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特開2025-62414シールチェック装置および包装検査システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062414
(43)【公開日】2025-04-14
(54)【発明の名称】シールチェック装置および包装検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20250407BHJP
   B65B 57/02 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
G01M3/26 H
B65B57/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171474
(22)【出願日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】福井 千明
(72)【発明者】
【氏名】谷川 壮洋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】横田 祐嗣
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA47
2G067BB26
2G067BB30
2G067BB36
2G067DD14
2G067DD27
2G067EE15
(57)【要約】
【課題】トレイへの圧力が大きくなり過ぎることを抑制する
【解決手段】シールチェック装置において、検出部は、トレイが接触部に接しているときに、接触部の高さ位置の変位量を検出する。検査部は、変位量を閾値と比較することで、フィルムのシール状態を検査する。制御部は、トレイの縁の高さ位置よりも高い第1高さ位置で接触部を待機させ、トレイが搬送されてくると、昇降部が接触部に加える力を変更して、接触部を第1高さ位置から所定の第2高さ位置に向けて下降させる。制御部は、接触部がトレイのフィルムに接すると、第1の力を第2の力に変更して、接触部からトレイのフィルムに対して圧力をかけさせる。第1の力は、接触部がトレイのフィルムに接する前に昇降部が接触部に加えていた力である。第2の力は、第1の力とは異なる力である。
【選択図】図11B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁に囲まれた開口がフィルムによってシールされたトレイに対して、シールチェックを行うシールチェック装置であって、
前記トレイを搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアの上方に配置され、前記搬送コンベアで搬送される前記トレイと接触する接触部と、
前記接触部の高さ位置を変更させる昇降部と、
前記トレイが前記接触部に接しているときに、前記接触部の高さ位置の変位量を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記変位量を、予め設定された閾値と比較することで、前記フィルムのシール状態を検査する検査部と、
前記昇降部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記接触部を前記トレイの前記縁の高さよりも高い第1高さ位置で待機させ、
前記トレイが搬送されてくると、前記昇降部が前記接触部に加える力を変更して、前記接触部を前記第1高さ位置から所定の第2高さ位置に向けて下降させ、
前記接触部が前記トレイの前記フィルムに接すると、前記接触部が前記トレイの前記フィルムに接する前に前記昇降部が前記接触部に加えていた第1の力を、前記第1の力とは異なる第2の力に変更して、前記接触部から前記トレイの前記フィルムに対して圧力をかけさせる、
シールチェック装置。
【請求項2】
前記接触部には、重力による下向きの力と、前記昇降部による上向きの力とが作用し、
前記第1の力および前記第2の力は、前記昇降部による上向きの力である、
請求項1に記載のシールチェック装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2高さ位置を、前記トレイの種類に応じて変更する、
請求項1又は2に記載のシールチェック装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の力を、前記トレイの種類に応じて変更する、
請求項1又は2に記載のシールチェック装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記接触部を前記第1高さ位置から下降させているときに、前記昇降部が前記接触部に加える力を変更し、前記接触部が前記トレイの前記フィルムに接する前の所定の高さ範囲において、前記接触部に作用する前記昇降部による上向きの力を増加させる、
