(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006247
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】吸収性物品用不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 1/54 20120101AFI20250109BHJP
D04H 1/70 20120101ALI20250109BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20250109BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20250109BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
D04H1/54
D04H1/70
A61F13/15 355B
A61F13/15 357
A61F13/512
A61F13/511 400
A61F13/511 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106918
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 飛生馬
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA08
3B200BB03
3B200DC04
3B200DC07
3B200EA24
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB02
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA10
4L047CA12
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】吸収性物品における液吸収性と柔らかな風合いとを同時に更に向上できる吸収性物品用不織布を提供する。
【解決手段】肌面側と該肌面側の反対側の非肌面側とを有し、前記肌面側に突出し平面方向に延在する複数の畝部と、隣り合う前記畝部の間の凹部とを備える吸収性物品用不織布であって、構成繊維には繊維同士を結合する融着部が複数配され、該融着部には、繊維間に張られた膜状部が含まれる、吸収性物品用不織布。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌面側と該肌面側の反対側の非肌面側とを有し、前記肌面側に突出し平面方向に延在する複数の畝部と、隣り合う前記畝部の間の凹部とを備える吸収性物品用不織布であって、
構成繊維には繊維同士を結合する融着部が複数配され、該融着部には、繊維間に張られた膜状部が含まれる、吸収性物品用不織布。
【請求項2】
前記畝部は、該畝部の延在方向に沿う繊維配向性を有する、請求項1記載の吸収性物品用不織布。
【請求項3】
前記凹部の底部に開孔部を有する、請求項1又は2記載の吸収性物品用不織布。
【請求項4】
肌面側の上層と非肌面側の下層との積層構造を有し、前記上層が前記畝部と前記凹部とを備え、前記凹部の底部において前記上層と前記下層とが積層されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項5】
前記上層が有する前記畝部の内部は、前記下層が入り込んだ構造を有する、請求項4記載の吸収性物品用不織布。
【請求項6】
複数の突起と該突起間の凹部とを備えた凹凸形状の支持体上に繊維ウエブを載置し、前記凹部に沿って、前記繊維ウエブを、押し込み部材の押し込み部によって押し込んで賦形すると共に、前記突起に対応する箇所を開孔し、前記押し込み部材側に開孔面を有する凹凸開孔繊維ウエブを形成する、押し込み工程と、
前記押し込み工程と同時又は該押し込み工程後に、前記凹凸開孔繊維ウエブに第1の加熱流体を付与して繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布を得る熱流融着工程と、
前記熱流融着工程後に、前記凹凸開孔不織布に第2の加熱流体を付与しながら下記ドロー比1.05以上1.2以下にて引き延ばす延伸融着工程と、を有する吸収性物品用不織布の製造方法。
ドロー比=(第2の加熱流体付与部の下流の牽引部における前記凹凸開孔不織布の引っ張り速度)/(第2の加熱流体付与部における前記凹凸開孔不織布の送り速度)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の構成部材など様々な用途に用いられている。例えば、特許文献1~4には、風合いやクッション性、液吸収性等の観点から様々な凹凸構造を備えた不織布が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-133574号公報
【特許文献2】特開平3-137258号公報
【特許文献3】特開2008-25081号公報
【特許文献4】特開2020-467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、吸収性物品の持つ機能への使用者の要求レベルが更に高まっていきている。そのため、前記吸収性物品に用いられる不織布において、吸収性物品における液吸収性や風合い等の機能を更に高め得るものが求められるようになっており、この点において更なる改善の余地がある。
本発明は、上記の点に鑑み、吸収性物品における液吸収性と柔らかな風合いとを同時に更に向上できる吸収性物品用不織布に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肌面側と該肌面側の反対側の非肌面側とを有し、前記肌面側に突出し平面方向に延在する複数の畝部と、隣り合う前記畝部の間の凹部とを備える吸収性物品用不織布であって、構成繊維には繊維同士を結合する融着部が複数配され、該融着部には、繊維間に張られた膜状部が含まれる、吸収性物品用不織布を提供する。
【0006】
また、本発明は、複数の突起と該突起間の凹部とを備えた凹凸形状の支持体上に繊維ウエブを載置し、前記凹部に沿って、前記繊維ウエブを、押し込み部材の押し込み部によって押し込んで賦形すると共に、前記突起に対応する箇所を開孔し、前記押し込み部材側に開孔面を有する凹凸開孔繊維ウエブを形成する、押し込み工程と、前記押し込み工程と同時又は該押し込み工程後に、前記凹凸開孔繊維ウエブに第1の加熱流体を付与して繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布を得る熱流融着工程と、前記熱流融着工程後に、前記凹凸開孔不織布に第2の加熱流体を付与しながら下記ドロー比1.05以上1.2以下にて引き延ばす延伸融着工程と、を有する吸収性物品用不織布の製造方法を提供する。
ドロー比=(第2の加熱流体付与部の下流の牽引部における前記凹凸開孔不織布の引っ張り速度)/(第2の加熱流体付与部における前記凹凸開孔不織布の送り速度)
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品用不織布は、吸収性物品における液吸収性と柔らかな風合いとを同時に更に向上できる。本発明の吸収性物品用不織布の製造方法によれば、上記の本発明の吸収性物品用不織布を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の吸収性物品用不織布の一例を肌面側から模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示す吸収性物品用不織布のR1-R1線断面図である。
【
図3】(A)及び(B)は、繊維間に張られた膜状部の一例を示す図面代用写真である。
【
図4】繊維の配向性の測定方法を説明する図であり、(A)は繊維のSEM画像であり、(B)はOHP繊維画像であり、(C)は二値化した繊維画像であり、(D)はパワースペクトルであり、(E)は平均振幅の角度分布図である。
【
図5】
図1に示す吸収性物品用不織布のR2-R2線断面図である。
【
図6】本発明の不織布が複数の繊維層からなる形態の一例を示す断面図である。
【
