送信機会となるサービス期間を設定する
請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記送信機会を獲得した場合、前記第1の期間内にその時点で取得している前記データを前記他の無線通信装置に送信する
請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施するトラフィック識別子を含んだフレームを前記他の無線通信装置に送信する
請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記他の無線通信装置から、前記データの送信に関する第1のトリガフレームを受信した場合、前記データを前記他の無線通信装置に送信する
請求項12に記載の無線通信装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記他の無線通信装置から、前記未達データの再送に関する第2のトリガフレームを受信した場合、前記未達データを前記他の無線通信装置に再送する
請求項18に記載の無線通信装置。
【請求項20】
無線通信装置が、
データを他の無線通信装置に送信し、
前記他の無線通信装置から送信されてくる再送要求情報を受信し、
前記他の無線通信装置において接続されるアプリケーション機器に前記データを出力する出力タイミングに応じて、受信した前記再送要求情報により特定された未達データであって送信した前記データの中で未達となった前記データを、前記他の無線通信装置に再送する
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置、及び無線通信方法に関し、特に、伝送路の利用効率を向上させることができるようにした無線通信装置、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在IEEE802.11be規格において、想定されるアプリケーションのデータ伝送量が増大しているのみならず、そのデータが低遅延(Low Latency)かつ高信頼性であることが求められている。これらの通信技術として、IEEE802.11be標準化において、現時点では、R-TWT(Restricted Target Wakeup Time)を周期的に設定して、低遅延なデータを逐次送信する方法が検討されている。
【0003】
このR-TWT技術は、従来から存在するターゲットを起動させておく時間を決めて起動させておき、低消費電力動作を実現する技術として定義されているもので、送信側通信装置が送信機会(TXOP:Transmit Opportunity)を周期的に獲得し、その送信機会(TXOP)の中で低遅延として送信すべきデータを、他のデータよりも優先的に送信する仕組みとして定義されている。R-TWT技術は、リアルタイムアプリケーションに適したデータの伝送を行うための手法として有力視されていて、現在、これらの手法を用いた技術提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、TWT動作を要求する場合に、低レイテンシ通信のデータフレームである場合に、他の通信装置宛ての通信による時間長を制限する技術が開示されている。特許文献2には、ビーコン周期にN周期の送信期間を設定し、それより短いM周期でオーバーラップさせてOFDMA通信を実施する技術が開示されている。特許文献3には、接続要求・再接続要求としてAP Primary Link情報をTWT要求に含めて、マルチリンク通信を実施する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-133131号公報
【特許文献2】特開2021-016059号公報
【特許文献3】特表2022-541085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したR-TWT技術は、所定の周期で送信側通信装置と受信側通信装置が同期して動作するために定義されているが、ある程度の周期を規定してそれらの通信を優先するために、R-TWTのサービス期間(SP:Service Period)を設定する必要がある。これらの技術を低遅延が要求されるデータに適用する場合には、許容される遅延時間内に伝送を完了させるためのパラメータの設定が必要であり、R-TWT SPの到来周期を短くしない限り、伝送遅延が発生する恐れがあった。
【0007】
また、無線伝送路上では通信エラーが発生する場合があることから、通信エラーが生じたデータを再送しなければ、エンドツーエンドで全てのデータを確実に届けることができない。特に、R-TWT SPの設定により送信機会(TXOP)の1回の確保で、必要最低限のデータ伝送を実施する通信量を確保した場合、そのサービス期間内に未達データの再送を実施することは困難であった。そのため、このような未達データの再送を行う場合に、伝送路の利用効率を向上させるための技術が求められていた。
【0008】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、伝送路の利用効率を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面の無線通信装置は、他の無線通信装置から送信されてくるデータを受信し、受信した前記データを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングを調整し、前記出力タイミングに応じて、送信された前記データの中で未達となった前記データである未達データの再送を要求する再送要求情報を生成し、生成した前記再送要求情報を前記他の無線通信装置に送信する制御を行う制御部を備える無線通信装置である。
【0010】
本開示の一側面の無線通信方法は、無線通信装置が、他の無線通信装置から送信されてくるデータを受信し、受信した前記データを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングを調整し、前記出力タイミングに応じて、送信された前記データの中で未達となった前記データである未達データの再送を要求する再送要求情報を生成し、生成した前記再送要求情報を前記他の無線通信装置に送信する無線通信方法である。
【0011】
本開示の一側面の無線通信装置、及び無線通信方法においては、他の無線通信装置から送信されてくるデータが受信され、受信された前記データを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングが調整され、前記出力タイミングに応じて、送信された前記データの中で未達となった前記データである未達データの再送を要求する再送要求情報が生成され、生成された前記再送要求情報が前記他の無線通信装置に送信される。
【0012】
本開示の一側面の無線通信装置は、データを他の無線通信装置に送信し、前記他の無線通信装置から送信されてくる再送要求情報を受信し、前記他の無線通信装置において接続されるアプリケーション機器に前記データを出力する出力タイミングに応じて、受信した前記再送要求情報により特定された未達データであって送信した前記データの中で未達となった前記データを、前記他の無線通信装置に再送する制御を行う制御部を備える無線通信装置である。
【0013】
本開示の一側面の無線通信方法は、無線通信装置が、データを他の無線通信装置に送信し、前記他の無線通信装置から送信されてくる再送要求情報を受信し、前記他の無線通信装置において接続されるアプリケーション機器に前記データを出力する出力タイミングに応じて、受信した前記再送要求情報により特定された未達データであって送信した前記データの中で未達となった前記データを、前記他の無線通信装置に再送する無線通信方法である。
【0014】
本開示の一側面の無線通信装置、及び無線通信方法においては、データが他の無線通信装置に送信され、前記他の無線通信装置から送信されてくる再送要求情報が受信され、前記他の無線通信装置において接続されるアプリケーション機器に前記データを出力する出力タイミングに応じて、受信された前記再送要求情報により特定された未達データであって送信した前記データの中で未達となった前記データが、前記他の無線通信装置に再送される。
【0015】
なお、本開示の一側面の無線通信装置は、独立した装置であってもよいし、1つの装置を構成している内部ブロックであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示を適用した無線LANシステムの構成例を示した図である。
図2】従来からのR-TWTの動作を示した図である。
図3】従来からのR-TWT SPを用いた無線通信における問題点を示した図である。
図4】従来からのR-TWT SPを用いた無線通信における問題点を示した図である。
図5】従来からのRTAデータのアプリケーションの出力シーケンスの例を示した図である。
図6】従来技術によるダウンリンクのR-TWT SPの設定例を示した図である。
図7】従来技術によるダウンリンクのR-TWT SPの設定例の変形例を示した図である。
図8】従来技術によるアップリンクのR-TWT SPの設定例を示した図である。
図9】従来技術によるアップリンクのR-TWT SPの設定例の変形例を示した図である。
図10】本開示によるRTAデータのアプリケーションの出力シーケンスの例を示した図である。
図11】本開示によるダウンリンクのR-TWT SPの設定例を示した図である。
図12】本開示によるアップリンクのR-TWT SPの設定例を示した図である。
図13】R-TWT SPを利用してRTAデータを送信する場合のバッファの構成例を示した図である。
図14】本開示を適用した無線通信装置の構成例を示したブロック図である。
図15図14の無線通信モジュールの構成例を示したブロック図である。
図16】RTAデータ交換のセットアップ要求フレームの交換シーケンスの第1の例を示した図である。
図17】RTAデータ交換のセットアップ要求フレームの交換シーケンスの第2の例を示した図である。
図18】本開示によるRTAデータのアクセス制御パラメータのセットアップ要求エレメントの構成を示した図である。
図19】本開示によるRTAデータのアクセス制御パラメータのセットアップ応答エレメントの構成を示した図である。
図20】本開示によるトリガフレームの構成例を示した図である。
図21】本開示によるデータフレームの構成例を示した図である。
図22】本開示によるデータフレームのデリミタの構成例を示した図である。
図23】本開示によるブロックACKフレームの構成例を示した図である。
図24】RTAパラメータのセットアップ情報の交換処理の流れを説明するフローチャートである。
