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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062310
(43)【公開日】2025-04-14
(54)【発明の名称】射出成形機の制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/78 20060101AFI20250407BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171280
(22)【出願日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100229736
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 剛
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】宮川 智志
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL03
4F206JL08
4F206JM01
4F206JM04
4F206JN03
4F206JN11
4F206JP13
4F206JP17
4F206JQ11
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】成形運転の終了が近づいたときのスクリュ溝内の溶融樹脂温度の上昇を抑えることのできる射出成形方法を提供すること。
【解決手段】射出成形方法は、複数種類の成形条件を含む第1成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転するステップ1と、
複数種類の成形条件を含む第2成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転するステップ2と、を備える。
射出成形方法において、
原料投入口が閉鎖される、ステップ1からステップ2に移行し、
ステップ2は原料投入口を閉鎖したままで成形運転を行い、
第2成形条件群は、第1成形条件群と溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件が変更される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の成形条件を含む第1成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転するステップ1と、
複数種類の前記成形条件を含む第2成形条件群により複数の前記成形ショットを繰り返してから成形運転を終了するステップ2と、を備え、
原料投入口が閉鎖された後に、前記ステップ1から前記ステップ2に移行し、
前記ステップ2は前記原料投入口を閉鎖したままで前記成形運転を行い、
前記第2成形条件群は、前記第1成形条件群と溶融樹脂の温度抑制に関与する前記成形条件が変更される、射出成形方法。
【請求項2】
前記ステップ2において、
所定の前記成形ショットの回数n(n≧1)の毎に前記第2成形条件群を変更する、
請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、
計量工程におけるスクリュの後退速度または所定時間におけるスクリュの後退量が、所定の値を下回ると前記第2成形条件群を変更する、請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項4】
前記ステップ2において、
計量工程におけるスクリュ駆動トルクが、所定の値を下回ると前記第2成形条件群を変更する、請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項5】
溶融樹脂の温度抑制に関与する前記成形条件は、
射出工程における前記成形条件の少なくとも一種類、または、
可塑化・計量工程における前記成形条件の少なくとも一種類である、
請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項6】
複数種類の成形条件を含む第1成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転させるステップ1と、
複数種類の前記成形条件を含む第2成形条件群により複数の前記成形ショットを繰り返してから成形運転を終了させるステップ2と、を順に実行させる射出成形機における制御装置であって、
前記制御装置は、
前記ステップ1において原料投入口が閉鎖されたことの情報を取得した後、前記原料投入口を閉鎖したままの状態で、前記成形運転を前記ステップ1から前記ステップ2に移行させ、
前記第2成形条件群は、前記第1成形条件群と溶融樹脂の温度抑制に関与する前記成形条件を変更する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機による射出成形を開始する立上時には、射出速度、圧力などの成形条件を徐々に変化させて通常の安定成形条件に移行させることが必要とされている。これは、成形開始時は樹脂温度が不安定であり、この状態で最初から安定成形条件で成形を行うと、成形品についてばりの発生、金型の破損などの不具合を発生する可能性があるからである。