図7】本発明に係る吸収性物品用不織布の製造方法の好ましい一実施形態を模式的に示す説明図であり、(A)は押し込み工程を示し、(B)は第1の加熱流体により凹凸開孔不織布を得る熱流融着工程を示し、(C)は凹凸開孔不織布に第2の加熱流体を付与しながら引き延ばす延伸融着工程を示す。
【
図10】支持体と押し込み部材とを組み合わせた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る吸収性物品用不織布の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら、以下に説明する。なお、本明細書において、吸収性物品用不織布を単に不織布ということがある。
【0010】
不織布10は、
図1及び2に示すように、肌面側10Tと該肌面側10Tの反対側の非肌面側10Bとの表裏面を有する。肌面側10Tは、不織布10を吸収性物品に組み込む際に着用者の肌面に向く面側を言い、非肌面側10Bは、着用者の肌面に向く面側とは反対側をいう。
【0011】
不織布10は、肌面側10Tに突出し平面方向に延在する複数の畝部1と、隣り合う畝部1、1間に設けられた凹部2とを備える。これにより、不織布10は厚み方向Zに凹凸構造を有する。畝部1は、不織布10の厚み方向Zに立設された立体的な繊維層であり、凹部2の底部21よりも肌面側10Tの高い位置にある。複数の畝部1のそれぞれは、頂部1Aと、頂部1Aを支持する壁部1Bとを備える。前記凹凸構造により、不織布10は良好なクッション性、肌面側10Tでの肌との接触面積の低減によるドライ性、畝部1の延在方向に沿った液の移行性、畝部1と凹部2とによる素早い液透過性を発現し得る。
【0012】
前記平面方向は、肌面側10Tを平面視して把握される面方向である。言い換えると、前記平面方向は、不織布10の非肌面側10Bの平面に沿う方向でもある。例えば、
図2に示す不織布10の非肌面側10Bの表面に接する直線Lに相当する。この場合、不織布10の厚み方向Zは、直線Lに直交する方向に相当する。
畝部1の延在方向は、より具体的には前記平面方向の面内に含まれる一方向である。複数の畝部1はいずれも前記一方向に延在しながら、互いに前記一方向と交差する方向に離間して平行に配されている。本実施形態においては、前記一方向は不織布10の長手方向Yとし、前記一方向に交差する方向は不織布10の長手方向Yに直交する幅方向Xとしている。ただし、前記一方向及び該一方向に交差する方向は本実施形態に限定されるものでなく、前記平面方向の面内で適宜設定され得る。また、前記一方向に交差する方向も前記一方向に直交する方向に限定されず、任意の角度で交差する方向であってもよい。
【0013】
不織布10の構成繊維には、
図3に示すように、繊維同士を結合する融着部4が複数配されている。融着部4には、繊維同士を結合するものとして、繊維同士の交差部に配されたものを含む(以下、交差部の融着部は符号4Aを付して示す)。該交差部に融着部4Aがあることで不織布10はシートとして形状保持されている。このような不織布としては、例えば、エアスルー法によって前記繊維融着部を形成したエアスルー不織布が挙げられる。そのため、不織布10は構成繊維に熱可塑性繊維を含む。
【0014】
更に融着部4には、
図3(A)及び(B)に示すように、繊維間に張られた膜状部4Bが含まれる。
膜状部4Bとは、樹脂が繊維間を繋いで該繊維間の空間を部分的に埋めるように形成された薄膜である。膜状部4Bは、交差部の融着点4Aよりなる構成繊維のネットワーク構造に対して、繊維間の位置関係を保持しながら繊維間の離間距離が一定範囲で拡大縮小する可動性及び形状回復性を付与する。このような膜状部4Bは、後述の製造方法において交差部の融着部4Aを含む不織布を形成したあとに、該不織布に加熱流体を再度付与しながら延伸加工する延伸融着工程により形成される。すなわち、膜状部4Bは、構成繊維の熱可塑性繊維が溶融延伸されて繊維間で薄膜化したものであると言える。膜状部4Bは、繊維交点の交差部の融着部4Aに隣接して形成されてもよく、融着部4Aと離間して形成されてもよい。また、膜状部4Bの形状は、面状であってもよく、紐状であってもよい。
このような膜状部4Bによって、不織布10の、融着部4Aを起点とした構成繊維のネットワーク構造の弾性が高まり、より優しく漸次的に可動(変形)しやすくなる。そして、より確かな回復性(クッション性)が発現しやすくなる。
【0015】
その結果、不織布10は、より柔らかな風合いを備えたものとなる。
また、不織布10は畝部1にも膜状部4Bを含むこととなり、畝部1の形状保持性が高められる。これにより、不織布10は、吸収性物品の構成部材として組み込まれて装着による荷重を受けた状態において、受液した排泄液等を畝部1に沿って広げる畝部1の作用が維持されやすく、畝部1から凹部2への素早い液移行が持続しやすい。すなわち、不織布10は、吸収性物品における液吸収性と柔らかな風合いとを同時に更に向上できる。
【0016】
膜状部4Bは、前述の作用を好適に発現させながら不織布10の柔らかな風合いをより高める観点から、肌面側10Tよりも非肌面側10Bにより多く配されることが好ましい。また、上記の柔らかな風合いと共に畝部1の形状保持性をより高める観点から、膜状部4Bは、畝部1の非肌面側に他の部位よりも多く配されることがより好ましい。
【0017】
(膜状部4Bの確認方法及び発生頻度の測定方法)
不織布10の非肌面側10Bを平面視して観察される畝部1の頂部1Aの非肌面側を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM-6000Plus)により50倍程度で5カ所撮像する。1mm×1mmの範囲内にある膜状部4Bの個数を数え、5カ所の個数を平均する。得られた平均値を膜状部4Bの発生頻度とする。
【0018】
上記測定方法で確認される膜状部4Bの発生頻度は、上記作用をより効果的なものとする観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましい。
また、膜状部4Bの発生頻度は、不織布10の外観を維持する観点から、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が更により好ましい。
【0019】
更に不織布10において、畝部1が、該畝部1の延在方向(長手方向Y)に沿う繊維配向性を有することが好ましい。これにより、不織布10は畝部1の延在方向に沿った液の移動性(液広がりの方向性)をより高めることができる。そして、畝部1の延在方向に沿った液の移動性は、前述の膜状部4Bの存在による畝部1の形状保持性により荷重下でも維持し得る。
この不織布10を吸収性物品の構成部材として組み込み、畝部1の延在方向を吸収性物品の長手方向に向けて配した場合に、排泄液は吸収性物品の長手方向への移動性が高くより広い範囲での高い液吸収性を実現する。同時に、排泄液は吸収性物品の幅方向への移動性は抑えられ、横漏れ防止性をより高めることができる。
【0020】
前記繊維配向性は、繊維の配向角と配向強度からなる概念である。繊維の配向角は、配位の方向が異なる複数の繊維が、繊維全体として配位している方向を示す概念である。したがって、繊維の集合体の形状を数値化したものといえる。繊維の配向強度は、配向角を示す繊維の量を表す概念である。配向角度は、1.05未満では、ほとんど配向しておらず、1.05以上で配向を有していると言える。
畝部1の延在方向に沿う繊維配向性は、畝部1の頂部1Aの繊維について規定される。頂部1の延在方向に沿う繊維の配向角が60°以上120°以下、かつ、配向強度が1.1以上であることで、畝部1がその延在方向に沿う繊維配向性を有すると言える。前記配向角及び配向強度は、後述の製造方法における延伸融着工程によって初めて形成されたものであり、従来のものに比して極めて高い。
【0021】
(畝部1の頂部1Aの延在方向に沿う繊維配向性の測定方法)
まず、不織布10の肌面側10Tを平面視して観察される畝部1の頂部1Aの繊維を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM-6000Plus)により撮影して、
図4(A)に示すようなSEM画像を得る。撮影する際には、測定する繊維が10本以上計測できる倍率(100~300倍)に調整する。
得られたSEM画像を印刷し、OHPシート上に繊維をなぞって、
図4(B)に示すようなOHP繊維画像を得る。OHP繊維画像をスキャナで、パーソナルコンピュータ内に取り込む。