図25】RTAパラメータのセットアップ情報の交換処理の流れを説明するフローチャートである。
図26】送信側通信装置による送信処理の流れを説明するフローチャートである。
図27】送信側通信装置による送信処理の流れを説明するフローチャートである。
図28】受信側通信装置による受信処理の流れを説明するフローチャートである。
図29】受信側通信装置による受信処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<システム構成>
図1は、本開示を適用した無線LAN(Local Area Network)システムの構成例を示した図である。図1において、無線LANシステムは、送信側通信装置10Txと受信側通信装置10Rxから構成され、そのどちらか一方の通信装置がアクセスポイント(AP:Access Point)として動作し、他方の通信装置が通信端末(STA:Station)として動作することで1つのベーシックサービスセット(BSS:Basic Service Set)を構成する。
【0018】
また、図1においては、データ送信側の送信側通信装置10Txとデータ受信側の受信側通信装置10Rxが存在する場合に、その周囲には、通信装置20A,20Bから構成される周辺のネットワークとして、オーバーラップしたBSS(OBSS:Overlapping Basic Service Set)が存在している。これらのOBSSのネットワークを構成する通信装置20A,20Bは、必ずしも最新の規格に合致しているとは限らず、過去に規格化された通信方式の信号しか認識できないレガシー通信装置が含まれて構成されることもありうる。以下、通信装置20A,20Bがレガシー通信装置である場合を示す。
【0019】
図1において、白丸が本開示を適用した無線通信装置を表しており、その電波到達範囲を破線A1,A2で示しており、送信側通信装置10Txから受信側通信装置10Rxに、矢印C1で示される、リアルタイムアプリケーション(RTA:Real-Time Application)を利用して低遅延のデータ伝送が行われている構成を示している。また、黒丸がOBSSを構成するレガシー通信装置を表しており、その電波到達範囲を一点鎖線A3,A4で示している。
【0020】
ここで、レガシー通信装置である通信装置20A,20Bでは、最新の規格に記載されたリアルタイムアプリケーションのための通信プロトコルを認識することが難しく、ほぼ周期的にリアルタイムアプリケーションの通信が行われることを把握できず、伝送路が空き状態になったと判断した場合には、通信を開始してしまう。つまり、図1においては、矢印I1,I2で示すように、OBSSの通信装置20A,20Bからの送信信号が、送信側通信装置10Txから受信側通信装置10Rxの間で利用されるリアルタイムアプリケーションのデータ伝送に干渉を与えてしまう様子を示している。
【0021】
<従来の動作>
図2は、従来からのR-TWT(Restricted Target Wakeup Time)の動作を示した図である。図2において、上段には、事前に設定されたR-TWTのSP(Service Period)を示しており、中段には、そのTWTにおいて送信機会を獲得する送信側通信装置10Txの動作を、下段にはそのTWTにおいてほぼ周期的に受信する受信側通信装置10Rxの動作を、時間の経過とともに左側から右側に遷移していく状態を示している。さらに、中段と下段では、時間方向に対応した時間軸に対し、データの送信動作を上に凸の状態として示し、データの受信動作を下に凸の状態で示している。
【0022】
ここでは、上段の破線で示された区間で示すように、予めほぼ周期的にR-TWTのSPが設定されており、そのSP期間内では、特定の識別子であるトラフィック識別子(TID:Traffic Identifier)を付与された、例えばリアルタイムアプリケーションのデータ(以下、RTAデータともいう)を優先的に送信することができる構成になっている。また、SP期間内が経過した後は、他の一般データを送受信できることから、任意のデータ(以下、他のデータともいう)が交換される。つまり、図2において、R-TWT SPの期間は、RTAデータ#1~#4が送信されるものの、その期間外においては、他のデータ#1~#3が送信される構成になっている。なお、RTAデータはRTDとも記述し、他のデータはNDとも記述する。
【0023】
図3は、従来からのR-TWT SPを用いた無線通信における問題点を示した図である。図3には、図2と同様の構成の流れが示されており、重複する説明は適宜省略する。図3においては、2回目のR-TWT SPが到来した時に、例えばR-TWT SPの設定を把握できないOBSSに存在する通信装置20Aの信号送信が開始されている状態にあると、その期間はBUSY状態として扱われてしまう。そのため、たとえR-TWTのSPが到来したとしても、送信側通信装置10TxがBUSY状態にあっては、所望のRTAデータの送信が実施できなくなる。
【0024】
また、3回目のR-TWT SPが到来した時に、受信側通信装置10Rxでは、自己宛てのデータが送られてきても、R-TWT SPの設定を把握できないOBSSの通信装置20Bからの信号を強く受信していると、所望のRTAデータを正しく復号できないという問題があった。さらに、BUSY状態が、R-TWTのSPを超える場合には、その周期で予定していたリアルタイムアプリケーションのデータ伝送が行なえず、一般のデータとアクセス制御を実施した上で送信をする構成になっており、この場合、優先的にRTAデータが送られるとは限らなかった。図3においては、4回目のR-TWT SPが到来した時に、遅延が累積されて2番目のRTAデータ#2を送信する状態になってしまうケースを示している。
【0025】
図4は、従来からのR-TWT SPを用いた無線通信における問題点の他のケースを示した図である。図4には、図2と同様の構成の流れが示されており、重複する説明は適宜省略する。図4においては、RTAデータの再送を考慮して、R-TWTのサービス期間(SP)を、図2のケースと比べて長めに設定しておいて通信を実施するケースを示している。
【0026】
図4においては、2回目のR-TWT SPが到来した時に、例えばR-TWT SPの設定を把握できないOBSSに存在する通信装置20Aの信号送信が開始されているBUSY状態にあっても、R-TWT SPが潤沢に設定されていれば、その期間内にBUSY状態が解消することで、送信側通信装置10Txが、所望のRTAデータ#2を送信することができる状態を示している。また、3回目のR-TWT SPでは、受信側通信装置10RxがBUSY状態にあっても、そのR-TWT SP内に再送を実施することができ、所望のRTAデータ#3を周期的に送信することができる。しかしながら、R-TWT SP以外の部分が相対的に短くなってしまうことから、RTAデータ以外の他のデータ伝送については、送信する機会が減少してしまう問題があった。
【0027】
図5は、従来からのRTAデータのアプリケーションの出力シーケンスの例を示した図である。図5のシーケンス図においては、図中の上側から下側に向かって順次時間が経過するものとする。また、図5のシーケンス図においては、図中の左側の送信側通信装置10Txのアプリケーションから、ほぼ定期的に所定のRTAデータが届く場合に、無線伝送路を通じてデータを送信したときに、図中の右側の受信側通信装置10Rxのアプリケーションに、受信したRTAデータを出力する流れを示している。
【0028】
つまり、送信側通信装置10Txは、ほぼ周期的に設定されたR-TWT SPの期間に、RTAデータをまとめて送信する構成となっており、ここでは、RTAデータ#1~#3を1回目のR-TWT SPを利用して送信している。このとき、RTAデータ#3が受信側通信装置10Rxに正しく届かなかった場合には、その状況が、例えばブロックACK(BA:Block ACK)フレームを介して、送信側通信装置10Txに返送される。続いて、2回目のR-TWT SPでは、未達となっているRTAデータ#3を含めて、新たなRTAデータ#4~#6を送信する。また、このとき、RTAデータ#6が受信側通信装置10Rxに正しく届かなかった場合には、その状況が、例えばブロックACKフレームを介して、送信側通信装置10Txに返送される。
【0029】
さらに、3回目のR-TWT SPでは、未達となっているRTAデータ#6を含めて、新たなRTAデータ#7~#8を送信する。ここでも、RTAデータ#7が受信側通信装置10Rxに正しく届かなかった場合には、その状況が、例えばブロックACKフレームを介して、送信側通信装置10Txに返送される。そして、4回目のR-TWT SPでは、未達となっているRTAデータ#7を再送する構成になっており、受信側通信装置10RxからブロックACKフレームの返送を受けることで、送信側通信装置10Txは全てのデータの受領を確認する。
【0030】
一方、受信側通信装置10Rxでは、接続されるアプリケーション機器に所定のタイミングで受信したRTAデータが出力される構成になっており、ここでは、最初のデータを受信した1回目のR-TWT SPの終了後に、データを出力する例を示している。つまり、未達のRTAデータ#3が存在すると、その未達データが再送されてくるまで、遅延時間が生じることになるが、最初のうちはこれらの遅延が吸収されてアプリケーション機器に届いている。しかしながら、未達のデータが増えることによって再送タイミングが遅れてしまうこと、さらに未達のデータ#6, #7が途中に存在する場合には、RTAデータ#7が届かないことで、図中の矢印D1で示すように、アプリケーション機器に届けるまでに遅延が生じてしまう。
【0031】
図6は、従来技術によるダウンリンク(DL:Downlink)のR-TWT SPの設定例を示した図である。図6においては、図6のAで示す上段にアクセスポイント(AP)を送信側通信装置10Txとして、図6のBで示す下段に通信端末(STA)を受信側通信装置10Rxとした例において、図中の左側から右側に進むにつれて時間が経過する図として示している。また、図6のA,Bでは、時間方向に対応した時間軸に対し、送信する信号を上に凸の状態で、受信する信号を下に凸の状態として示しており、所望のRTAデータを通信するために必要なR-TWT SPの時間を破線で示している。
【0032】
つまり、1回のR-TWT SPにおいて、所定のRTAデータを送信可能な時間を、破線で表した期間P1で示している。ここでは、アクセスポイント(AP)から、送信側通信装置10Txが下り方向(DL)のRTAデータ(DL RTA Data)を、所定のアクセス手順によって送信を実施するとともに、その受領確認を受信側通信装置10RxからブロックACKフレーム(BA)により返送する構成になっている。ここでは、後述の図7に示す再送を含んだR-TWT SPの冗長な時間を、一点鎖線で表した期間P2で便宜上示している。
