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  • 特開-充電システム 図1
  • 特開-充電システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006246
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250109BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250109BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106917
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 航大
(72)【発明者】
【氏名】福元 俊吏
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】充電時におけるバッテリのダメージ量を適切に推定する。
【解決手段】制御部は、急速充電中であると判定されると(S100にてYES)、急速充電時のダメージ積算量を算出するステップ(S102)と、ダメージ積算量がしきい値以上であるか否かを判定するステップ(S104)と、ダメージ積算量がしきい値以上であると判定される場合(S104にてYES)、急速充電を制限するステップ(S106)と、充電が終了したか否かを判定するステップ(S108)とを含む、処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリの充電中に前記バッテリの劣化評価値を示すダメージ積算量がしきい値以上となる場合に充電動作を制限する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記充電中に前記バッテリのSOC(State Of Charge)を用いて設定された複数の区間のうちの前記SOCの現在値が対応する区間におけるダメージ量を区間ダメージ量として算出し、
充電を開始してからの前記区間ダメージ量の積算値を前記ダメージ積算量として算出し、
前記区間における前記バッテリの許容電流値と前記バッテリの充電電流値との比を用いて前記区間ダメージ量を算出する、充電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記充電電流値に対する前記許容電流値の比に充電時間を乗算して前記区間ダメージ量を算出する、請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記SOCの下限値から前記SOCの上限値まで前記バッテリを充電する場合の前記ダメージ積算量と、前記下限値から前記上限値まで前記バッテリを充電する場合の充電時間との比を用いて前記区間ダメージ量を算出する、請求項1に記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1(特開2022-147323号公報)には、急速充電時の車載バッテリの充電電流値が所定値より大きい期間が長くなるほどダメージ積算量が増大するようにダメージ積算量を算出することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-147323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえば、高SOC(State Of Charge)領域では、充電電流値が低く設定されるため、ダメージ積算量の算出を充電時間のみに依存させるとダメージ量を過大に見積もる場合がある。その結果、充電時間が長くなると不必要に充電制限を行なう場合がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、充電時におけるバッテリのダメージ量を適切に推定する充電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る充電システムは、バッテリと、バッテリの充電中にバッテリの劣化評価値を示すダメージ積算量がしきい値以上となる場合に充電動作を制限する制御装置とを備える。制御装置は、充電中にバッテリのSOCを用いて設定された複数の区間のうちのSOCの現在値が対応する区間におけるダメージ量を区間ダメージ量として算出する。制御装置は、充電を開始してからの区間ダメージ量の積算値をダメージ積算量として算出する。制御装置は、区間におけるバッテリの許容電流値とバッテリの充電電流値との比を用いて区間ダメージ量を算出する。
【0007】
このようにすると、バッテリの許容電流値と充電電流値との比に基づいて区間ダメージ量が算出されるので、高SOCでかつ充電電流値が小さいときにダメージ量を適切に見積もることができ、不必要に充電制限が行なわれることを抑制できる。