データ化した繊維画像から、白黒二値化した繊維画像を得る(
図4(C))。
前記二値化した繊維画像を、繊維配向解析プログラムを用いてフーリエ変換して、
図4(D)に示すようなパワースペクトルを得る。繊維配向解析プログラムとしては、(表面繊維配向解析プログラム FiberOri8single03.exe(江前敏晴 東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 製紙科学研究室公開))を用いる。これを楕円近似して、
図4(E)に示すような平均振幅の角度分布図を得る。この角度分布図から、配向角と配向強度とを求めることができる。
図4(E)に示す角度分布図中のαが配向角であり、近似楕円における長軸LAと短軸SAとの比(LA/SA)が配向強度である。
【0022】
畝部1の頂部1Aの延在方向に沿う繊維の配向角は、膜状部4Bをより発現させやすくする観点から、70°以上が好ましく、80°以上がより好ましく、91°以上が更に好ましい。また、畝部1の頂部1Aの延在方向に沿う繊維の配向角は、上記と同様の観点から、115°以下が好ましく、110°以下がより好ましい。
加えて、畝部1の頂部1Aの延在方向に沿う繊維の配向強度は、上記と同様の観点から、1.15以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。また、畝部1の頂部1Aの延在方向に沿う繊維の配向強度は、見た目(外観)を維持する観点から、1.8以下が好ましく、1.7以下がより好ましい。
【0023】
不織布10において、凹部2の底部21に開孔部3が配されることが好ましい。これにより、畝部1を伝ってその延在方向(長手方向Y)に移動した液の下方流動性(液透過性)を高めることができる。その結果、不織布10を吸収性物品に構成部材として組み込んだ場合に吸収性物品の液吸収性を高めることができる。また、繊維間に張られた膜状部4Bは、開孔部3のある底部21よりも繊維量の多い畝部1の非肌面側により多く生じやすく、膜状部4Bの前述の作用をより効果的に発現させることができる。
【0024】
開孔部3は、繊維間に形成される微細な孔径とは異なり、不織布10を加工して形成した孔であり、繊維間に形成される微細な孔径よりも遥かに大きい孔面積を有している。
図1においては、隣り合う畝部1、1間の領域全体が開孔部3となっているものとして示しているが、開孔部3の大きさは適宜選択することができる。例えば、畝部1の壁部1Bの下端から開孔部3に向けて延びる繊維層が存在するようにしてもよい。少なくとも1.0mm
2以上の孔面積を有することが好ましい。開孔部3の大きさは、マイクロスコープ(例えば、VHX6000(商品名、株式会社キーエンス製))を用いて測定することができる。具体的には、不織布10を肌面側10Tから平面視して、マイクロスコープにて開孔部3の面積を10箇所測定し、それらの平均値を各開孔部の孔面積とする。
【0025】
開孔部3の面積は、液透過性の作用を高める観点から、1.0mm2以上が好ましく、1.5mm2以上がより好ましく、2.0mm2以上が更に好ましい。また、開孔部3の面積は、液戻りを抑制する観点から、50mm2以下が好ましく、40mm2以下がより好ましく、35mm2以下が更に好ましい。
【0026】
開孔部3の平面形状は、不織布10における下方流動性を高める観点から種々のものとすることができ、例えば、円形、楕円形、矩形などが挙げられる。
ただし、開孔部3の平面形状は、不織布10を吸収性物品の構成部材として組み込んだ場合に、該吸収性物品に含まれる高吸収性ポリマー材(いわゆるSAP(Superabsorbent polmer))の通り抜けを防止する観点、吸収体にて一度吸収した排泄液のウエットバックを抑制する観点から、長径及び短径を有する細長い楕円形状であることが好ましい。これにより、高吸収性ポリマー材の吸収性物品からの漏出防止性を高めて、吸収性物品の液吸収性を高めることができる。
【0027】
上記の観点から、開孔部3の平面形状における短径に対する長径の比は、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。また、前記短径に対する長径の比は、不織布10の外観を維持する観点から、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3.5以下が更に好ましい。
短径は、高吸収性ポリマー材の漏出防止性をより高める観点から、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.8以下が更に好ましい。また、短径は、不織布10の液透過性をより高める観点から、0.5mm以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。
長径は、不織布10の液透過性をより高める観点から、1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.1以上が更に好ましい。また、長径は、不織布10の外観を維持する観点から、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましい。
なお、開孔部3の平面形状に関する上記の値は、マイクロスコープ(例えば、VHX6000(商品名、株式会社キーエンス製))を用いて測定することができる。
【0028】
開孔部3の平面形状としての、上記の長径及び短径を有する細長い楕円形状は、後述の製造方法における延伸融着工程によって高められて形成された微細なものである。このような製造方法によって、開孔部3が細長い形状となることに伴い、凹部2の溝幅も狭くなる。これにより、不織布10を表面シートとして組み込んだ吸収性物品において、加圧時に着用者の肌が吸収体と触れ難くなり、一度吸収した排泄液のウエットバックの抑制効果も高くなる。
【0029】
不織布10において、畝部1を構成する壁部1Bは、不織布10の平面方向に対して垂直に延在していることが好ましい。不織布10の平面方向とは、前述の定義のとおりである。前記「垂直」とは、不織布10の厚み方向Zに沿う方向を意味する。
これにより、壁部1Bが畝部1の頂部1Aを垂直支持する。このことが前述の繊維間に張られた膜状部4Bと相俟って、畝部1の立体形状の保持性を高める。その結果、不織布10を吸収性物品の表面シートとしたときに凹凸構造の厚みが保持されやすく、肌面側10Tの凹部1では肌接触され難くされている。すなわち、不織布10の肌面側10Tにおける肌接触面積が、畝部1(主に頂部1A)に抑えられ、着用者と不織布10との非接触領域が増す。これにより、不織布10を表面シートとして組み込んだ吸収性物品の通気性を高めることができ、着用者の肌面のドライ性を高めることができる。また、表面シートとなる不織布10から着用者の肌面への液戻り経路を小さく抑えて、肌面への液付着機会を抑制して、前述のドライ性をより高めることができる。また、不織布10における前述の膜状部4Bによる柔らかい風合い、形状回復性及び形状保持性と相俟って、吸収性物品の着用感が更に向上する。
【0030】
壁部1Bの「垂直」は、
図2に示す不織布10の非肌面側10Bの平面に対する角度θが厳密に90°である場合だけでなく、60°以上120°以下であることを意味する。この範囲にあることで、壁部1Bは、不織布10の厚み方向Zにおいて実質的に90°と認められる角度で延出する形状を有する。角度θは、不織布10の非肌面側10Bの平面と壁部1Bの延長線との交差角度を意味する。具体的には、
図2に示すように、畝部1を含む厚み方向Zの断面において、壁部1Bの繊維層の幅の中心線Mと、不織布10の非肌面側10Bの表面に接する直線Lとがなす角度のうちの内角の角度を意味する。この角度θは、前述のマイクロスコープによって得られる断面の顕微鏡写真を観察して求めることができる。
【0031】
図2に示す例では、壁部1Bは、頂部1Aと凹部2の底部21との間において直線状に延在しており、壁部1Bの全体が凹部2の底部21に対して垂直に立設されている。しかし、これに限定されるものではなく、壁部1Bが湾曲状や波状に延在する部分を含む構成としてもよい。この場合には、頂部1Aと壁部1Bとの境界点と、壁部1Bの非肌面側の端部とを結ぶ線を上記中心線Mとして、上記角度θを特定するものとする。
