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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006226
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】測定治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20250109BHJP
   B66B 29/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B66B31/00 D
B66B29/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106892
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝行
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321EA16
3F321GA21
3F321HA04
(57)【要約】
【課題】スカートガード安全スイッチがステップにごく近い位置に存在する場合においても、ステップを取り外すことなく、容易に当該安全スイッチの動作圧力を測定可能な、測定治具を提供する。
【解決手段】測定治具10は、ステップ固定部材11と間隙調整部材12と測定片13とを備える。ステップ固定部材11は、乗客コンベアのステップ1(踏段)の表面上において、乗客コンベアのスカートガード5と隣接する位置に固定可能である。間隙調整部材12は、ステップ固定部材11に設置される。測定片13は、第1部分13aaと第2部分13baとを含む。第2部分13baは、第1部分13aaとは距離を隔てた端部である。第1部分13aaが間隙調整部材12とスカートガード5とに挟まれて拘束された状態で、第2部分13baに対してスカートガード5から離れる方向に応力が加えられることで、測定片13の少なくとも一部はスカートガード5を押圧可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのスカートガード安全スイッチの動作圧力を測定するための測定治具であって、
前記乗客コンベアのステップの表面上において、前記乗客コンベアのスカートガードと隣接する位置に固定可能なステップ固定部材と、
前記ステップ固定部材に設置され、前記ステップの前記表面に沿った方向に摺動可能な間隙調整部材と、
前記間隙調整部材の摺動する方向における一方の端部と前記スカートガードとに挟まれて拘束され得る測定片とを備え、
前記測定片は、前記間隙調整部材の前記端部に拘束され得る第1部分と、前記第1部分とは距離を隔てた端部である第2部分とを含み、
前記第1部分が前記間隙調整部材と前記スカートガードとに挟まれて拘束された状態で、前記第2部分に対して前記スカートガードから離れる方向に応力が加えられることで、前記測定片の少なくとも一部は、前記摺動する方向について前記間隙調整部材と反対側に向けて前記スカートガードを押圧可能である、測定治具。
【請求項2】
前記測定片は、第1測定片部と、前記第1測定片部よりも延在寸法が長い第2測定片部と、屈曲した境界部とを含み、
前記第2測定片部は前記第1測定片部に前記境界部を介して接続され、
前記第1測定片部は前記第1部分を有し、
前記第2測定片部は前記第2部分を有し、
前記第1部分において前記間隙調整部材と前記スカートガードとに挟まれて固定された第1領域を支点とし、
前記第1測定片部において前記第1領域から見て前記境界部と反対側に位置する第2領域を作用点として、
前記第2測定片部の前記第2部分に前記応力が加えられることにより、前記第1測定片部の前記第2領域は、前記摺動する方向について前記間隙調整部材と反対側に向けて前記スカートガードを押圧可能である、請求項1に記載の測定治具。
【請求項3】
前記第1測定片部の前記第2領域が前記スカートガードを押圧する圧力を表示する圧力表示部をさらに備える、請求項2に記載の測定治具。
【請求項4】
前記第2部分に加えられた前記応力を検出する検出部をさらに備え、
前記圧力表示部に表示される前記圧力は、前記検出部が検出した前記応力の測定値に基づいて求められる、請求項3に記載の測定治具。
【請求項5】