この不具合について、特許文献1は、成形開始時に初期成形条件から安定成形条件まで自動的に成形条件を変化させることのできる射出成形機の制御装置を提案する。
【0003】
射出成形される樹脂は、スクリュの後方の側(スクリュ基部)から投入され、スクリュの回転に伴ってスクリュの前方に向けて搬送される。スクリュ溝の内部の樹脂の搬送力は、スクリュ基部の固体状態の原料とスクリュを収容する加熱筒(バレル)の内周面との摩擦力に大きく影響される。このため、スクリュ基部における原料樹脂が少ない飢餓状態、つまりスクリュ基部内の原料樹脂が少なく、原料樹脂と加熱筒内周面との接触面積(摩擦面積)が小さい状態となると原料樹脂の搬送能力が低下し、原料樹脂の搬送速度が遅くなる。原料樹脂の飢餓状態は、典型的には射出成形の終了が近づいて、原料樹脂の供給が行われなくなった後に生ずる。
原料樹脂の搬送速度が低下すると、スクリュ溝内において原料樹脂が単位距離を進むのに要する時間が長くなるため、スクリュ溝内の原料樹脂がスクリュ先端から吐出されるまでに、スクリュの回転によってスクリュ溝内で剪断を受ける時間が長くなる。このため、スクリュから吐出される原料温度(溶融樹脂温度)が上昇することになる。溶融樹脂温度が高くなると樹脂粘度が低下して流動しやすくなり、金型の成形キャビティに充填される樹脂の流動状態が変わるので、それまでの成形運転における成形条件では過充填となるなど不都合が生じる場合がある。過充填は金型の破損の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-189131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、特許文献1は成形立ち上げ時にスクリュ溝内が樹脂で充満して、原料搬送速度が増大し溶融樹脂温度が低下していく過程で、安定成形に向けて成形条件を設定するものであり、成形運転の終了が近づいたときのスクリュ溝内の樹脂温度の上昇による不具合に対応することができない。
以上より、本発明は、成形運転の終了が近づいたときのスクリュ溝内の溶融樹脂温度の上昇を抑えることのできる射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の射出成形方法は、
複数種類の成形条件を含む第1成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転するステップ1と、
複数種類の成形条件を含む第2成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転するステップ2と、を備え、
原料投入口が閉鎖された後に、ステップ1からステップ2に移行し、
ステップ2は原料投入口を閉鎖したままで成形運転を行い、
第2成形条件群は、第1成形条件群と溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件が変更されている。
【0007】
本発明の射出成形方法のステップ2において、好ましくは、
所定の成形ショットの回数n(n≧1)の毎に第2成形条件群を変更する。
【0008】
本発明の射出成形方法のステップ2において、好ましくは、
計量工程におけるスクリュの後退速度または所定時間におけるスクリュの後退量が、所定の値を下回ると第2成形条件群を変更する。
【0009】
本発明の射出成形方法のステップ2において、好ましくは、
計量工程におけるスクリュ駆動トルクが、所定の値を下回ると第2成形条件群を変更する。
【0010】
本発明の射出成形方法において、溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件は、
射出工程における成形条件の少なくとも一種類、または、
可塑化・計量工程における成形条件の少なくとも一種類である。
【0011】
本発明の射出成形機における制御装置は、
複数種類の成形条件を含む第1成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転させるステップ1と、
複数種類の成形条件を含む第2成形条件群により複数の成形ショットを繰り返して成形運転させるステップ2と、を順に実行させる。
本発明の制御装置は、
ステップ1で成形運転において原料投入口が閉鎖されたことの情報を取得した後、原料投入口を閉鎖したままの状態で、成形運転をステップ1からステップ2に移行させ、
第2成形条件群は、第1成形条件群と溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件を変更する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステップ1で成形運転において原料投入口を閉鎖した後、ステップ1からステップ2に移行し、第2成形条件群は、第1成形条件群と溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件が変更される。原料投入口が閉鎖されたことは成形運転の終了が近づいたことを意味するところ、本発明によれば、適切なタイミングで溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件が変更される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る射出成形機を示す平面図である。