また、複数ある壁部1Bの全てが不織布10の平面方向に対して垂直に延在することが好ましいが、壁部1Bの一部に、不織布10の平面方向に対して垂直に延在しないものが含まれてもよい。後者の場合、垂直となる壁部1Bの数は、前述の厚み方向Zに沿う繊維配向性の作用を更に効果的にする観点から、畝部1全体にある壁部1Bの内の60%以上であることが好ましい。
【0032】
畝部1及び凹部2を含む、不織布10の厚み方向Zの断面において、壁部1Bの繊維層は、次の方法により区画することができる。
すなわち、畝部1及び凹部2を含む厚み方向Zの断面を有する不織布10を、非肌面側10Bを下にして、前述のマイクロスコープの台座に載せる。次いで、不織布10の肌面側10Tに平板(例えばフラットアクリルプレート)を載せて4.9mN/cm2の荷重をかける。この状態で厚み方向Zの断面を、前記マイクロスコープにより20倍で観察し、平板に接している部分の繊維層を頂部1Aとする。頂部1Aの端部と台座に接する繊維層の端部とを繋いだ部分を壁部1Bとする。
なお、頂部1Aと壁部1Bとの境界の特定にあたっては、壁部1Bの無い部分での頂部1Aの厚みを頂部1Aの端部の厚みとし、その厚みを除く部分を壁部1Bとする。また、壁部1Bは、非肌面側10Bに端部(付け根部1Dともいう)を有しており、凹部2の底部21は、当該付け根部1Dを含む、隣り合う凸部1、1間に設けられた領域を指す。
【0033】
更に不織布10において、壁部1Bの繊維は、不織布10の非肌面側10Bの平面に対して厚み方向Zに沿う繊維配向性を有することが好ましい。これにより、壁部1Bの垂直延在による前述の作用を更に強化することができる。
また、壁部1Bにおける厚み方向Zに沿う繊維配向性は、壁部1Bにおける繊維層の繊維構造による弾力性と相俟って、不織布10に優れたクッション性を与える。すなわち、不織布10は肌当たりに優れた柔らかさが更に高められる。また、不織布10を吸収性物品における表面シートとした場合に、畝部の繊維配向性による延在方向に沿った液移動性、更には凹部2の底部21に配された開孔部3による液の下方流動性とによる排泄液透過作用が荷重下においてもより持続されやすくし、吸収体から肌面側への液戻りが抑制される。
これにより、不織布10は、該不織布10を組み込んだ吸収性物品における液吸収性と柔らかな風合いとを同時に更に向上できる。
【0034】
壁部1Bの厚み方向Zに沿う繊維配向性は、前述の通り、繊維の配向角と配向強度とによって示される。壁部1Bの厚み方向Zの断面において、繊維の配向角が60°以上120°以下、かつ、配向強度が1.1以上であることで、壁部1Bが厚み方向Zに沿う繊維配向性を有すると言える。
【0035】
(壁部1Bの厚み方向Zに沿う繊維配向性の測定方法)
図1に示すように、壁部1Bに対し、下記の手順で測定を行う。
すなわち、不織布10の畝部1及び凹部2を含む、不織布10の厚み方向Zの断面において画定された壁部1Bの繊維層断面を走査電子顕微鏡(SEM)で50倍に拡大して観察する。観察される壁部1Bの繊維に対し前述の(畝部1の頂部1Aの延在方向に沿う繊維配向性の測定方法)を準用して、繊維の配向角及び配向強度を測定する。
【0036】
壁部1Bにおける厚み方向Zに沿う繊維の配向角は、凹凸加工の観点から、60°以上が好ましく、70°以上がより好ましい。また、壁部1Bにおける厚み方向Zに沿う繊維の配向角は、同じく凹凸加工の観点から、120°以下が好ましく、110°以下がより好ましく、幅方向Xへの液の移動(股間の液漏れ)をより抑止する観点から、99°以下が更に好ましい。また、壁部1Bにおける厚み方向Zに沿う繊維の配向角が99°以下であることで、畝部1の頂部1Aの繊維配向性の作用をより有意なものとし、協働して液の移動性をより好適に制御できる。
加えて、壁部1Bにおける厚み方向Zに沿う繊維の配向強度は、凹凸加工の観点から、1.15以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。また、壁部1Bにおける厚み方向Zに沿う繊維の配向強度は、見た目(外観)の観点から、1.8以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、幅方向Xへの液の移動(股間の液漏れ)をより抑止する観点から、1.29以下が更に好ましい。また、壁部1Bにおける厚み方向Zに沿う繊維の配向強度が1.29以下であることで、畝部1の頂部1Aの繊維配向性の作用をより有意なものとし、協働して液の移動性をより好適に制御できる。
【0037】
また、不織布10は、
図1に示すように、畝部1と共に、畝部1と交差する方向Xに延在し、隣り合う畝部1、1同士を繋ぐ鞍部15を有することが好ましい。
鞍部15は、畝部1と同様に、非肌面10B側から肌面側10Tに突出しており、不織布10の厚み方向Zに立設された立体的な繊維層である。より具体的には、鞍部15は、肌面側10Tの頂部15Aと頂部15Aを支持する壁部15Bとを備える。壁部15Bの繊維は前述のとおり厚み方向Zに沿う繊維配向性を有していることが好ましい。また、壁部15Bは、不織布10の平面方向に対して垂直に延在していることが好ましい。前記「垂直」は、前述の畝部1において定義した「垂直」と同義である。
鞍部15における壁部15Bの厚み方向Zに沿う繊維配向性及び壁部15Bの「垂直」は、
図5に示すように、鞍部15の延在する方向と直交する断面(
図1において、一方向Yに沿うR2-R2線の位置における厚み方向Zの断面)について、壁部1Bについての前述の測定方法と同様にして測定できる。
【0038】
上記構造により、鞍部15によって繋がれた畝部1同士が接近し難くされ、押圧等の外力で畝部1が一方向に倒れてしまうことが抑制される。すなわち、鞍部15が、畝部1を側面側から支持して、畝部1の形状保持性を高める。これにより、荷重下での畝部1の厚みが更に残りやすく、畝部1の優しい風合いがより保持されやすくなる。また、例えば不織布10を吸収性物品に構成部材として組み込んだ場合に、吸収性物品の着用時の着用者の体圧があっても畝部1の頂部1Aと非肌面側10Bの吸収体側との距離がより保持されやすく、肌面側10Tへの液戻りが更に生じ難くされている。更に、鞍部15の存在によって、畝部1、1間において排泄液の堰き止め作用が働き、不織布10の肌面側10Tにおいて液流れ防止性が更に高められる。
【0039】
鞍部15は、不織布10の一方の面側10Tからの平面視において、畝部1の延在方向と交差する方向に延在していることが好ましい。鞍部15の延在方向は、隣り合う畝部1を繋ぐ方向である限り種々の方向とすることができ、畝部1の延在方向と直交する方向であることが好ましい。例えば、畝部1の延在方向を前述のように長手方向Yとし、鞍部15の延在方向を不織布10の幅方向Xとすることが好ましい。以下、これらの方向を畝部1の延在方向Y及び鞍部15の延在方向Xともいう。
また、各鞍部15の、肌面側10Tから見た平面形状は、
図1に示すような矩形に限らず、種々のものとすることができる。例えば、鞍部15の肌面側10Tから見た平面形状は、畝部1に向かうにつれて幅が広がるようにされてもよい。
【0040】
図1に示す例では、鞍部15は、不織布10の肌面側10Tの平面視において、畝部1、1の間の、畝部1と平行に延在する複数の帯領域16に配されている。各帯領域16において、並走する畝部1の延在方向Yに沿って、複数の鞍部15が間隔をあけて配されている。鞍部15が間隔をあけた部分に前述の凹部2がある。すなわち、各帯領域16において、鞍部15と凹部2とが交互に配置されている。これにより、凹部2は、畝部1の壁部1Bと鞍部15の壁部15Bによって区画されている。より具体的には、厚み方向Zに立設された立体的な繊維層である複数の畝部1及び複数の鞍部15に囲まれた領域が、箱型又は筒型の凹部2とされる。前述の開孔部3は、その凹部2の底部21に配されることとなる。
【0041】
図1に示す例では、不織布10の肌面側10Tからの平面視において、畝部1及び鞍部15が格子状に配置され、凹部2が格子の中に点在して升目状に配置されている。このような升目状の凹部2に前述の開孔部3があると、畝部1の前述の繊維配向性でその延在方向に広げた液を開孔部3へと集約させてより確実に降下させることができ、前述の液の下方流動性をより高めることができる。