前記ステップ固定部材に設置され、前記摺動する方向における前記間隙調整部材の位置を調整可能な操作機構をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測定治具。
【請求項6】
前記ステップ固定部材は、前記ステップの表面に形成された溝に挿入され得る凸部を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータなどの乗客コンベアにおいては、側面に配置される1対の欄干のそれぞれの下方に、スカートガードが設けられる。当該スカートガードの裏側には、スカートガード安全スイッチが設置されている。スカートガード安全スイッチは、利用者の靴などがスカートガードと踏段との間に挟まれた際にこれを検出し、エスカレータを停止させる。靴などが挟まった状態のままエスカレータが運転を続けることは安全確保の観点から好ましくないためである。
【0003】
スカートガード安全スイッチは、上記のようなトラブルの発生時にはそれを検出し、エスカレータの運転を停止させる。しかしたとえばスカートガードに利用者の足が触れる程度の僅かな押圧力を検出した際には、エスカレータを停止させる必要はない。スカートガード安全スイッチは、利用者の靴などが挟まれることにより停止が必要な程度の大きな押圧力が検出された際にエスカレータを停止し、微小な押圧力が検出されてもエスカレータを停止させない機構であることを要する。
【0004】
このように予め定められた基準範囲内の押圧力が生じた際にスカートガード安全スイッチを作動させる観点から、スカートガード安全スイッチが動作する押圧力が基準範囲に含まれているか否かを確認する点検が行なわれる。そのような点検用の装置は、たとえば特開2002-274773号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-274773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、踏段に固定されるベース上に、レバー操作によってスカートガードに押し当てられて押圧力を及ぼす押圧子と、当該押圧力を表示する表示装置とが設置された押圧力検出器が開示されている。ここで、たとえばスカートガード安全スイッチが踏段(以下、ステップとも記載する)の表面にごく近い位置に配置されている場合、特許文献1の押圧力検出器の押圧子の位置は踏段の表面から離れているため、当該押圧子をスカートガード安全スイッチの正面に対向させることは難しい。この結果、正確な測定が困難となる。したがって、上記のような場合には、踏段を外してから別途圧力測定用のテンションゲージをスカートガード安全スイッチの正面に対向させて測定作業を行なう必要が生じる。
【0007】
本開示は以上の課題に鑑みなされたものである。その目的は、たとえスカートガード安全スイッチが踏段(ステップ)表面にごく近い位置に存在する場合においても、踏段(ステップ)を取り外すことなく測定作業が可能な、安全スイッチ動作圧力の測定治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従った測定治具は、乗客コンベアのスカートガード安全スイッチの動作圧力を測定するための測定治具であって、ステップ固定部材と間隙調整部材と測定片とを備える。ステップ固定部材は、乗客コンベアのステップ(踏段)の表面上において、乗客コンベアのスカートガードと隣接する位置に固定可能である。間隙調整部材は、ステップ固定部材に設置され、ステップの表面に沿った方向に摺動可能である。測定片は、間隙調整部材の摺動する方向における一方の端部とスカートガードとに挟まれて拘束され得る。測定片は、第1部分と第2部分とを含む。第1部分は、間隙調整部材の端部に拘束され得る。第2部分は、第1部分とは距離を隔てた端部である。第1部分が間隙調整部材とスカートガードとに挟まれて拘束された状態で、第2部分に対してスカートガードから離れる方向に応力が加えられることで、測定片の少なくとも一部は、摺動する方向について間隙調整部材と反対側に向けてスカートガードを押圧可能である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、たとえスカートガード安全スイッチがステップ表面にごく近い位置に存在する場合においても、ステップを取り外すことなく測定作業が可能な、安全スイッチ動作圧力用の測定治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態の測定治具による安全スイッチ動作圧力の測定作業が行なわれるエスカレータの一例を示す概略図である。