【0033】
図7は、従来技術によるダウンリンクのR-TWT SPの設定例の変形例を示した図である。図7は、図6と同様に記載されていることから、重複する説明は適宜省略する。図7においては、1回のR-TWT SPにおいて、再送する冗長な時間を含んで設定された例を示しており、1回のR-TWT SPにおいて、所定のRTAデータを送信可能な時間を、一点鎖線で表した期間P2で示している。この設定例の場合、1回のR-TWT SPの設定で、同じデータ量を再送できるようにするために、本来必要なR-TWT SPの期間を倍増させて設定した例として示してある。
【0034】
ここでは、送信側通信装置10Txが下り方向のRTAデータ(DL RTA Data)を所定のアクセス手順によって送信を実施するとともに、その受領確認を受信側通信装置10RxからブロックACKフレーム(BA)により返送するとともに、これらのRTAデータの全てが未達となるケースを想定して、同様のRTAデータの再送フレームとブロックACKフレームが返送されるに十分な時間が確保されている。しかしながら、これらの再送が行われない場合は、冗長に確保したR-TWT SPの時間が無駄になってしまうことから、必要に応じてCF-END(Contention Free-END)フレームなどを利用してその期間を開放する必要があった。
【0035】
図8は、従来技術によるアップリンク(UL:Uplink)のR-TWT SPの設定例を示した図である。図8は、図6と同様に記載されていることから、重複する説明は適宜省略する。図8では、1回のR-TWT SPにおいて、所定のRTAデータを送信可能な時間を、破線で表した期間P1で示している。図8においては、アップリンクであるため、ダウンリンクと逆に、アクセスポイント(AP)が受信側通信装置10Rxとなり、通信端末(STA)が送信側通信装置10Txとなる。
【0036】
ここでは、アクセスポイント(AP)から、所定のトリガフレーム(UL RTA Trigger)を送信することで、送信側通信装置10Txとなる通信端末(STA)が上り方向(UL)のRTAデータ(UL RTA Data)を所定のアクセス手順によって送信を実施するとともに、その受領確認を受信側通信装置10Rxとなるアクセスポイント(AP)からブロックACKフレーム(BA)により返送する構成になっている。ここでは、後述の図9に示す、R-TWT SPの再送を含んだ冗長な時間を、一点鎖線で表した期間P2で便宜上示している。
【0037】
図9は、従来技術によるアップリンクのR-TWT SPの設定例の変形例を示した図である。図9は、図8と同様に記載されていることから、重複する説明は省略する。図9においては、1回のR-TWT SPにおいて、再送する冗長な時間を含んで設定された例を示しており、1回のR-TWT SPにおいて、所定のRTAデータを送信可能な時間を、一点鎖線で示した期間P2で示している。この設定例の場合、1回のR-TWT SPの設定で、同じデータ量を再送できるようにするために、本来必要なR-TWT SPの期間を倍増させて設定した例として示してある。
【0038】
ここでは、アクセスポイント(AP)から、所定のトリガフレームを送信することで、これに応じて送信側通信装置10Txとなる通信端末(STA)が上り方向RTAデータ(UL RTA Data)を所定のアクセス手順によって送信を実施するとともに、その受領確認を受信側通信装置10Rxとなるアクセスポイント(AP)からブロックACKフレーム(BA)により返送するとともに、これらのRTAデータの全てが未達となるケースを想定して、同様のRTAデータの再送フレームとブロックACKフレームが返送されるに十分な時間が確保されている。しかしながら、これらの再送が行われない場合は、冗長に確保したR-TWT SPの時間が無駄になってしまうことから、必要に応じてCF-ENDフレームなどを利用してその期間を開放する必要があった。
【0039】
以上のように、従来の動作では、未達データの再送を行う場合に、伝送路を効率的に利用することができず、結果として、未達データが存在するときにRTAデータをアプリケーション機器に出力するまでに大きな遅延が生じていた。本開示の動作では、未達データの再送を行う場合に、伝送路の利用効率を向上させるようにする。これにより、本開示では、未達データが存在するときでも、RTAデータをアプリケーション機器に出力するまでの遅延を抑制することができる。以下、本開示の構成を説明する。
【0040】
<本開示の動作>
図10は、本開示によるRTAデータのアプリケーションの出力シーケンスの例を示した図である。図10のシーケンス図においては、図5のシーケンス図と同様に、図中の上側から下側に向かって順次時間が経過する構成としてあり、図中の左側の送信側通信装置10Txのアプリケーションから、ほぼ定期的に所定のRTAデータが届く場合に、無線伝送路を通じてデータが送信されたときに、図中の右側の受信側通信装置10Rxのアプリケーションに、受信したRTAデータを出力する流れを示している。
【0041】
つまり、送信側通信装置10Txは、ほぼ周期的に設定されたR-TWT SPの期間に、RTAデータをまとめて送信する構成となっており、ここでは、RTAデータ#1~#3を1回目のR-TWT SPを利用して送信している。このとき、RTAデータ#3が受信側通信装置10Rxに正しく届かなかった場合には、その状況が、例えばブロックACKフレーム(BA)を介して、送信側通信装置10Txに返送される。なお、受信側通信装置10Rxでは、RTAデータに対し、未達データが発生したときに遅延が生じない程度の遅延量(初期遅延)を設定して、アプリケーションに出力タイミングを調整して出力することができる。
【0042】
ここで、図5で示した従来の動作と異なり、本開示の動作では、図10に示すように、RTAデータの再送を、R-TWT SPの中で実施する前に、他のデータを送信するSPの期間外を用いて、即座に再送を実施する構成としている。つまり、未達データとしてRTAデータ#3の存在を確認した場合に、送信側通信装置10Txは、その未達となるRTAデータ#3を即座に再送する。なお、ここでは、必要に応じてブロックACKフレームの返送をもって、受領を確認する構成としてもよい。送信側通信装置10Txでは、次のR-TWT SPにおいて所望のRTAデータ#4~#7を送信する構成になっている。
【0043】
さらに、ここでは、RTAデータ#6, #7が受信側通信装置10Rxに正しく届かなかった場合には、その状況が、例えばブロックACKフレームを介して、送信側通信装置10Txに返送される。この場合でも、RTAデータの再送を、他のデータを送信するSPの期間外を用いて、即座に再送を実施する構成としており、例えば、未達データであるRTAデータ#6, #7を再送する構成としてある。
【0044】
この場合、受信側通信装置10Rxでは、RTAデータ#5までのデータが遅延なく届けられる状態にあるものの、未達となったRTAデータ#6についても、即座に再送されることから、図中の矢印D2で示すように、接続されるアプリケーション機器に影響が少ない若干の遅延をもってデータが届けられる構成となっている。つまり、次のR-TWT SPが到来するまでに、前回のR-TWT SPで収集すべき全てのデータを届いた状態にすることで、受信側通信装置10Rxでは、接続されるアプリケーション機器に遅延なく出力させることが可能となる。さらに、接続されるアプリケーション機器には、それに続くRTAデータ#7も連続して出力されることで、一旦生じた出力遅延が、時間の経過とともに回復する構成になっている。これにより、リアルタイムアプリケーションに適したデータの再送方式(再送方法)が得られる。
【0045】
図11は、本開示によるダウンリンクのR-TWT SPの設定例を示した図である。図11においては、図11のAで示す上段にアクセスポイント(AP)を送信側通信装置10Txとして、図11のBで示す下段に通信端末(STA)を受信側通信装置10Rxとした例において、図中の左側から右側に進むにつれて時間が経過する図として示している。また、図11のA,Bでは、時間方向に対応した時間軸に対し、送信する信号を上に凸の状態で、受信する信号を下に凸の状態として示しており、所望のRTAデータを通信するために必要なR-TWT SPの時間を破線で示している。
【0046】
つまり、1回のR-TWT SPにおいて、所定のRTAデータを送信可能な時間を、破線で表した期間P1で示している。ここでは、アクセスポイント(AP)から、送信側通信装置10Txが下り方向RTAデータ(DL RTA Data)を所定のアクセス手順によって送信を実施するとともに、その受領確認を受信側通信装置10RxからブロックACKフレーム(BA)により返送する構成になっている。
【0047】
この例の場合、未達のデータが存在した場合に、そのR-TWT SPの期間外のタイミングを用いて、未達データを再送する構成になっており、必要に応じてブロックACKフレーム(BA)の返送を受けて、再度、未達データの存在を確認する構成としてある。そして、未達となったデータが存在した場合に、そのデータ(Resend DL RTA Data)をR-TWT SPの期間外に所定のアクセス手順によって、即座に再送する構成としてある。また、R-TWT SPの期間外のタイミングでは、他の一般データ(Normal Data)の送信も可能となっているため、これらのデータの需要の有無に応じて、RTAデータの再送の可否を可否してもよい。
【0048】
図12は、本開示によるアップリンクのR-TWT SPの設定例を示した図である。図12は、図11と同様に記載されていることから、重複する説明は適宜省略する。図12では、1回のR-TWT SPにおいて、所定のRTAデータを送信可能な時間を、破線で表した期間P1で示している。
【0049】
ここでは、アクセスポイント(AP)から、所定のトリガフレーム(UL RTA Trigger)を送信することで、送信側通信装置10Txとなる通信端末(STA)が上り方向RTAデータ(UL RTA Data)を所定のアクセス手順によって送信を実施するとともに、その受領確認を受信側通信装置10Rxとなるアクセスポイント(AP)からブロックACKフレーム(BA)と、RTAデータの再送のためのトリガフレーム(RT:Resend UL RTA Trigger)を返送する構成になっている。
【0050】