これにより、不織布10は、該不織布10を組み込んだ吸収性物品における液吸収性と柔らかな風合いとを同時に更に向上できる。
【0042】
鞍部15は、畝部1と同様の立体的な繊維構造を有するものの、
図2及び
図5に示すように、畝部1よりも凹部2の底部21からの高さが低い部分を有することが好ましい。これにより、不織布10の肌面側10Tでの肌との接触面積をより低減して、肌触りの良さを保持し、通気性を高めて肌との間で蒸れを更に抑えることができる。
畝部1の厚み方向Zの高さH1と鞍部15の厚み方向Zの高さH15の差(H1-H15)は、上記作用をより良好にする観点から、0.5mm以上7mm以下が好ましい。なお、畝部1の厚み方向Zの高さH1は、不織布10非肌面側10Bの表面に接する平面から畝部1の頂部1Aの肌面側10Tまでの厚み方向Zの距離である。鞍部15の厚み方向Zの高さH15は、不織布10の非肌面側10Bの表面に接する平面から鞍部15の頂部15Aの最も低い位置の肌面側10Tまでの厚み方向Zの距離である。
【0043】
(畝部1の厚み方向Zの高さH1と鞍部15の厚み方向Zの高さH15の差の測定方法)
不織布10について、
図5に示すように、鞍部15の最も高さの低い位置における、鞍部15が配列する帯領域16の延在方向に沿った厚み方向Z断面(
図1において、R2-R2線の位置における厚み方向Z断面)を作製し、水平な台に非肌面側10Bの表面が当接するよう設置する。水平な台から畝部1の頂部1Aの肌面側10Tまでの高さH1と、鞍部15の頂部15Aの肌面側10Tまでの高さH15を測定する。これらの測定値から、高さの差(H1-H15)を算出する。水平な台からの高さの測定には、いずれも前述のマイクロスコープを用いることができる。
【0044】
不織布10の凹凸構造は、1層の繊維層にて構成されてもよく、2層以上の複数の繊維層にて構成されてもよい。不織布10の凹凸構造が複数の繊維層にて構成されている場合、より柔らかな風合いと全体の耐荷重性の強度を更に高める観点から、前記複数の繊維層が互いに繊維径の異なるものであることが好ましく、最も肌面側10Tの繊維層よりも繊維径が太い繊維層が非肌面側10Bにあることが好ましい。この場合、前述の繊維間に張られた膜状部4Bは、非肌面側10Bの繊維層にあることが好ましい。
【0045】
また、不織布10が複数の繊維層にて構成される別の形態として、前述の凹凸構造が、肌面側10Tの繊維層のみで構成されていてもよい。この場合の好ましい形態について、
図6に示す一例を挙げて以下に説明する。
図6に示す不織布20は、肌面側20Tの上層M1と非肌面側20Bの下層M2との積層構造を有する。上層M1は前述の畝部1と凹部2とを備える。凹部2の底部21において上層M1と下層M2とが積層されている(この部分を積層部25という)。これにより、不織布20は、厚みのあるふんわりとした風合いが得られ、上層M1の凹凸構造を下層M2が下支えして上層M1の凹凸構造による前述の作用がより安定的に発現されやすくなる。特に、積層部25が凹凸構造の基底部となって畝部1の立体形状をより安定化させやすくなる。
また、不織布20は、構成繊維の繊維間に前述の膜状部4Bを含んでいる。膜状部4Bによる前述の作用を良好に発現させる観点から、膜状部4Bは下層M2に配されることが好ましい。
【0046】
図6に示す不織布20においては、前述の開孔部3のないものとして示している。だだし、液の下方流動性を高める観点から、上層M1に前述の開孔部3があることが好ましい。開孔部3がある場合、下層M2の繊維層が開孔部3から肌面側10Tに隆起していてもよい。この場合の上層M1と下層M2との積層部25は、上層M1の凹部2の開孔部3を除く底部21の位置に存在することになり、開孔部3がない場合と比して上層M1と下層M2との積層部25における積層面積が狭くなる。しかし、開孔部3がある場合であっても、下層M2の繊維層が開孔部3から肌面側10Tに隆起し得るので、畝部1の立体形状を安定化させることができる。
更に不織布20において、液広がりの方向性を強める観点から、畝部1に前述の繊維配向性があることが好ましい。
【0047】
加えて、不織布20において、上層M1が有する畝部1の内部は、下層M2が入り込んだ構造(進入部5のある構造)を有することが好ましい(
図6)。これにより、畝部1においても下層M2が液をより積極的に引き込みやすくなり、液の下方流動性が更に向上する。また、畝部1におけるクッション性が更に向上し、不織布20の肌触りが更に良好なものとなる。この場合、畝部1の内部は中実であってもよく、中空であってもよい。
【0048】
下層M2の繊維の繊維径は、上層M1の繊維の繊維径よりも大きいことが好ましい。これにより、上層M1よりも太い繊維が上層M1の開孔部3から隆起部として露出した場合に、開孔部3からの液透過性を高めることができる。
この観点から、上層M1の繊維の繊維径(D1)に対する下層M2の繊維の繊維径(D2)の比(D2/D1)は、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。また、前記比(D2/D1)は、前記隆起部の地合いを良好にする観点から、10.0以下が好ましく、9.0以下がより好ましく、8.0以下が更に好ましい。
下層M2の繊維の繊維径(D2)は、開孔部3からの液透過性を高める観点から、15μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。また、下層M2の繊維の繊維径(D2)は、前記隆起部の地合いを良好にする観点から、80μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、60μm以下が更に好ましい。
上層M1の繊維の繊維径(D1)は、地合いを良好にする観点から、8μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、12μm以上が更に好ましい。また、上層M1の繊維の繊維径(D1)は、柔らかさを保持する観点から、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
上記の繊維径は、各繊維層にける平均繊繊維径を意味する。
【0049】
(各繊維層における平均繊維径の測定方法)
繊維径は、繊維層の断面を観察して、以下の手法により測定することができる。
測定対象の部位(例えば、上層M1)を、コールドスプレー又は液体窒素などを用いて、無荷重状態で凍結して構造を固定し、その状態でカッター刃を用いて厚み方向Zに切断することで、測定部位の横断面を露出させる。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM-5100)を使用して横断面を拡大観察し、繊維断面が計測できる倍率(300倍)に調節する。その状態で撮影した観察写真を5枚撮影することで、断面観察写真を得る。次いで、1写真あたり30本の繊維の繊維径を測定して、その算術平均値を本発明の平均繊維径とする。繊維が非真円形である場合には、横断面における周縁上の2点を結び、且つ断面の最大差し渡し長さの線分を長軸と定め、その長軸に直交する最大長さを有する線分を短軸と定め、そして、長軸及び短軸の各長さを画像解析ソフトウェア等で解析して算出することで、各繊維の長軸及び短軸の各長さを測定し、繊維一本での長軸長さと短軸長さとの算術平均値を各繊維の繊維径とし、該繊維径の30本の算術平均値を、本発明における繊維の平均繊維径とする。
測定対象の不織布が吸収性物品に組み込まれている場合は、該吸収性物品にコールドスプレーを吹きかけ、ホットメルト接着剤を固化させてから、測定対象の不織布を丁寧に剥がす。この手段は本明細書の他の測定においても共通である。
【0050】
本発明の不織布の目付は、不織布の地合いを良好にする観点から、15g/m2以上が好ましく、20g/m2以上がより好ましく、25g/m2以上が更に好ましい。また、本発明の不織布の目付は、着用者の快適な使用感を妨げないようにする観点から、80g/m2以下が好ましく、70g/m2以下がより好ましく、60g/m2以下が更に好ましい。
【0051】
(不織布10の目付の測定方法)
23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で24時間以上保存した不織布10について、面積及び質量を測定して求める。
【0052】