図2図1中の点線で囲まれた領域IIに、本実施の形態の測定治具が設置され測定作業が行なわれる態様を示す概略図である。
図3図2に示された測定治具の構成および動作を説明するための概略図である。
図4】比較例の安全スイッチ動作圧力測定治具が設置され測定作業が行なわれる態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお説明の便宜上、X方向、Y方向、Z方向が定義されている。特に断りがない限り、以降において、各部材の位置関係や配置方向、延在方向などは、測定者が後述のステップ1上に乗っている状態におけるものを示す。また特に断りがなければ、以降の説明における測定治具10の各構成部材の方向は、XY平面に沿って拡がり測定者が乗ることが可能なステップ1の表面上に測定治具10が取り付けられた状態での方向を示す。
【0012】
<エスカレータおよびスカートガード安全スイッチの構成>
図1は、本実施の形態の測定治具による安全スイッチ動作圧力の測定作業が行なわれるエスカレータの一例を示す概略図である。図1に示されるように、エスカレータは、複数段のステップ1と、1対の欄干2と、スカートガード5とを主に備えている。複数段のステップ1は1対の欄干2の間に位置する。欄干2の上面には移動手摺りが設置されている。複数のステップ1はエスカレータの上階3と下階4との間において、上昇および下降を繰り返すよう循環する。欄干2の下部でありエスカレータ幅方向の内側には、複数段のステップ1を左右両側から挟むように、スカートガード5が配置されている。
【0013】
図2は、図1中の点線で囲まれた領域IIに、本実施の形態の測定治具が設置され測定作業が行われる態様を示す概略図である。なお図2においては測定作業の態様がZX平面に沿った断面図として示される。図2に示されるように、スカートガード5の裏側であって欄干2の下方に位置する領域には、スカートガード安全スイッチ(以下「安全スイッチ6」とも記載する)と、スカートガード取付アングル(以下「取付アングル7」とも記載する)とが配置されている。安全スイッチ6は、ステップ1のZ方向に面する表面(上面)に隣接する位置に配置されている。安全スイッチ6は、エスカレータの上階3と下階4とのそれぞれに設置されている。上階3および下階4のそれぞれでは、幅方向の左右に安全スイッチ6が設置されている。すなわち、エスカレータでは合計4カ所に安全スイッチ6が設置されている。安全スイッチ6たとえばビス等の固定部材により取付板6aに取り付けられる。安全スイッチ6の検出部はスカートガード5の表面に対向するように配置されている。安全スイッチ6の検出部は図2に示されるように取付板6aの端部からスカートガード5側に突出する。安全スイッチ6が取り付けられた取付板6aは、取付アングル7に、ボルト8で固定される。安全スイッチ6には圧力微調整片6bが含まれてもよい。圧力微調整片6bは、安全スイッチ6の検出部とスカートガード5との間に配置される。
【0014】
図2に示されるように、図1のエスカレータのステップ1は、より詳しくは、床板ベース部1aと、複数の櫛部1bとを含んでいる。床板ベース部1aは、利用者の足が乗るステップ1を構成するベースとなる部材である。
【0015】
床板ベース部1aは、XY平面に沿って拡がる上面を有する。なお特に断りがなければ、櫛部1bは、床板ベース部1aの上面からZ方向の上側に延びる板状の形状を有する。複数の櫛部1bは、Z方向の上側から見た平面視において、ほぼ等間隔に並んだ線状の形状となるように、X方向に間隔をあけてY方向に沿って延びるように形成されている。複数の櫛部1bのうちX方向において互いに隣り合う1対の櫛部1bの間の、櫛部1bが存在しない領域は、溝1cとなっている。溝1cにおいては床板ベース部1aの上面が露出している。
【0016】
<測定治具の構成>
図3は、図2に示された測定治具の構成および動作を説明するための概略図である。本実施の形態の測定治具10は、スカートガード安全スイッチ6の動作圧力を測定するために用いられる。図2および図3に示されるように、測定治具10は、ステップ固定部材11と、間隙調整部材12と、レバー状の測定片13と、圧力表示部17と、検出部16ととを主に備えている。