そして、送信側通信装置10Txとなる通信端末(STA)では、これらRTAデータの再送を要求された場合には、R-TWT SPの期間外のタイミングで、その未達データを再送する(Resend UL RTA Data)。さらに、必要に応じて、受信側通信装置10Rxとなるアクセスポイント(AP)では、ブロックACKフレームを返送する。このとき、再送の必要がなければ、再送のトリガフレーム(RT)は送信されない。また、これらのタイミングでは、他の一般データ(Normal Data)の送信も可能となっており、伝送路を有効に活用する構成が得られる。
【0051】
図13は、R-TWT SPを利用してRTAデータを送信する場合のバッファの構成例を示した図である。図13においては、従来からの主たるアクセスカテゴリ(AC:Access Category)ごとに、それぞれバッファを構成するものに加えて、リアルタイムアプリケーション(RTA)向けのバッファを設けた構成としている。あるいは、従来の最優先バッファであったVoiceをRTA向けデータのバッファとして流用して、従来のVideo向けデータのバッファをVoice及びVideo向けのデータバッファとして構成してもよい。
【0052】
<無線通信装置の構成例>
図14は、本開示を適用した無線通信装置の構成例を示したブロック図である。図14において、無線通信装置10は、ネットワークモジュール11、入力モジュール12、制御モジュール13、出力モジュール14、及び無線通信モジュール15から構成される。
【0053】
ネットワークモジュール11は、制御モジュール13からの制御に従い、インターネット接続に関する各種処理を行う。例えば、ネットワークモジュール11は、アクセスポイント(AP)として動作する場合に、インターネット網へ接続するための通信モデム等の機能が実装される構成になっていて、公衆通信回線とインターネットサービスプロバイダを介してインターネット接続を実施する構成になっている。
【0054】
入力モジュール12は、ユーザからの指示に対応する指示情報を、制御モジュール13に入力する機能を有する。入力モジュール12は、例えば、押しボタンやキーボード、タッチパネル等の入力デバイスで構成される。
【0055】
制御モジュール13は、無線通信装置10をアクセスポイント(AP)又は通信端末(STA)として動作させるために各部(モジュール)を制御する。制御モジュール13は、各部(モジュール)と必要な情報(データ)をやり取りする。制御モジュール13は、例えば、マイクロプロセッサやマイクロコントローラ等の制御装置、半導体メモリ等の記憶装置などで構成される。
【0056】
出力モジュール14は、制御モジュール13から供給される情報に基づき、ユーザに対して必要な情報を表示する機能を有する。ここで、出力モジュール14により表示や通知される情報には、例えば、無線通信装置10の動作状態やインターネット網を介して得られる情報などが含まれる。出力モジュール14は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)表示器などの表示素子や、音声や音楽を出力するスピーカなどを含む出力デバイスで構成される。
【0057】
無線通信モジュール15は、制御モジュール13からの制御に従い、無線通信に関する各種処理を行う。無線通信モジュール15は、例えば、無線通信チップや周辺回路、マイクロコントローラ等の制御装置、半導体メモリ等の記憶装置などから構成される。無線通信モジュール15の構成の詳細は、図15を参照して後述する。
【0058】
図14においては、ネットワークモジュール11、制御モジュール13、及び無線通信モジュール15により制御部21が構成され、入力モジュール12により入力部22が構成され、出力モジュール14により出力部23が構成される。出力部23は、リアルタイムアプリケーションが動作するアプリケーション機器を含み、アプリケーション機器はディスプレイなどで構成される。アプリケーション機器は、制御部21により制御される。制御部21を、本開示を適用した無線通信装置と捉えてもよい。つまり、本開示を適用した無線通信装置は、制御部21を備え、入力部22と出力部23に接続される構成としてもよい。
【0059】
なお、無線通信装置10において、制御モジュール13及び無線通信モジュール15は、必須の構成要素となるが、それらを除いたネットワークモジュール11、入力モジュール12、及び出力モジュール14を構成要素に含めるかどうかは任意である。すなわち、アクセスポイント(AP)又は通信端末(STA)として動作する無線通信装置10ごとに、必要とされるモジュールのみで構成することができ、不要な部分は簡素化されるか、又は組み込まれない構成としてもよい。例えば、図14の無線通信装置10において、ネットワークモジュール11は、アクセスポイント(AP)にのみ組み込まれ、入力モジュール12や出力モジュール14は、通信端末(STA)にのみ組み込まれてもよい。無線通信モジュール15において、アンテナを含めるかどうかは任意である。図14に示した無線通信装置10は、データ送信側の送信側通信装置10Txと、データ受信側の受信側通信装置10Rxの双方に対応している。
【0060】
図15は、図14の無線通信モジュール15の構成例を示したブロック図である。無線通信モジュール15は、他のモジュールと接続され、各種の情報やデータをやり取りするインターフェース101と、送信するデータを一時的に格納する送信バッファ102と、本開示による一連のリアルタイムアプリ―ケーション(RTA)のデータ(RTAデータ)を管理するRTAデータ管理103と、所定のタイミングでデータフレーム(例えば、後述の図21のRTAデータフレーム)を構築するデータフレーム構築部104とを含んで構成される。
【0061】
無線通信モジュール15は、RTAデータを周期的に送信する送信機会(TXOP:Transmit Opportunity)を管理する送信機会制御部105と、ブロックACKフレーム(例えば、後述の図23のRTAブロックACKフレーム)や、トリガフレーム(例えば、後述の図20のRTAトリガフレーム)等の制御フレームを構築する制御フレーム設定部106を含んで構成される。さらに、無線通信モジュール15は、送信するデータの符号化処理を実施する送信信号処理部107と、フレームの送信に必要なアクセス制御を実施するアクセス制御部108と、送信信号処理部107からの送信信号を無線信号として送信するアンテナ部109を含んで構成される。ここでは、アクセス制御部108の制御に基づいて、RTAデータの送信制御が行なわれる構成になっており、伝送路の状況を逐次監視して利用できる構成になっている。
【0062】
さらに、無線通信モジュール15は、アンテナ部109を介して無線信号として受信した受信信号からフレームとして構成される情報を抽出する受信信号処理部110と、受信信号処理部110で抽出された個々のフレームからトリガフレームやブロックACKフレームに含まれている情報を抽出する制御フレーム判定部111と、受信したデータフレームからRTAデータ等のデータを抽出するデータフレーム解析部112とを含んで構成される。そして、無線通信モジュール15は、受信したRTAデータを接続されるアプリケーション機器に向けて出力するタイミングを制御するRTAデータ出力タイミング制御部113と、受信したデータを一時的に格納する受信バッファ114とをさらに含んで構成される。
【0063】
なお、図15に示した構成において、各ブロック間の矢印は、データ(信号)の流れや制御を表しており、各ブロックは、自己の機能を実現するために、矢印で接続された他のブロックと協働して動作する。例えば、RTAデータ管理103は、本開示による一連のRTAデータを管理する機能を実現するために、送信機会制御部105、及びRTAデータ出力タイミング制御部113のそれぞれと協働して動作する。また、RTAデータ出力タイミング制御部113は、RTAデータをアプリケーション機器に出力するタイミングを制御する機能を実現するために、RTAデータ管理103、送信機会制御部105、及びデータフレーム解析部112のそれぞれと協働して動作する。
【0064】
<シーケンスの例>
図16は、RTAデータ交換のセットアップ要求フレームの交換シーケンスの第1の例を示した図である。図16の交換シーケンスは、送信側通信装置10Txから受信側通信装置10Rxに、RTAデータに関するパラメータを交換する場合に、例えばR-TWTのサービス期間(SP)の設定や、再送方式などを互いに通知するために用いられるパラメータを、双方の無線通信装置で事前に交換するために利用される。
【0065】
図16の例では、まず、送信側通信装置10Txが要求するパラメータを通知し、受信側通信装置10Rxがその要求に基づいて、合意可能なパラメータを返送することで、双方で合意したRTAデータの送受信に関するパラメータを双方で設定する構成になっている。
【0066】
まず、送信側通信装置10Txから、RTAデータの送信に関するパラメータのセットアップ要求(Real Time Parameter Setup Request)が送信される(S11)。そして、そのセットアップ要求を受信した受信側通信装置10Rxでは、そこに記載されているパラメータを取得して、受信に関するパラメータの応答を記載したセットアップ応答(Real Time Parameter Response)が返送される(S12)。このようにして、双方の通信装置で合意したパラメータに基づいて、R-TWTのサービス期間(SP)の設定周期や、持続時間が設定され、さらに本開示によるRTAデータの再送にかかる動作についての合意がなされる構成になっている。
【0067】
図17は、RTAデータ交換のセットアップ要求フレームの交換シーケンスの第2の例を示した図である。図17の交換シーケンスは、図16の交換シーケンスとは逆に、受信側通信装置10Rxから送信側通信装置10Txに、RTAデータに関するパラメータを交換する場合に、例えばR-TWTのサービス期間(SP)の設定や、再送方式などを互いに通知するために用いられるパラメータを、双方の無線通信装置で事前に交換するために利用される。
【0068】
まず、受信側通信装置10Rxから、RTAデータの送信に関するパラメータのセットアップ要求(Real Time Parameter Setup Request)が送信される(S21)。そして、そのセットアップ要求を受信した送信側通信装置10Txでは、そこに記載されているパラメータを取得して、送信に関するパラメータの応答を記載したセットアップ応答(Real Time Parameter Response)が返送される(S22)。このようにして、双方の通信装置で合意したパラメータに基づいて、R-TWTのサービス期間(SP)の設定周期や、持続時間が設定され、さらに本開示によるRTAデータの再送にかかる動作についての合意がなされる構成になっている。
【0069】