請求項2に記載のシールチェック装置。
【請求項6】
前記接触部は、前記フィルムのうち前記トレイの前記縁と重ならない部分に接触する、
請求項1又は2に記載のシールチェック装置。
【請求項7】
前記接触部は、前記昇降部に対して脱着可能であり、前記トレイの種類に応じて取り替えられる、
請求項6に記載のシールチェック装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のシールチェック装置と、
商品が収容された状態の前記トレイの前記縁に前記フィルムを貼って前記開口をシールするトップシール装置と、
前記トップシール装置で前記開口がシールされた前記トレイを搬送する第1搬送部と、
前記第1搬送部と前記シールチェック装置との間に配置され、前記第1搬送部から前記トレイを受け取り、前記シールチェック装置の前記搬送コンベアへと前記トレイを搬送する第2搬送部と、
を備え、
前記第2搬送部の搬送速度は、前記第1搬送部の搬送速度よりも速い、
包装検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールチェック装置および包装検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トップシールを施した包装体を検査し、不良包装を検出する装置が存在している。例えば、特許文献1(特開2006-160264号公報)の装置では、コンベア上の包装体に対してエアシリンダの押圧面を当てて、包装体の上面を押圧する。そして、エアシリンダに接続したセンサからの信号に基づいて、不良包装体を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トップシールを施した包装体であるトレイには、トレイによってトレイ本体の材質などの違いがあるが、柔らかい素材が使われている場合、押圧の力が強すぎるとトレイやトレイ内の商品を傷つけてしまう恐れがある。
【0004】
本発明の課題は、トレイへの圧力が大きくなり過ぎることを抑制できるシールチェック装置および包装検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点のシールチェック装置は、縁に囲まれた開口がフィルムによってシールされたトレイに対して、シールチェックを行うシールチェック装置である。シールチェック装置は、トレイを搬送する搬送コンベアと、接触部と、昇降部と、検出部と、検査部と、制御部とを備える。接触部は、搬送コンベアの上方に配置される。接触部は、搬送コンベアで搬送されるトレイと接触する。昇降部は、接触部の高さ位置を変更させる。検出部は、トレイが接触部に接しているときに、接触部の高さ位置の変位量を検出する。検査部は、検出部により検出された変位量を、予め設定された閾値と比較することで、フィルムのシール状態を検査する。制御部は、昇降部を制御する。制御部は、接触部を第1高さ位置で待機させる。第1高さ位置は、トレイの縁の高さ位置よりも高い。制御部は、トレイが搬送されてくると、昇降部が接触部に加える力を変更して、接触部を第1高さ位置から所定の第2高さ位置に向けて下降させる。制御部は、接触部がトレイのフィルムに接すると、第1の力を第2の力に変更して、接触部からトレイのフィルムに対して圧力をかけさせる。第1の力は、接触部がトレイのフィルムに接する前に昇降部が接触部に加えていた力である。第2の力は、第1の力とは異なる力である。
【0006】
ここでは、シールチェックのための第2の力を、接触部がトレイのフィルムに接する前の第1の力とは異ならせている。このため、トレイのフィルムに接触部が接するときに接触部からトレイに作用する力の大きさを抑制することができ、トレイにかかる圧力が過剰になってしまうことが抑えられる。
【0007】
第2観点のシールチェック装置は、第1観点のシールチェック装置であって、接触部には、重力による下向きの力と、昇降部による上向きの力とが作用する。第1の力および第2の力は、昇降部による上向きの力である。
【0008】
ここでは、接触部には、自身の質力に応じた重力による下向きの力と、昇降部による上向きの力とが作用している。前者の下向きの力が後者の上向きの力よりも大きくなると接触部が下降し、前者の下向きの力が後者の上向きの力よりも小さくなると接触部が上昇する。そして、前者の下向きの力が後者の上向きの力よりも大きい状態で、接触部がトレイのフィルムに接触した後は、前者の下向きの力と後者の上向きの力との差分の下向きの力がトレイに作用する。
【0009】