【0017】
ステップ固定部材11は、本体部と、複数の嵌合部11aと、間隙調整ハンドル14とを主に含んでいる。複数の嵌合部11aは、ステップ固定部材11の本体部下面から第1方向すなわちZ方向に沿って突出するように形成されている。複数の嵌合部11aは、エスカレータのステップ1の溝1cと同様に、水平方向に見たときにX方向に間隔をあけてY方向に沿って延びるように形成されている。このため嵌合部11aは、エスカレータのステップ1の溝1cに嵌合する。具体的には、嵌合部11aが溝1c内に挿入される。ステップ固定部材11は、X方向について櫛部1bと嵌合部11aとが交互に並ぶように配置される。間隙調整ハンドル14は、本体部の上側に配置されている。間隙調整ハンドル14にはギヤ15が接続されている。間隙調整ハンドル14を矢印Rのように回転させることで、ギヤ15を介して間隙調整部材12を矢印Mに示す方向に移動させることができる。この結果、後述するように間隙調整部材12が測定片13をスカートガード5に押圧した場合に、嵌合部11aが溝1cの内周面に押し付けられることで、嵌合部11aを含むステップ固定部材11の全体がステップ1上に固定される。
【0018】
間隙調整部材12は、X方向に延びる棒状体である。間隙調整部材12の延在方向に対して垂直な断面における形状は任意の形状を採用し得るが、例えば四角形状であってもよい。間隙調整部材12の端部12aの表面形状は図2に示されるようにスカートガードに面する表面が平坦であってもよい。あるいは、端部12aの表面形状はスカートガード側に凸の曲面状であってもよい。
【0019】
間隙調整部材12は、ステップ固定部材11に対してX方向に摺動可能である。ステップ固定部材11が間隙調整部材12を摺動可能に支持する構造は任意の構造を採用し得る。たとえば、ステップ固定部材11には、X方向に長く延びるガイドレールが設置されていてもよい。間隙調整部材12のX方向に延びる外縁が上記ガイドレールに嵌合していてもよい。このようにすれば、間隙調整部材12は、ステップ固定部材11に対して相対的にX方向に移動可能である。ガイドレールは、たとえばY方向において間隙調整部材12と対向する側面部と、当該側面部のZ方向における両端に接続された挟持部とを含んでいてもよい。挟持部は、当該側面部の両端からY方向に突出するように1対形成されてもよい。1対の挟持部は、Z方向において間隙調整部材12を挟み込むように構成されてもよい。
【0020】
間隙調整部材12においてギヤ15に対向する表面にはラックとして機能する板状の歯車が形成されてもよい。当該板状の歯車にギヤ15が噛み合っていてもよい。この場合、ギヤ15はピニオンとして機能する。間隙調整ハンドル14を回転させることで、ギヤ15を介して間隙調整部材12はX方向に移動される。なお、間隙調整ハンドル14またはギヤ15の回転を停止させる固定機構が設置されていてもよい。固定機構の構成としては、間隙調整ハンドル14またはギヤ15の回転を停止させることができれば任意の構成を採用し得る。
【0021】
測定片13は、間隙調整部材12とスカートガード5との間に把持されることで拘束され得る。具体的には、図2および図3に示されるようにスカートガード5と対向する間隙調整部材12の端部12aにより押圧されることで、スカートガード5の表面に接触した状態で測定片13は拘束され得る。
【0022】
測定片13は、たとえば、平板状または棒状の部材により構成されてもよい。測定片13はスカートガード5より高い剛性を有することが好ましい。
【0023】
図2および図3に示されるように、測定片13は、第1測定片部13aと、第2測定片部13bと、境界部13cとを含んでいる。第2測定片部13bは第1測定片部13aの上側に配置される。第1測定片部13aと第2測定片部13bとは境界部13cにおいて接続されている。第2測定片部13bは第1測定片部13aよりも延在寸法が長い。具体的には、第1測定片部13aの長さはL1であり、第2測定片部13bの長さはL2である。長さL1は長さL2より長い。また、測定片13の剛性を高める観点から、境界部13cにおいて追加の梁部材などの補強部材が配置されていてもよい。たとえば、補強部材として、境界部13cに隣接する第1測定片部13aの部分と第2測定片部13bの部分とを接続する梁部材が配置されていてもよい。