本発明の不織布の4.9mN/cm2(0.05gf/cm2)荷重下における厚みは、0.8mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.2mm以上が更に好ましい。上記の4.9mN/cm2荷重とは、不織布表面の毛羽立ちを想定した荷重である。不織布10の4.9mN/cm2荷重下における厚みが上記の範囲にあることにより、液戻り防止性能を高めて着用者の肌が濡れにくくなる。
また、本発明の不織布の4.9mN/cm2荷重下における厚みは、着用者の快適な使用感を妨げないようにする観点から、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、7mm以下が更に好ましい。
【0053】
(不織布の厚みの測定方法)
不織布に4.9mN/cm2(0.05gf/cm2)の荷重を加えた状態で、厚み測定器により測定する。厚み測定器としては、オムロン株式会社製のレーザー変位計を用いた。10点について測定し、それらの平均値を算出して厚みとする。
【0054】
次に、不織布10の製造方法の好ましい実施形態について、
図7~
図10を参照しながら説明する。以下に示す製造方法は、凹部2の底部21に開孔部3を配する形態について示している。開孔部3を含まないものとする場合は、後述の支持体120の突起121の先端は尖塔部122の無いものとすることが好ましい。また、不織布20を製造する場合、後述の工程(II)(熱流融着工程)の後に別の繊維ウエブを積層して形成することができる。
本実施形態の製造方法は、
図7に示す通り、次の3つの工程を有する(以下、それぞれの工程を、工程(I)、工程(II)、工程(III)ということがある。)。
(I)複数の突起121と突起121、121間の凹部125とを備えた凹凸形状の支持体120上に繊維ウエブ100を載置し、凹部125に沿って、繊維ウエブ100を、押し込み部材130の押し込み部131によって押し込んで賦形すると共に、突起121に対応する箇所を開孔し、押し込み部材130側に開孔面を有する凹凸開孔繊維ウエブ101を形成する、押し込み工程。
(II)前記押し込み工程と同時又は該押し込み工程後に、凹凸開孔繊維ウエブ101に第1の加熱流体W1を付与して繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布102を得る熱流融着工程。
(III)前記熱流融着工程後に、凹凸開孔不織布102に第2の加熱流体W2を付与しながら下記ドロー比1.05以上1.2以下にて引き延ばす延伸融着工程。
ドロー比=(第2の加熱流体付与部の下流の牽引部における凹凸開孔不織布102の引っ張り速度)/(第2の加熱流体付与部における凹凸開孔不織布102の送り速度)
【0055】
上記の繊維ウエブ100は不織布10の前駆体であり、熱可塑性繊維を含む。
「繊維ウエブ」とは、熱可塑性繊維を含む構成繊維が融着固定されずに緩やかに交絡し、それ自体ではシートとしての保形性を有さない繊維集合体のことである。すなわち、不織布化される前の繊維集合体である。そのため、繊維ウエブ100における繊維間の移動性は高く、前記押し込み工程における繊維ウエブ100の変形性が高い。このような繊維ウエブ100は、所定の厚さとなるようカード機(図示せず)から供給される。
【0056】
工程(I)において、
図7(A)に示す通り、支持体120上の繊維ウエブ100に対して押し込み部材130を用いて機械的な圧力で直接的に押し込む。これにより、不織布10となる凹凸開孔繊維ウエブ101を形成する。このような賦形は、風などの、機械的でない圧力で押し込んだ場合に比べ、繊維が強配向し、不織布平面に対して垂直な配向を得ることができる。また、繊維ウエブ100に対して賦形する凹凸高低差を大きくするのに、さほど押し込む力を強くする必要がなく、繊維ウエブ100を柔らかく賦形することができる。また、繊維の乱れを抑えて賦形性を高めることができる。
【0057】
支持体120は、例えば
図7に示すようなドラム状のものであり、ドラム周面にて、例えば
図7(A)に示すような突起121を有する。支持体120のドラム周面では、例えば
図8に示すように、複数の突起121が一方向(第一方向D1)とそれに直交する方向(第二方向D2)に間隔を空けて配置されている。複数の突起121が第一方向D1に配列されてなる突起部列121Aが複数、第二方向D2に互いに離間して配列されている。突起121は、先端に尖塔部122を有する。この尖塔部122により、不織布10の凹部2の底部21における開孔部3を形成する。なお、開孔部3を形成しない場合、支持体120の突起121の先端は尖塔部122の無いものとすることが好ましい。
突起121の先端側から見た平面形状は、
図8に示すような矩形に限らず、種々取り得る。例えば、円形、楕円形、ひし形などであってもよい。
凹部125は、突起部列121A、121A間で第一方向D1に延在する第一凹部125A、突起部列121Aにおいて突起121、121間にある第二凹部125Cを有する。第二凹部125Cは、隣接する第一凹部125Aに接続し、第一凹部125Aを介して間欠的に第二方向D2に延在している。
【0058】
支持体120において、突起121は、不織布10における凹部2が形成される位置に対応して複数、配置されている。突起部列121Aにおける突起121、121間の第二凹部125Cは、不織布10における鞍部15が賦形される位置にある。すなわち、突起部列121Aは、不織布10における畝部1、1間の帯領域16となる位置にある。第一凹部125Aは、不織布10における畝部1となる位置にある。
各凹部125の底部は加熱流体が吹き抜ける構造となっており、例えば複数の孔が配されている(図示せず)。
【0059】
押し込み部材130は、例えば
図7に示すようなロール状のものであり、ロール周面にて、例えば
図7(A)に示すような押し込み部131を有する。押し込み部材130のロール周面では、例えば
図9に示すように、第一方向D1に連続する押し込み部131が複数、第二方向D2に間隔をあけて配置されている。押し込み部131、131間は、第一方向D1に連続する凹部132とされている。
押し込み部材130の押し込み部131は、支持体120の第一凹部125Aに対応する。押し込み部材130の凹部132は、支持体120の突起部列121Aに対応する。
押し込み部材130の凹部132の底部は加熱流体が吹き抜ける構造となっており、例えば複数の孔が配されている(図示せず)。
【0060】
押し込み部材130の押し込み部131の高さは、支持体120の突起121同士の間に十分に挿入されるようにするために、1mm以上の長さを有することが好ましい。
【0061】
支持体120及び押し込み部材130における前述の第一方向D1及び第二方向D2は、製造工程における機械流れ方向(Machine Direction、MD)及び機械流れ方向に直交する幅方向(Cross Drection、CD)であることが好ましい。製造工程における機械流れ方向及び幅方向は、不織布20における一方向及び該一方向と交差する方向に対応することが好ましいく、不織布20を含む吸収性物品における長手方向Y及び幅方向Xに対応することが好ましい。ただし、第一方向D1及び第二方向D2は、これらに限定されない。
【0062】
工程(I)において、支持体120の突起121を押し込み部材130の凹部132に挿入する。支持体120の第一凹部125Aに押し込み部材130の押し込み部131を挿入する(
図7(A)及び
図10)。この支持体120(
図8)と押し込み部材130(
図9)との間の押し込み合いにより、不織布10が有する凹凸構造を好適に形成することができる。
支持体120の第一凹部125Aの位置で、押し込み部材130の押し込み部131にて繊維ウエブ100を押し込んで賦形する。この部分が、不織布10における畝部1になる。このとき、支持体120の突起121と押し込み部材130の押し込み部131との間で、繊維ウエブ100の繊維が厚み方向Zに沿う垂直立設された形状に賦形される。賦形された繊維は、融着していない移動性の高いものであるため、厚み方向Zに配向する。この部分が、不織布10における畝部1の壁部1Bとなる。
一方、支持体120の突起121の位置で繊維ウエブ100の繊維が押し込み部材130の凹部132の底部へと押し上げられて開孔される。この部分が、不織布10における開孔部3を含む凹部2となる。