第3観点のシールチェック装置は、第1観点又は第2観点のシールチェック装置であって、制御部は、第2高さ位置を、トレイの種類に応じて変更する。
【0010】
第2高さ位置がトレイの縁の高さ位置から大きく離れていると、シールチェック時にトレイに必要以上の力が作用する恐れがある。しかし、ここでは、トレイの材質やサイズに応じて第2高さ位置を変更することができるため、シールチェック時にトレイに作用する力を適切な範囲に収めることができる。
【0011】
第4観点のシールチェック装置は、第1観点から第3観点のいずれかのシールチェック装置であって、制御部は、第2の力を、トレイの種類に応じて変更する。
【0012】
トレイの種類によっては、シールチェックのための第2の力が大きすぎると、トレイが変形したり損傷したりする恐れがある。しかし、ここでは、トレイの材質やサイズに応じて第2の力を変更することができるため、シールチェック時にトレイに作用する力を適切な範囲に収めることができる。
【0013】
第5観点のシールチェック装置は、第2観点のシールチェック装置であって、制御部は、接触部を第1高さ位置から下降させているときに、昇降部が接触部に加える力を変更する。この制御によって、制御部は、接触部がトレイのフィルムに接する前の所定の高さ範囲において、接触部に作用する昇降部による上向きの力を増加させる。
【0014】
ここでは、接触部がトレイのフィルムに接する前に、接触部に作用する昇降部による上向きの力が増加し、接触部の重力による下向きの力との差が小さくなる。これにより、接触部がトレイのフィルムに接するときに接触部からトレイに作用する力を適切な大きさに抑えることができる。言い換えると、ここでは、トレイのフィルムに接触するときの接触部の見かけ上の質量を小さくして、接触部がトレイに当たるときの衝撃を低減することができる。
【0015】
第6観点のシールチェック装置は、第1観点から第5観点のいずれかのシールチェック装置であって、接触部は、フィルムのうちトレイの縁と重ならない部分に接触する。
【0016】
第7観点のシールチェック装置は、第1観点から第6観点のいずれかのシールチェック装置であって、接触部は、昇降部に対して脱着可能であり、トレイの種類に応じて取り替えられる。
【0017】
ここでは、平面的なサイズが大きいトレイであってもサイズが小さいトレイであっても、接触部を取り替えることによって、適切なシールチェックを行うことができる。
【0018】
第8観点の包装検査システムは、第1観点又は第2観点のシールチェック装置と、トップシール装置と、第1搬送部と、第2搬送部とを備える。トップシール装置は、商品が収容された状態のトレイの縁にフィルムを貼って、縁に囲まれた開口をシールする。第1搬送部は、トップシール装置で開口がシールされたトレイを、搬送する。第2搬送部は、第1搬送部とシールチェック装置との間に配置されている。第2搬送部は、第1搬送部からトレイを受け取って、シールチェック装置の搬送コンベアへとトレイを搬送する。第2搬送部の搬送速度は、第1搬送部の搬送速度よりも速い。
【0019】
この包装検査システムでは、トップシール装置とシールチェック装置との間に第1搬送部および第2搬送部を配置し、第2搬送部の搬送速度を第1搬送部の搬送速度よりも速くしている。これにより、トップシール装置から第1搬送部へと連続的に供給される複数のトレイの搬送方向の隙間が小さい(トレイ間の距離が詰まっている)場合であっても、第1搬送部から第2搬送部へとトレイが載り移るときにトレイ間の隙間を拡げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るシールチェック装置や包装検査システムでは、シールチェックのための第2の力を、接触部がトレイのフィルムに接する前の第1の力とは異ならせている。このため、トレイのフィルムに接触部が接するときに接触部からトレイに作用する力の大きさを抑制することができ、トレイにかかる圧力が過剰になってしまうことが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】包装検査システムの概略配置図である。
図2】検査対象であるトレイの概略図である。
図3A】シールチェック装置の側面図である。
図3B図3Aの一部拡大図である。
図4】シールチェック装置の要部の斜視図である。
図5】シールチェック装置の接触部材を装着した支持体の斜視図である。
図6】シールチェック装置の接触部材を装着した固定部材の斜視図である。
図7】シールチェック装置の支持体の斜視図である。
図8】シールチェック装置の別の接触部材を装着した固定部材の斜視図である。
図9】シールチェック装置の別の接触部材を装着した支持体の斜視図である。
図10】シールチェック装置の制御ブロック図である。