【0008】
本実施の形態においては、制御装置は、充電電流値に対する許容電流値の比に充電時間を乗算して区間ダメージ量を算出する。
【0009】
このようにすると、区間ダメージ量が充電時間に加えて、充電電流と許容電流値との比を乗算して算出されるため、たとえば、充電電流値が許容電流値に対して小さい場合には、区間ダメージ量が多く見積もられることが抑制されるため、充電制限が不必要に行なわれることが抑制される。
【0010】
さらに本実施の形態においては、制御装置は、SOCの下限値からSOCの上限値までバッテリを充電する場合のダメージ積算量と、下限値から上限値までバッテリを充電する場合の充電時間との比を用いて区間ダメージ量を算出する。
【0011】
このようにすると、SOCの複数の区間の各々においてダメージ量を適切に見積もることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によると、充電時におけるバッテリのダメージ量を適切に推定する充電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】充電システムの構成の一例を示す図である。
図2】制御部で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図3】充電時間と電流値とダメージ量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
以下では、本実施の形態に係る充電システム1の構成の一例について説明する。図1は、充電システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、充電システム1は、充電スタンド10と車両200とを備える。車両200は、外部充電が可能な蓄電装置が搭載される車両であればよく、たとえば、電気自動車であってもよいし、プラグインハイブリッド自動車であってもよい。
【0016】
車両200は、ECU(Electronic Control Unit)100と、バッテリ214と、インバータ216と、MG(Motor Generator)218と、インレット220とを含む。
【0017】
バッテリ214は、再充電が可能な蓄電装置であればよく、たとえば、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池を含む。
【0018】
インバータ216は、ECU100からの制御信号に応じてバッテリ214の直流電力とMG218の交流電力とを双方向に変換可能に構成される。
【0019】
MG218は、車両200の駆動輪を駆動する駆動源であって、たとえば、三相交流回転電機等によって構成される。
【0020】
インレット220は、コネクタ17が取り付け可能な形状を有する。インレット220は、バッテリ214と電気的に接続される。
【0021】
ECU300には、バッテリ214の電圧、電流および温度を取得するためのセンサ102,104,106が接続される。ECU300は、CPU(Central Processing Unit)とメモリ(いずれも図示せず)とを含む。ECU300は、各センサから受ける信号、ならびにメモリに記憶されたマップおよびプログラム等の情報に基づいて、車両200が所望の状態となるように各機器を制御する。
【0022】
ECU300は、各センサ102,104,106の検出値に基づいて、バッテリ214のSOC(State Of Charge)を逐次算出する機能を有する。SOCの算出方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、または、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法など、種々の公知の手法を採用できる。ECU300は、後述する充電スタンド10の制御部14と通信可能に構成される。
【0023】
充電スタンド10は、制御部14と、充電部15と、ケーブル16と、コネクタ17とを含む。充電スタンド10は、たとえば、通常充電よりも高い充電電力の供給によって通常充電よりも短時間で充電を完了させる急速充電器を含む。通常充電は、たとえば、100Vあるいは200V等の交流電力の家庭用電源を用いて行なう充電を含む。
【0024】
制御部14は、充電部15の動作(たとえば、充電電圧や充電電流)を制御する。制御部14は、たとえば、CPUとメモリ(いずれも図示せず)とを含む。制御部14は、車両200から受信する情報およびメモリに記憶されたマップおよびプログラム等の情報に基づいて、充電部15を制御する。制御部14は、コネクタ17がインレット220に取り付けられている場合には、電力線通信等の各種通信方法を用いてバッテリ214についての情報(たとえば、SOCや充電電圧や許容電流値についての情報)を取得可能に構成される。