図2】実施形態に係る射出成形機の制御装置の構成を示す図である。
図3】実施形態に係る射出成形機の成形運転を構成する1ショットの内訳を示す図である。
図4】実施形態に係る射出成形機における成形運転の開始から停止までの例を示す図である。
図5】実施形態に係る射出成形機における成形運転の開始から停止までの他の例を示す図である。
図6】実施形態に係る射出成形機における第1成形条件群の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る射出成形機における第2成形条件群の一例を示す図である。
図8】実施形態に係る射出成形機における第2成形条件群の他の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る射出成形機における第2成形条件群の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
実施形態に係る射出成形機1は、図1に示すように、金型部10と、可塑化部20と、これらの動作を制御する制御装置50と、を備えている。射出成形機1は、成形運転の終了が近づいたときのスクリュ溝内の樹脂温度の上昇を抑え、金型部10への過充填を防止することができる。
以下、射出成形機1の構成および基本的な動作を説明した後に、制御装置50による制御手順について説明する。なお、射出成形機1において、図1に示されるように、前(F)および後(R)と定義する。
【0015】
[金型部10:図1参照]
金型部10は、位置が固定される固定金型11と、固定金型11に対して進退移動が可能とされる可動金型13と、を備える。固定金型11と可動金型13とが突き合わされる型締めの状態において、固定金型11と可動金型13の間に金型キャビティ15が形成される。可塑化部20で可塑化された樹脂が金型キャビティ15に射出、充填される。
なお、図示が省略されるが、固定金型11は固定型盤に取り付けられ、可動金型13は可動型盤に取り付けられる。固定型盤と可動型盤との間に両者を連結する複数のタイバーが設けられ、タイバーを介して例えば油圧シリンダの圧力を固定型盤と可動型盤との間に作用させることで型締めまたは型開きが行われる。また、図示が省略されるが、金型部10には射出成形品を型開きの状態で金型から突き出すエジェクタピンが設けられている。
【0016】
[可塑化部20:図1参照]
可塑化部20は、加熱筒21と、加熱筒21の前端に設けられる吐出ノズル23と、加熱筒21の内部に回転可能に設けられたスクリュ25と、加熱筒21の前方側の周囲に巻き付けられるヒータ27と、を備えている。ペレット状の原料樹脂は、加熱筒21に設けられる原料投入口29を介して加熱筒21の内部に供給される。ヒータ27は、制御装置50の指示により、加熱筒21の内部の樹脂を加熱する。加熱筒21は位置が固定されており、スクリュ25は加熱筒21の内部を前進または後退が可能とされる。スクリュ25は、スクリュ軸25Aと、その周囲に形成されるらせん状のフライト25Bと、スクリュ軸25Aの後端に設けられ、後述するスクリュ駆動軸45Aに固定される固定端25Cを備える。
【0017】
また、可塑化部20は、スクリュ25を前進又は後退させる第1駆動装置30と、スクリュ25を正転又は逆転させる第2駆動装置40と、を備えている。第1駆動装置30は、第2駆動装置40を介してスクリュ25を前進又は後退させる。
【0018】
第1駆動装置30は、加熱筒21の外周に固定される第1基台31と、第1基台31を貫通して前後方向に延びる一対のボールねじ33と、ボールねじ33を正転または逆転させる一対の射出用電動モータ35と、を備える。
ボールねじ33は、ボールねじ軸33Aと、ボールねじ軸33Aと嵌装されるボールねじナット33Bと、を備える。ボールねじ軸33Aは前方の側において第1基台31を貫通し、かつ、第1基台31に対して回転可能に設けられる。ボールねじナット33Bは、第2駆動装置40のハウジング41に固定される。
射出用電動モータ35は、第1基台31に支持されながらボールねじ軸33Aと図示が省略される出力軸が結合される。射出用電動モータ35は例えばサーボモータからなり、出力軸の回転状態を検出するエンコーダ36が設けられている。制御装置50は、エンコーダ36からの回転検出結果を取得しながら、射出用電動モータ35の回転を制御する。
【0019】
第2駆動装置40は、加熱筒21の後方に設けられるハウジング41と、ハウジング41の後端に取り付けられる可塑化用電動モータ43と、可塑化用電動モータ43の回転駆動力をスクリュ25に伝える伝達機構45と、を備える。
ハウジング41は、伝達機構45が収容される収容室41Aと、ボールねじナット33Bを保持する保持体41Bと、を備える。一対のボールねじ33のそれぞれのボールねじナット33Bを保持するように、二つの保持体41Bが設けられている。
【0020】
可塑化用電動モータ43は、伝達機構45を介して、スクリュ25を正転または回転させる。可塑化用電動モータ43は、制御装置50の指示に基づいてその出力軸43Aを正転または逆転させる。
【0021】