図11A】シールチェックの制御フロー図である。
図11B】シールチェックの制御フロー図である。
図11C】シールチェックの制御フロー図である。
図12】シールチェック装置の接触部材の下降を示す概略図である。
図13】変形例に係る、水平リンクの上部に固定される支持体を別の押圧コンベアに変更した状態のシールチェック装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
(1)包装検査システムの概要
図1に示す包装検査システム10は、トップシール装置90から排出されたトレイTRを第1コンベア11および第2コンベア12によってシールチェック装置100に運び、シールチェック装置100においてトレイTRのシール状態のチェックを行うシステムである。トレイTRは、図2に示すように、上部の開口OPがフィルムTR3によってシールされている。開口OPは、トレイTRの上端の環状の縁TR2に囲まれた開口である。トップシール装置90において、フィルムTR3によるシールは、トレイ本体TR1に商品GD(被包装物)を収容した状態で、縁TR2に対して行われるヒートシールである。トップシール装置90では、フィルムTR3と縁TR2との重なり部分に対して、ヒートシールが行われる。
【0024】
トップシール装置90は、公知の装置であるため詳述は省略するが、上記の特許文献1(特開2006-160264号公報)の装置のように、合成樹脂あるいは紙製のトレイ本体TR1の上部の縁TR2で囲まれた開口OPを耐水プラスチックなどから成るフィルムTR3で覆い、そのフィルムTR3と縁TR2とを加熱して溶着する(ヒートシール)。被包装物であるトレイTR内の商品GDとしては、例えば、液状あるいは水分を含む加工食品が挙げられる。
【0025】
(2)トップシール装置からシールチェック装置へのトレイの搬送
包装検査システム10では、トップシール装置90でトップシールが施されたトレイTRが、第1コンベア11および第2コンベア12によってシールチェック装置100まで搬送される。図1に示すように、包装検査システム10では、包装検査ラインの上流から下流に向けて、トップシール装置90、第1コンベア11、第2コンベア12、シールチェック装置100が直列に並べられている。
【0026】
そして、第2コンベア12の搬送速度は、第1コンベア11の搬送速度よりも速く設定されている。これにより、トップシール装置90から第1コンベア11へと連続的に供給される複数のトレイTRの搬送方向の隙間が小さい(トレイTR間の距離が詰まっている)場合であっても、第1コンベア11から第2コンベア12へとトレイTRが載り移るときに、トレイTR間の隙間が拡がる。したがって、シールチェック装置100には、ある程度の搬送方向(図1の左右方向)の隙間が確保された状態で、複数のトレイTRが供給される。
【0027】
(3)シールチェック装置
シールチェック装置100は、上記のトップシールが施されたトレイTRに対するシールチェックを行う装置である。シールチェック装置100は、主として、トレイTRを搬送する搬送コンベア110と、トレイTRに接触する接触部材120と、接触部材120の高さ位置を変更する昇降機構130と、接触部材120の高さ位置の変位量を検出する検出部140と、トレイTRのシール状態を検査する検査部150と、昇降機構130を制御する制御部160とを備えている。
【0028】
(3-1)搬送コンベア
搬送コンベア110は、シールチェック装置100において、トレイTRの搬入、搬送、排出を行うためのコンベア群であり、第3コンベア113、第4コンベア114および第5コンベア115から構成されている。これらの第3コンベア113、第4コンベア114および第5コンベア115は、第1コンベア11側から順に直列に並んでいる。
【0029】
(3-2)接触部材
接触部材120は、シールチェック時にトレイTRのフィルムTR3に接触して上から圧力を加える部材である。接触部材120は、図3B図4図12に示すように、搬送コンベア110の上方の空間、具体的には第4コンベア114の上方に配置されている。接触部材120は、第4コンベア114で搬送されてくるトレイTRに対して上から接触する。接触部材120が接触するトレイTRの部分は、フィルムTR3のうち上面視において縁TR2と重ならない部分である。また、接触部材120は、樹脂製あるいはゴム製である。
【0030】
(3-3)昇降機構
昇降機構130は、接触部材120の高さ位置を変更させるための機構である。昇降機構130は、主として、接触部材120が固定される支持体133と、支持体133に接触部材120を固定させる固定部材121と、水平状態を保ったまま支持体133の高さ位置を変えるための水平リンク132と、水平リンク132の下部のレバーを移動させるサーボモータ138とを備える。