【0025】
充電部15は、制御部14から制御信号に応じて系統電源400からの交流電力を直流電力に変換する。充電部15には、ケーブル16の一方端が接続される。ケーブル16の他方端には、コネクタ17が接続される。
【0026】
コネクタ17は、インレット220に取り付け可能な形状を有する。コネクタ17がインレット220に取り付けられている場合には、制御部14からの制御信号に応じて充電部15から直流電力がバッテリ214に供給可能な状態になる。
【0027】
たとえば、停止状態の車両200のインレット220にコネクタ17が接続される場合には、充電スタンド10は、充電部15を動作させて系統電源400からの交流電力を直流電力に変換し、変換された直流電力をバッテリ214に供給する。ECU300は、バッテリ214の充電中に、各センサ102,104,106の検出値を用いて算出されたSOCおよび許容電流値についての情報を制御部14に送信する。ECU300は、たとえば、SOCが算出されると、算出されたSOCに対応する許容電流値を取得し、SOCと許容電流値についての情報を制御部14に送信する。
【0028】
充電スタンド10を用いたバッテリ214の急速充電は、通常充電時と比較してバッテリ214に負荷がかかるため劣化が促進される。この劣化を判定するための評価値(劣化評価値)をダメージ量として算出することによって、充電が繰り返し行なわれる場合に充電制限の要否を判定することが可能となる。
【0029】
このような劣化評価値の一例として、たとえば、充電を実施した時間(秒数)をダメージ量として算出することが考えられる。制御部14は、たとえば、充電中に経過時間を積算する。制御部14は、積算された値(ダメージ積算量)がしきい値を超える場合に充電制限を実施することで劣化の促進を抑制することが可能となる。
【0030】
しかしながら、バッテリ214のSOCが高SOC領域である場合には、充電電流値が低く設定されることになるため、ダメージ量の算出を充電時間のみに依存させるとダメージ量を過大に見積もる場合がある。その結果、充電時間が長くなると不必要に充電制限を行なう場合がある。
【0031】
そこで、本実施の形態においては、制御部14が以下のように動作するものとする。すなわち、制御部14は、充電中にバッテリ214のSOCを用いて設定された複数の区間のうちのSOCの現在値が対応する区間におけるダメージ量を区間ダメージ量として算出する。制御部14は、充電を開始してからの区間ダメージ量の積算値を積算ダメージ量として算出する。制御部14は、区間におけるバッテリ214の許容電流値とバッテリ214の充電電流値との比と充電時間とを用いて区間ダメージ量を算出する。
【0032】
このようにすると、バッテリ214の許容電流値と充電電流値との比に基づいて区間ダメージ量を算出することで、高SOCで、かつ、充電電流値が低いときにもダメージ量を適切に見積もることができ、不必要に充電制限が行なわれることを抑制できる。
【0033】
以下、制御部14において実行される処理の一例について図2を参照しつつ説明する。図2は、制御部14で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0034】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御部14は、急速充電中であるか否かを判定する。制御部14は、たとえば、コネクタ17がインレット220に取り付けられ、車両200側からSOCおよび許容電流値についての情報を取得し、充電部15の動作を開始するとともに動作中フラグをオン状態に設定する。そのため、制御部14は、動作中フラグがオン状態である場合に急速充電中であると判定する。急速充電中であると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
【0035】
S102にて、制御部14は、急速充電時のダメージ量算出処理を実行する。制御部14は、SOCを用いて設定された複数の区間のうちのSOCの現在値が対応する区間を特定する。複数の区間は、たとえば、SOC15%-20%の第1区間と、SOC20%-25%の第2区間と、SOC25%-30%の第3区間と、SOC30%-35%の第4区間と、SOC35%-40%の第5区間と、SOC40%-45%の第6区間と、SOC45%-50%の第7区間と、SOC50%-55%の第8区間と、SOC55%-60%の第9区間と、SOC60%-65%の第10区間と、SOC65%-70%の第11区間と、SOC70%-75%の第12区間と、SOC75%-80%の第13区間とを含む。
【0036】
制御部14は、充電を開始した時点のSOCの区間から現在のSOCの区間までの各々の区間におけるダメージ量と、充電を開始した時間の区間から現在の区間までのダメージ量の積算値(以下、ダメージ積算量と記載する)とを算出する。