【0024】
測定片13は、第1測定片部13aと第2測定片部13bとの境界部13cにおいて屈曲している。測定片13のうち第1測定片部13aは、間隙調整部材12とスカートガード5とにより挟まれて拘束される第1部分13aaを含む。
【0025】
測定片13のうちその延在方向について第1部分13aaと反対側の端部は第2部分13baである。第1測定片部13aが第1部分13aaを含み、第2測定片部13bは第2部分13baを含んでいる。
【0026】
第1部分13aaの少なくとも一部が間隙調整部材12の端部12aによりスカートガード5の表面に押し付けられることで、測定片13は間隙調整部材12の端部12aとスカートガード5とに挟まれて拘束される。この状態で、図2における矢印F1が示すように、測定片13の第2部分13baには、スカートガード5から離れる方向(図2ではスカートガード5から離れるとともに間隙調整部材12に近づく方向)に向けて応力が加えられる。この結果、第2部分13baは、矢印F1に示す方向(間隙調整部材12に近づく方向)に移動し得る。これにより、測定片13の第1測定片部13aの少なくとも一部は、てこの原理によりX方向について間隙調整部材12と反対側すなわち図2の矢印F2により示される方向に向けてスカートガード5を押圧可能である。なお詳細は後述する。
【0027】
測定片13には圧力表示部17が設置されている。圧力表示部17は第1測定片部13aの一部がスカートガード5を押圧する圧力を表示する。測定片13には検出部16が設置されている。検出部16は第2部分13baに対して矢印F1に示す方向に加えられた応力を検出する。圧力表示部17に表示される圧力は、検出部16が検出した応力の測定値に基づいて算出されてもよい。たとえば、検出部16が検出した応力の測定値と、そのときに第1測定片部13aの一部がスカートガード5を押圧する圧力との関係を予め実験的に求めておき、当該関係に基づく変換用データ(検出部16が検出した応力の測定値と、そのときに第1測定片部13aの一部がスカートガード5を押圧する圧力の実測値との相関関係を示すデータテーブルまたは関係式など)を準備する。当該変換用データに基づき、上記応力の測定値から、第1測定片部13aの一部がスカートガード5を押圧する圧力を算出し、当該算出結果を圧力表示部17に表示してもよい。上記の様な演算を行う演算装置および上記変換用データを記憶する記憶装置が検出部16または圧力表示部17に含まれていてもよい。
【0028】
圧力表示部17としては、液晶表示装置など任意の表示装置を用いることができる。検出部16としては、第2部分13baに対して矢印F1に示す方向に加えられた応力を検出できれば任意の測定装置を用いることができる。
【0029】
<測定方法>
図2および図3を参照しながら、本開示に従った測定治具10を用いたスカートガード安全スイッチ6の動作圧力の測定方法を説明する。
【0030】
まず、第1工程として、停止されたエスカレータにおいて、スカートガード安全スイッチ6と対向する位置に測定治具10を配置する。具体的には、測定治具10のステップ固定部材11を、スカートガード安全スイッチ6と対向する領域におけるステップ1上に配置する。このとき、ステップ固定部材11の嵌合部11aは、図2に示されるようにステップ1の溝1cに挿入された状態とする。
【0031】
次に、第2工程として、測定片13を設置する。具体的には、ステップ固定部材11に支持された間隙調整部材12の端部12aとスカートガード5との間であって、安全スイッチ6と対向する位置に第1部分13aaが位置するように、測定片13を配置する。この状態で、間隙調整ハンドル14を回すことにより、間隙調整部材12をスカートガード5に向けて移動させる。この結果、間隙調整部材12の端部12aにより測定片13の第1部分13aaがスカートガード5に押圧される。この状態で間隙調整ハンドル14が回転しないように当該間隙調整ハンドル14をロックする。この結果、測定片13がスカートガード5と間隙調整部材12との間に把持された状態で固定される。また、間隙調整部材12が測定片13を押圧することで、ステップ固定部材11の嵌合部11aがステップ1の溝1cの内周面に押圧される。この結果、ステップ1に対して測定治具10のステップ固定部材11が固定される。