【0031】
支持体133は、図4に示すように、水平リンク132の上部に固定され、トレイTRの搬送方向に直交する方向に長く延びている。支持体133は、水平リンク132に固定される両端部133a,133aと、両端部133a,133aを結ぶ連結部133bと、連結部133bの長手方向の中央部に固定される支持部133cとを有している。接触部材120は、支持部133cに対して、固定部材121を介して固定される。図5は、支持体133に接触部材120が固定された状態を示しているが、固定部材121および接触部材120は、支持体133から脱着することができる。支持体133から外した固定部材121および接触部材120を、図6に示す。図7は、固定部材121および接触部材120が外された支持体133を示している。そして、図6に示す接触部材120に代えて、例えば図8に示す小型の接触部材320を固定部材121に装着することができる。この図8の接触部材320が装着された固定部材121を支持体133の支持部133cに着けると、接触部材320が支持体133に固定された状態になる(図9参照)。このように、支持体133には、接触部材120も接触部材320も着けることが可能であり、その選択はユーザーによってトレイTRの種類(サイズなど)に応じて行われる。
【0032】
(3-4)検出部
検出部140は、トレイTRが接触部材120に接しているときに、接触部材120の高さ位置の変位量を検出する。図10に示すように、検出部140は、エンコーダ145を有しており、エンコーダ145がサーボモータ138の回転軸の回転量を出力する。このエンコーダ145の出力は、後述のコンピュータ200によって読み取られ、接触部材120の高さ位置の変位量として扱われる。
【0033】
(3-5)検査部および制御部
検査部150および制御部160は、コンピュータ200により実現されるものであり、シールチェック装置100においてコンピュータ200で実行されているプログラム内の機能部である。コンピュータ200は、制御演算装置201と記憶装置202とを備える(図10参照)。制御演算装置201には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置201は、記憶装置202に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置201は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置202に書き込んだり、記憶装置202に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0034】
検査部150は、検出部140により検出された変位量(接触部材120の高さ位置の変位量)を、予め設定された閾値と比較することで、トレイTRのフィルムTR3のシール状態を検査する。
【0035】
(3-6)シールチェックの制御フロー
制御部160は、図11A図11Cに示す制御フローに従って、昇降機構130のサーボモータ138を制御する。このシールチェックの制御の前に、シールチェック装置100では、起動後、入力機能を持つタッチパネル式の表示部190からユーザーが入力したトレイTRに関する初期情報に基づいて、制御部160は制御パラメータの決定を行う。具体的には、検査対象のトレイTRの商品番号が指定されると、制御演算装置201が、該当する各種の制御パラメータを記憶装置202から読み出し、動作条件を設定する。初期設定される動作条件は、トレイTRのサイズ、トレイ本体TR1の材質、フィルムTR3の材質などに基づいたトレイTRの搬入検知後の接触部材120の下降開始のタイミング、待機位置である第1高さ位置H1や第2高さ位置H2および第3高さ位置H3(図12参照)、後述の第2の力、ダンパーモードにおけるサーボモータ138のトルク設定値などである。
【0036】
運転が始まり、トレイTRがトップシール装置90から第1コンベア11および第2コンベア12を経て搬入されてくると、シールチェック装置100におけるトレイTRに対するシールチェックが始まる。検査対象のトレイTRが第3コンベア113にあるときには、接触部材120は待機位置である第1高さ位置H1で静止している(ステップS11)。第1高さ位置H1は、図12に示すように、トレイTRの縁TR2の高さ位置よりも高い。
【0037】
トレイTRが第3コンベア113から第4コンベア114に運ばれてくると、検査開始指示が生成され、制御部160がサーボモータ138に動作指示を送る(ステップS12およびステップS13)。第3コンベア113と第4コンベア114との境界付近には、トレイTRの通過を検知するセンサが配備されている。