<フレーム構成>
図18は、本開示によるRTAデータのアクセス制御パラメータのセットアップ要求エレメントの構成を示した図である。このセットアップ要求エレメントは、情報エレメントの一種として構成されていて、例えばアソシエーション時に交換されるようにしてもよく、あるいは任意のタイミングで交換できるように、アクションフレームの一部として構成されてもよい。
【0070】
図18に示すように、RTAデータのアクセス制御パラメータのセットアップ要求エレメントは、エレメントの形式を示すElement ID, エレメントの情報長を示すLength, 実際のRTAデータのアクセス制御パラメータから構成されるRTA Access Control Setup Element, 必要に応じて付加される誤り検出符号であるCRC(Cyclic Redundancy Check)から構成される。
【0071】
セットアップ要求エレメントにおいて、RTA Access Control Setup Elementの内容は、要求する側の通信装置が希望するパラメータを記載して送信し、応答する側の通信装置のほうで同意を得たパラメータを最終的に決定する構成になっている。
【0072】
図18に示すように、RTA Access Control Setup Elementは、予約の設定方法を示すReservation Type, RTAデータを個別に識別するトラフィック識別子を示すTID, 予約の開始時刻を示すReservation Start Time, 予約する持続時間を示すReserve Duration, 予約の間隔を示すReserve Interval, バッファのサイズを示すBuffer Size, バッファのキューサイズを示すQueue Size, 出力の遅延量を示すOutput Delay, 受領確認の方法としてブロックACKの返送の要否を示すACK Policy, データの再送方式を示すRTA Resendなどのパラメータから構成される。Output Delayには、本開示によるRTAデータのアプリケーション機器への許容される遅延量が記載される。RTA Resendには、本開示によるRTAデータの再送方式が記載される。
【0073】
図19は、本開示によるRTAデータのアクセス制御パラメータのセットアップ応答エレメントの構成を示した図である。このセットアップ応答エレメントは、情報エレメントの一種として構成されていて、例えばアソシエーション時に交換されるようにしてもよく、あるいは任意のタイミングで交換できるように、アクションフレームの一部として構成されてもよく、セットアップ要求エレメントとして送られてきた方法に対する応答として返送する構成とされている。
【0074】
図19に示すように、RTAデータのアクセス制御パラメータのセットアップ応答エレメントは、エレメントの形式を示すElement ID, エレメントの情報長を示すLength, 実際のRTAデータのアクセス制御パラメータから構成されるRTA Access Control Setup Element, 必要に応じて付加される誤り検出符号であるCRCから構成される。
【0075】
セットアップ応答エレメントにおいて、RTA Access Control Setup Elementの内容は、要求する側の通信装置から希望するパラメータが記載されたフレームを受信し、これらのパラメータから応答する側の通信装置のほうで対応可能なパラメータを最終的に決定して、応答フレームとして返送する構成になっている。
【0076】
図19に示すように、RTA Access Control Setup Elementは、予約の設定方法を示すReservation Type, RTAデータを個別に識別するトラフィック識別子を示すTID, 予約の開始時刻を示すReservation Start Time, 予約する持続時間を示すReserve Duration, 予約の間隔を示すReserve Interval, バッファのサイズを示すBuffer Size, バッファのキューサイズを示すQueue Size, 出力の遅延量を示すOutput Delay, ブロックACKの返送の要否を示すACK Policy, データの再送方式を示すRTA Resendなどのパラメータから構成される。Output Delayには、本開示によるRTAデータのアプリケーション機器への許容される遅延量が記載される。RTA Resendには、本開示によるRTAデータの再送方式が記載される。
【0077】
図20は、本開示によるトリガフレーム(以下、RTAトリガフレームともいう)の構成例を示した図である。本開示では、RTAデータに特化したトリガフレームの構成として、再送方式を記載して送信することで、例えば、上り方向(UL)のRTAデータ(UL RTA Data)の送信にかかる再送方式を通知することができる構成としてある。例えばR-TWT SPなどで送信機会(TXOP)を獲得した場合に、低遅延のRTAデータの送受信をするとき、このRTAトリガフレームによって、RTAデータに指定されたトラフィック識別子(TID)に紐づいた送信側通信装置10Txからの送信が、例えばアソシエーション識別子(AID:Association Identifier)によって指定される。
【0078】
図20に示すように、RTAトリガフレームは、所定のフレーム形式を示すFrame Control, 持続時間を示すDuration, 受信アドレス情報を示すRA(Receive Address), 送信アドレス情報を示すTA(Transmit Address), トリガフレームの共通の情報を示すCommon Info, トリガフレームにおいてユーザごとの個別情報を示すUser Info List, 必要に応じて付加されるPadding, 誤り検出のためのフレームチェックシーケンス(Frame Check Sequence)であるFCSから構成される。
【0079】
User Info Listは、ユーザごとにUser Infoが記載される構成になっており、そのUser Infoは、対象となる通信装置を認識するAID12, 通信に利用するリソースユニットを示すRU Allocation, アップリンク通信のコーディング形式を示すUL FEC Coding Type, アップリンク通信の符号化スキームを示すUL HE-MCS, UL-DMC, 空間多重割当てやランダムアクセスリソースユニットを示すSS Allocation / RA-RU Info, アップリンクターゲットの受信電力を示すUL Target Receive Powerなどから構成される。これに、将来の拡張のための予約を示すReservedが確保されており、さらに、トリガに依存したユーザ情報としてTrigger Dependent User Infoが必要に応じて付加されて構成される。
【0080】
図20においては、RTAトリガフレームのUser Infoの構成として、本開示によるRTAデータの再送方式を記載するRTA Resendが新たに設定されている。つまり、RTA Resendに記載するパラメータによって、RTAデータの再送の有無を通知できる構成になっている。また、図20には、RTAトリガフレームのCommon Infoの構成についても示している。
【0081】
図21は、本開示によるデータフレーム(以下、RTAデータフレームともいう)の構成例を示した図である。図21においては、RTAデータフレームのヘッダ情報を用いて、RTAデータの再送方式を通知する構成としている。具体的には、アグリゲートしたMPDU(MAC Protocol Data Unit)であるA-MPDU(Aggregate-MPDU)のフレーム構成として、そのうちの特定のMPDUデータにおいて、RTAデータの再送方式に関する情報が記載されている構成になっている。
【0082】
図21に示すように、A-MPDUは、複数のMPDUがそれぞれデリミタ(D:Delimiter)を介して連続的に送信される構成になっている。本開示では、A-MPDUを構成するサブフレームとなるMPDUのMACヘッダ部分にあるQoS Controlの部分に、RTA Resendフラグを設定し、当該RTA Resendフラグが立っている場合には、MACヘッダに続くRTA MPDUの再送を実施するようになっている。つまり、再送が必要なRTAデータが含まれている場合に、このビットが設定されており、このビットが設定されていなければ、再送の必要がないRTAデータであると認識できる。そして、このMPDUに誤りが存在するか判定するために、FCSがMPDUに付加されている。このような構成により、無用なRTAデータの再送を未然に防ぐことで、トラフィックを他のデータ伝送に利用させることができる。
【0083】
図22は、本開示によるデータフレームのデリミタの構成例を示した図である。図22においては、RTAデータフレームのデリミタ情報を用いて、再送方式を通知する構成としている。具体的には、図21に示したMACヘッダに記載されたRTA Resend情報の代わり、若しくは併用して、A-MPDUのデリミタ(D)の特定のビットを用いて、再送方式を通知する構成になっている。
【0084】
図22に示すように、デリミタの中にRTA Resendフラグを設定し、当該RTA Resendフラグが立っている場合は、RTAデータの再送を実施するようになっている。このようなデリミタを利用した再送方式の通知方法の場合には、MACヘッダ部分にビット誤りが生じてしまい、末尾のFCSが正しく復号されない場合においても、そのリスクを回避し得る方法が得られる。
【0085】
図23は、本開示によるブロックACKフレーム(以下、RTAブロックACKフレームともいう)の構成例を示した図である。図23において、RTAブロックACKフレームは、従来からのブロックACKフレームと互換性を保つために類似した構成としてある。図23に示すように、RTAブロックACKフレームは、所定のフレームの種別を示すFrame Type, フレームの持続時間を示すDuration, 受信側通信装置を識別するアドレス情報を示すRA, 送信側通信装置を識別するアドレス情報を示すTA, ブロックACKフレームの制御パラメータが記載されたBA Control, 再送すべきデータを特定し得るシーケンス番号情報が記載されたBA Informationに、フレームの誤り検出のためのFCSから構成される。
【0086】