伝達機構45は、可塑化用電動モータ43の出力軸43Aとスクリュ25の固定端25Cを接続するカップリング45Bを備える。カップリング45Bはスクリュ25の固定端25Cを嵌合により固定するスクリュ駆動軸45Aを備える。また、伝達機構45は、収容室41Aの内部においてカップリング45Bを回転可能に支持する軸受45Cと、軸受45Dと、を備える。また、伝達機構45は、固定端25Cとスクリュ駆動軸45Aの間にロードセル45Eが設けられ、スクリュ25が軸方向Cに受ける圧力を検出することができる。なお、ロードセル45Eが配置される部位は固定端25Cとカップリング45Bの間に限るものではなく、例えばカップリング45Bと軸受45Dの間あるいはカップリング45Bと収容室41Aの間に設けられても支障ない。制御装置50は、ロードセル45Eからの検出圧力を取得しながら、可塑化におけるスクリュ25の背圧、その他を制御する。
【0022】
ハウジング41は前進または後退が可能に支持されており、ハウジング41が前進すれば可塑化用電動モータ43および伝達機構45も前進し、ハウジング41が後退すれば可塑化用電動モータ43および伝達機構45も後退する。
【0023】
[可塑化部20の動作:図1参照]
第1駆動装置30の射出用電動モータ35,35が例えば正転したとすると、ボールねじ軸33A,33Aも正転する。そうすると、ボールねじ軸33A,33Aの回転に伴って、ボールねじ軸33A,ボールねじ軸33Aに嵌め合わされているボールねじナット33B,ボールねじナット33Bが例えば前進する。ボールねじナット33B,ボールねじナット33Bは保持体41B,41Bに固定されているので、ボールねじナット33B,ボールねじナット33Bが前進すると保持体41B,41Bが前進するのに準じてハウジング41が前進する。このとき、可塑化用電動モータ43および伝達機構45も前進する。
第1駆動装置30の射出用電動モータ35,35が例えば逆転すると、以上と逆の動作をすることで、ハウジング41、可塑化用電動モータ43および伝達機構45は後退する。
【0024】
第2駆動装置40の可塑化用電動モータ43が例えば正転したとすると、伝達機構45を介して、スクリュ25は正転し、第2駆動装置40の可塑化用電動モータ43が例えば逆転したとすると、スクリュ25は逆転する。
【0025】
射出成形機1は、スクリュ25の前進または後退および正転または逆転を組み合わせることにより、一連の樹脂の射出成形を実行する。
【0026】
[制御装置50:図2参照]
次に、制御装置50について説明する。
制御装置50は、コンピュータにより構成され、射出成形機1の動作状態を監視するとともに射出用電動モータ35および可塑化用電動モータ43の動作を制御する。射出用電動モータ35および可塑化用電動モータ43の動作の制御は、可塑化部20の動作を制御することを意味する。
制御装置50は、図1に示すように、制御部51と、記憶部53と、操作部55と、表示部57と、を有する。制御装置50は、制御部51~表示部57以外の要素を含むことができる。
【0027】
[制御部51]
制御部51は、記憶部53から読み出されたプログラムに基づき、各種機能を実行する。この機能は、射出用電動モータ35および可塑化用電動モータ43の動作を制御する第1機能と、成形条件の設定/変更を制御する第2機能と、を含む。
第1機能は、エンコーダ36およびロードセル45Eの検出結果に基づいて、射出用電動モータ35および可塑化用電動モータ43を制御する。
第2機能は、記憶部53に記憶されている成形条件に関する情報を参照して、成形条件の設定/変更を行う。第2機能においても、エンコーダ36およびロードセル45Eの検出結果が利用されることがある。例えば、エンコーダ36の検出結果に基づいて、スクリュ25の前進または後退の速度、後退量を取得できる。また、ロードセル45Eの検出結果に基づいて、計量工程におけるスクリュ25の背圧、射出工程における射出圧力、保圧工程における保圧圧力を取得できる。
制御部51は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)から構成される。
【0028】
[記憶部53]
記憶部53は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、制御部51が第1機能および第2機能を実行するのに必要な各種プログラムおよびデータを格納する。記憶部53は、物理的に一体をなしていてもよいし、物理的に複数の記憶要素に分かれていてもよい。物理的に一体をなしている場合に、記憶されるデータの種別に応じて、記憶領域が区分できる。物理的に複数の記憶要素に分かれている場合には、記憶されるデータの種別に応じて、記憶される要素を特定できる。
【0029】
制御部51が第1機能および第2機能を実行するのに必要なプログラムとしては、射出成形の手順に関するものがある。その中で、本実施形態に関わるものとして、原料投入口29が閉塞された後の成形条件群の変更の手順がある。例えば、原料投入口29が閉塞された後にステップ1からステップ2に成形運転が移行してから、所定の成形ショットの回数n(n≧1)の毎に第2成形条件群を変更する手順が該当する。また、計量工程におけるスクリュの後退速度または所定時間におけるスクリュの後退量が、所定の値を下回ると前記第2成形条件群を変更する手順が該当する。
【0030】
[操作部55,表示部57]