【0038】
検査開始指示を受けて、制御部160は、サーボモータ138から接触部材120に加える力(トルク)を変更して、接触部材120を第1高さ位置H1から第2高さ位置H2に向けて下降させる。第2高さ位置H2は、トレイTRの縁TR2の高さ位置よりも少し低い位置に初期設定されている(図12参照)。なお、図12に示す第3高さ位置H3は、トレイTRの縁TR2の高さ位置である。
【0039】
接触部材120には、自身の質量などに比例する重力による下向きの力と、サーボモータ138による上向きの力とが作用しており、前者の下向きの力よりも後者の上向きの力が小さくなると、接触部材120は下降していく。すなわち、待機位置である第1高さ位置H1で静止している接触部材120には、接触部材120や水平リンク132、支持体133などの重力を打ち消す上向きの力が、サーボモータ138から作用している。そのサーボモータ138からの力(トルク)を弱めることによって、接触部材120は下降していく。水平リンク132の作用により、接触部材120は、下降時、図12において白抜きの矢印A1で示す向き、すなわち斜め下方に移動していく。
【0040】
ステップS14において、制御部160は、接触部材120が第3高さ位置H3に近い高さ位置まで降りてきたか否かを判定する。第3高さ位置H3に近い高さ位置として、ここでは第1高さ位置H1と第3高さ位置H3との中間の高さ位置を用いているが、これに限らず、例えばそれよりも第3高さ位置H3に近い高さ位置を用いてもよい。
【0041】
接触部材120が第3高さ位置H3に近い高さ位置まで降りてくると、接触部材120がトレイTRに接触するときの衝撃を緩和するために、サーボモータ138のトルクを少しずつ大きくして、トレイTRの下降速度を遅くしていく(ステップS15)。
【0042】
ステップS16で、制御部160は、接触部材120が第3高さ位置H3まで降りてきたか否か、すなわち、接触部材120がトレイTRのフィルムTR3に接する高さ位置まで降りてきたか否かを判定する。接触部材120の高さ位置は、検出部140のエンコーダ145からの出力に基づいて制御部160が算出している。
【0043】
接触部材120が第3高さ位置H3まで降りてきたと判定すると、制御部160は、トレイTRに接触部材120が接触する直前にサーボモータ138が出力していたトルクを小さくして、接触部材120からトレイTRに掛ける下向きの圧力を増加させる(ステップS17参照)。言い換えると、接触部材120が第3高さ位置H3まで降りてきてトレイTRに接触部材120が接触した後、制御部160は、サーボモータ138が接触部材120に作用させていた上向きの力を、第1の力から第2の力(第1の力よりも小さい力)に変更する。これにより、接触部材120からトレイTRのフィルムTR3に対して掛かる下向きの圧力がシールチェックに好適な値になる。シールチェックには、ある程度大きな加圧力が必要である。
【0044】
なお、トレイTRの微小な変形によって、接触部材120は、第3高さ位置H3よりも僅かに下がって、第3高さ位置H3と第2高さ位置H2との間の高さ位置まで下降する。しかし、接触部材120が第2高さ位置H2まで下がってしまうことはない。トレイTRのサイズや種類に応じて、そのように第2高さ位置H2が初期設定されている。
【0045】
ステップS17に続き、制御部160は、シールチェック中にダンパーモードを実行する(ステップS18;ステップS31~S33)。ダンパーモードの詳細を図11Cに示す。トレイTRと接触したときの衝撃で接触部材120が振動、つまり上下動すると、水平リンク132を介して上下動速度に応じた回転速度でサーボモータ138の回転軸が回転する。そこで、制御部160は、接触部材120の上下動速さが所定値未満に収まっているか否かを判定する(ステップS31)。
【0046】
ステップS31で、接触部材120の上下動速さ(上下動速度の絶対値)が所定値以上であると判定された場合、この上下動は上記の衝撃に起因する大きな振動に他ならぬことを意味する。これに鑑み、ステップS32では、上下動速さに比例したトルクを、上下動速さの向きと反対方向に加えるように、トルク制御モードとされているサーボモータ138に制御部160が制御信号を出力する。これにより、トレイTRと接触部材120との接触による接触部材120の振動が抑制されることになる。
【0047】