【0032】
このとき、間隙調整部材12はステップ1の表面近傍に配置されており、測定片13の第1部分13aaを容易にステップ1の表面近傍であって安全スイッチ6と対向する位置に配置することができる。また、後述するように測定片13の第1部分13aaがスカートガード5を押圧する方向軸とずれた位置に配置された第2部分13baに応力を加えることで安全スイッチ6の動作圧力の測定ができるため、従来のようにスカートガード5を押圧する方向軸に沿って延びる測定用の部材を直接的に操作する必要が無く、当該測定のためにステップ1を取り外すといった作業は不要である。
【0033】
次に、第3工程として、動作圧力の測定を行う。具体的には、測定片13の第2部分13baに矢印F1の方向の応力を加えることで、測定片13の第1部分13aaの一部がスカートガード5を矢印F2に示す方向に押圧する。このときの押圧する圧力は圧力表示部17に表示される。測定片13により押圧されたスカートガード5がスカートガード安全スイッチ6を動作させるまで、測定片13の第2部分13baに対して応力を加える。当該安全スイッチ6が動作したときの圧力表示部17の表示値(動作圧力の測定値)を記録する。
【0034】
次に、第4工程として、動作圧力の適否判定を行う。具体的には、上記第3工程において記録した動作圧力の測定値が、基準を満たしているか否かを判断する。当該測定値が基準を満たしていれば測定は終了する。もし当該測定値が基準を満たしていない場合、圧力微調整片6bの配置を調整するなど安全スイッチ6の調整を実施する。その後、上記第2工程から第4工程を再度実施する。当該第4工程において測定値が基準を満たすと判断されるまで、上記第2工程から第4工程は繰り返し実施される。
【0035】
<作用>
本開示に従った測定治具10は、乗客コンベアのスカートガード安全スイッチ6の動作圧力を測定するための測定治具10であって、ステップ固定部材11と間隙調整部材12と測定片13とを備える。ステップ固定部材11は、乗客コンベアのステップ1(踏段)の表面上において、乗客コンベアのスカートガード5と隣接する位置に固定可能である。間隙調整部材12は、ステップ固定部材11に設置され、ステップ1の表面に沿った方向(X方向)に摺動可能である。測定片13は、間隙調整部材12の摺動する方向における一方の端部12aとスカートガード5とに挟まれて拘束され得る。測定片13は、第1部分13aaと第2部分13baとを含む。第1部分13aaは、間隙調整部材12の端部12aに拘束され得る。第2部分13baは、第1部分13aaとは距離を隔てた端部である。第1部分13aaが間隙調整部材12とスカートガード5とに挟まれて拘束された状態で、第2部分13baに対してスカートガード5から離れる方向に応力が加えられることで、測定片13の少なくとも一部は、摺動する方向について間隙調整部材12と反対側に向けてスカートガード5を押圧可能である。
【0036】
以下、比較例としての測定治具の構成および課題を説明しつつ、上記測定治具10の作用効果について詳細に説明する。
【0037】
図4は、比較例の測定治具が設置され、安全スイッチ6の動作圧力の測定作業が行なわれる態様を示す概略図である。図4に示されるように、従来から用いられる測定治具100は、たとえば圧力測定用テンションゲージ(以下「テンションゲージ101」とも記す)と、圧力表示部102とを主に備えている。テンションゲージ101は、本体部101aと、測定部101bとを含んでいる。本体部101aは一方向、すなわち図4の左右方向に長く延びる。本体部101aには圧力表示部102が取り付けられる。測定部101bは本体部101aの延在方向の一方端から延び、実際に圧力を測定すべき部分に接触可能な棒状の部材である。測定者は、測定治具100の長く延びる図4の左右方向がX方向に沿うように、測定治具100を手で把持する。
【0038】
圧力表示部102は、たとえばX方向に延びる目盛102aにより、測定された押圧力Fの値を表示する。目盛102aに隣接する位置に配置される圧力指示針102bにより圧力が示されてもよい。
【0039】
測定部101bの先端部には滑り防止キャップ103が形成されてもよい。滑り防止キャップ103は一般公知のゴムなどの滑りにくい材料からなる。作業者が測定治具100を持ち、滑り防止キャップ103がスカートガード5に接触するように手でスカートガード5に押圧力Fを付加することにより測定がなされる。