操作部55は、射出成形機1のオペレータによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御部51に出力する。表示部57は、制御部51による制御下で、操作部55における入力操作に応じた画像を表示する。図6図9は、表示部57における成形条件群の表示例である。
【0031】
表示部57の表示画面は、射出成形機1の設定などに用いられる。オペレータは、表示部57で表示される表示画面を見ながら、操作部55を操作することにより射出成形機1の設定などを行う。
【0032】
操作部55および表示部57は、例えばタッチパネルで構成することで、一体化されていてもよい。図2においては、両者の存在を明確にするために、操作部55および表示部57が独立している例を示している。
【0033】
[射出成形機1による成形手順:図3図6参照]
射出成形機1は、図3に示される工程を含む1ショットの動作を行うことにより単数または複数の成形品を得る。図3に示されるように、1ショットは、型締めを含む型閉工程、射出工程、可塑化工程、型開工程および取り出し工程で構成され、この順に実行される。制御装置50は、この一連の工程からなる成形ショットの実行を制御する。なお、図3には射出用電動モータ35および可塑化用電動モータ43のON/OFFの一例を合わせて示しているが、モータの回転方向(正転/逆転)までは示してはいない。また、以上で列挙された工程は例示であり、他の工程を含むこともある。また以下で列挙される工程における複数種類の成形条件は、パラメータとして記憶部53に記憶され、制御部51が必要なパラメータを用いて射出成形機1の動作を制御する。
【0034】
型締工程:固定金型11と可動金型13とを閉じて高圧で型締めする。
型締工程においても型締力などの条件が設定されるが、この条件は本実施形態の目的と関連しないため、説明を省略する。型開工程および取り出し工程についても同様である。
【0035】
可塑化/計量工程:樹脂原料である樹脂ペレットをスクリュ25の先端へ搬送するのにともない加熱筒21の内部でヒータ27からの加熱と可塑化用電動モータ43から負荷されるスクリュ回転トルクによる剪断発熱によって溶融して可塑化させる。可塑化された溶融樹脂を更にスクリュ25の先端に搬送して一定容量を蓄積する計量が行われる。
可塑化/計量工程において設定される成形条件は、以下が掲げられる。この成形条件は、溶融樹脂の温度抑制に関与する。
スクリュ25の回転数RS
スクリュ25の背圧BP
【0036】
射出工程:可塑化された溶融樹脂を可動金型13と固定金型11により形成される金型キャビティ15に射出、充填する。射出工程において設定される成形条件は、以下の射出速度VI、射出圧力PHおよび切換位置LIが掲げられる。これらの成形条件は、溶融樹脂の温度抑制に関与する。図6に射出速度VI、射出圧力PHおよび切換位置LIの一例が示されているが、射出速度VI、射出圧力PHおよび切換位置LIが段階的に切り替えられる。
射出速度VI:金型キャビティへ溶融樹脂を充填する際の速度であって、スクリュ25の前進速度
射出圧力PH:溶融樹脂を金型キャビティ15へ充填させるための圧力であって、スクリュ25を前進させるための圧力
射出速度/圧力の切換位置LI;射出工程中に、射出速度VIおよび射出圧力PHの切り替えを行うが、この切り換えを行う位置。
【0037】
保圧工程:金型キャビティ15に充填された溶融樹脂が冷却固化するまで溶融樹脂への圧力付与を継続する。保圧工程において設定される成形条件は、以下の保圧圧力PL、保圧時間TBおよび保圧勾配TPが掲げられる。図6に保圧圧力PL、保圧時間TBおよび保圧勾配TPの一例が示されているが、保圧圧力PLおよび保圧時間TBが段階的に切り替えられる。
保圧圧力PL:金型キャビティ15に充填された溶融樹脂に加えられる圧力であって、スクリュ25の前進力による圧力
保圧時間TB:保圧圧力PLを加える時間
保圧勾配TP:保圧圧力PLを変化させるときの変化の程度
【0038】
型開工程:固定金型11から可動金型13を後退させて金型部10を開放する。
取り出し工程:金型キャビティ15の内部で冷却固化された成形品を取り出す。
【0039】
ここで、例えば第1成形条件群の「群」とは、以下の意味を有する。ショットを構成する型閉工程~取り出し工程のそれぞれにおいて、以上のように、単一または複数種類の成形条件が設定される。それぞれの成形条件は、パラメータとして制御装置50に入力、設定される。つまり、ショットは複数種類の成形条件としてのパラメータを含んでおり、個々の成形条件(パラメータ)の集合であることから、「成形条件」と区別するために「群」を用いる。例えば、図6に示される射出速度VI、射出圧力PH、切換位置LI、保圧圧力PL、保圧時間TBおよび保圧勾配TPのそれぞれが成形条件であり、成形条件である射出速度VI、射出圧力PH、切換位置LI、保圧圧力PL、保圧時間TBおよび保圧勾配TPの集合が成形条件群である。
【0040】
射出成形機1で同じ成形品を作製する場合、通常、図4の基本パターンに示されるように、成形運転開始(START)から成形運転停止(END)まで、ショット(1shot)を複数回繰り返す。成形運転停止に近づくと、原料樹脂の加熱筒21の内部への投入が止められる。具体的には、加熱筒21に設けられる原料投入口29が閉鎖(CLOSE)される。これは以下の理由による。なお、投入口が閉鎖(CLOSE)される前には、原料投入口29から加熱筒21の内部に原料樹脂が継続して投入される。