図23に示すように、RTAブロックACKフレームは、BA ControlのRTA Resend Requestのビットが設定されている場合は、再送が必要なRTAデータを特定(識別)し得る情報が、以下のBA Informationに記載されていることを示している。BA Information、再送を求める最初のシーケンス番号を示すResend RTA Data Starting Sequence Number, 次のR-TWT SPにおいて送信されるシーケンス番号を示すNext Sequence Number, 再送が必要なシーケンス番号をビットマップ形式で記載したResend Request Sequence Bitmapから構成される。
【0087】
つまり、アプリケーション機器に出力するタイミングに猶予がある場合は、再送すべきRTAデータを特定して再送を求めることができる。他方、アプリケーション機器に出力するタイミングに猶予がない場合には、再送が不要なデータとして扱い、無駄な再送を未然に防ぐ方法が得られる。これにより、RTAブロックACKフレームを受信した送信側通信装置10Txは、再送が必要なRTAデータをこのブロックACKフレームから特定し得る構成になっている。なお、受信側通信装置では、R-TWT SPの期間外に未達のRTAデータの再送を実施するトラフィック識別子(TID)を含んだフレームを受信した場合に、RTAブロックACKフレームを送信する構成としても構わない。
【0088】
<セットアップ情報交換の流れ>
図24図25のフローチャートを参照して、RTAパラメータのセットアップ情報の交換処理の流れを説明する。図24図25においては、セットアップを要求する無線通信装置10又はセットアップに応答する無線通信装置10の双方が動作するように、1つのフローチャートとして記載してある。
【0089】
まず、双方の無線通信装置10では、RTAデータ向けのパラメータを取得する(S101)。また、双方の無線通信装置10では、RTAデータのセットアップが必要であるか否かを判定し(S102)、セットアップが必要となる無線通信装置10では、以降のステップS103乃至S107の処理が行われる。すなわち、対象の無線通信装置10は、所定の時間当たりの送信可能な情報量や、最大許容遅延の情報、RTAデータに利用できるバッファの容量などから、要求するRTAパラメータを算出する(S103)。
【0090】
また、対象の無線通信装置10は、周期的に送信機会(TXOP)として確保が求められるR-TWT SPの間隔(Interval)を算出し(S104)、併せて1回のR-TWT SPにおける送信機会(TXOP)として、確保しておくべき持続時間(Duration)を算出する(S105)。対象の無線通信装置10は、算出した要求パラメータを記載したRTAセットアップリクエストフレーム(例えば、図18のセットアップ要求エレメントを含むフレーム)を構築して、相手側の無線通信装置10に送信する(S106)。なお、対象の無線通信装置10は、自己がRTAデータを送信する送信側通信装置10Txとして動作する場合に限らず、RTAデータを受信する受信側通信装置10Rxとして動作する場合でも、セットアップ要求を送信できる構成としてもよい。
【0091】
そして、対象の無線通信装置10は、相手側の無線通信装置10からRTAセットアップレスポンスフレーム(例えば、図19のセットアップ応答エレメントを含むフレーム)を受信した場合(S107:Yes)、相手側の無線通信装置10が設定可能なパラメータを読み出して、それを合意の取れたRTAリザベーションパラメータとして設定する(S108)。ステップS108の処理が終了すると、一連の処理は終了する。一方で、所定の応答時間までにRTAセットアップレスポンスフレームを受信しなかった場合、処理はステップS102に戻って、対象の無線通信装置10は、再度パラメータの要求設定を見直して、RTAセットアップリクエストフレームを再送するようにしてもよい。
【0092】
他方、ステップS102の判定で、セットアップ要求を出さないと判定した場合、処理は図25のステップS109に進められる。そして、対象の無線通信装置10は、相手側の無線通信装置10からRTAセットアップリクエストフレームを受信した場合(S109:Yes)、当該フレームに記載されているRTAパラメータを取得する(S110)。ここで取得されるRTAパラメータは、相手側の無線通信装置10が要求するRTAパラメータとなる。対象の無線通信装置10は、当該フレームから取得したRTAパラメータと、自己のRTAパラメータに基づいて、RTAパラメータの設定が可能かどうかを判定する(S111)。
【0093】
RTAパラメータの設定が可能であると判定した場合(S111:Yes)、対象の無線通信装置10では、以降のステップS112乃至S115の処理が行われる。すなわち、対象の無線通信装置10は、周期的に送信機会(TXOP)として確保が必要なR-TWT SPの間隔(Interval)を設定し(S112)、併せて1回の送信機会(TXOP)で処理できる持続時間(Duration)を設定する(S113)。対象の無線通信装置10は、設定した応答パラメータを記載したRTAセットアップレスポンスフレームを構築して、相手側の無線通信装置10に送信する(S114)。また、対象の無線通信装置10は、当該パラメータを合意の取れたRTAリザベーションパラメータとして設定する(S115)。ステップS115の処理が終了すると、一連の処理は終了する。なお、RTAセットアップリクエストフレームを受信しない場合(S109:No)、あるいは、RTAパラメータの設定が不可能であると判定した場合(S111:No)には、処理を抜けて一連の処理は終了する。このセットアップ情報交換を行うことで、R-TWT SPとして、RTAデータに対して必要最低限の送信機会(TXOP)となるサービス期間(SP)を設定することができる。
【0094】
<送信処理の流れ>
図26図27のフローチャートを参照して、送信側通信装置10Txによる送信処理の流れを説明する。
【0095】
送信側通信装置10Txは、定常的に動作するR-TWT SPの期間内であるかどうかを判定する(S201)。送信側通信装置10Txでは、R-TWT SPの期間内であると判定した場合(S201:Yes)に、伝送路がアイドル(Idle)状態で利用可能であると判定したとき(S202:Yes)、以降のステップS203乃至S208の処理が行われる。
【0096】
すなわち、送信側通信装置10Txは、R-TWT SPの残り時間を取得し(S203)、RTAデータを取得する(S204)。また、送信側通信装置10Txは、受信側通信装置10RxにおけるRTAデータの出力タイミングパラメータを取得し(S205)、RTAデータの再送が可能であると判定した場合(S206:Yes)には、再送可能パラメータを設定する(S207)。ここでは、RTAデータを送信した後に、未達となっても再送を実施してリカバリするタイミングに余裕がある場合には、RTAデータの再送が可能であると判定して、再送可能パラメータを示すフラグを、例えばヘッダ情報として設定することができる。なお、RTAデータの再送が可能ではないと判定した場合(S206:No)には、再送可能パラメータの設定はスキップされる。そして、送信側通信装置10Txは、RTAデータフレーム(図21)を送信する(S208)。ステップS208の処理が終了すると、処理はステップS201に戻る。このように、送信側通信装置10Txは、R-TWT SPの期間内に、その時点で取得しているRTAデータを送信することができる。
【0097】
ステップS202の判定で、伝送路がアイドル状態でなく利用可能でないと判定した場合(S202:No)、処理は図27のステップS209に進められる。送信側通信装置10Txは、RTAデータフレームを送信した後に、受信側通信装置10RxからRTAブロックACKフレーム(図23)を受信したとき(S209:Yes)、当該フレームに記載されているACKパラメータを取得する(S210)。送信側通信装置10Txは、ACKパラメータを参照して、未達データがないと判定した場合(S211:No)には、処理を抜けて一連の処理を終了する。一方で、未達データがあると判定した場合(S211:Yes)には、以降のステップS212乃至S215の処理が行われる。未達データは、送信したRTAデータの中で未達となったRTAデータである。例えば、送信側通信装置10Txは、事前に通知されたIDの中で、受信側通信装置10Rxが受信できなかったIDのデータや、連続で受信すべきデータの中で欠落したデータを特定することで、未達データがあるかどうかを判定することができる。
【0098】
すなわち、送信側通信装置10Txは、ACKパラメータに記載されている再送すべきRTAデータについて、受信側通信装置10Rxにおける出力タイミングパラメータを取得し(S212)、その出力タイミングに時間的な猶予があるかどうかを判定する(S213)。そして、送信側通信装置10Txは、その出力タイミングに猶予があると判定した場合(S213:Yes)、再送すべきRTAデータを取得し(S214)、取得したRTAデータについてR-TWT SPの期間外での再送に関する処理を行い(S215)、R-TWT SPの期間外に、再送すべきRTAデータを含むRTAデータフレームを送信する(S208)。つまり、送信側通信装置10Txは、受信側通信装置10Rxにおける出力タイミングに応じて、所定の遅延が許容される時間内となる期間(R-TWT SPの期間外の期間)に、未達のRTAデータを再送することができる。なお、ここでは、再送すべきRTAデータをR-TWT SPの期間外に再送するとしたが、送信機会として確保されていたR-TWT-SPの終了時間を延長して、その延長した期間に当該RTAデータを再送すると捉えてもよい。
【0099】
他方、出力タイミングに猶予がないと判定した場合(S213:No)には、再送すべきRTAデータを取得せずに処理を抜けて、処理は図26のステップS201に戻る。一方で、RTAブロックACKフレームを受信しない場合(S209:No)に、他のフレームを受信したとき(S216:Yes)、当該他のフレームの受信処理が行われる(S217)。例えば、自己宛てのデータフレームを受信した場合には、当該データフレームの受信処理を実施する。つまり、送信側通信装置10Txでは、R-TWT SPの期間に、相手となる受信側通信装置10Rxから、例えばRTAデータのトリガフレームを受信した場合には、その要求に応じてRTAデータを送信するように動作するとともに、他の無線通信装置から自己宛てのデータフレームを受信した場合にも、そのデータを受信するように動作することができる。
【0100】
ステップS217の処理が終了するか、あるいは他のフレームの受信がない場合(S216:No)、処理は図26のステップS201に戻る。そして、R-TWT SPの期間が続くまで一連の動作を繰り返す構成になっている。
【0101】
<受信処理の流れ>
図28図29のフローチャートを参照して、受信側通信装置10Rxによる受信処理の流れを説明する。