【0040】
このときスカートガード5の表面に対して測定部101bが直角に延びるように、テンションゲージ101をスカートガード5表面に接触させ押圧力Fを加える必要がある。仮に測定部101bがスカートガード5に対して斜め方向に延びる状態で押圧すれば、たとえ滑り防止キャップ103が装着されていても、接触面が滑り正確な測定が困難になる。
【0041】
安全スイッチ6の動作点検の際には、安全スイッチ6の作動する押圧力基準値(たとえば120~180Nの押圧力)がスカートガード5の表面上の測定点Pに印加される必要がある。この押圧力は作業者が手で測定治具100を把持しながら加える力としてはかなり強い。Z方向について滑り防止キャップ103(測定部101b)の最下部と本体部101aの最下部とのZ方向の段差H(図4参照)が大きければ、このような強い力を測定点Pに印加することが困難となる可能性がある。たとえば、安全スイッチ6がZ方向についてステップ1に隣接するごく近い位置に配置される場合には、Z方向についてのステップ1と安全スイッチ6との間隔が、滑り防止キャップ103(測定部101b)の最下部と本体部101aの最下部とのZ方向の段差Hよりも小さくなる場合がある。この場合はステップ1をエスカレータから取り外さない限り、測定部101bをスカートガード5の測定点P表面に垂直に当てて測定を正確に行なうことが出来ない。仮に測定部101bがスカートガード5に対して斜め方向に延びる状態で押圧すれば、上記のような大きな力をスカートガード5側に印加することは困難であり、正確な測定を行うことも難しい。
【0042】
一方、上述した本開示に従った測定治具10によれば、測定片13を利用して、いわゆるてこの原理を用いてスカートガード5に圧力を加えることができる。このため、従来のようにスカートガード5において安全スイッチ6と対向する領域の正面で測定治具100を当該安全スイッチ6に向けて(スカートガード5に向けて)X方向から押し付ける、といった作業が不要となり、ステップ1を取り外す必要が無い。このため、測定作業を効率化できる。
【0043】
上記測定治具10において、測定片13は、第1測定片部13aと、第2測定片部13bと、境界部13cとを含む。第2測定片部13bは、第1測定片部13aよりも延在寸法が長い。境界部13cは屈曲している。第2測定片部13bは第1測定片部13aに境界部13cを介して接続されている。第1測定片部13aは第1部分13aaを有する。第2測定片部13bは第2部分13baを有する。図3に示されるように、第1測定片部13aでは、第1部分13aaにおいて間隙調整部材12とスカートガード5とに挟まれて固定された第1領域13aaaを支点とする。第1領域13aaaは、たとえば間隙調整部材12が接触する第1部分13aaの領域のうち、最も第2部分13ba寄りの領域である。第1測定片部13aにおいて第1領域13aaaから見て境界部13cと反対側に位置する第2領域13aabを作用点とする。第2測定片部13bの第2部分13baに応力が加えられることにより、第1測定片部13aの第2領域13aabは、摺動する方向について間隙調整部材12と反対側に向けてスカートガード5を押圧可能である。
【0044】
この場合、いわゆるてこの原理により、測定片13の第2領域13aabが作用点として機能する。この結果、スカートガード5に対して容易に圧力を加えることができる。
【0045】
上記測定治具10は、圧力表示部17をさらに備える。圧力表示部17は、第1測定片部13aの第2領域13aabがスカートガード5を押圧する圧力を表示する。この場合、安全スイッチ6の動作圧力を圧力表示部17によって容易に確認できる。
【0046】
上記測定治具10は、検出部16をさらに備える。検出部16は、第2部分13baに加えられた応力を検出する。圧力表示部17に表示される圧力は、検出部16が検出した応力の測定値に基づいて求められる。この場合、安全スイッチ6の動作圧力を容易に確認できる。
【0047】
上記測定治具10は、操作機構としての間隙調整ハンドル14をさらに備える。間隙調整ハンドル14は、ステップ固定部材11に設置される。間隙調整ハンドル14は、摺動する方向における間隙調整部材12の位置を調整可能である。この場合、間隙調整ハンドル14を用いて間隙調整部材12の位置を容易に調整できる。