成形運転停止(END)するときには、スクリュ25のフライト25Bの間の溝内に樹脂が残っていない空の状態であることが望ましい。スクリュ25の溝内に樹脂が残ったままで停機すると、次回、成形運転を立ち上げる際に、加熱筒21を加熱昇温する過程において、スクリュ25の溝内の樹脂が熱劣化することがあるためである。このときスクリュ25の溝内に樹脂が充満して滞留樹脂量が多いと熱劣化する樹脂量も多くなるので、成形運転を始める前に良品成形品には使えない熱劣化した廃棄しなければならない樹脂量が多くなるためである。そこで、成形運転停止(END)に近づくと、原料投入口29を閉鎖することによって、スクリュ25の溝内に樹脂が残るのを制限する。しかし、この原料投入口29の閉鎖は、スクリュ25の基部における樹脂が少ない飢餓状態を生じさせる。本実施形態は、この飢餓状態と充満状態との可塑化溶融樹脂の状態変化に対する対策を提供する。
【0041】
[飢餓状態に対する対策:図4図5参照]
飢餓状態に対する対策について説明する。
この対策は成形条件群を変更するが、変更の前提により第1対策と第2対策の二つに区分される。第1対策は原料投入口29が閉鎖(CLOSE)された後のショット数に応じて成形条件群を変更し、第2対策は原料投入口29が閉鎖(CLOSE)された後のスクリュ25の後退に関する検出情報に応じて成形条件群を変更する。以下、第1対策および第2対策の順に説明する。なお、成形条件群については後述する。
【0042】
[第1対策:図4参照]
第1対策は、複数の成形ショット回数n(n≧1)の毎に成形条件群を変更する。より具体的な例が図4に示されている。
図4に示すパターン1は、第1成形条件群で複数ショットの射出成形運転を行っていたが、原料投入口が閉鎖(CLOSE)された後に、所定のタイミングで成形運転は第2成形条件群に切り替えて成形運転停止(END)まで3回のショット(3サイクル)を伴う射出成形を行う事例を示す。第2成形条件群による3回のショットは全ての成形条件が一致する。
パターン2は、第1成形条件群で複数ショットの射出成形運転を行っていたが、原料投入口が閉鎖(CLOSE)された後に、所定のタイミングで第2-1成形条件群(ステップ2-1)に切り替えて2回のショットの成形運転を行い、次いで、第2-2成形条件群(ステップ2-2)に切り替えて1回のショットを行って成形運転停止(END)となる。第2-1成形条件群による2回のショットは全ての成形条件(設定値)が一致する。
【0043】
以上では、第2成形条件群によるステップ2が二つに区分される例(n=2)までしか示していないが、本実施形態は、第2成形条件群によるステップ2を三つ以上(n≧3)に区分することもできる。それぞれ区分されるそれぞれのステップ2-nにおける、各ショット(各サイクル)の成形条件(設定値)は一致する。なお例えば、ステップ2-nとステップ2-(n-1)の成形条件は一部のみ一致しても全部異なってもよい。
【0044】
[第2対策:図5参照]
第2対策は、スクリュ25の後退に関する検出情報、より具体的には計量工程におけるスクリュ25の後退速度V25またはスクリュ25の所定時間における後退量L25に基づいて、成形条件群を変更する。成形条件群を変更するには、後退速度閾値Vtまたは後退量閾値Ltを予め設定しておき、検出される後退速度V25または後退量L25と比較される。なお、このとき後退速度閾値Vtと比較する後退速度V25は瞬間的な速度であっても、所定区間における平均速度であってもどちらでもよい。
図5におけるパターン1は、原料投入口29が閉鎖された後であって、検出される後退速度V25と後退速度閾値Vtとを比較し、後退速度V25が後退速度閾値Vtを下回ったときに、第1成形条件群から第2成形条件群に切り替える。
【0045】
図5におけるパターン2は、後退速度閾値Vtをvt1とvt2の二つ設ける。そして、原料投入口29が閉鎖された後であって、検出される後退速度V25と後退速度閾値Vt1とを比較し、後退速度V25が後退速度閾値Vt1を下回ったときに、第1成形条件群から第2-1成形条件群に切り替える。後退速度V25を継続して検出して後退速度閾値Vt2と比較し、後退速度V25が後退速度閾値Vt2を下回ったときに、第2-1成形条件群から第2-2成形条件群に切り替える。後退速度V25が後退速度閾値Vt2を下回ると必ずしも成形条件群を切り換えなくてもよい。例えばノイズによる誤信号の検出を回避するため、後退速度V25が後退速度閾値Vt2を下回る信号が発生した回数をカウントしておき、このカウントした回数が所定の回数を下回ったときに第2-1成形条件群から第2-2成形条件群に切り替えることが好ましい。
図5におけるパターン3は、後退量閾値をLt1とLt2の二つ設ける。そして、原料投入口29が閉鎖された後であって、検出される所定時間における後退量L25と後退量閾値Lt1とを比較し、所定時間における後退量L25が後退量閾値Lt1を下回ったときに、第1成形条件群から第2-1成形条件群に切り替える。所定時間における後退量L25を継続して検出して後退量閾値Lt2と比較し、所定時間における後退量L25が後退量閾値Lt2を下回ったときに、第2-1成形条件群から第2-2成形条件群に切り替える。
【0046】