【0037】
制御部14は、現在のSOCの区間におけるダメージ量を算出する場合には、現在のSOCの区間に対応する充電電流値と、現在のSOCの区間に対応するバッテリ214における許容電流値とを取得する。制御部14は、現在の区間における充電時間(秒数)を取得する。さらに、制御部14は、許容電流値を充電電流値で除算した値(充電電流値に対する許容電流値の比)に充電時間を乗算した値を区間ダメージ量として算出する。許容電流値は、バッテリ214のSOCの区間毎に予め設定される値である。充電電流値は、充電スタンド10から車両200に流れる電流であって、充電部15において検出されてもよいし、あるいは、車両200において検出された値が制御部14において取得されてもよい。たとえば、現在のSCOの区間の充電時間が135秒であって、許容電流値が280Aであって、かつ、充電電流値が140Aである場合には、区間ダメージ量は、280/140×135の式より270として算出される。
【0038】
さらに制御部14は、算出された区間ダメージ量に換算倍率を乗算して区間ダメージ量の換算値を算出する。換算倍率は、充電時間のみから算出される区間ダメージ量と比較可能な値に換算するための値である。換算倍率は、たとえば、第1区間のSOC15%から第13区間のSOC80%までのダメージ積算量に対する第1区間のSOC15%から第13区間のSOC80%までの充電時間(充電時間のみから算出されるダメージ積算量)の比によって算出される。換算倍率は、たとえば、事前の実験等によって算出された予め定められた値であってもよいし、あるいは、SOC15%からSOC80%までの充電が最初に行なわれるまでは予め定められた値が設定され、SOC15%からSOC80%までの充電が行なわれたときに実測値を用いて更新され、その後更新された換算倍率を用いてダメージ積算量の換算値が算出されてもよい。さらに、換算倍率は、バッテリ214の温度に応じて変化する値であってもよい。たとえば、実験等によって15%から80%までSOCを上昇させるための充電時間が2500秒であって、その間のダメージ積算量が4500である場合には、2500/4500の式より0.56が換算倍率として設定される。そのため、区間ダメージ量が270として算出された場合の換算値は、151.2(=270×0.56)として算出されることとなる。この値は、充電時間を区間ダメージ量として設定する場合の1.12倍の値となる。なお、高SOCの区間においては、許容電流値および充電電流値が低下される。たとえば、充電時間が300秒であって、許容電流値が120Aであって、かつ、充電電流値が85Aである場合には、区間ダメージ量は、120/85×300の式より423.5として算出され、その換算値は、237.2(=423.5×0.56)として算出されることとなる。この値は、充電時間を区間ダメージ量として設定する場合の0.79倍の値となる。
【0039】
制御部14は、充電を開始してからの換算値の積算値をダメージ積算量として算出する。その後処理はS104に移される。
【0040】
S104にて、制御部14は、算出されたダメージ積算量がしきい値以上であるか否かを判定する。しきい値は、たとえば、実験等により適合されて設定される予め定められた値であってもよいし、あるいは、バッテリ214の温度に応じて設定される値であってもよい。その後処理はS106に移される。
【0041】
S106にて、制御部14は、急速充電を制限する処理を実行する。具体的には、制御部14は、急速充電時の充電電流を予め定められた値だけ低下させたり、あるいは、予め定められた割合だけ低下させたり、予め定められた値以下に低下させたりして急速充電を制限する。その後処理はS108に移される。
【0042】
S108にて、制御部14は、充電が終了したか否かを判定する。制御部14は、バッテリ214のSOCが予め定められた値(たとえば、80%)に到達している場合に充電を終了させる。そのため、制御部14は、たとえば、バッテリ214のSOCが予め定められた値に到達している場合に充電が終了したと判定してもよい。充電が終了したと判定される場合(S108にてYES)、この処理は終了される。なお、充電が終了していないと判定される場合(S108にてNO)、処理はS102に戻される。また、急速充電中でないと判定される場合に(S100にてNO)、この処理は終了される。
【0043】
以上のような構造およびフローチャートに基づく制御部14の動作の一例について説明する。
【0044】
たとえば、コネクタ17がインレット220に取り付けられて急速充電が開始され、SOC15%からSOC80%で充電される場合を想定する。図3は、充電時間と電流値とダメージ量との関係を示す図である。図3のLN1(実線)は、換算値の積算値をダメージ積算量とした場合のダメージ積算量の変化を示す。図3のLN2(一点鎖線)は、充電時間のみから算出されるダメージ積算量の変化を示す。図3のLN3(破線)は、急速充電時の充電電流の変化を示す。