【0048】
上記測定治具10において、ステップ固定部材11は、凸部としての嵌合部11aを含む。当該嵌合部11aは、ステップ1の表面に形成された溝1cに挿入され得る。この場合、嵌合部11aがステップ1の溝1c内周面に押圧されることで、測定治具10のステップ固定部材11をステップ1に固定することができる。
【0049】
また、嵌合部11aを有するステップ固定部材11により、測定治具10の全体をステップ1上に固定したまま測定作業ができる。このため作業者が測定治具10を手で抱えながら大きな力を印加する必要がなくなる。このためスカートガード5に垂直な方向から大きな力を印加する作業が容易になる。
【0050】
(付記)
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
乗客コンベアのスカートガード安全スイッチの動作圧力を測定するための測定治具であって、
前記乗客コンベアのステップの表面上において、前記乗客コンベアのスカートガードと隣接する位置に固定可能なステップ固定部材と、
前記ステップ固定部材に設置され、前記ステップの前記表面に沿った方向に摺動可能な間隙調整部材と、
前記間隙調整部材の摺動する方向における一方の端部と前記スカートガードとに挟まれて拘束され得る測定片とを備え、
前記測定片は、前記間隙調整部材の前記端部に拘束され得る第1部分と、前記第1部分とは距離を隔てた端部である第2部分とを含み、
前記第1部分が前記間隙調整部材と前記スカートガードとに挟まれて拘束された状態で、前記第2部分に対して前記スカートガードから離れる方向に応力が加えられることで、前記測定片の少なくとも一部は、前記摺動する方向について前記間隙調整部材と反対側に向けて前記スカートガードを押圧可能である、測定治具。
(付記2)
前記測定片は、第1測定片部と、前記第1測定片部よりも延在寸法が長い第2測定片部と、屈曲した境界部とを含み、
前記第2測定片部は前記第1測定片部に前記境界部を介して接続され、
前記第1測定片部は前記第1部分を有し、
前記第2測定片部は前記第2部分を有し、
前記第1部分において前記間隙調整部材と前記スカートガードとに挟まれて固定された第1領域を支点とし、
前記第1測定片部において前記第1領域から見て前記境界部と反対側に位置する第2領域を作用点として、
前記第2測定片部の前記第2部分に前記応力が加えられることにより、前記第1測定片部の前記第2領域は、前記摺動する方向について前記間隙調整部材と反対側に向けて前記スカートガードを押圧可能である、付記1に記載の測定治具。
(付記3)
前記第1測定片部の前記第2領域が前記スカートガードを押圧する圧力を表示する圧力表示部をさらに備える、付記2に記載の測定治具。
(付記4)
前記第2部分に加えられた前記応力を検出する検出部をさらに備え、
前記圧力表示部に表示される前記圧力は、前記検出部が検出した前記応力の測定値に基づいて求められる、付記3に記載の測定治具。
(付記5)
前記ステップ固定部材に設置され、前記摺動する方向における前記間隙調整部材の位置を調整可能な操作機構をさらに備える、付記1から付記4のいずれか1項に記載の測定治具。
(付記6)
前記ステップ固定部材は、前記ステップの表面に形成された溝に挿入され得る凸部を含む、付記1から付記5のいずれか1項に記載の測定治具。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 ステップ、1a 床板ベース部、1b 櫛部、1c 溝、2 欄干、3 上階、4 下階、5 スカートガード、6 安全スイッチ、6a 取付板、6b 圧力微調整片、7 取付アングル、8 ボルト、10,100 測定治具、11 ステップ固定部材、11a 嵌合部、12 間隙調整部材、12a 端部、13 測定片、13a 第1測定片部、13aa 第1部分、13aaa 第1領域、13aab 第2領域、13b 第2測定片部、13ba 第2部分、13c 境界部、14 間隙調整ハンドル、15 ギヤ、16 検出部、17,102 圧力表示部、101 テンションゲージ、101a 本体部、101b 測定部、102a 目盛、102b 圧力指示針、103 滑り防止キャップ、F 押圧力、F1,F2,M,R 矢印、H 段差、II 領域、L1,L2 長さ、P 測定点。
図1
図2
図3
図4