ステップS33では、シールチェックに必要な所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過すると、ダンパーモードが解除され(ステップS34)、ステップS19において、検査部150によって、接触部材120の変位量が閾値未満であるかの判定が為される。検査部150が接触部材120の変位量が閾値未満であると判定すると、ステップS20において、検査部150は、トレイTRのシール状態が良好であると決定する。検査部150が接触部材120の変位量が閾値以上であると判定すると、ステップS21において、検査部150は、トレイTRのシール状態が不良であると決定する。
【0048】
(4)特徴
(4-1)
本実施形態のシールチェック装置100では、シールチェックのための第2の力を、接触部材120がトレイTRのフィルムTR3に接する前の第1の力とは異ならせている。これにより、トレイTRのフィルムTR3に接触部材120が接するときに接触部材120からトレイTRに作用する力の大きさを抑制することができており、接触部材120からトレイTRにかかる下向きの圧力が過剰になってしまうことが抑えられている。
【0049】
(4-2)
本実施形態のシールチェック装置100では、接触部材120に、自身や水平リンク132などの質力に応じた重力による下向きの力と、昇降機構130のサーボモータ138による上向きの力とが作用している。そして、前者の下向きの力が後者の上向きの力よりも大きくなると接触部材120が下降し、前者の下向きの力が後者の上向きの力よりも小さくなると接触部材120が上昇する。前者の下向きの力が後者の上向きの力よりも大きい状態で、接触部材120がトレイTRのフィルムTR3に接触した後は、前者の下向きの力と後者の上向きの力との差分の下向きの力がトレイTRのフィルムTR3に圧力の形で作用する。
【0050】
(4-3)
本実施形態のシールチェック装置100では、制御部160が、第2高さ位置H2を、トレイTRの種類に応じて変更している。具体的には、ユーザーが入力した検査対象のトレイTRの商品番号に基づいて、トレイTRのサイズ、トレイ本体TR1の材質、フィルムTR3の材質などが記憶装置202から読みだされ、それらに合った第2高さ位置H2が制御部160によって選択されている。
【0051】
第2高さ位置H2がトレイTRの縁TR2の高さ位置(第3高さ位置H3)から大きく離れていると、シールチェック時にトレイTRに必要以上の力が作用する恐れがある。しかし、ここでは、トレイTRの材質やサイズに応じて第2高さ位置H2が変更されるため、シールチェック時にトレイTRに作用する力を適切な範囲に収めることができている。
【0052】
(4-4)
本実施形態のシールチェック装置100では、制御部160が、第2の力、すなわち、トレイTRに接触部材120が接触した後にサーボモータ138から接触部材120に作用させる上向きの力を、トレイTRの種類に応じて変更している。具体的には、ユーザーが入力した検査対象のトレイTRの商品番号に基づいて、トレイTRのサイズ、トレイ本体TR1の材質、フィルムTR3の材質などが記憶装置202から読みだされ、それらに合った第2の力が制御部160によって選択されている。
【0053】
トレイTRの種類によっては、シールチェックのための第2の力が大きすぎると、トレイTRが変形したり損傷したりする恐れがある。例えば、トレイ本体TR1の材質がプラスチックの場合と紙の場合とでは、トレイ本体TR1の剛性が大きく異なることがある。しかし、ここでは、トレイTRの材質やサイズに応じて第2の力を変更しているため、シールチェック時にトレイTRに作用する力を適切な範囲に収めることができている。
【0054】
(4-5)
本実施形態のシールチェック装置100では、接触部材120がトレイTRのフィルムTR3に接する前に、接触部材120に作用する昇降機構130のサーボモータ138による上向きの力が増加し、接触部材120や水平リンク132、支持体133などの重力による下向きの力との差が小さくなる。これにより、接触部材120がトレイTRのフィルムTR3に接するときに接触部材120からトレイTRに作用する力を適切な大きさに抑えることができている。言い換えると、ここでは、トレイTRのフィルムTR3に接触するときの接触部材120の見かけ上の質量を小さくして、接触部材120がトレイTRに当たるときの衝撃を低減することができている。
【0055】
(4-6)
本実施形態のシールチェック装置100では、図6に示す接触部材120を図8に示す小型の接触部材320に取り替えることによって、トレイTRのサイズや形状が変わっても適切なシールチェックを行うことができる。なお、これらの接触部材120,320以外のサイズ、形状の別の接触部材を用意しておけば、より多種のトレイに対応したシールチェック装置とすることもできる。
【0056】
(4-7)