スクリュ25の計量工程における後退速度V25はスクリュ25から吐出された樹脂量に比例する。したがって、スクリュ25による樹脂の搬送速度が小さくなるとスクリュ25の後退速度も低下する。このため、スクリュ25の後退速度の低下を監視することでスクリュ25の溝内の飢餓状態の度合いを検知できる。よって、スクリュ25から吐出される樹脂の温度をスクリュ25の後退速度に基づいて推定して一意的に把握することができる。これを利用することによって、スクリュ溝内の充填状況を把握して適切に成形条件を切り替えることができる。
【0047】
[切り替える成形条件例]
切り替える成形条件としては、以下の中から少なくとも1つが選択される。以下の条件は、溶融樹脂の温度上昇を抑制できる要素である。
(1)計量工程における背圧BP
可塑化工程における背圧BPをそれまでよりも小さくする。そうすることにより、スクリュ後退の抵抗を小さくできる。これによりスクリュ先端部の溶融樹脂圧力が低下するため、スクリュ25内の樹脂搬送力が低下しても搬送速度の低下を小さくできる。これによりスクリュ溝内で溶融樹脂が剪断力を負荷される時間が増大するのを抑制できるので、溶融樹脂の温度上昇を抑制できる。これにより過充填などの不都合が生じるリスクを小さくできる。なお、背圧BPは、スクリュ25の固定端25Cとスクリュ駆動軸45Aの間に設けられるロードセル45Eにより背圧BPを検出してフィードバック制御すればよい。
【0048】
(2)可塑化/計量工程におけるスクリュ25の回転数RS
スクリュ25の回転数RSをそれまでよりも高くする。そうすることによって、スクリュ25の溝内の樹脂搬送速度を上昇させて、スクリュ25の溝内で樹脂が剪断力を負荷される時間を短くできる。これにより、溶融樹脂の温度上昇を抑制して過充填などの不都合が生じるリスクを小さくできる。
【0049】
(3)加熱筒21の温度Tc
スクリュ溝内の樹脂は高温の加熱筒21から熱を受けるため、加熱筒21の温度を低くすることによって加熱筒21から受ける熱量を低下させて、溶融樹脂温度の上昇を抑制して過充填などの不都合が生じるリスクを小さくできる。
【0050】
(4)スクリュ25の前進速度(射出速度VI)を低くする。
キャビティに充填された溶融樹脂は低温のキャビティ壁面と接触することにより温度が低下する。射出速度VIが低くなることにより流動中にキャビティ壁面に熱が奪われる時間が増大するため、樹脂温度の低下度合いが大きくなる。これにより可塑化時に温度上昇し粘度が低下している溶融樹脂を、充填中の粘度上昇度合いを大きくして、過充填などの不都合が生じるリスクを小さくできる。
【0051】
(5)射出速度切換位置LI
射出される溶融樹脂温度が上昇すると、キャビティ内で温度低下しても低下した後の温度は、生産運転時の樹脂温度よりも高い状態である。このためこの時の樹脂粘度も低い状態となり、生産運転時のキャビティ内流動時の圧力低下度合いも小さい。このため射出開始からの経過時間が同じでも、流動末端の位置は生産運転時よりも下流側に移動する。これに対し、射出速度切り換え位置、特に保圧切り換え位置を上流側に変更することにより過充填などの不都合が生じるリスクを小さくできる。
【0052】
(6)射出圧力PH
射出工程における射出圧力PHを低くすることにより、圧力流である溶融樹脂の充填流の速度を低下させて、上記(5)と同様の効果が得られる。
【0053】
(7)保圧圧力PLまたは保圧時間TB
保圧圧力PLを低くすることによりキャビティ末端部の樹脂圧を低下させることができる。また、保圧時間TBを短くすることでキャビティ末端部の樹脂圧が負荷される時間が短縮できるので、過充填などの不都合が生じるリスクを小さくできる。
【0054】
[成形条件群の切換例:図6図7図8図9参照]
いま、図6に示される条件(当初条件)で射出成形機1の運転が行われ、射出成形品が作製されているものとする。この第1成形条件群で射出成形されているのをステップ1とすると、図7に示される第2成形条件群による射出成形するステップ2に切り替わる。この切り替わりの前提として、原料投入口29が閉鎖される。原料投入口29の閉鎖したことを制御部装置50が知得した後、所定のタイミングで成形条件群の切換が実行される。原料投入口29の閉鎖したことを制御部装置50が知得する手段は、オペレータが制御部装置50に手動操作により入力しても、あるいは原料投入口29の付近に図示しないセンサを設け、このセンサ等により自動で検知してもよい。
【0055】
第1成形条件群は、図6に示されるように、射出工程において、射出速度VIが10.0、20.0、30.0、40.0、50.0および60.0(%)と、1ショットの中で6段階に設定されている。射出圧力PHも同様であり、6段階に設定されている。切換位置LIは105.0、50.0、40.0、30.0、20.0および10.0(mm)と、1ショットの中で6段階に設定されている。保圧工程については保圧圧力PLおよび保圧時間TBが4段階に設定されている。
【0056】
原料投入口29の閉鎖に伴って、第2成形条件群によるステップ2に射出成形機1の運転が移行する。図7に第2成形条件群の一例が示されている。図7に示される例は、切り替え位置LIが同じ条件のまま射出速度VIおよび射出圧力PHが以下のように切り替えられている。なお、射出速度VIおよび射出圧力PHのそれぞれにおいて、上段がステップ1、下段がステップ2における条件である。