【0102】
受信側通信装置10Rxは、送信側通信装置10Txから送信されてくる自己宛てのRTAデータフレームを受信した場合(S301:Yes)に、受信できたRTAデータを取得する(S302)。受信側通信装置10Rxは、ACKフレームの返送要求があるかどうかを判定し(S303)、ACKフレームを返送する必要があると判定した場合(S303:Yes)には、ACKパラメータを記載したACKフレームを構築する(S304)。さらに、受信側通信装置10Rxは、送信側通信装置10Txから送信されたRTAデータにエラーがあるかどうかを判定し(S305)、RTAデータにエラーが含まれていたと判定した場合(S305:Yes)には、その未達データを特定し(S306)、接続されるアプリケーション機器に出力すべきタイミングのパラメータを取得する(S307)。
【0103】
そして、受信側通信装置10Rxは、出力タイミングに時間的な猶予があるかどうかを判定し(S308)、出力タイミングに猶予がないと判定した場合(S308:No)、処理は図29のステップS313に進められる。あるいは、RTAデータにエラーが含まれていないと判定した場合(S305:No)にも、処理は図29のステップS313に進められる。この場合、受信側通信装置10Rxは、構築したACKフレームをそのまま応答フレームとして送信する(S313)。一方で、出力タイミングに猶予があると判定した場合(S308:Yes)、処理は図29のステップS309に進められる。つまり、受信側通信装置10Rxでは、出力タイミングに猶予がある場合には、RTAデータの再送が可能であると判断し、必要に応じてRTAデータの再送要求を設定し(S309)、R-TWT SPの残り時間を取得する(S310)。
【0104】
受信側通信装置10Rxは、R-TWT SPの残り時間に基づき、R-TWT SPの期間を超過したかどうかを判定し(S311)、R-TWT SPの期間を超過したと判定した場合(S311:Yes)、R-TWT SPの期間外での再送に関する処理を行う(S312)。そして、受信側通信装置10Rxは、応答フレームとしてRTAブロックACKフレーム(図23)を送信する(S313)。例えば、未達データが特定されて出力タイミングに猶予がある場合には、R-TWT SPの期間を超過したときに(R-TWT SPの期間外に)、送信側通信装置10Txにより未達のRTAデータの再送が行われるため、受信側通信装置10Rxでは、R-TWT SPの期間外に再送されるRTAデータを受信する処理が行われることになる。なお、送信機会として確保されていたR-TWT-SPの終了時間を延長して当該RTAデータを再送すると捉える場合には、R-TWT SPの残り時間が再送を終了する時間に満たないときに、R-TWT SPの持続時間の延長し、その終了時刻を延長して応答フレームとしてRTAブロックACKフレームを送信すればよい。R-TWT SPの期間を超過していないと判定した場合(R-TWT SPの延長が必要ないと判定した場合)にも、RTAブロックACKフレームが応答フレームとして送信される(S313)。
【0105】
他方、ステップS301の判定で、RTAデータフレームを受信していない場合(S301:No)、処理は図29のステップS314に進められる。受信側通信装置10Rxは、R-TWT SPの期間の範囲を超過したかどうかを判定し(S314)、R-TWT SPの期間の範囲を超過していると判定した場合(S314:Yes)に、未達のRTAデータが存在していると判定したとき(S315:Yes)、処理はステップS301に戻り、RTAデータの受信処理を継続する。なお、受信側通信装置10Rxが例えばアクセスポイント(AP)として動作しており、R-TWT SPの送信機会(TXOP)ホルダとして動作している場合には、必要に応じてトリガフレームを送信して、送信側通信装置10Txに、自己宛てのRTAデータの送信を促してから、RTAデータを受信するように動作してもよい。
【0106】
あるいは、ステップS314の判定で、R-TWT SPの期間の範囲を超過していないと判定した場合(S314:No)にも、処理はステップS301に戻り、一連のRTAデータの受信を待ち受ける構成になっている。他方、R-TWT SPの期間の範囲を超過していると判定した場合(S314:Yes)に、未達のRTAデータがなくなったと判定したとき(S315:No)、あるいは、ACKフレームを返送する必要がないと判定した場合(S303:No)、対象のR-TWT SPにおけるRTAデータの受信処理を終了する。
【0107】
以上のように、本開示の送信側通信装置10Txは、図14の制御部21の制御によって、データ(例えば図21のRTAデータフレーム等のRTAデータ)を受信側通信装置10Rxに送信し、受信側通信装置10Rxから送信されてくる再送要求情報(例えば図23のRTAブロックACKフレーム)を受信し、受信側通信装置10Rxにおいて接続されるアプリケーション機器(図14の出力部23に含まれるアプリケーション機器)にデータを出力する出力タイミングに応じて、受信した再送要求情報により特定された未達データであって送信したデータの中で未達となったデータを、受信側通信装置10Rxに再送することができる。
【0108】
また、本開示の受信側通信装置10Rxは、図14の制御部21の制御によって、送信側通信装置10Txから送信されてくるデータ(例えば図21のRTAデータフレーム等のRTAデータ)を受信し、受信したデータを、接続されるアプリケーション機器(図14の出力部23に含まれるアプリケーション機器)に出力する出力タイミングを調整し、出力タイミングに応じて、送信されたデータの中で未達となったデータである未達データの再送を要求する再送要求情報(例えば図23のRTAブロックACKフレーム)を生成し、生成した再送要求情報を送信側通信装置10Txに送信することができる。
【0109】
すなわち、本開示では、受信側通信装置10Rxにおいて接続されるアプリケーション機器にRTAデータを出力する出力タイミングに応じて、未達データの再送の要否を判定して、再送可能なタイミングに未達データを再送することで、伝送路の利用効率を向上させるようにしている。これにより、受信側通信装置10Rxでは、未達データが存在するときでも、RTAデータをアプリケーション機器に出力するまでの遅延を抑制することができる。
【0110】
また、本開示では、予め決定された送信機会のサービス期間と異なる期間(第1の期間と異なる第2の期間)、つまり、設定したR-TWT SPの期間外(の期間)に再送データが再送されるため、必要最低限のR-TWT SPを設定して、他のデータ伝送に再利用することができる。さらに、受信側通信装置10RxがACKフレームの返送や返送要求を管理するため、受信側通信装置10Rx側で出力タイミングの猶予に適応的に再送の要否を判定することができる。受信側通信装置10Rxに届いたRTAデータのアプリケーション機器への出力タイミングを調整することで、再送によって遅延が生じても適宜回復することができる。
【0111】
なお、上述したように、R-TWT技術は、従来から存在するターゲットを起動させておく時間を決めて起動させておき、低消費電力動作を実現する技術として定義されているもので、送信側通信装置が送信機会(TXOP)を周期的に獲得し、その送信機会(TXOP)の中で低遅延として送信すべきデータを、他のデータよりも優先的に送信する仕組みとして定義されている。つまり、送信側通信装置と受信側通信装置に紐づいたトラフィック識別子(TID)を定義し、所定の周期で送信機会(TXOP)が到来した場合に、この識別子のデータのみを優先的に送信する技術が提案されている。R-TWT技術は、リアルタイムアプリケーションに適したデータの伝送を行うための手法として有力視されていて、現在、これらの手法を用いた技術提案がなされている。
【0112】
これらR-TWT技術には、所定の周期で送信側通信装置と受信側通信装置が同期して動作するために定義されているが、ある程度の周期を規定してそれらの通信を優先するために、R-TWTのサービス期間(SP)を設定しなければならなかった。これらの技術を低遅延が要求されるRTAデータに適用する場合には、許容される遅延時間内に伝送を完了させるためのパラメータの設定が必要であり、R-TWT SPの到来周期を短くしない限り、伝送遅延が発生するという問題があった。また無線伝送路上では通信エラーが発生することから、これらエラーが生じたデータを再送しなければ、エンドツーエンドで全てのデータを確実に届けられないという問題があった。特に、R-TWT SPの送信機会(TXOP)の1回の確保で、必要最低限のデータ伝送を実施する通信量を確保した場合、そのサービス期間内に未達データの再送を実施することが不可能となっていた。
【0113】
現在想定されているように、RTAデータ(低遅延が要求されるデータ)の送信がR-TWT SPに限定されてしまうと、次のR-TWT SPが到来しない限り、RTAデータの送信が遅延してしまうという問題があり、遅延が累積してしまうという問題が存在していた。つまり、未達データが蓄積してしまい、これを解消するためにデータを再送していたのでは、RTAデータの伝送では遅延量が増大してしまう傾向にあり好ましくなかった。そのため、R-TWT SPで送信機会(TXOP)を確保して、伝送エラーで未達となったデータの再送を行うためには、冗長な時間を含めてサービス期間(SP)を確保しなければならなかった。しかしながらこの場合には、特定の無線通信のためにサービス期間(SP)が設定され、それ以外の一般の無線通信のための送信機会(TXOP)が相対的に減少してしまうという問題があった。特に、再送が必要ない場合には、サービス期間(SP)として確保された冗長な時間を開放して、他の一般的なデータ通信のために再利用する必要があった。
【0114】
そこで、本開示では、かかる問題の解決方法として、次のような無線通信装置と無線通信方法を提案している。すなわち、受信側通信装置において、RTAデータの出力タイミングに猶予がある場合に、未達データの再送を実施することによって、より確実に低遅延でデータを確実に収集して出力をする無線通信装置と無線通信方法を提案している。また、本開示では、所定の周期で送信機会(TXOP)を獲得するようにスケジューリングされたR-TWT期間内に、RTAデータを送信することが困難な場合に、その期間の範囲を超えて、RTAデータを低遅延で再送信を実施する無線通信装置と無線通信方法を提案している。さらに、本開示では、予め決められたRTAデータの出力タイミングから、遅延を生じさせないように、受信したRTAデータを出力する無線通信装置と無線通信方法を提案している。
【0115】