本実施形態の包装検査システム10では、第2コンベア12の搬送速度が、第1コンベア11の搬送速度よりも速く設定されている。これにより、上述のように、トップシール装置90から第1コンベア11へと連続的に供給される複数のトレイTRの搬送方向の隙間が小さい場合であっても、第1コンベア11から第2コンベア12へとトレイTRが載り移るときに、トレイTR間の隙間が拡がる。そして、シールチェック装置100には、ある程度の搬送方向の隙間が確保された状態で、複数のトレイTRが供給される。
【0057】
なお、シールチェック装置100の第4コンベア114は間欠的に駆動され、シールチェック時、第4コンベア114は停止している。
【0058】
(5)変形例
(5-1)
上記実施形態では、トップシールが施されたトレイTRを検査対象とするシールチェック装置100の説明を行ったが、このシールチェック装置100を、水平リンク132に固定する支持体133および接触部材120を取り外して別の包装体を検査するための押圧コンベア433を水平リンク132に装着することで、検査対象を別の包装体に変更することが可能となる(図13参照)。図13に示す押圧コンベア433は、例えば、特開2013-035590号公報に示されている「上コンベア61」のような構造体である。このような押圧コンベア433を水平リンク132に装着すれば、トップシールが施されたトレイTRではなく、筒状包材の上下を熱シールした袋状の包装体を検査対象にすることができる。
【0059】
(5-2)
上記実施形態では、検出部140のエンコーダ145からの出力に基づいて制御部160が接触部材120の高さ位置を算出し、その高さ位置に基いて図11AのステップS16において、接触部材120が第3高さ位置H3まで降りてきたか否か、すなわち、接触部材120がトレイTRのフィルムTR3に接する高さ位置まで降りてきたか否かを判定している。そして、接触部材120が第3高さ位置H3まで降りてきたことをトリガーにして、ステップS17でサーボモータ138のトルクを小さくして、接触部材120からトレイTRに掛ける下向きの圧力を増加させている。すなわち、接触部材120がトレイTRのフィルムTR3に接する前の第1の力から、シールチェックのための第2の力への切り替えを、接触部材120の高さ位置に基いて判断している。
【0060】
このような切り替えの制御に代えて、第1の力から第2の力への切り替えの条件を、接触部材120を第1高さ位置H1から下降させ始めてからの時間にしてもよい。例えば、接触部材120を下降開始させてからの経過時間が、予め設定しているトルク切替時間に到達したときに、サーボモータ138のトルクを小さくして第1の力から第2の力へ切り替えるようにしてもよい。この制御を採る場合には、トレイTRの高さに相当する第3高さ位置H3は目安の高さとなり、予め設定しているトルク切替時間が、接触部材120がトレイTRに接触したか否かの判断基準となる。トレイTRの縁TR2の高さ位置と、トレイTRのフィルムTR3の最も高い部分の高さ位置とが異なるような場合、例えば、トレイTR内の商品GDがトレイTRのフィルムTR3の中央部分を押し上げているような場合は、トルク切替時間を使って接触部材120とトレイTRとの接触を判断させることが好ましい。
【0061】
また、上記実施形態における切り替えの制御に代えて、第1の力から第2の力への切り替えの条件を、サーボモータ138のトルク変化を用いた条件にしてもよい。下降してきた接触部材120がトレイTRに接触するとサーボモータ138において急激なトルク変化が生じるので、それを検知すべく、例えばサーボモータ138の電流値などを監視しておく。そして、接触部材120がトレイTRに接触したことによるサーボモータ138のトルク変化を検知した後に、サーボモータ138のトルクを小さくして第1の力から第2の力へ切り替えるようにすれば、接触部材120がトレイTRに接触するまで、確実に第第1の力から第2の力への切り替わりが起こらなくなり、接触部材120がトレイTRに接触する瞬間には過剰な圧力がトレイTRに作用しない。
【符号の説明】
【0062】
10 包装検査システム
11 第1コンベア
12 第2コンベア
90 トップシール装置
100 シールチェック装置
110 搬送コンベア
113 第3コンベア
114 第4コンベア
115 第5コンベア
120 接触部材(接触部)
130 昇降機構(昇降部)
138 サーボモータ
140 検出部
150 検査部
160 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2006-160264号公報
図1
図2
図3A
図3B
図4
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図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13