射出速度VI:10.0、20.0、30.0、40.0、50.0および60.0(%)
射出速度VI: 5.0、10.0、20.0、30.0、40.0および50.0(%)
射出圧力PH:10.0、20.0、30.0、40.0、50.0および60.0(%)
射出圧力PH: 5.0、10.0、20.0、30.0、40.0および50.0(%)
【0057】
図8は、第2成形条件群の他の例を示している。図8の例は、保圧工程における保圧圧力PLを低い値に切り替えている。他の成形条件は従前のままである。
保圧圧力PL:10.0、20.0、30.0、0.0(%)
保圧圧力PL: 5.0、10.0、20.0、0.0(%)
【0058】
図9は、第2成形条件群のさらに他の例を示している。図9の例は、射出工程における切換位置LIを保圧切り換え位置を上流側に変更している。
【0059】
なお、可塑化/計量工程の成形条件であるスクリュ25の回転数RSおよびスクリュ25の背圧BPのステップ1とステップ2の切り替えについても、上述した射出工程における射出速度VI、射出圧力PH、保圧圧力PLのステップ1とステップ2の切り替えと同様であるので図示を省略する。
【0060】
[実施形態が奏する効果]
ステップ1で成形運転をしている最中に、射出成形機1における制御装置50が、原料投入口29が閉鎖されることに基づいて、ステップ1からステップ2に移行し、第2成形条件群は、第1成形条件群と溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件が変更される。原料投入口29が閉鎖されたことは成形運転の終了が近づいたことを意味するところ、射出成形機1によれば、適切なタイミングで溶融樹脂の温度抑制に関与する成形条件が変更される。
【0061】
本実施形態によれば、ステップ2に移行した後に、1ショット毎に第2成形条件群の中の成形条件を変更することができる。したがって、スクリュ25から吐出された溶融樹脂の小さな温度変化に対応した条件で残りの成形運転を実行できる。
【0062】
本実施形態によれば、ステップ2に移行した後に、複数ショット毎に第2成形条件群の中の成形条件を変更することができる。したがって、段階的に大きく成形条件を変更することができるので、目標とする状態に達するまでの時間やショット数を小さくすることができる。また、1ショットの成形品重量が小さくスクリュ溝内の樹脂の消費量が少ないために飢餓状態の変化が小さい場合に、1ショット毎に第2成形条件群の中の成形条件を変更すると成形状態が不安定となる場合がある。この場合、複数ショット毎に第2成形条件群の中の成形条件を変更することで安定した成形状態を維持しながら成形条件群を切り替えることができる。
【0063】
スクリュ25の計量工程における後退速度は、スクリュ25から吐出された樹脂量に比例するので、スクリュ溝内の溶融樹脂の搬送速度が小さくなるとスクリュ25の後退速度も低下する。このため、スクリュ25の後退速度を監視することでスクリュ溝内の飢餓状態の度合いを検知できる。よってスクリュ25から吐出される樹脂温度をスクリュの後退速度によって一意的に把握することができる。これを利用することによって、充填状況を把握して適切に成形条件を変更することができる。
【0064】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明の射出成形方法において、ステップ1およびステップ2における成形運転は、上述した射出成形品を生産する生産成形運転の終了時だけでなく、生産成形運転を開始する前の準備成形運転と併用することできる。つまり、生産成形運転を開始する立上時には、射出速度、圧力などの成形条件を徐々に変化させる準備成形運転を行うとともに、生産成形運転の終了時において本発明を適用することもできる。
また、計量工程における飢餓状態の検出は、スクリュの後退速度に基づくのに代えて、図示しない電源から可塑化用電動モータ43に供給される電流値により可塑化用電動モータ43の出力トルク(可塑化トルク)を監視し、可塑化トルクが所定値を下回ったことにより検知してもよい。具体的には、スクリュ溝内の原料樹脂が減少するため、原料樹脂の剪断発熱に必要なスクリュ駆動トルクも低下する。またスクリュ基部が飢餓状態となり原料樹脂が減少すると、スクリュ基部の原料樹脂と加熱筒内周面の摩擦も低下するので、スクリュ駆動トルクは低下することになる。これにより、スクリュ基部が飢餓状態となることを可塑化用電動モータ43の駆動トルクにより検知できる。
【符号の説明】
【0065】
1 射出成形機
10 金型部
11 固定金型
13 可動金型
20 可塑化部
21 加熱筒
23 吐出ノズル
25 スクリュ
25A スクリュ軸
25B フライト
25C 固定端
27 ヒータ
29 ホッパ
30 第1駆動装置
31 第1基台
33 ボールねじ
33A ボールねじ軸
33B ボールねじナット
35 射出用電動モータ
36 エンコーダ
40 第2駆動装置
41 ハウジング
41A 収容室
41B 保持体
43 可塑化用電動モータ
43A 出力軸
45 伝達機構
45A スクリュ駆動軸
45B カップリング
45C,45D 軸受
45E ロードセル
50 制御装置
51 制御部
53 記憶部
55 操作部
57 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9