このような無線通信装置と無線通信方法により、例えば、次のような効果を得ることができる。すなわち、RTAデータを、受信側通信装置の出力タイミングに応じて再送の可否を判定することで、無用なデータの再送にかかるトラフィックを減少させることができ、伝送路の利用効率を向上させることができる。送信側通信装置においても、出力タイミングを管理することで、受信側通信装置に接続されるアプリケーション機器に対して、低遅延のうちにRTAデータを届けることができる。
【0116】
受信側通信装置において、出力タイミングに余裕がある場合に、再送要求のブロックACKフレームを返送することで、無用なRTAデータの再送を控えられる。受信側通信装置において、出力タイミングに余裕がない場合には、再送を要求しないことで、伝送路を効率よく利用する方法が得られる。RTAデータに未達データが生じても、任意のタイミングで再送することで、受信側通信装置の出力タイミングを調整することで、遅延を回復することができる。送信側通信装置が、RTAデータをR-TWT SPのサービス期間を超えて再送することで、受信側通信装置に低遅延でRTAデータを届けることができる。また、送信側通信装置は、受信側通信装置との間で、所望のRTAデータのためにR-TWT SPのサービス期間を最低限設定すればよく、他の一般データの通信を併用することができるため、伝送路の利用効率を向上させることができる。
【0117】
<変形例>
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、又は汎用のPC(Personal Computer)などに、プログラム記録媒体からインストールされる。例えば、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータでは、CPU(Central Processing Unit)が、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部に記憶されているプログラムを、RAM(Random Access Memory)にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0118】
本開示は、様々な製品へ応用可能である。例えば、無線通信装置10が通信端末(STA)である場合、スマートフォン、タブレットPC、ノートPC、携帯型ゲーム端末、もしくは、デジタルカメラなどのモバイル端末、テレビジョン受像機、プリンタ、デジタルスキャナ、もしくは、ネットワークストレージなどの固定端末、又はカーナビゲーション装置などの車載端末として構成されてもよい。また、無線通信装置10は、スマートメータ、自動販売機、遠隔監視装置、又はPOS(Point Of Sale)端末などの、M2M(Machine To Machine Communication)端末として構成されてもよい。さらに、無線通信装置10は、これら端末に搭載される無線通信モジュール(例えば、1つのダイで構成される集積回路モジュール)であってもよい。
【0119】
また、例えば、無線通信装置10がアクセスポイント(AP)である場合、ルータ機能を有し、又はルータ機能を有しない無線LANのAP(無線基地局)として構成されてもよい。また、無線通信装置10は、モバイル無線LANルータとして構成されてもよい。さらに、無線通信装置10は、これら装置に搭載される無線通信モジュール(例えば、1つのダイで構成される集積回路モジュール)であってよい。
【0120】
なお、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0121】
また、本開示は、以下のような構成をとることができる。
【0122】
(1)
他の無線通信装置から送信されてくるデータを受信し、
受信した前記データを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングを調整し、
前記出力タイミングに応じて、送信された前記データの中で未達となった前記データである未達データの再送を要求する再送要求情報を生成し、
生成した前記再送要求情報を前記他の無線通信装置に送信する
制御を行う制御部を備える
無線通信装置。
(2)
前記制御部は、
前記他の無線通信装置との間で予め決定された送信機会の第1の期間に、前記他の無線通信装置から送信されてくる前記データを受信し、
前記第1の期間と異なる第2の期間に、前記再送要求情報を受信した前記他の無線通信装置から送信されてくる前記未達データを受信する
前記(1)に記載の無線通信装置。
(3)
前記制御部は、
前記データを前記アプリケーション機器に出力する時間的な猶予がある場合、前記未達データを識別する前記再送要求情報を含む応答フレームを生成し、
生成した前記応答フレームを前記他の無線通信装置に送信する
前記(2)に記載の無線通信装置。
(4)
前記制御部は、前記データを前記アプリケーション機器に出力する時間的な猶予がない場合、前記再送要求情報を含まない前記応答フレームを生成する
前記(3)に記載の無線通信装置。
(5)
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施するトラフィック識別子を含んだフレームを受信した場合、前記応答フレームを前記他の無線通信装置に送信する
前記(3)又は(4)に記載の無線通信装置。
(6)
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施する場合、前記応答フレームを前記他の無線通信装置に送信する
前記(3)又は(4)に記載の無線通信装置。
(7)
前記制御部は、前記第1の期間が到来したとき、前記データの送信に関する第1のトリガフレームを前記他の無線通信装置に送信する
前記(2)乃至(4)のいずれかに記載の無線通信装置。
(8)
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施する場合、前記未達データの再送に関する第2のトリガフレームを前記他の無線通信装置に送信する
前記(7)に記載の無線通信装置。
(9)
前記制御部は、前記データに対し前記未達データが発生したときに遅延が生じない程度の遅延量を設定して、前記アプリケーション機器に前記出力タイミングを調整して出力する
前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の無線通信装置。
(10)
無線通信装置が、
他の無線通信装置から送信されてくるデータを受信し、
受信した前記データを、接続されるアプリケーション機器に出力する出力タイミングを調整し、
前記出力タイミングに応じて、送信された前記データの中で未達となった前記データである未達データの再送を要求する再送要求情報を生成し、
生成した前記再送要求情報を前記他の無線通信装置に送信する
無線通信方法。
(11)
データを他の無線通信装置に送信し、
前記他の無線通信装置から送信されてくる再送要求情報を受信し、
前記他の無線通信装置において接続されるアプリケーション機器に前記データを出力する出力タイミングに応じて、受信した前記再送要求情報により特定された未達データであって送信した前記データの中で未達となった前記データを、前記他の無線通信装置に再送する
制御を行う制御部を備える
無線通信装置。
(12)
前記制御部は、
前記他の無線通信装置との間で予め決められた送信機会の第1の期間に、前記データを前記他の無線通信装置に送信し、
前記第1の期間と異なる第2の期間に、前記未達データを前記他の無線通信装置に再送する
前記(11)に記載の無線通信装置。
(13)
前記制御部は、
前記他の無線通信装置から送信されてくる応答フレームを受信し、
受信した前記応答フレームに含まれる前記再送要求情報に応じて、前記第1の期間内に未達となった前記データを特定する
前記(12)に記載の無線通信装置。
(14)
前記制御部は、前記出力タイミングに応じて、所定の遅延が許容される時間内となる前記第2の期間に、前記未達データを前記他の無線通信装置に再送する
前記(12)又は(13)に記載の無線通信装置。
(15)
前記制御部は、前記第1の期間として、前記データに対して必要最低限の送信機会となるサービス期間を設定する
前記(12)又は(13)に記載の無線通信装置。
(16)
前記制御部は、前記送信機会を獲得した場合、前記第1の期間内にその時点で取得している前記データを前記他の無線通信装置に送信する
前記(12)に記載の無線通信装置。
(17)
前記制御部は、前記第2の期間に前記未達データの再送を実施するトラフィック識別子を含んだフレームを前記他の無線通信装置に送信する
前記(12)に記載の無線通信装置。
(18)
前記制御部は、前記他の無線通信装置から、前記データの送信に関する第1のトリガフレームを受信した場合、前記データを前記他の無線通信装置に送信する
前記(12)乃至(16)のいずれかに記載の無線通信装置。
(19)
前記制御部は、前記他の無線通信装置から、前記未達データの再送に関する第2のトリガフレームを受信した場合、前記未達データを前記他の無線通信装置に再送する
前記(18)に記載の無線通信装置。
(20)
無線通信装置が、
データを他の無線通信装置に送信し、
前記他の無線通信装置から送信されてくる再送要求情報を受信し、
前記他の無線通信装置において接続されるアプリケーション機器に前記データを出力する出力タイミングに応じて、受信した前記再送要求情報により特定された未達データであって送信した前記データの中で未達となった前記データを、前記他の無線通信装置に再送する
無線通信方法。
【符号の説明】
【0123】
10 無線通信装置, 10Tx 送信側通信装置, 10Rx 受信側通信装置, 11 ネットワークモジュール, 12 入力モジュール, 13 制御モジュール, 14 出力モジュール, 15 無線通信モジュール, 21 制御部, 22 入力部, 23 出力部, 101 インターフェース, 102 送信バッファ, 103 RTAデータ管理部, 104 データフレーム構築部, 105 送信機会制御部, 106 制御フレーム設定部, 107 送信信号処理部, 108 アクセス制御部, 109 アンテナ部, 110 受信信号処理部, 111 制御フレーム判定部, 112 データフレーム解析部, 113 RTAデータ出力タイミング制御部, 114 受信バッファ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図18
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図20
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