支持体120の突起部列121Aにおける突起121、121間の第二凹部125Cには、押し込み部材130の凹部132が対応するため、押し込み部131が入り込まない。しかし、突起部列121Aの第二凹部125Cにある繊維ウエブ100の繊維に対して、その両脇において、押し込み部材130の押し込み部131、131の押し込み力が作用する。この作用により、第二凹部125Cにある繊維ウエブ100の繊維は、両脇の押し込み部131、131によって第二方向D2に伸ばされ、厚み方向Zに押し込まれて、厚み方向Zに賦形されると共に繊維の配向が変わる。この部分が、不織布10における鞍部15になる。鞍部15は頂部15Aと壁部15Bとを有するものとされ、壁部15Bは、畝部1の壁部1Bと同様のものとなる。これらの賦形及び開孔によって、凹凸開孔繊維ウエブ101を形成する。
【0063】
なお、不織布10となる凹凸開孔繊維ウエブ101を複数の繊維層よりなるものとする場合、繊維ウエブ100を複数の繊維層の積層体とすることができる。または、支持体120と押し込み部材130の噛合い位置の手前で、繊維ウエブ100と別の繊維ウエブとを合流させて積層体としてもよい。
【0064】
なお、支持体120の突起121の高さ及び押し込み部材130の押し込み部131の高さは、製造する不織布の厚み等によって適宜決定される。例えば、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上が更に好ましく、また、25mm以下が好ましく、23mm以下がより好ましく、20mm以下が更に好ましい。具体的には、2mm以上25mm以下が好ましく、3mm以上23mm以下がより好ましく、5mm以上20mm以下が更に好ましい。
【0065】
次いで、工程(II)は、工程(I)と同時又は工程(I)の後に行う。工程(II)では、凹凸開孔繊維ウエブ101に第1の加熱流体W1を付与して繊維同士を融着させる。すなわち、構成繊維の交差部に融着点4Aを形成して不織布化する。これにより、凹凸開孔不織布102を得る(
図7(B))。
工程(II)を工程(I)の後に行う場合、工程(II)は、支持体120から押込み部材130を取り外した後に行うことが好ましい。例えば、支持体120上に凹凸開孔繊維ウエブ101を保持したまま回転して、支持体120と押し込み部材130との噛み合い箇所を通過し、該噛合いの解消で支持体120に挿入された押し込み部材130を取り外す。更に支持体120が回転し、凹凸開孔繊維ウエブ101に対する第1の加熱流体W1の付与が、第1の加熱流体付与部140の位置において行われる。支持体120は、ドラム内部において、第1の加熱流体付与部140と対向する位置に加熱流体吸引部141を有することが好ましい。なお、加熱流体は、繊維の熱可塑性成分を溶融させて融着部を形成し得るものを種々含み、例えば熱風や水蒸気などが挙げられる。前記融着部をより好適に形成し前述の凹凸構造を良好に保持する観点から、加熱流体は熱風であることが好ましい。
【0066】
第1の加熱流体W1の温度は、凹凸開孔繊維ウエブ101を構成する熱可塑性繊維を溶融して、繊維同士の交差部に繊維融着部を形成できる温度に設定される。この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、凹凸開孔繊維ウエブ101を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下高いことが好ましく、5℃以上50℃以下高いことがより好ましい。
第1の加熱流体W1の風速は、効果的に融着させる観点から、1m/s以上が好ましく、2m/s以上がより好ましい。また、第1の加熱流体W1の風速は、装置規模をコンパクトにできる観点から、100m/s以下が好ましく、80m/s以下がより好ましい。
【0067】
次いで、工程(III)は、凹凸開孔不織布102に第2の加熱流体W2を付与しながら下記ドロー比1.05以上1.2以下にて引き延ばす。
ドロー比=(第2の加熱流体付与部150の下流の牽引部153における凹凸開孔不織布102の引っ張り速度)/(第2の加熱流体付与部150における凹凸開孔不織布102の送り速度)
この処理工程により、一度繊維交点の融着部4Aを形成して不織布化した凹凸開孔不織布102において、構成繊維の熱可塑性樹脂成分及び融着部4Aの熱可塑性樹脂成分を再度溶融させて引き延ばす。これにより繊維間に張られた膜状部4Bを良好に形成することができる。その結果、不織布10が得られる。
【0068】
第2の加熱流体付与部150は、融着炉151と凹凸開孔不織布102の搬送部152を含み、該搬送部152によって前記送り速度が設定される。搬送部152は、
図7においてベルトコンベアとしている。牽引部153は、
図7において一対の搬送ロールとしている。ただし、搬送部151及び牽引部152はこれに限定されるのはなく、この種の物品の製造方法において通常用い得るものとすることができる。
図7に示す例では、搬送部152をなすベルトコンベアの回転速度、すなわちベルトコンベアのベルトを回転させるロールの回転速度が前記送り速度となる。また、牽引部153をなす一対の搬送ロールの回転速度が前記引っ張り速度となる。
【0069】
この比が前述の範囲であることで、凹凸開孔不織布102に対して適度な高張力を付与することができる。該高張力を第2の加熱流体W2の付与と共に行うことで、再度溶融する樹脂成分を繊維間で好適に引き延ばし、膜状部4Bを良好に形成することができる。また、前記高張力は、凹凸開孔不織布102の搬送方向である長手方向Yに沿って加える外力であり、凹凸開孔不織布102を長手方向Yに伸長させる作用をする。同時に、凹凸開孔不織布102の幅方向Xの長さを縮めるよう作用する。これにより、得られた不織布10は、凹凸開孔不織布102よりも長手方向Yに伸長する。その伸長倍率は例えば5%以上20%以上とすることができる。
【0070】
上記の観点から、前記ドロー比は、1.06以上がより好ましく、1.07以上が更に好ましい。
また、前記ドロー比は、製造される不織布の外観を維持する観点から、1.2以下がより好ましく、1.15以下が更に好ましい。通常の不織布加工時の搬送ドロー比より高く設定することにより、ロール上での滑りが無くなり、蛇行が抑えられ、走行が非常に安定する効果もある。
【0071】
第2の加熱流体W2の付与は、膜状部4Bの作用をより良好に発現させる観点、肌面側10Tの柔らかい風合いを保持する観点から、不織布10の非肌面10Bとなる面側から行うことが好ましい。この付与において開孔部3を含む不織布10を製造する場合、工程(III)にて形成する膜状部4Bは、開孔部3を含む底部21よりも繊維量の多い畝部1の非肌面側10Bにより多く形成することができ好ましい。
【0072】
第2の加熱流体W2の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、凹凸開孔不織布102を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上60℃以下高いことが好ましく、5℃以上40℃以下高いことがより好ましい。
第2の加熱流体W2の風速は、凹凸開孔不織布102中の繊維同士を融着させる観点から、0.3m/s以上が好ましく、0.4m/s以上がより好ましい。また、第2の加熱流体W2の風速は、不織布20の柔らかさをより高める観点から、20m/s以下が好ましく、10m/s以下がより好ましい。
【0073】
以上のとおり、前述の工程(I)、工程(II)及び工程(III)を含む本実施形態の不織布の製造方法により、本発明の不織布を好適に製造することができる。
【0074】
なお、上記の製造方法では、押し込み部材130は、
図9に示すような、第一方向D1に連続する押し込み部131を備えるものに限定されない。例えば、押し込み部131を格子状にして、格子状の押し込み部131の間を枡状の凹部132としてもよい。
【0075】
本実施形態の不織布の製造方法において、第1の加熱流体W1を付与した後に、冷却工程があることが好ましい。例えば
図7に示すように、第1の加熱流体W1を付与して得た凹凸開孔不織布102が支持体120のドラム外周に沿わされている位置において、冷却ノズルを有する冷却部160と、支持体120のドラム内部の冷却吸引部161とを対向配置させることが好ましい。これにより、支持体120を一定温度以下に抑えることができ、得られた不織布を、形状を保持したまま剥がしやすくなる。