【0045】
たとえば、充電時間のみから算出されるダメージ積算量は、図3のLN2に示すように充電時間の増加に比例してダメージ積算量が増加していくこととなる。すなわち、SOC15%-80%の区間においても同じ変化量(傾き)で増加していくこととなる。
【0046】
一方、急速充電時の充電電流値と許容電流値との比に充電時間が乗算されて区間ダメージ量が算出される場合には、図3のLN3に示すように、SOCがSOC(0)になるまでの低SOCの区間においては、一定の充電電流値となるため、充電時間の増加に一例してダメージ積算量が増加していく。このとき、SOCがSOC(0)になるまでの期間においては、他の期間よりも充電電流値が大きいため、ダメージ積算量は、図3のLN1に示すように図3のLN2の傾きよりも大きい傾きで増加していくこととなる。
【0047】
SOCがSOC(0)を超える高SOC区間になると、充電電流値がSOCの増加に比例して低下される。そのため、図3のLN1に示すようにダメージ積算量は、図3のLN2の傾きよりも緩やかな曲線で増加していくこととなる。そして、図3のLN1は、換算値の積算値であるため、SOC80%に到達したときのダメージ積算量は、充電時間のみから算出されるダメージ積算量と同じ値になる。
【0048】
このように変化する図3のLN1に示すダメージ積算量においては、SOCが65%から80%まで増加する区間の変化幅が、図2のLN2に示すダメージ積算量におけるSOCが65%から80%までの増加する区間の変化幅よりも小さい。
【0049】
すなわち、高SOC区間において充電が行なわれるような状況が複数回繰り返される場合において、ダメージ積算量の増加量は、図2のLN2に示す場合と比較して小さくなる。すなわち、ダメージ積算量が不必要に多く見積もることが抑制される。その結果、急速充電時に不必要に充電制限が実施されることが抑制され、充電時間が冗長になることが抑制される。
【0050】
以上のようにして、本実施の形態に係る充電システム1によると、バッテリ214の許容電流値と充電電流値との比に充電時間を乗算して区間ダメージ量を算出することで、高SOCで、かつ、充電電流値が低いときにダメージ量を適切に見積もることができ、不必要に充電制限が行なわれることを抑制できる。特に、高SOC領域において充電電流値が許容電流値に対して小さくなる場合には、低SOC領域において充電電流値が大きい場合と比較して区間ダメージ量が多く見積もられることが抑制される。その結果、高SOC区間での充電が繰り返される場合などに充電制限が不必要に行なわれることが抑制される。したがって、充電時におけるバッテリのダメージ量を適切に推定する充電システムを提供することができる。
【0051】
さらにSOCの下限値に対応する第1区間からSOCの上限値に対応する第2区間までのダメージ積算量を第1区間から第2区間までの充電時間のみから算出されるダメージ積算量に換算するための換算倍率を用いて各区間ダメージ量を算出することによって、SOCの複数の区間の各々においてダメージ量を適切に見積もることができる。
【0052】
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、制御部14においてダメージ積算量が算出され、算出されたダメージ積算量に応じて充電制限を実施する旨を説明したが、たとえば、ECU100によって充電部15の動作の制御が可能である場合や、充電電力を変換する充電装置が車両200に搭載され、ECU100によって充電装置が制御可能である場合には、ECU100においてダメージ積算量が算出され、算出されたダメージ積算量に応じて充電制限が実施されるようにしてもよい。
【0053】
さらに上述の実施の形態では、制御部14においてダメージ積算量が算出され、算出されたダメージ積算量に応じて充電制限を実施する旨を説明したが、たとえば、充電スタンド10と通信可能なサーバ(図示せず)によってダメージ積算量の算出とダメージ積算量に応じた充電制限とが実施可能な構成であってもよい。
【0054】
さらに上述の実施の形態では、充電中にダメージ積算量が増加する場合について説明したが、たとえば、充電中でない場合や、充電中であってもバッテリ214への負荷が低く劣化状態が解消する場合にはダメージ積算量を減少させるようにしてもよい。
【0055】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 充電システム、10 充電スタンド、14 制御部、15 充電部、16 ケーブル、17 コネクタ、100 ECU、102,104,106 センサ、200 車両、214 バッテリ、216 インバータ、218 MG、220 インレット、400 系統電源。
図1
図2
図3