【0076】
本発明の不織布を構成する熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられるものを特に制限なく採用できる。例えば、単一の樹脂成分からなる繊維や、複数の樹脂成分からなる複合繊維などであってもよい。複合繊維としては、例えば芯鞘構造、サイドバイサイド構造などがある。
熱可塑性繊維として低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維)を用いる場合、製造工程において繊維ウエブに付与する加熱流体の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。また弾力性の観点から、芯鞘構造の複合繊維の中でも、高融点成分である芯が多いほど弾力性が高い。そのため断面面積比で芯成分が大きいほうが好ましい。鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維の具体例としては、鞘がポリエチレン樹脂(以下、PEともいう)、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETともいう)である芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。
また、芯鞘構造の複合繊維において、芯の樹脂成分よりも鞘の樹脂成分の方が、ガラス転移点が低い場合(以下、低ガラス転移点樹脂成分という。例えば、芯の樹脂成分がPETで鞘の樹脂成分がPE)、低ガラス転移点樹脂成分の質量比を小さくすることで、不織布の厚みの回復性をより高められる。
【0077】
本発明の吸収性物品用不織布は各種の吸収性物品の構成部材として用いることができる。前記各種の吸収性物品には、成人用や乳幼児用のおむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の身体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0078】
本発明の吸収性物品用不織布を有する吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。前記吸収性物品において、本発明の吸収性物品用不織布は、着用者の肌に当接する表面シートとして好適に使用することができる。
【実施例0079】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。表1中の「←」は、左側の欄と同じ値を有することを意味する。
【0080】
(実施例1)
図7に示す製造方法に基づいて前述の工程(I)~(III)を実施し、
図1~
図3及び
図5に示す不織布を作製し、これを実施例1の不織布試料とした。その際、表1に示す第1繊維層及び第2繊維層の積層体を繊維ウエブ100とした。第1繊維層が配される面側を肌面側10Tとした。繊維ウエブ100の構成繊維は、親水化処理が施された芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)=5:5)の熱可塑性繊維を用いた。第1の加熱流体W1は、温度160℃、風速5m/秒とした。作製した不織布試料の目付30g/m
2であった。第2の加熱流体W2は、温度160℃、風速2.0m/秒とした。工程(III)におけるドロー比は、1.1とした。
【0081】
(実施例2)
工程(III)におけるドロー比を1.07とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の不織布試料を作製した。
【0082】
(比較例)
工程(III)におけるドロー比を1.03とした以外は実施例1と同様にして、比較例の不織布試料を作製した。
【0083】
実施例1及び2並びに比較例の不織布試料について、下記の構造に関して確認した。測定の結果は、表1に示す通りであった。
(1) 開孔部3の縦横長さ(長手方向Yの長さと幅方向Xの長さ)
前述のマイクロスコープ(VHX6000(商品名、株式会社キーエンス製))を用いて測定した。
(2)膜状部4Bの発生頻度
前述の(膜状部4Bの確認方法及び発生頻度の測定方法)に基づき測定した。
(3)畝部1の繊維配向性
前述の(畝部1の頂部1Aの延在方向に沿う繊維配向性の測定方法)に基づき測定した。
(4)壁部1Bの繊維配向性
前述の(壁部1Bの厚み方向Zに沿う繊維配向性の測定方法)に基づき測定した。
【0084】
加えて、実施例1及び2並びに比較例の不織布試料について、下記の評価項目に関して試験した。その結果は、表1に示す通りであった。
なお、下記試験は、各府不織布試料を用いて評価用おむつを作製して行った。すなわち、市販のベビー用おむつ(商品名「メリーズさらさらエアスルーSサイズ」、花王株式会社、2020年製)から表面シートを取り除いたものを吸収性コアとし、実施例及び比較例の各不織布試料から100×250mmに切出した不織布を積層した。前記不織布試料は、非肌面側10Bが前記吸収性コア側に向くようにして積層し、積層された不織布試料の周囲を固定して、評価用おむつを作製した。
【0085】
(1)柔らかさ
柔らかさは、KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製KES FB-3)を用い、通常モードで5.0kPaまでの圧縮特性評価を行い、WC値を柔らかさとした。測定値は、3点を測定しその平均値とした。このKES圧縮試験機は、圧縮部位が面積2cm2の円形平面を持つ板であり、圧縮速度は0.02mm/s、圧縮最大圧力は5.0kPaで、圧縮最大圧力に到達した時点で圧縮方向を反転させ回復過程に移行するものである。上記WC値は、圧縮エネルギーで、gf・cm/cm2で表され、WC値が大きいほど、圧縮されやすく、柔らかい。
【0086】
(2)液吸収時間
前記評価用おむつにおいて、表面シートとして積層した不織布試に13.6g/cm2の圧力となる荷重を均等にかけ、不織布試料のほぼ中央に設置した筒(断面積1017mm2)を介して人工尿(組成:尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.110質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号(染料)0.010質量%、水96.886質量%)を注入した。人工尿は、10分ごとに40gずつ3回注入し、3回目の全量が吸収されるまでの時間(秒)を測定した。筒内部に人工尿が確認されなくなったときを、「全量が吸収された」とした。以上の操作を3回行い、3回の「全量が吸収されるまでの時間(秒)」の平均値を液体の吸収時間(秒)とし、液体の吸収時間が短いほど、液体が内部に浸透しやすいことを示す。すなわち、液吸収性に優れることを示す。
【0087】
(3)ウエットバック量
上記吸収時間測定の注入完了から10分後に、アドバンテック社製のろ紙No.4A(100mm×100mm,質量測定W1)を10枚重ねたものを、注入点を中心として吸収性物品上に置いた。
厚さ5mm、100mm×100mmのアクリル板を介して、3.5kPaの圧力を掛け、2分後にろ紙の質量を測定し(W2)、次式のようにして、液戻り量を算出した。
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(W2)-最初のろ紙の質量(W1)
【0088】
(4)液広がり長さ(長手方向Y及び幅方向X)
上記のウエットバックの測定後、各不織布試料上に広がった疑似尿の長手方向Y及び幅方向Xの幅を測定し、液広がり長さとした。
【0089】
【0090】
表1に示す通り、実施例1及び2の不織布試料は、比較例の不織布試料に比して、柔らかさに優れ、液吸収時間及びウエットバック量を小さく抑えていた。しかも、実施例1及び2の不織布試料は、比較例の不織布試料に比して、長手方向Yの液広がり長さを伸ばすと同時に幅方向Xの液広がり長さを抑え、吸収性物品に適用した場合の股からの液漏れを抑えて長手方向の吸収性を有効に活用し得るものであった。
すなわち、実施例1及び2の不織布試料は、比較例の不織布試料に比して、吸収性物品における液吸収性と柔らかな風合いとを同時に更に向上できることが分かった。